| 【発明の名称】 |
超音波診断装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】篠村 隆一
【氏名】浅房 勝徳
【氏名】永田 達也
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| 【要約】 |
【課題】振動素子に生じる超音波送受感度の歪みを修正して超音波像のS/Nを向上させる。
【構成】超音波診断装置は、超音波探触子10と、送信回路12と、受信回路14と、画像処理手段16と、モニタ18とを備え、超音波探触子10は、超音波と電気信号を相互に変換する複数の振動素子22,が配列され、各振動素子22は、対向する電極22aと電極22bの間に絶縁膜22cとギャップ22dを有し、前記電極間に印加されるバイアスの大きさに応じて超音波送受信感度が変化するものとし、振動素子22の電極間に印加されたバイアスの極性を予め定めた契機で反転させるバイアス極性変更手段26を有する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検体との間で超音波を送受する超音波探触子と、該超音波探触子に駆動信号を供給する送信手段と、前記超音波探触子から出力される受信信号を処理する受信手段と、該受信手段から出力される信号に基づき超音波像を再構成する画像処理手段と、前記超音波像が表示される表示手段とを備え、 前記超音波探触子は、超音波と電気信号を相互に変換する複数の振動素子が配列され、前記各振動素子は、対向する二つの電極間に絶縁膜とギャップを有し、前記電極間に印加されるバイアスの大きさに応じて超音波送受信感度が変化するものとし、 前記振動素子の電極間に印加されたバイアスの極性を反転させるバイアス極性変更手段を有することを特徴とする超音波診断装置。 【請求項2】 前記バイアス極性変更手段は、装置電源が投入された際に前記電極間に印加されたバイアスの極性を反転させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。 【請求項3】 前記バイアス極性変更手段は、撮像モードの切替指令に応じて、前記電極間に印加されたバイアスの極性を反転させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。 【請求項4】 前記バイアス極性変更手段は、前記超音波探触子で送受される超音波ビームのフォーカス点の変更指令に応じて、前記電極間に印加されたバイアスの極性を反転させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、被検体の診断画像として超音波像を撮像する超音波診断装置に関する。 【背景技術】 【0002】 被検体の診断画像を撮像する超音波診断装置は、超音波探触子から被検体に超音波を送波し、被検体内で反射したエコーを超音波探触子で受波し、超音波探触子から出力される信号に基づき超音波像が構成される。 【0003】 このような超音波診断装置の超音波探触子は、超音波と電気信号を相互に変換する複数の振動素子が配列されている。ここでの振動素子として、対向する二つの電極間に絶縁膜とギャップを有し、電極間に印加されるバイアスの大きさに応じて超音波送受感度を調整可能な例えばcMUT(Capative Micromachined Ultrasonic Transducer)が知られている。 【0004】 cMUTに代表される振動素子は、半導体プロセスによる加工技術で形成されるため、単一素子の大きさが微細である。したがって、超音波像を撮像するのに必要な信号強度を確保するために、複数の振動素子を複数の組に分けて接続し、組単位で超音波を送受することが行われている(例えば、特許文献1)。 【0005】 【特許文献1】US2004−0160144号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 ところで、被検体と超音波探触子との間で超音波を送受するに際し、振動素子の電極間にバイアスを印加すると、電極間に挟まれた絶縁膜などに微量のリーク電流が流れることがある。すなわち、直流バイアスの印加に起因して絶縁膜などに微量の電荷が注入されることがある。絶縁膜などに注入された電荷は、バイアスの印加を遮断しても残存して徐々に蓄積する。その蓄積電荷に起因して電極間の電界強度が変化すると、振動素子の超音波送受感度に経時的な歪みが生じることがある。その場合、振動素子の送受超音波に含まれる高調波成分が増大する結果、超音波像のS/N(signal to nose ratio)が劣化するおそれがある。このような絶縁膜などの蓄積電荷に起因した振動素子の送受感度の歪みについては特許文献1などは考慮しておらず、改善の余地がある。 【0007】 本発明の課題は、振動素子に生じる超音波送受感度の歪みを修正して超音波像のS/Nを向上させるのにより好適な超音波診断装置を実現することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記課題を解決するため、本発明の超音波診断装置は、被検体との間で超音波を送受する超音波探触子と、該超音波探触子に駆動信号を供給する送信手段と、前記超音波探触子から出力される受信信号を処理する受信手段と、該受信手段から出力される信号に基づき超音波像を再構成する画像処理手段と、前記超音波像が表示される表示手段とを備え、前記超音波探触子は、超音波と電気信号を相互に変換する複数の振動素子が配列され、前記各振動素子は、対向する二つの電極間に絶縁膜とギャップを有し、前記電極間に印加されるバイアスの大きさに応じて超音波送受信感度が変化するものとし、前記振動素子の電極間に印加されたバイアスの極性を予め定めた契機で反転させるバイアス極性変更手段を有することを特徴とする。 【0009】 すなわち、振動素子の絶縁膜などに電荷が蓄積した場合、その蓄積電荷は、振動素子の電極間に印加されたバイアスに応じた極性(正負)を有する。したがって、電極間に所定の契機で逆極性のバイアスを印加すると、その逆極性のバイアスにより蓄積電荷が中和される。このように逆極性のバイアスにより絶縁膜などの蓄積電荷を打ち消すことにより、蓄積電荷に起因する振動素子の送受感度の歪みが修正される。その結果、振動素子の送受超音波に含まれる高調波成分が低減するので、超音波像のS/Nが向上する。 【0010】 この場合において、前記バイアス極性変更手段は、装置電源が投入された際に前記電極間に印加されたバイアスの極性を反転させる。これにより、超音波撮像シーケンスに影響を与えずに振動素子の蓄積電荷を定期的に中和できる。 【0011】 また、本発明の一態様によれば、前記バイアス極性変更手段は、撮像モードの切替指令に応じて前記電極間に印加されたバイアスの極性を反転させる。また、前記バイアス極性変更手段は、前記超音波探触子で送受される超音波ビームのフォーカス点の変更指令に応じて前記電極間のバイアスの極性を反転させる。 【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、振動素子に生じる超音波送受感度の歪みを修正して超音波像のS/Nを向上させるのにより好適な超音波診断装置を実現できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 (第一の実施形態) 本発明を適用した超音波診断装置の第一の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の超音波診断装置の構成を示す図である。 【0014】 図1に示すように、被検体の診断画像を撮像する超音波診断装置は、被検体との間で超音波を送受する超音波探触子10と、超音波探触子10に駆動信号を供給する送信回路12と、超音波探触子10から出力される受信信号を処理する受信回路14と、受信回路14から出力される信号に基づき超音波像を再構成する画像処理手段16と、超音波像が表示される表示手段としてのモニタ18などを備えている。 【0015】 ここでの超音波探触子10は、超音波と電気信号を相互に変換する複数の振動素子(例えば、振動素子22,24)が配列されている。振動素子22は、対向する電極22a,22bの間に絶縁膜22cとギャップ22dを有する。例えば、振動素子22として、cMUT(Capative Micromachined Ultrasonic Transducer)を適用できる。この振動素子22は、電極22a,22bの間に印加されるバイアスの大きさに応じて超音波送受信感度が変化する。なお、振動素子24も同様である。 【0016】 そして、本実施形態の超音波診断装置は、振動素子22,24の電極間に印加されたバイアスの極性(正負)を予め定めた契機で反転させるバイアス極性変更手段26が配設されている。例えば、バイアス極性変更手段26は、装置電源が投入された際や、撮像モードが切り替えられた際や、超音波ビームのフォーカス点が変更された際に、振動素子22,24の電極間に逆極性のバイアスを印加する。 【0017】 すなわち、絶縁膜22c,24cなどに電荷が蓄積した場合、その蓄積電荷は、振動素子22,24の電極間に印加されるバイアスに応じた極性(正負)を有する。したがって、振動素子22,24の電極間に所定の契機で逆極性のバイアスを印加することにより、絶縁膜22c,24cなどに蓄積された電荷が中和される。このように逆極性のバイアスにより絶縁膜22c,24cなどの蓄積電荷を打ち消すことにより、蓄積電荷に起因する振動素子22,24の送受感度の歪みが修正される。その結果、振動素子22,24の送受超音波に含まれる高調波成分が低減するため、超音波像のS/Nが向上する。 【0018】 より詳細に、本実施形態の超音波診断装置について説明する。超音波診断装置は、本体部に超音波探触子10が接続されている。超音波探触子10は、複数の振動素子(例えば、振動素子22,24)が配設されている。振動素子22,24は、半導体プロセスによる微細加工(例えば、MEMS(Mirco Electro Mechanical System)技術)によってシリコンなどから形成された例えばcMUTである。 【0019】 図1に示すように、振動素子22は、振動膜としての絶縁膜22cと、絶縁膜22cに形成された上部電極としての電極22aと、半導体基板の表面に形成された下部電極としての電極22bとを有する。絶縁膜22cは、例えば導電率1011〜1014Ω/mを有し、短絡を防止する。電極22aは、電極22bに対してギャップ22dを介して対向して配置されている。また、絶縁膜22cを半導体基板に支持するリム22eが形成されている。リム22eは、絶縁膜22cと電極22bとの間の空間をギャップ22dとして区画する環状部材である。また、ギャップ22dは、真空状態又は所定のガスが充填された状態にされている。 【0020】 このような振動素子22は、電気的にいわばコンデンサの構造を有する。より具体的には、振動素子22は、電極22aと電極22bの間にDCバイアスが印加されると、ギャップ22dに電界が発生し、その電界強度に由来して絶縁膜22cが緊張する。そして、超音波周波数を有するACパルスが振動素子22に印加されると、絶縁膜22cが励振して超音波が射出される。また、振動素子22は、絶縁膜22cが緊張した状態で被検体から超音波が入波した際は、絶縁膜22cが励振される結果、コンデンサの容量に対応するギャップ22dの容量が変化し、その容量変化が電気信号として取り出される。すなわち、振動素子22は、印加バイアスの大きさに応じて絶縁膜22cの緊張度が制御可能なもの、つまり超音波送受感度が調整可能なものである。なお、振動素子22を中心に説明したが、振動素子24も同様である。 【0021】 一方、超音波診断装置の本体部は、送信回路12、受信回路14、画像処理手段16、モニタ18、操作卓32、制御手段34などを有する。送信回路12及び受信回路14は、送受分離回路28を介して超音波探触子10に接続している。ここでの送信回路12は、駆動信号としての超音波送信パルスを送受分離回路28を介して超音波探触子10に供給する。受信回路14は、超音波探触子10から出力された超音波受信パルスを送受分離回路28を介して受信し、受信信号に対して増幅処理や整相加算処理を施す。画像処理手段16は、受信回路14から出力された信号に基づき超音波像(例えば、Bモード像、CFMモード像、ドプラ像)を再構成する。モニタ18は、画像処理手段16から出力された超音波像が表示画面に表示される。操作卓32は、操作者と装置のユーザインターフェースである。例えば、操作卓32は、キーボードやスイッチを介して、装置電源の投入指令や、撮像モードの切り替え指令や、送波フォーカス点の深度の変更指令などが入力される。また、制御手段34は、各構成部に制御指令を出力する。 【0022】 そして、本実施形態の本体部は、DCバイアス電源30とバイアス極性変更手段26が配設されている。DCバイアス電源30は、超音波探触子10の振動素子22,24にDCバイアスを印加する。バイアス極性変更手段26は、振動素子22,24の電極間に所定の契機で逆極性のバイアスを印加させる指令をDCバイアス電源30に出力する。 【0023】 図2は、DCバイアス電源30の構成を示す図である。図2に示すように、DCバイアス電源30は、DC電源36,38と、スイッチ40と、スイッチ制御手段42を有する。DC電源36は、DC電源38に対して逆極性つまり正負が反対のものである。スイッチ40は、DC電源36,38を切り替えて超音波探触子10に接続する。スイッチ制御手段42は、バイアス極性変更手段26の出力指令に応じてスイッチ40を切り替える。ここでのスイッチ制御手段42は、例えば、トリガごとにパルスの極性を変えるトグルスイッチである。 【0024】 以下、DCバイアス電源30とバイアス極性変更手段26の動作についてより具体的に説明する。図3は、DCバイアス電源30の動作を示すタイムチャートである。 【0025】 <実施例1> 本実施例は、装置電源が投入された際に、振動素子22,24の電極間に印加するバイアスの極性を反転させる例である。 【0026】 図3(A)に示すように、まず、装置の電源オンがn回目のとき、DCバイアス電源30は、バイアス極性変更手段26の指令に応じ、振動素子22,24に正のバイアスを印加する。具体的には、DCバイアス電源30のスイッチ制御手段42は、スイッチ40をDC電源36に接続する。装置の電源がオフにされると、DCバイアス電源30は、振動素子22,24に対するバイアスの印加を停止する。そして、装置の電源が再びオンにされたとき、DCバイアス電源30は、バイアス極性変更手段26の指令に応じ、振動素子22,24に負のバイアスを印加する。具体的には、DCバイアス電源30のスイッチ制御手段42は、スイッチ40をDC電源38に切り替えて接続する。すなわち、本実施例は、装置の電源オンがn回目のときは、振動素子22,24に正のバイアスが印加されるが、装置の電源オンが(n+1)回目のときは、振動素子22,24に負のバイアスが印加される。 【0027】 本実施例によれば、装置の電源オンがn回目のときに絶縁膜22c,24cなどに正の電荷が蓄積しても、装置の電源オンが(n+1)回目のときに、絶縁膜22c,24cなどの蓄積電荷が中和されることになる。したがって、絶縁膜22c,24cなどの蓄積電荷に起因する振動素子22,24の超音波送受感度の歪みが修正される。 【0028】 <実施例2> 本実施例は、装置の撮像モードが切り替えられた際に、振動素子22,24の電極間に印加するバイアスの極性を反転させる例である。 【0029】 図3(B)に示すように、まず、Bモードで超音波撮像が開始されるとき、DCバイアス電源30は、バイアス極性変更手段26の指令に応じ、振動素子22,24に正のバイアスを印加する。 【0030】 そして、BモードからCFM(Color Flow Mapping)モードに切り替える指令が操作卓32に入力されると、バイアス極性変更手段26は、操作卓32の入力指令に基づきバイアス反転指令を生成してDCバイアス電源30に出力する。DCバイアス電源30は、バイアス極性変更手段26の指令に応じ、振動素子22,24に負のバイアスを印加する。なお、CFMモードからBモードに戻す指令が操作卓32に入力されると、DCバイアス電源30は、バイアス極性変更手段26の指令に応じ、振動素子22,24に正のバイアスを再び印加する。 【0031】 本実施例によれば、撮像モードがBモードであるときに絶縁膜22c,24cなどに正の電荷が蓄積しても、BモードからCFMモードに変更される際に、絶縁膜22c,24cなどの蓄積電荷が中和されることになる。したがって、絶縁膜22c,24cなどの蓄積電荷に起因する振動素子22,24の超音波送受感度の歪みが修正される。 【0032】 <実施例3> 本実施例は、送波フォーカスの深度を変更した際に、振動素子22,24の電極間に印加するバイアスの極性を反転させる例である。 【0033】 図3(C)に示すように、まず、送波フォーカスの深度がF1に設定された場合、DCバイアス電源30は、バイアス極性変更手段26の指令に応じ、振動素子22,24に正のバイアスを印加する。具体的には、DCバイアス電源30のスイッチ制御手段42は、スイッチ40をDC電源36に接続する。 【0034】 そして、送波フォーカスの深度がF1よりも大きいF2に変更する指令が操作卓32に入力されると、バイアス極性変更手段26は、操作卓32の入力指令に基づきバイアス反転指令を生成してDCバイアス電源30に出力する。DCバイアス電源30は、バイアス極性変更手段26の指令に応じ、振動素子22,24に負のバイアスを印加する。また、送波フォーカスの深度をF1に戻す指令が操作卓32に入力されると、DCバイアス電源30は、バイアス極性変更手段26の指令に応じ、振動素子22,24に正のバイアスを再び印加する。 【0035】 本実施例によれば、送波フォーカスがF1がBモードであるときに絶縁膜22c,24cなどに正の電荷が蓄積しても、送波フォーカスがF1からF2に変更される際に、絶縁膜22c,24cなどの蓄積電荷が中和されることになる。したがって、絶縁膜22c,24cなどの蓄積電荷に起因する振動素子22,24の超音波送受感度の歪みが修正される。 【0036】 上述の実施例1〜実施例3によりDCバイアス電源30とバイアス極性変更手段26の動作を例示したが、これに限られるものではない。例えば、装置の電源投入ごとに印加バイアスの極性を反転する例を示したが、電源投入が2回されるごとに反転してもよいし、日単位又は時間単位で反転してもよい。また、撮像モードの切替指令が操作卓32に入力された際に印加バイアスを反転する例を示したが、撮像モードが自動的に切り替えられる場合は、その切替タイミングに追従して印加バイアスを反転してもよい。送波フォーカスの変更も同様に、送波フォーカスの深度が自動的に切り替えられる場合は、その切替タイミングに追従して印加バイアスを反転してもよい。 【0037】 なお、ここで図4を参照して振動素子の超音波送受感度の歪みについて補足説明をする。図4(A)は、超音波送信パルス電圧V(t)を横軸に示し、振動素子の送受感度p(v)を縦軸に示したグラフである。図4(B)は、超音波送信パルス電圧V(t)を横軸に示し、時間tを縦軸に示したグラフである。図4(C)は、時間tを横軸に示し、送受感度p(v)を縦軸に示したグラフである。 【0038】 まず、振動素子の電極間にDCバイアスを比較的短い時間だけ印加した場合は、超音波送信パルス電圧V(t)と送受感度p(v)の関係は、図4(A)の点線のようになる。図4(A)の点線は、横軸と縦軸の交差点つまりゼロ点を通過し、ゼロ点を基準とする点対称の線である。ここで図4(B)に示す正方向と負方向の振幅が同じ超音波送信パルス電圧を振動素子に印加すると、振動素子の送受感度は、図4(C)の点線に示すように、正方向と負方向の振幅がほぼ同じものになる。 【0039】 しかし、振動素子の電極間にDCバイアスを比較的長い時間にわたって印加すると、振動素子内の絶縁膜などに電荷が注入されるため、超音波送信パルス電圧V(t)と送受感度p(v)の関係は、図4(A)の実線に示すように、振動素子の送受感度極性に偏りつまり送受感度ドリフトが生じる場合がある。ここで図4(B)に示す超音波送信パルス電圧を振動素子に印加すると、振動素子の送受感度は、図4(C)の実線に示すように、正方向と負方向の振幅が異なる偏りつまり歪みを有したものになる。このような送受感度の歪みに起因して、振動素子の送受超音波に含まれる高調波成分が増大する場合がある。 【0040】 この点、本実施形態の超音波診断装置によれば、振動素子22,24の電極間に所定の契機で逆極性のバイアスを印加することにより、振動素子22,24の絶縁膜22c,24cなどに蓄積された電荷が中和されるから、振動素子22,24の送受感度の歪みが修正される。 【0041】 (第二の実施形態) 本発明を適用した超音波診断装置の第二の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態が第一の実施形態と異なる点は、フレネルフォーカス技術に本発明を適用したことにある。したがって、第一の実施形態と対応する箇所は同一符号を付す。 【0042】 まず、図5を参照してフレネルフォーカス技術の原理を説明する。図5に示すように、短軸方向に配列された複数の振動素子が複数の組に分けられる。便宜上、振動素子の組を振動子と称する。複数の振動子のうち所定の振動子からフォーカス点までの距離を基準距離と設定し、隣接素子とフォーカス点までの距離が基準距離に比べて半波長ずれた場合、隣接素子に付与する送信パルスの位相をπだけずらす。すなわち、各振動子からフォーカス点までの距離をλ/2単位で規格化する。 【0043】 各振動子に付与する位相データφは、数式1で表される。ここでは振動子の座標を(0,y)としている。また、rは、振動子からフォーカス点までの距離を示す。cは、音速を示す。fは、超音波周波数を示す。数式1から各振動子に付与するフォーカスデータは、数2式で表される。数式2のsign関数は「+1」又は「−1」の値を与える符号関数である。数式1及び数式2に示すように、隣接素子とフォーカス点までの距離が基準距離に比べて半波長(λ/2)以内のときは、隣接素子と基準素子に付与する送信パルスを同位相にする。このような技術がフレネルフォーカス技術である。 【0044】 (数式1)
(数式2)
【0045】 図6は、等分割の振動子に対してスイッチによりフレネル束ねを行う例である。図6に示すように、複数の振動素子が同じ幅の組に分けられている。それらの組を振動子A〜振動子Bと称する。振動子A〜振動子Bのそれぞれにスイッチ58が配設されている。ここでのスイッチ58は、振動子A〜振動子OをDCバイアス電源60のX端子又はY端子に切り替えて接続する。 【0046】 DCバイアス電源60は、DC電源36,38と、二つのスイッチ40と、スイッチ制御手段42を有する。DC電源36は、DC電源38に対して逆極性つまり正負が反対のものである。各スイッチ40は、DC電源36,38を切り替えてX端子又はY端子に接続する。 【0047】 例えば、図6に示す態様は、DCバイアス電源60のX端子にDC電源36が接続されているため、X端子に正のバイアスが印加される。またY端子にDC電源38が接続されているため、Y端子に負のバイアスが印加される。そして、振動子Aは、スイッチ58を介してY端子に接続されているため、負のバイアスが印加される。また振動子B,Cは、Y端子に接続されているため、正のバイアスが印加される。振動子D,E,Fは、Y端子に接続されているため、負のバイアスが印加される。振動子G,Hは、X端子に接続されているため、正のバイアスが印加される。振動子Iは、Y端子に接続されているため、負のバイアスが印加される。このようにスイッチ58により振動子A〜Oが正のバイアスが印加されるグループと負のバイアスが印加されるグループに束ねられる。 【0048】 ここで、振動素子として適用されるcMUTは、同一極性の駆動パルスが入力される際に逆極性のバイアスが印加されると、音響出力が逆極性になる特性を有する。したがって、隣接素子とフォーカス点までの距離が基準距離に比べて半波長ずれた場合、隣接素子に付与する送信パルスの位相を反転させることに代えて、各素子に印加するバイアスの極性を反転させることにより、各素子に同位相の送信パルスを付与しても超音波ビームをフォーカス点で絞ることができる。 【0049】 さらに、スイッチ58を切り替えることによりいわゆる長軸走査をすることができる。例えば、図6に示す態様は、振動子A〜振動子IがX端子又はY端子のいずれかに接続されているが、振動子J〜振動子OはX端子又はY端子のいずれとも未接続である。すなわち、本例の超音波口径は、振動子A〜振動子Iにより構成されている。そして、振動子A〜振動子Iで構成される口径で一走査線を形成した後、振動子AをX端子又はY端子を未接続にするとともに、振動子BをY端子に接続し、振動子C,DをX端子に接続し、振動子E,F,GをY端子に接続し、振動子H,IをX端子に接続し、振動子JをY端子に接続する。このような振動子B〜振動子Jで構成される口径で一走査線を形成する。このようにスイッチ58を制御することにより、長軸方向に1素子分だけ口径を移動できる。 【0050】 また、図7は、複数の振動素子を短軸方向に複数の組に分割した例である。図7に示すように、複数の振動素子が短軸方向に配列されている。それら振動素子の背面に複数の下部短軸共通電極62が形成されている。下部短軸共通電極62は、短軸方向に沿って並んで配列されている。また振動素子の表面側に上部長軸素子電極64が形成されている。このような下部短軸共通電極62及び上部長軸素子電極64にDCバイアスを印加するに際し、フォーカス点までの距離に基づきDCバイアスの極性を反転することにより、超音波ビームが短軸方向に絞られるため、振動素子の被検体側に音響レンズを配設したのと同様の効果が実現される。 【0051】 そして、図5〜図7に示した態様にも本発明を適用できる。すなわち、第一の実施形態で説明したように、振動素子としてのcMUTに印加するバイアスを所定の契機で反転させることにより、cMUTの絶縁膜などに対する電荷注入を軽減できる。 【0052】 例えば、図3(C)に示すように送波フォーカスの深度がF1である際は、スイッチ40,58が図6の態様にあるとする。その態様においては、振動子Aは、DCバイアス電源60のY端子に接続されることから、DCバイアス電源60のDC電源38から負のバイアスが印加される。振動子Bは、DCバイアス電源60のX端子に接続されることから、DCバイアス電源60のDC電源36から正のバイアスが印加される。 【0053】 そして、送波フォーカスの深度をF1からF2に変更する指令が操作者の意図に基づき操作卓32を介して入力されると、その入力を契機にしてバイアス極性変更手段26からDCバイアス電源60にバイアス反転指令が出力される。バイアス反転指令に応じてDCバイアス電源60のスイッチ制御手段42は、スイッチ40を切り替えることにより、X端子にDC電源36を接続するとともに、Y端子にDC電源38を接続する。これによって振動子Aは、正のバイアスが印加されるし、振動子Bは、負のバイアスが印加されることになる。すなわち、図6に示す態様に対して振動子A,Bに逆極性のバイアスが印加されることから、振動子A,Bの蓄積電荷を中和することができる。なお、振動子A,Bを中心に説明したが、他の振動子C〜Oも同様である。 【0054】 図8は、図6に示す態様の他の例であり、可変口径を適用した場合の態様を示す図である。図8に示すように、DCバイアス電源60は、グランド66が配設されている。すなわち、DCバイアス電源60のスイッチ制御手段42は、制御指令に応じてスイッチ40を切り替えることによりいわゆる可変口径を実現する。例えば、スイッチ制御手段42は、スイッチ40を切り替えることにより、X端子にDC電源38を接続するとともに、Y端子をグランド66に接続する。これによって振動子A〜Iのうち振動子C〜Gだけにバイアスが印加されるから、振動子C〜Gで口径が形成されることになる。このような可変口径を適用した態様の場合も同様に、口径を可変するタイミングに合わせて逆極性のバイアスを印加することにより、例えば振動子C〜Gに蓄積された電荷を中和できる。 【0055】 以上、第一及び第二の実施形態により本発明を説明したが、これに限られるものではない。例えば、図1の振動素子22に正のバイアスを印加した際の超音波送波出力と、振動素子22に負のバイアスを印加した際の超音波送波出力が異なる場合、その出力差を予め測定する。そして、測定した出力差がゼロになるように、DC電源36,38の各出力を予め調整するのが好ましい。すなわち、バイアスの極性を反転するに際し、振動素子22に付与した同じ超音波送信パルスに対して送波出力が異なる場合、その補正分をDCバイアス電源60に持たせるのがよい。 【図面の簡単な説明】 【0056】 【図1】本発明を適用した第一の実施形態の超音波診断装置の構成を示す図である。 【図2】図1のDCバイアス電源の構成を示す図である。 【図3】図1のDCバイアス電源の動作を示すタイムチャートである。 【図4】振動素子の超音波送受感度の歪みを説明する図である。 【図5】フレネルフォーカス技術の原理を説明する図である。 【図6】本発明を適用した第二の実施形態の構成を示す図である。 【図7】複数の振動素子を短軸方向に複数の組に分割した例である。 【図8】可変口径を適用した場合の態様を示す図である。 【符号の説明】 【0057】 10 超音波探触子 12 送信回路 14 受信回路 16 画像処理手段 18 モニタ 22 振動素子 22a,22b 電極 22c 絶縁膜 22d ギャップ 26 バイアス極性変更手段 30 DCバイアス電源
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| 【出願人】 |
【識別番号】000153498 【氏名又は名称】株式会社日立メディコ 【識別番号】000005108 【氏名又は名称】株式会社日立製作所
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| 【出願日】 |
平成18年6月27日(2006.6.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100098017 【弁理士】 【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
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| 【公開番号】 |
特開2008−5885(P2008−5885A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月17日(2008.1.17) |
| 【出願番号】 |
特願2006−176505(P2006−176505) |
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