トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 流体アクチュエータ、および内視鏡
【発明者】 【氏名】荻窪 真也

【要約】 【課題】簡単な構成で内視鏡の湾曲部などを容易に湾曲させることができる流体アクチュエータを提供する。

【構成】電子内視鏡10の湾曲部13bに組み込まれた流体アクチュエータ31は、二つの流体室41a、41bと、各流体室41a、41b間を繋ぐ連結路42とを有し、これらには、流体44が密閉収容されている。流体室41aの上面47aは、伸縮自在な弾性部材45aで構成され、流体室41aの上下面47a、52aには、伸縮または湾曲自在な一対の電極53a、54aが取り付けられている。可変電圧源55a、55bからの電圧の印加により電極53a、54a間、電極53b、54b間に働く静電引力を利用して、流体室41a、41bの体積を変化させることで、湾曲部13bを湾曲させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が伸縮または湾曲自在な弾性部材からなる複数の流体室と、
前記複数の流体室間を繋ぐ連結路と、
前記流体室および前記連結路に密閉収容された流体と、
前記連結路を介して前記流体室間で前記流体を移動させることで、前記弾性部材を弾性変形させて前記流体室の体積を変化させるための圧力を発生させる圧力発生手段とを備えることを特徴とする流体アクチュエータ。
【請求項2】
前記圧力を調整する圧力調整手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の流体アクチュエータ。
【請求項3】
前記圧力発生手段は、前記流体室の外面に取り付けられ、伸縮または湾曲自在な一対の電極と、
前記一対の電極に電圧を供給する電圧源とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の流体アクチュエータ。
【請求項4】
前記一対の電極は、前記連結路が設けられた前記流体室の面と、この面に対向する面とに設けられていることを特徴とする請求項3に記載の流体アクチュエータ。
【請求項5】
前記流体室は、前記連結路から遠ざかるに連れて前記一対の電極間の幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の流体アクチュエータ。
【請求項6】
前記圧力発生手段は、圧電体、および前記圧電体を挟む一対の電極を有し、前記流体室の外面に複数配設された圧電素子と、
前記一対の電極に電圧を供給する電圧源とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の流体アクチュエータ。
【請求項7】
前記圧電素子は、前記連結路が設けられた前記流体室の面と、この面に対向する面とに設けられていることを特徴とする請求項6に記載の流体アクチュエータ。
【請求項8】
前記圧力発生手段は、前記流体室の外面に取り付けられた導電性高分子アクチュエータと、
前記導電性高分子アクチュエータに電圧を供給する電圧源とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の流体アクチュエータ。
【請求項9】
前記導電性高分子アクチュエータは、前記連結路が設けられた前記流体室の面に対向する面に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の流体アクチュエータ。
【請求項10】
前記導電性高分子アクチュエータは、前記連結路が設けられた部分を除く前記流体室の略全面に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の流体アクチュエータ。
【請求項11】
前記電圧源は、前記電圧を変化させることで、前記圧力を調整することを特徴とする請求項3ないし10のいずれかに記載の流体アクチュエータ。
【請求項12】
前記複数の流体室は、平衡状態で同じ体積を有することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の流体アクチュエータ。
【請求項13】
前記流体室は、断面略矩形形状を有することを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の流体アクチュエータ。
【請求項14】
前記連結路は、前記複数の流体室間を等距離で繋いでいることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の流体アクチュエータ。
【請求項15】
前記圧力発生手段は、前記連結路が設けられた前記流体室の面と、この面に対向する面との間で、前記圧力を発生させることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の流体アクチュエータ。
【請求項16】
前記弾性部材は、前記連結路が設けられた前記流体室の面に対向する面に設けられていることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の流体アクチュエータ。
【請求項17】
前記連結路は、弾性変形をしない硬質な材料からなることを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載の流体アクチュエータ。
【請求項18】
前記流体は、生理食塩水、水、空気、窒素、および希ガスのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載の流体アクチュエータ。
【請求項19】
前記弾性部材は、シリコンゴム、ポリウレタンゴム、またはラテックスゴムのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の流体アクチュエータ。
【請求項20】
被検体内に挿入される挿入部に湾曲部を有し、前記被検体内に挿入される内視鏡であって、
請求項1ないし19のいずれかに記載の流体アクチュエータが前記湾曲部に組み込まれていることを特徴とする内視鏡。
【請求項21】
前記湾曲部を操作するための操作手段と、
前記操作手段の操作に応じて、前記流体アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段とを備えることを特徴とする請求項20に記載の内視鏡。
【請求項22】
前記流体室と前記連結路との間の隙間に、鉗子チャネルや送気・送水管、その他ケーブルが挿通されていることを特徴とする請求項20または21に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の湾曲部などを湾曲させるための手段として好適な流体アクチュエータ、および内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、電子内視鏡を利用した医療診断が盛んに行われている。電子内視鏡の被検体内に挿入される挿入部先端には、CCDなどの固体撮像素子が内蔵されている。固体撮像素子により取得した撮像信号に対して、プロセッサ装置で信号処理を施すことで、モニタで被検体内の被観察部位の画像を観察することができる。
【0003】
挿入部には、先端部を被検体内の所望の方向に向けるための湾曲部が設けられている。従来の電子内視鏡では、挿入部の基端部分に連設された操作部のアングルノブを操作して、挿入部内に挿設されたワイヤを押し引きすることにより、湾曲部を湾曲させている。
【0004】
湾曲部を湾曲させる手段としては、ワイヤを用いた上記従来の方法の他に、様々な技術が考案されている。例えば、加圧室を内部に形成した偏平状の弾性体と、弾性体に付設され、その膨張方向を規制する繊維と、加圧室に接続された流体供給用加圧チューブとからなる流体アクチュエータを湾曲部に組み込んだ内視鏡が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、流体圧により軸方向に伸縮する弾性アクチュエータと、弾性アクチュエータの伸縮力を伝える湾曲操作用ワイヤとが可撓管の内部に設けられ、湾曲操作用ワイヤにより湾曲管を湾曲する内視鏡の挿入部において、可撓管のうち、弾性アクチュエータが位置する部分の外皮を軟質樹脂によって形成し、この部分の可撓性を他の部分よりも高く構成した内視鏡が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−015485号公報
【特許文献2】特開平5−211989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワイヤを用いた従来の方法では、アングルノブを操作して湾曲部を所望の方向に曲げるためには、ある程度の熟練度が要求される。このため、手技が未熟な術者が診断を行った場合には、湾曲部を所望の方向に曲げられずに診断の時間が長くなったり、アングルノブの操作を誤って先端部を被検体内壁面にぶつけてしまったりするなど、患者に大きな負担を掛けるおそれがあった。また、大腸や小腸のように複雑に屈曲した管路内を診断する際には、挿入部自体の屈曲によってワイヤの押し引きに負荷が掛かり、操作が困難になるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1および2に記載の発明では、アクチュエータに流体を送り込むためのポンプやコンプレッサなどの加圧・減圧機構が必要となり、装置が大掛かりになるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、簡単な構成で内視鏡の湾曲部などを容易に湾曲させることができる流体アクチュエータを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、手技の熟練度に依らず、円滑な診断を行うことが可能な内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の流体アクチュエータは、少なくとも一部が伸縮または湾曲自在な弾性部材からなる複数の流体室と、前記複数の流体室間を繋ぐ連結路と、前記流体室および前記連結路に密閉収容された流体と、前記連結路を介して前記流体室間で前記流体を移動させることで、前記弾性部材を弾性変形させて前記流体室の体積を変化させるための圧力を発生させる圧力発生手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記圧力を調整する圧力調整手段を備えることが好ましい。
【0012】
前記圧力発生手段は、前記流体室の外面に取り付けられ、伸縮または湾曲自在な一対の電極と、前記一対の電極に電圧を供給する電圧源とからなることが好ましい。
【0013】
この場合、前記一対の電極は、前記連結路が設けられた前記流体室の面と、この面に対向する面とに設けられていることが好ましい。また、前記流体室は、前記連結路から遠ざかるに連れて前記一対の電極間の幅が狭くなるように形成されていることが好ましい。
【0014】
あるいは、前記圧力発生手段は、圧電体、および前記圧電体を挟む一対の電極を有し、前記流体室の外面に複数配設された圧電素子と、前記一対の電極に電圧を供給する電圧源とからなることが好ましい。
【0015】
この場合、前記圧電素子は、前記連結路が設けられた前記流体室の面と、この面に対向する面とに設けられていることが好ましい。
【0016】
若しくは、前記圧力発生手段は、前記流体室の外面に取り付けられた導電性高分子アクチュエータと、前記導電性高分子アクチュエータに電圧を供給する電圧源とからなることが好ましい。
【0017】
この場合、前記導電性高分子アクチュエータは、前記連結路が設けられた前記流体室の面に対向する面に設けられていることが好ましい。あるいは、前記導電性高分子アクチュエータは、前記連結路が設けられた部分を除く前記流体室の略全面に設けられていることが好ましい。
【0018】
前記電圧源は、前記電圧を変化させることで、前記圧力を調整することが好ましい。
【0019】
前記複数の流体室は、平衡状態で同じ体積を有することが好ましい。また、前記流体室は、断面略矩形形状を有することが好ましい。さらに、前記連結路は、前記複数の流体室間を等距離で繋いでいることが好ましい。
【0020】
前記圧力発生手段は、前記連結路が設けられた前記流体室の面と、この面に対向する面との間で、前記圧力を発生させることが好ましい。また、前記弾性部材は、前記連結路が設けられた前記流体室の面に対向する面に設けられていることが好ましい。さらに、前記連結路は、弾性変形をしない硬質な材料からなることが好ましい。
【0021】
前記流体は、生理食塩水、水、空気、窒素、および希ガスのうちのいずれかであることが好ましい。また、前記弾性部材は、シリコンゴム、ポリウレタンゴム、またはラテックスゴムのうちのいずれかであることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、被検体内に挿入される挿入部に湾曲部を有し、前記被検体内に挿入される内視鏡であって、請求項1ないし19のいずれかに記載の流体アクチュエータが前記湾曲部に組み込まれていることを特徴とする。
【0023】
前記湾曲部を操作するための操作手段と、前記操作手段の操作に応じて、前記流体アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段とを備えることが好ましい。
【0024】
前記流体室と前記連結路との間の隙間に、鉗子チャネルや送気・送水管、その他ケーブルが挿通されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の流体アクチュエータによれば、少なくとも一部が伸縮または湾曲自在な弾性部材からなる複数の流体室と、複数の流体室間を繋ぐ連結路と、流体室および連結路に密閉収容された流体と、連結路を介して流体室間で流体を移動させることで、弾性部材を弾性変形させて流体室の体積を変化させるための圧力を発生させる圧力発生手段とを備えるので、簡単な構成で内視鏡の湾曲部などを容易に湾曲させることができる。
【0026】
また、本発明の内視鏡によれば、請求項1ないし19のいずれかに記載の流体アクチュエータが湾曲部に組み込まれているので、手技の熟練度に依らず、円滑な診断を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1において、電子内視鏡システム2は、電子内視鏡10、および電子内視鏡10とコード11を介して接続されたプロセッサ装置12から構成される。電子内視鏡10は、被検体内に挿入される挿入部13と、挿入部13の基端部分に連設された操作部14とを備えている。
【0028】
挿入部13の先端に連設された先端部13a(例えば、外径12.8mm)には、被検体内の被観察部位の像光を取り込むための対物光学系20と像光を撮像するCCD21(ともに図2参照)、被観察部位に照明装置(図示せず)からの照明光を照射するための照明窓22(図2参照)が配されている。また、先端部13aには、鉗子口15と連通した鉗子出口、送気・送水ボタン14aを操作することによって、対物光学系20を保護する観察窓の汚れを落とすための洗浄水やエアーが噴射されるノズルなどが設けられている。CCD21により取得された被検体内の画像は、プロセッサ装置12のモニタ16に表示される。
【0029】
先端部13aの後方には、湾曲部13bが設けられている。湾曲部13bは、操作部14に設けられたジョイスティック14bが操作されて、湾曲部13b内に設けられた流体アクチュエータ31(図2参照)が駆動することにより、矢印で示す上下方向に湾曲動作する。これにより、先端部13aが被検体内の上下方向に向けられる。
【0030】
湾曲部13bの後方には、可撓性を有する軟性部13cが設けられている。軟性部13cは、先端部13aが被観察部位に到達可能なように、且つ術者が操作部14を把持して操作する際に支障を来さない程度に患者との距離を保つために、数mの長さを有する。
【0031】
図2において、照明窓22には、照明装置からのライトガイド23の一端が取り付けられている。ライトガイド23は、挿入部13、操作部14に亘って設けられており、照明装置で発せられた光を照明窓22に導光する。
【0032】
CCD21は、CPU24に接続されたドライバ25からの駆動制御信号に基づいて、対物レンズ20から入射した被検体内の被観察部位の像光を撮像面に結像させ、各画素からこれに応じた撮像信号を出力する。
【0033】
AFE26は、CPU24の制御の下に、CCD21から出力された撮像信号に対して、相関二重サンプリング、増幅、およびA/D変換を施して、撮像信号をデジタルの映像信号に変換する。AFE26から出力されたデジタルの映像信号は、コード11を介してプロセッサ装置12の画像処理部27に入力される。
【0034】
画像処理部27は、AFE26からのデジタルの映像信号に対して、階調補正、輪郭強調、γ補正などのデジタル信号処理を施し、映像信号からデジタルのビデオ信号を生成する。表示制御部28は、画像処理部27で生成されたビデオ信号に対して、マスク生成やキャラクタ情報付加などの各種画像処理を施し、これをモニタ16に表示させる。
【0035】
CPU29は、プロセッサ装置12の全体の動作を統括的に制御する。CPU29には、各種設定や操作を行うための操作卓30が接続されている。CPU29は、操作卓30から入力される操作入力信号に応じて、プロセッサ装置12の各部を動作させる。
【0036】
湾曲部13bには、流体アクチュエータ31が組み込まれている。流体アクチュエータ31には、CPU24により駆動制御されるドライバ32が接続されている。CPU24は、ジョイスティック14bからの操作入力信号に応じた駆動制御信号を生成し、これをドライバ32に出力する。ドライバ32は、CPU24からの駆動制御信号に基づいて、流体アクチュエータ31を動作させる。
【0037】
図3および図4において、湾曲部13bは、ゴム材などの伸縮自在な材料からなる外皮層40で覆われている。なお、流体アクチュエータ31が組み込まれた外皮層40の部分をゴム材などの伸縮自在な材料から構成し、その他の部分を伸縮はしないが屈曲自在なビニル材などから構成してもよい。
【0038】
流体アクチュエータ31は、挿入部13の軸中心に関して対称な上下位置に配され、図の平衡状態で同じ体積を有する二つの流体室41a、41bと、各流体室41a、41b間を繋ぐ連結路42とを有する。流体室41a、41bは、断面略矩形形状を有し、挿入部13の軸方向に沿って長く、また、挿入部13の軸方向に垂直な断面を略四等分した領域内に、挿入部13の周方向に沿って設けられている。
【0039】
連結路42は、略円筒形状を有し、その中心が挿入部13の軸中心に一致するように設けられている。連結路42を構成する連結部材43は、弾性変形をしない硬質な材料、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン、チタン合金といった金属や、炭素繊維、あるいはプラスチックなどの樹脂材料からなり、変形しないような充分な厚さを有している。
【0040】
流体室41a、41b、および連結路42には、流体44が密閉収容されている。流体44は、例えば、生理食塩水、水、空気、窒素、またはアルゴンやヘリウムなどの希ガスのうちのいずれかからなる。流体44は、連結路42を介して、流体室41a、41b間を移動可能となっている。
【0041】
なお、流体室41a、41bは同様の構成を有するので、以下、流体室41aについてのみ説明し、流体室41bには、流体室41aと同様の符号に「b」を付す。
【0042】
流体室41aは、二種類の弾性部材45a、46aから構成されている。弾性部材45aは、流体室41aの外皮層40側の上面(すなわち、連結路42が設けられた流体室41aの下面52aに対向する面)47a、および挿入部13の軸方向と周方向で対向する四側面48a〜51a(50a、51aは図4参照)を形成し、伸縮自在な材料、例えば、シリコンゴム、ポリウレタンゴム、またはラテックスゴムのうちのいずれかからなる。弾性部材46aは、連結路42が設けられた流体室41aの下面52aを形成し、伸縮はしないが湾曲自在な材料、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン、チタン合金といった金属や、炭素繊維、あるいはプラスチックなどの樹脂材料からなり、湾曲するように薄めの厚さを有している。
【0043】
流体室41aの上下面47a、52a、すなわち弾性部材45aの上面、および弾性部材46aの下面(連結路42が形成された部分を除く。)には、略同じサイズを有する一対の電極53a、54aが取り付けられている。電極53a、54aは、弾性部材45a、46aが弾性変形することが可能なように、伸縮または湾曲自在な材料、例えば、炭素微粒子を混ぜた高分子材料などからなる。
【0044】
電極53a、54aには、ドライバ32内の可変電圧源55aに繋がる配線56aが接続されている。可変電圧源55aは、CPU24からの駆動制御信号に基づいた電圧を発生させ、これを電極53a、54a間に印加する。なお、図4の符号57で示す流体室41a、41bと連結路42との間の隙間には、鉗子チャネルや送気・送水管、CCD21に接続されるケーブルなどが挿通される。
【0045】
上記のように構成された電子内視鏡システム2で被検体内を観察する際には、電子内視鏡10、プロセッサ装置12、および照明装置の電源を投入して、挿入部13を被検体内に挿入し、照明窓22から照射される光で被検体内を照明しながら、CCD21により得られる画像をモニタ16で観察する。
【0046】
対物光学系20から取り込まれた被観察部位の像光は、CCD21の撮像面に結像され、これによりCCD21から撮像信号が出力される。CCD21から出力された撮像信号は、AFE26でデジタルの映像信号に変換され、コード11を介してプロセッサ装置12の画像処理部27に入力される。
【0047】
画像処理部27では、AFE26からのデジタルの映像信号に対して、各種信号処理が施され、これによりデジタルのビデオ信号が生成される。画像処理部27で生成されたビデオ信号は、表示制御部28で各種画像処理が施され、モニタ16に画像として表示される。
【0048】
続いて、流体アクチュエータ31の動作について、図5を参照して説明する。まず、ジョイスティック14bが、図1に示すニュートラル位置にある場合は、予め設定された基準電圧が、可変電圧源55a、55bから電極53a、54a間、電極53b、54b間にそれぞれ印加される。基準電圧は、電圧の印加により電極53a、54a間、電極53b、54b間に働く静電引力と、流体室41a、41bの内壁に加わる流体44の流体圧とが互いに打ち消し合い、流体アクチュエータ31が図3および図4に示す平衡状態となるような値に設定されている。これにより、湾曲部13bがいずれの方向にも湾曲しない真っ直ぐな状態に保持される。
【0049】
一方、ジョイスティック14bが、図1に示す「DOWN」側に操作され、先端部13aの方向を下側に向ける指示がなされると、この操作入力信号に応じた駆動制御信号がCPU24で生成され、ドライバ32に出力される。
【0050】
ドライバ32では、CPU24からの駆動制御信号に基づいて、可変電圧源55bの電圧が基準電圧より大きい値に変化される。このときの電圧の変化量は、ジョイスティック14bの操作量の大小に応じて決定される。
【0051】
可変電圧源55bの電圧が基準電圧より大きくなると、図3および図4に示す平衡状態が崩れ、電極53b、54b間の静電引力が流体室41a、41bの内壁に加わる流体44の流体圧よりも大きくなる。これにより、図5に示すように、弾性部材45bと弾性部材46b、すなわち流体室41bの上下面47b、52bが互いに引き寄せられ、中央部が凹むように上面47bが弾性変形し、また、下面52bが上面47b側に湾曲する。そして、この上下面47b、52bの弾性変形に伴い、流体室41bの体積が減少し、流体室41b内の流体44が、連結路42を介して流体室41a側に押し出される。
【0052】
流体室41bの流体44が流体室41a側に押し出されると、押し出された流体44の流体圧によって、弾性部材45a、すなわち流体室41aの上面47aが、中央部が凸になるように弾性変形する。また、弾性部材46a、すなわち流体室41aの下面52aが、流体室41b側に湾曲する。そして、この上下面47b、52bの弾性変形に伴い、流体室41aの体積が膨張する。
【0053】
上記のようにして流体室41a、41bの体積が変化し、この体積の変化による流体室41a、41bの形状に倣って、軟質部41が弾性変形する。これにより、湾曲部13bが下側に湾曲し、したがって先端部13aが下側に向けられる。なお、ジョイスティック14bが、図1に示す「UP」側に操作された場合は、上記一連の動作とは逆に、流体室41aの体積が減少され、流体室41bの体積が膨張される。
【0054】
以上説明したように、電子内視鏡10は、電極53a、54a間、または電極53b、54b間の静電引力を利用して、流体室41a、41bの体積を変化させることで、湾曲部13bを湾曲させる流体アクチュエータ31が組み込まれているので、ワイヤを用いた従来の方法と比べて、所望の方向に容易に湾曲部13bを湾曲させることができる。また、可変電圧源55a、55bのみで流体アクチュエータの駆動制御を行うことができ、ポンプやコンプレッサなどの大掛かりな装置が不要となる。
【0055】
また、流体アクチュエータ31は、一般的なゴム成型技術を用いて容易に小型のものを作成することができるので、挿入部13の細径化に寄与することができる。
【0056】
上記実施形態では、断面略矩形形状の流体室41a、41bを例示して説明したが、図6に示す流体アクチュエータ60のように、連結路42から遠ざかるに連れて電極53a、54a、および電極53b、54b間の幅が狭くなるように形成された流体室61a、61bを用いてもよい。このようにすれば、電極間が幅狭となった端部のほうが、幅広となった中央部よりも静電引力が働くため、端部から中央部へと搾るように流体44が押し出され、流体44を効率よく移動させることができる。
【0057】
上記実施形態では、二つの流体室41a、41bを有する流体アクチュエータ31を用いて、上下の二方向に湾曲部13bを湾曲させる例を挙げて説明したが、流体室は二つ以上であってもよく、例えば、図7に示す流体アクチュエータ70のように、三つの流体室71a〜71cを挿入部13の周方向に関して120°毎に設け、三方向に湾曲可能なように構成してもよい。なお、煩雑を避けるため、弾性部材や電極などの図示は省略する。
【0058】
この場合、流体室71a〜71cを繋ぐ連結路72は、流体室71a〜71c間を等距離で繋ぐように形成されている。これにより、各流体室71a〜71c間を流体44が移動する際に、いずれかの流体室に流体圧が偏ることがなく、同じ駆動条件で、三方向で同じ湾曲量を得ることができる。なお、この場合も上記実施形態と同様に、流体室71a〜71cと連結路72との間の隙間73には、鉗子チャネルや送気・送水管、CCD21に接続されるケーブルなどが挿通される。
【0059】
なお、湾曲部13bは、上記実施形態のように一箇所だけでなく、挿入部13の軸方向に亘って複数箇所設けてもよい。この場合、例えば、図8(A)に示すように、湾曲部13bを二箇所設け、この二箇所の湾曲部13bに組み込まれた二つの流体アクチュエータ31の電極53a、54a、53b、54b同士をそれぞれ配線で繋ぎ、上記実施形態と同様に、電極53a、54a間、電極53b、54b間に可変電圧源55a、55bで電圧を印加するようにすれば、二箇所の湾曲部13bを、同じ湾曲量で同じ方向に湾曲させることができる。また、当然ながら、湾曲部13bが一箇所の場合と比べて、湾曲量を大きくすることができる。
【0060】
あるいは、(B)に示すように、二つの流体アクチュエータ31を個別に駆動制御するようにすれば、二箇所の湾曲部13bを、異なる湾曲量で異なる方向に湾曲させることができる。さらに、(C)に示すように、二つの流体アクチュエータ31を、挿入部13の周方向に関して、例えば90°向きを違えて配置し、左側の流体アクチュエータ31で、矢印で示す上下方向の湾曲動作を、右側のアクチュエータ31で紙面に垂直な左右方向の湾曲動作をそれぞれ行わせるようにすれば、先端部13aを上下左右方向に向けることができる。
【0061】
上記実施形態では、電極間の静電引力を利用して、流体室の体積を変化させるための圧力を発生させているが、本発明はこれに限定されず、例えば、図9〜図13に示す流体アクチュエータ80、90、100を用いてもよい。
【0062】
図9において、流体アクチュエータ80は、流体室41a、41bの上下面47a、52a、47b、52bに、圧電素子81がアレイ状に複数配設された構成を有する。ここで、圧電素子81をアレイ状に配設するのは、弾性部材45a、45b、46a、46bの弾性変形を可能とするためである。
【0063】
圧電素子81は、圧電体82、および圧電体82を挟む一対の電極83からなる。一対の電極83には、可変電圧源84に繋がる配線85が接続されている。流体アクチュエータ80を動作させる際には、可変電圧源84から一対の電極83間に電圧を印加し、これにより生じた圧電体82の圧電効果による伸縮力を利用して、流体室41a、41bの体積を変化させる。なお、図では、四個の圧電素子81についてのみ可変電圧源84および配線85が描かれているが、実際には、全ての圧電素子81に対して可変電圧源84および配線85が設けられている。
【0064】
図10および図11において、流体アクチュエータ90は、流体室41a、41bの上面47a、47bに、導電性高分子アクチュエータ(以下、高分子アクチュエータと略す。)91が取り付けられた構成を有する。高分子アクチュエータ91は、弾性部材45a、45bが弾性変形することが可能な程度の弾性を有する。
【0065】
高分子アクチュエータ91は、例えば、テトラフルオロほう酸またはトリフルオロメタンスルホン酸をドープしたポリピロール膜からなる。挿入部13の周方向に対向する高分子アクチュエータ91の両端には、可変電圧源92に繋がる配線93が接続されている。流体アクチュエータ90を動作させる際には、可変電圧源92から高分子アクチュエータ91に電圧を印加し、これにより生じたイオンの出入りによる高分子鎖のコンフォメーション変化で発生される伸縮力を利用して、弾性部材45a、45bを伸縮させ、流体室41a、41bの体積を変化させる。
【0066】
図12および図13に示す流体アクチュエータ100は、連結路101が設けられた部分、挿入部13の軸方向に亘る連結路101の延長線上にある部分、および挿入部13の軸方向に対向する側面102a、103a、102b、103bを除く流体室104a、104bの略全面に取り付けられた高分子アクチュエータ105からなる。この場合、流体室104a、104bは、弾性部材45a、45bと同様の伸縮自在な弾性部材106a、106bのみからなる。図10および図11の流体アクチュエータ90の場合と同様に、挿入部13の周方向に対向する高分子アクチュエータ105の両端に可変電圧源107に繋がる配線108が接続され、可変電圧源107から高分子アクチュエータ105に電圧を印加することで発生される伸縮力を利用して、弾性部材106a、106bを伸縮させ、流体室104a、104bの体積を変化させる。
【0067】
なお、上記実施形態で示した構成は一例であり、流体室の形状や電極の配設箇所、弾性部材の配置などは、適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、流体アクチュエータ31の駆動を制御するためのドライバ32を電子内視鏡10の操作部14に設けているが、プロセッサ装置12に設けてもよい。また、ジョイスティック14bの代わりに、アングルノブなどの他の操作部材を用いてもよい。
【0068】
上記実施形態では、医療診断用の電子内視鏡に流体アクチュエータを適用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、超音波トランスデューサおよびCCDが先端部に一体的に配された超音波内視鏡や、工業用配管内を検査するための検査スコープについても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】電子内視鏡システムの構成を示す概略図である。
【図2】電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図3】流体アクチュエータの構成を示す拡大断面図である。
【図4】流体アクチュエータの構成を示す拡大断面図である。
【図5】流体アクチュエータにより湾曲部が湾曲した状態を示す拡大断面図である。
【図6】流体アクチュエータの別の実施形態を示す拡大断面図である。
【図7】流体アクチュエータの配置例を示す拡大断面図である。
【図8】流体アクチュエータの配置例を示す図であり、(A)は、二箇所の湾曲部を同じ湾曲量で同じ方向に湾曲させる例、(B)は、二箇所の湾曲部を異なる湾曲量で異なる方向に湾曲させる例、(C)は、二箇所の湾曲部をそれぞれ上下、左右方向に湾曲させる例をそれぞれ示す。
【図9】圧電素子を用いた流体アクチュエータを示す拡大断面図である。
【図10】導電性高分子アクチュエータを用いた流体アクチュエータを示す拡大断面図である。
【図11】図10に示す流体アクチュエータを示す拡大断面図である。
【図12】導電性高分子アクチュエータを用いた流体アクチュエータの別の実施形態を示す拡大断面図である。
【図13】図12に示す流体アクチュエータを示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0070】
2 電子内視鏡システム
10 電子内視鏡
13 挿入部
13b 湾曲部
14b ジョイスティック
31、60、70、80、90、100 流体アクチュエータ
32 ドライバ
41a、41b、61a、61b、71a〜71c、104a、104b 流体室
42、72、101 連結路
43 連結部材
44 流体
45a、46a、45b、46b、106a、106b 弾性部材
47a、47b 上面
52a、52b 下面
53a、54a、53b、54b、83、93 電極
55a、55b、84、94、107 可変電圧源
57、73 隙間
81 圧電素子
82 圧電体
91、105 導電性高分子アクチュエータ(高分子アクチュエータ)
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100075281
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 和憲

【識別番号】100095234
【弁理士】
【氏名又は名称】飯嶋 茂

【識別番号】100117536
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英了


【公開番号】 特開2008−5888(P2008−5888A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−176538(P2006−176538)