| 【発明の名称】 |
電気掃除機 |
| 【発明者】 |
【氏名】亀山 浩幸
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| 【要約】 |
【課題】ブラシレスモータを搭載したインバータ掃除機において、回路効率の向上を図り、吸込仕事率を向上することを目的とする。
【構成】消費電力が予め設定した所定値であるとの条件の下で、コンバータ部2の昇圧回路により、昇圧を行わない場合に比べ交流電源1の力率が良くなるように直流電圧が昇圧された場合に、インバータ部4の電圧利用率が最大となるように、ブラシレスモータ3の電気定数を最適化設計する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 送風ファンを有し当該送風ファンを駆動するブラシレスモータを内蔵している電動送風機と、 前記ブラシレスモータ制御用の制御部と、 交流電源から供給される交流電圧を整流して直流電圧に変換するコンバータ部、及び該直流電圧を交流電圧に変換して当該交流電圧を前記ブラシレスモータに供給するインバータ部を有する電源部と、 を備えた電気掃除機において、 該電気掃除機の運転時に前記ブラシレスモータの消費電力が所定消費電力値となる運転負荷条件で前記インバータ部の電圧利用率が略最大となるように前記ブラシレスモータの電気定数を最適化設計するとともに、 前記コンバータ部に昇圧回路を設け該昇圧回路によって前記直流電圧を昇圧することによって前記交流電源の力率改善を行うことを特徴とする電気掃除機。 【請求項2】 前記インバータ部はPWM制御方式により前記ブラシレスモータの回転数を制御し、 前記ブラシレスモータの前記電気定数を、前記インバータ部の電圧利用率がPWMデューティ比100%において最大となるよう設計することを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。 【請求項3】 前記コンバータ部は、倍電圧整流を行うとともに、 前記昇圧回路は、前記電源部の前記交流電源側に直列に接続されたリアクトルを介して前記交流電源を強制的に短絡通電させる昇圧回路であることを特徴とする請求項1又は2記載の電気掃除機。 【請求項4】 前記リアクトルのインダクタンスが1〜3mHであることを特徴とする請求項3記載の電気掃除機。 【請求項5】 前記所定消費電力値は1000Wであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の電気掃除機。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、電気掃除機に関し、特にインバータ駆動によるブラシレスモータを用いた電気掃除機に関する。 【背景技術】 【0002】 従来の掃除機においては、コンパクトな形状で高い吸込み力を実現するために、高効率であって、回転数20000rpmを超える高速で回転する整流子モータと高速回転によって大きな吸い込み風量及び真空圧を発生する吸い込みファンとを一体化した送風機が使用されている。整流子モータは、回転子が巻線タイプの電機子であることから、電機子に設けられ高速回転する整流子に固定されたブラシが接触して、電流を供給する。 【0003】 家庭用電気掃除機の分野では、長年にわたって、電気掃除機の性能指標としてJISに基づく「吸込仕事率=真空度×風量×0.01666(W)」の向上が進められており、近年では、吸込仕事率500W以上に達している。その結果、掃除機の消費電力は、1000W程度に達している。 【0004】 消費電力を大きくすることにより、より大きな吸込仕事率を得ることも可能であるが、省エネルギー、安全性、ブレーカ容量の観点から、家庭用電気掃除機の現状以上の消費電力増加は限界に来ているため、吸込仕事率の向上も限界に来ている。 【0005】 掃除機の整流子モータにおいてはカーボンブラシが採用されている。ブラシと整流子が接触していることから、運転するにつれてブラシが消耗し、ブラシの屑であるカーボン微粒子が飛散する。掃除機外部にカーボン屑を放出しないためには、吸込用ファンモータの排気部にカーボン屑除去用のフィルタを設置する必要がある。 【0006】 カーボン屑除去用のフィルタの設置はコストアップ要因になるため、このようなフィルタに依存しない対策として整流子モータの代わりにブラシレスモータを搭載することが考えられる。ブラシレスモータを用いれば、カーボン微粒子が飛散しないことは自明である。特許文献1にはブラシレスモータを使用した掃除機が開示されている。 【0007】 電気掃除機において、消費電力と吸込仕事率の関係は、概ね、 吸込仕事率=消費電力×総合効率 ここで、総合効率=回路効率×モータ効率×ファン効率 と表すことができる。 消費電力の限界が1000Wであっても、回路効率、モータ効率及びファン効率の積で表された総合効率を向上させることにより、吸込仕事率を向上させることが可能である。 【0008】 図10に、消費電力を1000Wとした場合の整流子モータ掃除機とブラシレスモータ掃除機(従来例)の各部の効率と吸込仕事率の実験結果の一例を示す。 【0009】 ブラシレスモータを高速回転させるためには、高周波電源で駆動する必要がある。このため、交流電源から供給される交流電圧を整流して一旦直流電圧に変換したのち、直流電圧を高周波の交流電圧に変換するインバータ電源が必要である。このように、インバータ電源にて交直/直交の変換を行うため、通常、ブラシレスモータの駆動電源部の回路効率は整流子モータ駆動回路の回路効率より低下する。 【0010】 ブラシレスモータは、同程度の出力の整流子モータと比較してモータ効率は高いが、回路効率の低下がモータ効率の向上より大きいため、総合効率は低下し、消費電力を一定値に制限した場合、吸込仕事率が低下する。 【0011】 図10の例では、両者の回路効率には98%と83%で約15%の差があるため、整流子モータを搭載した掃除機が500Wの吸込仕事率であれば、ブラシレスモータを搭載した掃除機では425W程度に低下することになる。 【0012】 現在販売されている掃除機の実例でも、消費電力1000W程度の掃除機で、整流子モータを搭載した掃除機では吸込仕事率が500Wを超えるものが主流であるのに対し、ブラシレスモータを搭載した掃除機では吸込仕事率が500W以下にとどまっている。 【0013】 特許文献2には、掃除機に適したブラシレスモータが開示されている。これは、ブラシレスモータとして、チョッパ制御通流率100%で運転される領域を有するブラシレス直流モータを具備することによって、簡便に過負荷運転の防止、更には制御装置の回転指令値異常による高速回転の防止を図るものである。 【0014】 また、特許文献2において、この高速回転の防止以外の発明の効果として、負荷が大きくなる領域である許容入力上限値近傍では通流率が100%近くなるため、電流断続により生じる高調波成分が少ないことから、インバータ装置、ブラシレス直流モータを含むシステム効率が最良の状態となり、高負荷側で高効率とすることができ、例えば発熱を低減することができることが開示されている。 【0015】 しかしながら、この特許文献2は回路効率の具体的な向上策が実施例として記載されていないことから、当業者は、消費電力1000W程度の掃除機で、整流子モータを搭載した掃除機と同等の500Wを超える吸込仕事率を容易に実現することができない。 【0016】 特許文献3には、交流電流指令波形を使用せずに簡単な回路構成で交流電源を整流して直流に変換し、特に力率の改善を図った電源装置が開示されている。即ち、力率改善回路に用いられるスイッチング素子の動作を規定する通流比を、負荷状態情報に合わせて設定される係数と電源電流情報との積に基づいて作成し、その通流比でスイッチング素子を動作させている。 【特許文献1】特公平4−63685号公報(第3コラム第11行〜第4コラム第11行、第2図) 【特許文献2】特許第3039558号公報(第5コラム第23行〜第6コラム第8行、図4) 【特許文献3】特開平3−230759号公報(第6頁上右欄第1行〜下右欄第5行、第1図、第2図) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0017】 そこで、消費電力が予め設定された所定値である条件下で、コンバータ部の昇圧回路により直流電圧を昇圧した場合に、インバータ部の電圧利用率が最大となるように、ブラシレスモータの電気定数を最適化設計する点で解決すべき課題がある。 【0018】 本発明の目的は、インバータ制御され、かつ、整流子モータの持つカーボン屑飛散を解消した清潔なブラシレスモータを搭載した電気掃除機において、回路効率を向上することにより、総合効率を向上させ、整流子モータを採用した電気掃除機と同等ないしはそれ以上の吸込仕事率を実現することである。 【課題を解決するための手段】 【0019】 上記目的を達成するために、本発明による電気掃除機は、送風ファンを有し当該送風ファンを駆動するブラシレスモータを内蔵している電動送風機と、前記ブラシレスモータ制御用の制御部と、交流電源から供給される交流電圧を整流して直流電圧に変換するコンバータ部、及び該直流電圧を交流電圧に変換して当該交流電圧を前記ブラシレスモータに供給するインバータ部を有する電源部と、を備えた電気掃除機において、該電気掃除機の運転時に前記ブラシレスモータの消費電力が所定消費電力値となる運転負荷条件で前記インバータ部の電圧利用率が略最大となるように前記ブラシレスモータの電気定数を最適化設計するとともに、前記コンバータ部に昇圧回路を設け該昇圧回路によって前記直流電圧を昇圧することによって前記交流電源の力率改善を行うことを特徴としている。 【0020】 この電気掃除機によれば、掃除機の消費電力が掃除機の性能評価に採用される定格値である予め設定した所定値となるように制御した場合にインバータ部の電圧利用率が最大となるようにブラシレスモータの電気定数を最適化設計する、即ち、巻線形、巻数、マグネットと巻線の位置関係設定などの設計を行う、ことによりブラシレスモータの定格負荷時における回路効率を改善する。更に、コンバータ部に昇圧回路を採用し直流電圧を昇圧することにより交流電源の力率を改善し、回路効率を改善する。 【0021】 また、インバータ部は、ブラシレスモータの回転数をPWM方式により制御し、ブラシレスモータの電気定数を、PWMデューティ比100%でインバータ部の電圧利用率が最大となるよう設計することにより、ブラシレスモータの定格負荷時における回路効率を改善する。 【0022】 また、コンバータ部は、倍電圧整流を行い、電源側に直列に接続されたリアクトルを介して交流電源を強制的に短絡通電させる昇圧回路構成とすることにより回路効率を改善する。 【0023】 更に、具体的には、前記リアクトルのインダクタンスが1〜3mHとする。 【0024】 また、前記所定消費電力値は、1000Wとする。 【発明の効果】 【0025】 この発明による電気掃除機によれば、ブラシレスモータを用いることにより、従来の整流子モータを使用した電気掃除機で課題であった、ブラシの寿命が短いという問題やカーボン屑が発生するといった問題を解消することができる。また、ブラシレスモータを用いることにより、従来の整流子モータを使用した電気掃除機に比べモータ効率を向上することができる。 【0026】 昇圧回路により電源力率を大きく向上することが可能であるため、従来の昇圧回路なしのブラシレスモータ掃除機に比べ、リアクトルのインダクタンスを小さくできることから、リアクトルの軽量小型化が図れる。そのため、従来のブラシレスモータ掃除機に比べ、掃除機の軽量化が図れる。 【0027】 更に、予め設定した最大消費電力の全負荷状態において、電源力率が最も高くなる直流電圧でインバータ部の電圧利用率が最大となるように、モータの電気定数を最適化設計することにより、従来のブラシレスモータ掃除機に比べ、回路効率を大きく改善することができる。 【0028】 また、この発明による電気掃除機においてインバータ部にPWM制御方式を採用した場合には、PWMデューティ比100%とすることにより、インバータ部のスイッチング損失の低減やスイッチングノイズの低減など回路面の効果に加え、波形が正弦波に近似することから、スイッチングにより発生する高調波成分が低減し、モータの鉄損低減及びモータ効率向上が図れる。 【0029】 また、この発明による電気掃除機において、昇圧回路を交流電源を強制的に短絡通電させた場合には、簡単な構成で昇圧回路が実現できる。また、一般にアクティブフィルタ方式と呼ばれる方法が高周波でスイッチングを行うのに対して、本発明は電源半周期の間に、1回スイッチングする手法であり、スイッチング損失が少なくなるため、回路損失の低減は図れる。 【0030】 また、本発明は、アクティブフィルタ方式と比較して、消費電力量が500W程度の半負荷状態での電源力率は低いが、予め設定した最大消費電力である1000W程度の全負荷状態での電源力率は大差ない。したがって、電気掃除機で表示吸込仕事率の測定条件である最大消費電力での運転性能を重視した方式といえる。 【0031】 上記短絡される昇圧回路を用い、リアクトルのインダクタンスを1〜3mHとすることにより、電源力率を向上させるとともに、リアクトルの小型・軽量化が図れる。そのため、従来のブラシレスモータ掃除機に比べ、回路効率を改善し、掃除機の小型・軽量化が図れる。 【0032】 更に、一般的な整流子モータ掃除機と同等の略1000Wの消費電力とすることにより、大きな吸込み性能を発揮することができる。 【0033】 以上により、本発明のブラシレスモータ掃除機は、従来のブラシレスモータ掃除機に比べ回路効率を大きく向上し、PWMデューティ比100%とすることによりモータ効率の向上も図れるため、吸込仕事率を大きく向上することができる。また、従来の整流子モータ掃除機と本発明のブラシレスモータ掃除機のファン効率を同等とすると、本発明のブラシレスモータ掃除機は、従来の整流子モータ掃除機と同等の吸込仕事率が得られるとともに、従来の整流子モータ掃除機で課題であったブラシ寿命に起因した電動機寿命の制約、あるいはカーボン微粉の発生といった問題を解消することができ、吸込み性能が高く、寿命が長く、排気がきれいな掃除機が実現できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0034】 [実施例1] 図1には、掃除機用ブラシレスモータ駆動装置が示されている。交流電源1に直列に接続されたリアクトル7と、このリアクトル7の後段に接続され且つダイオードのブリッジ回路から構成される第1整流器9と、この第1整流器9に並列接続され且つ交流電源1を短絡開放する第1スイッチング素子10及びその第1ドライブ回路11とから昇圧回路が構成されている。 【0035】 この昇圧回路とリアクトル7の後段に接続され且つダイオードブリッジ回路から構成される第2整流器15と、この第2整流器15の直流側に並列接続されたコンデンサの直列体からなる倍電圧コンデンサ16a,16bとからコンバータ部2が構成されている。 【0036】 コンバータ部2に発生する直流電圧を電源とし、ブラシレスモータ3に回転磁界を与えることで駆動するインバータ部4と、インバータ部4の第2ドライブ回路14とからモータ駆動回路が構成されている。 【0037】 ここで、インバータ部4は、3相バイポーラ接続された第2スイッチング素子13u〜13zとフライホイール・ダイオードなどにより構成されている。詳しくは、13uはU相上側に接続されたIGBT、13vはV相上側に接続されたIGBT、13wはW相上側に接続されたIGBT、13xはU相下側に接続されたIGBT、13yはV相下側に接続されたIGBT、13zはW相下側に接続されたIGBTである。 【0038】 演算制御手段としてのマイコン6は、交流電源のゼロクロス点検出回路8の出力信号、ブラシレスモータ3の磁極位置検出回路5の出力信号、倍電圧コンデンサ16a,16bの直列体の両端の電圧を検出する直流電圧検出回路12の出力信号、及び図示しない上位制御装置からのブラシレスモータ運転制御指令を入力して、所定の制御演算を行って、昇圧回路の第1スイッチング素子10を短絡開放する第1ドライブ回路11への動作信号出力、及びブラシレスモータ3をPWM駆動する第2のドライブ回路14への動作信号出力を行う。 【0039】 次に、コンバータ部2の詳細な動作を説明する。第1スイッチング素子10が開放のままのコンバータ部2は通常の倍電圧整流回路であるため、交流電源1の電圧が100Vの場合、得られる直流電圧は、理論的には、100×1.41×2=282(V)である。 【0040】 しかし、リアクトル7の電圧降下等があるため、ブラシレスモータ3駆動時は230V程度となる。また、第1スイッチング素子10が開放のままのコンバータ部2では、交流電源1からの入力電流がコンデンサインプット形のままであるため、入力電流の波高値が高く、回路の力率が悪い。また、同時に高調波電流も発生してしまう。 【0041】 そこで、昇圧回路を用いて力率を改善する。図2を用いて昇圧回路の動作を説明する。ゼロクロス検出回路8で入力電圧のゼロクロス点を検出し、500μs程度の予め設定した遅延時間T1の後、第1スイッチング素子10を短絡する。 【0042】 更に、短絡時間T2の後、第1スイッチング素子10を開放する。その後、次のゼロクロス点を検出し、この前記の動作を繰り返す。この短絡時間T2を長くすると直流電圧の昇圧の程度は大きくなるため、直流電圧検出回路12で検出した直流電圧が予め設定した目標直流電圧となるように短絡時間T2を増減する。この第1スイッチング素子10の短絡開放制御により、入力電流の波高値を抑える効率的な運転を行うとともに、入力電流の通電位相角(電源周波数半周期中の通流時間)を大きくする力率を改善した運転を行う。 【0043】 ここで、図3に本実施例の昇圧回路の特性を示す。これらは、100V交流電源1において、入力電力を1000W一定となるように、ブラシレスモータ3を駆動した場合の、直流電圧と短絡時間、力率、入力電流の関係を表す実験結果である。 【0044】 図3(a)に示すように短絡時間を長くすれば、直流電圧を高くすることができる。直流電圧を約250Vに制御すると力率は最大となり(図3(b)参照)、入力電流は最小となる(図3(c)参照)。電流が小さいほど、入力電流が流れる部品であるリアクトル7や第2整流器15などの電気抵抗で発生する損失は小さくなるため、コンバータ部2の回路効率が良くなる。つまり、この場合は、目標直流電圧を250Vと予め設定しておくと良い。 【0045】 次に、リアクトル7について詳細に説明する。図4は、インダクタンスの異なる数種類のリアクトルを用いて実験した結果(リアクトルの特性図)である。 【0046】 図4(a)は、消費電力1000Wで、昇圧回路なしの場合と昇圧回路ありの場合のリアクトルのインダクタンスと電源力率の関係を示したものである。従来の昇圧回路なしのブラシレスモータ掃除機の場合、電源力率を高くするためにリアクトルのインダクタンスを大きくする必要があったが、昇圧回路を用いると、用いない場合と比べて全体的に電源力率を大きく向上することが可能であるため、従来の昇圧回路なしのブラシレスモータ掃除機に比べリアクトルのインダクタンスを小さくすることができる。 【0047】 図4(b)は、昇圧回路を用いた場合に消費電力をパラメータとして、リアクトルのインダクタンスと電源力率の関係を示したものである。同図より、1000W程度の消費電力の全負荷状態において90%以上の高い電源力率を得るためには、リアクトルのインダクタンスは概ね1mH以上あれば良い。一方、500W程度の消費電力の半負荷状態において、90%以上の高い電源力率を得るためには、リアクトルのインダクタンスは概ね6mH以上の値が必要となる。 【0048】 一般的な電気掃除機に適用することを考えると、全負荷状態での電源力率が重要であり、半負荷状態で力率がやや低下しても、消費電力自体が大きくないため、入力電流の絶対値は小さく、電源高調波への影響や電源コードの発熱も小さく特に問題はない。 【0049】 また、インダクタンスを大きくするためにはインダクタンスに比例してリアクトルの巻数を多くする必要があるが、リアクトルの鉄心寸法を一定とすれば線径を細くして断面積を縮小する必要があることから、インダクタンスの二乗に比例して巻線抵抗が増加し、したがって銅損が増加する。あるいは、リアクトルの鉄心寸法を大きくして、線径を細くするのを避けると、拡大した鉄心寸法に伴って励磁電流が増加し、したがって鉄損が増加する。このように、インダクタンスを大きくすると、リアクトルの銅損及び鉄損が増加し、回路効率が低下する。 【0050】 ただし、以上は、入力電流一定として比較しているが、インダクタンスが大きくなると概ね電源力率が上昇するため、同一出力に対して入力電流が小さくなり、回路効率の低下は緩和される。 【0051】 図4(c)は、全負荷状態(消費電力1000W)のリアクトルのインダクタンスと回路効率の関係を示したものである。同図より、概ね3mHで回路効率が最大となる。 【0052】 次に、図4(d)は、リアクトルのインダクタンスと重量の関係を示したものである。リアクトルのインダクタンスを大きくするためには、リアクトルが大型化し重量が増加する傾向にあるが、掃除機の運搬時の負担や操作性を考えると、リアクトルも軽量小型化が必要である。 【0053】 図4(c)、(d)より、1000Wクラスの家庭用電気掃除機の場合、回路効率と重量の両方を考慮すると、リアクトルのインダクタンスは概ね1〜3mHであることが望ましい。 【0054】 次にインバータ部4の詳細な動作を説明する。掃除機用ブラシレスモータを運転するための電力は、モータ駆動装置に接続された交流電源1から供給される。その交流入力はコンバータ部2により直流化され、インバータ部4へ入力される。マイコン6は、ブラシレスモータ3を駆動するためのPWM波形を、ロータ位置検出部5からの位置信号を用いて演算生成し、第2ドライブ回路14へ出力する。 【0055】 そこでPWM波形はIGBT駆動電圧に変換され、13u,13v,13w,13x,13y,13zのIGBTスイッチングを行う。このようにしてインバータ部4よりブラシレスモータ3へ電力が供給されることによりブラシレスモータ3が回転駆動されて掃除機が運転される。 【0056】 ここで、インバータ部4は、120度通電形PWMインバータであり、ロータ位置信号とインバータ駆動信号の関係は図5のようになる。マイコン6は、ロータ位置信号に基づき、インバータ駆動信号を作成する。インバータ駆動信号は、例えばロータ位置信号Huの立ち上がりエッジが検出されれば、U相上側のスイッチング素子(図1では13u)をONさせる。次にHvの立ち上がりエッジが検出されると、U相上側のスイッチング素子13uをOFFさせ、V相上側のスイッチング素子13vをONさせる。 【0057】 また、Hwの立ち下がり信号が検出されると、V相下側のスイッチング素子13yからW相下側のスイッチング素子13zを転流させる。このようにロータ位置信号のエッジを検出する毎に順次インバータ回路のスイッチング素子を転流させて、ブラシレスモータを駆動する。 【0058】 また回転数とトルクを制御するため、駆動信号にPWMチョッピングを重畳させて、モータ印加電圧、電流を制御する。つまり、直流電圧をPWM変調することにより、PWMデューティ比が小さい場合は、モータ印加電圧は小さくなり、モータ出力が小さくなる。逆に、PWMデューティ比が大きい場合は、モータ印加電圧も大きくなり、モータ出力も大きくなる。 【0059】 ここで、モータ印加電圧と直流電圧とPWMデューティ比とは、 モータ印加電圧(V)=直流電圧(V)×PWMデューティ比×K の関係がある。Kは、駆動信号の通電幅から求められる比例定数であり、 K=通電角度/180となる。 【0060】 したがって、本実施例の120度通電形PWMインバータでは、K=120/180=2/3となる。 【0061】 この関係より、インバータ部の電圧利用率が最大となるのは、PWMデューティ比が100%(1.0)の場合である。 【0062】 コンバータ部に昇圧回路を有しないブラシレスモータ駆動装置の場合は、PWMデューティ比が100%となると、それ以上モータ印加電圧を上昇させることは不可能となり、モータ出力も限界に達する。PWMデューティ比が100%の場合のロータ位置信号とインバータ駆動信号の関係は図6のようになる。 【0063】 一方、本実施例のようにコンバータ部に昇圧回路を有するブラシレスモータ駆動装置の場合は、PWMデューティ比が100%となった後も昇圧回路で直流電圧を昇圧することにより、モータ印加電圧を上昇させることが可能であり、更にモータ出力を大きくすることができる。 【0064】 ただし、図3に示すように、直流電圧を大きく昇圧するとコンバータ部の回路効率が低下することから、直流電圧の昇圧は、力率が低下しない範囲とすべきである。 コンバータ部の回路効率を考慮し、直流電圧を250Vとすると、モータ印加電圧の最大値は、 モータ印加電圧最大値(V)=250(V)×1.0×2/3≒167(V) となる。 【0065】 次にブラシレスモータについて詳細に説明する。図7にモータAとモータBの2つのブラシレスモータの電気定数を示す。モータAは従来の掃除機用ブラシレスモータの一例であり、モータBは本実施例の掃除機用ブラシレスモータである。 【0066】 モータA、Bは、ステータの巻数が異なる他は同じ形状、同じ材質である。モータBの巻数がモータAの巻数の約2倍であるため、誘起電圧定数、インダクタンス、巻線抵抗とも約2倍となっている。 【0067】 また、図8に示すブラシレスモータ駆動回路と図7のブラシレスモータとの組み合わせで実験を行い、PWMデューティ比(通流率)が最大の100%あるいは消費電力が1000Wとなった時の実験結果を図9に示す。 【0068】 回路Aは全波整流回路であるため、交流電源の電圧が100Vの場合、得られる直流電圧は、理論的には、電源電圧の最大値100×1.41=141(V)である。しかし、リアクトルの電圧降下等があるため、ブラシレスモータ駆動時は115V程度となる。 【0069】 回路Bは、上記のコンバータ部2の説明の通り、倍電圧整流回路と昇圧回路により、直流電圧は250Vとなる。 【0070】 実験No.1が従来のインバータ掃除機の一例であり、実験No.4が本実施例のインバータ掃除機であり。実験No.2とNo.3は参考データである。 【0071】 実験No.1と実験No.4を比較すると、モータBの誘起電圧定数はモータAの約2倍であるため、モータ印加電圧は約2倍となっているが、逆にモータ電流は約1/2となっている。ここで、インバータ部4の損失は、モータ印加電圧の増減よりもモータ電流の増減の影響の方が大きく、モータ電流が約1/2となると、インバータ部の損失も約1/2となる。そのため、回路効率も向上している。 【0072】 また、実験No.2の組み合わせでは、モータと回路のマッチングが悪く、消費電力500WでPWMデューティ比100%(1.0)に達してしまい、これ以上、出力を大きくすることができない。そのため、実験No.2の組み合わせのモータ駆動装置を掃除機に搭載した場合には他の組み合わせに比べ吸込仕事率の最大値が小さくなる。 【0073】 更に、実験No.3の組み合わせでは、PWMデューティ比が100%に達していないため、更に回転数を上昇し、大きな消費電力を得て、大きな吸込仕事率を実現することも可能であるが、省エネルギーの観点や掃除を行う際に電気掃除機以外の製品を同じ交流電源で同時に使用した場合にブレーカが落ちる危険性など考慮すると、家庭用電化製品としてこれ以上の消費電力増加は望ましくない。 【0074】 同じ消費電力1000Wで比較すると、実験No.3の回路効率は、実験No.4よりはるかに劣るため、吸込仕事率も実験No.3は実験No.4より小さくなる。 【0075】 このように、力率が最も良くなる直流電圧(本実施例では250V)で、インバータ部の電圧利用率が最大(本実施例ではPWMデューティ比100%)となるときの、予め設定した最大消費電力(本実施例では1000W)となるように、モータの電気定数を最適化設計すると、従来例に比べ回路効率を大きく改善することができる。 【0076】 また、PWMデューティ比100%(1.0)とすることにより、インバータ部のスイッチング損失の低減やスイッチングノイズの低減など回路面の効果に加え、スイッチングにより発生するモータ電流のリップルに起因するモータの鉄損低減及びモータ効率向上が図れる。 【0077】 図10に整流子モータ掃除機とブラシレスモータ掃除機(従来例)とブラシレスモータ掃除機(本実施例)の各部の効率と吸込仕事率の実験結果の一例を示す。本実施例により、従来例に比べ回路効率を大きく向上している。(図10では、83%から93%に向上している。) 【0078】 つまり、整流子モータ掃除機とブラシレスモータ掃除機(本実施例)の回路効率の差(図10では、5%)は小さくなり、モータ効率は整流子モータに比べブラシレスモータの方が(図10では、5%)勝っているため、ファン効率を同等(図10では、65%)とすると、ブラシレスモータ掃除機(本実施例)は、整流子モータ掃除機と同等の吸込仕事率(図10では、約540W)が得られる。 【0079】 [実施例2] 実施例1では、コンバータ部は、倍電圧整流を行うとともに、昇圧回路は、電源側に直列に接続されたリアクトルを介して前記交流電源を強制的に短絡通電させる昇圧回路としたが、特許文献3で開示されているような一般にアクティブフィルタ方式と呼ばれる方法を用いても良い。 【0080】 これは、コンバータ部は、全波整流を行うとともに、全波整流回路とインバータ部との間にリアクトル及び昇圧チョッパ回路を設け、リアクトルに対するエネルギーの蓄積及び放出を制御するスイッチング高周波数PWM信号に基づき、スイッチのオンオフをスイッチング制御することによって、入力ラインに、入力電圧に比例した電流を流すように制御し、力率改善と昇圧とを行うというものである。なお、インバータ部やブラシレスモータなど他の部分については、実施例1と同じようにすれば、実施例1と同様の効果が得られる。 【0081】 [実施例3] 実施例1では、インバータ部は120度通電形PWMインバータとしたが、通電幅は120度に限定する必要はなく、150度通電形PWMインバータなどでも構わない。 【0082】 150度通電形PWMインバータの場合も120度通電形PWMインバータと同様に、PWMデューティ比が100%(1.0)の場合にインバータ部の電圧利用率が最大となり、コンバータ部の回路効率を考慮し、直流電圧を250Vとすると、モータ印加電圧の最大値は、 150度通電形のモータ印加電圧最大値(V)= 250(V)×1.0×150/180≒208(V) となる。 【0083】 このように、120度通電形PWMインバータに比べ通電幅の広い150度通電形PWMインバータのモータ印加電圧最大値(例えば208V)は、120度通電形PWMインバータのモータ印加電圧最大値(例えば167V)に比べ大きくなるため、この条件で予め設定した全負荷状態での消費電力(実施例1では1000W)となるように、モータの電気定数を最適化設計すればよい。具体的には、図3のモータBより更に巻線ターン数を大きくするなどすればよい。 【0084】 更には、インバータ部は120度通電形PWMインバータではなく、180度正弦波PWMインバータとしてもよい。この場合、変調率が100%の時にインバータ部の電圧利用率が最大となるが、この時のモータ印加電圧最大値の条件で予め設定した最大消費電力(実施例1では1000W)となるように、モータの電気定数を最適化設計すればよい。 【0085】 なお、コンバータ部など他の部分については、実施例1と同じようにすれば、実施例1と同様の効果が得られる。 【0086】 [実施例4] 実施例1では、巻線ターン数を従来例に比べ多くすることにより、消費電力が予め設定した所定値で、コンバータ部の昇圧回路により、昇圧を行わない場合に比べ交流電源の力率が良くなるように直流電圧が昇圧された場合に、インバータ部の電圧利用率が最大となるように、ブラシレスモータの電気定数を最適化設計したが、ブラシレスモータの電気定数の最適化設計は、巻線線形や巻数に限定されるものではなく、ロータ磁石の量や種類などを変更することにより、誘起電圧定数を調整して最適化設計してもよい。 【0087】 なお、コンバータ部やインバータ部など他の部分については、実施例1と同じようにすれば、実施例1と同様の効果が得られる。 【0088】 なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。 【図面の簡単な説明】 【0089】 【図1】本発明に係る電気掃除機において、掃除機用ブラシレスモータ駆動装置の概略構成を示す図。 【図2】本発明に係る電気掃除機の昇圧回路の動作を説明するための図。 【図3】本発明に係る電気掃除機の昇圧回路の特性を示す図。 【図4】本発明の昇圧回路に用いられるリアクトルについて説明するための図。 【図5】本発明におけるロータ位置信号とインバータ駆動信号の関係を示す図。 【図6】本発明におけるPWMデューティ比が100%の場合のロータ位置信号とインバータ駆動信号を示す図。 【図7】従来例と本発明とブラシレスモータの電気定数を示す図。 【図8】従来例と本発明とブラシレスモータの駆動回路の構成を示す図。 【図9】従来例と本発明のブラシレスモータ駆動の実験結果を示す図。 【図10】整流子モータ掃除機とブラシレスモータ掃除機(従来例)とブラシレスモータ掃除機(本発明)の各部の効率と吸込仕事率の実験結果の一例を示す図。 【符号の説明】 【0090】 1 交流電源 2 コンバータ部 3 ブラシレスモータ 4 インバータ部 5 磁極位置検出回路 6 マイコン 7 リアクトル 8 ゼロクロス点検出回路 9 第1整流器 10 第1スイッチング素子 11 第1ドライブ回路 12 直流電圧検出回路 13u〜13z 第2スイッチング素子 14 第2ドライブ回路 15 第2整流器 16a,16b 倍電圧コンデンサ
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005049 【氏名又は名称】シャープ株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年7月12日(2006.7.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000062 【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
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| 【公開番号】 |
特開2008−18006(P2008−18006A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月31日(2008.1.31) |
| 【出願番号】 |
特願2006−191852(P2006−191852) |
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