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【発明の名称】 粉末乾燥醤油とその製造方法及びその製造装置
【発明者】 【氏名】清川 晋

【氏名】清川 太郎

【氏名】井上 晴夫

【氏名】清川 保

【氏名】清川 千鶴子

【要約】 【課題】実質的に潮解性を有しない粉末乾燥醤油を提供する。

【構成】大径球体と小径球体の混合体であって、前記混合体のうち少なくとも大径球体は薄い殻体で形成された中空体であり、その表面は実質的に開口がなく比較的滑らかな表面に形成されていることを特徴とする粉末乾燥醤油。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径球体と小径球体の混合体であって、前記混合体のうち少なくとも大径球体は薄い殻体で形成された中空体であり、その表面は実質的に開口がなく比較的滑らかな表面に形成されていることを特徴とする粉末乾燥醤油。
【請求項2】
前記大径球体の内、あるものはその表面に亀甲模様あるいはサッカーボール状の襞が形成され、更に表面に実質的に開口を有しないことを特徴とする請求項1記載の粉末乾燥醤油。
【請求項3】
前記大径球体は、その内部に多数の小球体を含んでいることを特徴とする請求項1記載の粉末乾燥醤油。
【請求項4】
大径球体と小径球体の混合体の表面に、少なくとも人に無害な撥水性の膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の粉末乾燥醤油。
【請求項5】
顆粒状の粉末乾燥醤油として賦形するための賦形剤を、原料醤油に添加しなくても粉末化を可能としたことを特徴とする請求項1記載の粉末乾燥醤油。
【請求項6】
水の沸騰温度より低温に加熱されている乾燥塔本体内に、塔本体の内部の温度より高い温度に調節した原料醤油を噴霧し、この噴霧が他の噴霧と接触・融合・合体をくりかえして球状の殻体として成長しながら醤油に含まれていた水分を蒸発させて醤油の固形成分で形成される殻体を形成する方法において、前記醤油より蒸発する水分が、殻体を破壊して噴出しない温度条件で、前記乾燥塔本体内の温度制御を行うことを特徴とする粉末乾燥醤油の製造方法。
【請求項7】
乾燥塔本体の内部の温度を塔頂側を低温に塔底側を高温に保持し、かつその温度範囲を40℃〜82℃に保持することを特徴とする請求項6記載の粉末乾燥醤油の製造方法。
【請求項8】
乾燥塔本体の内部の温度を長手方向に複数に分割し、上部の温度を低温に、下部を温度を前記上部の温度より高温に保持し、前記低温と高温の温度差を約10〜30℃の範囲において塔本体の内壁面に温度差を設け、この温度差を利用して内壁面に沿って上昇流を発生させるようにしたことを特徴とする請求項6記載の粉末乾燥醤油の製造方法。
【請求項9】
円筒状の乾燥塔本体と、この乾燥塔本体の上部に設けられた原料醤油の噴霧手段と、この噴霧手段に連結された原料である醤油の温度制御機能付供給装置と、前記乾燥塔本体の下部と配管で接続され、乾燥された粉末醤油を分離するためのサイクロンと、このサイクロン中を減圧状態に保持する気体排出装置を有し、
前記乾燥塔本体の外面に電熱ヒータなどの加熱手段を設けると共に、前記塔本体の必要な箇所の温度を測定する温度センサを設け、前記乾燥塔本体の上部から中間部の温度によって前記加熱手段の発熱状態を制御する制御装置を設けたことを特徴とする粉末乾燥醤油の製造装置。
【請求項10】
前記乾燥塔本体の内壁面に液滴の付着を防止するシリコン加工、フッ素樹脂加工なとの撥水加工を施したことを特徴とする請求項9記載の粉末醤油の製造装置。
【請求項11】
前記乾燥塔本体の外面に、酸化アルミが主体の溶射層と、この溶射層の上に更に酸化チタンが主体の溶射層を設けた二層構造のセラミックス層を形成し、前記酸化チタン層の外面に電熱ヒータなどの加熱手段を配置したことを特徴とする請求項9記載の粉末乾燥醤油の製造装置。
【請求項12】
前記乾燥塔本体の外面に形成した二層構造のセラミックス層の上に電気絶縁層を介して設けた電熱ヒータを少なくとも3つに区分して形成し、各電熱ヒータをそれぞれ独立して温度制御できるように構成したことを特徴とする請求項9記載の粉末乾燥醤油の製造装置。
【請求項13】
前記サイクロンの本体中に、食用に適した撥水剤を供給する装置を設けたことを特徴とする請求項項9ないし12の何れかに記載の粉末醤油の製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の醤油を乾燥させた粉末乾燥醤油、その製造方法とその装置に関し、更に詳しくは醤油の乾燥粉末が薄い殻で形成される顆粒状の粉末乾燥醤油とその製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国における消費量が多く、代表的な調味料として醤油がある。この醤油には、こいくち醤油、うすくち醤油、たまり醤油、白醤油、さいしこみ醤油、生醤油、減塩醤油など多数の種類の商品が製造され、販売されている。
【0003】
当然のことながら、通常使用する醤油は液状であり、これをガラスビンやペットボトルなどの容器に収容して貯蔵や輸送、そして販売され、そして小口に分けて使用される。しかし、液体での貯蔵や輸送することは容積が大きく重量もあることから輸送コストが増加し、また、高温になる場所での保存すると短期間に変質する傾向があり、その保存条件がかなり厳しく、保存中に味が変化するという問題もある。従って、倉出し直後の新鮮なものが賞用される。
【0004】
粉ミルクやインスタントラーメンなどの汁は、当然、凍結乾燥や噴霧乾燥などの方法によって乾燥して粉体として減容して取扱性や保存性を改善する方法が実施されている。
【0005】
(潮解性について)
しかし、乾燥醤油には本質的な問題がある。即ち、第1に「潮解性」を有していることである。潮解性とは、例えば、直径が5cm程度の平皿状の容器に乾燥醤油を山盛りにした状態で、湿度が50〜60%程度の雰囲気内に放置した場合、約2〜3時間の放置で表面の層が吸湿し、その吸湿した部分は山形に沿って硬化し、あたかもも円錐形の焼き菓子かカサブタのような状態で乾燥醤油の山から剥離する。そして前記乾燥醤油を1昼夜保存すると全体がベトベト状態となり、取扱性が極端に悪化する。
【0006】
第2に、第1の潮解性ないし吸湿性により乾燥醤油の微粉末を小出しする容器に入れ、これを少量づつ振りかけのように粉末状で使用することが実質的に困難である。前記のように短時間の吸湿により表面の層がカサブタのように凝集固化してしまうことから、短時間に容器の排出孔が目詰まりしてしまう。
【0007】
第3に、乾燥醤油を元の液体に戻した場合には味が大きく変化していることである。長期に保管すると、吸湿によりカビ臭くなり、味が悪化するなどの問題がある。
【0008】
また、従来品は顆粒状に形成するために大量の「賦形剤」を付与する必要があることから粉末乾燥醤油をもとの状態に戻すと、味が変化してしまっている。
【0009】
(乾燥方法について)
粉ミルクやインスタントラーメンの汁などの粉末状の調味料や薬品などには加熱乾燥方法が多く使用されている。この乾燥方法を実施する乾燥機としては、噴霧乾燥機(スプレードライヤ)が多く使用されている。
【0010】
一方、醤油を乾燥する方法は、減圧ドラム乾燥法、真空凍結乾燥法、噴霧乾燥法が使用されているが、噴霧乾燥法が最も好ましいようである。この噴霧乾燥法に用いられる好ましい装置は、例えば、加圧ノズル式噴霧乾燥機、二流体ノズル式噴霧乾燥機、デスクアトマイザー式噴霧乾燥機、噴霧乾燥・造粒兼用乾燥機などが使用される(非特許文献、特許文献1、2)。
【非特許文献1】株式会社 幸書房 1997.9.1発行「乾燥食品の基礎と応用」第92〜94頁
【特許文献1】特開2004−105066号公報
【特許文献2】特開平7−213249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の醤油をノズルより高圧の空気と共に噴霧したり、回転円板によって微細化し、熱風が上方より下方に供給乾燥塔内に分散状態で放出し、霧化された醤油の液滴を加熱する従来の方法においける前記熱風は120〜200℃、特に効率的な乾燥方法には260℃もの高温の加熱空気が採用されている。
【0012】
一方、製品である乾燥醤油の直径は一般に60〜200μmであるとされているが、実際には明確なデータはない。醤油は前記の如く各種のもの製造されているが、例えば、「こいくち醤油」成分の1例を挙げると次の通りである。
1)全窒素分: 1.602%・・(旨味成分・固形成分)
アスパラギン酸、グルタミン酸
2)塩 分: 16.15%・・・(潮解性関与成分・固形成分)
3)糖 類: 3.1% ・・・(潮解性関与成分)
還元糖、グリコース、アラビノース、
グリセリン、アラニン
4)固形分 : 19.1% ・・・(核となる成分の一部・固形成分)
無機質(カリウム、カルシウム、マグネシウ ム、リン、鉄など)
酵 素
5)アルコール分:2.65%・・・(蒸発気化成分)
6)水 分: 57.4% ・・・(蒸発気化成分)
【0013】
なお、この醤油には粉末に賦形するための賦形剤を添加されたものではない。その理由は原料となる醤油の味に変化を与えないためである。
【0014】
前記成分からなる醤油を原料としてこれを乾燥して顆粒状の粉末醤油とするためには、一般には「賦形剤」としてデキストリンを添加している。もし、この賦形剤を使用しない場合は、目的とする大きさの顆粒状の粉末醤油を製造することができないのである。
【0015】
ところが、この賦形剤は粉末の水溶化にすぐれた性質を持っており、これはとりもなおさず潮解性に大きく寄与する物質である。従って、このデキストリンを大量に含むために従来の粉末乾燥醤油は保存性が悪くなる。従って、たびたび蓋を開閉するような用途には使用することができない。
【0016】
その上にデキストリンを含む粉末醤油に水を添加して元の液体に戻した場合、元の醤油とは異なる成分となっているために元の味と違った味となり、品質の低下が避けられないという問題がある。
【0017】
また、従来のスプレードライヤを使用した高温の熱風を使用する乾燥粉末は、前記固形分に僅かな水分(約2〜3%)が含まれているが、醤油として存在していた水分の多くは蒸発している。しかし、この乾燥した粉末醤油は本質的に潮解性があり、短時間に吸湿することは前述の通りである。
【0018】
(発明者が関係した遠赤外線加熱に関する技術)
本発明者は、遠赤外線を使用した加熱技術(特に低温加熱)に関して長年研究し、その技術に精通しており、その実用化したものの例を挙げれば、下記の通りである。
【0019】
a)遠赤外線加熱を使用した低温加熱によるサウナ風呂(特許第2808443号)、b)PTC型加熱体を使用した床暖房装置、c)焼き鳥やウナギの蒲焼などの魚の焼き調理器の発熱体体(特許第3777328号)、d)更に、穀物の乾燥(特許第3074479号)、e)LEDの製造工程におけるエポキシ樹脂の硬化促進技術(特開2002−33344号、特許第3706836号)、その他多数の食品乾燥技術などである。
【0020】
特に、低温乾燥に適した遠赤外線の放射による加熱は、食品などの被加熱物を速やかに且つ、表面の焼けなどの被乾燥物の損傷の少ない状態を保ちながら乾燥させることができることを確認している。かかる本発明者の知見から、高温(焼き調理装置、サウナ風呂)から低温(食品乾燥装置、暖房装置)に至る範囲で熱風と遠赤外線との併用の検討を行なった。
【0021】
従来の粉末乾燥醤油の製造装置は前記のように120〜260℃程度の高温の熱風を使用し、これによって得られた粉末乾燥醤油は前記の如く強い潮解性を持っており、この粉末乾燥醤油は保存性と取扱性に問題があったのである。
【0022】
(乾燥醤油との出会い)
本発明者は前記の如く遠赤外線を利用した低温乾燥方法に関する技術を有している関係で、これを醤油の乾燥に利用できないかと考え、下記の基礎実験を行なった。
【0023】
基礎実験には、二流体噴射ノズルを持つ噴霧乾燥機を使用した。乾燥塔本体の直径は500mm、長さは5m、厚さが3mmのアルミ製円筒の外表面に酸化アルミからなるセラミックス層と、その上に酸化チタンからなるセラミックス層を二重に形成し、このセラミックス層の上に電気絶縁層を介して電熱ヒータを設けた。この塔本体の内部の温度を測定して乾燥塔全体の温度制御するために温度計が長手方向の3箇所設けられている。
【0024】
そして乾燥塔本体の上部の温度を60℃の低温に保持し、中央部を65℃に、下部を75℃の温度に温度差を形成するように制御した。そして原料タンクと噴霧ノズルとの間に設けてある加熱器によって、原料となる醤油を70℃に加熱し、約80℃の熱風と共に塔本体内に噴霧した。
【0025】
醤油の噴霧は、濃霧か雲海のように形成されて乾燥塔本体内を気流に乗って浮遊し、回転し、融合し、合体を繰替えして乾燥して少量の粉末乾燥醤油を得た。
【0026】
そして、このようにして製造した醤油を250ccの容量の容器に入れ、蓋をして時々この蓋をあけては必要な量の醤油を取出し、蓋をし、この開閉操作を数10回も繰返して行なった。
【0027】
しかし、驚くべきことに、前記のように遠赤外線を乾燥塔内に放射し、低温(60〜75℃)で乾燥した粉末乾燥醤油は、蓋の開閉のたびに、容器の外から内部に空気が強制交換され、そして水分が侵入する機会があったが、製造からかなりの期間が経つに、全く潮解せずに保管されていた。
【0028】
この好結果を確認するために、この粉末乾燥醤油を、ある有名な醤油の製造メーカに、その成分分析と化学的な品質の評価をしてもらった。その結果、成分は通常の醤油のものと実質的に変化しておらず、また、醤油としての味や香りなどが元の状態を保持しているとの評価を得た。なお、この粉末乾燥醤油は、従来の粉末乾燥醤油のように賦形剤であるデキストリンを全く添加しておらず、市販品のままのものを原料としている。
【0029】
また、この粉末乾燥醤油と従来の粉末乾燥醤油との違いは、前者は残留水分が2〜3%であった。これに対して前記実験で得られた乾燥醤油の残留水分は7%もあり、従って、旨味成分も残留していることが確認されている。
【0030】
本発明者は、この粉末乾燥醤油は潮解性を実質的に有していない点と、従来のように賦形剤を使用していない醤油でも顆粒状に乾燥することができた点にヒントを得た。
【0031】
そこで、特に水分が急に蒸発、つまり、一種の「水蒸気爆発」のような、蒸発が粉末を構成する粒子の成長を阻害するような現象を発生させないような低温に加熱した乾燥塔内に、温度ショックを防止する意味で、この乾燥塔内の温度程度に原料醤油を加熱し、そして低温の温風と共に噴霧状で噴出して噴霧乾燥により粉末乾燥醤油を製造した。
【0032】
そしてこの醤油の霧滴に付与する熱エネルギーの量(加熱温度など)と、この霧滴が微粉末を形成して乾燥するプロセスについて検討した結果、本発明を得るに至った。
【0033】
(噴霧状態の観察、発明者の推定)
通常の噴霧乾燥方法では、噴霧乾燥機の乾燥塔内部の醤油の噴霧から乾燥醤油に変化する過程を、直接目視によって観察することは困難である。即ち、乾燥塔本体の一方の側には覗き窓が設けられ、その対向する位置にランプが配置され、その中間の空間部にノズルより噴霧された醤油の微細な霧滴が浮遊して雲海か濃霧の状態を呈し、霧滴の粒子は攪乱状態で落下する様子を観察することができる。
【0034】
しかし、この状態は、雲海か霧の集団、あるいは激しく移動するモヤをガラス越しに観察しているような霧滴の集団の観察である。従って、粉末生成過程の実態を全く把握することはできない。勿論、乾燥塔の内部に小型カメラを仕掛けてもレンズが醤油に濡れるだけで観察は不可能であった。
【0035】
そこで発明者は、次のような推定を行なった。
即ち、醤油の微細な霧滴が、乾燥塔の中で独立して個々に、そのままの状態で乾燥したとすると、得られた微粉末の大きさが、霧滴がそのまま乾燥して小粒の粉末となったものと比較して、微粉末は遙に大型のものに成長している。このことから、霧滴がそのまま乾燥しても必要とする大きさの粉末乾燥醤油を形成しないと考えられた。
【0036】
前記観察より、次のように推定した。
噴霧された微細な醤油の霧滴は、乾燥塔本体の中の温風(遠赤外線と温風が充満)の中を浮遊し、旋回しながら、回転し、衝突し、しかも衝突した霧滴同志は互いに融け合い、合体して次第に集合体として成長する。つまり、シャボン玉が浮遊し、旋回しながら落下する間に、他のシャボン玉と接触し、互いに付着したものは大きく成長する。この成長過程において、融合することができない小さなシャボン玉を内部に、あたかも種を含むように外殻が次第に成長していく。
【0037】
また、この成長の段階の温度条件や攪拌の条件により、製品となった微粉末の外形的に変化がある。醤油の成分は、前記例示したように固形分と水分と揮発分の混合体であり、そして固形分が粉末の骨格を形成する。
【0038】
しかも従来品においては固形分の一部が大きな潮解性に関係している。特に賦形剤とし使用するデキストリンが潮解性に大きく関与している。この骨格の形状(滑らかなもの、大小の凹凸のあるもの、殻体が火山の火口のように形成されたものなど)は、蒸発していく蒸気の噴出を伴なって変化する。
【0039】
〔従来の粉末乾燥方法の重大な問題点〕
(粉末醤油の形状)
本発明者は、前記粉末乾燥醤油の生成過程の「仮定ないし推定」を確認する意味で電子顕微鏡写真による観察を行なった。
【0040】
詳細は後述するが、乾燥醤油の粉末を電子顕微鏡で観察すると、驚くことに、殆どのものが球形の中空体である。この中空体を構成している殻体の表面に割れ目が存在するものと、存在しないものとがある。この割れ目が潮解性に関係している。
【0041】
従来技術で採用されている約200〜260℃の高温の熱風を乾燥塔内に吹き込む乾燥方法は、霧滴の水分が蒸発の際に大量の熱エネルギーを一瞬にして受ける。そしてこの熱エネルギーの授受により水分は一気に蒸発するものと考えられる。しかも、この急激な加熱による水分の急激な蒸発は、従来の乾燥方法では不可避的なものである。
【0042】
前記のように瞬間的あるいは短時間の乾燥の際に発生した液滴から発生した水蒸気は、成長した、あるいは成長しつつある固形分の集合体である殻体を形成しつつある骨格まで破壊することになると推定される。
【0043】
その上、従来の粉末乾燥醤油は、潮解性の原因となり、かつ賦形剤として必要なデキストリンを多量に含むために、本質的に潮解性を有しており、これを回避することは困難である。
【0044】
この水蒸気の噴出状態の強弱に関係して球体の形状が変化し、特に、爆発的な水蒸気の噴出は、殻体を恰も月面のクレーターのように破壊する(写真で観察できる)。これに対して小さな噴出は殻体に小さな割れ目や穴をあける。更に殻体の破壊状態により表面積の大小、つまり空気との接触面積に影響があり、これに関係して潮解性の大小に影響が出るものと推定される。
【0045】
従来技術は、高速乾燥のために約260℃程度の高温の熱風を適用しており、その結果、微細な霧滴の内部の水分が沸騰状態で蒸発し、この水蒸気は殻体に囲まれて逃げ道がなく、殻体を破壊(爆発)するものと推定される。
【0046】
(本発明の加熱条件)
本発明は、前記のように、少量の粉末乾燥醤油を製造した経験と、電子顕微鏡写真の観察、その外形からの蒸発挙動の推定、予想などを考慮した結果得られたものである。
【0047】
1)本発明においては、霧滴が乾燥する際に、霧滴より発生する「水分の沸騰」を極力防止することを目的として、醤油の霧滴の加熱条件と加熱手段を従来技術より大幅に変更する。つまり、従来技術では適用されていない範囲の低温乾燥を採用する。
【0048】
2)低温乾燥を行うために、乾燥に寄与する熱エネルギーとして大量の「遠赤外線の放射」と、少量の熱風の併用によって行なう。
【0049】
そして乾燥塔内の温度を、醤油に含まれている水とアルコール分の共沸点以下の温度に限定して爆発的な水蒸気の発生を抑制する。
【0050】
3)醤油の成分を構成している水とアルコール分の混合体の共沸点以下である、40℃〜82℃であり、乾燥温度を前記範囲ないし、好ましくは60℃前後とする。その理由は、霧滴からの水分の蒸発を、従来技術に比較して、遙に、穏やかなものとする。その結果、水蒸気の急激な噴出を防止した粉末乾燥する方法を採用できる。
【0051】
乾燥温度が水とアルコールの共沸温度である82℃より低いと、粉末醤油の中に水分を7%程度残すことが可能となり、醤油に含まれているアルコール分と旨味成分を残留させることが可能となるのである。
【0052】
4)本発明は、前記のように霧滴から穏やかな水分の蒸発を目的としているから、乾燥を助けるために、乾燥塔本体の長さは従来の装置と比較すると長くなる。
【0053】
5)乾燥塔本体の内部の壁面に沿う「上昇流」を塔本体の上下の温度差によって自然に発生させ、乾燥の状態に加熱状態を合わせる意味で、乾燥塔本体の温度を上部と中間部と下部、あるいは上下に分割して下部の温度を高温に、上部の温度をそれより低い温度とする。上下の温度差は、好ましくは15℃以上であり、20℃〜30℃程度の温度差でも実施可能である。
【0054】
温度差が小さいと必要とする上昇流を十分に発生しないし、温度差を大きくするために高温を採用すると前記の温度範囲から外れることになるので、指摘した温度範囲内において実現可能な温度差を実際の装置で設定する必要がある。
【0055】
(走査型の電子顕微鏡による観察)
前記仮定を確認ないし観察するために、A)走査型の電子顕微鏡を使用し、B)従来の高温の熱風による急速加熱を適用して乾燥したものと、C)本発明の遠赤外線と低温の温風を併用した加熱による、穏やかな乾燥によって得られたものを比較する。特に、粉末乾燥醤油の外形の観察し、潮解性との関係を確認する。
【0056】
1.従来の粉末乾燥醤油の外観について
従来の高温を適用した高速加熱方法で乾燥した粉末乾燥醤油は次の特徴を有している。
【0057】
図3及び図4(顕微鏡写真を模写した画)は、市販の粉末乾燥醤油d3,d4,d5,d6 の特徴を示す画である。
【0058】
また、図9,10は、走査型電子顕微鏡によって撮影した市販の粉末乾燥醤油に関する反射電子像(BEI)である。更に、図11,12は、二次電子像(SEI)をそれぞれ示している。なお、図9と図11は350倍、図10と図12は750倍の倍率による電子顕微鏡写真である。
【0059】
この顕微鏡写真(図9〜12)より概略の寸法を推定すると、微粉末の1個の直径が大きなもので100〜120μmであり、小さなもので15〜25μm程度で大小種々のもが混在している。
【0060】
これらの顕微鏡写真をモデルにしてその特徴を図3と4に描いているが、図3に示す粉末d3 はジャガイモ形の球体で、全体が薄い殻体で形成され、複数の割れ目を有している。また、図4に示す粉末d4 〜d6 は、大小の複数の球体が結合しあって複雑な構造を持っており、大径の球体には開口や割れ目が存在する。しかも、この割れ目は殻体の内部まで連通している。この傾向は、前記9〜12図についても同様である。
【0061】
これらの図9〜12(写真)より従来技術による粉末醤油について理解できることは次の通りである。
【0062】
a)粉末d3 〜d6 は球体を構成している。全体として大きさが不揃いで、大・小の球状ないしジャガイモ状の微粉末の混合体である。
【0063】
b)大径の粉末粒は、薄い殻体からなる中空の球体の外形を呈している。
c)球体の表面には凹凸があり、ゴツゴツとしており、かつ球体を構成する殻体には多数の穴や割れ目が形成されている。
【0064】
d)大径の球体の内部に中に複数の小径の球体が粒状に含まれている(図9、10)。
e)球体は、個々に分離しているものは少ない。大径の球体の内部に多数の小径の球体が収容され、また、大径の球体の表面に中径ないし小径の球体がコブのように付着し、更にこれに別の球体が付着し、あたかも生姜の塊の外形を呈している(図9〜12)。
【0065】
(本発明の低温乾燥した粉末醤油)
乾燥塔本体の塔頂に設けた二流体ノズルを使用し、塔本体の内部の温度60℃より約10℃高く加熱した原料醤油を70℃の加熱空気と共に乾燥塔本体内に噴霧して乾燥した。
【0066】
この場合、霧滴が乾燥する際に水蒸気が噴出ないし爆発的に噴出することがないような温度条件として、塔本体の内部の温度を60℃に、前記塔本体の内壁面の温度を65℃にそれぞれ保持した。
【0067】
なお、塔本体の内部に多量の遠赤外線を放射し、この放射加熱を主体として加熱して乾燥できるように構成する。具体的には、後述するように塔本体の外表面に二層構造のセラミックス層を溶射して形成し、その上に電熱ヒータを配置し、これを所定温度で加熱するが、本発明の装置は従来の装置に比較すると遙に低温で加熱すればよい。従って、例えば、温度制御方法に改良を加えれば、蒸気やダウザムなどの熱媒体を使用した加熱手段を採用することもできる。
【0068】
本発明の低温加熱を適用して製造した粉末醤油は、次の特徴を持っている。
図1及び図2は、電子顕微鏡写真の内、大径の球体を模写したものをd1,d2 をそれぞれ示している。また、図5と図6に粉末乾燥醤油の二次電子像(SEI)を、図7と図8に反射電子像(BEI)をそれぞれ示しており、図5と図7は350倍、図6と図8は750倍のものをそれぞれ示している。
【0069】
そして写真より推定すると、粉末を構成する球体の大径のものは60〜120μm、小径のものは30〜50μm程度の寸法を持っており、そしてこの球体は外観上下記の特徴を持っている。
【0070】
a)全体として大きく成長したものと、それほど成長しない小さいものとが混在している。大きく成長したものの数はそれほど多くはない(図5、7)。
【0071】
b)大径のものは綺麗な単純な表面を持つ球状のもの(図5、7)と、表面に「亀甲形ないしサッカーボール型」の突起ないし模様を有するもの(図8)あるいはこれに近いもの(図6)がある。
【0072】
c)大径のものも小径のものも殆んどが「独立した球状の殻体」を形成している。そして表面に割れ目や開口など、球体の内部と通ずる通路がない。この点は図3、4及び写真の図7〜図10と比較して見ると理解できる。
【0073】
本発明の粉末乾燥醤油とその製造方法などは、前記実験結果や顕微鏡写真の観察に基づく知見と分析によって得られたものである。そして本発明の目的とするところは、潮解性の少ない、粉末乾燥醤油を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0074】
(粉末乾燥醤油の請求)
1)大径球体と小径球体の混合体であって、前記混合体のうち少なくとも大径球体は薄い殻体で形成された中空体であり、その表面は実質的に開口がなく比較的滑らかな表面に形成されていることを特徴としている。
【0075】
2)前記大径球体の内、あるものはその表面に亀甲模様あまんはサッカーボール形の襞が形成され、更に表面に実質的に開口を有しないことを特徴としている。
【0076】
3)前記大径球体は、その内部に多数の小球体を含んでいることを特徴としている。
【0077】
4)大径球体と小径球体の混合体の表面に、少なくとも人に無害な撥水性の膜が形成されていることを特徴としている。
【0078】
食用撥水剤は、植物性の蛋白質からなる可食性の被覆材、ロジン、サンダラック、コーパル、アラビアガム、ツエイン、大豆タンパク、カゼインなどである。
【0079】
5)粉末乾燥醤油として賦形するための賦形剤を、原料醤油に実質的に添加しなくても製造を可能にしたことを特徴としている。
【0080】
賦形剤は、従来から使用されているものを意味するが、場合によってはこれの添加が必要となるが、その場合でも添加量を従来品に比較して可能な限り少量として潮解性の発生を抑制することができる。
【0081】
(製造方法の請求)
6)水の沸騰温度より低温に加熱されている乾燥塔本体内に、塔本体の内部の温度より高い温度に調節した原料醤油を噴霧し、この噴霧が他の噴霧と接触・融合・合体をくりかえして球状の殻体として成長しながら醤油に含まれていた水分を蒸発させて乾燥することによって醤油の固形成分で形成される殻体を形成する方法において、前記醤油より蒸発する水分が、殻体を破壊して噴出しない温度条件で、前記乾燥塔本体内の温度制御を行うことを特徴としている。
【0082】
塔本体の内部の温度より低温の原料醤油を供給すると、温度差が大きいことから受熱量が大きいことが原因して塔本体の上部の温度が不安定となる上に噴霧の水分を安定して蒸発させる難い。
【0083】
7)乾燥塔本体の内部の温度を、塔頂側を低温に、塔下部側を高温に保持し、かつその温度範囲を40℃〜82℃に制御することを特徴としている。
【0084】
40℃以下の温度は実質的に噴霧乾燥を効率的に行うことができない。また、82℃以上では醤油の組成に含まれているアルコール分を蒸発させ、旨味を低下させる。
【0085】
8)乾燥塔本体の内部の温度を長手方向に複数に分割し、上部の温度を低温、下部の温度を前記上部の温度を高温に保持し、前記低温と高温との温度差を約10〜30℃の範囲で塔本体の内壁面の温度に差を付け、この温度差を利用して内壁面に沿って上昇流を発生させるようにしたことを特徴としている。
【0086】
塔本体の下部を高温とし、上部を低温に保持することによって塔本体の内壁面に沿って上昇流を発生させ、その上昇流に伴なって中央部に下降流を発生させ、これによって醤油の噴霧の霧滴を効果滴に浮遊させることができる。
【0087】
(製造装置の請求)
9)円筒状の乾燥塔本体と、この乾燥塔本体の上部に設けられた原料醤油の噴霧手段と、この噴霧手段に連結された原料である醤油の温度制御機能付き供給装置と、前記乾燥塔本体の下部と配管で接続され、乾燥された粉末醤油を分離するためのサイクロンと、前記サイクロン中を減圧状態に保持する気体排出装置を有し、前記乾燥塔本体の外面に電熱ヒータなどの加熱手段を設けると共に、前記塔本体の必要な箇所の温度を測定する温度センサを設け、前記加熱手段を前記乾燥塔本体の温度によって発熱状態を制御する制御装置を設けたことを特徴としている。
【0088】
10)前記乾燥塔本体の内壁面に液滴の付着を防止するシリコン加工、フッ素樹脂加工なとの撥水加工を施したことを特徴としている。
【0089】
11)前記乾燥塔本体の外面に、酸化アルミが主体の溶射層と、この溶射層の上に更に酸化チタンが主体の溶射層を設けた二層構造のセラミックス層を形成し、前記酸化チタン層の外面に電熱ヒータなどの加熱手段を配置したことを特徴としている。
【0090】
前記二層構造のセラミックス層は、遠赤外線を発生させる熱エネルギーを高温側から低温側へと効率的に移送する。
【0091】
12)前記乾燥塔本体の外面に形成した二層構造のセラミックス層の上に電気絶縁層を介して設けた電熱ヒータを少なくとも3つに区分して形成し、各電熱ヒータをそれぞれ独立して温度制御できるように構成したことを特徴としている。
【0092】
3つ以上に電熱ヒータを区分してそれぞれ温度制御することによって塔本体の内部の温度を正確に制御することができる。
【0093】
13)前記サイクロン装置の本体中に、食用に適した撥水剤供給する装置を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0094】
1.粉末乾燥醤油の外形の特徴:本発明で得られた粉末乾燥醤油は、表面に大きな凹凸特に割れ目のない、綺麗な中空の球体を形成している。
【0095】
従って、表面積を最小に保持し、また、球体を構成する殻体には開口や割れ目が実質的に存在していない。そして球体の外部と内部を連通する通路が実質的に形成いない。
【0096】
また、表面に大きなクレーターのような凹凸がなく、しかも表面積が最小に保持されていることから、潮解性の原因である成分が空気と接触が少なく、あるいは露出しないように保護されている。
【0097】
2.潮解性の改善:特に、従来の粉末乾燥醤油を製造するためには、噴霧乾燥の工程において顆粒状の粉体を形成するための賦形剤として大量必要とした。
【0098】
例えば、従来法においては、乾燥微粉末の約60%程度のデキストリンが必要であり、この材料なくして顆粒状の粉末乾燥醤油を製造することは困難であった。しかし、このデキストリンは甘味成分であり、醤油本来の味を変質させるものであり、なるべくこれの含有量を低下させることか望まれていたが、この含有量を低下させると所定の大きさの粉末を形成することが困難となる。
【0099】
一方、このデキストリンは、潮解成分の最大の原因となる物質であり、これが含有されていると保存性が低下して実質的に長期保存に耐える粉末乾燥醤油を製造することは困難であった。
【0100】
しかし、本発明においては、このような粉末醤油として必要とする基礎的な素材である賦形剤を実質的に使用しないか、あるいは使用したとしても、少量のもので顆粒状に賦形できるという利点がある。
【0101】
3.保存性の改善:本発明によって得られた粉末乾燥醤油は吸湿性が減少するように改善されている。従って、例えば容器に入れ、蓋を度々開けて少量つづ使用しても最後まで固化や凝集することなく使用することができる。
【0102】
4.潮解性は、前記デキスドリンは勿論、グリコース、アラピノースなどの甘味成分、アスパラギン酸、グルタミン酸などの旨味成分があるが、このような成分を如何に表面に露出しないように顆粒の中に包み込むことが重要である。
【0103】
従来の粉末乾燥醤油は、添付された顕微鏡写真にみるように、表面が破壊されており、その結果、空気との接触面積を拡大し、更に大量の賦形剤を必要としており、潮解性の低下を避けることができなかった。
【0104】
しかし、本発明の粉末乾燥醤油はこの潮解性が発生する条件の多くを解決しており、長期にわたる保存性に耐えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
次に図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図13は、本発明の粉末乾燥醤油とこれを製造するために使用した装置を示している。
【0106】
乾燥塔1の内部から放射される遠赤外線を利用して、噴霧に間接的な熱エネルギーの付与によって乾燥することを主体としている。もっとも、被処理原料である醤油を噴霧するために使用する低温の温風と塔本体の内面からの輻射熱の放射によっても熱エネルギーが与えられることは勿論である。
【0107】
乾燥塔本体1の上部に、原料醤油rを噴霧状で供給するスプレーノズル2(二流体噴霧ノズル)が設けられ、このノズル2にタンク4内の醤油rをポンプ3で加圧し、更に加熱器5aを介在させた配管5を経由して所定量づづ供給して塔本体1内に微細な噴霧m(微細な霧滴)を形成するようになっている。前記加熱器5aを介在させた意味は、低温の醤油をそのまま噴霧した場合、粉末醤油の形成が円滑にできず、場合によっては爆発的な蒸発を発生する危険性があるからである。
【0108】
この乾燥塔本体1は、この実施例においては低温乾燥を適用する関係もあって、比較的長尺で竪型の円筒状に形成されており、例えば、直径が500mm、高さが5mの円筒形の装置を使用している。そのために霧滴が塔本体1内を降下するための時間を長して低温加熱によっても十分に粉体を形成することができるように構成している。
【0109】
乾燥塔塔本体はアルミ製で、(場合によってはステンレス鋼や鉄板を使用することも可能である。)その外表面に直接に酸化アルミのセラミックス層を溶射し、そしてこのセラミックス層の上に酸化チタンからなるセラミックス層が溶射して二重構造のセラミックス層を形成する。また、内面に撥水性樹脂してシリコン(フッ素樹脂でも良い)樹脂膜をコーテイングして醤油の霧滴が付着せず、粉末乾燥醤油を効率的に形成できるようにしている。
【0110】
そして前記セラミックス層の上に電気絶縁層を介して電熱ヒータ17を図14の如く複数段(17a、17b、17c)に分割して設け、塔本体1の長さ方向の温度を自在に調整できるように構成している。
【0111】
また、塔本体1の内部の少なくとも上部と中間部と下部に、塔本体1の内部の温度と温度分布を測定するための温度センサS1,S2 を複数本設けており、乾燥塔本体1内の全体的、総合的に温度制御するようになっている。
【0112】
乾燥塔本体1の下部にはパイプないしダクト6が接続され、これはサイクロン7の供給管に接続され、排出管6aは強力な排気を行うブロア8に接続され、このブロア8よりの排気は排気処理装置9で乾燥工程で発生した水蒸気を冷却水の噴霧によって液化してドレンDとしたり、排気中に含まれている固形分を分離除去する機能を有している。
【0113】
前記サイクロン7で分離された粉末乾燥醤油dは、バルブを介して接続されているタンク7a内に収容されるようになっている。
【0114】
図14(A)に電熱ヒータ17を、この例においては三区分、17a、17b、17cに分割し、それぞれ別の温度に制御できるようになっている。例えば、噴霧ノズルがある部分の温度T1が60℃となるように電熱ヒータ17aの温度を制御し、中間部の温度T2 が65℃となるように電熱ヒータ17bの温度を制御し、更に下部の温度T3 が75℃となるように電熱ヒータ17cの温度を制御する。
【0115】
なお、乾燥塔本体1の内部の温度を正確に測定することは気流や輻射熱などの関係で困難であるので、電熱ヒータ部分の温度を正確に測定して塔内部の温度を予測して制御する方法も採用することができる。
【0116】
前記のようにT1,T2,T3 の温度(つまり、電熱ヒータ側の温度)を調節することによって下部の温度T3 を82℃以下(アルコールと水との混合体の共沸温度以下)の範囲とし、上部の温度T1 を40℃以上とし、更に中央部の温度T2 を前記温度の中間となるように制御し、しかも、上部と下部の温度差を10〜30℃の範囲となるように制御する。
【0117】
即ち、塔本体1内への醤油の噴霧に対して穏やかに加熱することでヒートショックを防止し、中間部から下部に至るにしたがって温度を高め、その間に塔本体1の側壁より多量の遠赤外線を照射して水蒸気爆発的な乾燥を防ぎながら造粒を助長する。
【0118】
この造粒の過程において前記のように上部の下部の塔本体の内部の雰囲気の温度差を形成することによって塔本体1の内部の壁面に沿って上昇流uを、中央部に下降流dnを発生することができ、それによって霧滴が塔本体1の内部を浮遊する時間を調節することが可能である。
【0119】
図14(B)は、塔本体1の内部の霧滴の攪乱状態を示しており、(A)図のような気流によって効率的に攪乱状態を発生し、電子顕微鏡写真で示したような綺麗な外観を持つ粉末乾燥醤油を製造することができる。
【0120】
原料醤油の組成としては、市販のものをそのまま使用することができるが、場合によっては醤油を完成する前の処理工程で発生した「澱」(熟成もろみを絞って生醤油を製造し、これを火入れ処理した後、澱引き工程で発生した澱)でも簡単に乾燥して味の良い粉末調味料を製造することができる。
【0121】
本発明の実施例で使用した原料醤油は、前記例示した組成を持つ「こいくち醤油」を使用して乾燥処理したものであり、その粉末の形態は図1、2、5、6及び7、8にそれぞれ示したものと同様である。
【0122】
潮解性のデータに関しては、現在は数値的なものはないが、少なくとも250ccの容器に入れて蓋を数10回も開閉して数年経過しても、潮解性の兆しすらなく、乾燥状態に保持されている。極端な場合、10日間容器を開放状態で保持しても殆ど潮解性が認められない。
【0123】
本発明に係る粉末乾燥醤油は、本来の醤油と同様な味を出すことができることから、調味料として美味しく料理の味付けに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真のスケッチである。
【図2】本発明によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真のスケッチである。
【図3】従来法によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真のスケッチである。
【図4】従来法によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真のスケッチである。
【図5】本発明によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真である。
【図6】本発明によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真である。
【図7】本発明によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真である。
【図8】本発明によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真である。
【図9】従来法によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真である。
【図10】従来法によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真である。
【図11】従来法によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真である。
【図12】従来法によって得られた粉末醤油の顕微鏡写真である。
【図13】本発明を実施するための装置の一例を示す図である。
【図14】(A)は図13に示す乾燥塔における気流の流れの説明図である。
【0125】
(B)は図13に示す乾燥塔における混合流の発生状態の説明図である。
【符号の説明】
【0126】
r 原料醤油
d1,d2 本発明の粉末乾燥醤油外観
d3 〜d6 従来法による粉末乾燥醤油の外観
1 乾燥塔本体 2 噴霧ノズル 3 ポンプ 4 原料タンク
5 配管 5a 加熱器 6 ダクト 7 サイクロン
8 ブロア 9 排気処理装置 17 電熱ヒータ
【出願人】 【識別番号】000114064
【氏名又は名称】ミサト株式会社
【出願日】 平成18年8月22日(2006.8.22)
【代理人】 【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一

【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照

【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦


【公開番号】 特開2008−48618(P2008−48618A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−225343(P2006−225343)