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【発明の名称】 椅子
【発明者】 【氏名】垰田 和史

【氏名】竹原 成規

【要約】 【課題】身体(特に腕)への負担が著しく抑制した状態で手作業を行える椅子を提供する。

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が腰掛けることのできる座と、着座した人が向かい合うように配置された支柱とを備えており、前記支柱に、着座した人が手作業できる状態で片肘ずつを載せ得る左右一対の肘サポートを互いに分離した状態に設けている、
椅子。
【請求項2】
前記座は座受けベースを介して脚装置にて水平回転自在に支持されている一方、前記支柱は座と一体に水平旋回し得るように座又は座受けベースに取付けられており、前記支柱の上部には左右に分岐した枝フレームが一体に設けられており、左右枝フレームの先端部にそれぞれ肘サポートが水平回転可能に取付けられており、更に、使用者が肘サポートに肘を載せた状態でもたれ掛かり得る背もたれは備えておらず、人は座に跨がる状態で腰掛け得るようになっている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記肘サポートは平面視で細長い形状になっており、この肘サポートが、前記枝フレームの先端に設けた支軸に、長手方向に沿った方向にスライド自在でかつ支軸を中心に水平回転し得る状態に取付けられており、更に、前記左右の肘サポートは、直線状に並んだ姿勢から平面視で略平行に延びる姿勢又は逆ハの字状になる姿勢までの範囲で左右外側に水平回転し得るように枝フレームに取付けられている、
請求項2に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本願発明は、人が手作業を行うのに好適な椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人が一定の場所で手作業を行うにおいて、椅子に腰掛けて作業することが多い。椅子に腰掛けて行う手作業の内容は様々である。例えば、机を使用した事務作業、マウス操作やキーボード操作、工場のラインにおける組み立てや検査、テーブル上に置いたワークの組み立て・加工・処理、ベッドに寝た人や椅子に腰掛けた人を対象にした介助サービス(例えば食事の世話、身体のマッサージやケア)、等である。
【0003】
椅子に腰掛けて手作業をする場合、一般には、腕全体を伸ばして作業をしたり、上膊(二の腕)は略下向きにして下膊(前膊)を伸ばして作業をしたりしているが、いずれにしても少なくとも手先は自由端になっているため、腕が疲れるという問題がある。
【0004】
他方、従来から肘当てを備えた椅子は存在しているが、例えばオフィス用回転椅子のような通常の椅子の肘当ては腕を休ませることを主たる目的にしており、一般には、椅子において肘当てを手作業の補助に使用するということは成されてはいない。
【0005】
但し、肘当てを手作業の補助に用いるという着想が皆無という訳ではなく、例えば特許文献1には、パソコン操作(キーボード操作・マウス操作)に際して腕が疲れないものとして、通常の肘当ての先端部に人の肘(関節部)が載る補助パッドを水平旋回自在に取り付けることが開示されており、特許文献2には、着座者が片肘を付いた状態でパチンコ機のハンドルを操作できる椅子が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、背もたれを横長のバー状の形態と成して、背もたれを肘当て(或いは手首当て)に使用することを可能ならしめることでキーボード操作の便宜に供した椅子が開示されている。また、本願出願人は、特許文献4において、胸当てと背もたれとに兼用できる補助体を備えた椅子を提案した。
【0007】
更に、特許文献5には腹当てと肘当てとを設けた健康増進用椅子が開示されており、特許文献6には、背もたれに肘当て部を一体に形成した一種の姿勢矯正用椅子が開示されている。なお、治療用の椅子として、胸当てと肘当てとを備えたもの(特許文献7)や肘当てと頭当てとを備えたもの(特許文献8)も提案されている。
【特許文献1】特開平10−248673号公報
【特許文献2】特開平6−245847号公報
【特許文献3】実開平5−23958号公報
【特許文献4】特開2005−211468号公報
【特許文献5】実開2002−125803号公報
【特許文献6】特公平3−42086号公報
【特許文献7】特公平6−69469号公報
【特許文献8】実公昭62−14859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
椅子に腰掛けて作業を行う場合、物(例えば組み立てや検査・加工では工具類や部品類、食事介助の場合は食器類)を持つことが多い。このように物を持って作業を行う場合、腕の疲れが倍加するのみならず、疲れや肩こり・だるさといった障害を誘発したり、或いは、腕をかばうために身体が前屈み状態になることにより、腰痛や胃腸障害のような疾病が発生しやすくなったりしている。
【0009】
従って、着座状態で作業を行うに際して人の身体にかかる負担を軽減できると、作業者の健康を確保できるのみならず、ワーカーの疾病・障害が予防されることにより、医療費を抑制できると共に作業速度のアップや欠勤率低下によって生産性も向上させることができると言える。
【0010】
しかし、既述のとおり従来から肘当て機能を有する椅子は各種のものが開示されているものの、これらは、人が物を持って作業を行うにおいて使用者の身体的負担を軽減するという目的意識の下に成されたものではなく、このため、手作業用に使用したとしても使用者の負担軽減等の効果を十分に発揮できるとは言い難い。見方を変えて述べると、現状では、人が腰掛けた状態で手を動かして作業を行うための椅子として、腕や身体の動かし易さ、身体や腕の支持安定性、堅牢性、といった視点に立って開発されたものはなかったと言える。
【0011】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係る椅子は、人が腰掛けることのできる座と、着座した人が向かい合うように配置された支柱とを備えており、前記支柱に、着座した人が手作業できる状態で片肘ずつを載せ得る左右一対の肘サポート(肘当てと呼んでも良い)を互いに分離した状態に設けている。
【0013】
請求項2の発明の椅子は、請求項1において、前記座は座受けベースを介して脚装置にて水平回転自在に支持されている一方、前記支柱は座と一体に水平旋回し得るように座又は座受けベースに取付けられており、前記支柱の上部には左右に分岐した枝フレームが一体に設けられており、左右枝フレームの先端部にそれぞれ肘サポートが水平回転可能に取付けられており、更に、使用者が肘サポートに肘を載せた状態でもたれ掛かり得る背もたれは備えておらず、人は座に跨がる状態で腰掛け得るようになっている。
【0014】
更に請求項3の発明の椅子は、請求項2において、前記肘サポートは平面視で細長い形状になっており、この肘サポートが、前記枝フレームの先端に設けた支軸に、長手方向に沿った方向にスライド自在でかつ支軸を中心に水平回転し得る状態に取付けられており、更に、前記左右の肘サポートは、直線状に並んだ姿勢から平面視で略平行に延びる姿勢又は逆ハの字状になる姿勢までの範囲で左右外側に水平回転し得るように枝フレームに取付けられている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によると、人は肘を肘サポートに当てた状態で作業を行えるため、腕の重さや手に持った物の重さが上半身への負担になることがないばかりか、左右の腕によって上半身が支えるれることにもなる。このため、人の身体に対する負担が著しく軽減されて、工具や部品等の物を持った作業(或いは人の身体の一部を持ち上げたような介助作業)であっても、身体への負担を著しく軽減できる。
【0016】
そして、肘サポートは左右に分離しているため、左右の肘を肘サポートを載せた状態で胸を前後方向に大きく移動させたり左右にスイングさせたりすることが可能であり、このため上半身を動かし易くて作業も行いやすい。更に、左右の肘サポートは支柱に取付けられているため高い支持強度を有しており、このため、比較的重い物を扱う作業や肘サポートに体重が掛かる中腰での作業も安定良く安全に行うことができる。
【0017】
請求項2のように構成すると、左右の肘サポートは水平回転し得るため、腕を自在に開閉できて作業は一層行い易くなる。また、請求項2では左右の肘サポートを別々の支柱で支持することも可能であるが、請求項2のように1本の支柱で左右の肘サポートを支持すると構造がシンプルになるのみならず、支柱は使用者の左右足の間に位置しているため支柱が使用者の邪魔になることもない。
【0018】
請求項3のように構成すると、肘サポートが細長いことにより、肘の関節から手首寄りの下膊を広い範囲にわたって支持できるため、腕の特定部位に負担が集中することを防止して腕に対する負担をより軽減することができ、また、腕の姿勢が安定しているため細かい作業も行い易い利点がある。
【0019】
更に、請求項3では肘サポートはスライド自在で且つ水平回転自在であるため、腕の位置や姿勢の変化に追従して肘サポートが水平動するため、人は左右の腕の間隔を広狭変えたり姿勢を変えたりすることを極めてスムースに行うことができ、このため手首を前後左右の広い範囲にわたって自由に動かすことができて使い勝手を格段に向上させることができる(例えば、上半身を左右いずれかの方向にねじったり、一方の腕は前方に伸ばして他方の腕は手前に引いたり、といった動作も楽に行える。)。
【0020】
ところで、人が腕をL字状に曲げた状態で下膊を左右外側に広げる場合、肩の関節の構造に基因して腕を水平方向に広げる得る角度には限度がある。そして、肘サポートに肘を載せた状態では腕はL字状に曲がっているため、何らかの弾みで下膊を広げ過ぎると障害の原因になる虞がある。この点、請求項3のように構成すると、肘サポートが過度に広がり変形することを防止できるため、肩への負担を防止又は抑制できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図7では第1実施形態を示しており、図8〜図12では第2実施形態を示している。以下、第1実施形態から説明する。
【0022】
(1).第1実施形態の概要
図1のうち(A)は椅子の斜視図で(B)は正面図、図2のうち(A)は使用状態の背面斜視図で(B)(C)は平面図であり、まず、これらの図に基づいて椅子の概要を説明する。
【0023】
椅子は、主要構成要素として、脚装置1と座受けベース2と座3と支柱4と左右の肘サポート5とを備えている。座受けベース2は脚装置1の上端に固定されており、座3と支柱4は座受けベース2に取付けられており、肘サポート5は支柱4に取付けられている。
【0024】
脚装置1は、高さ調節自在な脚支柱(ガスシリンダ)6とこれから放射状に延びる複数本(5本)の枝足7と各枝足7の上面に溶接によって固着された足載せ用のリング体8とを備えた構成であり、各枝足7の先端にはキャスター9を取り付けている。詳細な構造は省略するが、キャスター9は、人が着座するとロック(ブレーキ)がかかって回転不能になるものを使用している。従って、作業中に移動することを防止できる。脚支柱6であるガスシリンダはロック解除用のレバー10が予め組み込まれている。
【0025】
座受けベース2は金属板製(ダイキャスト製や樹脂製でも良い)であって上向きに開口した箱状に形成されており、座受けベース2に脚支柱6の上端が嵌着されている。他方、座3は合板等の木製基板11の上面にクッション12を張った構造であり、平面視形状は、支柱4に近い部分を先窄まり部3aと成していて自転車のサドルに似た形状になっている。支柱4は支持アーム13を介して座受けベース2に取り付けられており、支持アーム13はばねに抗して若干の角度だけ下向き回動するように設定されている。
【0026】
支持アーム13の先端部は上下に延びる支持筒14で構成されており、支持筒14に支柱4がクランプ体15を介して高さ調節可能に支持されている。クランプ体15は回転式ハンドル16を有しており、ハンドル16を一方向に回転させると支柱4を任意の高さに昇降させることができ、ハンドル16を他方向に回転させるとクランプ体16が支柱4に締め付けられて支柱4は支持筒14で落下不能に保持される。クランプ体15は支柱4の高さ調節手段の一例である。なお、支柱4としてガスシリンダを使用することも可能である。
【0027】
支柱4は金属製の丸パイプ(鋼管やアルミ管)からなっており、その上端には左右の枝フレーム17が溶接によって固着されている。枝フレーム17は楕円形又は小判肩形であって先端に行くに従って高さが高くなるように緩い角度で傾斜している。肘サポート5は平面視で略長方形の細長い形態であり、その長手方向にスライド自在であり、かつ、スライドさせた任意の位置において水平回動させることができる。
【0028】
また、図2(B)では左右の肘サポート5を平面視で同一直線状に並べた基準姿勢を示しており、右の肘サポート5は基準姿勢から時計回りに所定角度回転させることができ、左の肘サポート5は基準姿勢から半時計回りに所定角度だけ回転させることができる。図2(A)では左右の肘サポート5を平面視でハの字に配置した状態を示しており、一般には、この姿勢で作業を行うことが多いと言える。以下、各部位の詳細を説明する。
【0029】
(2).座3支持アームの支持構造
まず、座と支持アーム13の支持構造を図3に基づいて説明する。図3のうち(A)は図2(B)における座3のみの III-III視断面図、(B)は他の部材も表示した状態での図2(B)の III-III視断面図である。符号20はクッション12を覆うクロス(表皮材)である。脚装置1を構成する脚支柱6の上端部は座受けベース2に固定されている。そして、座受けベース2はビス(図示せず)で座3の基板11に固定されている。
【0030】
また、図3(B)に示すように、支持アーム13は上向きに開口した樋状(コ字状)の受け部材21に固着されており、受け部材21の基端部は座受けベース2の内部に配置した軸受けブラケット20にピン20′によって連結されている。また、座受けベース2のうち脚支柱6から支柱4の側にずれた部位にはばね受け22が下向きに突設されており、これに収納したばね23で支持アーム13を支持している(ばね23に代えてゴム等の軟質弾性体も使用できる。)。支持アーム13は、座受けベース2の後端縁に形成した切欠き溝24の範囲内において後傾動し得る。
【0031】
座3における先窄まり部3aの左右両側面は平面視で外向き凹状に凹んだ凹面3bになっており、着座した人は、凹面3bの箇所に大腿部を位置させることになる。そして、本実施形態では、座3のクッション12の周縁部のうち先窄まり部3aを除いた部分を高さの高い土手部12aと成している。このため、着座した人は臀部を後ろ向きずれ不能に支えられた状態で肘を肘サポート5にしっかりと付くことができる。土手部12aの左右両端寄り部位は端に行くに従って高さが徐々に低くなっている。
【0032】
着座した状態で臀部が後ろ向きにずれることを防止する手段としては、例えば特許文献8に開示されているように、椅子(クッション)の上面のうち後部を側面視で後傾状に傾斜させることも可能であるが、この場合は上半身が前傾気味になって作業をしにくい場合がある。これに対して本実施形態では、座3の着座面は水平状を保持しつつ身体の後ろ向きずれ移動が土手部12aで阻止されるため、例えば上半身を起こした状態であっても肘サポート5にしっかりと肘を突っ張らせることができる。
【0033】
もとより、作業内容によっては上半身を前傾させた方が良い場合や前傾姿勢を好む人もいるであろうが、本実施形態では人の大腿部が先窄まり部3aの凹面3bの箇所に位置していることにより、大腿部に対する突き上げ感を感じることなく上半身を前傾させることができる(すなわち、自由な姿勢を採り得る。)。座3を段階的に又は無段階的に前傾させる機構を採用することも可能である。
【0034】
図2(A)に示す使用状態では使用者は両足を支柱4の左右両側に位置させているが、左右の足を支柱4の片側に寄せた状態で着座して作業を行うことも可能である。これは一種のチョイ掛けで人は身体をねじった状態で両肘を肘サポート5に付くことになるが、着座時間が僅かで椅子への乗り降りを頻繁に行うような場合は、このような使用態様も有り得る(この場合、第2実施形態のように座3を座受けベース2に水平回転自在に取り付けるのが好ましい。)。また、リラックス状態での使用態様として、支柱4を背にして両肘又は片肘を肘サポート5に載せるといったことも可能である。
【0035】
(3).肘サポートの取付け構造
次に、肘サポート5の取付け構造を主として図4〜図7に基づいて説明する。図4は左の肘サポート5を中心にして描いた部分正面図、図5は図4及び図7(A)の V-V視断面図、図6のうち(A)は肘サポート5の取付けの構造を示す分離斜視図で(B)は平面図、図7のうち(A)は図5 VII-VII視断面図で(B)は(A)のB−B視断面図である。
【0036】
例えば図7(A)に示すように、枝フレーム17の先端には上下に開口した筒体25が溶接によって固着されており、この筒体25に、長方形で箱形のレールブラケット26がベースブラケット27を介して水平回転自在に取付けられている。レールブラケット26は金属板製であって長手方向の前端と後端とを有していて両端には樹脂製のキャップ28が装着されている。
【0037】
他方、ベースブラケット27は1枚ずつの背板27aと側板27bを有する平断面L字状で背板27aには水平状の上板27cと下板27dとが一体に形成されている。そして、側板27bは上に行くほど左右巾が大きくなる台形状に形成されており、また、上板27cの張り出し寸法は下板27dの張り出し寸法よりも大きくなっている(勿論、他の形態でも良い。)。
【0038】
そして、レールブラケット26とベースブラケット27とは上下に重なった状態に溶接で一体化されており、かつ、ボルト28とナット29とで筒体25に回転可能に連結されている。ボルト28はレールブラケット26の下面板26aとベースブラケット27の上下板27c,27dとに貫通しており、また、レールブラケット26の上面板26bにはボルト29の頭を通すための透かし穴31が空いている。図4に示すようにナット30には保護キャップ32を取り付けているが、袋ナットを使用するとキャップ32は不要になる。
【0039】
筒体25にはボルト29が嵌まるフランジ付きメタルブッシュ25aが嵌め込まれている。メタルブッシュ25aは本体が金属製でその表面に樹脂層をコーティングしたものであり、樹脂層の存在により、肘サポート5の回転に際して金属音が発生することを防止できる。また、ブッシュは全体が樹脂製であると強度確保のためフランジの厚さ等の寸法をある程度に大きくする必要があるが、本実施形態のメタルブッシュ25aは本体が金属であるため、フランジの厚さを薄くしても強度を確保できる利点がある。
【0040】
レールブラケット26はその長手方向に沿って一端部寄りの偏よった部分において筒体25に連結されており、レールブラケット26の上面板26bのうち透かし穴31と他端面との間には、平面視角形で細長いガイド穴33が長手中心線に沿って延びるように形成されている。なお、レールブラケット26の内部にナット30を配置して、これにボルト29を下方からねじ込むことも可能である。言うまでもないが、ボルト29に代えて他の連結部材(例えばスナップリング付きのピン)を採用しても良い。
【0041】
肘サポート5は樹脂製の基材34の上面にクッション35を張った構造であり、上面は横断面視において上向きに開口した状態に緩く凹んでいる(クッション35は基材にインサート成形しても良いし、接着又は嵌め込んでも良い)。基材34には、レールブラケット26の長手側面に密接する一対の抱持部34aが長手方向に延びるように形成されている。抱持部35aの下端には上向き抜け不能に保持する鉤部35bを一体に形成しており、このため、肘サポート5はその長手方向に沿ってスライドし得る。また、基材34の底面部には、レールブラケット26のガイド穴33に嵌まり込むストッパー突起36を設けている。
【0042】
前記ストッパー突起36は、基材34の底面部にコ字状のスリット37を設けることによって形成された細長い梁状部38の先端に形成しており、かつ、ストッパー突起35の下端のうち梁状部38の付け根と反対側には傾斜面35aが形成されている。このため、ストッパー突起35は梁状部38が上向きに撓み変形することを利用してレールブラケット26のガイド穴33に嵌め込むことができる。従って、肘サポート5は、レールブラケット26に重ねた状態で押し込むというワンタッチ的な操作でレールブラケット26に取り付けられる。
【0043】
また、レールブラケット26の下面板26aのうち筒体25と反対側の部位には、平面視でガイド穴33の端部と重なる補助穴39が空いている。そして、この補助穴39からドライバー等にてストッパー突起36を押し上げることにより、ストッパー突起36をガイド穴33から外して肘サポート5をレールブラケット26から取り外すことができる。ストッパー突起35はストローク規制手段の一例であり、このストッパー突起36により、肘サポート5がその長手方向にスライドするストロークが記載される。
【0044】
なお、ストッパー突起36は基材34とは別体に構成することも可能である。例えばストッパー突起としてビスを使用して、これを補助穴39から基材34の底面部にねじ込み固定するといったことも可能である。また、基材34の底面に長溝を形成して、レールブラケット26に突起(例えばビス)を長溝に嵌め込むといったことも可能である。
【0045】
(4).まとめ
既述のとおり、肘サポート5はその長手方向に沿ってスライド自在でかつ筒体25を中心にして水平回動自在であるため、使用者は左右の腕の位置と姿勢を自由に変えることができる。換言すると、人の意思によって腕の位置や姿勢を変えようとすると腕に追従して肘サポート5が動いてくれる。
【0046】
このため、肘を肘サポート5に載せた状態のままで腕を動かして各種の作業を容易に行うことができる。本実施形態のように支柱4に左右の肘サポート5のみを設けると、使用者の視界が広がるため作業を行い易く、また、上半身を大きく前移動させることができるため、例えば肘サポート5から手を離して遠くの物を取るといったことも容易に行える。
【0047】
また、肘サポート5は細長いため、腕の自由を確保しつつ下膊を広い範囲にわたって肘サポート5で支持することができ、このため人が作業するに当たって腕に負担がかかることを著しく軽減できる。
【0048】
本実施形態の肘サポート5はくるくる回転させ得る訳ではなく、図5から理解できるように、左の枝フレーム17を例に採ると、ベースブラケット27の側板27bが枝フレーム17の背面に当たることで時計回り方向の回転が規制されて、肘サポート5は平面視で枝フレーム17と略平行に延びる基準姿勢から時計回りには回転させることができない。他方、ベースブラケット27の背板27aが枝フレーム17の前面に当たることで半時計回り方向の回転が規制される。すなわち、左右の肘サポート5は平面視逆ハの字の姿勢までしか外回りに回転させることはできない。
【0049】
既述のとおり、通常の人が肘を曲げた状態で腕を水平に回し得る姿勢に限度があり、約100°程度しか回すことができない。本実施形態の肘サポート5は人の腕の可動範囲に準拠しているものであり、このため、肘サポート5が何らかの弾みで外向き回転し過ぎて肘を痛めるといったことはない。肘サポート5の水平回動できる範囲は基準状態から90〜110°程度が好適と言える。
【0050】
例えばベッドに寝た人に近づいて介護する場合、肘サポート5が前向き姿勢であると介護者は被介護者に身体(顔)を近づけ難いが、本実施形態(及び第2実施形態)では肘サポート5を横向き姿勢にすることにより、介護者は肘を左右に大きく広げて前屈みになって顔を被介護者にうんと近づけることができる。このため、介護者と被介護者とのコミュニケーションのアップに貢献できる。また、肘サポート5が前後に向いていると、肘サポート5が被介護者の顔に近づくことにより、被介護者に不安感を与える虞が有り得るが、左右の肘サポート5を横長姿勢にすると、被介護者の不安感をなくすことができる利点もある。
【0051】
また、肘サポート5が枝フレーム17と略平行な横長姿勢の場合、肘はおおむね肘サポート5の左右中間部に載っていることがで多く、この場合、作業内容によっては肘で肘サポート5が手前側に押され気味になることがあるが、本実施形態ではベースブラケット27の側板27bが枝フレーム17に当たることで肘サポート5の回動が阻止されるため、肘サポート5を横長姿勢にした状態のままで安心して腕に力を掛けることができる。この点も本実施形態の利点である。
【0052】
図2(C)に示すように、枝フレーム17の筒体25は隣合ったキャスター9を結ぶ線よりも若干の寸法だけ内側に位置させており。このため、肘サポート5にかかった荷重は常に隣合ったキャスター9を結ぶ線よりも内側の領域で支持されることになり、その結果、肘サポート5に大きな下向き荷重が掛かっても椅子が転倒するような不具合は生じない。
【0053】
なお、肘サポート5のスライド許容手段として本実施形態のように肘サポート5の基材34でレールブラケット26を抱持する形態を採用すると、基材34とレールブラケット26とが嵌り合う巾寸法及び長さ寸法を大きくできるため、肘サポート5は大きなスライドストローク確保しつつ高い安定性を確保できる利点がある(肘サポート5に対する支持強度を向上できる。)。また、支柱4を若干の角度で後傾させ得る構成を採用すると、上半身に対するロッキング機能が発揮されるため身体への負担を軽減できて好適である。レールブラケット26とベースブラケット27とは一体物に製造することも可能である。
【0054】
ところで、使用者が一般に男性の場合は座3に跨がるように腰掛けることに抵抗はないが、女性の場合は座3に跨がって腰掛けることに心理的な抵抗があったりスカートを着用している場合には腰掛けにくいといった場合がある。また、男性・女性を問わず、足を開きにくいといった障害によって座3に跨がりにくい場合もある。
【0055】
この点、図1(A)に一点鎖線で示すように支柱4のうち着座した人の大腿部上面よりも下方の部位を片側(右側)の肘サポート5の側に寄せると、人は足を揃えた状態で腰掛けながら肘サポート5を使用できる利点がある(この点は第2実施形態にも適用できる)。
【0056】
(5).第2実施形態
次に、図8〜図12に示す第2実施形態を説明する。図8のうち(A)は斜視図で(B)は正面図、図9のうち(A)は全体の平面図で(B)は左右肘サポート5を同一線状に揃えた状態での部分的な平面図、図10は側面図、図11のうち(A)は背面図、(B)は(A)のB−B視断面図、(C)は(A)のC−C視断面図、(D)(E)は変形例を示す図、図12のうち(A)は胸当て41の平面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【0057】
第2実施形態は基本的には第1実施形態と同様であり、大きな相違点として、第1実施形態では脚装置1に足載せ用リング8を設けていたが第2実施形態では設けていない点、第1実施形態では座受けベース2に座3を固定していたが、第2実施形態では座3は座受けベース2に回転自在に取付けられている点、第1実施形態では支柱4に肘サポート5のみを取り付けていたが第2実施形態では支柱4に胸当て(或いは腹当て)41も取付けている点、の三点が挙げられる。以下、主として第1実施形態と相違する点を中心にして第2実施形態を説明する。第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0058】
脚装置1は基本的には第1実施形態と同じであり、各キャスター9は第1実施形態と同様に下向き荷重が掛かるとブレーキ(ロック)が掛かるものを使用している。脚支柱6であるガスシリンダのロックを解除するレバー10は座受けベース2に設けている。座3は第1実施形態と同じ平面形状及び構造になっている。本実施形態では、座3は座受けベース2に軸受け部材9を介して水平回転自在に取付けられているが、軸受け部材42は座受けベース2のうち脚支柱6の軸心を挟んで支持アーム13と反対側にずれた位置に配置している。
【0059】
なお、本実施形態では、座3は、先窄まり部3aを支柱4に近づけた姿勢と先窄まり部3aを支柱4と反対側に位置させた姿勢との両方の姿勢で使用することが可能であり、後者の姿勢では人は胸当て41と反対側を向いて腰掛けることになる(この場合は胸当て41は背もたれとして機能する。)。なお、座3は基板11のみの単一構造と成すことも可能であり、この点は第1実施形態も同じである。
【0060】
支持アーム13は座受けベース2に固定されている。支柱4は下クランプ体43を介して支持アーム13の支持筒14で高さ調節自在に支持されている。支柱4には、上クランプ体44を介して受け筒45を高さ調節自在に嵌め入れ、受け筒45に固着した左右の枝フレーム17に肘サポート5を取付けている。従って、本実施形態では枝フレーム17は受け筒45を介して支柱4に取付けられている。
【0061】
上下のクランプ体43,44(ストッパーと言い換えても良い)は同じ構造であり、図11(C)に示すように、支柱4を抱持する非環状の挟持体46を備えており、挟持体46の先端部の間隔をボルト付きハンドル47で広狭を変えることにより、支柱4に落下不能に取り付いたロック状態と自在に昇降し得るフリー状態とに変更できるようになっている。本実施形態では、胸当て41と肘サポート5とは個別に高さ調節することができる。
【0062】
図12に示すように、肘当て5を構成する基材34の下面には長手方向に延びる下向き凸部48が一体に形成されており、凸部48に、上向き開口の上長溝49と下向き開口の下長溝50とが基材34の長手方向に延びるように形成されており、更に、下長溝50には補強板51が嵌め入れられている。そして、上下長溝49,50の間の部分と補強板51とに、上下長溝49,50の長手方向に延びる長穴52が形成されている。
【0063】
一方、枝フレーム17の先端部は鉛直姿勢に折り曲げ形成されており、枝フレーム17の先端にブッシュ53を回転不能に固着し、このブッシュ53に、肘サポート5における基材34の凸部48に下方から重なるフランジ54を一体に形成している(ブッシュ53とフランジ54とは別体とすることも可能である)。更に、肘サポート5の基材34及び補強板51の長穴52に嵌め入れたカラー55を介してフランジ付きボルト56をブッシュ53にねじ込んでいる。
【0064】
ボルト56をしっかりねじ込んだ状態で、ボルト56のフランジ56aと基材34における上長溝49の底面との間に若干の隙間が空くように設定しており、このため、肘当て5は長穴52の範囲において水平スライドさせ得ることができ、かつ、ボルト56を中心にして自在に水平旋回させて任意の姿勢を採ることができる。
【0065】
胸当て41は上下長手でかつ正面視で上部と下部とが円弧状に形成されていて全体として小判形になっており、支柱4の上端に取り付けられている。胸当て41は側面視でやや後傾した姿勢になっている。また、胸当て41は左右横幅は一般成人の胸が当たり得る程度の寸法に設定している。すなわち、腕の付け根が当たらない程度の寸法であり、具体的には15〜20cm程度でよいと言える。胸当て41の上下長さは、一般成人の胸と腹とに跨がって当たる程度の寸法に設定しており、具体的には、25〜35cm程度でよいと言える。
【0066】
図11(B)に示すように、胸当て41は樹脂等のインナーシェル58にクッション59を張った構造になっており(クロスも張られている)、インナーシェル56には合板等の支持板60が固定されており、支持板60がフランジ付き継手61を介して支柱4の上端に固定されている。
【0067】
胸当て41は側面視での角度を自在に変更できる状態で支柱4に取り付けることも可能である。この構造の一例を図11(D)(E)に変形例として示している。すなわち(D)は縦断側面図、(E)は平面図であり、この例では、継手61を小判形のパイプ材で形成して上下長手の姿勢に配置し、継手61における広幅の側板に胸当て41と反対側に張り出した軸受け部61aを形成し、この軸受け部61aを水平状のピン62で支柱4に連結することにより、胸当て41の側面視姿勢を変更可能としている。
【0068】
この変形例の場合、支柱4の上端に、継手61の内部に入り込むストッパー部4aを折り曲げ又は溶接によって設け、胸当て41が側面視で鉛直姿勢のときには継手61の上内面をストッパー部4aの上面に重ならせる一方、胸当て41を後傾状に傾けると、継手61の下内面がストッパー部4aの先端部下面に当たるように設定しており、これにより、胸当て41の傾動範囲を規制している。勿論、胸当て41を傾動可能とする構成、及び、傾動範囲を規制する構成は様々に具体化できる。
【0069】
本実施形態のように胸当て41を設ける場合、胸当て41を支柱4に対して着脱式と成すことも可能である。例えば、胸当て41を棒材製又はパイプ製のロッドに固定して、ロッドをパイプ製の支柱4に上方から抜き差し自在と成すことにより、胸当て41付きの態様と胸当て41無しの態様とを自由に選択することが可能である。
【0070】
また、第2実施形態から胸当て41を無くした形態も採用できる(この場合は、受け筒45を無くして支柱4の上端に枝フレーム17を固着しても良いし、例えば図11(A)において支柱4の上端を受け筒45の上端に揃えても良い。)。
【0071】
(6).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば肘サポートや座の平面形状は図示のものに限らないのであり、例えば肘サポート及び座とを平面視円形又は楕円形に形成するといったことも可能である。胸当て(又は腹当て)を設ける場合、その形状も任意に設定できる。肘サポートを人の腕の動きに追従させる方法としては、実施形態のように肘サポートのスライドと水平回転との組み合わせを利用することに限らず、例えば、水平回動する2つのリンクを使用するといったことも可能である。
【0072】
支柱はパイプ状又は棒状でなくてもよく、例えばチャンネル状(樋状)等の任意の形態を採用できる。要は肘サポートを直接に又は他の部材を介して支持できれば良い。椅子は固定式となすことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1実施形態の全体図であり、(A)は椅子の斜視図で(B)は正面図である。
【図2】(A)は使用状態の背面斜視図で(B)(C)は平面図である。
【図3】(A)は図2(B)における座3のみの III-III視断面図、(B)は他の部材も表示した状態での図2(B)の III-III視断面図である。
【図4】椅子の部分正面図である。
【図5】図5は図4及び図7(A)の V-V視断面図である。
【図6】(A)は肘サポートの取付けの構造を示す分離斜視図で(B)は平面図である。
【図7】(A)は図5 VII-VII視断面図で(B)は(A)のB−B視断面図である。
【図8】第2実施形態の外観を示す図で、(A)は斜視図で(B)は正面図である。
【図9】(A)は全体の平面図、(B)は左右肘サポートを同一線状に揃えた状態での部分的な平面図である。
【図10】椅子の側面図である。
【図11】(A)は背面図、(B)は(A)のB−B視断面図、(C)は(A)のC−C視断面図、(D)(E)は変形例を示す図である。
【図12】(A)は肘サポートの平面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 脚装置
2 座受けベース
3 座
4 支柱
5 肘サポート
6 脚支柱(ガスシリンダ)
13 支持アーム
17 枝フレーム
26 レールブラケット
27 ベースブラケット
41 胸当て
【出願人】 【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
【識別番号】502219706
【氏名又は名称】垰田 和史
【出願日】 平成19年1月19日(2007.1.19)
【代理人】 【識別番号】100079131
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 暁夫

【識別番号】100096747
【弁理士】
【氏名又は名称】東野 正

【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸

【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一


【公開番号】 特開2008−62014(P2008−62014A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2007−10539(P2007−10539)