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【発明の名称】 内視鏡用高周波切開具
【発明者】 【氏名】西村 幸

【要約】 【課題】高周波電極の金属露出不要部分を接着剤等を用いることなく生体に対して安全に且つ強度的に確実に電気絶縁して、粘膜剥離処置の際に切開が必要な生体組織だけを安全に高周波切開することができる内視鏡用高周波切開具を提供すること。

【構成】一対の高周波電極6が閉状態のときに互いに向かい合う各高周波電極6の対向位置に、対向方向に向かって突出する凸形の断面形状の電極刃部6bが前後方向に細長く形成されて、高周波電極6の電極刃部6bの突端対向面6cのみに金属面が露出し、高周波電極6のその他の面には全面に一つながりに不活性材からなる電気絶縁性コーティング皮膜10が被覆されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の処置具案内管に挿脱されるシースの先端に、前方に向かって開閉する導電金属製の一対の高周波電極が設けられた内視鏡用高周波切開具において、
前記一対の高周波電極が閉状態のときに互いに向かい合う前記各高周波電極の対向位置に、対向方向に向かって突出する凸形の断面形状の電極刃部が前後方向に細長く形成されて、前記高周波電極の電極刃部の突端対向面のみに金属面が露出し、前記高周波電極のその他の面には全面に一つながりに不活性材からなる電気絶縁性コーティング皮膜が被覆されていることを特徴とする内視鏡用高周波切開具。
【請求項2】
請求項1に記載された内視鏡用高周波切開具において、前記電極刃部が、一定の幅で真っ直ぐに形成されている内視鏡用高周波切開具。
【請求項3】
請求項1に記載された内視鏡用高周波切開具において、前記電極刃部が、開閉動作方向に対し垂直な面上又はその他の面上において湾曲した形状に形成されている内視鏡用高周波切開具。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載された内視鏡用高周波切開具において、前記電極刃部の幅が途中で変化している内視鏡用高周波切開具。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載された内視鏡用高周波切開具において、前記高周波電極が、前記電極刃部からその背部側に次第に幅が広がる略扇形の断面形状に形成されている内視鏡用高周波切開具。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載された内視鏡用高周波切開具において、前記電気絶縁性コーティング皮膜がフッ素樹脂コーティングである内視鏡用高周波切開具。
【請求項7】
請求項6に記載された内視鏡用高周波切開具において、前記フッ素樹脂コーティングの厚みが大半の部分で0.03mm〜0.1mmの範囲にある内視鏡用高周波切開具。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載された内視鏡用高周波切開具において、断面形状が凸形に形成された前記電極刃部の側面の段部において、前記電気絶縁性コーティング皮膜が局部的に溜まった状態に被覆されている内視鏡用高周波切開具。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載された内視鏡用高周波切開具において、前記各高周波電極の先端部分が略半円形の断向形状に形成されている内視鏡用高周波切開具。
【請求項10】
請求項9に記載された内視鏡用高周波切開具において、前記一対の高周波電極が閉じた状態では、前記一対の高周波電極の先端部分が合わさって外縁形状が略円形になる内視鏡用高周波切開具。
【請求項11】
請求項1から10の何れかに記載された内視鏡用高周波切開具において、前記高周波電極の電極刃部の突端対向面に前記電極刃部を横切る電極横断溝が形成されていて、その電極横断溝にも前記電気絶縁性コーティング皮膜が他の部分とつながった状態に被覆されている内視鏡用高周波切開具。
【請求項12】
請求項11に記載された内視鏡用高周波切開具において、前記電極横断溝が互いの間隔をあけて複数形成されている内視鏡用高周波切開具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の処置具案内管路内に通して使用される内視鏡用高周波切開具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡用高周波切開具としては、使用目的によって各種の形状のものがあるが、例えば粘膜剥離術を行うためのものとしては、シースの先端位置に前方に向かって並列に並んで配置された一対の高周波電極の電極刃を、シースの後端側からの遠隔操作で開閉することができるようにした鋏状の電極を有するものが用いられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】 特開2003−299667公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
内視鏡用高周波切開具を用いて粘膜剥離術を行う際には、予め内視鏡用高周波ナイフ等で表面が切開された粘膜の切開面に内視鏡用高周波切開具を差し込んでから、高周波電極に高周波電流を通電して、表面粘膜と筋層との間の筋等を切開する処置が行われる。しかし、前記のような従来の内視鏡用高周波切開具では、切開が本当に必要な部分の周囲まで高周波電流による焼灼が行われて、周囲の生体組織を大なり少なり損傷してしまう場合がある。
【0004】
そこで、一対の高周波電極の電極刃について、あい対向する部分だけ金属面を露出させて他の部分を電気絶縁材で覆うことが考えられるが、金属材の表面にセラミック等を接着剤で接合したり接着剤を盛り上げるような構造をとると、接着剤が高周波電流で加熱された時に分解して発生するガスの生体安全性の確保が難しい。そこで、金属材の表面にフッ素樹脂等の電気絶縁性コーティング皮膜を被覆することが考えられるが、そのような電気絶縁性コーティング皮膜は金属材の表面に対する接着性が低いので、机の角等にちょっとぶつかっただけで金属材から剥離して使い物にならなくなってしまう場合がある。
【0005】
本発明はそのような問題を解決するためになされたものであり、高周波電極の金属露出不要部分を接着剤等を用いることなく生体に対して安全に且つ強度的に確実に電気絶縁して、粘膜剥離処置の際に切開が必要な生体組織だけを安全に高周波切開することができる内視鏡用高周波切開具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内視鏡用高周波切開具は、内視鏡の処置具案内管に挿脱されるシースの先端に、前方に向かって開閉する導電金属製の一対の高周波電極が設けられた内視鏡用高周波切開具において、一対の高周波電極が閉状態のときに互いに向かい合う各高周波電極の対向位置に、対向方向に向かって突出する凸形の断面形状の電極刃部が前後方向に細長く形成されて、高周波電極の電極刃部の突端対向面のみに金属面が露出し、高周波電極のその他の面には全面に一つながりに不活性材からなる電気絶縁性コーティング皮膜が被覆されている。
【0007】
なお、電極刃部が、一定の幅で真っ直ぐに形成されていてもよく、開閉動作方向に対し垂直な面上又はその他の面上において湾曲した形状に形成されていてもよい。そして、電極刃部の幅が途中で変化していてもよい。また、高周波電極が、電極刃部からその背部側に次第に幅が広がる略扇形の断面形状に形成されていてもよく、電気絶縁性コーティング皮膜がフッ素樹脂コーティングであってもよい。そのフッ素樹脂コーティングの厚みは大半の部分で0.03mm〜0.1mmの範囲にあるとよい。また、断面形状が凸形に形成された電極刃部の側面の段部において、電気絶縁性コーティング皮膜が局部的に溜まった状態に被覆されていてもよく、各高周波電極の先端部分が略半円形の断面形状に形成されていてもよい。そして、一対の高周波電極が閉じた状態では、一対の高周波電極の先端部分が合わさって外縁形状が略円形になるようにしてもよい。また、高周波電極の電極刃部の突端対向面に電極刃部を横切る電極横断溝が形成されていて、その電極横断溝にも電気絶縁性コーティング皮膜が他の部分とつながった状態に被覆されていてもよく、電極横断溝が互いの間隔をあけて複数形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内視鏡用高周波切開具によれば、一対の高周波電極が閉状態のときに互いに向かい合う各高周波電極の対向位置に、対向方向に向かって突出する凸形の断面形状の電極刃部が前後方向に細長く形成されて、高周波電極の電極刃部の突端対向面のみに金属面が露出し、高周波電極のその他の面には全面に一つながりに不活性材からなる電気絶縁性コーティング皮膜が被覆されていることにより、高周波電極の金属露出不要部分を接着剤等を用いることなく生体に対して安全に且つ強度的に確実に電気絶縁して、粘膜剥離処置の際に切開が必要な生体組織だけを安全に高周波切開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の先端部分の側面断面図、図3はその平面図である。
1は、内視鏡の処置具案内管に挿脱自在な可撓性シースであり、ステンレス線を密着巻きしたコイルパイプにより形成されている。可撓性シース1の外周面には、電気絶縁性の可撓性チューブからなるシース外皮2が全長に被覆され、可撓性シース1の先端に固定的に取り付けられた先端口金3の外周にシース外皮2の先端が緊縛固定されている。4は、可撓性シース1内に緩く挿通された導電性の操作ワイヤーであり、可撓性シース1の基端に連結された操作部からの操作により、軸方向に進退させることができ、また軸周りに回転させることができる。
【0010】
5は、先端口金3に対して軸方向に移動することはできないが、軸周りに回転自在に先端口金3に連結された先端支持枠であり、先端支持枠5に形成されたスリット7の先端部分に、一対の高周波電極6が支軸8を中心に回動自在に前方に向かって開閉自在に支持されている。9は、高周波電極6を開閉駆動するための公知のリンク機構であり、操作ワイヤー4の先端がリンク機構に連結されている。その結果、操作部において操作ワイヤー4を進退操作すれば高周波電極6が支軸8を中心に開閉し、操作ワイヤー4を軸周りに回転操作すれば、先端支持枠5や高周波電極6等が一体となって先端口金3の軸周りに回転する。また、操作部側において操作ワイヤー4を高周波電源に接続することにより、操作ワイヤー4を経由して高周波電極6に高周波電流を通電することができる。図2には、一対の高周波電極6が開いた状態が示されているが、閉じた状態も二点鎖線で図示されている。なお、一対の高周波電極6の開閉駆動をリンク機構以外の機構で行ってもよい。
【0011】
図1と図4は高周波電極6の断面形状を示しており、図1は、図2に示されるA−A線における高周波電極6の中間部分の断面図、図4は、図2に示されるB−B線における高周波電極6の先端部分6aの断面図である。また、図5は高周波電極6の斜視図である。各高周波電極6には、一対の高周波電極6が閉じられた状態のときに互いに向かい合う位置(対向位置)に、一定の幅で対向方向に向かって突出する凸形の断面形状の細長い電極刃部6bが前後方向に真っ直ぐに形成されて、各高周波電極6の電極刃部6bの突端対向面6cのみに金属面が露出し、高周波電極6のその他の面には全面に一つながりに、例えばフッ素樹脂等のような化学的及び熱的に安定性が大きいいわゆる不活性の合成樹脂材からなる電気絶縁性コーティング皮膜10が被覆されている。電気絶縁性コーティング皮膜10の厚みは大半の部分で0.03mm〜0.1mm程度である。したがって、容易かつ安定した状態にコーティングすることができる。なお、電気絶縁性コーティング皮膜10部分は全図について砂目状に表示してある。
【0012】
各高周波電極6の先端部分6a以外の部分は、図1に示されるように、凸状に形成された電極刃部6b部分からその背部側に次第に幅が広がる略扇形の断面形状に形成されている。したがって、金属露出面6cで高周波切開される組織と干渉し難い。ただし、各高周波電極6の先端部分6aだけは、図4に示されるように略半円形の断面形状に形成されて、一対の高周波電極6が閉じた状態では、一対の高周波電極6の先端部分が合わさって外縁形状が略円形になる。したがって、生体組織に強く押し付けられた時でも機械的穿孔が発生し難くて安全である。
【0013】
図1に戻って、電気絶縁性コーティング皮膜10は高周波電極6の突端対向面6c以外の全面に一つながりに被覆されており、断面形状が凸形に形成された電極刃部6bの側面の段部6d部分を包み込む状態になっている。また、段部6dには、コーティング処理の際に溶融状態になっている電気絶縁性コーティング皮膜10が他の部分より厚く溜まった状態にコーティングされるので、その部分では電気絶縁性コーティング皮膜10の機械的強度が大幅にアップしている。その結果、電気絶縁性コーティング皮膜10は高周波電極6に対して段部6dで機械的に強固に係合しており、机の角等に少々ぶつかった程度では高周波電極6から剥離しない。
【0014】
このように構成された実施の形態の内視鏡用高周波切開具は、電極刃部6bの突端対向面6cのみが金属露出面になっていることにより、粘膜剥離処置の際に切開が必要な生体組織だけを安全に高周波切開することができ、しかも、電気絶縁性コーティング皮膜10が高周波電極6の段部6dに機械的に強固に係合しているので、接着剤等を用いることなく高周波電極6の突端対向面6c以外の部分の電気絶縁を確実に行うことができる。
【0015】
図6は本発明の第2の実施の形態の内視鏡用高周波切開具を示しており、図7はその高周波電極6の斜視図である。この実施の形態においては、高周波電極6の電極刃部6bの突端対向面6cに電極刃部6bを横切る電極横断溝6eが形成されていて、その電極横断溝6eにも電気絶縁性コーティング皮膜10が他の部分とつながった状態に被覆されている。その他の構成は前記の第1の実施の形態と同様である。なお、この実施の形態では電極横断溝6eが互いの間隔をあけて複数形成されているが、少なくとも一箇所に形成されていればよい。このように、電極刃部6bを横切る電極横断溝6eにも他の部分とつながった状態に電気絶縁性コーティング皮膜10が被覆されていることにより、その部分において電気絶縁性コーティング皮膜10が高周波電極6の周囲を完全に囲む状態になるので、高周波電極6に対する電気絶縁性コーティング皮膜10の係合状態が格段に強固になり、電気絶縁性コーティング皮膜10がより剥離し難くなる。
【0016】
図8は本発明の第3の実施の形態の内視鏡用高周波切開具を示しており、電極刃部6bが湾曲した形状に形成されている。より具体的に説明すると、電極刃部6bは、開閉動作方向に対し垂直な面(即ち、突端対向面6cと同一方向の面)上において高周波電極6共々湾曲した形状に形成されている。図8には一対の高周波電極6のうち一方しか図示されていないが、二つの電極刃部6bは各々の突端対向面6cが全長において対向する状態に湾曲している。このような構成の処置具を加えることにより、処置の目的や状況に応じた広い用途に対応することができるようになる。なお、電極刃部6bを、開閉動作方向に対し垂直な面上以外の面上において湾曲した形状に形成してもよい。
【0017】
なお本発明においては、図9に示される第4の実施の形態のように、電極刃部6bの幅を前後両端部又は中間部等で変化させてもよい。また、本発明は、一対の高周波電極6の間を電気絶縁して、高周波電源の正極と負極とに分けて接続するいわゆるバイポーラ型の内視鏡用高周波切開具に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の図2におけるA−A線における断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の先端部分の側面断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の先端部分の平面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の図2におけるB−B線における断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の高周波電極の斜視図。
【図6】本発明の第2の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の先端部分の側面断面図。
【図7】本発明の第2の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の高周波電極の斜視図。
【図8】本発明の第3の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の高周波電極の斜視図。
【図9】本発明の第4の実施の形態の内視鏡用高周波切開具の高周波電極の斜視図。
【符号の説明】
【0019】
1…可撓性シース
2…シース外皮
4…操作ワイヤー
6…高周波電極
6a…先端部分
6b…電極刃部
6c…突端対向面
6d…段部
6e…電極横断溝
8…支軸
10…電気絶縁性コーティング皮膜
【出願人】 【識別番号】597089576
【氏名又は名称】有限会社リバー精工
【出願日】 平成18年11月14日(2006.11.14)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−582(P2008−582A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−335104(P2006−335104)