| 【発明の名称】 |
ファスナーストリンガー及びスライドファスナー |
| 【発明者】 |
【氏名】堀川 光雄
【氏名】此川 裕之
【氏名】中山 栄治
|
| 【要約】 |
【課題】エレメント取付部の伸縮性を向上させて高伸縮性生地の伸縮動作にも滑らかに追随することが可能であり、且つ、エレメント取付部が伸長してもチェーン割れが生じることを防ぐことが可能なファスナーストリンガーを提供する。
【構成】本発明のファスナーストリンガー(1)は、テープ主体部(3)とエレメント取付部(4)とを有する織組織よりなるファスナーテープ(2)と、前記エレメント取付部(4)に非弾性の縫糸(5)により縫着された連続状のファスナーエレメント列(6)と、前記ファスナーエレメント列(6)内に挿通された弾性を有する芯紐(7)とを備え、前記テープ主体部(3)及び前記エレメント取付部(4)に経糸として弾性糸(8)と非弾性糸(9)とが併用して織り込まれ、且つ、緯糸として非弾性糸(10)が織り込まれている。また、前記弾性糸(8)及び前記非弾性糸(9)は、前記弾性糸(8)の前記非弾性糸(9)に対する織込割合が前記テープ主体部(3)よりも前記エレメント取付部(4)の方が大きくなるように織り込まれている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 テープ主体部(3)とエレメント取付部(4)とを有する織組織よりなるファスナーテープ(2)と、前記ファスナーテープ(2)の前記エレメント取付部(4)に非弾性糸である縫糸(5)により縫着された連続状のファスナーエレメント列(6)と、前記ファスナーエレメント列(6)内に挿通された弾性を有する芯紐(7)とを備え、前記テープ主体部(3)及び前記エレメント取付部(4)に経糸として弾性糸(8)と非弾性糸(9)とが併用して織り込まれ、且つ、緯糸として非弾性糸(10)が織り込まれてなるスライドファスナー用ファスナーストリンガー(1)であって、 前記経糸となる前記弾性糸(8)及び前記非弾性糸(9)は、前記エレメント取付部(4)における前記弾性糸(8)の前記非弾性糸(9)に対する織込割合が、前記テープ主体部(3)における前記弾性糸(8)の前記非弾性糸(9)に対する織込割合よりも大きくなるように織り込まれてなることを特徴とするファスナーストリンガー。 【請求項2】 前記エレメント取付部(4)及び前記芯紐(7)は、その長手方向に1kgの荷重を加えたときに10%以上伸びる伸度を有し、且つ、 前記エレメント取付部(4)、前記ファスナーエレメント列(6)、及び前記芯紐(7)の長手方向の伸び幅は、前記ファスナーストリンガー(1)が最も伸長したときにおける前記ファスナーエレメント列(6)の隣接するエレメント間のピッチ(11)が、同ファスナーエレメント列(6)の噛合頭部(6')におけるテープ長手方向の長さ(12)の2倍未満となるように、前記縫糸(5)によって制限されてなる、 請求項1記載のファスナーストリンガー。 【請求項3】 前記弾性糸(8)は、ポリウレタン弾性糸にポリエステルフィラメント糸を巻き付けて構成されてなる請求項1又は2記載のファスナーストリンガー。 【請求項4】 前記芯紐(7)は、複数本の前記弾性糸(8)を撚り合わせて構成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載のファスナーストリンガー。 【請求項5】 前記テープ主体部(3)に、前記弾性糸(8)が所定の間隔で規則的に織り込まれてなる請求項1〜4のいずれかに記載のファスナーストリンガー。 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のファスナーストリンガー(1)を含んでなることを特徴とするスライドファスナー。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、スポーツ用衣料等の伸縮性を有する衣料に使用されるスライドファスナー用のファスナーストリンガーに関し、特に、エレメント取付部が伸縮し、且つ、同エレメント取付部が伸長してもチェーン割れの発生を防ぐことが可能なスライドファスナー用ファスナーストリンガーに関する。 【背景技術】 【0002】 従来からスライドファスナーは、ファッション衣料や下着類に用いられており、また、編生地製の衣料やスポーツ用衣料等の伸縮性に富む衣料に対しても、多くのスライドファスナーが使用されてきている。このような伸縮性に富む各種衣料に使用されるスライドファスナーは、その衣料に対してスライドファスナーを体裁良く取り付けために、更には衣料の伸縮にスライドファスナーを対応させるために、スライドファスナーテープを織成又は編成するにあたって、その織組織又は編組織、或いは構成糸条の材質等を選択して、ファスナーテープに伸縮性を付与することが行われている。また一般に、スライドファスナーは、編成したファスナーテープよりも織成したファスナーテープを用いて形成された方が見栄えが良いことが知られている。 【0003】 上記のような伸縮性に富む衣料に用いられるスライドファスナーにおいて、例えばそのファスナーテープにテープ長手方向の伸縮性を付与する場合、一般にファスナーテープのテープ主体部には、テープ長手方向に適度な伸縮性が付与されるものの、同ファスナーテープの一側縁部に形成されてファスナーエレメントが取り付けられるエレメント取付部は伸縮しないように構成されている。 【0004】 その理由としては、例えばファスナーテープのテープ主体部とエレメント取付部とに伸縮性を付与した場合に、ファスナーテープのエレメント取付部が伸縮すると、同エレメント取付部に取り付けられたファスナーエレメント列も同様に伸縮する。このため、左右のファスナーエレメント列が噛合している状態でファスナーテープを伸長させたときに、ファスナーエレメント列がテープ長さ方向へある程度以上に伸びてしまうと、チェーン割れと呼ばれるエレメント取付部に取り付けられたエレメント同士の噛合が外れてファスナーが開くという不具合が生じてしまう。従って、一般的なスライドファスナーにおいては、ファスナーテープのエレメント取付部が非伸縮性に構成されていることが多い。 【0005】 しかしながら、例えばファスナーテープのテープ主体部が伸縮性に構成され、且つ、エレメント取付部が完全な非伸縮性に構成されたスライドファスナーを、例えば伸縮性を有する衣料に取り付けた場合、ユーザーがその伸縮性衣料を着用して身体を屈伸させる等の運動を行ったときに、テープ主体部は衣料の伸縮に応じて伸びたり縮んだりするものの、エレメント取付部が伸縮することはない。このため、衣料のスライドファスナー取付部に突っ張り現象が生じたり、また着用上、外観上にて著しい違和感が生じるという不具合があった。 【0006】 かかる不具合を解消すべく、例えば特開昭63−294804号公報(特許文献1)には、テープ主体部だけでなく、エレメント取付部縁辺にも伸縮性を付与したスライドファスナーが開示されている。この特許文献1に開示されているスライドファスナーは、例えばファスナーテープが織成されるときに、ファスナーテープのテープ主体部及びエレメント取付部を構成する経糸として、一定の間隔で規則的に配された弾性糸(スパンデックスのカバードヤーン)と、それ以外の部分に配された非弾性糸とを有している。また、ファスナーテープのエレメント取付部には、芯紐を内部に挿通したコイル状のファスナーエレメント列が縫糸により縫着されており、その芯紐としては、弾性糸がポリエステルの嵩高加工糸(非弾性糸)よりなる被覆層で被覆された構造を有するものが用いられている。 【0007】 このような構成を有する特許文献1のスライドファスナーは、エレメント取付部にもテープ主体部と同様に弾性糸が一定の間隔で規則的に配されているため、例えばファスナーテープの長手方向に4kgの荷重を加えたときにエレメント取付部が10%以上伸びるような伸度を有している。 【0008】 また一方で、エレメント取付部に配する弾性糸の配列本数の割合がテープ主体部の割合と同等であり、エレメント取付部にも非弾性糸が数多く織り込まれていること、芯紐が非弾性糸からなる被覆層によって被覆されて芯紐自体の伸度が抑制されていること、及び、非弾性の縫糸によりファスナーエレメント列と芯紐とがエレメント取付部に縫着されていることによって、ファスナーストリンガーが最も伸長したときにおける隣接するエレメント間のピッチが、同ファスナーエレメント列の噛合頭部におけるテープ長手方向の長さの2倍未満となるように規制されている。 【0009】 これにより、特許文献1のスライドファスナーは、伸縮性を有する衣料に取り付けた場合に、衣料の伸縮に順応してスライドファスナー取付部が伸縮するため、突っ張り現象や違和感が生じず、良好な着用感や良好な外観を得ることが可能となる。また、ファスナーテープのエレメント取付部に伸縮性を付与すると同時に、ファスナーエレメント列の最大の伸び幅を前述のように制限しているため、エレメント取付部が伸長しても、ファスナーエレメントの噛合が外れてスライドファスナーにチェーン割れが生じることを確実に防ぐことができる。 【特許文献1】特開昭63−294804号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 近年、スポーツ用衣料を始めとする各種衣料には、その用途や目的に応じて、より高い機能を有するものが要望されて開発されてきており、現在では、例えば生地の伸縮性がより一層高められた高伸縮性の衣料等が商品化され、普及してきている。 【0011】 一方、前記特許文献1に開示されているスライドファスナーは、エレメント取付部をテープ長手方向に10%以上伸長させるために、前述のようにファスナーテープの長手方向に4kgの荷重を加えることが必要とされる。従って、このようなエレメント取付部の伸度を有する特許文献1のスライドファスナーを、伸縮性が大きく高められた高伸縮性の衣料に対して使用した場合に、高伸縮性衣料の方は4kg未満の荷重(例えば、1kg程度の荷重)が加えられるとその動きに応じて容易に伸長するものの、特許文献1のスライドファスナーはその高伸縮性衣料に追随して伸長できるほどの十分な伸縮性を有していない。このため、スライドファスナーの取付部に突っ張り現象が生じたり、また、着用上、外観上で著しい違和感が生じるという不具合があり、改善する余地があった。 【0012】 本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、エレメント取付部の伸縮性を向上させ、例えば伸縮性が大きく高められた生地に用いられても、その伸縮動作に滑らかに追随することが可能であり、しかも、エレメント取付部が伸長しても噛合状態にあるファスナーエレメント列にチェーン割れが生じることを防ぐことが可能なスライドファスナー用ファスナーストリンガーを提供すること、更に、当該ファスナーストリンガーを含むスライドファスナーを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0013】 上記目的を達成するために、本発明により提供されるファスナーストリンガーは、基本的な構成として、テープ主体部とエレメント取付部とを有する織組織よりなるファスナーテープと、前記ファスナーテープの前記エレメント取付部に非弾性糸である縫糸により縫着された連続状のファスナーエレメント列と、前記ファスナーエレメント列内に挿通された弾性を有する芯紐とを備え、前記テープ主体部及び前記エレメント取付部に経糸として弾性糸と非弾性糸とが併用して織り込まれ、且つ、緯糸として非弾性糸が織り込まれてなるスライドファスナー用ファスナーストリンガーであって、前記経糸となる前記弾性糸及び前記非弾性糸は、前記エレメント取付部における前記弾性糸の前記非弾性糸に対する織込割合が、前記テープ主体部における前記弾性糸の前記非弾性糸に対する織込割合よりも大きくなるように織り込まれてなることを最も主要な特徴とするものである。 【0014】 また、本発明に係る開離嵌挿具付きスライドファスナーにおいては、前記エレメント取付部及び前記芯紐は、その長手方向に1kgの荷重を加えたときに10%以上伸びる伸度を有し、且つ、前記エレメント取付部、前記ファスナーエレメント列、及び前記芯紐の長手方向の伸び幅は、前記ファスナーストリンガーが最も伸長したときにおける前記ファスナーエレメント列の隣接するエレメント間のピッチが、同ファスナーエレメント列の噛合頭部におけるテープ長手方向の長さの2倍未満となるように、前記縫糸によって制限されている。 【0015】 本発明において、前記弾性糸は、ポリウレタン弾性糸にポリエステルフィラメント糸を巻き付けて構成されていることが好ましい。また、前記芯紐は、複数本の前記弾性糸を撚り合わせて構成されていることが好ましい。更に、前記テープ主体部に、前記弾性糸が所定の間隔で規則的に織り込まれていることが好ましい。 【0016】 また、本発明によれば、前述のような構成を備えたファスナーストリンガーを含んでなることを特徴とするスライドファスナーが提供される。 【発明の効果】 【0017】 本発明に係るスライドファスナー用ファスナーストリンガーでは、ファスナーテープのテープ主体部及びエレメント取付部の経糸となる弾性糸及び非弾性糸が、エレメント取付部における弾性糸の非弾性糸に対する織込割合を、テープ主体部における弾性糸の非弾性糸に対する織込割合よりも大きくして織り込まれている。 【0018】 例えば、前記特許文献1に開示されている従来のスライドファスナーでは、前述のようにファスナーテープのテープ主体部及びエレメント取付部に経糸として弾性糸と非弾性糸とが併用され、且つ、前記弾性糸が、テープ主体部及びエレメント取付部の非弾性糸からなる織組織中に所定の間隔をおいて規則的に織り込まれている。このため、エレメント取付部における弾性糸の非弾性糸に対する織込割合は、テープ主体部における弾性糸の非弾性糸に対する織込割合と等しくされている。 【0019】 また、ファスナーテープのエレメント取付部には、芯紐を内部に挿通したファスナーエレメント列が非弾性糸である縫糸によって縫着されており、また、前記芯紐自体が弾性糸を非弾性糸からなる被覆層で被覆して構成されている。このため、特許文献1ではエレメント取付部に弾性糸が織り込まれていても、エレメント取付部の伸縮性が、エレメント取付部に織り込まれている非弾性糸、ファスナーエレメント列を縫着している非弾性の縫糸、及び、非弾性糸で被覆された芯紐によって阻害されてしまう。このため、例えば当該スライドファスナーを高伸縮性の生地に縫着した場合では、エレメント取付部における伸縮度が不十分となっていた。 【0020】 これに対して、本発明のファスナーストリンガーは、ファスナーテープの経糸として織り込まれる弾性糸と非弾性糸との配列をエレメント取付部とテープ主体部との間で変化させることにより、エレメント取付部における弾性糸の織込割合をテープ主体部における弾性糸の織込割合よりも大きくして、エレメント取付部の伸縮性を大幅に向上させている。これにより、本発明のファスナーストリンガーは、エレメント取付部にファスナーエレメント列を縫糸で縫着することによる伸縮性への影響を相対的に小さくし、エレメント取付部における伸縮性を十分に確保している。 【0021】 特に、本発明のファスナーストリンガーでは、エレメント取付部における弾性糸の織込割合を大きくしたことにより、エレメント取付部がテープ長手方向に1kgの荷重を加えたときに10%以上伸びる伸度を有するように形成され、また、芯紐についてもその長手方向に1kgの荷重を加えたときに10%以上伸びる伸度を有するように形成されている。従って、本発明のファスナーストリンガーは、前記特許文献1のスライドファスナーに比べて、より軽い荷重でエレメント取付部を伸長させることができ、エレメント取付部の伸度(伸縮性)に非常に優れている。このため、本発明のファスナーストリンガーを例えば高い伸縮性を備えた生地に縫着しても、生地の伸縮動作に滑らかに追随してファスナーテープを容易に伸縮させることができ、突っ張り現象や違和感を生じさせずに、良好な着用感や良好な外観を得ることが可能となる。 【0022】 しかも、本発明のファスナーストリンガーは、エレメント取付部、ファスナーエレメント列、及び芯紐の長手方向の伸び幅が、ファスナーエレメント列及び芯紐をエレメント取付部に縫着する非弾性の縫糸によって、ファスナーストリンガーが最も伸長したときにおけるファスナーエレメント列の隣接するエレメント間のピッチが、同ファスナーエレメント列の噛合頭部におけるテープ長手方向の長さの2倍未満となるように確実に制限されている。これにより、本発明のファスナーストリンガーは、左右のファスナーエレメント列を噛合させた状態でエレメント取付部を伸長させても、ファスナーエレメントの噛合が外れてチェーン割れが生じることを確実に防ぐことができる。 【0023】 また、本発明においては、弾性糸がポリウレタン弾性糸にポリエステルフィラメント糸を巻き付けて構成されていることにより、ポリエステルフィラメント糸の巻き付け量を変化させて弾性糸自体の伸度を例えば120%〜160%程度に調整することができる。このような弾性糸が、テープ主体部よりも大きな織込割合でエレメント取付部に織り込まれていることにより、前述のような1kgの荷重を加えたときに10%以上伸びる伸度をエレメント取付部に容易に付与することができる。 更に、前記芯紐が複数本の弾性糸を撚り合わせて構成されていることによって、芯紐に対しても、前述のような1kgの荷重を加えたときに10%以上伸びる伸度を容易に付与することができる。 【0024】 更にまた、本発明においては、テープ主体部に弾性糸が所定の間隔で規則的に織り込まれていることにより、テープ主体部に対してテープ長手方向の伸縮性をテープ幅方向に均等に付与することができる。これにより、ファスナーストリンガーをより安定して高伸縮性生地に縫着させることができ、製品の着用感や外観を更に向上させることが可能となる。 【0025】 また、上記のような構成を有するファスナーストリンガーを含む本発明のスライドファスナーであれば、ファスナーテープのエレメント取付部における伸縮性が従来よりも大幅に向上している。このため、本発明のスライドファスナーが例えば高伸縮性の生地に縫着されても、その伸縮動作に滑らかに追随することが可能である。しかも、本発明のスライドファスナーであれば、エレメント取付部、ファスナーエレメント列、及び芯紐における長手方向の伸び幅が前述のように制限されているため、高伸縮性生地の伸縮動作に順応してエレメント取付部が伸長しても、噛合状態にある左右のファスナーエレメント列が外れて、スライドファスナーにチェーン割れが生じることを確実に防ぐことができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0026】 以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する各実施例に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、下記実施形態においては、ファスナーテープのエレメント取付部にコイル状のファスナーエレメント列が縫着されたファスナーストリンガーについて説明しているが、本発明はこれに限定されず、例えばコイル状のファスナーエレメント列に代えてジグザグ状のファスナーエレメント列を縫着してファスナーストリンガーを形成しても良い。 【0027】 ここで、図1は、本実施形態に係るファスナーストリンガーの織組織を模式的に示す組織図であり、図2は、同ファスナーストリンガーの断面を模式的に示す断面図である。 本実施形態に係るファスナーストリンガー1は、図1及び図2に示したように、テープ主体部3及びエレメント取付部4を有するファスナーテープ2と、縫糸5によってエレメント取付部4に縫着されたコイル状のファスナーエレメント列6と、ファスナーエレメント列6内に挿通され、縫糸5によってファスナーエレメント列6とともに縫着された芯紐7とを備えている。なお、本発明におけるエレメント取付部とは、テープ幅方向において、少なくとも芯紐にかかるファスナーテープの部分(芯紐が重なるテープ部分)を含む領域であり、特に、ファスナーエレメント列にかかるテープ部分(ファスナーエレメント列が重なるテープ部分)の領域を指している。 【0028】 前記ファスナーテープ2は、緯糸を経糸の同一開口内にキャリアをもって往復させることにより一回の緯打ちを完了させる細幅織機を使って織成されており、テープ主体部3の一方の側縁に沿ってエレメント取付部4が形成されている。このファスナーテープ2のテープ主体部3とエレメント取付部4とには、経糸として弾性糸8と非弾性糸9とが併用して織り込まれおり、且つ、緯糸として非弾性糸10が織り込まれていることによって、図1に示すような織組織が形成されている。 【0029】 本実施形態において、経糸として用いられる弾性糸8には、ポリウレタン弾性糸にポリエステルフィラメント糸を巻き付けることによって構成されたスパンデックスのカバードヤーンが用いられており、また、経糸及び緯糸として用いられる非弾性糸9,10には、ポリエステル加工糸が用いられている。 【0030】 なお、本発明では、弾性糸及び非弾性糸の材質は特に限定されず、例えば前記弾性糸としては、その他のエラストマーからなるゴム糸や、そのゴム糸に紡績糸やフィラメントを巻き付けたカバードヤーン等から適宜選択することができる。また、経糸又は緯糸に用いられる非弾性糸についても、紡績糸、モノフィラメント、マルチフィラメント等の従来から一般的に用いられているものを使用することができる。また、弾性糸及び非弾性糸の太さについても特に限定されないが、例えばファスナーテープ2に好適な強度を付与でき、且つ、前記ファスナーエレメント列6をエレメント取付部4に縫着するときに、ミシン針を挿通可能にするような太さで形成された弾性糸や非弾性糸を用いることが好ましい。 【0031】 前記テープ主体部3の経糸には、非弾性糸9が6本配列される毎に、2本の弾性糸8が引き揃えて配列されており、且つ、弾性糸8よりも非弾性糸9の本数の割合が多くなるように弾性糸8が所定の間隔で規則的に織り込まれている。このように引き揃えられた複数の非弾性糸9と、これらの複数の非弾性糸9の本数よりも少ない数で引き揃えられた複数の弾性糸8とを規則的に織り込みことによって、テープ主体部3に対してテープ長手方向の伸縮性をテープ幅方向に均等に付与することができる。 【0032】 また、ファスナーテープ2の前記エレメント取付部4は、7本の弾性糸8と2本の非弾性糸9とを用いて織り込まれており、噛合頭部6’側の側縁に配される経糸には非弾性糸9が用いられ、その非弾性糸9からエレメント取付部4の反対側の側縁に向けて、非弾性糸9と弾性糸8とを交互に少なくとも1回以上、好ましくは、2回繰り返して配列してから、エレメント取付部4の反対側側縁まで弾性糸8を連続的に並べて配列することにより、弾性糸8よりも非弾性糸9の本数の割合が小さくなるようにエレメント取付部4を構成している。即ち、本実施形態のファスナーテープ2では、経糸として織り込まれる弾性糸8及び非弾性糸9の本数と配列をテープ主体部3とエレメント取付部4との間で変化させて、エレメント取付部4における弾性糸8の非弾性糸9に対する織込割合を、テープ主体部3における弾性糸8の非弾性糸9に対する織込割合よりも大きくしている。なお、本発明において、ファスナーテープ2の両側縁に配される経糸には非弾性糸9が用いられていることが好ましい。これにより、ファスナーテープ2の形態が安定し、体裁の良いファスナーテープを作製することができる。 【0033】 このとき、エレメント取付部4には、経糸として弾性糸8と非弾性糸9とが前述のように織り込まれていることによって、テープ長手方向に1kgの荷重を加えたときに10%以上伸びることが可能な伸度が付与されている。なお、本実施形態では、エレメント取付部4において、2本の非弾性糸9がテープ側縁寄りに織り込まれているが、本発明において、エレメント取付部4における弾性糸8及び非弾性糸9の配列位置は、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更することが可能である。 【0034】 前記ファスナーエレメント列6は、その内部に前記芯紐7が挿通されており、コイル状ファスナーエレメント列の噛合頭部6’がファスナーテープ2のテープ側縁から突出する状態で、縫糸5によってエレメント取付部4に縫着されている。このファスナーエレメント列6は、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維のモノフィラメントをコイル状に捲回して作製されており、ファスナーエレメント列6の内部には芯紐7を挿通し介在させることによって、ファスナーエレメント列6のエレメント取付部4への装着を安定させ、更に、ファスナーエレメント列6の噛合動作の安定化を図っている。また、ファスナーエレメント列6を縫着する前記縫糸5には、ポリエステルのモノフィラメントを撚り合せて構成された非弾性の撚糸が用いられている。 【0035】 前記芯紐7は、ポリウレタン弾性糸にポリエステルフィラメント糸を巻き付けて構成されたスパンデックスのカバードヤーンを9本撚り合わせた撚糸として形成されており、その長手方向に1kgの荷重を加えたときに10%以上伸びることが可能な伸度が付与されている。 【0036】 また、本実施形態のファスナーストリンガー1は、エレメント取付部4、ファスナーエレメント列6、及び芯紐7の長手方向の伸び幅が、縫糸5によって、ファスナーストリンガー1が最も伸長したときにおけるファスナーエレメント列6の隣接するエレメント間のピッチ11が、同ファスナーエレメント列6の噛合頭部6’におけるテープ長手方向の長さ12の2倍未満となるように制限されている。なお、前記ピッチ11とは、図1に示したように、ファスナーエレメント列6において、隣接する噛合頭部6’の中心線間のテープ長手方向の間隔のことを示している。 【0037】 ここで、縫糸5によって長手方向の伸び幅を制限する方法について説明する。 例えば本実施形態のファスナーストリンガー1を製造する場合、ファスナーテープ2を織成するときに、ファスナーテープ2を構成する経糸には所定の張力が加えられ、また、織成するファスナーテープ2はエレメント取付部4における弾性糸8の織込割合をテープ主体部3における弾性糸8の織込割合よりも大きくしている。このため、織成されたファスナーテープ2には、エレメント取付部側が凹状となり他方のテープ側縁部側が凸状となる極端な湾曲形態の所謂バイアスが生じている。 【0038】 従って、このようなバイアスが生じているファスナーテープ2にファスナーエレメント列6を縫着する際には、先ず、ファスナーテープ2に所定の大きさでテープ長手方向の張力を加えることによってファスナーテープを直線状の形態に保持する。次に、芯紐7が挿通されたファスナーエレメント列6に所定の大きさの張力をかけ、同ファスナーエレメント列6を直線状の形態に保持されているファスナーテープ2のエレメント取付部4上に載置した後、芯紐7及びエレメント取付部4にミシン針を刺通してファスナーエレメント列6を縫糸5によってエレメント取付部4に縫着する。 【0039】 そして、ファスナーエレメント列6を縫製した後、ファスナーテープ2、芯紐7、及びファスナーエレメント列6に加えられている張力を解除することにより、ファスナーテープ2全体にかかる緊張が解除される。このとき、テープ主体部3よりもエレメント取付部4、芯紐7及びファスナーエレメント列6の方が、弾性糸8の弾性力と芯紐7の弾性力とが働くことによって、より大きく収縮する。このときの収縮した大きさ(長さ)が、テープ長手方向の伸び幅として確保される。なお、エレメント取付部4、芯紐7、及びファスナーエレメント列6は、テープ主体部3よりも大きい収縮率を有しているために、ファスナーエレメント列6もその収縮動作に滑らかに追随することができる。また、エレメント取付部4及び芯紐7が収縮した際に、非弾性糸である縫糸5は、図1に示すようなループが間歇的に形成されることによってその収縮を吸収している。 【0040】 このようにしてファスナーエレメント列6の縫製を行うことにより、ファスナーストリンガー1は、ファスナーエレメント列6を縫着したときにおける長さよりも長く伸長することを縫糸5によって抑制される。このため、予め、ファスナーエレメント列6の縫製後に収縮するエレメント取付部4、芯紐7及びファスナーエレメント列6の収縮量を考慮して、ファスナーエレメント列6を縫着する際にファスナーテープ2、芯紐7、及びファスナーエレメント列6に加える張力の大きさを調節することによって、エレメント取付部4、ファスナーエレメント列6、及び芯紐7の長手方向の伸び幅を所定の大きさに確実に制限することができる。 【0041】 即ち、本実施形態のファスナーストリンガー1は、エレメント取付部4における弾性糸8の織込割合をテープ主体部3よりも大きくしてファスナーテープ2を織成したことによってファスナーテープ2に極端なバイアスが生じ、このようなバイアスが生じているファスナーテープ2に張力をかけて芯紐7及びファスナーエレメント列6を縫着することによって、エレメント取付部4及び芯紐7に前述のような優れた伸度を付与できるとともに、エレメント取付部4、芯紐7、及びファスナーエレメント列6の伸び幅を一定の範囲に制限することができる。従って、本実施形態のファスナーストリンガー1は、左右のファスナーエレメント列6を噛合させた状態でエレメント取付部4を伸長させても、ファスナーエレメントの噛合が外れてチェーン割れが生じることを確実に防ぐことができる。 【0042】 次に、上記のような本実施形態のファスナーストリンガー1を用いて形成されたスライドファスナーについて説明する。ここで、図3は、本実施形態に係るスライドファスナーを模式的に示した正面図である。 図3に示したスライドファスナー21は、前記ファスナーストリンガー1に縫着されたファスナーエレメント列6に、引手を有するスライダー22が挿通されている。また、ファスナーエレメント列6の上端部には、止部としての上止め23が装着されるとともに、ファスナーエレメント列6の下端部には、両下端部を分離不能に結合する下止め24が装着されており、前記スライダー22は、上止め23と下止め24との間を摺動可能に配置されている。なお、本発明においては、前記下止め24に代えて、ファスナーエレメント列6の下端部を分離可能とする蝶棒、箱棒及び箱体から構成される開離嵌挿具を設けてスライドファスナーを構成しても良い。 【0043】 このような本実施形態のスライドファスナー21は、ファスナーテープ2のエレメント取付部4及び芯紐7における伸度が前述のように大幅に向上して、従来のスライドファスナーよりも小さい荷重でエレメント取付部4及びファスナーエレメント列6を伸長させることができるため、例えばファスナーテープ2のテープ主体部3が高伸縮性の生地に縫着されても、生地の伸縮動作に滑らかに追随してファスナーテープ2を容易に伸縮させることができる。従って、前記スライドファスナー21を高伸縮性衣料に使用することにより、従来のような突っ張り現象や違和感を生じさせることなく、良好な着用感や良好な外観を得ることが可能となる。 【0044】 しかも、本実施形態のスライドファスナー21は、エレメント取付部4、ファスナーエレメント列6、及び芯紐7におけるテープ長手方向の伸び幅が縫糸5によって前述のような所定範囲に制限されているため、高伸縮性衣料の伸縮動作に順応してエレメント取付部が伸長しても、ファスナーエレメント列6の隣接するエレメント間のピッチ11が、同ファスナーエレメント列6の噛合頭部6’におけるテープ長手方向の長さ12の2倍以上となることはない。従って、スライドファスナー21にチェーン割れが生じることを確実に防ぐことができる。 【図面の簡単な説明】 【0045】 【図1】本発明に係るファスナーストリンガーの織組織を模式的に示す組織図である。 【図2】同スライドファスナーの断面を模式的に示す断面図である。 【図3】本発明に係るスライドファスナーを模式的に示した正面図である。 【符号の説明】 【0046】 1 ファスナーストリンガー 2 ファスナーテープ 3 テープ主体部 4 エレメント取付部 5 縫糸 6 ファスナーエレメント列 6’ 噛合頭部 7 芯紐 8 弾性糸 9 非弾性糸(経糸) 10 非弾性糸(緯糸) 11 隣接するエレメント間のピッチ 12 噛合頭部におけるテープ長手方向の長さ 21 スライドファスナー 22 スライダー 23 上止め 24 下止め
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000006828 【氏名又は名称】YKK株式会社
|
| 【出願日】 |
平成18年8月11日(2006.8.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091948 【弁理士】 【氏名又は名称】野口 武男
【識別番号】100070529 【弁理士】 【氏名又は名称】縣 一郎
【識別番号】100119699 【弁理士】 【氏名又は名称】塩澤 克利
|
| 【公開番号】 |
特開2008−43432(P2008−43432A) |
| 【公開日】 |
平成20年2月28日(2008.2.28) |
| 【出願番号】 |
特願2006−220114(P2006−220114) |
|