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【発明の名称】 野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法
【発明者】 【氏名】佐藤 雄彦

【要約】 【課題】野菜の収穫時期と量に適宜対応しながら、野菜破砕物を効率よく乳酸発酵させ、品質の変動が少なく、運搬性、貯蔵性、嗜好性、機能性に優れた乳酸発酵野菜の製造方法を提供する。

【解決手段】加熱殺菌処理された不溶性固形分50重量%以上の野菜の破砕物を、密閉条件で、ビフィドバクテリウム属、ラクトバチルス属、ペディオコッカス属及びエンテロコッカス属からなる群から選ばれる一種以上の乳酸菌により20〜45℃で酸度上昇の終点まで乳酸発酵を行う。好ましくは、アブラナ科野菜、セリ科野菜及びウリ科野菜からなる群から選ばれる一種以上を用い、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・プランタラム又はラクトバチルス・ペントサスにより小規模の発酵をする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱殺菌処理された不溶性固形分50重量%以上の野菜の破砕物を、密閉条件で、ビフィドバクテリウム属、ラクトバチルス属、ペディオコッカス属及びエンテロコッカス属からなる群から選ばれる一種以上の乳酸菌により、20〜45℃で発酵を開始し、酸度上昇の終点まで発酵させることを特徴とする野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
【請求項2】
乳酸菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・プランタラム及びラクトバチルス・ペントサスから選ばれる一種以上である請求項1に記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
【請求項3】
野菜が、アブラナ科野菜、セリ科野菜及びウリ科野菜からなる群から選ばれる一種以上である請求項1又は2のいずれかに記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
【請求項4】
野菜が、ブロッコリー、キャベツ、ニンジンおよびゴーヤからなる群から選ばれる一種以上である請求項1から3のいずれかに記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
【請求項5】
加熱殺菌処理の後、20〜45℃まで冷却した時点で乳酸発酵を開始することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
【請求項6】
小規模製造である請求項1から5のいずれかに記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法により製造された野菜破砕物の乳酸発酵物を含有する食品。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本技術は、野菜破砕物を乳酸菌で発酵し、嗜好性、機能性、運搬性、貯蔵性に優れた、乳酸発酵野菜の製造方法および乳酸発酵野菜を含有した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜は、主に生鮮品として消費されるものであるが、保存期間が短いために、種々の処理を施し保存可能な一次加工を行っている。一時加工とは、破砕、搾汁、搾汁濃縮、塩蔵、抽出、抽出濃縮、抽出エキスの粉末化、乾燥、乾燥破砕、乾燥粉末化等を指す。古くは乾物や漬物など家庭においてなされていた食品技術があるが、近年においては、抽出や濃縮など工業生産での展開もなされている。これらの方法により産出された一次加工品の中には、苦味、臭味など野菜特有の好ましくない味を残し、さらに一次加工工程において、特に加熱処理によって好ましくない風味も付加されるため、嗜好性に問題があるものが数多くある。そのため、乳酸菌を使い発酵することにより、好ましくない風味を改善して嗜好性を高める試みがされてきた。
【0003】
乳酸発酵野菜処理物の製造は、野菜を破砕後に搾汁した搾汁液を乳酸発酵する方法が主流となっている。しかし野菜搾汁物は、大量の搾汁残渣が発生してその処理にコストがかかることや、搾汁残渣にも食物繊維に代表される栄養成分が残留するため、野菜破砕物と栄養価を比較すると明らかに劣ると言った問題がある。そこで、野菜破砕物を有効活用するための乳酸発酵技術が望まれる。野菜をそのまますり潰した破砕物を発酵したものは野菜ジュースなどに利用でき、野菜の好ましくない風味を改善する嗜好性の高い食品にすることができる。
【0004】
野菜破砕物を工業的に乳酸菌で発酵するためには、従来、野菜破砕物に水を加える必要があった。これは野菜破砕物に多くのパルプ質が含まれる上、水の量が少ないと粘度が高くなるため、破砕物が乳酸菌スターターと均一に撹拌混合されず、均一に発酵しないためである。特に工業的に発酵する場合においては、従来から発酵タンクを使う方法が主流であるが、発酵タンクを用いる場合は発酵させる野菜破砕物量が多くなるため、乳酸菌スターターの不均一化の問題はさらに深刻となる。そのため野菜破砕物に十分な量の水を加えて粘度を下げることにより、発酵タンク内での撹拌効率を上げて、均一化を行ってきた。特開2001−258470には、植物性原料を乳酸菌で発酵後に製品を容器へ充填する、植物性ヨーグルトの製法が開示され、磨砕物の稠度を調節するための水の添加が記載されている。しかしこのようにして製造された乳酸発酵植物破砕物は、嵩が大きくなり運搬性や貯蔵性が悪くなり、さらに水で希釈されているため、嗜好性、機能性という点でも劣っている。
【0005】
発酵タンクとは、通常の飲料等の製造用タンクとは異なり、加熱、冷却、保温のためのジャケットを備え、攪拌軸受けやスターター投入口、空気抜き、コック類等が外部からの微生物汚染が起こらないように工夫され、小型もので2,000リットル、大型のものでは30,000リットル以上の精密大型貯留槽をさす。このように、乳酸発酵野菜処理物を工業的に生産するためには、発酵タンクを工業施設に導入する必要がある。しかしながら、発酵タンクは設置スペースの問題に加えて通常のタンクに比べて高価であり、野菜処理物製造業者でさえもそのコスト面から乳酸発酵分野に容易には参入できなかった現状がある。さらに、発酵タンクは、万一発酵中に液温が変化して内圧が変わると、発酵タンクが変形或いは破損する恐れもあり、通常完全に密閉されておらず、除菌フィルターなどを通じて外気と接している。そのような構造上、発酵タンクでは、微生物汚染の防止や温度管理などの注意が必要である。
【0006】
また、加工食品用に適した露地野菜は、通常年一回しか収穫されず、収穫量も天候などの影響を受け大きく変動する。野菜の一次加工と乳酸発酵を同時に連続して行うことは、一次加工された野菜処理物の保存費用や、保存中の成分、色調、風味の劣化を考えると望ましい。しかし、豊作の年は、大量に乳酸発酵処理をしなければならないにもかかわらず、発酵タンクの容量と台数が限られているので、その全てを同時に連続して処理を行うことができない。処理数量の増加に応じた発酵タンクを増やすという方法もあるが、発酵タンクを収穫時の一時期だけに使って、1年のほとんどの期間にまったく使用しないのでは大きな無駄が生じる。大量に収穫された野菜を一次処理して、冷蔵、冷凍、乾燥、塩蔵、搾汁・濃縮等により保存しておき、逐次乳酸発酵処理する方法によれば、年間通じて限られた発酵タンクの容量と台数で理論上処理可能ではある。しかし、前記の通り、保存容器費用や保管費用がかかり、さらに保存処理中に必ず野菜中の栄養素や機能成分、風味や色調の劣化が起きるため好ましくない。このように、発酵タンクによる製造では、野菜収穫の時期と量に合わせて、収穫後短時間に一次加工処理と乳酸発酵を同時に連続して行うことができなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−258470
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
野菜の収穫時期と量に適宜対応しながら、野菜破砕物を効率よく乳酸発酵させ、品質の変動が少なく、運搬性、貯蔵性、嗜好性、機能性に優れた乳酸発酵野菜を製造する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
加熱殺菌処理された不溶性固形分50重量%以上の野菜破砕物を、密閉条件で20〜45℃で発酵を開始し、酸度上昇の終点まで発酵させることにより、品質の変動が少なく、嗜好性、機能性、運搬性、貯蔵性に優れた乳酸発酵野菜が製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、下記の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法および乳酸発酵野菜を含有する食品に係るものである。
【0010】
[項1]
加熱殺菌処理された不溶性固形分50重量%以上の野菜の破砕物を、密閉条件で、ビフィドバクテリウム属、ラクトバチルス属、ペディオコッカス属及びエンテロコッカス属からなる群から選ばれる一種以上の乳酸菌により、20〜45℃で発酵を開始し、酸度上昇の終点まで発酵させることを特徴とする野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
[項2]
乳酸菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・プランタラム及びラクトバチルス・ペントサスから選ばれる一種以上である項1に記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
[項3]
野菜が、アブラナ科野菜、セリ科野菜及びウリ科野菜からなる群から選ばれる一種以上である[項1]又は[項2]のいずれかに記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
[項4]
野菜が、ブロッコリー、キャベツ、ニンジンおよびゴーヤからなる群から選ばれる一種以上である[項1]から[項3]のいずれかに記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
[項5]
加熱殺菌処理の後、20〜45℃まで冷却した時点で乳酸発酵を開始することを特徴とする[項1]から[項4]のいずれかに記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
[項6]
小規模製造である[項1]から[項5]のいずれかに記載の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法。
[項7]
[項1]から[項6]のいずれか1項に記載の方法により製造された野菜破砕物の乳酸発酵物を含有する食品。
【発明の効果】
【0011】
野菜処理物の一次加工品は、苦味など植物特有の風味を残し、一次加工工程で好ましくない風味も発生するため、嗜好性に問題があるものがある。しかし、本発明によれば、乳酸菌を使い発酵することにより、野菜破砕物の好ましくない風味を改善して嗜好性を高めることができる。また、乳酸発酵することによりpHを低下させ、有害な細菌による腐敗を防止し、野菜破砕物の保存性も改善することができる。さらに乳酸菌には、整腸作用や免疫賦活作用に代表される種々の生理機能の存在があるため、乳酸発酵することにより野菜破砕物にさらなる機能性を付与することができる。
【0012】
野菜中にはビタミンやミネラル、食物繊維等の栄養成分、そしてフラボノイドやカロテノイドに代表される抗酸化成分など、生体にとって有用な成分が含まれ、野菜の摂取は、健康を維持増進するうえで非常に重要である。生鮮野菜は、これらの有用な成分を含む。しかしながら、長期間保存できず、商業流通上課題が多い。本発明によれば、一次加工を施した破砕物(ピューレ)を乳酸発酵することにより、これらの有用な成分を、保存が可能でしかも摂取しやすく安定に含有させることができる。
【0013】
野菜の破粉物の発酵の際、水が加えられ粘度を低下させることが行われてきた。これは野菜破砕物に多くのパルプ質が含まれる上、水の量が少ないと粘度が高くなるため、破砕物が乳酸菌スターターと均一に撹拌混合されず、均一に発酵しないためである。特に工業的に発酵する場合においては、発酵タンクは通常2,000リットルから10,000リットルもしくはそれ以上の容量である。発酵タンクとは、外部環境から有害微生物の二次汚染が起こらないように工夫され、温度制御用のジャケットを備えた精密大型貯留槽を指す。野菜の破砕物を発酵タンク内で乳酸菌スターターと均一に攪拌混合するには、加水処理して粘度を低下させることにより行われてきた。特にこのような大容量貯留槽内で均一に攪拌混合するには、少なくとも野菜破砕物に同量以上の水を加える必要がある。野菜処理物への加水は、その後処理物から水分を取り除き濃縮することが実質不可能であるため、乳酸発酵した野菜破砕物を食品原料として流通させ、またさまざまな加工食品へ配合する場合に大きな障害となる。加水されて水分を多く含む野菜破砕物から品質を保持したまま水分を除去して濃縮する方法としては、凍結濃縮法が考えられるが、高額の設備投資やランニングコストがかかり、一般的な食品加工には適さないので普及していない。すなわち加水することにより、嵩が大きくなり、運搬性及び貯蔵性が大きく損なわれる。さらに水分で希釈されることにより、嗜好性においても水っぽい味になると同時に、栄養素や機能成分、乳酸菌数、乳酸発酵によって生成した発酵代謝物の濃度も低くなる。健康を維持する上で1日に必要な野菜の量は、350gと言われている。野菜破砕物の乳酸発酵工程で同量の水を加えると嵩が倍になり、1日に必要な野菜をそれから摂取しようとすると、700gもの量を1日に摂取し続けなければならない。しかし、本発明によれば、野菜の破砕物を水で希釈することなく、不溶性固形分量として50重量%を超える野菜破砕物を乳酸発酵できるので、嵩増加の防止、嗜好性不良の防止および栄養素や機能成分、乳酸菌数、乳酸発酵により生成した代謝物の濃度の低下の防止をすることができる。また、容器の容量を適宜選択できるので、粘度が高くても簡単な攪拌操作のみで、容易に乳酸菌スターターを均一分散することができる。
【0014】
野菜破砕物を乳酸菌で工業的に発酵するには、通常発酵タンクが用いられるが、発酵タンクには撹拌混合、温度制御、微生物汚染防止などの機能が必要であり、その導入には大きな投資が必須であった。しかしながら、本発明によれば、発酵タンクを使わずとも、密閉条件で、撹拌混合、温度制御、微生物汚染の機械機能を持たない容器で発酵を行うことができるので、野菜破砕物を効率よく工業的に乳酸発酵することができる。その上、発酵タンクを使うよりも、品質の変動が少なく、運搬性、貯蔵性、嗜好性、機能性に優れた乳酸発酵野菜破砕物が製造できる。すなわち密閉条件で発酵させることができるため、外部からの微生物汚染が生じない。さらに容器中に残存する空気を少なくすることにより、酸素の乳酸発酵へ及ぼす悪影響であるフレーバーの劣化を防ぐことができる。このような利点は特に小規模製造においてさらに顕著になる。
【0015】
本発明によれば、野菜をより原料状態に近い濃度のまま乳酸発酵することができる。これまで野菜を処理する場合は、発酵タンクでの発酵に適するよう搾汁液に処理されることが多い。野菜破砕物は、パルプ質をそのまま多量に含有しているため、粘度が高く食品加工プロセス上障害が多いからである。特に乳酸菌を用いて野菜破砕物を発酵処理する場合、発酵タンク内で野菜破砕物と乳酸菌スターターを均一に攪拌混合することが困難である。一方、発酵タンクでの乳酸発酵に適した野菜の搾汁液は、野菜破砕物と比べて、著しく栄養成分や機能成分の含有量が劣っている。しかし、本発明によれば、発酵制御機能を持たない容器での発酵が可能なので、食品加工プロセスを簡単にでき、破砕物においても良好に乳酸発酵させることができる。すなわち、野菜を搾汁することにより発生しこれまで廃棄されていた2割から3割のパルプ質を含む搾汁残渣の分も同時に乳酸発酵する。これにより、食物繊維に代表される搾汁残渣に含まれる栄養成分や機能成分を乳酸発酵物内に保持させることができ、栄養価、機能性の高い乳酸発酵物を製造することができる。また、容器の容量を適宜選択できるので、粘度が高い場合であっても、簡単な攪拌操作のみで乳酸菌スターターを容易に均一分散させることができる。さらに、密閉条件で発酵するので、原料状態に近い濃度のままの発酵が可能であり、野菜フレーバーの劣化を防ぐことができ、野菜の新鮮さを維持することができる。加えて、加熱殺菌処理後、20〜45℃に冷却した時点で乳酸発酵を開始させるために加熱殺菌処理時の余熱が利用でき、熱効率のよい発酵を行なうことができ、再加温による野菜の劣化を防ぎ、一層野菜フレーバーの劣化を抑えることができる。このような利点は特に小規模製造においてさらに顕著になる。
【0016】
本発明によれば、野菜の収穫から破砕処理と乳酸発酵を同時にまたは時期を分けて、発酵に必要な量だけ発酵することができる。
【0017】
野菜の一次加工処理とその後の乳酸発酵は連続して行われることが望ましいが、商業用に大量に流通している加工用露地野菜は、通常収穫が年に一回しかなく、長期に保存できないので、収穫に合わせて破砕などの一次加工処理と同時期に集中して乳酸発酵されなければならない。乳酸発酵工程は通常長くても1週間以内で完了するので、発酵タンクは一年のうち稼動しない期間が長く投資効率が悪い。また露地野菜は、天候の影響を受けやすく、豊作の年は一時期に大量の野菜を発酵させる必要があるため、発酵タンクを増設しなくてはならない。このようにこれまでの発酵タンクによる発酵はさまざまな問題があった。しかしながら本発明によれば、野菜破砕物を乳酸菌とともに、運搬、貯蔵が可能な容器に小分け充填できるので、商業的に容易に流通することができる。加えて、あらかじめ運搬、貯蔵が可能な容器内で、乳酸発酵工程を行うことにより、発酵タンクが不要となり、前記のような発酵タンクを増設したりするなどの多大な投資を必要とすることがない。よって、収穫した後、必要な量で発酵を行うことができ、産業効率、経済効率の高い発酵をすることができる。
【0018】
また、収穫から破砕処理の時期と乳酸発酵までの時期を同時に行うことも分けて行うことも自由にできるので必要な時期に必要な量だけ発酵することができる。これまで、前記のように収穫と同時期に発酵できない場合は、一時期に大量に収穫された加工用野菜を破砕処理後適切な条件で保存して置き、製造上発酵タンクが使用可能な時期や販売上必要とする時期に合わせて、事後的に乳酸発酵加工を行っているのが現状である。すなわち野菜は、例えば一次加工として破砕され、その後適宜、冷蔵又は冷凍保管される。その野菜破砕物は、必要な時期に発酵タンクを用いて乳酸発酵させられ商業流通可能な容器へ小分け充填される。一次加工状態での保存が長期に亘る場合は品質の劣化を招くこともある。特に野菜破砕物は、高粘度であるがゆえに加熱処理が難しく、野菜由来の微生物が残存しやすい。さらに、pHが中性に近いので、冷蔵保存したとしても残存微生物が増殖し易い。たとえ冷凍保存したとしてもそれを解凍して使用する際にも同様に残存微生物が増殖しやすい。しかし、本発明によれば、必要な量で乳酸発酵させることができるため、発酵タンクの数量に左右されず、収穫した後に連続して乳酸発酵ができる。また、乳酸発酵後に冷凍または冷蔵保存することが容易にできるので、腐敗などによる野菜破砕物の保存中や解凍中の品質劣化を防ぐことができる。また、野菜破砕物をやむを得ず冷凍で一時保存した場合においても、発酵タンクの数量に左右されず、必要な時期に必要な量だけ解凍して乳酸発酵をすることもできる。
【0019】
本発明によれば、容器の容量を適宜選択することにより、小規模製造ができる上、発酵物を容易に運搬することも可能である。これまで発酵タンクでの発酵物を運搬するためには、連続して最終製品の容器に充填するか、もしくは運搬用の容器に移し替える必要があった。最終製品の容器に充填した場合、容器による嵩が増すため、遠隔地へ運搬する際に、運搬効率が低下する。また、運搬用の容器に移し替える場合、最終製品の容器に充填される前に運搬のために一時保管するというステップが追加されるため、製造上のデメリットとなる。これに対し、本発明では発酵に用いた容器自体を運搬することが可能なため、運搬効率および生産効率を上げることができる。特に発酵を行う場所と最終製品の充填を行う場所が異なる場合においても容易に最終製品を製造することができる。
【0020】
また、本発明は保管性・貯蔵性も優れている。発酵タンクでの発酵においては発酵物を貯蔵しておくと、次のバッチの発酵処理ができない。そのため、発酵タンクでの貯蔵は生産効率を低下させる。これを避けるため、発酵物を最終製品の容器に充填するか、他の容器・タンクに貯蔵しなければならない。最終製品の容器に充填した場合、容器による嵩が増すため、保管場所としてより多くのスペースを必要とするため保管効率が低下する。さらに、冷蔵又は冷凍保管をする場合は保管するための冷却コストも高くなる。加えて、野菜の収穫時期に合わせて発酵を行わなければならず、販売時期を考慮した製造を行うことができない。また他の容器・タンクで貯蔵する場合、貯蔵スペースを要する上、最終容器に充填する前に一時保存するというステップが追加されるため、製造上のデメリットとなる。さらに、冷却又は冷蔵保管は多大なコストがかかるため、現実上困難である。しかしながら、本発明によれば運搬可能な容器に充填されるので、保管スペースを抑えることができ、保管効率を上げることができる。また、冷蔵又は冷凍で保管する場合も運搬可能なので、容器ごと冷蔵庫または冷凍庫に入れることができ、貯蔵タンクごと冷却保存する場合に比べ保管効率を向上させることができる。特に冷凍したものを解凍するときなど、温度変化が必要な場合は容器ごと行うことができるという利点がある。
【0021】
以上のように、本発明により、野菜の破砕物を、乳酸菌スターターとともに密閉条件で20〜45℃の温度で発酵を開始し、酸度上昇の終点まで発酵させることにより、品質の変動が少なく、嗜好性、機能性、運搬性、貯蔵性に優れた乳酸発酵野菜が製造できる。すなわち、密閉することにより、酸素の影響を少なくし、さらに酸度上昇の終点まで乳酸発酵することにより、品質の変動が少なく、容器ごと乳酸発酵処理をすることができる。さらに、野菜破砕物を発酵タンクに代表される大型貯留槽内で乳酸菌スターターと均一に攪拌混合して乳酸発酵するのではなく、野菜処理物を乳酸菌スターターとともに容器に充填する場合においては、野菜破砕物と乳酸菌スターターを均一に攪拌・混合せずとも、簡単な混合操作だけで容器内で自然拡散により均一な乳酸発酵が可能である。また、容器の容量を適宜選択することにより、小規模の製造ができ、貯蔵、運搬が容易となり、さらに精密大型貯留槽の設備投資やそれを設置する工場敷地が不要となり、産業上の利点は大きい。

【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[野菜破砕物]
本発明において、野菜破砕物とは、ピューレ状又はペースト状の処理物を指す。具体的には、野菜をコミトロール、マスコロイダー、フードプロセッサー、パルパーフィニッシャー等の破砕機や裏ごし機を用いてピューレ状、ペースト状に加工したものである。野菜を破砕処理するには、必要に応じて洗浄、へたの切断、剥皮、酵素失活のための熱水中でブランチング処理を適宜行う。野菜破砕物中には、ビタミンやミネラル、食物繊維等の栄養成分、そしてフラボノイドやカロテノイドに代表される抗酸化成分など、生体にとって有用な成分が取り除かれること無く含まれており、野菜破砕物の摂取は、健康を維持増進するうえで非常に重要である。生鮮野菜は、これらの有用な成分を含むが、長期間保存できず、商業流通上課題が多い。野菜破砕物は、これらの有用な成分を、保存が可能でしかも摂取しやすく安定に含有することができる。
【0023】
本発明では野菜の破砕物を用いるが、破砕物以外の処理物を乳酸発酵に適宜加えることもできる。野菜の処理物とは、野菜に様々な一次加工を施した搾汁液、搾汁濃縮液、塩蔵品、抽出エキス、抽出濃縮エキス、抽出エキス粉末、乾燥物、乾燥破砕物、乾燥粉末を指す。野菜搾汁液は、野菜を破砕した後、フィルタープレス、デカンター等の搾汁機を用いて搾汁された液状処理物である。搾汁液を減圧濃縮機などで2倍〜10倍濃縮したものが搾汁濃縮液である。塩蔵品とは、野菜に直接塩を振り掛けるか、高濃度の塩水中に浸漬されて、食塩によって保存性が高められた処理物である。抽出エキスとは、抽出溶媒として水、エタノールなどの有機溶媒、あるいは有機溶媒と水の混合溶媒を植物と接触させ、必要に応じて加熱して抽出効率を高め、野菜中の有効成分を溶媒中に抽出したものを指す。必要に応じて抽出溶媒を減圧濃縮機等により取り除くことにより濃縮エキス、さらに乾燥して粉末とすることができる。乾燥物とは、野菜を必要に応じて天日、熱風乾燥機、凍結乾燥機等の方法により、保存可能な水分量まで乾燥したものである。乾燥物は、必要に応じて、破砕や粉砕処理されて乾燥破砕物、乾燥粉末とすることができる。
【0024】
このように野菜の処理方法は列挙されるが、本発明においては、野菜の破砕物を用いる。野菜破砕物は、野菜に含まれている栄養成分や機能成分の含有量が豊富である点好ましく、野菜の搾汁液は、破砕物と比べて、著しく栄養成分や機能成分の含有量が劣っている。搾汁では2割から3割のパルプ質を含む搾汁残渣が発生し、抽出では抽出残渣が7割以上になる。食物繊維に代表される多くの栄養素は、パルプ質とともに搾汁残渣に残留する。特に野菜破砕物は、栄養成分や機能成分を多く含有している反面、パルプ質をそのまま含有しているため、粘度が高く食品加工プロセス上障害が多い。しかしながら、本発明によるとこれらの高粘度の破砕物でも乳酸発酵可能である。
【0025】
乳酸発酵野菜破砕物に使用される野菜は、特に限定されるものではなく、乳酸菌により発酵可能な野菜であればよい。例えば、ブロッコリー、キャベツ、大根、白菜、カリフラワー、ケール、野沢菜に代表されるアブラナ科野菜の全草、ニンジン、セロリに代表されるセリ科野菜の全草、ゴーヤ(苦瓜)、カボチャ、キュウリに代表されるウリ科野菜の果実部又は全草、ネギ、タマネギ、ニンニクに代表されるユリ科野菜の全草、ナス、トマトに代表されるナス科野菜の果実部などが挙げられる。これらの複数の野菜を混ぜて使用することも出来る。その中でも乳酸菌による発酵性能が良い、アブラナ科、セリ科、ウリ科の野菜が適しており、特にアブラナ科のブロッコリーとキャベツ、セリ科のニンジン、ウリ科のゴーヤ(苦瓜)が好ましく、ブロッコリーの花蕾茎部、ニンジンの根部、ゴーヤの果実部がさらに好ましい。これらの野菜は、健康に良いと言われている反面、青臭さや苦味など特有の好ましくない風味もあり、乳酸発酵によってより摂取し易い風味にすることができる。
【0026】
本発明において乳酸発酵される野菜破砕物は不溶性固形分が50重量%以上のものである。ここで言う不溶性固形分量とは、野菜処理物のパルプ量を表す指標である。不溶性固形分量が多いほどパルプ量が多く、粘度が高いため攪拌や送液に支障が出る。不溶性固形分量の測定は、果汁飲料の不溶性固形分分析法が応用できる。すなわち試料10mlを遠沈管に採取し、ローター半径14.5cmの遠心分離機を用いて、毎分3000回転、10分間遠心分離を行う。ここでは、分析精度を高めるため、上清部と沈殿部を分けて重量測定し、沈殿部分の重量パーセントを測定する。野菜破砕物は、流動性が悪いので、精製水により正確に2倍希釈して均一分散した試料を遠心分離し、沈殿物の重量%を2倍して不溶性固形分量とする。
【0027】
[加熱殺菌処理]
本発明は、野菜由来の酵素失活を目的とした、通常ブランチングと呼ばれる加熱処理よりも加熱条件が厳しい、野菜由来微生物を殺菌するための加熱殺菌処理工程を含むものである。野菜由来の微生物は、食中毒を起こしたり、乳酸発酵を妨げたりするため加熱により殺菌又は滅菌することが必要である。野菜を加工食品の原料として使用する際、通常、衛生上好ましくない微生物が付着または生息している。また本発明の乳酸発酵を妨げる微生物も存在する場合が多い。これらの微生物は野菜の栽培時、採取時、保管時、および加工時等、種々の機会に野菜に混入する。生野菜のように、採取後直ぐに摂食するのであれば、衛生上問題とならないレベルであっても、工業的に加工する場合においては、菌が増加したり、機械や工具、設備に存在していた有害微生物が野菜に付着する場合もある。このような野菜由来微生物は加熱殺菌処理をすることにより、衛生上問題にならない範囲に減少させることができる。
【0028】
野菜由来の微生物として、衛生上問題となる微生物は、食品加工上問題となる芽胞形成細菌や、食中毒の原因となるグラム陰性菌、真菌類(カビ、酵母)が挙げられる。これらのうち、無芽胞細菌は、加熱処理することにより菌数が減少し、本発明の乳酸発酵には悪影響を及ぼさない。しかし、耐熱性をもつ芽胞形成細菌は、加熱処理しても生き残る場合がある。その場合であっても、これらは共通して耐酸性がなく乳酸発酵によるpH4.6以下では増殖力が弱いため、加熱処理後の生存菌数を1グラムあたり300以下にすれば、本発明の乳酸発酵の環境では悪影響を及ぼさないものとすることができる。グラム陰性菌は、耐熱性が弱く酸にも弱いため、加熱処理するか又はpHを4.6以下にすると、本発明の乳酸発酵には悪影響を及ぼさない。真菌類(カビ、酵母)は、グラム陰性細菌と同様に耐熱性が弱いが、酸には比較的強く、pH4.6以下の環境下においても増殖する。しかしながら、あらかじめ加熱処理により1グラム当たり300以下にしておけば、本発明の乳酸発酵に悪影響を及ぼさない。結局、有害な微生物は加熱処理することにより、衛生上問題なく、本発明の乳酸発酵に悪影響を与えないレベルに減少させることができ、さらに発酵で生成される酸によりpHを4.6以下にすることにより、より確実に達成することができる。
【0029】
野菜由来の微生物として、前記に加え、本発明の乳酸発酵を妨げる別種の乳酸菌などがある。これらは発酵の際、ブドウ糖から炭酸ガスを発生させる微生物であり、乳酸菌としては絶対ヘテロ発酵様式の乳酸菌が挙げられる。具体的には、絶対ヘテロ発酵様式のロイコノストック属等の乳酸菌などがある。ブドウ糖から炭酸ガスを産生する絶対ヘテロ発酵様式の乳酸菌は、乳酸発酵過程で増殖すると、密閉された容器が膨張し、破損、内容物の漏洩等を引き起こし製品の流通上問題が起こるので本発明には好ましくない。特に絶対ヘテロ発酵様式の乳酸菌は、芽胞形成細菌に次ぐ耐熱性を持つ上、耐酸性も備え、pH4.6以下でも増殖して炭酸ガスを産生し、容器の膨張の原因となるので好ましくない。しかし、本発明においては、目的とする乳酸発酵を開始するために接種される乳酸菌数が、1グラム当たり10以上となるようにし、妨害する乳酸菌の生存菌数を1グラム当たり300以下にすれば、目的の乳酸菌が、妨害となる乳酸菌に比較して圧倒的多数を占めることになり、目的の乳酸菌の発酵が優先的に進行し、妨害する乳酸菌の発酵が進行せず、ガス産生による容器膨張を抑制できる。従って、乳酸発酵を妨げる微生物においても、加熱処理し菌数を減少させることにより、本発明の乳酸発酵に悪影響を与えないレベルにすることができる。
【0030】
野菜破砕物の加熱殺菌処理方法は、所望の菌数に減少させる加熱方法であれば、特に限定されるものではない。加熱処理は野菜をそのまま加熱してもよいが、加熱効率を高めるため、野菜を切断した後の中間段階や、野菜破砕物に加工した後に加熱処理することができる。加熱処理方法としては、熱水槽への浸漬があり、通常、冷凍野菜などを製造する際に用いられる酵素失活のためのブランチング技術を使用できる。しかし、野菜には通常1グラム当たり10万以上の微生物が存在し、冷凍野菜などに通常施されるブランチング処理は、野菜中の酵素の失活を目的としているため、ブランチング処理後も野菜由来の微生物の残存菌数が多く、後の乳酸発酵に悪影響を与えることがある。このため、本発明においては、確実に微生物数を減少させるように、野菜を洗浄後、そのままもしくは加熱効率を高めるために必要に応じて数センチ幅に切断して、98℃以上の熱水中に1分から30分間好ましくは5分から20分間浸漬する方法が好ましい。この他にも、好ましい方法として、高周波加熱、蒸気加熱により野菜を加熱する方法が挙げられる。また先に野菜を破砕した後、プレート式又はチューブ式熱交換器によって加熱処理を行う方法も、エクストルーダーを使って破砕と加熱を同時に行う方法も利用できる。これらの方法は、いずれも野菜由来の細菌数を1グラム当たり300以下、真菌数を300以下にできる。
【0031】
[乳酸発酵]
本発明の乳酸発酵に使用される乳酸菌は、密閉条件での発酵に適した乳酸菌を使用することができる。密閉条件に適した乳酸菌とは、ブドウ糖から乳酸のみを産生し炭酸ガスを産生しない発酵様式を持つ乳酸菌である。炭酸ガスを発生しないことは、密閉容器で発酵させても容器の膨張が起こらないことにより確認することができる。逆に、本発明に好ましくない炭酸ガスを発生させる乳酸菌は密閉容器で発酵させると容器膨張が起こり、容器の変形や破裂が生じる。
【0032】
本発明に適した乳酸菌としては、次に挙げる菌群が例示される。ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium
breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・カテヌラタム(Bifidobakuterium
catenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium
pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)等に代表されるビフィドバクテリウム属。ペディオコッカス・アシディラクチシ(Pediococcus acidilactici)、ぺディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)等に代表されるペディオコッカス属。エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus
faecium)等に代表されるエンテロコッカス属。ラクトバチルス属の中では、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus
plantarum)、ラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus
rhamnosus)、ラクトバチルス・ヘルベチクス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidphilus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacilus
gaseri)、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)等である。この中でも野菜処理物の発酵性能及び風味において、ビフィドバクテリウム属及びラクトバチルス属、ペディオコッカス属、エンテロコッカス属が好ましい。さらにビフィドビフィドバクテリウム属のビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ラクトバチルス属のラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、又はラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus
pentosus)が最も好ましい。これらの乳酸菌は、単独もしくは複数の乳酸菌を組み合わせて用いることができる。個々の乳酸菌株には、人体にとって好ましい整腸作用や免疫賦活作用に代表される固有の機能性を有しており、複数の乳酸菌を組み合わせると、これらの種々の機能性が複合されて発揮されることも期待できる。さらに、野菜の種類に応じて、好ましい風味を付与する乳酸菌を、複数組み合わせることもできる。
【0033】
乳酸菌は、調製された乳酸菌スターターとして野菜破砕物に添加される。この際、乳酸菌スターターの性状、組成、調製法に特に制限はなく、常法にしたがって調製される。乳酸菌スターターとしては、液状、凍結状、粉末状のものが使用できる。液状の乳酸菌スターターは、MRSブロス、酵母エキス添加還元脱脂乳や、グルコース・酵母エキス培地等で培養したものである。凍結状の乳酸菌スターターは、液状の乳酸菌スターターをそのまま凍結するか、遠心分離機で乳酸菌を濃縮後凍結したものである。粉末状の乳酸菌スターターは、液状の乳酸菌スターターをそのまま凍結乾燥するか、遠心分離機で乳酸菌を濃縮後凍結乾燥して、粉末状に加工されたものである。凍結状及び粉末状の乳酸菌スターターは、数ヶ月から約1年間低温で保存できることから市販され手軽に使用できるという点からは好ましい。これらのスターターはいずれの性状であっても使用できるが、添加前に液状であることが好ましい。凍結状及び粉末状の乳酸菌スターターは、野菜破砕物へ接種から乳酸菌が増殖し発酵を開始するまでの時間が、液状の乳酸菌スターターよりも遅れる場合があるが、その場合は、これらのスターターを一度液状培地で増殖し液状にした後に野菜破砕物へ接種することにより発酵開始時間の遅れを解消することもできる。また、粉末状スターターでは、野菜破砕物へ添加した際に分散が液状スターターよりも遅れる場合があるが、あらかじめ殺菌された水を粉末スターターに加えるか、もしくは粉末スターター接種と同時に野菜破砕物に直接加水し、分散を助けることも出来る。その際の加水量は、不溶性固形分量が50重量%以上を維持するように加えることが好ましい。野菜破砕物へのそれ以上の加水は、野菜破砕物の嵩を増し、運搬性、貯蔵性、嗜好性、機能性の面で劣る結果となる。野菜破砕物への乳酸菌スターターの接種量は、野菜破砕物に対し、1グラムあたり少なくとも10以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、乳酸菌スターター中の乳酸菌数は、乳酸菌スターターの量、野菜破砕物の量によって適宜設定でき、野菜破砕物に接種する乳酸菌数がこの値を満たせば特に制限されないが、液状のスターターの場合、乳酸菌数が、1グラムあたり少なくとも10以上が好ましく、10以上がより好ましい。
【0034】
乳酸菌スターターを接種する際の野菜破砕物の品温は20℃〜45℃であり、好ましくは25℃〜40℃である。加熱殺菌処理を施した野菜破砕物の品温は、約70℃〜95℃に達している。この品温で乳酸菌スターターを接種すると、通常、乳酸菌が死滅するが、放冷するか適宜冷却装置により乳酸発酵に適した品温まで冷却し、加熱殺菌処理の余熱を発酵工程に利用すると熱効率がよく好ましい。冷却装置は、プレート式冷却機、チューブ式冷却機、ジャケット付スタティックインラインミキサーなどを利用できる。野菜破砕物の粘度が高い場合には、プレート式冷却機が使えない場合があることから、粘度の高い野菜破砕物にはチューブ式冷却機が好ましい。また、熱交換可能なジャケット付スタティックインラインミキサーは、粘度が高い野菜破砕物にも使え冷却効率が高く、野菜破砕物と乳酸菌スターターを容器に充填する前に混合することができるなどといった構造を有しており、最も好ましい。
【0035】
本発明においては乳酸発酵の際、液状乳酸菌スターター接種分を除き、加水しないほうが好ましいが、粉末スターターの分散性向上などの理由からやむを得ず添加する場合においても水分の量は、加水後の野菜破砕物の不溶性固形分量が50重量%以上となる範囲内で加水するのが好ましい。もっとも好ましいのは実質的に水を加えない方法であり、実質的に水分を加えないとは、乳酸菌スターターを分散させるための最低限の水および製造上最低限必要な水以外には、水を加えないということである。添加される水分は、水の他、前述の乳酸菌スターターに由来する水分や、野菜破砕物以外の他に加えられる野菜搾汁などが含まれる。このように野菜破砕物以外の水分の添加量を少なくすることにより、嵩増加の防止、嗜好性不良の防止および栄養素や機能成分、乳酸菌数、乳酸発酵により生成した代謝物の濃度の低下の防止をすることができる。
【0036】
本発明においては乳酸発酵を加熱処理時の余熱により開始させるのが好ましい。乳酸菌スターターの添加は上記の通り、発酵に適した温度で加えられることが望まれる。本発明においては野菜破砕物が加熱処理されているので、その冷却段階で乳酸菌スターターを加えるものである。乳酸発酵を開始させるためには発酵に適した温度にしなればならず、野菜破砕物が冷却してしまってからでは再度、加熱し、温度を上げる必要があり、経済的ではない。しかし、本発明によれば、乳酸発酵を野菜破砕物の加熱処理時の余熱により開始させ、熱効率の良好な発酵をすることができる。
【0037】
乳酸発酵は密閉された容器内で、好ましくは容器中の空気量を可能な限り少なくして行われる。容器中の空気量は、容器の上部に集積されヘッドスペースと呼ばれる。容器中の空気量(ヘッドスペース)は、好ましくは発酵を行う容器の5%体積以下、より好ましくは3体積%以下、さらに好ましくは1%体積以下である。開放系においては微生物による汚染など衛生上問題が生じる可能性が高いことと、さらに空気と接した部分の乳酸発酵が、酸素による悪影響を受けること、また乳酸発酵により生成した酢酸などの揮発性機能性成分や、発酵フレーバーが散逸してしまい、嗜好性や機能性において劣る。特に、ヘッドスペースの残存空気に接する部分では、その酸素が乳酸発酵に影響を及ぼし、乳酸菌の代謝が変わり発酵フレーバーが悪くなる。発酵タンクを使った乳酸発酵では、発酵タンクの構造上ヘッドスペースを無くすように満注容量まで液面を上げることが出来ないので、必ずヘッドスペースが生じ、液面での乳酸発酵に酸素の影響が出る。発酵タンクのヘッドスペースの酸素を取り除くには、窒素などの不活性ガスによる置換を行わなければならず、窒素供給設備を取り付けねばならず、加工コストの面では得策とはいえない。その点本発明では、ヘッドスペースを少なく密閉できる容器を適宜選択し、酸素の影響を少なくして、より品質が向上した野菜破砕物の乳酸発酵が可能となる。
【0038】
密閉としては、落下菌や浮遊菌などの空気を媒体とした菌からの侵入を防ぐ程度以上ならば適宜密閉度を設定することができる。本発明の密閉とは、過剰な外圧がかからない状態で、内容物が漏洩せず、外部から菌などの異物混入が防げる封鎖状態を指す。ネジ蓋の場合、機械による巻き締めでも、人の手の力で締める程度でもよい。樹脂製の袋の場合、パウチなどの積層シートから製袋されたものならヒートシールによる溶着が望ましいが、ポリエチレン袋などの軟性のものならゴムバンドで強く縛るだけでもよい。また、レトルト食品用の袋でもよい。特に樹脂製の袋や樹脂製パウチは、密閉する際にヘッドスペースを少なくする操作が比較的容易である。密封された容器内で乳酸発酵は行われるため、前記のとおり、乳酸菌はブドウ糖から炭酸ガスを発生しないものが用いられる。炭酸ガスを発生すると容器が膨張し破損などを引き起こすおそれがあるためである。なお、発酵中に炭酸ガスが発生しても、弁や通気性フィルターのような適当なガス抜き機構を備えた容器を考案すれば、ブドウ糖から炭酸ガスを発生する乳酸菌も容器内で発酵可能となる。しかし、このような複雑な機構を備えた容器は、容器にかかるコストが高く、さらに運搬中にガス抜き機構が破損するなどして、有害微生物に二次汚染する危険性が高く、実用的ではない。さらにガス抜き部分には、内容物が触れないようにせざるを得ず、必然的にヘッドスペースが出来てしまう。そして発酵過程で生成した炭酸ガスを容器外へ逃がすことは、揮発性の機能性成分や発酵フレーバーを散逸させるため好ましくない。
【0039】
乳酸菌スターターの野菜破砕物への接種は、野菜破砕物を容器に充填し密閉する際に行うことができる。乳酸菌スターターは容器を密閉する前であれば野菜破砕物の容器への充填と同時に行ってもよく、その前又は後に行っても、あらかじめ野菜破砕物と乳酸菌スターターを混合した後に容器へ充填してもよい。好ましくは野菜破砕物を容器に充填した後、すぐに連続して乳酸菌スターターを添加する方法である。この方法により充填を良好に行えるとともに、有害微生物の汚染を防ぐことができる。乳酸菌スターター接種後は乳酸菌が容器中に分散することが好ましく、分散できれば特に方法はこだわらない。均一分散は必要なく、ある程度分散されれば、所望の乳酸発酵をすることができる。例えば野菜破砕物の量に対する乳酸菌スターターの量が容量比で1×10−5倍以上、好ましくは1×10−3倍以上であれば、容器内で乳酸菌スターターは自然拡散現象により分散されるため、均一に撹拌・混合する必要はない。撹拌する場合においても、野菜破砕物の充填が完了するまでの間、消毒されたヘラやハンドミキサーを用いて攪拌する程度でよい。5リットルまでの容量であれば、樹脂製パウチは密封後に20回ほど手で揉む程度でよい。また5リットルまでの変形しない容器であれば、あらかじめ乳酸菌スターターを容器に充填しておき、野菜破砕物を充填後に容器を逆転倒置させて発酵させることもできる。乳酸菌スターター接種直後は、均一に攪拌・混合されていなくとも、容量が250リットル未満であれば、その後の発酵過程において自然拡散現象により均一に乳酸発酵が進む。野菜処理物への乳酸菌スターターの接種方法として、野菜破砕物と液状の乳酸菌スターターを、インラインミキサーを用いて混合後連続的に容器へ充填することもできる。この方法では、両者の流量比率を制御することにより、乳酸菌スターターの計量も、容器内での撹拌操作も不要となり、省力化とともに工程中の二次汚染リスクを減らすことが可能である。
【0040】
乳酸発酵は、20℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃の温度で発酵を開始することにより行うことができる。本発明においては野菜破砕物が加熱処理されているので、加熱殺菌処理後の冷却段階においてその余熱を利用し、乳酸菌スターターを上記温度内で加えれば、乳酸発酵を開始させることができる。すなわち、加熱殺菌処理の後、20〜45℃に冷却した時点で乳酸発酵を開始する。この際、発酵工程は温度制御可能な恒温室のような設備を用いて一定品温で発酵を進めることもできるが、必ずしも乳酸菌スターターを接種した時点の発酵に適した温度を保つ必要は無い。小容量の容器であれば、恒温室内に入れるか、断熱材を施したシートなどで覆うことが好ましい。小容量容器においては冷却されやすいためである。しかし、容量がある一定以上になれば、外部から新たに加熱することなく、断熱材も使わずに室温で発酵を継続することができる。たとえば、ドラム缶等の比較的大容量の容器で乳酸発酵させる場合、外部環境の温度の影響は受けにくく、そのまま室温での乳酸発酵が可能である。10リットル以上の容器においては、内部温度は、室温との差が20℃未満であれば、発酵中に外部温度の影響を受けて徐々に内部温度が低下しても、一度発酵に適した温度で乳酸発酵が開始されると、その後の温度低下は発酵過程には影響しない。
【0041】
本発明では、温度を低下させながら発酵を行うことにより、より良好な野菜破砕物の乳酸発酵をすることもできる。すなわち、発酵温度を発酵に適した温度で一定に保温するよりも、室温よりも高い発酵に適した温度で発酵を開始し、その後品温を徐々に室温に近づくように低下させるほうが、乳酸菌により生成する発酵フレーバーがより自然な良好なものとなる。それは、発酵開始初期の乳酸菌対数増殖期には、それに適した品温が必要であるが、増殖終了後の定常期では反対にそのような温度は必要なく、徐々に品温を低下させて発酵の速度を少し緩めることが、この時期に生成される発酵フレーバーをより良質なものに出来るからである。また10リットル未満の容器では、断熱性の高い覆いをかけるなどの工夫により、温度の急激な低下を防ぎ緩やかに品温を低下させることができる。
【0042】
このように本発明においては、外部から加熱することなく、加熱処理時の余熱を使って、室温よりも高い発酵に適した温度で発酵を開始し、室温の雰囲気中で発酵を進行させ、徐々に品温を室温に近づけることにより、良好な発酵フレーバーを有する野菜破砕物の製造も可能となる。乳酸発酵の時間は12時間〜72時間、好ましくは16時間〜36時間である。それ以上の発酵時間では、乳酸菌以外の残存微生物が増殖して品質を劣化させることがあるため、出来るだけ短時間で終末酸度に達するように、接種される乳酸菌の菌種と菌数を選ぶ必要がある。余熱により室温よりも高めの温度で、室温雰囲気中で発酵を開始させても、緩やかな品温の低下が可能な容器、容量、適切な保温手段を設定すれば、この時間徐々に品温が室温に近づくため、本発明の乳酸発酵を好適に行うことができる。発酵過程の後半で良質な発酵フレーバーを得るための温度勾配は、所定の発酵時間内での発酵開始から発酵終了時の温度差が、1〜15℃が好ましく、2〜10℃がより好ましい。
【0043】
乳酸発酵の終点は、乳酸酸度及びpHを測定して決定することができる。乳酸発酵により野菜破砕物を乳酸発酵させると、野菜の種類や品種、産地毎にそれ以上乳酸酸度が上昇せず、pHも下がらない、発酵の終点となる終末乳酸酸度及び終末pHが存在する。乳酸発酵の途中で発酵を止めると乳酸酸度、pHにばらつきが生じ品質の均一性が確保できない。一方、終末乳酸酸度及び終末pHに達した発酵時間前後で発酵を終了させると、容器ごとの乳酸酸度又はpHのバラツキが少なくなり品質を一定に制御することができる。このような酸度上昇の終点となる発酵時間は前述の通り、12時間〜72時間、好ましくは16時間〜36時間である。乳酸発酵野菜処理物を保存・流通させるためには、冷蔵又は冷凍するとよい。冷蔵又は冷凍することにより、品質の劣化を防ぐことができる。冷蔵又は冷凍するためには、容器の容量は250リットル以下が好ましい。この量を超える容量では、中心部の温度が冷蔵又は冷凍温度に到達するまでの時間がかかり過ぎるためにその間に品質が劣化する可能性が高い。また、冷蔵又は冷凍せずに加熱殺菌して室温保存することもできる。容器ごと加熱殺菌する場合においては、中心部の温度が殺菌温度に達す前に、周辺部が加熱され過ぎて品質劣化しないように、容器の容量は、5リットル以下にすることが望ましい。加熱殺菌は、蒸気や熱水、高周波を使って行うことができる。乳酸発酵処理物のpHが4.6未満であれば中心部の温度において85℃、30分間と同等以上の加熱により達成され、乳酸発酵処理物のpHが4.0未満であれば中心部の温度において65℃、10分間と同等以上の加熱により達成される。
【0044】
乳酸発酵する野菜破砕物には、乳酸菌以外の細菌の増殖を抑制する目的で適宜少量の食塩に代表されるナトリウム塩、緑茶カテキンに代表される植物抽出物等を添加することができる。これらの添加量は、ナトリウム換算で0.05〜1重量%、緑茶カテキンでは0.01〜0.2重量%である。野菜破砕物には、乳酸菌の発酵に使われる糖分が少ないので、発酵を助けるためにブドウ糖などの糖質を添加することもできる。糖質の添加量は、野菜処理物に対し0.1〜10重量%である。さらに乳酸発酵過程のpH制御を目的として、pH調整剤も添加可能である。乳酸発酵に適したpH調整剤としては、酢酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムが挙げられるが、pH緩衝作用を有するものであればこれらに限定されるものではない。pH調整剤の添加量は、野菜破砕物に対し0.01〜1重量%である。
【0045】
[小規模製造]
本発明においては、容器として運搬可能な容器を使用することが好ましく、それにより小規模製造をすることができる。運搬可能な容器とは機械力によって運ぶことができ、例えばクレーンやフォークリフトで移動可能であり、トラックで運送することができる1000リットル以下の容器である。これらのうち250リットル以下の容量が好ましい。容量が250リットルを超えると、容器中での乳酸発酵の自然拡散がうまく起こらずに発酵にむらができやすくなる。容器の材質や形状は、密閉できれば特に限定はないが、ヘッドスペースを出来るかぎり少なくできる構造を有している容器が好ましい。ヘッドスペースに接している野菜破砕物の乳酸発酵が、酸素の影響を受けないヘッドスペース容量は、容器容量の5%未満が好ましく、2%未満がより好ましい。たとえば通常食品用に用いられる、樹脂製袋、樹脂製パウチ、アルミラミネート樹脂製パウチ、内面コートブリキ缶、内面コートアルミ缶、ガラス瓶、PET樹脂ボトル、紙製ラミネート容器、樹脂製カップ、樹脂製ペール、ブリキ製5ガロン缶、金属ドラム缶、樹脂製ドラム缶、樹脂製バッグが内装された紙製ドラム缶などが使用できる。ブリキ製5ガロン缶や金属ドラム缶は、内面が樹脂塗装されているものは、野菜破砕物を直接充填でき、そうでないものは内側にポリエチレン製の袋を挿入し、野菜破砕物と直接容器が接触しないようにするとともに、ポリエチレン製袋をヒートシールやゴムバンド等により密閉することが望ましい。これらのうち、ドラム缶を使用した場合は簡単にフォークリフトで運搬することが可能であり、現在汎用されている流通形態にすることができるので好ましい。また、化学樹脂によるパウチにした場合は、容量を適宜選択することができ、必要量の運搬が可能なため好ましい。
【0046】
[食品]
本発明はさらに、上記の発酵方法により得た乳酸発酵野菜を含有した食品に関するものである。乳酸発酵野菜はそのまま用いたり、他の原料と混合したりして食品にすることができる。食品にする際には、通常食品に使用できる成分を加えることができる。
【0047】
添加する成分としては、例えば、糖アルコール類(マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなど)、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸塩類(炭酸カルシウムなど)、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、メチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、タルク、リン酸塩類(リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、カカオ脂等の賦形剤、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、クロスポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、結晶セルロース、粉末セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、リン酸カリウム、アラビアゴム末、プルラン、ペクチン、デキストリン、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、ゼラチン、キサンタンガム、カラギーナン、トラガント、トラガント末、マクロゴール等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、サポニン等の乳化剤、アスコルビン酸、トコフェロール等の酸化防止剤、乳酸、クエン酸、グルコン酸、グルタミン酸等の酸味料、ビタミン類、アミノ酸類、乳酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩などの強化剤、二酸化ケイ素等の流動化剤、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、グリシルリチン等の甘味料、ハッカ油、ユーカリ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、チョウジ油、オレンジ油、レモン油、ローズ油、フルーツフレーバー、ミントフレーバー、ペパーミントパウダー、dl−メントール、l−メントール等の香料等が挙げられる。
【0048】
食品の形態としては、飲料、清涼飲料、ジュース、野菜ペースト、ゼリー菓子、野菜ソース、調味料、レトルト食品などが例示される。

【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法の一例(製造フロー)を図1で表す。
【0050】
[実施例1]
ブロッコリーの花蕾とそれに付随する可食茎部を長さ5〜8cmに切断し、98℃以上の熱水中に10分間浸漬して加熱処理を行い、コミトロールを使ってピューレ状に破砕した。この段階の細菌数及び真菌数は、いずれも1グラム当たり300以下であった。破砕後の品温は約70℃であったので、チューブ式熱交換器を通して乳酸発酵に適した36℃まで冷却し、内側にポリエチレン製の袋を挿入した天切り18リットルブリキ缶に、その15kgずつを充填した。同時に森永乳業株式会社より購入したビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株の凍結スターターを、10%濃度になるように滅菌生理食塩水に分散溶解した菌液300gを接種し、消毒したヘラで20秒間攪拌した。ヘッドスペースを出来るだけ少なくして内側のポリエチレン製袋の口をゴムバンドにて密閉し被蓋を施して、15〜20℃の室温にて18時間発酵させた。発酵終了時の品温32℃、ビフィズス菌生菌数は、1グラム当たり6×10に達し、0.1N水酸化ナトリウム滴定法により測定した乳酸酸度は0.73%、pHは4.2であった。乳酸発酵されたブロッコリーピューレは、不溶性固形分量は65重量%、発酵によって生成された乳酸と酢酸の酸味を有していた。このブロッコリー乳酸発酵物30重量部にリンゴ果汁を70重量部混合すると良好なブロッコリーミックスジュースが出来た。

【0051】
[実施例2]
キャベツを約5cm幅に切断し、98℃以上の熱水中に6分間浸漬して加熱処理を行い、フードプロセッサーを用いてピューレ状に破砕した。この段階の細菌数及び真菌数は、いずれも1グラム当たり300以下であった。破砕後の品温は約65℃であったので、乳酸発酵に適した30℃まで放冷し、内側にポリエチレン製袋を装着した容量10リットルの樹脂製ペールに、キャベツ破砕物8kgずつを充填した。同時に理化学研究所微生物材料開発室より入手したラクトバチルス・プランタラムJCM1149株を、グルコース・酵母エキス培地で培養して調整したスターター160gを接種し消毒したヘラで攪拌し、ヘッドスペースが残らないようにポリエチレン製袋をヒートシールで溶着し、被蓋を施して密閉した。容器に断熱性シートを被せて、20〜25℃の室温にて24時間発酵させた。発酵後の品温は26℃、乳酸菌生菌数は、1グラム当たり1×10、0.1N水酸化ナトリウム滴定法により測定した乳酸酸度は0.83%、pHは3.8に達した。出来上がったキャベツ乳酸発酵物は、不溶性固形分量63重量%で、キャベツ特有のイオウ臭が少なく、さわやかな酸味の風味に仕上がっていた。このキャベツ乳酸発酵物は樹脂性ペールのまま冷蔵又は冷凍状態で運搬および流通させることができ、食品の原材料に使用することができる。

【0052】
[実施例3]
ニンジンの皮とヘタを取り除き、約5cm幅に輪切りにして、98℃以上の熱水中に20分間浸漬して加熱処理を行い、コミトロールを使ってピューレ状に破砕した。この段階の細菌数及び真菌数は、いずれも1グラム当たり300以下であった。破砕後の品温は約75℃であったので、熱交換可能なジャケット付インラインミキサーを通して、乳酸発酵に適した温度36℃まで冷却したニンジン破砕物を、内側にポリエチレン製の袋を挿入したスチール製200リットルドラム缶に、その170kgずつを充填した。同時に森永乳業株式会社より購入したビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株の凍結スターターを、10%濃度になるように滅菌生理食塩水に分散溶解した菌液3.4kgを接種し、消毒した長さ1.8mのヘラで2分間攪拌した。内側のポリエチレン製袋の口をヘッドスペースが2リットル以下になるように、ゴムバンドにて密封し被蓋を施して、室温15℃〜20℃の倉庫内にて24時間発酵させた。発酵終了時の中心部の品温は35℃であった。ビフィズス菌生菌数は、1グラム当たり6×10、0.1N水酸化ナトリウム滴定法により測定した乳酸酸度は0.54%、pHは4.2に達し、ドラム缶上層部と中心部の乳酸酸度を比べた結果、0.04%以内の差であった。またドラム缶毎の乳酸酸度のバラツキも0.03%以内となり、乳酸発酵は容器内、容器間とも均一に進んでいた。出来上がったニンジン乳酸発酵物は、不溶性固形分量74重量%、ニンジン臭さが無く、ビフィズス菌特有の酢酸の程よい酸味と甘みのある風味に仕上がっていた。このニンジン乳酸発酵物はドラム缶のまま冷蔵又は冷凍状態で運搬および流通させることができ、食品の原材料に使用することができる。

【0053】
[実施例4]
ブロッコリーの花蕾とそれに付随する可食茎部を、長さ5〜8cmに切断し、95℃以上の熱水中に1分間浸漬してブランチング処理を行い、コミトロールを使ってピューレ状に破砕した。さらにチューブ式熱交換器を通して98℃2分の加熱殺菌を行い、連続するチューブ式冷却機より発酵に適した32℃まで冷却した。この段階の細菌数及び真菌数は、いずれも1グラム当たり300以下であった。このブロッコリーピューレを、内側にポリエチレン製の袋を挿入した200リットルドラム缶に、その150kgずつを充填した。その後クリスチャン・ハンセン社のラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)の凍結乾燥粉末スターター(商品名「Vege−Start 60」)を1ドラムあたり20g添加し、同時に粉末スターターの溶解分散を促すため、加熱殺菌後32℃に保温された精製水18kgを加えて、撹拌部を消毒したハンドミキサーを用いて1分間攪拌した。内側のポリエチレン製袋の口を、ヘッドスペースが2リットル以下になるようにゴムバンドにて密閉し被蓋を施して、室温15℃〜20℃の倉庫内にて36時間発酵させた。発酵終了時の中心部の品温は24℃であった。発酵終了時の乳酸菌生菌数は、1グラム当たり7×10に達し、0.1N水酸化ナトリウム滴定法により測定した乳酸酸度は0.69%、pHは3.6であった。ドラム缶上層部と中心部の乳酸酸度を比べた結果、0.05%以内の差であった。またドラム缶毎の乳酸酸度のバラツキも0.03%以内となり、乳酸発酵は容器内、容器間とも均一に進んでいた。乳酸発酵されたブロッコリーピューレの不溶性固形分量は58重量%であった。ドラム缶のような大型容器内においても、少量の加水により、粉末状スターターでも均一な乳酸発酵が可能であった。出来上がったブッロコリー乳酸発酵物は、さわやかな酸味とまろやかな風味に仕上がっていた。

【0054】
[実施例5]
ゴーヤ(苦瓜)の果実を約5cm幅に切断し、98℃以上の熱水中にて6分間ブランチング処理を行った後、種を含んだままフードプロセッサーで破砕し、さらに1mmの篩を通してペースト状に加工した。この段階の細菌数及び真菌数は、いずれも1グラム当たり300以下であった。破砕後の品温は約65℃であったので、放冷して乳酸発酵に適した約30℃まで冷却し、容量1リットルの透明樹脂製スタンディングパウチに、その800gずつを充填した。同時に、クリスチャン・ハンセン社のラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)の凍結乾燥粉末(商品名「Vege−Start 60」)を用いて、グルコース・酵母エキス培地で培養して調製した液状乳酸菌スターター32gを添加し、ヘッドスペースを出来るだけ少なくして、ヒートシーラーを用いて溶着密閉した。密閉後に手でパウチを20回揉んで内容物を適度に混合した後、パウチを30℃恒温器に入れて乳酸発酵を開始した。発酵時間の経過と滴定法により測定した乳酸酸度の上昇と、pHの変化を表1に示す。乳酸酸度の上昇は、24時間で終末乳酸酸度に到達し、それ以上発酵時間を延長しても乳酸酸度は上昇しなかった。pHの低下も、24時間で終末pHに到達し、それ以上発酵時間を延長してもpHは低下しなかった。またパウチ間の乳酸酸度のバラツキは、0.02%以内であった。発酵終了後に冷凍庫に入れ−18℃で保管した。そのうちの1袋は、熱水中に浸漬し、97℃以上の温度で10分間加熱殺菌処理を行った。冷凍保管したものも加熱殺菌したものも、不溶性固形分量が58重量%、ゴーヤ特有の苦味は残っているが、青臭さがなく適度の酸味があり、飲料や惣菜などに加工するのに好適な風味に出来上がっていた。特に乳酸酸度上昇の終点まで発酵させることにより、容器間の品質を均一することが出来た。このゴーヤ乳酸発酵物はパウチのまま運搬および流通させることができ、食品の原材料に使用することができる。

【0055】
【表1】



【0056】
[比較例1]
実施例1と同様にして、ブロッコリーの破砕物を得た。試験用の小型発酵タンクにその100kgを充填し、さらに殺菌された精製水を100kg添加した。発酵タンクのジャケットに冷却水を通じて、内部液温を36℃まで冷却した。そしてビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株の凍結スターターを、10%濃度になるように滅菌生理食塩水に分散溶解した菌液300gを接種し、30分間撹拌しながらスターターの均一分散を行った後、撹拌を停止した。発酵タンクのジャケットに温水を通じて、液温を36℃に保ったまま18時間発酵を行った。乳酸発酵されたブロッコリー破砕物の不溶性固形分量は32重量%であった。このブロッコリー乳酸発酵物30重量部にリンゴ果汁を70重量部混合し、ブロッコリーミックスジュースを製造した。
【0057】
実施例1のブロッコリー乳酸発酵物は容器ごと長期保管が可能であるが、比較例1のブロッコリー乳酸発酵物は保管のために容器への移し変えが必要であった。また、実施例1のジュースと比較例1のジュースを比較したところ、比較例1のジュースは実施例1よりも、乳酸発酵により醸し出された野菜の好ましいフレーバーがなく、水っぽくこくに欠けていた。逆に、実施例1のジュースは、比較例1よりも乳酸発酵による野菜の好ましい風味とこくがあった。

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の野菜破砕物の乳酸発酵物の製造方法の一例(製造フロー)。
【出願人】 【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
【出願日】 平成19年3月30日(2007.3.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−245573(P2008−245573A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−90687(P2007−90687)