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【発明の名称】 寒天食品
【発明者】 【氏名】水本 憲司

【氏名】外山 義雄

【要約】 【課題】強制攪拌することなく、寒天ゾルに寒天ゲルが分散する、さっぱりとした喉越し感のある適度なトロミを有する新たな食感の離水をしない飲用の寒天食品を製造する。

【構成】0.1質量%以上ゲル化濃度以下の低強度寒天(寒天分子が短く切断されてゲル強度が250g/cmに調整された寒天)と、pHを3.0〜6.0に調整するための有機酸及び/又は無機酸と、塩化カリウムや乳酸カルシウム、塩化マグネシウムなどのカリウム及び/又は二価のカチオンを遊離する水溶性の塩を水に加熱溶解して、加熱時にPETボトルなどの容器へ充填、冷却する。また、ゲル化濃度以上の寒天濃度に調整することにより、離水のないゲル状の寒天食品を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤として寒天成分の分子が短く切断された低強度寒天のみを含有するpH3.0〜6.0のゲル状乃至ゾル状の寒天食品であって、カリウムイオン及び/又は二価のカチオンの添加によって離水が防止されたことを特徴とする寒天食品。
【請求項2】
前記食品中におけるカリウムイオン及び/又は二価のカチオンと低強度寒天の質量比が0.17〜5.0であることを特徴とする請求項1に記載の寒天食品。
【請求項3】
前記二価カチオンが溶解性カルシウム塩由来であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の寒天食品。
【請求項4】
乳清タンパクが5質量%以下で添加されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の寒天食品
【請求項5】
前記低強度寒天が0.1質量%以上ゲル化濃度以下の濃度であって、寒天の凝固点よりも高い温度で容器に充填されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の寒天食品。
【請求項6】
前記低強度寒天が0.1質量%以上ゲル化濃度以下の濃度であって、寒天ゾルに寒天ゲルが分散して存在する流動性を有する液状食品であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の寒天食品。
【請求項7】
ゲル化剤として寒天成分の分子が短く切断された低強度寒天のみを含有するpH3.0〜6.0にあるゲル状乃至ゾル状の寒天食品の調整方法であって、カリウムイオン及び/又は二価のカチオンを添加することを特徴とする寒天食品の離水防止法。
【請求項8】
カリウムイオン及び/又は二価のカチオンと低強度寒天の質量比が0.17〜5.0の範囲となるように、カリウムイオン及び/又は二価のカチオンを添加することを特徴とする請求項7に記載の寒天食品の離水防止法。
【請求項9】
前記二価カチオンが溶解性カルシウム塩由来であることを特徴とする請求項7又は8のいずれかに記載の寒天食品の離水防止法。
【請求項10】
乳清タンパクを5質量%以下で添加することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の寒天食品。
【請求項11】
前記低強度寒天濃度が0.1質量%以上ゲル化濃度以下の濃度に調整されたことを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の寒天食品の離水防止法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、喉越し感のよいトロミを有する飲用の寒天食品に関する。
【背景技術】
【0002】
寒天はゲル化剤として、あるいは増粘剤として各種食品に汎用されている。例えば、特開2002−291453号公報には、寒天をゲル化して容器に充填したpH4.6〜9のゼリー飲料が開示されている。このゼリー飲料は、容器を振とうしてゼリーを破壊し、容器から直接、飲用可能にしたものである。
【0003】
国際公開公報WO99/34690号公報やWO2004/10796号公報、WO2004/28279号公報には、各種栄養素がバランスよく配合され、清涼感のある低pHを有するゲル状もしくはゼリー状の食品が開示されている。このものは適度なゲル強度を有しており、嚥下障害者に適したものとなっている。これらの寒天を利用した食品は、寒天がゼリー化するような濃度以上の寒天量を用いてゼリー(ゲル)としての食感を付与したものである。
【0004】
また、特開平06−38691号公報には、寒天原料を酸処理等することによって寒天成分の分子を短く切断して得られる従来の寒天よりもゼリー強度の弱い、いわゆる低強度寒天を用いた種々の食品が開示されている。低強度寒天は増粘剤としてチクソトロピーに作用する性質があり、独特の保形性を有しているとされている。そこで、当該公報において、この低強度寒天を種々の食品に添加することによって、その味覚やテクスチャーを改善し、従来の寒天と同様な使用量でゼリー強度の弱い寒天食品を数々提供している。
【0005】
このように寒天を用いた食品について種々の改良が施されている中で、近年、トロリとした食感が好まれるようになり、寒天によりトロミを付した各種飲料が提供されている。例えば、国際公開公報WO00/69285号公報には、寒天を高温で液体に溶解した後、強制攪拌下に寒天の凝固点温度を通過させた寒天飲料が記載されている。この寒天飲料は、寒天ゲルに剪断力が加えられた結果、ゲルが微細な粒子となってゾルに近い流動性が備わったものであって、喉越し感に優れたものとなっている。この寒天飲料は、かなり高い流動性を帯びたゲルであって、流動性の側面からはゾルに近いものと考えられる。
【0006】
特開平06−269263号公報には、不溶性カルシウムなど、各種の不溶性成分を含んだ飲料に低強度寒天が配合された寒天飲料が開示されている。この飲料では、低強度寒天を安定剤として配合し、寒天がゾルからゲルに相転移する過程で不溶性成分がゲルの中に取り込まれる結果、不溶性成分の沈降が防止され、それと共に寒天の離水性により糊状感のない、すっきりした喉越し感が付与されている。
【0007】
特開2006−180792号公報には、液体に添加された際に寒天分子がゲル化能以下の流動体として存在するように調整された飲料の呈味改良剤が含まれた飲料水が開示されている。この呈味改良剤は、普通寒天の水溶液においてゲル化しない状態、具体的には、0.3重量%以下となるようにして寒天を、乳飲料や加工乳、清涼飲料等に加え、甘味や塩味、カルシウムのざらつきを低減するようにしたものである。このように、これまでに、すっきりとした喉越し感のある寒天飲料が種々、上市されている。
【0008】
ところが、寒天を利用した食品は非常に離水を起こしやすいことは周知の事実である。使用する寒天濃度やゲル強度が弱くなればなるほど離水しやすくなり、特にゲル化しないような濃度の範囲や低強度寒天を使用した場合では離水が顕著である。前述の特開平06−269263号公報の寒天飲料では、この離水性を利用して、すっきりした喉越し感を付与している。また、WO00/69285号公報に開示されたようにゲル化の途中で剪断力を与えたのでは、寒天分子が切断されてしまい、いっそう離水を生じやすい状況にある。
【0009】
寒天飲料の場合、よく振り混ぜれば均一な相になるので飲用上、離水が問題となることは少ないが、PETボトルなど透明な容器に充填した場合、上部に透明な水層があれば商品価値が下がり、消費者から敬遠されることになる。このため、アルミ缶やパウチ容器のような不透明な容器に充填することも考えられるが、飲料の清涼感を付与するには透明な容器を用いるのが好ましい。
【0010】
離水を抑制するために、これまではイオタカラギナンやグアガム、ペクチン、ネイティブジェランガムなどの増粘剤を併用するのが一般的であった(例えば、特開平10−150933号公報等)。
【0011】
【特許文献1】特開2002−291453号公報
【特許文献2】国際公開公報WO99/34690号公報
【特許文献3】国際公開公報WO2004/10796号公報
【特許文献4】国際公開公報WO2004/28279号公報
【特許文献5】特開平06−38691号公報
【特許文献6】国際公開公報WO00/69285号公報
【特許文献7】特開平06−269263号公報
【特許文献8】特開2006−180792号公報
【特許文献9】特開平10−150933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、カラギナンやネイティブジェランガムは、それ特有の粘性を発揮するため、これらを併用すると寒天特有のさっぱり感や喉越し感が失われる結果となる。従って、こうした増粘剤を用いることなく、離水を抑えることが望まれる。
【0013】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、さっぱりとした喉越し感のある適度なトロミを有し、しかも離水を生じない寒天飲料を提供することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意努力したところ、これまで低強度寒天はカルシウムイオンなどのカチオンの影響を受けないものとされていたが(特許文献5参照)、酸性下のpH領域において、カルシウムイオンなどのカチオンの影響を受けて離水が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、さっぱりとした喉越し感がある離水の抑えられた寒天食品が提供される。特にPETボトルなどの透明な容器に充填しても透明な離水層を生じないので、消費者の不安感を招くことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の寒天食品は、ゲル化剤として寒天成分の分子が短く切断された低強度寒天のみをゲル化能以下の濃度で含有したpH3.0〜pH6.0のゲル状乃至ゾル状の形態を有し、カリウム若しくは二価のカチオンの添加によって離水が抑制された食品である。すなわち、本発明の食品は、低強度寒天を唯一のゲル化剤としてゲル状乃至ゾル状の食品に調整されたものであって、カラギナンやゼラチンのような他のゲル化剤あるいはジェランガムやキサンタムガムなどの増粘剤との併用によって、ゾル状又はゲル状に調整された食品や、マヨネーズ、ジャムのように食品そのものがゾル状乃至ゲル状である食品は除かれる。
【0017】
本発明において用いられる低強度寒天は、1.5質量%(以下、本発明において「%」は「質量%」を意味する。)の寒天濃度においてゼリー強度が250g/cm以下の範囲となるように、予め寒天成分の分子が短く切断されたものを言い、その製造方法は限定されるものではない。このような低強度寒天は、例えば、特開平06−83870号公報に記載された方法で製造され、低強度寒天と称されて市販されている販売名「ウルトラ寒天」(伊那食品工業(株)製)UX−30、AX−30〜200、BX−30〜200が例示される。
【0018】
低強度寒天以外の寒天分子が長い状態の通常の寒天はゲル強度が強く、0.1%程度の濃度でも加熱溶解した後に冷却すればゲルに、それよりも低い濃度では、粘性を帯びた不透明な均一のゾルになり、それよりもさらに低い濃度では、ほぼ透明な粘性のほとんどない液体となる。低強度寒天の場合も、それと同様な挙動を示すが、0.6〜0.7%程度以上の濃度になるとゲル状の食品となり、それよりも低い濃度では、わずかに粘性を帯びた不透明乃至透明な均一のゾルとなり、0.05%程度の濃度では、透明な粘性のほとんどない液体となる。
【0019】
ところが、本発明者らは、寒天濃度だけでなく、液のpHを種々変化させてみたところ、pH6.0以下になれば、その挙動がわずかに変化し、均一なゾルが得られるのではなく、均一なゾルの中に寒天のゲル粒子が分散するようになり、全体として粘り気のない、さっぱりとした流体(ゾルとゲルの混合流体)が得られるようになった。この流体は、後述するように加熱溶解した寒天溶液を凝固点(固化点)よりも高い温度で容器に充填して冷却して得られるものであり、前記特許文献1や特許文献6に記載されたような寒天ゲルに力(剪断力)を加えて流動性を付与したものとは異なり、粘性が低くてほとんど液体に近く、不透明な均一なゾルの中に透明感のあるゲル粒子が分散した状態のものであって、さっぱりとして喉越し感がすっきりとした飲料として適切であることが分かった。
【0020】
このものは低強度寒天を使っているので離水を生じやすいことが予想されたところ、寒天濃度が0.6%よりも濃い寒天水溶液を冷却して得られたゲルにおいてはもちろんのこと、濃度0.6%以下の上記流体でも離水が観察された。そこで本発明者らは、酸性下にある種々の濃度の寒天溶液に水溶性のカルシウム塩を加えたところ、寒天濃度と水溶性カルシウム塩の添加量が離水の抑制に影響することを見出した。また、寒天濃度が0.6%よりも濃い水溶液を冷却して得られたゲルにおいても同様に離水を抑制できることを見出した。
【0021】
すなわち、本発明は、低強度寒天、すなわち寒天成分の分子が短く切断されてゼリー強度が1.5質量%で250g/cm以下、好ましくは20g/cm〜250g/cm、より好ましくは20g/cm〜100g/cm、さらに望ましくは20g/cm〜50g/cmに調整された寒天のみをゲル化剤として用い、有機酸や無機酸によりpH3.0〜6.0に調整されたゲル状の寒天食品あるいは上記ゾルとゲルの混合流体においてカリウムイオンや二価のカチオンを添加することにより離水を抑えたことを特徴とするものである。
【0022】
本発明において、ゲル状の寒天食品とは、上記低強度寒天をゲル化濃度以上で水に加熱溶解(必要に応じて攪拌して溶解する。)して、剪断力を加えることなく、凝固点(固化点)以下に冷却して得られるゲル状のものであって、一定の形体を有し、自重では流動性を有しないものを言う。ここで、ゲル化濃度とは、加熱溶解した寒天の水溶液を凝固点以下に冷却した場合に、ゲルとするのに必要な寒天濃度を言う。ゾルとゲルの混合流体とは、上記低強度寒天をゲル化濃度よりも低い濃度で水に加熱溶解して、剪断力を加えることなく、固化点以下に冷却して得られるゾル状のほぼ粘性のない液体であって、流体中に寒天のゲル体(ゲル状物)が均一若しくは不均一に分散しているものを言う。また、本発明の流体には適度なトロミを付与する必要があるので、加熱溶解して固化点以下に冷却した際に、半透明な分散系であることが目視で分かる程度の寒天濃度が必要である。すなわち、透明な液体では十分なトロミがなく、このために少なくとも0.05%以上の寒天濃度を必要とし、0.1%以上の寒天濃度が好適である。
【0023】
具体的な使用量は、用いる低強度寒天のゲル強度によっても異なる。低強度寒天には、上市されているものとして、伊那食品(株)から製品名AX−30〜200、BX−30〜200、UX30が例示されるが、UX30の場合には、ゾルとゲルの混合流体では0.1〜0.6%の寒天濃度が、ゲル状では少なくとも0.6%を越える寒天濃度、好ましくは0.7%の寒天濃度が必要である。また、AX−30〜200、BX−30〜200の場合には、ゲル強度がわずかに高いので、ゾルとゲルの混合流体では0.1〜0.5%の寒天濃度が、ゲル状では少なくとも0.5%を越える寒天濃度が好ましい範囲である。もっとも、カリウムイオンや二価のカチオンを添加すると、寒天単独の場合に比べてゲル化濃度は低くなる傾向にある。
【0024】
本発明ではpHが酸性領域、具体的にはpH3.0〜6.0、好ましくはpH3.5〜5.0の範囲に調整されることが必要である。pHが3.0よりも低い場合には、カリウムイオンや二価のカチオンを加えても離水を十分に抑えることができず、また、カリウムイオンや二価のカチオンの必要量が多くなるので、苦み(えぐみ)が強くなり、食品として好ましくない。また、pH6.0よりも高い場合には、カリウムイオンや二価のカチオンを添加する効果は少なくなる。また、酸味が弱くなるので、さっぱりとした味覚の食品が得られない。
【0025】
pH調整剤には、無機酸、有機酸のいずれをも用いることができる。無機酸として塩酸、リン酸などが、有機酸としてクエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸などが例示される。有機酸であるクエン酸が味覚上、好適であるが、もっとも、これらに限定されるものでなく、加える矯味剤等を考慮して適宜選択できる。
【0026】
pH調整剤の添加量も上記pHとなるように適宜調整すればよいが、その目安は0.01〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%であり、必要があれば酸やアルカリを加えて上記pHの範囲に調整しても差し支えない。例えば、乳酸カルシウムを用いた場合には、中性(アルカリ性側)に傾くので、リン酸やクエン酸、塩酸等によってpHを調整する。
【0027】
本発明において用いられるカリウムイオンや二価のカチオンは、1種若しくは2種以上の水溶性の塩として添加される。二価カチオンとしてはカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどが例示される。使用可能な塩として、その具体例を挙げると、塩化カリウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸アルミニウムが例示され、この中でも、乳酸カルシウム、塩化マグネシウムが好ましく用いられる。また、離水の抑制に寄与しているのは溶解しているイオンであると考えられるが、クエン酸カルシウムのような不溶性の塩を用いても差し支えない。これらの不溶性の塩であっても、その一部が溶解するからである。例えば、クエン酸カルシウムの場合には、その溶解度は約0.09g/水(25℃)100gである。このように不溶性の塩に分類されるものであっても、カチオンの溶出(塩の溶解)が期待される塩を用いても離水が抑えられる。ただし、これらの不溶性カルシウム塩を用いた場合には、ゲルや流体中に不溶物を生じる場合があるので、不溶物を生じない範囲で用いるのが好ましい。
【0028】
これらの使用量は用いる塩によっても異なるが、概ね組成物中にカルシウム濃度として0.01〜0.5質量%である。また、寒天の量に対して塩(カリウムイオンや二価のカチオン)の量が少ないと、二価カチオン等による離水の抑制が十分でなく、寒天の量に対して塩の量が多くなっても期待する離水効果を得られず、むしろ塩による苦み等が感じられるようになったり、沈澱物を生じたりする。このような観点から、溶解性の塩の使用量は、寒天1gに対してカルシウムとして0.17g〜5.0g、より好ましくは0.2〜5.0g、さらに好ましくは0.3〜3.5gである。また、カリウムやマグネシウムについても、カルシウムと同様の範囲の量で足りる。
【0029】
本発明の寒天食品は、上記低強度寒天及びカリウムイオン及び/又は二価のカチオン並びに有機酸及び/又は無機酸を必須の構成要素とするが、これ以外にビタミンAやE、ビタミンB群などの各種ビタミン類及びそれらの誘導体、食物繊維やポリフェノール、核酸、動植物抽出エキス、酸性下で沈澱を生じないタンパク、例えば乳清タンパク等の各種機能性食材等を配合できる。
【0030】
本発明において用いられる乳清タンパクは、チーズホエイ(乳からナチュラルチーズを製造する時に副産物として得られる)、酸ホエイ(タンパク質が等電点の付近沈殿する現象を利用し、乳に酸を加えてカゼインを製造する時に上清として得られる)などに含まれている。そして、乳清タンパクの供給源(素材)として具体的には、乳清(ホエイ)、ホエイパウダー、ホエイを限外濾過膜などで処理して得られるホエイタンパク濃縮物(WPC)、ホエイをイオン交換樹脂などで処理して得られるホエイタンパク分離物(WPI)などが例示される。なお、これらの乳清タンパクには水溶性のカルシウムが含まれるので、これらのカルシウムも離水の抑制に寄与するものと考えられる。
【0031】
乳清タンパクは栄養価が高いので、その添加量は多いのが好ましい。しかし、乳清タンパクは他のナトリウムやカリウム等の塩類の共存下で加熱されると、ゲルを形成する場合があり、水がゲル中に取り込まれる結果、離水しなくなる。従って、ゲルを目的として調整する場合には、乳清タンパクの添加量を問題とする必要はないが、流体を目的として調整する場合には、ゲルを形成しない範囲、概ね5%程度に留めるのが好ましい。また、乳清タンパクの添加により離水が抑制されなければ、必要に応じて前記カルシウムの塩が添加される。
【0032】
本発明の寒天食品は常法により製造される。すなわち、必要な成分を80℃程度で加熱溶解した水溶液を寒天の凝固点(約40℃前後とされる)よりも高い温度でPETボトルなどの容器に充填し、冷却することによって製造される。約0.6%前後のゲル化濃度よりも低い寒天濃度の水溶液を冷却したものは、不透明ないし半透明の粘度のほとんどない流体であって、流体の中にゲル化した寒天が存在し、すっきりとした喉越し感のあるトロミ状の液体である。また、この液体の寒天食品は離水を生じない。
【実施例1】
【0033】
本発明について、以下の実施例に基づき、さらに詳細に説明する。
所望するpHとなるように酸及び塩を水に投入し、50℃前後に加温して溶解し、攪拌しながら所定量の寒天を少量ずつ加えた。攪拌しながら、さらに加温し、90〜94℃で5分間保持した。乳酸カルシウムを用いた場合には、中性(アルカリ性側)に傾くので、必要に応じて0.1N塩酸又は0.1N水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。この混合液150mlをプラスチック製の容器(200ml容のPETボトル)に充填し、水道水で冷却した後、室温に静置保存した。10日経過後に目視にて離水の程度及び沈澱の有無を調べた。離水は分離した水の高さで、ゾルとゲルの混合流体の形成やゲル形成の有無は容器を傾け目視において評価した。その評価基準は下記のとおりである。また、喉越し感については官能試験によった。不溶性の沈澱物が目視観察された場合には、不溶物を(+)とした。なお、以下の表においてCa/寒天比は、寒天濃度(1%)に対するCa量(質量%)を示している。表1〜表10にそれらの評価結果を示す。
【0034】
(離水の評価基準)
− :水の高さが1mm以下
+ :水の高さが1mmより高く5mm以下
++ :水の高さが5mmより高く10mm以下
+++ :水の高さが10mmより高い
【0035】
(相の評価基準)
− :トロミ状の流動性も認められず、透明に近い液体であった
± :均一な粘度の高いゾルであったが、寒天ゲルは認められなかった
+ :トロミ状の流動性及び寒天ゲルの形成がゾル中に認められた
++ :完全なゲルの形成を認めた
【0036】
【表1】


【0037】
【表2】


【0038】
【表3】


【0039】
【表4】


【0040】
【表5】


【0041】
【表6】


【0042】
【表7】


【0043】
【表8】


【0044】
【表9】


【0045】
【表10】


【0046】
上記の試験結果から、低強度寒天を用いた場合、pH3.0〜6.0の範囲においては、ゲル化濃度(約0.6%程度)よりも低いと、寒天ゾルの中にゲルが混在したゾルとゲルの混合流体が得られた。そして、0.05%程度の濃度では、ほぼ透明な液体となり、0.7%では、完全なゲルであった。また、0.05%程度の低い濃度にある寒天ゾルを除いては、溶解性のカルシウム塩を加えることにより、離水を抑えることができた。もっとも、0.05%では、水溶液の状態であり、離水は観察されなかった。
【0047】
〔カルシウム濃度が混合流体の形成に与える影響〕
次に、寒天濃度を0.3%、DL−クエン酸濃度を0.32%とした場合において、溶解性カルシウム塩(乳酸カルシウム)の濃度を変えて同様の実験を行った。その結果を表11に示す。
【0048】
【表11】


【0049】
表11に示すように、寒天1%の濃度に対して0.17%以上のカルシウム濃度で離水を抑えることができたが、5.0%以上のカルシウム濃度になるとカルシウム濃度の苦みや不溶物を生じ、製品としては好ましいものではなかった。また、低pHでは酸味が強く、飲料としては好ましいものではなかった。
【0050】
〔ミネラルの種類が混合流体の形成に与える影響〕
次に、寒天濃度を0.3%、DL−リンゴ酸濃度を0.32%とした場合において、溶解性塩の種類を変えて同様の実験を行った。塩濃度はそれぞれカチオン濃度で0.1%とし、複数の塩を加えた場合についても検討を行った。その結果を表12に示す。なお、Ca/寒天比は、塩の合計(ナトリウムを併用した場合にはナトリウムを除く。)で算出した。
【0051】
【表12】


【0052】
表12に示されたように、溶解性の塩では、いずれの塩でも良好なゾルとゲルの混合流体を得ることができた。また、クエン酸カルシウムやリン酸カルシウムでは、飽和濃度以上の量を用いているために不溶物を生じたが、クエン酸カルシウムでは、ある程度の溶解度があるために離水が抑えられたものと思われる。また、塩化ナトリウムは、離水を抑制する効果を全く示さなかったが、カルシウムやマグネシウムを併用した場合には、ナトリウムに影響を受けることなく、良好に離水が抑えられた。
【0053】
〔酸の種類が混合流体の形成に与える影響〕
寒天濃度を0.3%、カルシウム濃度を0.1%として、添加する酸の種類を変えて同様な実験を行った。その結果を表13に示す。酸の種類による影響はなく、pHが重要な因子であると言える。
【0054】
【表13】


【0055】
〔乳清タンパクが混合流体の形成に与える影響〕
寒天濃度を0.3%、DL−リンゴ酸を0.32%として添加する乳酸カルシウム及び乳清タンパクの添加量を変えて同様な実験を行った。その結果を表14に示す。
【0056】
【表14】


【0057】
乳清タンパク(商品名「DI−9213」(酸性WPI):RACPRODAN社製)には約0.02%の溶解性カルシウムが含まれているので、カルシウム塩の添加量が少ないところでも離水を抑制することができたが、寒天に対する量比は、上記範囲内であった。
【0058】
次に機能性食材として食物繊維(商品名「ファイバーゾル2H」:松谷化学工業社製)を添加して、食物繊維が混合流体に与える影響を調べた。寒天濃度を0.3%、DL−リンゴ酸を0.32%として添加する食物繊維量を変えて同様な実験を行った。なお、参考のために、低強度寒天としてグレードの異なる低強度寒天AX30〜200(ゲル強度30〜200g/cm:伊那食品工業社製)及び低強度寒天BX30〜200(ゲル強度30〜200g/cm:伊那食品工業社製)、普通寒天S−7(ゲル強度710〜750g/cm:伊那食品工業社製)、即溶性寒天UP−37K(ゲル強度670〜730g/cm:伊那食品工業社製)及び顆粒状即溶性寒天M−7(ゲル強度710〜750g/cm:伊那食品工業社製)に食物繊維を加えたものも調整した。その結果を表15に示す。
【0059】
【表15】


【0060】
その結果、食物繊維による影響はほとんどなく、カルシウムの添加により離水のない本発明の特有の食感を有する流体からなる寒天食品が得られた。その一方、低強度寒天以外の寒天では、0.3%の寒天濃度(寒天量)でゲル化してしまい、期待するところの飲用の寒天食品は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によると、カリウムイオンやカルシウム等の二価カチオンの添加により、低強度寒天を利用した酸性下にあるゲル状乃至ゾル状の食品において離水を抑えることができる。また、低強度寒天の濃度及びpHを調整することによって、寒天ゾルに寒天ゲルが混在した新たなタイプの飲料とすることができる。この飲料は、さっぱりとして喉越し感を有する。そして、この寒天飲料にはタンパク質や寒天以外の食物繊維を配合することができ、しかも、カルシウムを必須の成分とするので、栄養価の高い寒天飲料が提供される。

【出願人】 【識別番号】000006138
【氏名又は名称】明治乳業株式会社
【出願日】 平成18年8月21日(2006.8.21)
【代理人】 【識別番号】100104307
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 尚司


【公開番号】 特開2008−43310(P2008−43310A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−224690(P2006−224690)