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【発明の名称】 髄内釘及び整形外科手術器具セット
【発明者】 【氏名】早野 喜十郎

【氏名】堀江 誠

【氏名】新城 明

【氏名】山崎 敏

【要約】 【課題】髄内釘を長骨の外側面より髄腔内に斜めに挿入する場合に、基端部を安定的に長骨の外側面上に設置することができるとともに、既定の姿勢で容易かつ確実に挿入部を髄腔内に挿入することができる髄内釘を提供する。

【構成】本発明の髄内釘10は、長骨の外側面側上に配置される基端部11と、該基端部11から伸びて長骨の髄腔内に挿入される挿入部12とを具備する、長骨の内固定を行うための髄内釘において、前記基端部11は、軸線11xに沿って形成された円筒面状の裏面11cと、該裏面11cよりも平坦化された形状を有する表面11bと、表裏を貫通する固定孔11aと、を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長骨の外側面上に配置される基端部と、該基端部から伸びて長骨の髄腔内に挿入される挿入部とを具備する、長骨の内固定を行うための髄内釘において、
前記基端部は、軸線に沿って形成された円筒面状の裏面と、該裏面よりも平坦化された形状を備えた表面と、表裏を貫通する固定孔と、を有することを特徴とする髄内釘。
【請求項2】
前記固定孔の開口縁に切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の髄内釘。
【請求項3】
前記開口縁には前記固定孔を中心とする対向位置に一対の前記切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の髄内釘。
【請求項4】
前記切り欠き部は、前記軸線に沿って伸びるスリット状に構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の髄内釘。
【請求項5】
長骨の外側面上に配置される基端部と、該基端部から伸びて長骨の髄腔内に挿入される挿入部とを具備する、長骨の内固定を行うための髄内釘と、該髄内釘の前記基端部に取り付けられる挿入器具と、を具備する整形外科手術器具セットにおいて、
前記基端部は、軸線に沿って形成された円筒面状の裏面と、前記裏面より平坦化された形状を有する表面と、表裏を貫通する固定孔と、を有し、
前記挿入器具は、前記基端部に対して前記軸線周りに係合する係合構造を有することを特徴とする整形外科手術器具セット。
【請求項6】
前記挿入器具は、前記係合構造を前記基端部に係合させた状態で前記固定孔に係合して固定する固定手段をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の整形外科手術器具セット。
【請求項7】
前記固定孔の開口縁には前記固定孔を中心とする対向位置に一対の前記切り欠き部が設けられるとともに、前記固定孔に挿通されて係合可能な頭部を備えた固定ねじと、前記一対の切り欠き部に挿入可能な一対のフック部を有し、該一対のフック部を前記切り欠き部にそれぞれ挿入して前記固定ねじの前記頭部を把持可能な抜去器具と、をさらに具備することを特徴とする請求項5又は6に記載の整形外科手術器具セット。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は髄内釘及び整形外科手術器具セットに係り、特に、長骨、例えば、橈骨や尺骨の髄腔に導入されて内固定を行うための髄内釘の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、橈骨、尺骨などといった前腕骨、上腕骨、大腿骨、脛骨などの長骨の骨折を治療するための整形外科手術において、骨の髄腔内に導入される髄内釘が用いられる場合がある。このような髄内釘としては、例えば、長骨の骨端部をドリル等で穿孔し、当該骨端部から髄腔内へ導入されるように構成された比較的直線状の髄内釘が用いられるが、骨端部から導入することが困難な部位、例えば、橈骨、脛骨などにおいては、骨の外側面から髄腔内に斜めに導入されるように設計された髄内釘が用いられる場合がある。また、これらの髄内釘の基端部には長骨の皮質に螺合される固定ねじを挿通・係合させるための固定孔を設ける場合がある(例えば、以下の特許文献1及び2参照)。この種の髄内釘には、骨の外側面上に配置される薄い板状のプレート部(基端部)と、髄腔内に導入されるネール部(挿入部)とを有し、プレート部にねじ孔を設けるとともに、プレート部とネール部との間に段差部を設けたものが知られている。
【特許文献1】特開2003−265494号公報
【特許文献2】特開平9−299384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の髄内釘では、髄内釘を骨の外側面より骨軸に対して斜めに導入しようとすると、皮質を穿孔して形成された開口部の外側に円筒面状の内面を有する凹溝が形成されるため、基端部を安定に設置できない場合がある。これを回避するには、穿孔方向の傾斜角度を増加させて挿入部を骨の外側面に対して大きな角度で挿入しなければならないので、基端部と挿入部との間に段差部を設ける必要が生じたり、挿入部の湾曲度合を大きくしたりしなければならないため、髄内釘の挿入作業が難しくなるという問題点がある。
【0004】
また、従来のこの種の髄内釘では、骨の外側面から髄腔内に導入することができるようにするため、或いは、髄腔内において所定の整復力を発揮させるために、湾曲した先端部若しくは挿入部を備えている。したがって、髄内釘の挿入部を髄構内に挿入する際に長骨の挿入抵抗により髄内釘が回旋し、所望の姿勢で髄腔内に挿入することができない場合がある。例えば、特許文献1及び特許文献2の図6に示すように従来の基端部であるプレート部は薄いことから、基端部を把持して挿入しようとしても基端部に変形が生じることで挿入部の回旋を必ずしも完全に防止することができない場合があり、また、特許文献2の図1に示すように円柱状の基端部を設けた場合には、当該基端部を把持したときに挿入抵抗により基端部が滑って髄内釘全体が回旋してしまうことが考えられる。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、髄内釘を長骨の外側面より髄腔内に斜めに挿入する場合に、基端部を安定的に長骨の外側面上に設置することができるとともに、既定の姿勢で容易かつ確実に挿入部を髄腔内に挿入することができる髄内釘を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる実情に鑑み、本発明の髄内釘は、長骨の外側面側上に配置される基端部と、該基端部から伸びて長骨の髄腔内に挿入される挿入部とを具備する、長骨の内固定を行うための髄内釘において、前記基端部は、軸線に沿って形成された円筒面状の裏面と、該裏面よりも平坦化された形状を有する表面と、表裏を貫通する固定孔と、を有することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、髄内釘の基端部の裏面が軸線に沿った円筒面状に構成されていることにより、長骨の外側面から骨軸に対して斜めに髄腔へ向けて穿孔し、これによって外側面上に形成される円筒面状の凹溝に基端部の裏面を整合させることで安定的に設置することができるので、固定ねじ等により固定孔を用いて基端部を確実に骨の外側面上に固定することができる。また、円筒状の裏面よりも平坦化された表面を設けることにより、基端部の剛性を確保して変形を防止しつつ基端部が回旋しないように把持することが容易になるので、髄内釘の挿入時における回旋を防止し、既定の姿勢で容易かつ確実に髄腔内に挿入部を導入することができる。また、表面が裏面より平坦化されているので、基端部が長骨の外側面上より突出する量をなくすか、或いは、低減することができる。
【0008】
本発明において、前記固定孔の開口縁に切り欠き部が設けられていることが好ましい。これによれば、固定孔の開口縁に切り欠き部が設けられることにより固定孔の開口縁の弾性変形が可能となるため、固定ねじ等の固定部材の頭部を弾性的に保持するように構成したり、或いは、当該固定部材の骨に対する挿入角度の自由度を高めたりすることが可能になる。また、上記固定部材の除去手術時において当該切り欠き部を通して固定部材の頭部を把持し、強制的に固定部材を抜去することも可能になる。
【0009】
本発明において、前記開口縁には前記固定孔を中心とする対向位置に一対の前記切り欠き部が設けられていることが望ましい。これによれば、一対の切り欠き部が設けられることにより、固定孔の弾性変形をさらに容易に生じさせることが可能になるとともに、固定部材の頭部を両側から挟みこんだ状態にて把持することが可能になるため、抜去作業をより容易に行うことが可能になる。
【0010】
本発明において、前記切り欠き部は、前記軸線に沿って伸びるスリット状に構成されていることが望ましい。これによれば、切り欠き部が軸線に沿ったスリット状に構成されていることにより、固定孔の開口縁をさらに容易に弾性変形させることが可能になる。
【0011】
次に、本発明の整形外科手術器具セットは、長骨の外側面上に配置される基端部と、該基端部から伸びて長骨の髄腔内に挿入される挿入部とを具備する、長骨の内固定を行うための髄内釘と、該髄内釘の前記基端部に取り付けられる挿入器具と、を具備する整形外科手術器具セットにおいて、前記基端部は、軸線に沿って形成された円筒面状の裏面と、前記裏面より平坦化された形状を有する表面と、表裏を貫通する固定孔と、を有し、前記挿入器具は、前記裏面及び前記表面に対して前記軸線周りに係合する係合構造を有することを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記挿入器具は、前記係合構造を前記基端部に係合させた状態で前記固定孔に係合して固定する固定手段をさらに含むことが好ましい。これによれば、基端部の固定孔を利用して挿入器具を固定手段により固定できるため、挿入作業をさらに容易に行うことが可能になる。
【0013】
本発明において、前記固定孔の開口縁には前記固定孔を中心とする対向位置に一対の前記切り欠き部が設けられるとともに、前記固定孔に挿通されて係合可能な頭部を備えた固定ねじと、前記一対の切り欠き部に挿入可能な一対のフック部を有し、該一対のフック部を前記切り欠き部にそれぞれ挿入して前記固定ねじの前記頭部を把持可能な抜去器具と、をさらに具備することが好ましい。これによれば、抜去器具の一対のフック部を切り欠き部を通して挿入し、固定ねじの頭部を挟み込んで把持することができるので、固定ねじを強制的に抜去することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の髄内釘によれば、長骨に対して基端部を安定的に設置できるとともに、挿入時の軸線周りの回旋を防止し、既定の姿勢にて容易かつ確実に挿入部を髄腔内に導入することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は本発明に係る実施形態の髄内釘10の平面図(a)及び側面図(b)、図2(a)及び(b)は髄内釘10の挿入部12を長骨(図示例では橈骨)1の髄腔内に挿入し、しかも、基端部11を固定ねじ13によって長骨1の外側面上に固定した様子を示す側方透視図及び平面透視図、図2(c)は基端部11の一部を拡大して示す拡大平面図、図2(d)は拡大縦断面図、図2(e)は挿入部12の拡大断面図である。
【0016】
髄内釘10は、基端部11と、この基端部11の軸線方向端部に一体に連結され、その連結部分から伸びる挿入部12とを有する。髄内釘10はステンレス鋼、純チタン、チタン合金等によって構成される。基端部11には、固定孔11aが設けられた第1領域11Aと、この第1領域11Aに一体に連結され、第1領域11Aよりも幅狭に形成された第2領域11Bとを有し、この第2領域11Bが上記挿入部に一体に連結されている。
【0017】
髄内釘10の端部に設けられた第1領域11Aには固定孔11aが厚み方向に貫通している。第1領域11Aの厚み方向両側には表面11bと裏面11cが設けられ、表面11bは長骨(図示例では橈骨)1と反対側に向き、裏面11cは長骨1に接するように構成されている。表面11bは平坦に構成され、裏面11cは基端部11の軸線11xを中心とする円筒面状に構成されている。なお、表面11bは完全に平坦な面である必要はなく、裏面よりも平坦化された面形状(裏面の曲率より小さい曲率を有する面など)を有していればよい。
【0018】
固定孔11aは表面11bに開口している。固定孔11aはほぼ円形の開口形状を有し、その開口縁には基端部11の軸線11xに沿った方向(基端部11の長手方向)に切り欠き部11s、11tが設けられている。切り欠き部11sと11tは固定孔11aを挟んで相互に対向する位置に設けられている。切り欠き部11s及び11tはそれぞれ表面11b上において固定孔11aの開口範囲に連通する凹溝として構成されている。また、切り欠き部11s、11tはそれぞれ基端部11の軸線11xの方向(基端部11の長手方向)と平行に構成され、さらに、軸線11xと平行に伸びるスリット状(直線状)に形成されている。なお、切り欠き部11s、11tとしては、図示例のように凹溝状(すなわち内底部があり貫通していない形状)である必要はなく、固定孔11aに連通するものでさえあれば、第1領域11Aの厚み方向に貫通する構造を有していてもよい。このようにした方が固定孔11aの開口形状は弾性変形しやすくなる。
【0019】
図2(c)及び(d)に示すように、固定孔11aの内面には固定ねじ13の頭部13aを受ける係合受面11nが形成されている。本実施形態では、固定孔11aの開口縁の内径が頭部13aより小さく形成されている。そして、頭部13aを開口縁に押圧することで、上記切り欠き部11s、11tによる弾性変形で開口が一時的に大きくなり、頭部13aを固定孔11aの内部に嵌合させることができるようになっている。このようにすると、長骨1の皮質に螺合した固定ねじ13のねじ部13bが緩んだときに、頭部13aが髄内釘10から突出することを防止できる。なお、固定孔11aは、上記の構造とは異なり、表面11b側の開口部分がそのまま頭部13aをも通過させることができ、頭部13aが単に上記係合受面11nで受け止められるように構成されていてもよい。
【0020】
第2領域11Bは上記軸線11xを中心とする円柱状に構成されている。すなわち、基端部11は軸線11xに沿って直線状に延び、第1領域11Aの裏面11cと第2領域11Bの表面とは同軸の円筒面状に構成されている。ただし、裏面11cの円筒面の径は第2領域11Bの表面の円筒面の径よりも大きく構成されている。
【0021】
挿入部12は全体として弾性変形可能な棒状に構成されている。上記基端部11に接続された連結部12sは曲折し、これによって上記軸線11xより外れて挿入部12が伸びるように構成されている。挿入部12の外面には図2(e)に示すように複数の凹溝12aが設けられ、これらの間に凸条12bが形成されている。すなわち、挿入部12の断面は星形(図示例では凹溝12a及び凸条12bの数が4であるが、当該数は特に限定されない。)である。これによって挿入部12が海綿骨に食い込みやすくなるので、骨折部の回旋防止や固定力の増大を図ることができる。挿入部12の先端部12cは基端部11の傾斜方向と同じ方向に湾曲しているとともに、当該傾斜方向に見た厚みが低減され、全体として舌状(ヘラ状)に形成されている。これによって、挿入時において髄腔の形状に沿って挿入部12の先端部12cが案内されるとともに、挿入部12の回旋抵抗を増大させることができるため、組織に損傷を与えずに安定かつスムーズに挿入部12を髄腔内に導入することが可能になる。
【0022】
挿入部12の長手方向に見た延在形状は好ましくは長骨1の髄腔内で内固定作用を生ずるための三次元的に湾曲した形状(アナトミカル形状)を有する。そして、挿入された挿入部12は髄腔内において弾性復元力によって内側から長骨1を整復状態に保持する機能を備えている。なお、図示例の挿入部12の延在形状は橈骨に対応する形状であるが、これは髄腔の形状に応じて適宜に設定される。
【0023】
以上説明した構造を有する髄内釘10は、以下のようにして用いられる。まず、図2に示す長骨1の端部寄り外側面において反対側の端部へ向けて斜めにエントリーホール(長骨1の皮質の開口部)1aを図7に示すように形成する。エントリーホール1aの形成は、小径の先端側穿孔部と、該先端部より大径の基端側穿孔部とを有する2段の穿孔刃構造を有する穿孔器具(オウル、ドリル、リーマ等)を用いる。エントリーホール1aは骨軸に対して15〜25度、好ましくは20度の軸線に沿って穿孔器具を適用することにより形成する。この加工によって長骨1の外側面には髄腔に連通する楕円状の開口であるエントリーホール1aが形成され、これが髄内釘10の刺入点となる。橈骨の場合、刺入点は遠位寄りに設定され、遠位側関節面より7mm以上近位側に設定される。
【0024】
また、エントリーホール1aの刺入点の手前には円筒面状の内面を備えた凹溝1b、1cが形成され、これが髄内釘10の基端部11の第1領域11Aの裏面11c及び第2領域11Bに整合するように、予め穿孔器具の穿孔径が選定される。具体的には、穿孔器具の先端側穿孔部の加工径(凹溝1bの内径)は基端部11の第2領域11Bの外径と一致し、穿孔器具の基端側穿孔部の加工径(凹溝1cの内径)は基端部11の第1領域11Aの裏面11cの外径と一致するように設定される。
【0025】
次に、図3(a)に示す挿入器具20を用いて髄内釘10の挿入部12を上記エントリーホール1aから髄腔内へ挿入する。挿入器具20は、先端に設けられた取付部21と、この取付部21に接続された可撓性の軸体(例えば、薄帯材を巻回して軸状に構成したもの)で構成される軸部22と、この軸部22に接続された平坦部23aを備えた把持部23と、この把持部23に接続された工具係合部24と、を軸線に沿って順次に有してなる。なお、工具係合部24は図4(c)に示すスライドハンマー50に係合するための連結ねじ穴24aを備えている。
【0026】
挿入器具20の取付部21には、図4(a)に示すように、髄内釘10の基端部11(の第1領域11A)が挿入可能に構成された係合穴21aが設けられ、この係合穴21aは取付部21の端面に開口している。係合穴21aは第1領域11Aの断面形状に対応する開口断面を有し、第1領域11Aの表面11bに対応する平坦な内面部と、この内面に対向配置され、裏面11cに対応する円筒面状の内面部とを備えている。これにより、基端部11が係合穴21aに挿入されたとき、髄内釘10は挿入器具20に対して軸線周りの回転が規制される態様で接続される。すなわち、当該係合穴21aは上記の係合構造に相当する。
【0027】
取付部21にはその上部に開口し、上記係合穴21aに連通するねじ孔21bが設けられている。このねじ孔21bに止めねじ21c(図4(b)参照)を螺入し、止めねじ21cの先端を上記固定孔11aに係合させることで、挿入器具20に髄内釘10を連結固定することができる。この係合穴21aと止めねじ21bは上記固定手段に相当する。
【0028】
次に、図4(b)及び(c)に示すように、挿入器具20を用いて髄内釘10の挿入部12をエントリーホール1aから長骨1の髄腔内へ挿入していく。このとき、挿入器具20は髄内釘10に対して軸線周りに固定されているので、挿入時における髄内釘10の回旋を防止することができる。特に、挿入時において挿入器具20と連結される第1領域11Aは厚肉に形成されているため、充分な剛性を有し、さらに、第2領域11Bの軸線周りのねじれ剛性も高いため、基端部11の変形等によって挿入部12の回旋が発生することもない。なお、エントリーホール1aから計測用ワイヤを挿入して髄腔の深さを測定したり、長骨1とテンプレートとを重ね合わせてX線画像等の透視画像で長骨1の長さを確認したりする等の方法により、事前に髄内釘10の最適長さを求めておき、当該最適長さを有する髄内釘10を選定して用いることが好ましい。
【0029】
髄内釘10の基端部11がエントリーホール1aに近づき、長骨1の外側面上に配置されるようになったら、挿入器具20を髄内釘10から取り外し、図3(c)に示すステップインパクタ40を用いて基端部11をエントリーホール1aの手前の凹溝1b、1cに整合させる。ステップインパクタ40は、上記固定孔11aに嵌合する形状に構成されてなる先端加圧部41と、平坦部42aを備えた把持部42と、工具係合部43及び44とを有している。工具係合部43、44は上記スライドハンマー50が接続できるように構成されている。
【0030】
図5に示すように、先端加圧部41は髄内釘10の基端部11における固定孔11aに嵌合し、その開口縁に係合するように構成されており、ステップインパクタ40の側面に設けられた工具係合部43に図示しない手動ハンマーや上記スライドハンマー50等で衝撃を与えることで、髄内釘10を完全に打ち込むことができる。髄内釘10の長骨1に対する挿入作業が完了すると、髄内釘10の基端部11はエントリーホール1aの手前(外側)に形成された凹溝1b、1cに嵌合した状態とされる。
【0031】
この状態において、図7に示すように、第1領域11Aの裏面11cはエントリーホール1aの反対側にある大径の凹溝1cに密接に嵌合し、第2領域11Bの裏面はエントリーホール1a側に形成された小径の凹溝1bに密接に嵌合する。この場合、エントリーホール1aの外側に形成される凹溝1b、1cの軸線(これは基端部11の軸線11xと一致する。)が骨軸に対して傾斜しているので、エントリーホール1a側の凹溝1bは深く、エントリーホール1aから離間した凹溝1cは浅く形成されるが、凹溝1bは小径で、凹溝1cは大径であるので、いずれの凹溝1b、1cも基端部11を確実に嵌合させることができる。また、第1領域11Aの表面11bは平坦に構成されているので、長骨1の周囲の外側面から大きく突出することがない。
【0032】
その後、基端部11の固定孔11aを通して図示しないドリル等の穿孔工具により長骨1の皮質にスクリューホールを形成し、図2に示す固定ねじ13を螺入する。固定ねじ13が皮質にしっかりとねじ込まれると、頭部13aの座面は固定孔11a内の係合受面11nに密接し、基端部11を長骨1の外側面上に固定する。
【0033】
図6は、上記のように装着された髄内釘10を除去する場合の手順を示すものである。骨折部が癒合した後に髄内釘10を除去する場合には上記とは逆に固定ねじ13を除去してから髄内釘10を取り除く。固定ねじ13は通常のレンチやドライバー等の工具で取り外すことができる場合もあるが、固定ねじ13が仮骨形成等によって長骨1に強固に固着されている場合や、骨質が柔らかいために固定ねじ13のネジ部13bが空回りしてネジを緩めることができなくなってしまった場合には、図3に示す抜去器具30を用いる。この抜去器具30は、先端の係合部31に一対のフック部31a,31aを有し、これらのフック部31a,31aは、回転操作部32を把持部33に対して回転操作することで開閉可能となるように構成されている。なお、把持部33には平坦部33aが設けられている。
【0034】
上記のフック部31a、31aは基端部11に設けられた切り欠き部11s、11tにそれぞれ導入可能に構成されている。したがって、一対のフック部31a,31aを開いた状態で図6(a)及び(b)に示すようにこれらのフック部31a,31aを切り欠き部11s、11tに挿入し、その後、一対のフック部31a,31aを閉じることで、フック部31a、31aによって固定ねじ13の頭部13を強固に把持することができる。そして、仮骨形成の度合等に応じて図示しない手動ハンマーや図示のスライドハンマー50を用いて衝撃を与えること等により骨との癒合を解除し、図6(c)に示すように固定ねじ13を抜去する。その後は、上記の装着手順と逆の手順で、ステップインパクタ40や挿入器具20を用いて髄内釘10を長骨1内から引き出す。
【0035】
尚、本発明の髄内釘は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態の髄内釘10では、基端部11に外径の異なる第1領域11Aと第2領域11Bを設けているが、基端部11の外径を挿入部12側から基端へ進むに従って漸次増大するように、すなわち、少なくとも基端部の裏面が円錐面となるように構成してもよい。また、軸線方向の外径の変化による骨への設置安定性の向上を期待しないのであれば、基端部11を軸線方向に一定の外径を有するものとして構成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】髄内釘の実施形態の平面図(a)及び側面図(b)。
【図2】髄内釘の長骨への取付状態を示す側面図(a)及び平面図(b)、並びに、基端部の拡大平面図(c)、拡大断面図(d)及び挿入部の断面図(c)。
【図3】髄内釘を用いた整形外科手術に用いる挿入器具の平面図、側面図及び背面図(a)、抜去器具の平面図、側面図及び背面図(b)、並びに、ステップインパクタの平面図、側面図及び背面図(c)。
【図4】挿入器具と髄内釘の接続部を示す分解斜視図(a)、挿入時の平面図(b)、及び、挿入時の側面図(c)。
【図5】ステップインパクタを用いた作業の様子を示す作業説明図。
【図6】抜去器具の装着状態を示す拡大部分断面図(a)及び側面図(b)、並びに、抜去作業時の様子を示す作業説明図(c)。
【図7】髄内釘の骨への取付状態を示す拡大部分断面図。
【符号の説明】
【0037】
10…髄内釘、11…基端部、11A…第1領域、11a…固定孔、11b…表面、11c…裏面、11n…係合受面、11s、11t…切り欠き部、11x…軸線、11B…第2領域、11C…第3領域、12…挿入部、12a…凹溝、12b…凸条、1…長骨(橈骨)、1a…エントリーホール、1b、1c…凹溝
【出願人】 【識別番号】393024186
【氏名又は名称】株式会社ホムズ技研
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明


【公開番号】 特開2008−12079(P2008−12079A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186261(P2006−186261)