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【発明の名称】 甘味料、その製造方法及び利用方法
【発明者】 【氏名】マルクバルト・クンツ

【氏名】ハンスペーター・デゲルマン

【氏名】ボルフガング・バツハ

【氏名】モハマト・ムニル

【氏名】イエルク・コバルクツイク

【氏名】マンフレート・フオゲル

【要約】 【課題】低カロリーで虫歯の原因になり難い、等の甘味料の提供

【解決手段】酵素によって蔗糖を転移反応させ、少なくとも85重量%の二糖類を含む糖類混合物「異性化蔗糖」を得る段階、未反応の残存蔗糖を酵素及び/又はH型強酸性陽イオン交換体を用いて加水分解する段階、触媒存在下で「異性化蔗糖」を水素添加する段階、ならびに好ましくは、水素添加の前段階又は後段階において、クロマトグラフィーを用いて糖類混合物を分離する段階、を含んでなる甘味料の製造方法で製造された甘味料及びその用途。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜50重量%の6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,6−GPS)と2〜20重量%の1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,1−GPS)と30〜70重量%の1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(=1,1−GPM)との混合物を含有することを特徴とする、1,6−GPSと1,1−GPSと1,1−GPMとを内容物とする甘味料。
【請求項2】
25〜50重量%の6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,6−GPS)と2〜20重量%の1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,1−GPS)と45〜60重量%の1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(=1,1−GPM)とを含有することを特徴とする請求項1記載の甘味料。
【請求項3】
(A)蔗糖をイソマルチユロース及びトレハルロースを含有する生成物に酵素転換し、次いで水素添加して6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,6−GPS)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(=1,1−GPM)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,1−GPS)とを含有する生成物を形成する、1,6−GPSと1,1−GPMと1,1−GPSとを内容物とする甘味料の製造方法であって、a) 第1段階では、蔗糖を「異性化蔗糖」と称され、そしてトレハルロースとイソマルチユロースを含有し、かつ、少なくとも85重量%の二糖類を含む糖類混合物に酵素転換し、b) 第2段階では、未反応の残存蔗糖を、酵素及び/又はH型強酸性陽イオン交換体を用いて加水分解することにより「異性化蔗糖」から除去し、c) 次の段階では、「異性化蔗糖」を触媒の存在下で水素添加し、そしてd) 6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,6−GPS)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(=1,1−GPM)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,1−GPS)との混合物を分離する、ことを特徴とする甘味料の製造方法、
(B)上記(A)の製造方法であって、触媒の存在下で水素添加の前又は後に、さらなる段階として、得られた混合物をクロマトグラフにより異性化蔗糖又は水添された異性化蔗糖を分離することを特徴とする製造方法、および
(C)上記(B)の製造方法であって、クロマトグラフによる分離が、ナトリウム、カリウム又はカルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂、あるいはSi/Al比が50より大きいゼオライトを用いて、混合物中のオリゴ糖アルコール及び/又は単糖アルコールを分離することを特徴とする製造方法
からなる群より選ばれる製造方法により製造される請求項1又は2記載の甘味料。
【請求項4】
5〜10重量%の6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,6−GPS)と30〜40重量%の1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,1−GPS)と45〜60重量%の1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(=1,1−GPM)との混合物を含有することを特徴とする甘味料。
【請求項5】
(A)蔗糖をイソマルチユロース及びトレハルロースを含有する生成物に酵素転換し、次いで水素添加して6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,6−GPS)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(=1,1−GPM)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,1−GPS)とを含有する生成物を形成する、1,6−GPSと1,1−GPMと1,1−GPSとを内容物とする甘味料の製造方法であって、a) 第1段階では、蔗糖を「異性化蔗糖」と称され、そしてトレハルロースとイソマルチユロースを含有し、かつ、少なくとも85重量%の二糖類を含む糖類混合物に酵素転換し、b) 第2段階では、未反応の残存蔗糖を、酵素及び/又はH型強酸性陽イオン交換体を用いて加水分解することにより「異性化蔗糖」から除
去し、c) 次の段階では、「異性化蔗糖」を触媒の存在下で水素添加し、そしてd) 6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,6−GPS)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(=1,1−GPM)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,1−GPS)との混合物を分離する、ことを特徴とする甘味料の製造方法、
(B)上記(A)の製造方法であって、蔗糖の酵素転換が、蔗糖の酵素転換をするシュードモナス・メソアジドフィラ種の菌体を用いて水溶液中で実施され、そして5〜10重量%の1,6−GPSと30〜40重量%の1,1−GPSと45〜60%の1,1−GPMとの混合物が分離されることを特徴とする製造方法、
(C)上記(B)の製造方法であって、蔗糖の酵素転換が、シュードモナス・メソアジドフィラ MX−45(BP 3619)の菌体を用いることを特徴とする製造方法、
(D)上記(A)の製造方法であって、触媒の存在下で水素添加の前又は後に、さらなる段階として、得られた混合物をクロマトグラフにより異性化蔗糖又は水添された異性化蔗糖を分離することを特徴とする製造方法、および
(E)上記(D)の製造方法であって、クロマトグラフによる分離が、ナトリウム、カリウム又はカルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂、あるいはSi/Al比が50より大きいゼオライトを用いて、混合物中のオリゴ糖アルコール及び/又は単糖アルコールを分離することを特徴とする製造方法からなる群より選ばれる製造方法により製造される請求項4記載の甘味料。
【請求項6】
マンニトール、ソルビトール、水素添加されたまたは水素添加されていないオリゴ糖(重合度が3以上である。)、あるいはこれらの混合物をさらに含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の甘味料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の甘味料を、食品又は嗜好品の甘味料として固形又は溶液の状態で使用する方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の甘味料を含んでなるカラメル、ジャム又はアイスクリーム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい甘味料、その製造方法、及びそれを食品または嗜好品に利用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蔗糖はカロリーが高く、虫歯の原因となり、また糖尿病患者には適さず、一方サッカリン、サイクラメートまたはアスパルテームのような合成甘味料は雑味がありボディー効果が無いため、これらとは異なる別の甘味料が求められている。このような甘味料として今までに、虫歯の原因とならない低カロリーの甘味料として、マルチトール、ラクチトール及びイソマルチトールが提案されてきている。しかし、マルチトールとラクチトールはシロップ状のため使用が限られており、イソマルチトールは経済的な方法で製造することができなかった。
【0003】
イソマルチトールは、例えば特許文献1に述べられているように、イソマルチュロースを中間生産物としてこれを触媒存在下で水素添加させることによって得られる。中間生産物のイソマルチュロースの収率はわずか45%しかないことから、イソマルチトールの総合的な収率は41%にとどまった。
【0004】
特許文献2、特許文献3および特許文献4では、固定化バクテリア菌体を用い蔗糖をイソマルチュロースへ、約80%の収率で転移反応させることができる。しかし、イソマルチトールの製造には精製されたイソマルチュロースが必要なことから、イソマルチュロースの結晶化の段階で収率の低下が生じでしまった。
【0005】
また、イソマルチトールは溶解度が小さいため、食品の中で晶出しやすいという欠点がある。そのため、例えばチョコレートではざらついた食感となり、ハードキャラメルは透明感を失い、マーマレード中では晶出する。
【0006】
特許文献5では、イソマルチュロースの中性水溶液を触媒の存在下で還元することによって、6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(=1,6−GPS)の他に、立体異性体である1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(=1,1−GPM)がほぼ1:1の重量比で得られることが知られている。1,1−GPMは溶解度が小さいため容易に分離することができる。また、低カロリーでボディー効果があるため糖尿病患者用の食事療法食には適しているが、低溶解性のため食品中でイソマルチトールよりも容易に晶出しやすく、また甘味度が蔗糖の約40%であるため同じ甘味効果を得るためには多量に使用しなければならないという問題点がある。
【0007】
しかし、1,6−GPSや1,1−GPMと他の糖アルコールまたは糖を混合しても満足できる製品は得られていない。結晶化を抑制する性質を有するソルビトールを用いても、高吸湿性で粘着性のある製品が得られるだけである。
【0008】
特許文献6には、プロタミノバクター・ルブラム(Protaminobacter rubrum)(CBS 574.77)を用いて蔗糖から製造した、以下の組成を有する転移反応生成物が記載されている。
フラクトース 乾燥固形分重量比 5−8%
グルコース 乾燥固形分重量比 2−5%
蔗糖 乾燥固形分重量比 0−0.5%
イソマルチュロース 乾燥固形分重量比 65−72%
トレハルロース 乾燥固形分重量比 10−20%
その他のオリゴ糖類 乾燥固形分重量比 3−6%
【0009】
このような糖混合物は、糖尿病患者用の食事療法食には適さない。なぜならば、これらのうちの幾つかの成分は、カロリー源となり、インスリンの分泌を刺激し、う蝕を促進するからである。また、この糖混合物を遊離または固定化バクテリア細胞と共に約100時間適当な条件下で維持することによって、トレハルロースの含有量を35%まで上昇させることができるが、この方法は経済的ではない。
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許明細書 DE 22 17 628 A1
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第28 900号明細書
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願公開第49 472号明細書
【特許文献4】ヨーロッパ特許出願公開第91 063号明細書
【特許文献5】ドイツ特許出願公開第25 20 173号明細書
【特許文献6】ヨーロッパ特許出願公開第109 009号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ、本発明は次のような課題をもつ。すなわち、新しい、低カロリーで虫歯の原因にならず、かつ、糖尿病患者に適した甘味料であって、十分なボディー効果と共に好ましい甘味効果を有しており、固形化するのが簡単で、経済的に製造でき、利用上十分な高濃度で再結晶化が起こらない、このような甘味料を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、請求項1の甘味料の製造方法、請求項6〜9の甘味料、及びこの甘味料を食品や嗜好品に利用する方法を提案する。下位の請求項においてこれらをさらに発展させたものを提案する。
【0013】
この発明は、蔗糖の転移反応段階、未反応の蔗糖の除去、及び触媒存在下の水素添加反応を組み合わせ、好ましくは水素添加反応の前後の何れかにクロマトグラフィーで処理し、特に菌株を特別に選択することによって、好ましい特性を有する甘味料が得られるという驚くべき確証に基づいている。
【0014】
以下、本発明を詳しく説明するが、必要に応じて次の略号を使用する。
1,6−GPSは、 6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール
1,1−GPSは、 1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール
1,1−GPMは、 1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール
さらに留意しておかなければならないことは、水素添加により
イソマルトースから 1,6−GPS が100%、
イソマルチュロースから 1,1−GPM が43〜57%、
1,6−GPS が43〜57%、
トレハルロースから 1,1−GPM が50〜80%、
1,1−GPS が20〜50% が得られることである。
【0015】
本発明の方法によると、第1段階では、プロタミノバクター・ルブラム(Protaminobacter rubrum)(CBS574.77)、セラチア・プリムチカ(Serratia plymuthica)(ATCC 15928)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)(NCIMB 8285)、ロイコノストック・メセントロイデス(Leuconostoc mesenteroides)(NRRL−B 512 F(ATCC 1083a))またはエルヴイニア・ラポンティシ(Erwinia rhapontici)(NCPPB 1578)の菌株を用いることによって、蔗糖の転移反応を行なう。
【0016】
第2段階では、転移反応によって得られた「異性化蔗糖」から未反応の残存蔗糖を除去する。これが本発明の核心部分であり、転化酵素及び/または転化樹脂を使って純粋な蔗糖溶液をグルコースとフラクトースからなる混合物に加水分解することは従来から知られていることであるが、他の二糖類が多量に存在する中これらを損なわずに蔗糖のみを加水分解できることは今までに知られていなかった。
【0017】
第3段階では、残存蔗糖が除去された「異性化蔗糖」を水素添加する。この時、以下の組成の混合物が得られる。
マンニトール(フラクトースから) 重量比 3〜4%
ソルビトール(フラクトースとグルコースから) 重量比 4〜9%
6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール
(1,6−GPS) (イソマルチュロースから) 重量比10〜55%
1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール
(1,1−GPS) (トレハルロースから) 重量比 2〜20%
1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール
(1,1−GPM)(イソマルチュロースとトレハルロースから)重量比 2〜20%
オリゴ糖の糖アルコール 重量比 3〜6%
蔗糖 重量比 1%以下
【0018】
GPS/GPMの比率は水素添加条件(アルカリ性/中性)により、およそ2:1から1:7である。
【0019】
オリゴ糖は、製品の利用上の性質あるいは生理学的な性質に悪影響を及ぼす可能性があるので、付加的かつ優先的に陽イオン交換樹脂あるいはゼオライトを用いたクロマトグラフィーによってこれを分離する。
【0020】
クロマトグラフィー分離によって得られたソルビトール、マンニトール、1.6−GPS、1.1−GPS、1.1−GPMからなる混合物は、液状または乾燥状態の流動性の高い甘味料として使用することができる。
【0021】
陽イオン交換樹脂またはゼオライトを用いたクロマトグラフィー分離により、「異性化蔗糖」生成物から水素添加できない未反応の残存蔗糖や、特にグルコース、フラクトース及びオリゴ糖を分離除去することもできる。
【0022】
乾燥固形分含量が高い食品にこの甘味料をより良く混合するためには、1.1−GPSの含有量を高めることによって1.1−GPMの結晶化傾向を抑制することが有利である。
【0023】
これは次のようにしても達成することができる。すなわち、水溶液中で蔗糖をシュードモナス・メソアシドフィラまたはアグロバクテリウム・ラジオバクター種の菌の持つ酵素によってトレハルロースを主成分とする糖の混合物に変え、この混合物を触媒存在下水素添加し、精製する。特にシュードモナス・メソアシドフィラ MX−45(BP3619)またはアグロバクテリウム・ラジオバクター MX−232(BP 3620)が使用される。
【0024】
ソルビトール、マンニトール、1.6−GPS、1.1−GPS及び1.1−GPMからなる液状の甘味料を乾燥状態にするには、溶剤として存在する水を蒸発さなければならない。その際、あらかじめソルビトールとマンニトールの含有量を5〜0%に、好ましくは1〜0%に低下させることが有利である。これは適当な陽イオン交換樹脂ないしゼオライトを用いたクロマトグラフィー分離によって行なう。
【0025】
この発明の方法で製造された混合物は、蔗糖に似た雑味のない甘味を有する。しかし、甘味度は40〜50%しかないため、必要に応じて合成甘味料を添加することによって甘味度を高めることができるし、例えば蔗糖と同等の甘味度に調整することもできる。カラメルやマーマレードに使用する場合、蔗糖と同程度のボディー効果を与えても再晶出が起こらない。
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1
A.生体触媒の製造
プロタミノバクタ・ルブラム(Protaminobacter rubrum)(CBS 574.77)菌株の保存スラント上の菌体を、甜菜糖工場の濃厚汁8kg(乾燥固形分=65%)、コーンスティープリカー2kg、(NH HPO 0.1kg及び蒸留水89.9kg(必要に応じpH7.2に調整)からなる殺菌培地10mlに懸濁した。この懸濁液を種菌として、上記成分の培地200mlが入った1リットルフラスコ中で振盪機による前培養を行なった。
【0028】
10本のフラスコで、29℃ 30時間前培養した後、内容物(合計量は2l)を、上記培地18lが入っている30lの小型培養装置の中に植菌し、29℃で毎分20lの空気と毎分350回転の撹拌速度で培養した。
【0029】
菌数が5×10/ml以上になった時点で培養を終了させた。遠心分離により培養液から菌体を集菌し、その菌体を2%のアルギン酸ナトリウム溶液の中で懸濁させた後、その懸濁液を2%の塩化カルシウム溶液に滴下して細胞を固定化した。
【0030】
この固定球を水で洗浄した。この生体触媒は+4℃で数週間保存可能であった。
【0031】
B.「異性化蔗糖」の製造
Aで得られた固定化細胞を、25〜30℃に温度調節されたカラム型リアクターに充填し、乾燥固形分35〜45%の蔗糖溶液を連続的に通液した。流速は、投入された蔗糖の少なくとも97%が転移されるように調節した。
【0032】
カラム型リアクターから出て来た「異性化蔗糖」のHPLC分析により以下の組成が明らかになった。
フラクトース 乾燥固形分 2.5%
グルコース 乾燥固形分 2.0%
蔗糖 乾燥固形分 1.0%
イソマルチュロース 乾燥固形分 82.5%
トレハルロース 乾燥固形分 9.5%
イソマルトース 乾燥固形分 1.5%
その他のオリゴ糖類(DP>3) 乾燥固形分 1.0%
【0033】
C.蔗糖の分離
このようにして得られた「異性化蔗糖」から水素添加できない未反応の残存蔗糖を除去するため、H+型の強酸性陽イオン交換体あるいは適切な酵素を用い、カラム型リアクターの中で以下のように処理した。
【0034】
i)強酸性陽イオン交換体による残存蔗糖の除去
強酸性陽イオン交換体(例、レヴァチット(Lewatit(R))0C 1052)100mlを60℃に加温した適当なガラス製のカラムに充填し、HClによる周知の方法でH+型に再生した。
【0035】
H+型の陽イオン交換体が充填されたカラムに、Bで得られた「異性化蔗糖」をポンプで100ml・h−1の流速で通液した。カラムの出口で得られた生成物の組成はHPLC分析により以下の通りであった。
フラクトース 乾燥固形分 3.0%
グルコース 乾燥固形分 2.5%
蔗糖 −
イソマルチュロース 乾燥固形分 82.3%
トレハルロース 乾燥固形分 9.5%
イソマルトース 乾燥固形分 1.5%
その他のオリゴ糖類 乾燥固形分 1.2%
【0036】
ii)酵素による蔗糖の除去
固定化転化酵素(例えばコペンハーゲンのノボ ノルディスク社のSP 362)11g(ベッド容量が33cmに相当する)を、60℃に温度調節された適当なガラスカラムに充填した。
【0037】
Bで得られた「異性化蔗糖」を、210ml・h−1の流速で連続して通液した。
「転化酵素カラム」から流出した生成物の組成はHPLC分析により以下の通りであった。
フラクトース 乾燥固形分 3.0%
グルコース 乾燥固形分 2.5%
蔗糖 −
イソマルチュロース 乾燥固形分 82.5%
トレハルロース 乾燥固形分 9.5%
イソマルトース 乾燥固形分 1.5%
その他のオリゴ糖類(DP>3) 乾燥固形分 1.0%
【0038】
両方の場合とも、残存蔗糖はグルコースとフラクトースに完全に分解された。単糖類の含有量はこれに応じて高くなっているが、「異性化蔗糖」その他の成分の含有量に変化はなかった。
【0039】
D.「異性化蔗糖」の水素添加
「異性化蔗糖」の残存蔗糖除去物を、ラネー・ニッケルの存在下80℃で約10MPaの水素ガスで連続水素添加した。ニッケルの分離とイオン交換樹脂による精製を行なった後の、中性条件下で水素添加した「異性化蔗糖」水添物はおよそ以下の組成であった。
マンニトール 乾燥固形分 1.5%
ソルビトール 乾燥固形分 4.0%
1.6−GPS 乾燥固形分 44.4%
1.1−GPS 乾燥固形分 3.8%
1.1−GPM 乾燥固形分 45.3%
水素添加された、及び
水素添加されてないオリゴ糖 乾燥固形分 1.0%
【0040】
この生成物は水を蒸発させた後甘味料として使用できるが、その吸湿性のために、特にオリゴ糖の含有割合により、限られた形でしか使用することができなかった。特に依然として存在するオリゴ糖の一部は、小腸の中で分解されてソルビトール、マンニトール、特にグルコースやフラクトースを遊離するので、糖尿病患者用食品に用いるには問題がある。
【0041】
実施例2
実施例1のAからCに従い「異性化蔗糖」を製造した。グルコース、フラクトース、オリゴ糖を除去するため、水素添加前にクロマトグラフィーによる糖の分離がなされた。その際、イソマルチュロース、イソマルトース、トレハルロースといった二糖類の損失が避けられなければならなかった。
【0042】
クロマトグラフィーカラムとして、温度調節が可能で目皿の付いた長さ10m、直径25cmのカラムを使用した。このカラムを完全に水で満たし、続いて4〜6%の架橋度の粒度約0.4〜0.5mmを有するカルシウム型強酸性陽イオン交換樹脂を、樹脂が完全に水で覆われるようにしながら供給した。
【0043】
実施例1のAおよびBの方法で得られた「異性化蔗糖」から残存蔗糖を除去した後、乾燥固形分として約18kgを約75℃に温度調節されたカラムに供給し、脱イオン水を用いて流速(線速)毎分約2cmで溶離した。カラムの出口では10分毎に分画し、各フラクションの糖組成をHPLCで分析した。
【0044】
最初の4つのフラクションには、オリゴ糖のうちの約60%、イソマルチュロースうちの約10%、イソマルトースのうちの約25%が含まれていた。最後の5つのフラクションにはフラクトースのうちの約70%、トレハルロースのうちの約10%、グルコースのうちの約20%が含まれていた。
【0045】
クロマトグラフィー処理によって得られた「異性化蔗糖」の組成は以下のようであった。
フラクトース 乾燥固形分 1.0%
グルコース 乾燥固形分 2.3%
イソマルチュロース 乾燥固形分 85.1%
トレハルロース 乾燥固形分 9.8%
イソマルトース 乾燥固形分 1.3%
その他のオリゴ糖類 乾燥固形分 0.5%
【0046】
この分離方法により少なくともオリゴ糖のうちの約60%、フラクトースの約70%、グルコースの約20%を分離することができた。ただし、イソマルチュロースの10%、トレハルロースの10%、イソマルトースの25%の損失を甘受しなければならない。
【0047】
得られた生成物を実施例1Cの方法で水素添加し、以下の成分の混合物を得た。
マンニトール 乾燥固形分 0.5%
ソルビトール 乾燥固形分 3.3%
1.6−GPS 乾燥固形分 43.8%
1.1−GPS 乾燥固形分 3.9%
1.1−GPM 乾燥固形分 48.5%
その他のオリゴ糖類 乾燥固形分 0.5%
【0048】
実施例1で得られた生成物と比較して、ソルビトールおよびマンニトールの含有量は少なかった。また、水素添加されたオリゴ糖及び水素添加されないオリゴ糖の含有量は半分しかなかった。
【0049】
実施例3
実施例2に準じた方法で行なったが、ここではSi/Alの割合を約50にしたゼオライトを分離カラムに充填した。
【0050】
最初の5つのフラクションに、オリゴ糖、グルーコース、フラクトースの全量とイソマルトースうちの約50%が含まれていた。そしてトレハルロースもイソマルチュロースもこれらのフラクションの中には見られなかった。
【0051】
実施例1および実施例2における「異性化蔗糖」中のイソマルトースの含有量は、乾燥固形分として1.5〜1.3%なので、この方法で損失する二糖類は約0.8ないし0.5%にすぎなかった。同時に、好ましくない存在であるオリゴ糖、グルコース、フラクトースは完全に分離除去された。
【0052】
得られた「異性化蔗糖」の糖組成は以下の通りであった。
フラクトース −
グルコース −
イソマルチュロース 乾燥固形分 89.0%
トレハルロース 乾燥固形分 10.2%
イソマルトース 乾燥固形分 0.8%
その他のオリゴ糖類 −
【0053】
これらを実施例1Dに準じた方法で水素添加し、以下の成分の混合物を得た。
1.6−GPS 乾燥固形分 45.3%
1.1−GPS 乾燥固形分 4.1%
1.1−GPM 乾燥固形分 50.6%
【0054】
マンニトール、ソルビトールおよびオリゴ糖が含まれていないこの生成物は、ほとんど吸湿性がなく、糖尿病患者にも適したすばらしい甘味料であった。
【0055】
実施例4
実施例1の方法で得られた、水素添加された「異性化蔗糖」を、実施例2において水素添加の前段階で使用したようなクロマトグラフィーカラムを用いて処理を行なった。この際、水素添加された「異性化蔗糖」を乾燥分で約18kg供給し、毎分2cmの流速(線速)で溶離した。ただし、この場合は、分離カラムにはナトリウム型の強酸性陽イオン交換樹脂を充填した。
【0056】
最初の3つのフラクションには、オリゴ糖の全量と1.1−GPMのうちの約4%が含
まれていた。さらに4から8までのフラクションには1.1−GPMの残りのパーセント分、1.1−GPSの全量、1.6−GPSのうちの約99%、マンニトールの約50%とソルビトールのうちの少量が含まれていた。量の収支から、4から8までのフラクションは、GPMとGPSの合計含有量が約97重量%であることが明らかになった。1.6−GPS、マンニトールやソルビトールの残りのパーセント分は9以降のフラクションに溶離されていた。クロマトグラフィー分離をアルカリ土類金属型の陽イオン交換体を用いた実施例2の方法に比べ、二糖類と単糖類アルコールとの間の分離がよく行われ、従って主生成物の中に97重量%以上の所望の二糖類アルコールを得ることができたのに対して、カルシウム型の陽イオン交換体では収率が約85%であった。驚いたことに、利用可能な副産物として純度98%以上のソルビトールが収率90%以上で得られるというもうひとつの利点が判明した。
【0057】
その生成物の成分は以下のような組成であった。
1.6−GPS 乾燥固形分 46.2%
1.1−GPS 乾燥固形分 4.1%
1.1−GPM 乾燥固形分 49.6%
【0058】
実施例5
同じように、水素添加後、クロマトグラフィー分離を行ったが、今度は実施例3に従い、ゼオライトを使用した。水素添加された「異性化蔗糖」を15から20kg(乾燥固形分)供給し、脱イオン水で溶離した。
【0059】
得られたフラクションを分析したところ、マンニトール、ソルビトールおよびオリゴ糖が最初の5つのフラクションの中にすべて存在していることが判明していた。さらにその中にはGPMのうちの約5%も含まれていた。残りのGPM、1.1−GPSならびに1.6−GPSの全量は、フラクション6から16の中に存在した。
【0060】
このようにして、ソルビトール、マンニトール、オリゴ糖を除去し、所望の二糖類アルコールの97%以上を得ることに成功した。
【0061】
実施例6
二糖類アルコールを含むフラクションを結晶化するには、一般に水分を蒸発させる。このようにして例えば実施例5で得たフラクションを、減圧下で蒸発させ乾燥固形分を90から95%まで濃縮した後、冷した平面の上で凝固させた後擦り潰した。これにより、微粒で粘着性のないさらさらした生成物が得られた。
【0062】
乾燥分が多い食品の中に甘味料を混入させるとき、1.1−GPSの含有量を高めることによって1.1−GPMの結晶化傾向を抑制することが有利である。このような甘味料は以下の実施例に示されるように、他の種類の菌株を使用して得られる。
【0063】
実施例7
シュードドモナス・メソアシドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)MX−45(BP 3619)菌株の保存スラント上の菌体を、甜菜糖工場の濃厚汁8kg(乾燥固形分=65%)、コーンスティープリカー2kg、(NH
HPO 0.1kg及び蒸留水89.9kg(pH7.2に調整)からなる殺菌培地10mlに懸濁した。この懸濁液を種菌として、上記成分の栄養液200mlが入った1リットルフラスコ中で振盪機による前培養を行なった。
【0064】
10本のフラスコで、29℃ 30時間前培養した後、内容物(合計量は2l)を、上記培地18lが入っている30lの小型培養装置の中に植菌し、29℃で毎分20lの空
気と毎分350回転の撹拌速度で培養した。
【0065】
菌数が5×10/ml以上になった時点で培養を終了させた。遠心分離により培養液から菌体を集菌し、その菌体を2%のアルギン酸ナトリウム溶液の中で懸濁させた後、その懸濁液を2%の塩化カルシウム溶液に滴下して細胞を固定化した。この固定球を水で洗浄した。この生体触媒は+4℃で数週間保存可能であった。
【0066】
「異性化蔗糖」を製造するために、このようにして得られたシュードモナス・メソアシドフィラ MX−45(BP 3619)固定化細胞を、約25〜30℃に温度調節された円筒形リアクターに充填し、乾燥固形分約35〜45%の蔗糖溶液を連続して通液する。そのときの流速は、供給された蔗糖の少なくとも97%が転移するように調節した。
【0067】
円筒形リアクターから出て来た「異性化蔗糖」のHPLC分析により、以下の成分が明らかになった。
フラクトース 乾燥固形分 0.2%
グルコース 乾燥固形分 0.2%
蔗糖 乾燥固形分 1.0%
イソマルチュロース 乾燥固形分 12.5%
イソマルトース 乾燥固形分 0.2%
トレハルロース 乾燥固形分 85.7%
その他のオリゴ糖類(DP>3) 乾燥固形分 0.2%
【0068】
このようにして製造された「異性化蔗糖」は、実施例1と同様に、まず水素添加できない未反応の残存蔗糖を除去し、次にラネー・ニッケルの存在下約80℃で約8〜12MPaの圧力の水素ガスで連続的に水素添加した。
【0069】
ニッケルの分離とイオン交換樹脂による精製を行なった後の、中性条件下で水素添加した「異性化蔗糖」の組成は以下の通りであった。
マンニトール 乾燥固形分 0.4%
ソルビトール 乾燥固形分 1.0%
1.1−GPM 乾燥固形分 57.7%
1.1−GPS 乾燥固形分 34.4%
1.6−GPS 乾燥固形分 6.4%
水素添加された、及び水素
添加されてないオリゴ糖 乾燥固形分 0.2%
【0070】
水素添加された、および水素添加されていないオリゴ糖とソルビトールを生成物から除去するために、水素添加後、実施例4の方法に準じてナトリウムないしカリウム型の強酸性陽イオン交換樹脂を用いてクロマトグラフィー分離を行った。
【0071】
フラクションの分析を行なったところ、最初の3つのフラクションにはオリゴ糖とGPMのうちの約4%が含まれていた。また4から8のフラクションには残りのGPM、1.1−GPSの全量、1.6−GPSの約99%ならびにマンニトールの約50%が含まれていた。1.6−GPS、ソルビトールおよびマンニトールの残りは9以降のフラクションの中に溶離されていた。
【0072】
実施例8
相対甘味度を確認するために、それぞれ15人の実験員による3点比較法によって、以下の溶液を相互に比較した。
a)実施例3の新しい甘味料の15.5%溶液1つに対して、7%のサッカロース溶液2
つ。
b)同じ甘味料の17.5%溶液1つに対し、7%のサッカロース溶液2つ。
c)同じ甘味料の18.5%溶液1つに対し、7%のサッカロース溶液2つ。
【0073】
テストa)では 6人がこの新しい甘味料を見つけだすことができたが、統計学的な有意差はなかった。
テストb)では 2人がこの新しい甘味料の方を「さらに甘い」と感じた。
統計学的な有意差が見られた(p<0.01)。
テストc)では 同様に12人がこの新しい甘味料の方が「さらに甘い」と感じた。統計学的な有意差が見られた(p<0.01)。
【0074】
本発明の甘味料の甘味度は、蔗糖の45%であった。甘味度を増すためには、この新しい甘味料に、フラクトース、キシリトール、サッカリン、サイクラメート、アスパルテームあるいはアセスルファム−K(Acesulfam−K)を混合することができる。
【0075】
実施例9
新しい甘味料を使用してアイスクリームを製造する場合、スイート クリーム(固形分の40%が脂肪)22.1kg、全乳(固形分の3.7%が脂肪)58.1kg、脱脂粉乳4.5kgに実施例3の甘味料15kgと安定剤0.3kgを混合し、ホモジナイズしてから、殺菌する。殺菌後、粉末状のフェニルアラニンアスパラギン酸メチルエステル53gをこのアイスクリームの固まりに添加し、混ぜ合わせ、撹拌し、冷凍した。この製品は15kgの砂糖を使用して製造したアイスクリームと同程度の甘味度であった。
【0076】
フルーツ アイスクリームの場合、さらに甘味を加えない方が有利でさえある。というのはこの新しい甘味料は果実味をかなりよく引き立たせるからである。
実施例10
低カロリーのイチゴジャムを作るには、潰したイチゴ1kg、この新しい甘味料1kg、中程度にエステル化された150°SAG−USAのペクチン8g(ウルマン著、工化学百科事典、3版、13巻、180頁)ならびに7gのワインビネガーを混合し、3分間煮詰めて、準備したグラスにあけた。
【0077】
砂糖で作られたジャムとの比較では、硬度に関しては全く差はなく、甘味は多少弱かった。しかし、その代わりにイチゴの味はより強く感じられた。6カ月の保存期間後も甘味料の結晶化は見られなかった。
【出願人】 【識別番号】500175772
【氏名又は名称】ズートツッカー アクチェンゲゼルシャフト マンハイム/オクセンフルト
【出願日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−245650(P2008−245650A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2008−102261(P2008−102261)