トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学

【発明の名称】 血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具
【発明者】 【氏名】金丸 武司

【氏名】松島 智子

【要約】 【課題】外力を加えた状態でも異物捕捉空間を確実に確保して、血管内の異物を確実に捕捉することができる血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を提供すること。

【構成】血管内異物除去用ワイヤ1Aは、可撓性を有する長尺なワイヤ本体2と、ワイヤ本体2の先端から分岐する2本の分岐ワイヤ部4aおよび4bと、2本の分岐ワイヤ部4a、4b間に架設された3本のフィラメント部51、52および53とを有し、これらの分岐ワイヤ部4a、4bとフィラメント部51、52、53とにより、血管内の異物を捕捉する異物捕捉空間31が形成されるものである。この血管内異物除去用ワイヤ1Aは、分岐ワイヤ部4aおよび4b同士には、それらの中心線421が互いにほぼ平行となる第1の直線部42が形成されており、各第1の直線部42の外周側に、これらの位置関係を維持する補強部材7を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する長尺なワイヤ本体と、該ワイヤ本体の先端から分岐する複数の分岐ワイヤ部と、該複数の分岐ワイヤ部間に架設された少なくとも1つのフィラメント部とを有し、前記複数の分岐ワイヤ部と前記フィラメント部とにより、血管内の異物を捕捉する異物捕捉空間が形成される血管内異物除去用ワイヤであって、
前記複数の分岐ワイヤ部同士には、それらの中心線が互いにほぼ平行またはほぼねじれの位置の関係となる平行部が形成されており、
前記各平行部の外周側に、これらの位置関係を維持する補強部材を有することを特徴とする血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項2】
前記平行部は、自然状態で、その形状がほぼ直線状をなすものである請求項1に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項3】
複数の前記平行部は、外力を加えた状態でも、互いにほぼ平行な状態が維持される請求項1または2に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項4】
前記外力を加えた状態で、前記複数の平行部同士の間隔を規制する間隔規制手段を有する請求項3に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項5】
前記平行部は、その一部が湾曲している部分を有し、該部分の前記平行部の中心線に対する最大離間距離は、0.01〜2.00mmである請求項1ないし4のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項6】
前記補強部材は、前記平行部のほぼ全体を覆うものである請求項1ないし5のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項7】
前記補強部材は、管状体で構成されたものであり、該管状体内を前記平行部が挿通している請求項1ないし6のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項8】
前記各分岐ワイヤ部には、前記平行部の基端側に、当該分岐ワイヤ部の途中が急峻に屈曲した屈曲部が形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項9】
前記屈曲部の角度は、110〜160度である請求項8に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項10】
可撓性を有する長尺なワイヤ本体と、該ワイヤ本体の先端から分岐する複数の分岐ワイヤ部と、該複数の分岐ワイヤ部間に架設された少なくとも1つのフィラメント部とを有し、前記複数の分岐ワイヤ部と前記フィラメント部とにより、血管内の異物を捕捉する異物捕捉空間が形成される血管内異物除去用ワイヤであって、
前記各分岐ワイヤ部の先端部には、それぞれ、自然状態でほぼ直線形状をなす直線部が形成されており、
前記直線部の外周側に、その直線形状を維持する補強部材を有することを特徴とする血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項11】
前記フィラメント部は、その形状がアーチ状をなしている請求項1ないし10のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項12】
前記フィラメント部が複数設置されており、これらの前記アーチ状の頂部同士が互いに離間している請求項11に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項13】
前記フィラメント部が複数設置されており、これらが互いに前記アーチ状の頂部付近で交差している請求項11に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤと、前記血管内異物除去用ワイヤを収納可能なルーメンを備えたカテーテルとを有することを特徴とする医療器具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内の異物を除去する血管内異物除去用ワイヤおよびそれを備えた医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省の人口動態統計によれば、日本人の死因の一位は癌、二位は心臓病、三位は脳卒中であり、特に脳卒中による死亡や後遺症が増加し、治療方法の確立が急務となっている。
【0003】
近年、脳卒中の治療において急性期の脳梗塞治療に血栓溶解剤を用いた血栓溶解療法が開発され治療効果をあげているがその限界も指摘されている。すなわち、血栓溶解剤では血栓溶解に長時間を要したり、小さくなった血栓がさらに飛んで新たな塞栓部位を形成したり、また、血栓溶解剤で溶解しない血栓があることが医師の経験から認められている。
【0004】
脳梗塞の場合、梗塞発症後3時間以内に血流が再開できれば救命の確率が高くなるばかりか、後遺症を少なくすることが米国や欧州で証明され、脳血管内に挿入可能で血栓を直接取ることができる医療器具(血管内異物除去用ワイヤ)の開発が強く求められている。
【0005】
従来の血管内異物除去用ワイヤは、長尺なワイヤ本体と、ワイヤ本体の先端側に設けられ、血栓を捕捉する捕捉部とを有している(例えば、特許文献1参照)。捕捉部は、ワイヤ本体の先端から分岐する複数の分岐ワイヤ部と、これらの分岐ワイヤ部間に架設された複数のフィラメント部とで構成されており、内側に異物捕捉空間が形成されている。
【0006】
しかしながら、この血管内異物除去用ワイヤは、当該ワイヤを挿入する血管の内径の大きさによっては、各分岐ワイヤ部や各フィラメント部(捕捉部)が血管の内壁に押圧されて、異物捕捉空間がつぶれる場合があるという問題があった。この場合、血栓を異物捕捉空間に収納する、すなわち、血栓を捕捉するのが困難となっていた。
【0007】
【特許文献1】特開2004−16668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、外力を加えた状態でも異物捕捉空間を確実に確保して、血管内の異物を確実に捕捉することができる血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(14)の本発明により達成される。
(1) 可撓性を有する長尺なワイヤ本体と、該ワイヤ本体の先端から分岐する複数の分岐ワイヤ部と、該複数の分岐ワイヤ部間に架設された少なくとも1つのフィラメント部とを有し、前記複数の分岐ワイヤ部と前記フィラメント部とにより、血管内の異物を捕捉する異物捕捉空間が形成される血管内異物除去用ワイヤであって、
前記複数の分岐ワイヤ部同士には、それらの中心線が互いにほぼ平行またはほぼねじれの位置の関係となる平行部が形成されており、
前記各平行部の外周側に、これらの位置関係を維持する補強部材を有することを特徴とする血管内異物除去用ワイヤ。
【0010】
(2) 前記平行部は、自然状態で、その形状がほぼ直線状をなすものである上記(1)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0011】
(3) 複数の前記平行部は、外力を加えた状態でも、互いにほぼ平行な状態が維持される上記(1)または(2)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0012】
(4) 前記外力を加えた状態で、前記複数の平行部同士の間隔を規制する間隔規制手段を有する上記(3)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0013】
(5) 前記平行部は、その一部が湾曲している部分を有し、該部分の前記平行部の中心線に対する最大離間距離は、0.01〜2.00mmである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0014】
(6) 前記補強部材は、前記平行部のほぼ全体を覆うものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0015】
(7) 前記補強部材は、管状体で構成されたものであり、該管状体内を前記平行部が挿通している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0016】
(8) 前記各分岐ワイヤ部には、前記平行部の基端側に、当該分岐ワイヤ部の途中が急峻に屈曲した屈曲部が形成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0017】
(9) 前記屈曲部の角度は、110〜160度である上記(8)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0018】
(10) 可撓性を有する長尺なワイヤ本体と、該ワイヤ本体の先端から分岐する複数の分岐ワイヤ部と、該複数の分岐ワイヤ部間に架設された少なくとも1つのフィラメント部とを有し、前記複数の分岐ワイヤ部と前記フィラメント部とにより、血管内の異物を捕捉する異物捕捉空間が形成される血管内異物除去用ワイヤであって、
前記各分岐ワイヤ部の先端部には、それぞれ、自然状態でほぼ直線形状をなす直線部が形成されており、
前記直線部の外周側に、その直線形状を維持する補強部材を有することを特徴とする血管内異物除去用ワイヤ。
【0019】
(11) 前記フィラメント部は、その形状がアーチ状をなしている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0020】
(12) 前記フィラメント部が複数設置されており、これらの前記アーチ状の頂部同士が互いに離間している上記(11)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0021】
(13) 前記フィラメント部が複数設置されており、これらが互いに前記アーチ状の頂部付近で交差している上記(11)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
【0022】
(14) 上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤと、前記血管内異物除去用ワイヤを収納可能なルーメンを備えたカテーテルとを有することを特徴とする医療器具。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、血管内異物除去用ワイヤを血管内に挿入して、当該血管の内壁に各補強部材が押圧された状態(外力が加えられた状態)であっても、異物捕捉空間がつぶれるのが確実に防止される、すなわち、異物捕捉空間が確実に確保される。よって、異物捕捉空間内に異物を収納する、すなわち、異物を確実に捕捉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第1実施形態を示す部分断面斜視図、図2は、図1に示す血管内異物除去用ワイヤ(自然状態)の概略平面図、図3は、図1に示す血管内異物除去用ワイヤ(外力を加えた状態)の概略平面図、図4は、図3中のA−A線断面図、図5〜図8は、それぞれ、図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。なお、以下の説明では、図1中の左下側を「基端」、右上側を「先端」と言い、図2、図3および図5〜図8中の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。また、図5〜図8では、図1に示す血管内異物除去用ワイヤの間隔規制部材(間隔規制手段)が省略されている。
【0026】
図1〜図4に示す血管内異物除去用ワイヤ1Aは、血管内の血栓、血餅等の塞栓の原因となる異物(以下、「塞栓物」と言う)を捕捉して除去するものである。
【0027】
この血管内異物除去用ワイヤ1Aは、長尺なワイヤ本体2と、ワイヤ本体2の先端に設けられ、血管100内の塞栓物200を捕捉可能な捕捉部3とを有している。
【0028】
以下、各部の構成について説明する。
ワイヤ本体2は、全長に渡って適度な剛性および弾性(可撓性)を有している。ワイヤ本体2の構造としては、特に限定されず、例えば、単線からなるもの、複数本を束ねたもの、中空状のもの、多層構造のもの、芯材とその外周に巻回されたコイルとを有するもの、これらを組み合わせたものなどであってもよい。
【0029】
また、ワイヤ本体2の構成材料としては、特に限定されず、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、ワイヤ本体2は、基端側に位置し、比較的硬い第1の部位と、先端側に位置し、比較的柔軟な第3の部位と、前記第1の部位と前記第3の部位との間に位置し、可撓性が変化する第2の部位とを有するものであることが好ましい。換言すれば、ワイヤ本体2は、剛性(曲げ剛性、ねじり剛性等)が基端から先端に向かって漸減するようなものであるのが好ましい。これにより、手元での操作が先端部まで確実に伝達し、血管100内での走行性や屈曲部での操作性に優れるとともに、先端部の柔軟性を向上し、血管100の損傷を防ぐことができる。すなわち、ワイヤ本体2のトルク伝達性、押し込み性(プッシャビリティ)、耐キンク性(耐折れ曲がり性)を維持しつつ、より高い安全性を確保することができる。
【0031】
ワイヤ本体2の外面(表面)には、後述するカテーテル8の内面との摩擦抵抗を軽減する被覆層が設けられていてもよい。これにより、カテーテル8に対する挿入・抜去をよりスムーズに行うことができる。この被覆層としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂の被覆層や、湿潤時に潤滑性を有する親水性ポリマーコート等が挙げられる。
【0032】
このようなワイヤ本体2の先端側には、捕捉部3が設けられている。捕捉部3は、自然状態では、図1および図2に示すように幅が拡大した(開いた)状態(この状態を以下「拡径状態」と言う)になっている。この拡径状態では、捕捉部3の内側に、血管100内の塞栓物200を捕捉可能な異物捕捉空間31が形成される。
【0033】
捕捉部3は、拡径状態から、折り畳まれるようにして、カテーテル8内に収納可能な大きさ(幅)に縮小した状態(この状態を以下「縮径状態」と言う)に変形可能になっている。
【0034】
このような捕捉部3は、自身の弾性により、縮径状態から拡径状態へと変形(復元)可能になっている。
【0035】
図1〜図3に示すように、捕捉部3は、ワイヤ本体2の先端から分岐するように(互いに離間するように)延設された2本の分岐ワイヤ部4a、4bと、分岐ワイヤ部4aと分岐ワイヤ部4bとの間に架設された3本のフィラメント部51、52、53と、各分岐ワイヤ部4a、4bの外周部にそれぞれ設置された補強部材7と、2つの間隔規制部材(間隔規制手段)11とで構成されている。
【0036】
分岐ワイヤ部4a、4bの基端部は、それぞれ、ワイヤ本体2の先端部に固定(固着)されている。この固定の方法は、特に限定されないが、例えば、分岐ワイヤ部4a、4bの基端部をそれぞれワイヤ本体2の先端部に編み付け(巻き付け)、ろう接、溶接、接着剤による接着等を施すことにより固定することができる。
【0037】
本実施形態では、ワイヤ本体2の先端部には、分岐ワイヤ部4a、4bのワイヤ本体2に対する固定部(ロウ付け部)を覆うコイル21が設けられている。コイル21の外表面は、平滑になっており、これにより、より高い安全性が得られる。
【0038】
各分岐ワイヤ部4aおよび4bは、それぞれ、その途中が急峻に屈曲しており、その屈曲した部位(屈曲部44)より先端側に位置する(設けられた)第1の直線部(平行部)42と、屈曲部44より基端側に位置する第2の直線部43とに分けることができる。
【0039】
第1の直線部42および第2の直線部43は、それぞれ、自然状態でほぼ直線形状をなしている。ここで、「自然状態」とは、外力を付与しない状態のことである。
【0040】
第1の直線部42が形成されていることにより、ほぼ起状のない血管内壁と第1の直線部42との間に不必要な隙間(デッドスペース)が形成されることなく、捕捉部3(第1の直線部42)を当該血管内壁のごく近くまで拡張するように設計することができる。従って、異物捕捉空間31を最大限、広く確保することができる。
【0041】
本実施形態では、捕捉部3は、3本の線状体(ワイヤ)6を用いて形成されたものである。第2の直線部43は、これらの線状体6が撚り合わされて一体的に集合して撚り線部を形成し、この撚り線部によって構成されている。第2の直線部43が撚り線部で構成されていることにより、捕捉部3の形状が崩れて異物捕捉空間31を確保するのが困難となるのがより有効に防止され、より容易かつ確実に塞栓物200を捕捉することができる。
【0042】
また、分岐ワイヤ部4aの第2の直線部43と分岐ワイヤ部4bの第2の直線部43とは、それぞれ、直線形状をなすものであるが、これに限定されず、例えば、湾曲形状(曲線形状)をなしていてもよい。また、これらの第2の直線部43のうち、一方が直線形状をなし、他方が湾曲形状をなしていてもよい。
【0043】
図1(図2〜図4も同様)に示す第1の直線部42は、3本の線状体6が束ねられて(単に集合して)、構成された(形成された)ものである。
【0044】
図1および図2に示すように、捕捉部3では、分岐ワイヤ部4aの第1の直線部42と、分岐ワイヤ部4bの第1の直線部42とは、それらの中心線421同士が自然状態でほぼ平行な状態またはほぼねじれの位置となっている。これにより、例えば血管100内やカテーテル8内での捕捉部3の挿通を円滑に行なうことができ、よって、迅速な処置を施す(塞栓物200の除去を行なう)ことができる。また、捕捉したい異物の近傍における血管内径は、その長手方向においてほぼ一定のため、第1の直線部42同士をほぼ平行に配設することにより、これら第1の直線部42の間に形成される異物捕捉空間31の幅を血管内径と同等程度となるように、最大限広く設計することができる。よって、異物捕捉空間31を最大限広く確保することができるという利点もある。
【0045】
また、屈曲部44の角度θ1は、特に限定されず、例えば、110〜160度であるのが好ましく、120〜140度であるのがより好ましい。角度θ1が前記数値範囲内にある場合、カテーテル8内への挿通動作が容易であり(とりわけ、一度異物捕捉空間31をカテーテル8内から突出させた場合に、再度カテーテル8内へ収納する動作がスムーズであり)、かつ、血管壁への密着性、異物捕捉空間31の最大化も期待することができるという利点がある。
【0046】
分岐ワイヤ部4aの第1の直線部42と、分岐ワイヤ部4bの第1の直線部42とには、それぞれ、当該第1の直線部42を補強する、すなわち、これらの第1の直線部42の平行な位置関係(直線形状)を維持する補強部材7が設置されている。
【0047】
各補強部材7は、管状体(パイプ)で構成されたものである。この管状体(補強部材7)内を第1の直線部42が挿通している。すなわち、補強部材7は、第1の直線部42の外周部に、当該第1の直線部42のほぼ全体を覆うように設置されている。
【0048】
このような構成の補強部材7により、比較的小さい内径の血管100に捕捉部3が挿入され、血管内壁に押されて、当該補強部材7(捕捉部3)に外力が加えられたときでも、その外力によって第1の直線部42が例えば内側(異物捕捉空間31側)に向かって湾曲するのが確実に防止される、すなわち、前記平行な位置関係(直線形状)が確実に維持される(図3参照)。
【0049】
これにより、捕捉部3を血管100内に挿入して、当該血管100の内壁に各補強部材7が押圧された状態(外力が加えられた状態)であっても、捕捉部3と血管100の内壁との間に間隙(デッドスペース)が形成されてその分だけ異物捕捉空間31がつぶれるのが確実に防止される、すなわち、異物捕捉空間31が最大限に確実に確保される。よって、異物捕捉空間31(捕捉部3)内に塞栓物200を収納する、すなわち、塞栓物200を確実に捕捉することができる(図8参照)。
【0050】
なお、補強部材7によって維持される中心線421同士の平行度(平行度公差(JIS B 0021規定))は、特に限定されず、例えば、0.01〜1.00mmであるのが好ましく、0.1〜0.5mmであるのがより好ましい。
【0051】
また、中心線421同士が位置する一平面(仮想平面)の平面度(平面公差(JIS B 0021規定))は、例えば、0.01〜1.00mmであるのが好ましく、0.1〜0.5mmであるのがより好ましい。
【0052】
また、補強部材7は、第1の直線部42の外周部に固定されているのが好ましい。これにより、第1の直線部42に対する補強部材7の位置ズレが防止され、よって、第1の直線部42を確実に覆うことができる。なお、この固定方法としては、特に限定されないが、例えば、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)による方法、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法等が挙げられる。
【0053】
また、補強部材7の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料を用いることができ、その中でも特に、ステンレス鋼や白金を用いるのが好ましい。補強部材7の構成材料として例えばステンレス鋼を用いた場合、補強部材7の物理的強度を好適なものとする、すなわち、補強部材7を血管100の内壁による押圧に対して変形し難いものとすることができる。また、補強部材7がX線造影性を有することとなり、X線の透視下において、捕捉部3や、当該捕捉部3での塞栓物200の捕捉状況を容易に確認することができる。
【0054】
図1に示すように、分岐ワイヤ部4a(直線部42)の先端部と分岐ワイヤ部4b(直線部42)の先端部との間には、線状をなす3本のフィラメント部51、52、53が架け渡されるように設けられている。これらのフィラメント部51、52、53は、それぞれ、その中央部分が先端側に張り出すように、すなわち、アーチ状に湾曲しつつ、分岐ワイヤ部4aの先端部と分岐ワイヤ部4bの先端部とを接続している。本実施形態では、フィラメント部51、52、53のそれぞれの頂部(先端部)54が滑らかに湾曲した形状をなしていることにより、血管100の内壁にダメージを与えるのを防止することができ、高い安全性が得られる。
【0055】
また、各頂部54同士は、互いに離間している。これにより、塞栓物200を捕捉する際、一旦捕捉した塞栓物200が先端側から脱落(離脱)するのを防止することができる(図8参照)。
【0056】
このような各分岐ワイヤ部4a、4bと各フィラメント部51、52および53を構成する(異物捕捉空間31を画成する)線状体6の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、生体内で超弾性を示す合金が好ましい。これにより、捕捉部3の縮径状態から拡径状態への変形(変位)をより確実に生起させることができるとともに、拡径状態においてより正確な復元形状が得られる。
【0057】
ここで、生体内で超弾性を示す合金とは、少なくとも生体温度(37℃付近)において、通常の金属が組成変形する領域まで変形(曲げ、引っ張り、圧縮)させても、ほぼ元の形に回復する性質を有するものを言い、形状記憶合金、超弾性合金等とも言われるものである。
【0058】
形状記憶合金、超弾性合金としては、特に限定されないが、例えば、チタン系(Ti−Ni、Ti−Pd、Ti−Nb−Sn等)や、銅系の合金が好ましい。
【0059】
図1〜図3に示すように、分岐ワイヤ部4a側の補強部材7と分岐ワイヤ部4b側の補強部材7とには、これらの補強部材7同士を連結する2つの間隔規制部材11が接合されている。これらの間隔規制部材11は、補強部材7の長手方向に沿って間隔をおいて設置されている。
【0060】
各間隔規制部材11は、その平面形状が「コ」字状をなすものである。捕捉部3では、各間隔規制部材11の一端部111が分岐ワイヤ部4a側の補強部材7に接合され、他端部112が分岐ワイヤ部4b側の補強部材7に接合されている。
【0061】
また、各間隔規制部材11は、弾性材料で構成されており、その弾性材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料が挙げられる。
【0062】
このような間隔規制部材11が設置されていることにより、第1の直線部42同士の間隔が規制される。
【0063】
また、このような間隔規制部材11では、各補強部材7に外力を加えたとき、各間隔規制部材11に反力が生じて形状を復元しようとする(図3および図4参照)。これにより、各補強部材7に外力を加えた状態でも、第1の直線部42同士の間隔が規制され、よって、第1の直線部42同士が互いにほぼ平行な状態がより確実に維持される。これにより、外力が加えられた状態であっても異物捕捉空間31がより確実に確保され、よって、塞栓物200をより確実に捕捉することができる。
【0064】
なお、本発明の医療器具9は、このような血管内異物除去用ワイヤ1Aと、カテーテル8とを有するものである。
【0065】
次に、本発明の血管内異物除去用ワイヤ1Aの使用方法の一例について詳細に説明する。
【0066】
[1] 図5は、血管100内に血栓等の塞栓物200が詰まり、血流を阻害している状態を示している。塞栓物200は、血圧により血管100の内壁に押し付けられ、容易に移動しない状態になっている。
【0067】
カテーテル(マイクロカテーテル)8と、そのルーメン内に挿通されたガイドワイヤ10とを、血管100内に挿入し、カテーテル8の先端開口部81から突出させたガイドワイヤ10の先端部101を塞栓物200より奥(末梢側)まで挿入する。すなわち、ガイドワイヤ10の先端部101が塞栓物200と血管100の内壁との隙間を通り抜けて、塞栓物200を越えた状態とする。この操作は、ガイドワイヤ10として、例えば潤滑性に優れるマイクロガイドワイヤを使用することにより、より容易に行うことができる。
【0068】
[2] ガイドワイヤ10の先端部101が塞栓物200を越えたら、ガイドワイヤ10に対しカテーテル8を前進させ、図6に示すように、カテーテル8の先端部を塞栓物200と血管100の内壁との隙間に入り込ませる。このとき、カテーテル8の先端部は、ガイドワイヤ10に沿って円滑に隙間に入り込むので、この操作は容易に行うことができる。
【0069】
なお、従来の治療としては、この状態でカテーテル8を介して逆行性に血栓溶解剤を流し、血栓溶解を速めることが行なわれてきたが、血栓溶解剤で溶けない血栓があることや溶解に長時間かかることがしばしば医師により経験されている。本発明は、そのような場合にも有用である。
【0070】
[3] 図6に示す状態から、ガイドワイヤ10を抜去し、カテーテル8のルーメンに本発明の血管内異物除去用ワイヤ1Aを挿入する。図7に示すように、捕捉部3をカテーテル8の先端開口部81から突出させると、縮径状態でカテーテル8内にあった捕捉部3は、自身の弾性により自動的に展開し、拡径状態となる。捕捉部3が拡径状態になると、塞栓物200を捕捉する異物捕捉空間31が形成される。このとき、前述したように、血管100の内壁に各補強部材7が押圧された状態であっても、異物捕捉空間31が確実に確保される。
【0071】
[4] 異物捕捉空間31が形成された(確保された)後、カテーテル8を僅かに基端方向に移動させ、カテーテル8の先端部を塞栓物200の手前に引き戻すと、図8に示すように、捕捉部3の異物捕捉空間31に塞栓物200がすくい取られるようにして、捕捉(収納)される。すなわち、塞栓物200は、図7および図8中の上側から異物捕捉空間31に入り込む。
【0072】
[5] 捕捉部3に塞栓物200が収納されたら、カテーテル8に対しワイヤ本体2を基端方向に牽引する。これにより、分岐ワイヤ部4a、4bの基端部(第2の直線部43)が先端開口部81(の縁部)に当接して互いの間隔を狭めつつカテーテル8内に引き込まれ、分岐ワイヤ部4a、4bの形成するループが小さくなる。よって、塞栓物200は、分岐ワイヤ部4a、4bによって締め付けられる。
【0073】
この締め付け力により、フィブリン等の軟質血栓は、破砕することができ、血管100の閉塞を解消することができる。破砕されない塞栓物200は、この締め付け力によって、より確実に捕捉部3に保持され、捕捉部3からの脱落(離脱)を防止しつつ、確実に回収することができる。
【0074】
[6] 前記の締め付け状態を維持しつつ、血管内異物除去用ワイヤ1Aをカテーテル8とともに抜去する。これにより、親のガイディングカテーテルまたはシースイントロデューサー(図示せず)内に塞栓物200が回収(除去)される。
【0075】
なお、[5]の締め付けの操作を行わず、捕捉部3内に塞栓物200が収納されたら、そのまま血管内異物除去用ワイヤ1Aをカテーテル8とともに抜去して、塞栓物200を除去してもよい。
【0076】
<第2実施形態>
図9は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第2実施形態を示す平面図、図10は、捕捉部の他の構成例を示す斜視図である。
【0077】
以下、この図を参照して本発明の血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0078】
本実施形態は、捕捉部の形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図9に示す血管内異物除去用ワイヤ1Bの捕捉部3では、ワイヤ本体2の中心軸周りに等角度間隔に4本の分岐ワイヤ部4c、4d、4eおよび4fを有している。この捕捉部3では、隣接しない、すなわち、対向する分岐ワイヤ部4c、4e同士間に、2本のフィラメント部55、56が架設されており、対向する分岐ワイヤ部4d、4f同士間に、2本のフィラメント部57、58が架設されている。
【0079】
このような捕捉部3では、各フィラメント部55および56の頂部54付近は、それぞれ、フィラメント部57および58の頂部54付近と交差している。これにより、塞栓物200の破片が各フィラメント部55〜58の間の隙間から逃げる(漏れ出す)のをより確実に防止することができる。
【0080】
なお、各分岐ワイヤ部4c、4d、4eおよび4fでは、それぞれ、第1の直線部42より基端側の部位(湾曲部45)が、湾曲形状をなしているが、これに限定されず、直線状をなしていてもよい。
【0081】
また、図示の構成では、各分岐ワイヤ部4c〜4fは、それぞれ、2本の線状体6が単に集合して(束ねられて)、すなわち、撚り合わせずに形成されているが、撚り合わせられていてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、2つの分岐ワイヤ部間に架設されるフィラメント部の設置数は、2本であるが、これに限定されず、例えば、図10に示すように1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0083】
<第3実施形態>
図11は、本発明の血管内異物除去用ワイヤ(第3実施形態)の第1の直線部付近を示す部分拡大断面図である。
【0084】
以下、この図を参照して本発明の血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0085】
本実施形態は、第1の直線部の形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0086】
図11に示す血管内異物除去用ワイヤ1Cの第1の直線部42aは、その中間部(一部)が波形状に湾曲している湾曲部422を有している。この湾曲部422では、中心線421に対する最大離間距離hは、特に限定されないが、例えば、0.01〜2.00mmであるのが好ましく、0.1〜1.0mmであるのがより好ましい。
【0087】
また、湾曲部422は、最大離間距離hとなる部分(山423)が、補強部材7の内周面に当接している。これにより、第1の直線部42aに対する補強部材7の位置がズレるのを防止することができる。
【0088】
なお、湾曲部422の形状は、波形であるのに限定されず、例えば、コイル状であってもよい。
【0089】
また、第1の直線部42aに対する湾曲部422の形成位置は、第1の直線部42aの中間部であるのに限定されず、例えば、第1の直線部42aの両端部の少なくとも一方であってもよい。
【0090】
以上、本発明の血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0091】
また、本発明の血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0092】
また、捕捉部では、第1の直線部の中心線同士が自然状態でほぼ平行な位置関係となっているが、これに限定されず、ねじれの位置の関係となっていてもよい。第1の直線部の中心線同士がねじれの位置の関係となっている場合、第1の直線部の中心線同士がほぼ平行な位置関係の場合と同様の効果を得る(奏する)。
【0093】
前記第1実施形態において、第2の直線部は、複数の線状体を撚り合わされたものであるのに限定されず、例えば、第1の直線部のように複数の線状体を単に集合したものであってもよい。また、第1の直線部は、複数の線状体を単に集合したものであるのに限定されず、例えば、第2の直線部のように複数の線状体を撚り合わされたものであってもよい。
【0094】
また、捕捉部の表面には、滑り止め手段が設けられていてもよい。これにより、捕捉した塞栓物をより確実に保持することができる。この滑り止め手段としては、比較的摩擦係数の高いゴム等の弾性材料を被覆したり、微小の凹凸(粗面も含む)を例えばサンドブラスト等により形成したりすることができる。
【0095】
また、補強部材は、管状体で構成されたものであるのに限定されず、例えば、コイル状をなす部材で構成されたものであってもよい。
【0096】
また、補強部材は、1つの管状体で構成されたものであるのに限定されず、複数の管状体を連結した連結体で構成されたものであってもよし、線状体(ワイヤ)をコイル状に巻回したものであってもよいし、横断面形状がC字状をなし、かしめにより設置される部材で構成されたものであってもよいし、比較的硬質の金属材料を蒸着やスパッタリングで付着させたものであってもよい。
【0097】
また、補強部材は、その先端部が各フィラメント部の基端部を覆っていてもよし、覆っていなくてもよい。補強部材の先端部が各フィラメント部の基端部を覆っていない場合、各フィラメント部の頂部同士の間隔が比較的大きくなる。また、補強部材の長さを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の血管内異物除去用ワイヤの第1実施形態を示す部分断面斜視図である。
【図2】図1に示す血管内異物除去用ワイヤ(自然状態)の概略平面図である。
【図3】図1に示す血管内異物除去用ワイヤ(外力を加えた状態)の概略平面図である。
【図4】図3中のA−A線断面図である。
【図5】図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。
【図6】図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。
【図7】図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。
【図8】図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。
【図9】本発明の血管内異物除去用ワイヤの第2実施形態を示す平面図である。
【図10】捕捉部の他の構成例を示す斜視図である。
【図11】本発明の血管内異物除去用ワイヤ(第3実施形態)の第1の直線部付近を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1A、1B、1C 血管内異物除去用ワイヤ
2 ワイヤ本体
21 コイル
3 捕捉部
31 異物捕捉空間
4a、4b、4c、4d、4e、4f 分岐ワイヤ部
42、42a 第1の直線部(平行部)
421 中心線
422 湾曲部
423 山
43 第2の直線部
44 屈曲部
45 湾曲部
51、52、53、55、56、57、58 フィラメント部
54 頂部(先端部)
6 線状体(ワイヤ)
7 補強部材
8 カテーテル(マイクロカテーテル)
81 先端開口部
9 医療器具
10 ガイドワイヤ
101 先端部
11 間隔規制部材(間隔規制手段)
111 一端部
112 他端部
100 血管
200 塞栓物
θ1 角度
h 最大離間距離
【出願人】 【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉


【公開番号】 特開2008−6109(P2008−6109A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180458(P2006−180458)