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【発明の名称】 衝撃吸収部材および衝撃吸収部材付き衣類
【発明者】 【氏名】島 昌子

【要約】 【課題】着用者の不快感を和らげるとともに、快適で動きやすい衝撃吸収部材および衝撃吸収部材付き衣類を提供する。

【構成】ヒッププロテクターを着用したときに、少なくとも人体の脇側にある大転子に対応する部位を覆う位置に備えられる衝撃吸収部材1であって、この衝撃吸収部材1は、発泡体シート11,12,13を積層した発泡体シート層と、発泡体シート層のうちの内側に挟まれている発泡体シート12の少なくとも一部を覆う布製のカバー16と、発泡体シート層全体を覆うサイズよりも小さいサイズに縫製された布製の収容カバー15とを備える。発泡体シート12のサイズは、発泡体シート11,13のサイズよりも小さく、発泡体シート11,13の一部の幅aは、発泡体シート12の一部の幅bよりも狭い。この発泡体シート層の平面形状は四辺形qの各角部を取り除いた形状である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三枚以上の発泡体シートを積層した発泡体シート層と、
前記発泡体シート層のうちの内側に挟まれている発泡体シートの少なくとも一部を覆う布製のカバーと、を備え、
前記発泡体シート層の平面形状は四辺形の各角部を取り除いた形状であり、少なくとも人体の脇側にある大転子および当該大転子に連なる大腿骨の一部に対応する部位を覆うことができる形状であることを特徴とする衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記内側に挟まれている発泡体シートのサイズは、前記発泡体シート層のうちの外側に位置する二枚の発泡体シートのサイズよりも小さく、
前記外側に位置する二枚の発泡体シートの一部の幅を、前記内側に挟まれている発泡体シートの一部の幅よりも狭くすることで、前記内側に挟まれている発泡体シートの動きを止めることを特徴とする請求項1記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記発泡体シート層は、当該発泡体シート層全体を覆うサイズよりも小さいサイズに縫製された布製の収容カバーに収容されることを特徴とする請求項1または2記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記外側に位置する二枚の発泡体シートのサイズをそれぞれ異なるサイズで形成することを特徴とする請求項3記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の衝撃吸収部材を備える衝撃吸収部材付き衣類であって、
前記衝撃吸収部材は、当該衣類を着用したときに、少なくとも人体の脇側にある大転子および当該大転子に連なる大腿骨の一部に対応する部位を覆う位置に備えられることを特徴とする。
【請求項6】
前記衝撃吸収部材は、当該衣類を着用したときに、人体の脇側から後側にかけてある坐骨に対応する部位をさらに覆う位置に備えられることを特徴とする請求項5記載の衝撃吸収部材付き衣類。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収部材および衝撃吸収部材付き衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者の骨折は、転倒事故によって生じることが多い。特に、高齢者が転倒した場合には、大腿骨頸部を骨折する頻度が高く、入院の長期化や寝たきりの要因になっている。この大腿骨頸部の骨折は、立った高さからの転倒や屋内での転倒によるものが大半を占める。近年、このような転倒時の衝撃を軽減するために、衝撃吸収部材を備えた各種の衣類が開発されている。例えば、下記特許文献1および特許文献2には、転倒や衝突等による衝撃から腰部や大腿部等を保護するための衝撃吸収部材を備えた衣類が開示されている。
【特許文献1】特開平10−237708号公報
【特許文献2】実用新案登録第3017128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の衝撃吸収部材付き衣類では、衝撃吸収部材が大きすぎたり、硬すぎたりすることから、着用者の動きを阻害する要因になるとともに、着用者に不快感を与えていた。
【0004】
そこで、本発明は、着用者の不快感を和らげるとともに、快適で動きやすい衝撃吸収部材および衝撃吸収部材付き衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の衝撃吸収部材は、三枚以上の発泡体シートを積層した発泡体シート層と、発泡体シート層のうちの内側に挟まれている発泡体シートの少なくとも一部を覆う布製のカバーと、を備え、発泡体シート層の平面形状は四辺形の各角部を取り除いた形状であり、少なくとも人体の脇側にある大転子および当該大転子に連なる大腿骨の一部に対応する部位を覆うことができる形状であることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、発泡体シート層のうちの内側に挟まれている発泡体シートの少なくとも一部を布製のカバーで覆うことによって、発泡体シート層に含まれる発泡体シート同士が張り付いて固着してしまう事態を防止することができるため、衝撃吸収力をより増大させることができる。また、発泡体シート層の平面形状を、四辺形の各角部を取り除いた形状、かつ少なくとも人体の脇側にある大転子および当該大転子に連なる大腿骨の一部に対応する部位を覆うことができる形状にすることで、本願発明に係る衝撃吸収部材を、例えば、衣類の大転子に対応する部位を覆う位置に備えた場合には、この衣類の着用者が立ったり座ったりしても、衝撃吸収部材の一部が体のラインよりも外側に飛び出してしまう事態を防止することができる。したがって、衝撃吸収部材の位置が大きくずれてしまうことや、着用者の動きを阻害することを防止することができ、着用者の不快感を軽減させることができる。それゆえに、快適で動きやすいという顕著な効果を奏することができる。
【0007】
また、本発明の衝撃吸収部材および衝撃吸収部材付き衣類において、上記内側に挟まれている発泡体シートのサイズは、発泡体シート層のうちの外側に位置する二枚の発泡体シートのサイズよりも小さく、上記外側に位置する二枚の発泡体シートの一部の幅を、内側に挟まれている発泡体シートの一部の幅よりも狭くすることで、内側に挟まれている発泡体シートの動きを止めることが好ましい。
【0008】
このように、内側に挟まれている発泡体シートの一部分に、外側に位置する発泡体シートの一部の幅よりも広い幅を有する部分を形成することによって、この広い幅を有する部分が狭い幅部分を通過することができなくなる(ストッパー機構)。これにより、接着剤等を使用することなく、発泡体シートを定位置に留めることが可能となる。このようなストッパー機構を採用することで、二枚の発泡体シートの間に挟まれているサイズの小さな発泡体シートが移動してしまう事態を防止することができる。
【0009】
また、本発明の衝撃吸収部材において、上記発泡体シート層は、当該発泡体シート層全体を覆うサイズよりも小さいサイズに縫製された布製の収容カバーに収容されることが好ましい。
【0010】
このようにすれば、発泡体シート層を収縮させる方向に圧力をかけることができるため、発泡体シート層に膨らみをもたせることができ、衝撃吸収力をより増大させることができる。
【0011】
また、本発明の衝撃吸収部材において、上記外側に位置する二枚の発泡体シートのサイズをそれぞれ異なるサイズで形成することが好ましい。
【0012】
このようにすれば、サイズの大きい発泡体シートの周端部が、サイズの小さい発泡体シートの周端部に接近するように湾曲してより大きく変形するため、発泡体シート層の膨らみをより大きくすることができる。
【0013】
本発明の衝撃吸収部材付き衣類において、上記衝撃吸収部材が、当該衣類を着用したときに、少なくとも人体の脇側にある大転子および当該大転子に連なる大腿骨の一部に対応する部位を覆う位置に備えられることが好ましく、人体の脇側から後側にかけてある坐骨に対応する部位をさらに覆う位置に備えられることがより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る衝撃吸収部材および衝撃吸収部材付き衣類によれば、着用者の不快感を和らげるとともに、快適で動きやすいという優れた効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1〜図8を参照して、実施形態における衝撃吸収部材および衝撃吸収部材付き衣類であるヒッププロテクターについて説明する。
【0017】
図1および図3は、平面上に置かれた衝撃吸収部材1を真上から見た図であり、図2は、図1のII−II断面矢視図である。図4〜図8は、衝撃吸収部材1を備えたヒッププロテクター2を着用状態で示した図である。図4は、直立状態のヒッププロテクター2を左側横方向から見た図であり、図5は、直立状態のヒッププロテクター2を前側正面方向から見た図であり、図6は、直立状態のヒッププロテクター2を後側正面方向から見た図である。図7は、着座状態のヒッププロテクター2を左側横方向から見た図であり、図8は、着座状態のヒッププロテクター2を後側正面方向から見た図である。
【0018】
図4〜図8に示す衝撃吸収部材1は、ヒッププロテクター2を着用したときに、人体の脇側および斜め後側にある大転子T(大転子Tから連なる大腿骨Cの一部含む。以下、同様)および坐骨に対応する部位を覆う位置に備えられる。これにより、真横に転倒した場合に受ける衝撃のみならず、斜め後方に転倒した場合に受ける衝撃を、衝撃吸収部材1で吸収することができる。
【0019】
ここで、前方、後方および横方向への転倒は、両手を使って防御することで腰部や臀部への衝撃を防止または和らげることができる。しかしながら、斜め後方への転倒は、特に体力が衰えた高齢者等の場合には、両手での防御が間に合わず、転倒時の衝撃を腰部や臀部にまともに受けてしまうことが多い。したがって、斜め後方に転倒した場合には、大腿骨頸部を骨折する事態に陥り易く、大腿骨頸部を骨折した場合には入院の長期化や寝たきりの状態を招いてしまう。このような事実を考慮すると、衝撃吸収部材1が、脇側にある腰部のみならず、斜め後側にある腰部や臀部までを覆うことによって、斜め後方への転倒により腰部や臀部がまともに受ける大きな衝撃を有効に吸収させることができるため、大腿骨頸部が骨折してしまう事態を極力回避させることが可能となる。
【0020】
なお、衝撃吸収部材1は、ヒッププロテクター2を着用したときに、少なくとも人体の脇側にある大転子Tに対応する部位を覆う位置に備えられていればよいが、大転子Tから坐骨結節の先端部付近までの間に対応する部位を覆う位置にまで備えられていることがより好ましい。これにより、斜め後方に転倒した場合に受ける腰部や臀部への衝撃をより有効に吸収することができる。さらに、人体の脇側から後側にかけてある坐骨に対応する部位を覆う位置にまで備えられていることがより好ましい。これにより、後方に転倒した場合に受ける臀部への衝撃も有効に吸収することができる。
【0021】
衝撃吸収部材1は、積層された三枚の発泡体シート11,12,13(以下、発泡体シート層という)を主な構成要素としている。発泡体シート11,12,13は、NPゲル(発泡ゲル)からなっており、復元力や保持力に優れている。発泡体シート11,12,13の厚さは、それぞれ3mmである。したがって、発泡体シート層の厚さは、9mmとなる。なお、衝撃吸収部材1を、9mmの発泡体シート層で構成することによって、9mmの発泡体シート一枚で衝撃吸収部材を構成する場合よりも、軽くて柔らかく、かつ衝撃吸収力に優れた衝撃吸収部材を提供することが可能となる。
【0022】
ここで、表1を参照して、発泡体シートの厚さや積層枚数を変えて発泡体シートの衝撃加速度を測定した結果について説明する。
【表1】




【0023】
表1の衝撃加速度は、直径30mm、重さ8.4kgの錘を、100mmの高さから発泡体シート上に落下させることによって測定した。
【0024】
ここで、本願発明者は、表1に示す規格値の厚さ(mm)と衝撃加速度(G)を用いて、シート厚による衝撃加速度の変化を示す近似直線を作成し、衝撃加速度が目標値(2100m/s)に達するシート厚を求めたところ、シート厚が8.6mm以上あれば、衝撃加速度が目標値である2100m/sに達するという見解を得た。この見解に従うと、本実施形態における発泡体シート層は、9mmであるため、衝撃加速度は目標値である2100m/sよりも小さくなる。それゆえに、本実施形態における発泡体シート層は、衝撃吸収力に優れている。
【0025】
表1に示す測定結果によって、発泡体シートの厚さが厚いほど衝撃加速度が小さくなり、厚さが同じである場合には、積層枚数が多いほど衝撃加速度が小さくなるという傾向があることが判明した。
【0026】
発泡体シート層のうちの内側に挟まれている発泡体シート12の一部は、布製のカバー16で覆われている。このように発泡体シート12の一部を布製のカバー16で覆うことによって、発泡体シート層に含まれる三枚の発泡体シート11,12,13同士が張り付いて固着してしまう事態を防止することができる。また、三枚の発泡体シート11,12,13を固着させずに独立して変形等できるようにしておくことで、衝撃吸収力をより増大させることができる。
【0027】
なお、布製のカバー16は、発泡体シート12全体を覆うこととしてもよい。しかしながら、発泡体シート12の一部に、布製のカバー16で覆われていない部分を設けておくことによって、布製のカバー16で覆われていない部分を、外側に位置する発泡体シート11,13の一部と張り付き易くすることができる。これにより、内側に挟まれている発泡体シート12が定位置からずれてしまう事態を防止することができる。
【0028】
内側に挟まれている発泡体シート12のサイズは、外側に位置する二枚の発泡体シート11,13のサイズよりも小さい。これにより、発泡体シート層の一部、特にその周縁部付近を二枚の発泡体シート11,13のみで形成させることができる。すなわち、発泡体シート層の周縁部付近の厚みを薄くすることができる。それゆえに、着用者の不快感をより和らげることができるとともに、より快適で動きやすいヒッププロテクターを提供することができる。このようなヒッププロテクターを着用することによって、例えば、就寝時の寝返りを容易にすることができるとともに、着用時にアウターウェアに浮き出る衝撃吸収部材の輪郭を目立たなくすることができる。
【0029】
外側に位置する二枚の発泡体シート11,13のサイズはそれぞれ異なるサイズで形成されており、発泡体シート11のサイズは、発泡体シート13のサイズよりも大きい。本実施形態では、サイズが小さい方の発泡体シート13が、ヒッププロテクター2の着用時に人体の肌側に配置される。
【0030】
発泡体シート層は、この発泡体シート層全体を覆うサイズよりも小さいサイズに縫製された布製の収容カバー15内に収容される。これにより、発泡体シート層を収縮させる方向に圧力をかけることができる。したがって、図2に示すように、発泡体シート13よりもサイズの大きい発泡体シート11が湾曲して変形するため、発泡体シート層の内側には空間が生じる。このような空間が生じることによって、発泡体シート層が膨らみをもつようになり、この膨らみをもつことによって衝撃吸収力をより増大させることができる。
【0031】
なお、収容カバー15のサイズは、発泡体シート13全体を覆うサイズよりも小さい方が好ましい。これにより、サイズの大きい発泡体シート11の周端部を、サイズの小さい発泡体シート13の周端部に接近させることができ、発泡体シート層の膨らみをより大きくすることが可能となる。
【0032】
図3に示すように、外側に位置する二枚の発泡体シート11,13の一部の幅aは、内側に挟まれている発泡体シート12の一部の幅bよりも狭い。このように、内側に挟まれている発泡体シート12の一部分に、外側に位置する発泡体シート11,13の幅aよりも広い幅bを有する部分を形成することによって、幅bを有する部分が幅a部分を通過することができなくなる(ストッパー機構)。これにより、接着剤等を使用することなく、発泡体シート12を定位置に留めることが可能となる。このようなストッパー機構を採用することで、二枚の発泡体シート11,13の間に挟まれているサイズの小さな発泡体シート12が移動してしまう事態を防止することができる。なお、三枚の発泡体シート11,12,13を収容カバー15内に収容し、収容カバー15の周縁を縫製する際に、三枚の発泡体シート11,12,13が重なり合っている端部eを収容カバー15の周縁と共に縫い込むこととしてもよい。これにより、発泡体シート12の移動をより強固に防止することができる。したがって、例えば、ヒッププロテクター2を洗濯した場合に、発泡体シート12がねじれてしまう事態をより確実に回避させることができる。
【0033】
図3に示すように、発泡体シート層の平面形状は、四辺形qの各角部を取り除いた形状となる。このような形状にすることによって、着用者が立ったり座ったりしたときに衝撃吸収部材1の位置が大きくずれてしまうことや、着用者の動きを阻害することを防止することができ、着用者の不快感を軽減させることができる。
【0034】
ここで、衝撃吸収部材を四辺形のまま使用した場合には、次のような不具合が生じる。例えば、図4に示す直立状態から図7に示す着座状態に移行すると、体のラインはこの動きに合わせて変形する。これに対して、衝撃吸収部材は、体の動きに合わせて形状を変形することができない。したがって、特に衝撃吸収部材の角部が体のラインよりも外側に飛び出してしまうことになる。しかしながら、この飛び出した角部には、体のラインに収まるように押し戻そうとする力(例えば、伸ばされた衣服の収縮力、転倒時に受ける地面からの反力等)が働くため、その力によって衝撃吸収部材全体が動かされ、衝撃吸収部材の位置が大きくずれてしまう。すなわち、例えば、着用者が転倒した場合に、体のラインよりも外側に飛び出した角部が地面からの反力等を受けることによって、衝撃吸収部材の位置が保護部位(例えば、大転子周辺)から外れてしまうことが考えられる。このような場合に、衝撃吸収部材は、保護部位を保護することができなくなる。したがって、転倒等による衝撃から腰部や大腿部等を保護するという衝撃吸収部材の目的を果たすことができなくなくなってしまう。
【0035】
そこで、本願発明では、着用者が立ったり座ったりした場合でも、衝撃吸収部材1の一部が体のラインよりも外側に飛び出してしまうことがないように、発泡体シート層の平面形状を、着用者が立ったり座ったりする際の体のラインの変形に適合する形状に形成した。具体的には、例えば、まず、発泡体シート層の平面形状を、四辺形の各角部を取り除いた形状にし、さらに、人体の脇側および斜め後側にある大転子および坐骨に対応する部位を覆いつつも、動きの大きい人体部位を覆う部分については極力取り除くこととした。ここで、動きの大きい人体部位としては、例えば、大腿部の付け根周辺が該当する。動きの大きい人体部位を衝撃吸収部材で覆うと、着用者の動きを妨げる要因になり得る。また、動きの大きい人体部位を衝撃吸収部材で覆った場合には、衝撃吸収部材に覆われた人体部位の形状が着用者の動きにあわせて大きく変化するため、着用者の動きによって人体部位に密着している衝撃吸収部材の一部が人体部位から浮いてしまい、ひいては、衝撃吸収部材が位置ずれを起こす要因にもなり得る。衝撃吸収部材が人体部位から浮いてしまうと、衝撃吸収力が低減してしまう要因となる。これらの問題を解決するために、本実施形態における衝撃吸収部材は、四辺形の各角部を取り除いたうえで、さらに動きの大きい人体部位を覆う部分を極力取り除いた形状になっている。
【0036】
次に、ヒッププロテクターを着用させたダミーとヒッププロテクターを着用させないダミーとをそれぞれ転倒させて転倒時の衝撃力を測定した転倒試験の結果について説明する。
【0037】
この転倒試験では、ダミーに着用させるヒッププロテクターとして、以下の2種類のヒッププロテクターを用意した。第一のヒッププロテクターは、上述した図1〜図3に示すサイズの異なる三枚の発泡体シート11,12,13を積層させた衝撃吸収部材を採用したヒッププロテクターであり、第2のヒッププロテクターは、同一サイズの三枚の発泡体シートを積層させた衝撃吸収部材を採用したヒッププロテクターである。図9および図10を参照して、2種類のヒッププロテクターの相違について具体的に説明する。図9は、第一のヒッププロテクターに採用された発泡体シート層の周端部付近の断面図であり、図10は、第二のヒッププロテクターに採用された発泡体シート層の周端部付近の断面図である。図9に示すように、第一のヒッププロテクターの発泡体シート層は、着用者の外側から順に、一番サイズの大きな発泡体シート11、一番サイズの小さな発泡体シート12、中間サイズの発泡体シート13が積層されている。一方、図10に示すように、第二のヒッププロテクターの発泡体シート層は、同一サイズの三枚の発泡体シート11a,12a,13aが、着用者の外側から順に積層されている。すなわち、第一のヒッププロテクターの発泡体シート層は、厚みが出ないように、各発泡体シートの周端部をずらして積層しているのに対して、第二のヒッププロテクターの発泡体シート層は、各発泡体シートの周端部をそろえて積層している点で両者は異なる。なお、ヒッププロテクターを着用させたダミーには、ダミーの肌側から順に、ショーツ、ヒッププロテクター、5部丈パンツ、ズボンが着用させられており、ヒッププロテクターを着用させないダミーには、ダミーの肌側から順に、ショーツ、5部丈パンツ、ズボンが着用させられている。
【0038】
この転倒試験で採用した計測システムは、転倒用のダミーおよび打撃錘のホールド用の電磁石と整流器、マイクロスイッチと股関節部プレートに設置された3軸加速度計、記録部によって構成されている。
【0039】
転倒用のダミーは、身長150cm、体重50kgのダミーモデルであり、耐久性を向上させるために四肢全体の表面を軟質ウレタンで被うとともに、身体各部の質量や重心が人体四肢部の物性値になるように、鋼材やポリウレタン樹脂等を用いて身体各部が製作されている。また、立位姿勢の保持と四肢関節の調整ができるように、各関節には義足部品が用いられている。
【0040】
転倒試験は、室温25度、湿度60%の労災リハビリテーション光学センターの機械室にて、ダミーをフローリング床面(根太組施工)に転倒させることにより行われた。
【0041】
ダミーを転倒させる方法として、立位姿勢のダミーの片側の膝後部を、規定の位置から振り下げた錘で打撃する方法を採用した。この転倒方法でダミーを転倒させると、ダミーはひねりを伴って転倒し、転倒時の衝撃が大転子部に加えられる。転倒時の衝撃力は、3軸加速度計の3方向成分である合成加速度が床面に対して鉛直になるように後処理することによって算出される。なお、加速度出力波形のサンプリング周波数は1KHzである。
【0042】
次に、図11〜図13を参照して、各ダミーの転倒時における衝撃力について説明する。図11は、第一のヒッププロテクターを着用させたダミーの合成加速度波形を示すグラフであり、図12は、第二のヒッププロテクターを着用させたダミーの合成加速度波形を示すグラフであり、図13は、ヒッププロテクターを着用させていないダミーの合成加速度波形を示すグラフである。
【0043】
第一のヒッププロテクターを着用させたダミーでは、合成加速度の最大値は227.47G(2229.21m/s)であり(図11参照)、第二のヒッププロテクターを着用させたダミーでは、合成加速度の最大値は149.95G(1469.51m/s)であった(図12参照)。これに対して、ヒッププロテクターを着用させていないダミーでは、合成加速度の最大値は346.08G(3391.58m/s)であった(図13参照)。
【0044】
この結果、第一のヒッププロテクターによる衝撃吸収率は、34.28%であり、第一のヒッププロテクターによる衝撃吸収率は、51.68%であることがわかる。このように、衝撃吸収率については、第二のヒッププロテクターの方が第一のヒッププロテクターよりも高い。しかしながら、第一のヒッププロテクターのように、内側に挟まれる発泡体シートのサイズを小さくし、各発泡体シートの周端部をずらして積層した方が、着用者の不快感をより和らげることができ、より快適で動きやすくなるという効果がある。
【0045】
なお、上述した実施形態においては、三枚の発泡体シート11,12,13を積層させているが、発泡体シートを積層させる枚数はこれに限定されない。四枚以上積層させてもよく、この場合には、上述した実施形態で説明した内側に挟まれる発泡体シート12を複数枚積層させることとすればよい。
また、上述した実施形態においては、衝撃吸収部材1が取り付けられているヒッププロテクター2について説明しているが、ヒッププロテクター2から衝撃吸収部材1を取り外せるようにしてもよい。例えば、衝撃吸収部材1が取り付けられているヒッププロテクター2の肌側の一部に取り出し口を設け、この取り出し口から衝撃吸収部材1を取り外せるようにしてもよい。なお、この取り出し口は、ヒッププロテクター2の外側に設けるよりも肌側に設けた方がよい。肌側に設けることによって、ヒッププロテクター2の上に重ねて着用するアウターウェアに、取り出し口のラインが浮き出てしまう事態を回避させることができる。また、取り出し口を設けることによって、例えば、洗濯時には、衝撃吸収部材1を取り外してヒッププロテクター2のみを洗濯することができるため、衝撃吸収部材1を洗濯することに起因して発生し得るカビの発生を抑止させることができる。
【0046】
また、上述した実施形態においては、衝撃吸収部材付き衣類について、ヒッププロテクターを用いて説明しているが、本発明は、ヒッププロテクター以外にも適用可能である。例えば、アウターパンツ、パジャマ、スポーツ用衣類等にも適用可能である。
【0047】
本発明は、衝撃吸収部材付き衣類において、衝撃吸収部材に含まれる発泡体シート層の形状を、着用者が直立状態と着座状態とを繰り返したときの体のラインの変形に適合する形状に形成したことを基本構成としている。かかる構成であれば、上記の実施形態に限らず、種々の態様が可能である。例えば、発泡体シート層の平面形状は、上述した実施形態における形状に限らず、他の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】衝撃吸収部材を真上から見た図である。
【図2】図1のII−II断面矢視図である。
【図3】衝撃吸収部材を真上から見た図である。
【図4】直立状態のヒッププロテクターを左側横方向から見た図である。
【図5】直立状態のヒッププロテクターを前側正面方向から見た図である。
【図6】直立状態のヒッププロテクターを後側正面方向から見た図である。
【図7】着座状態のヒッププロテクターを左側横方向から見た図である。
【図8】着座状態のヒッププロテクターを後側正面方向から見た図である。
【図9】第一のヒッププロテクターに用いられた発泡体シート層の周端部付近の断面図である。
【図10】第二のヒッププロテクターに用いられた発泡体シート層の周端部付近の断面図である。
【図11】第一のヒッププロテクターを着用させたダミーの合成加速度波形を示すグラフである。
【図12】第二のヒッププロテクターを着用させたダミーの合成加速度波形を示すグラフである。
【図13】ヒッププロテクターを着用させていないダミーの合成加速度波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1・・・衝撃吸収部材、2・・・ヒッププロテクター、11,12,13・・・発泡体シート、15・・・収容カバー、16・・・布製のカバー。
【出願人】 【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
【出願日】 平成18年9月15日(2006.9.15)
【代理人】 【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹

【識別番号】100092657
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 史朗

【識別番号】100140372
【弁理士】
【氏名又は名称】臼田 高順


【公開番号】 特開2008−69493(P2008−69493A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−251304(P2006−251304)