| 【発明の名称】 |
作業用椅子及び洗面化粧台システム |
| 【発明者】 |
【氏名】堀本 幹夫
【氏名】片岡 由美子
【氏名】北村 直紀
|
| 【要約】 |
【課題】上半身を直立と前傾とで姿勢を変化させて作業する必要がある場合に、直立姿勢から前傾姿勢に楽に移動させ、かつ前傾姿勢を身体に負担をかけない楽な姿勢で維持する作業用椅子および洗面化粧台システムを提供する。
【構成】略水平状態から着座部3が前傾した位置に変位可能とするための前傾手段と、前記前傾手段によって着座部3が前傾するのに連動して着座部3を略鉛直方向上方に上昇させる上昇手段と、前記前傾手段を所定角度以上傾かないように規制する前傾規制手段と、前記上昇手段を所定高さ以上傾かないように規制する上昇規制手段と、制御手段5と、を備え、制御手段5により、着座部3の上昇よりも着座部3の前傾を先に開始させると共に、着座部3の上昇よりも前傾を先に終了させるようにした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベース部と、 前記ベース部の上部に配置された着座部と、 前記着座部の前端部を固定軸として該固定軸より後部が上方に押し上げられ、略水平状態から前記着座部が前傾した位置に変位可能とするための前傾手段と、 前記着座部を略鉛直方向上方に上昇させる上昇手段と、 前記前傾手段を所定角度以上傾かないように規制する前傾規制手段と、 前記上昇手段を所定高さ以上傾かないように規制する上昇規制手段と、 前記前傾手段と前記上昇手段とを連動して作動するように制御する制御手段と、を備えた作業用椅子であって、 前記制御手段は、前記着座部を上昇且つ前傾させる際に、まず前記前傾手段の作動を前記上昇手段の作動より先に開始し、 且つ前記前傾規制手段の方が前記上昇規制手段より先に作動するようにしたことを特徴とする作業用椅子。 【請求項2】 前記制御手段は、前記着座部を上昇且つ前傾させる際に、前記前傾手段の作動を開始し、前記前傾規制手段によって前記前傾手段の作動が停止した後、前記上昇手段の作動を開始することを特徴とする請求項1記載の作業用椅子。 【請求項3】 請求項1または2に記載の作業用椅子と、 該上面の左右いずれか一方に偏った位置に洗面器を配置した洗面カウンターと、 前記洗面カウンターの上方に配置された化粧鏡と、を備えた洗面化粧台システムであって、 前記洗面カウンターの洗面器下方には前記作業用椅子の前記着座部を最高位まで上昇且つ前傾させた状態で着座部に座った人の膝が収納できる開口部が形成され、 前記洗面器は前記洗面カウンター上面より上方に立ち上がる壁面部を有すると共に、該壁面部の手前側には使用者の両腕が入りこめる大きさの切り欠きを形成したことを特徴とする洗面化粧台システム。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は楽な姿勢で作業ができるように補助する椅子であって、特に最適な姿勢が異なる複数の作業を、それぞれに最適な姿勢で作業できるように、着座部の角度、及び高さを可変できる作業用椅子に関する。 【背景技術】 【0002】 流しや洗面化粧台では、上半身を前傾と直立とで姿勢を変化させて作業する場合がある。これらを座って行いたいという要望に応えて、洗面器もしくは流しのカウンター下に膝が入るスペースを設けたものがあり、上半身を洗面器もしくはカウンターに近づけることができる。 【0003】 しかし、使用者が洗顔等の前傾動作が必要となる行為をしようとした場合、椅子を前方に移動させて洗面器と胸を近づけることはできても、着座部が前傾するものでないため顔を洗面器に近づけるためには無理な体勢が必要となり使い勝手が悪いという問題があった(特許文献1)。 【0004】 それらに対して、顔が洗面器に近づくような姿勢に変化させようとした場合、着座部を前傾させる手段が考えられる(特許文献2)。方法として椅子の着座部前方を支点にして後方側を円周方向に上昇、下降する形態が考えられるが、実際に、着座部に人が座る場合、膝が椅子の前端と接するほど深く座ることはほとんどなく、また家庭の洗面所や台所の流しを考えれば、スペースの関係からそれほど大きな奥行きを持つ着座部のある椅子を採用することが難しい。このため、単に着座面を前傾状態と水平状態とに切り替えるだけでは、椅子の支点と膝の支点は異なった位置になってしまい、着座部が水平状態から前傾状態に切り替わると、膝が前下方向へ移動し膝下が後傾するため、足首や足底部は体の前方に向かう回転トルクを受けることになり安定した姿勢を保ちにくくなる。つまり、安定した姿勢を得るためには着座部を前傾させるだけでなく、着座部全体が上昇していることが必要となる。 【0005】 目的は異なるが、同様の構成を持った椅子に、起立補助を目的とした起立補助用の椅子がある。この起立補助用の椅子は着座部を前傾させるのに加えて、着座部を上昇させている(特許文献3,特許文献4)。 【0006】 これらは起立補助を目的としているため、使用者の上体高さを上げてから前傾を開始させるのが一般的である。具体的には、使用者を立位に近い高さまで上体を上げてから、前方に足を自然に出せるようにしている。これによると、膝下の後傾が解消され、足首や足底部は体の前方に向かう回転トルクから解放される。 しかし、このように着座部を前傾より先に上昇させた場合、使用者が洗顔しようとして、素早く上半身を前傾させた作業体勢を取ろうとしたとき、最初に着座部が上昇するので、足裏全体を接地することができずに不安定な姿勢になってしまう恐れがある。このように足裏全体が床面に設置していない状態で着座部が前傾すると着座部から体を離そうとする力が作用し前傾姿勢を保持することが困難であり、洗面化粧台の洗顔行為や流しでの包丁を使った調理行為等、前傾姿勢を保持する椅子としてはは好ましくなかった。 【0007】 【特許文献1】特開2002−21351号公報 【特許文献2】特開2002−136382号公報 【特許文献3】特開2000−125972号公報 【特許文献4】特開平10−263013号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は最適な座位姿勢が異なる複数の作業を、それぞれに最適な姿勢でできるように、着座部の角度、及び高さを可変できる作業用椅子及び洗面化粧台システムを提供する。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記目的を解決するために、本発明の一態様によれば、 ベース部と、前記ベース部の上部に配置された着座部と、前記着座部の前端部を固定軸として該固定軸より後部が上方に押し上げられ、略水平状態から前記着座部が前傾した位置に変位可能とするための前傾手段と、前記着座部を略鉛直方向上方に上昇させる上昇手段と、前記前傾手段を所定角度以上傾かないように規制する前傾規制手段と、前記上昇手段を所定高さ以上傾かないように規制する上昇規制手段と、前記前傾手段と前記上昇手段とを連動して作動するように制御する制御手段と、を備えた作業用椅子であって、前記制御手段は、前記着座部を上昇且つ前傾させる際に、まず前記前傾手段の作動を前記上昇手段の作動より先に開始し、且つ前記前傾規制手段の方が前記上昇規制手段より先に作動するようにしたことを特徴とする作業用椅子を提供する。 【0010】 これにより、使用者は足が接地した安定した状態のままで前傾姿勢を取ることができ、かつ着座部の上昇によって前傾姿勢での作業時の膝位置が支持基底面である足底の略直上に維持されるので、安定した状態のままで作業を行うことができる。 【0011】 また、本発明の一態様によれば、さらに制御手段は、着座部を上昇且つ前傾させる際に、前傾手段の作動を開始し、前傾規制手段によって前傾手段の作動が停止した後、上昇手段の作動を開始することを特徴としている。 【0012】 これにより、最初に足が床に接地した安定状態のまま前傾姿勢を取り、足が接地した状態のままで身体の重心をそのまま上に移動させるので、着座部から体が離れることなく、鋭角になった膝や足首が伸び、身体前方に向かう回転トルクから解放され、前傾姿勢での作業に最適な姿勢へと移動することができる。 【0013】 また、本発明の一態様によれば、請求項1または2に記載の作業用椅子と、該上面の左右いずれか一方に偏った位置に洗面器を配置した洗面カウンターと、洗面カウンターの上方に配置された化粧鏡と、を備えた洗面化粧台システムであって、洗面カウンターの洗面器下方には作業用椅子の着座部を最高位まで上昇且つ前傾させた状態で着座部に座った人の膝が収納できる開口部が形成され、洗面器は洗面カウンター上面より上方に立ち上がる壁面部を有すると共に、該壁面部の手前側には使用者の両腕が入りこめる大きさの切り欠きを形成したことを特徴とする洗面化粧台システムを提供している。 【0014】 これにより、使用者は洗面化粧台での洗顔時には、円滑にかつ足が接地した安定した状態のままで前傾姿勢を取ることができ、かつ着座部の上昇によって前傾姿勢での作業時の膝位置が支持基底面である足底の直上近傍に維持されるので、安定した状態のままで洗顔作業を行うことができる。また、洗面器のない側に椅子を移動させることで化粧動作もしやすくなる。 【発明の効果】 【0015】 本発明によると、使用者は円滑にかつ足が接地した安定した状態のままで前傾姿勢を取ることができ、かつ着座部の上昇によって膝位置が支持基底面である足底の直上近傍に維持されるので、安定した状態のままで作業を行える作業用椅子を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0016】 以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する 【0017】 図1は本発明の作業用椅子を備えた洗面化粧台システムの外観斜視図である。 【0018】 また、図2〜図4は図1に示す作業用椅子のX方向から見た透視図であり、図5は作業用椅子の分解斜視図、図6〜図9は図1に示す洗面化粧台システムの使用状態を表したものである。 【0019】 まず、本発明の洗面化粧台システムについて図面を参照して説明する。 【0020】 図1に示すように、本発明の洗面化粧台システムは、床面上に載置され、上部に洗面器6が取り付けられた洗面カウンター7と、洗面器と室壁との間に配置され、洗面カウンター上面に取り付けられる水栓と、洗面カウンター上方の室壁に取り付けられた化粧鏡と、化粧鏡の両側端部に取り付けられた照明と、作業用椅子8から構成されている。 【0021】 洗面器6は、洗面カウンター上の左右いずれか一方側に偏った位置に取り付けられると共に、洗面カウンター上面より上方に立ち上がる壁面部を有している。該壁面部の手前側だけは使用者が洗顔行為をする際に両腕を洗面器内に入りこめる程度の大きさの切り欠きを形成している。洗面器をこのような形状にしたことで水をすくうときに腕が洗面器やカウンターと干渉することなく、洗顔を行うことが出来る。 【0022】 洗面カウンタ7ーの洗面器下方には作業用椅子8の着座部を最高位まで上昇且つ前傾させた状態で着座部に座った人の膝が収納できる程度の開口部が形成されている。つまり、作業用椅子8の着座部を最高位まで上昇且つ前傾させた際の着座部の最高位置よりカウンター裏面の方が高い位置に配置されていることが必要となる。洗面カウンタ7ーの左右いずれか一方側に洗面器が配置され、他方は略フラットなカウンター面となっている。主に作業用椅子8に座って洗面器側で行う行為としては洗顔があり、その際には後述するように着座面を前傾且つ上昇させることで体に負担をかけずに楽な体勢で前傾姿勢を保持できるため洗顔行為に適している。一方、洗面器が取り付けられている側とは逆側のカウンターの前で行う行為として化粧行為がある。化粧作業中、使用者は鏡に近づきながら行うことが好ましく、使用者と化粧鏡との間に洗面器および水栓が介在しないため顔を化粧鏡に接近させやすい。 【0023】 化粧作業中は着座面を前傾または上昇させる必要はないため、洗面器が取り付けられている側程、開口部の高さおよび奥行きは必要ない。つまり、カウンター面の厚みは洗面器が取り付けられる側の方が、他方側より薄く形成されている。また、洗面器が取り付けられていない側の開口部奥側には水平状態の着座面に使用者が座った際に邪魔にならない程度の位置に収納棚が形成されているが、洗面器が取り付けられている側は座面が前傾、および上昇するため、水平状態の時より膝が前方且つ上方に位置する場面があるため収納棚は設けていない。 【0024】 次に、本発明の作業用椅子8の構造について図面を参照して説明する。 【0025】 図2〜図5に示すように、本発明の作業用椅子8は、固定フレーム1と可動フレーム2からなるベース部と、ベース部の可動フレーム上部に取り付けられる着座部3と、着座部の前端部を回動軸3aとして制御部からの実行指令により着座部の回動軸3aより後方部を押し上げることで着座部を前傾させる前傾手段と、着座部の前傾角度を規制する前傾規制手段と、前傾規制手段が作動した状態で更に着座部の回動軸3aより後方部を押し上げることで着座部を上昇させる上昇手段と、着座部の上昇高さを規制する上昇規制手段と、着座部を押し上げる動力となる駆動手段と、駆動手段の動力を着座部の押し上げに利用するために動力を伝達するための動力伝達手段と、固定フレーム下面に取り付けられる4個のキャスター(図示しない)と、制御手段と、から構成されている。 【0026】 固定フレーム1は、本作業用椅子8の外観部分となる外枠であり、底面とその底面の全周を囲うように上方に突出した側面を有しており、上方は開放されている。固定フレーム1自体は昇降せず固定されており、側面内側上方から中央にかけては鉛直方向に切り欠かれたガイド溝1aが形成されている。ガイド溝1aの下端位置は後述する可動フレーム2が最も低い位置に下降された状態で、着座部3が固定フレーム上端より上方に配置されるような位置に設定されている。具体的には、可動フレーム2が最も低い位置に下降された場合、固定フレーム1側面の上部に着座部3は載置された状態となっている。 【0027】 可動フレーム2は、固定フレーム内側に配置され、上面と下面が貫通されており、囲まれた側面を有している。該側面には固定フレームのガイド溝内を摺動可能なガイド突起2aを備えており、ガイド溝内に沿ってガイド突起2aが上下方向に移動することで固定フレーム1に対して可動フレーム2が鉛直方向に昇降可能な構造となっている。可動フレーム2が最も低い位置にある時、可動フレーム2の上端は固定フレーム1の上端より、少なくとも着座部と可動フレームの回動軸3a分は高くなるように配置されている。また、可動フレーム2の前端上部には着座部の回動軸3aが固定されており、上述した通り回動軸3aは固定フレーム1の上端より高くなるように配置されている。 【0028】 前傾手段および上昇手段の駆動源となるモータ4は固定フレーム後方側側面内方の略真ん中の高さに取り付けられており、着座部3が前傾および上昇する際に、ベース部の後方が床面から離れて転倒することを防止している。また、前傾手段と上昇手段の駆動源は共用しているため、作業用椅子8自体の重みを軽減できると共にコンパクトに設計することができている。尚、ガイド溝1aよりモータ4は低い位置に配置され、可動フレーム2が最も低い位置に下降された状態であっても、モータ4より可動フレーム2は高い位置に配置される。 【0029】 駆動源で発生する動力を着座部3の押し上げに利用するための動力伝達手段として、本実施例では、駆動源に固定され、内部が空洞となっており上端が開放された外側筒状部材4aと、その内側に摺動可能に配置された内側部材4bから構成されている。外側筒状部材4aは駆動源を介して固定フレーム後方側側面に固定されており、内側部材には駆動源からの動力が伝達され、外側筒状部材内を摺動しながら上昇する。着座部の上昇または前傾を行う際には内側部材4bが外側筒状部材4aから伸展し、着座部の下降または前傾から水平状態に戻す際には内側部材4bが外側筒状部材4aに収納されるように縮まれる。内側部材4bは該上端部が着座部裏面の略中央に設けられた湾曲状に形成された凹部3c内に接触するように配置されており、内側部材4bの伸展によって凹部3cを介して着座部3に押しあげるような力を作用させる。尚、内側部材4bの上端は滑らかな曲線を描くように半球状に形成されている。 【0030】 着座部3の前傾手段は、駆動源からの動力を動力伝達手段を介して、着座部の凹部3cに伝えることで着座部の前端部に取り付けられた回動軸3aを回動中心として着座部3を前傾させている。この際、着座部3の前端部は回動軸3aを介してして可動フレーム2に固定されており、一方後端部側は後述するチェーン3bによって所定高さ、可動フレームから上昇可能となるように固定されている。 【0031】 本実施例における前傾規制手段は、着座部3の後方部であり、着座部裏面の略中央部に設けられた湾曲状に形成された凹部3cより後方側中央に配置された着座部側チェーン固定具と、可動フレーム側面内方に取り付けられたフレーム側チェーン固定具とを接続する縦長に形成された金属製の輪を複数繋いだチェーン3bである。フレーム側チェーン固定具は可動フレームの両側面内側を繋いた棒状部材である。 【0032】 チェーン3bは少なくとも二つの輪が回動可能な回動軸を介して接続されており、全ての輪が回動軸を中心として一直線上に配置された段階で着座部の前傾を規制し、これ以上、着座部が前傾しないように制限するストッパー機能を果たすようになっている。輪の長さや取付位置によって着座部の最大前傾角度を設定できる。本発明のように洗顔行為を目的として、前傾姿勢を保持しながら上半身、特に頭部、首、腕、肩を動かす作業の場合は水平状態を基点に15〜25度までの角度に設定することが好ましい。つまり、着座部が水平状態の時には、回動可能な回動軸を中心に複数の輪が屈曲した状態となっており、着座部が設定された角度まで傾くと回動可能な回動軸を中心に複数の輪が一直線上に配置されるようになっている。 【0033】 着座部の上昇手段は、上述した前傾規制手段が作動した状態、つまり全ての輪が回動軸を中心として一直線上に配置された状態で、更に内側筒状部材4bを伸展させることで、可動フレーム2と共に着座部3が上昇するようになっている。つまり、可動フレームが回動軸3aとチェーン3bによって着座部に吊り下げられた状態で一体となって固定フレームに対して上昇される。 【0034】 また、本実施例における上昇規制手段は、駆動源に内側筒状部材側面に接するように設けられた接点式のリミットスイッチ4cが付与されており、その接点が短絡した信号を得ることで駆動源の出力を停止させるようにしている。このように、内側部材の伸展があらかじめ設定された値に達した段階で短絡信号が発信されるようにしておくことで、着座部3の上昇を規制している。この上昇を規制する高さは50〜100mmの上昇が好ましく、且つ最も上昇した際の着座部の最高位置は流しや洗面化粧台のカウンター裏面より低い位置とすることが望ましい。 【0035】 また、本実施例では、着座部3の前傾および上昇状態から着座部3の水平および下降状態に移行する際、内側部材4bが所定長さまで縮んだ段階で駆動源の出力を停止させるようにする手段を備えているが、これについても上昇規制手段と同様に駆動源に内側筒状部材側面に接するように設けられた接点式の第二のリミットスイッチ4cを備え、その接点が短絡した信号を得ることで駆動源の出力を停止させるようにしている。この第二のリミットスイッチは第一のリミットスイッチより下方に配置されている。 【0036】 制御手段5には電源回路、駆動回路、操作ボタン回路、制御回路、および制御回路と各回路を結ぶ入出力部分が内蔵されており、操作ボタン回路への入信号を送る操作ボタン5aは固定フレーム外方側の上部に露出して取り付けられている。このように操作ボタンを固定フレームに取り付けたことで、使用者が誤って着座部と固定フレームの間に手を挟む恐れがない。 【0037】 次に、本発明の作業椅子を図1に示した洗面化粧台で使用した際の使い方について説明する。 【0038】 使用者は、まず作業の前に着座部3が水平状態に保たれた本作業用椅子8に座り、洗顔など前かがみが必要となる行為に応じて操作ボタン5aを操作する(図2参照)。操作ボタン回路の信号を制御手段が受けると、駆動源の駆動回路から駆動電圧が出力され内側部材4bが外側筒状部材4aに対して上方に向けて伸展が開始される。内側部材4bが伸展し始めると、着座部内側の凹部3cを押し上げて着座部3が前端部に配置された回動軸3aを支点として前傾し始める。この際、着座部の押し上げ開始直後は、チェーン3bが回動軸3aを中心として一直線上になっておらず屈曲した状態になっているため、着座部全体の上昇は開始されない。使用者は足底を床に接した状態で着座部が前傾するため、足と臀部で体重を受けながら前かがみとなる。このように着座部3の上昇より先に前傾が開始されると、足底が床に接した状態となるためしっかり足で体が着座部3から離れないように支えることができ、前傾時に上半身が前のめりになって着座部から体が離れることを防止できる。 【0039】 このときの使用者の状態について、図6〜図8を参照して説明する。 着座部3が水平状態のときに、使用者が上半身を直立させた座位姿勢を取ったときの、着座部3及び床との接触部にかかる力を示したものが図6である。この場合、図6に示したように、着座部3と床の両方に均等に力がかかっており、使用者は楽にこの上半身を直立させた座位姿勢を維持することができる。つまり足底に加わる力はそれ程大きくなく使用者の負担は小さい。 【0040】 ここで従来の洗面化粧台に用いられている椅子のように、着座部3が水平状態のままで洗顔をするために上半身を前傾させると、図7のように着座部3から使用者の臀部及び大腿部後ろ側が離れてしまい、床と接触している足底に使用者の体重がすべてかかってしまう。このとき使用者は上半身を前傾させているため、重心が支持基底面である足底より前に出てしまい、非常に不安定な状態になってしまう。 一方、使用者が上半身を前傾するのに合わせて、着座部3を前端にある回転軸3aを支点に前傾させると、着座部3と接触している臀部及び大腿部上方側が膝を支点に上昇させることになり、図8に示すように使用者は自然に上半身を前傾することができる。 【0041】 次に着座部3が前傾開始後からの作用について説明する。 着座部後部のチェーン3bは複数の組合せからなっているため、内側部材の伸展に応じて直列状に近づいていく。やがて、チェーン3bが完全に直列状になると着座部3の前傾が規制され傾動は止まる(図3)が、内側部材4bは伸展しつづけるため、続いて着座部3は前傾状態を保ったまま、着座部3と着座部3に吊り上げられる形の可動フレーム2とが一体となって上昇を開始する。使用者は足底を床に接し前傾した状態で上昇する。内側部材4bが所定長さ伸展すると、リミットスイッチ4cから接点が短絡した信号が発信される。短絡信号を制御手段が受信すると駆動源の駆動回路の出力を停止し、内側部材4bの伸展が停止する。内側部材4bはモータ軸との摩擦力で停止位置を保つことができるようになっており、着座部3は前傾上昇した位置で保持される(図4)。使用者は着座部3が前傾し足底が床に接した状態で椅子に座っており、自然と前かがみになるため、流しでの作業や洗面を腰椎などに負担をかけず行うことができる。 【0042】 このときの使用者の状態を図8〜図9を用いて説明する。 一般的に椅子に座るときに、膝が椅子の着座部前端と一致するほど深く座ることはほとんどない。特に洗面化粧台のようにカウンター下のスペースが限られている場合では、膝が椅子の着座部前端よりかなり前になっていることが多い。このような場合、着座部3を回転軸3aを支点に前傾させただけでは、椅子の支点と膝の支点は異なった位置になってしまい、着座部3が水平状態から前傾状態に切り替わると膝が前下方向へ移動し膝下が前傾するため、図8に示したように足首や足底部は体の前方に向かう回転トルクを受けることになり安定した姿勢を保ちにくくなる。つまり、着座部の前傾だけでは、使用者は前傾姿勢を保持するには過度の負担がかかることになる。 しかし、図9のように着座部3を前傾上昇させると、図6に示したような安定した座位状態と同じように、膝下が床面に対して垂直になり、足首や足底部は体の前方に向かう回転トルクから解放され、臀部及び大腿部と足底でバランス良く体を支えることができ、安定した前傾姿勢を維持することができる。 【0043】 次に、着座部が前傾した後に上昇することの意義について説明する。着座部を上昇させた後に前傾させると、着座部の上昇により、使用者の足裏に加わる重力方向の力は徐々に小さくなっていく。つまり、使用者の体重はほとんど着座部に触れている臀部で支えていることになり、非常に不安定な状態となる。この状態で、着座部を前傾させると、使用者は足裏に対して一気に体重が加わるため、その勢いで臀部が着座部から離れてしまい洗面器やカウンターに体が勢いよくぶつかる恐れがある。 【0044】 本発明のように、着座部が前傾した後に上昇することにより、足裏が床面に充分に接触した状態で前傾するため、臀部が着座部から離れないように足裏で保持できる。また、着座部の上昇前に前傾動作を行うため、一時的に膝が前下方向へ移動することになり、足首や足底部は回転トルクを受けることになるが、直ちに着座部が上昇するため、膝下が床面に対して垂直になり、回転トルクから解放され、臀部及び大腿部と足底でバランス良く体を支えることができ、安定した前傾姿勢を維持することができる 【0045】 次に前傾姿勢での作業終了後の作用について説明する。 前傾姿勢での洗顔終了後、今度は着座部が概ね水平で行うことが望ましい化粧などの作業を行う場合、使用者が操作ボタン5aを押すと、その信号を制御手 段が受け、駆動手段の駆動回路に上昇時とは反対の出力を行う。 【0046】 まず、内側部材4bが縮み始めると、着座部3は荷重と自重で内側部材4bに追随し降下を始める。この際、可動フレーム2は着座部3に吊り下げられた状態となっているため、着座面3の前傾角度を保持したまま着座面全体が下降していく。使用者は足底を床に接した状態のまま、前傾した状態で下降していくので、着座部は最高位置に上昇した状態で且つ水平状態となることがないため、足底が床面から離れる恐れがない。 【0047】 さらに内側部材4bを縮めていくと、可動フレーム2が下降し、固定フレーム1のガイド溝1aの下端位置に可動フレームのガイド突起が位置するところまで到達すると可動フレーム2の下降は停止される。この状態において、可動フレーム2の荷重は固定フレーム1に加わり、着座部3に可動フレーム2が吊り下げられた状態から開放される。今度は着座部前端の軸3aを支点として着座部後端が下降していき、着座面が水平状態に移行していく。つまり、チェーン3bが回動軸3aを中心として屈曲していく。使用者はここでも足底を接したまま、着座部3の動きに伴って前傾姿勢から傾きのない状態へと移っていく。着座部3が水平になった後、内側部材4bが第二のリミットスイッチの接点に触れると、信号を得て下降のためのモータへの出力を停止する。このように、着座部の前傾かつ上昇状態から元に戻る際には、着座部全体を下降させた後に傾斜角度を水平状態に戻すため、使用者は着座部3の下降と回転の最中にも足底を床に接して安定を保ち、最終的に着座部3を水平状態にして座ることができる(図2)。なお、下降の際は上昇時より出力電圧を小さくし、着座部3の下降速度を緩めることで使用者の不安定感を抑制することが好ましい。 【0048】 加えて、内側部材4bが着座部3に接する位置は、座面の前方に近づければ駆動源の出力が一定の場合、より傾斜に要する時間を短縮でき、逆に後方にすれば駆動手段の駆動時および停止時の必要トルクを小さくすることができる。また、駆動源と内側部材との接続部であるボールネジのピッチや条数を大きくすれば速度は増し、小さくすればトルクを大きくできる。 【0049】 また、使用者の体重を考慮し、上昇後通電を停止しても内側部材とボールネジの摩擦力で着座部3がその位置で保持できるよう、内側部材4bと着座部3の接触位置およびボールネジのピッチや条数を設定することにより、通電停止後も着座部の傾斜角度および上昇高さは保持される。 【0050】 以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した各実施形態の各変形例は、適宜、他の実施形態と組み合わせて実施することができる。 【図面の簡単な説明】 【0051】 【図1】本発明の実施形態における作業用椅子を備えた洗面化粧台システムを示す外観斜視図である。 【図2】本発明の実施形態における作業用椅子の着座部が水平状態時の図1のX方向から見た断面図である。 【図3】本発明の実施形態における作業用椅子の着座部が前傾状態時の図1のX方向から見た断面図である。 【図4】本発明の実施形態における作業用椅子の着座部が上昇前傾状態時の図1のX方向から見た断面図である。 【図5】本発明の実施形態における作業用椅子図1の分解斜視図である。 【図6】本発明の実施形態における洗面化粧台システム図1において、着座部が水平状態で、上半身を直立にした座位姿勢を取った場合の図である。 【図7】本発明の実施形態における洗面化粧台システム図1において、着座部が水平状態で、座位姿勢のままで上半身を前傾させた場合の図である。 【図8】本発明の実施形態における洗面化粧台システム図1において、着座部を前端支点に前傾させた状態で、座位姿勢のままで上半身を前傾させた場合の図である。 【図9】本発明の実施形態における洗面化粧台システム図1において、着座部を前端支点に前傾させかつ上昇させた状態で、座位姿勢のままで上半身を前傾させた場合の図である。 【符号の説明】 【0052】 1 固定フレーム 1a ガイド溝 2 可動フレーム 2a ガイド突起 3 着座部 3a 回転軸 3b チェーン 3c 凹部 4 モーター 4a 外側筒状部材 4b 内側部材 4c リミットスイッチ 5 制御手段 6 洗面器 7 洗面カウンター 8 作業用椅子
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000010087 【氏名又は名称】TOTO株式会社
|
| 【出願日】 |
平成18年9月5日(2006.9.5) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2008−61694(P2008−61694A) |
| 【公開日】 |
平成20年3月21日(2008.3.21) |
| 【出願番号】 |
特願2006−240097(P2006−240097) |
|