| 【発明の名称】 |
野菜を発酵させた新規食品用素材、その製造方法及び前記食品用素材を含有する食品 |
| 【発明者】 |
【氏名】鈴木 潔
【氏名】松居 雄毅
【氏名】山田 泰正
【氏名】山田 一郎
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| 【要約】 |
【課題】野菜類などの特有な不快な臭いが低減されているとともに、風味に優れた発酵野菜含有食品用素材、前記食品用素材を含有した食品、並びに前記食品用素材の製造方法を提供すること。
【構成】発酵した野菜と、豆乳、乳及び/又は乳製品と、トランスグルタミナーゼとを含有する食品用素材、前記食品用素材を原料として製造されることを特徴とする食品、並びに野菜と、豆乳、乳及び/又は乳製品を混合し、発酵工程中にトランスグルタミナーゼ酵素処理を行うことを特徴とする、発酵した野菜と、豆乳、乳及び/又は乳製品とトランスグルタミナーゼとを含有する食品用素材の製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 発酵した野菜と、 豆乳、乳及び/又は乳製品と、 トランスグルタミナーゼとを含有する食品用素材。 【請求項2】 固形分中における野菜を50〜95重量%含有していることを特徴とする請求項1記載の食品用素材。 【請求項3】 請求項1または2に記載の食品用素材を原料として製造されることを特徴とする食品。 【請求項4】 野菜と、豆乳、乳及び/又は乳製品を混合し、発酵工程中にトランスグルタミナーゼ酵素処理を行うことを特徴とする、発酵した野菜と、豆乳、乳及び/又は乳製品とトランスグルタミナーゼとを含有する食品用素材の製造方法。 【請求項5】 酵母及び植物性乳酸菌の少なくとも1種ずつを使用して発酵処理を行うことを特徴とする請求項4記載の食品用素材の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、トランスグルタミナーゼを用いてマスキングした発酵野菜を含有する新規食品用素材及びその製造方法に関する。また、本発明は前記食品用素材を含有する食品にも関する。 【背景技術】 【0002】 トランスグルタミナーゼは蛋白質を構成するアミノ酸の内のグルタミン残基とリジン残基間の架橋形成を触媒する酵素である。これまでにトランスグルタミナーゼ製剤の使用用途として、物性改善及び、色調・風味を付与する技術が利用されている。新規トランスグルタミナーゼを使用した物性改善を目的とした実施例として、特許文献1ではモルモットの肝臓由来のトランスグルタミナーゼを使用することを特徴としたゲル化物の製造法を提案しており、さらに特許文献2では、微生物が産生したトランスグルタミナーゼ及び微生物由来のトランスグルタミナーゼを使用することを特徴としたゲル化物の製造法を提案している。また、味覚の改質を目的としたトランスグルタミナーゼの使用例も提案されている。例えば、特許文献3はトランスグルタミナーゼ及び酸化還元酵素を使用することを特徴としており、蛋白質含有食品を改質することを目的としている。即ち、特許文献1〜3のいずれにおいても、ゲル化物の作製や蛋白質素材の改質による味覚及び物性の改善が主たる目的であり、トランスグルタミナーゼの汎用性をさらに拡大することによって食品用素材の加工の範囲を広げることにつながると考えられる。一方で、健康に配慮した食事を積極的に取り入れることが多くの人々に好まれるため、野菜や豆類等の植物性の食材をより容易に摂取することが可能な食品群がこれまでに様々開発されてきた。これらの食品を構成する食材である野菜は特に臭み・苦味といったいわゆる野菜臭が存在していることが一般的に重要な問題になっている。従って、野菜臭のみをマスキングすることによって、野菜が本来持つ美味しさを堪能することが可能となる。しかし現在までに、野菜臭をマスキングするために発酵技術の改良や素材の限定等の提案は行われてきたが、化学的な処方によって更なる改良によってマスキング効果を向上させる方法に関しては、ほとんど例がない。 【0003】 従来の技術では、野菜や豆類等の植物性素材を食品として用いる場合に苦味や青臭みといった野菜臭に関しての問題を完全に解決しているわけではないが、野菜又は豆類の臭みをマスキングして美味しい食材として加工する方法がいくつか提案されている。野菜だけに限らず最近でも例として5種類の乳酸菌株を混合してなることを特徴とする乳酸菌スターターを使用して、豆乳の有する大豆臭や渋み、収斂味等を抑えた豆乳発酵食品(特許文献4)やキャベツ、ダイコン等の野菜及びバナナ、スイカ等の果実よりなる群から選ばれた1種又は2種以上を破砕した発酵原料を、エンテロコッカス・フェカーリスを所定の比率以上含む乳酸菌で発酵させた液状又は粉末状の乳酸発酵食品(特許文献5)が提案されている。これらの特許文献では単に乳酸菌によって野菜及び、又は豆類を発酵していることに留まり、これらの特有の臭みを完全に除去することはできていない。これは素材の問題ではなく乳酸菌のみによる一次的な化学的修飾にのみ依存していることが大きな原因であると考えられる。 【0004】 野菜素材を乳酸菌・酵母等の微生物で発酵させ、付加価値を高めた植物材料が開発されている中で、野菜臭をマスキングすることに関していくつかの事例が存在する。特に、乳酸発酵によって目的を遂行した例がいくつかある。例えば、特許文献6〜15では、風味を改善した野菜ジュースの製造法について提案している。特許文献6は、ラクトバチルス・ブレビス乳酸菌を加えて発酵を行うことを特徴としており、乳酸菌での発酵によって野菜の加熱臭を緩和することを可能としている。特許文献7では、トマト処理物に対してラクトバチルス・ブルガリクス乳酸菌を加えて発酵することを特徴としている。特許文献8では、ラクトバチルス・ブルガリクスとストレプトコッカス・サーモフィラスとを共生させて乳酸発酵を行うことを特徴としている。特許文献9及び10はラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・ヘルベエティカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの中から1種類又は2種類以上の乳酸菌で発酵することを特徴としている。特許文献11では、トマト処理物を2割以上含有する人参処理物とトマトの処理物の混合物を、ラクトバチルス・プランタラム乳酸菌を用いて発酵を行うことを特徴としている。特許文献12では、4〜10重量%含有する発酵野菜ジュースに関して、野菜をラクトバチルス・ヘルベエティカス、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・カゼイの中から少なくとも2種類以上の乳酸菌で発酵することを特徴としている。特許文献13では、キャベツ汁を含有する野菜汁をラクトバチルス・プランタラム(L−051)乳酸菌で発酵させることを特徴としている。特許文献14では、果実汁及び、又は野菜汁で発酵可能であり、且つ乳酸及び、又は酢酸生成能を有するラクトバチルス・ブレビスで発酵させることを特徴としている。特許文献15では、野菜の搾汁、破砕物、磨砕物、酵素処理物および切断物並びにこれらの希釈物、濃縮物及び加熱物からなる群から選ばれる少なくとも1種の野菜処理物をペディオコッカス属菌で発酵させることを特徴としている。従って、特許文献6〜15では野菜臭のマスキングに関して野菜の比率を調節することと乳酸菌種を限定することが提案されている。また、特許文献16では、乳酸菌または乳酸菌と酵母で発酵させて得られるペースト状の発酵野菜類を10〜80重量%含有することを特徴としている。特許文献17では発酵に必要な最低量の糖源の添加の下に、乳酸菌、酵母菌の1種類以上により植物材料を発酵させることを特徴としている。特許文献18ではパパイヤをパパイヤに付着している野生酵母菌と付加酵母菌及び乳酸菌によって発酵していることを特徴としている。特許文献16〜18は、主原料の臭みをマスキングすることを目的としており、さらに乳酸菌だけでなく酵母との複合発酵によりマスキング作用することを含んでいる。 しかしながら、特許文献6〜18で行われている野菜の発酵方法では野菜臭を抑制するためには依然として不十分である。すなわち、発酵するために野菜の種類を限定すること、野菜の比率を限定すること及び発酵に用いられる菌種を限定することだけでは強烈な野菜臭の抑制効果は低く、問題は依然として解決されたとはいえない。 同様に特許文献19で提案されている乳酸菌又は乳酸菌と酵母で乳酸発酵させて得られるペースト状の発酵野菜類を10〜80重量%含有することを特徴とする新規ドレッシングについての提案も野菜臭の抑制効果は不十分である。以上の例はすべて発酵によって物質を化学修飾したものであり、マスキング効果を改善するために更なる化学的な修飾を試みた例はこれまでにはない。 【0005】 また、パン類や菓子類の生地を発酵する製造工程中にトランスグルタミナーゼ処理を行っている事例が存在する。例えば、特許文献20では、ケーキ用小麦粉及びケーキミックスにトランスグルタミナーゼを添加することを特徴としている。ドーナッツのようにイースト発酵することも特許の範囲に含まれているが、特許文献20では生地の品質の改善を目的としている。同様に、特許文献21、22、23及び24ではパン類の製造にトランスグルタミナーゼを使用しており、イーストでの発酵工程中にトランスグルタミナーゼ処理を行っている。しかしながら、パン生地の食感改良を目的としているため、いずれの例においてもマスキング効果には着眼していない。即ち、トランスグルタミナーゼに、野菜臭のマスキング効果があることは今まで知られていない。 【0006】 【特許文献1】特開昭58−149645号公報 【特許文献2】特開昭64−27471号公報 【特許文献3】特開昭000−60431号公報 【特許文献4】特開2005−218390号公報 【特許文献5】特開2004−357509号公報 【特許文献6】特開昭57−138370号公報 【特許文献7】特公平07−4204号公報 【特許文献8】特公平07−4205号公報 【特許文献9】特許第2641142号公報 【特許文献10】特公平08−4454号公報 【特許文献11】特開平11−266824号公報 【特許文献12】特開2004−254528号公報 【特許文献13】特開2002−27955号公報 【特許文献14】特許第3577293号公報 【特許文献15】特開2001−292720号公報 【特許文献16】特開2005−218390号公報 【特許文献17】特開2003−259835号公報 【特許文献18】特開2001−120224号公報 【特許文献19】特開平05−86173号公報 【特許文献20】特開平02−286031号公報 【特許文献21】特開平04−360641号公報 【特許文献22】特開平11−243843号公報 【特許文献23】特開平11−242647号公報 【特許文献24】特開2004−242647号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、野菜類などに特有の不快な臭い(以下、野菜臭ともいう)が低減されているとともに、風味に優れた発酵野菜含有食品用素材、その製造方法及び前記食品用素材を含有する食品を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、前記のような問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、物性改善及び好ましい色調・風味を付与するとして使用されてきたトランスグルタミナーゼと豆乳、乳又は乳製品との存在下で野菜を発酵させることで、驚くべきことに、発酵野菜などに特有の不快な臭いが顕著に低減することを見出し、本発明を完成させた。 即ち、本発明の要旨は、 〔1〕 発酵した野菜と、 豆乳、乳及び/又は乳製品と、 トランスグルタミナーゼとを含有する食品用素材、 〔2〕 前記食品用素材を原料として製造されることを特徴とする食品、 〔3〕 野菜と、豆乳、乳及び/又は乳製品を混合し、発酵工程中にトランスグルタミナーゼ酵素処理を行うことを特徴とする、発酵した野菜と、豆乳、乳及び/又は乳製品とトランスグルタミナーゼとを含有する食品用素材の製造方法 に関する。 【発明の効果】 【0009】 本発明の食品用素材は、従来の乳酸菌、酵母などで発酵させた野菜を含む食品用素材に比べて、「発酵」という一次的な化学処理だけでなく、トランスグルタミナーゼを用いた二次的な「酵素」化学的処理を併用することで、野菜臭のマスキング効果が飛躍的に高められた食品用素材である。しかも、本発明では、発酵野菜、豆乳などの成分が固形分として一体化して沈殿するという、従来の発酵野菜には見られない新規な物性を示している。本発明の食品用素材は、粉末化などの処理を施しても野菜臭が少ないため、菓子類、パン類、麺類、麩類、マカロニ・スパゲッティ類、豆腐・油揚げ類、水産練り製品、乳類、果実類、飲料類、調理加工食品類等の多種多様な食品に入れることが可能であり、野菜嫌いの人にも、野菜と思わないで、美味しい食品として知らず知らずに食べることが可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 本発明の食品用素材は、発酵した野菜と、豆乳、乳及び/又は乳製品とトランスグルタミナーゼとを含有するものである。 【0011】 本発明は、発酵した野菜、豆乳、乳及び/又は乳製品とトランスグルタミナーゼを含有する食品用素材とすることにより、野菜が本来持っている臭みを最大限に取り除くことが可能である。また、色々な野菜の栄養を摂取でき、健康食品に適している。 【0012】 野菜としては、例えば、ニンジン、ジャガイモ、ダイコン、ゴボウ、サツマイモ、ショウガ、ニンニク、タマネギ、タケノコ等の根菜類及び、トマト、ホウレンソウ、パセリ、シソ、大葉、芽キャベツ、小松菜、ダイコン葉、カボチャ、ピーマン、ケール、春菊、パセリ等の緑黄色野菜及びセロリ、キャベツ、アスパラガス、キュウリ、スイカ等のその他の野菜を含んでいる。本発明において、前記野菜は発酵される。発酵方法としては後述する。 【0013】 本発明に用いられる豆乳とは、ダイズ由来のものであれば特に限定はない。また、乳としては、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジなどの家畜動物から搾取できるものであればよく、特に限定はない。乳製品としては、前記乳を用いて得られる食品であればよく、例えば、全粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー類、ミルクパウダー類などが挙げられる。前記豆乳、乳及び乳製品は、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。 【0014】 本発明に用いられるトランスグルタミナーゼとしては、様々な種類のものが使用可能であるが、例えば、特開昭58−149645号公報にあるようなモルモットの肝臓由来のものでカルシウムイオン等が必要なものや、特開昭64−27471号公報にあるような微生物由来で、カルシウム等のイオンが必要でないトランスグルタミナーゼ酵素が用いられる。トランスグルタミナーゼの量としては、野菜及び、豆乳又は乳又は乳製品の固形分100g当りトランスグルタミナーゼ1〜1000ユニット程度で処理することが好ましい。 【0015】 本発明の食品用素材は、野菜の風味を呈し、且つ酢酸臭などの発酵臭や野菜臭が抑えられる観点から、固形分中に野菜を50〜95重量%含有していることが好ましい。また、野菜の量を規定することによって、野菜が本来持っている旨味などの風味と臭いのマスキングの程度を調節することが可能である。 【0016】 前記食品用素材は、前記野菜と、前記豆乳、乳及び/又は乳製品を混合し、発酵工程中にトランスグルタミナーゼ酵素処理を行うことで得ることができる。 本発明においては、豆乳、乳及び/又は乳製品とトランスグルタミナーゼとの存在下で野菜を発酵させることで、豆乳、乳及び/又は乳製品、発酵野菜などの固形分が一体化し、野菜臭が顕著に抑えられることが可能となる。前記一体化した固形分は水媒体中で静置した場合に速やかに沈殿する。 【0017】 前記発酵工程では、酵母、植物性乳酸菌を用いることができるが、トランスグルタミナーゼ処理によるマスキング効果が顕著であるという観点から、酵母、植物性乳酸菌の少なくとも1種ずつを使用する発酵処理を行うことが好ましい。 本発明において用いることのできる酵母菌としては、発酵野菜の分野で公知のものであれば、用いることが可能である。中でも植物系酵母菌が好ましく、例えばサッカロミセス属、チゴサッカロミセス属、ハンゼヌーラ属等があげられる。また、植物性乳酸菌も発酵野菜の分野で公知のものであれば、使用可能であり、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ペディオコッカス属、ロイコノストック属、バチルス属等が挙げられ、具体的には、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)等があげられる。なお、前記酵母菌、乳酸菌は市販されているものを発酵のスターター(種菌)として用いればよい。 また、発酵方法としては、前記野菜、豆乳、乳及び/又は乳製品、並びにトランスグルタミナーゼを含む混合物中に前記酵母及び/又は植物性乳酸菌を添加し、水媒体中で20〜30℃で3〜48時間、静置、攪拌、又は振とうして発酵を行うことができる。なお、発酵の終了は、混合液を静置して上清の濁度を検出することにより判定することができる。 【0018】 酵母の量としては、混合後の菌体濃度が1×106〜1×1010個/gとなるように種菌を野菜と混合すればよく、植物性乳酸菌の量としては、菌体濃度が1×104〜1×1010個/gとなるように種菌を野菜と混合すればよい。また、酵母、植物性乳酸菌の混合比(酵母/植物性乳酸菌:菌体数比)としては、1/1〜104/1が好ましい。なお、種菌中の菌濃度としては、公知の培養条件により適宜設定すればよい。 【0019】 前記のようにして得られる発酵物は、例えば、約27℃で静置すると、沈殿物と上清に分離し、この沈殿物を食品用素材として用いることができる。本発明の食品用素材として用いられる前記沈殿物は、発酵野菜、豆乳などの成分が固形分として一体化したものであり、野菜臭が顕著に抑えられたものである。このような野菜臭が顕著に低減された沈殿物は、従来の発酵野菜では見られないものである。また、前記沈殿物の平均粒径は、従来の発酵野菜の平均粒径に比べると有意に大きなものである。前記沈殿物の平均粒径としては、例えば、5μm以上が好ましく、8μm以上1000μm以下がより好ましい。前記沈殿物は、ろ過、遠心分離などで取り出して用いてもよいし、さらに乾燥させたものを用いてもよい。平均粒径としては、後述の実施例に記載の方法によればよい。 【0020】 本発明の食品用素材は、前記沈殿物をそのまま用いてもよいが、必要に応じて粉末化などの処理を施してもよい。本発明の食品用素材は、野菜臭が顕著に低減されたものであり、菓子類、パン類、麺類、麩類、マカロニ・スパゲッティ類、豆腐・油揚げ類、水産練り製品、乳類、果実類、飲料類、調理加工食品類等の多種多様な食品に入れることが可能である。これらの食品に入れる方法としては、公知の方法であればよい。 したがって、本発明は、前記食品用素材を原料として製造されることを特徴とする、菓子類、パン類、麺類、麩類、マカロニ・スパゲッティ類、豆腐・油揚げ類、水産練り製品、乳類、果実類、飲料類、及び調理加工食品類などの食品に関する。 【実施例1】 【0021】 野菜(ニンジンパウダー;仙波糖化工業(株)製)と豆乳とを合計50g及び水150gを混合し、酵母5g(ライマン社製)、ラクトバチルス・プランタラム乳酸菌0.5g(バイオテックジャパン社製)、トランスグルタミナーゼを混合し、約28℃で約16時間発酵させた。なお、トランスグルタミナーゼについて、固形分100g当たり10ユニットの濃度で、カルシウムイオンを必要としないトランスグルタミナーゼを使用した。得られた発酵物を約27℃で静置して沈殿物を食品用素材として取り出した。なお、発酵開始時の酵母の菌体濃度は1×107個/g、乳酸菌の菌体濃度は1×104個/gであった。また、食品用素材の色調や状態の確認は目視で行った。 豆乳を用いた場合の野菜(ニンジン)のマスキング評価を、野菜と豆乳との混合比率を変えて28℃で16時間発酵した後、パネラー15名により、下記官能評価基準により評価した。その結果を表1に示す。 【0022】 <官能評価基準> 〔野菜の風味に対する評価基準〕 評点 : 内容 A : 野菜の旨味もあり、良好な味である。 B : 野菜の旨味も適度にあり、良好な味である。 C : 野菜の旨味も適度にあるが、味は普通である。 D : 野菜の旨味は若干感じられるが、美味しくない。 E : 野菜の旨味もなく、美味しくない。 〔野菜臭に関する評価基準〕 評点 : 内容 A : 野菜臭がほとんど感じられない。 B : 野菜臭が若干感じられる。 C : 野菜臭が感じられる。 D : 野菜臭がかなり感じられる。 E : 野菜臭およびそれ以外のものの不快臭がかなり感じられる。
なお、前記評価基準は以下の実施例も同じである。 【0023】 【表1】
【0024】 表1で示されているように、得られる食品用素材はいずれも野菜臭が顕著に抑えられたものであることがわかる。また、野菜の混合比率が50%以上、特に少量の豆乳を加えた場合(5%)でも、野菜臭が顕著に抑えられていることがわかる。また、野菜の混合比率が50%以上では得られる食品用素材の色調が上清と同じオレンジ色であることから、食品用素材には野菜が一体化されていることがわかる。また、50%以上の野菜量である場合、野菜の風味に優れることがわかる。なお、ニンジンと豆乳の混合比が1:9の時には、トランスグルタミナーゼの効果によってこれらの混合物が固化した。従って、豆乳と野菜の固形比で、野菜の量比を豆乳よりも高くすることが好ましいと考える。 【実施例2】 【0025】 豆乳、大豆蛋白質、脱脂粉乳、全脂紛乳、粉末ミルク、ホエイパウダー、及び乳蛋白質をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして食品用素材を得た(固形分中のニンジンの量:90重量%)。得られた食品用素材における発酵臭(酸味臭)と野菜(ニンジン)臭のマスキング評価を行うために、パネラー15名により官能評価を行った。その結果を表2に示す。なお、野菜の酸味に関する評価基準は以下のとおりである。 【0026】 <官能評価基準> 〔野菜の酸味に関する評価基準〕 評点 : 内容 A : 酸味臭がほとんど感じられない。 B : 酸味臭が若干感じられる。 C : 酸味臭が感じられる。 D : 酸味臭がかなり感じられる。 E : 酸味臭、酸味、不快臭がかなり感じられる。 【0027】 【表2】
【0028】 表2で示されているように、豆乳、乳、乳製品などを用いた場合、精製大豆蛋白質や精製乳蛋白質を用いた場合に比べて、野菜臭のマスキング効果に優れ、野菜の風味も維持されているため、野菜食材の味を引き立てることが可能であることがわかる。これは、豆乳、乳、乳製品などがトランスグルタミナーゼの基質となることで野菜の苦味や臭いをマスキングすることが可能な物質に変換され、この物質が発酵野菜と一体化して前記効果が発現しながら、野菜食材の風味も保持されるためと考える。 【実施例3】 【0029】 トランスグルタミナーゼ(TG)のマスキング効果を示すために、実施例1で得られた食品用素材(ニンジン:豆乳=5:5)及びTGを添加しない以外は同様にして得られた素材について、パネラー15名により官能評価を行った。その結果を表3に示す。 【0030】 【表3】
【0031】 また、平均粒径の測定方法としては、発酵野菜の懸濁液をスライドグラス上に滴下し、光学顕微鏡下で粒径を測定した。ランダムに100粒づつ測定しその平均を平均粒径とした。 【0032】 表3で示すとおり、トランスグルタミナーゼの有無でそれぞれ野菜を処理した場合に、野菜臭の残存性が大きく異なり、野菜を発酵後に85℃で乾燥した場合であっても、トランスグルタミナーゼ処理を行っていない発酵野菜には野菜臭が残存していた。 なお、TG処理して得られた食品用素材1重量部に対して5倍量の水を加えて希釈すると、速やかに沈殿した。TG処理して得られた食品用素材の沈殿の色は、ニンジンの色(オレンジ色)を呈していたが、TG処理を行っていない素材の沈殿は白色であった。しかも、TG処理の有無によって上清の濁度が異なることから、TG処理によって、野菜及び豆乳及び乳酸菌及び酵母が部分的に化学結合されたことが推測される。また、乾燥した野菜パウダーがTG処理によってほとんど退色を免れていることも酵素化学的修飾が行われたことを示している証拠と考える。 【実施例4】 【0033】 トランスグルタミナーゼ処理のタイミングを変化させた場合のマスキング効果の違いを示すために、実施例1で使用された実験材料を用いて、下記A〜Cの条件で発酵野菜を作製した。尚、ニンジンパウダー(仙波糖化工業(株)製)と豆乳とを1:1で使用したものを供試発酵材料とした。また、発酵野菜の官能評価をパネラー15名により行った。その結果を表4に示す。 【0034】 A:加水した野菜パウダーをトランスグルタミナーゼ処理(28℃・16時間)してから、90℃・1時間の処理で酵素を失活させた。さらに試料を28℃まで冷却した後に、乾燥酵母と乳酸菌を付加して発酵を行った(28℃・16時間)。最終的に、90℃・1時間で発酵を止めた。 B:加水した野菜パウダーに乾燥酵母及び乳酸菌を加え、28℃・16時間発酵を行った。その後、野菜の発酵を止めるために90℃・1時間の処理を行った。発酵野菜を室温に戻した後に、トランスグルタミナーゼ処理(28℃・16時間)を行い、90℃・1時間の処理で酵素を失活させた。 C:加水した野菜パウダーに乾燥酵母と乳酸菌及びトランスグルタミナーゼを加え、28℃・16時間発酵を行った。その後、発酵野菜を90℃・1時間処理を行った。 【0035】 【表4】
【0036】 実施例4で行われた実験結果から、発酵処理とトランスグルタミナーゼ処理のタイミングを変化させることでマスキング効果も異なることがわかった。最良の条件は実験Aのように発酵とトランスグルタミナーゼ処理を同時に行うものであった。即ち、発酵とトランスグルタミナーゼの酵素処理を同時に行うことによって、バランス良く各々の処理が行われることによってマスキング効果が著しく改善されることがわかる。 【実施例5】 【0037】 様々な野菜臭のマスキング効果を示すために、野菜として実施例1で用いたニンジンパウダーの他、ホウレンソウ(こだま食品(株)製)、大麦若葉(こだま食品(株)製)、タマネギ(仙波糖化工業(株)製)、ゴボウ(こだま食品(株)製)、赤パプリカ(ヤスマ(株)製)、ガーリック(ヤスマ(株)製)を使用してマスキング試験を行った。 試験の方法は実施例1で使用した材料の量比と同様になるように、野菜パウダー(野菜:豆乳=5:5)を28℃で16時間発酵した後の官能評価を、パネラー15名により行った。結果を表5に示す。 【0038】 【表5】
【0039】 実施例5で用いられた供試材料は緑黄色野菜や香味野菜として野菜臭が特徴的である代表的な野菜群である。従来の方法では、ガーリックやゴボウ等は強烈な野菜臭を持つためにマスキングが困難であると考えられていたが、これらの野菜をマスキング処理した結果、すべての評価がAまたはBであった。したがって、本発明により、多種多様な野菜、特に野菜臭が強い野菜でもマスキングが可能であることが明らかとなった。 【実施例6】 【0040】 発酵野菜を加えたダイエットクッキーを以下の手順にしたがって製造した。なお、発酵野菜としては、実施例2の豆乳とニンジンを含有したものと同じものをパウダー状にして用いた。 手順 1.薄力粉と発酵野菜を混合し、ふるいにかけておく。 2.ボールにマーガリンを入れ、泡立てたらグラニュー糖、溶き卵の順にそれぞれを三回ずつに分けて加え、混ぜる。 3.2のボールに1の発酵野菜・薄力粉を加えてから混ぜ合わせる。 4.3の生地を3mmの厚さにのばしてから、好みの型で抜く。 5.180℃のオーブンで15分間焼成する。 なお材料の組成を表6に示す。 【0041】 【表6】
【実施例7】 【0042】 発酵野菜入りパンを以下の手順にしたがって製造した。なお、発酵野菜としては、実施例2の豆乳とニンジンを含有したものと同じものをパウダー状にして用いた。 手順 1.水以外の材料をボールに入れ、ミキサーの低速で材料を5分間均等に混ぜ合わせる。 2.水を徐々に加えてから、ミキサーの低速で15分間、中速で10分間生地をこねる。 3.28℃・湿度90%の条件で生地を1時間一次発酵させる。 4.生地を4分割し、室温で20分間ベンチタイムをとる。 5.38℃・湿度90%のホイロで生地を1時間二次発酵させる。 6.適当な大きさに生地を成型し、180℃のオーブンで12分間焼成する。 なお材料の組成を表7に示す。 【0043】 【表7】
【実施例8】 【0044】 発酵野菜を加えたうどんを以下の手順にしたがって製造した。なお、発酵野菜としては、実施例2の豆乳とニンジンを含有したものと同じものをパウダー状にして用いた。 手順 1.あらかじめ食塩を水に溶かしておく。 2.中力粉と発酵野菜をボールに混ぜ入れ、食塩水を分量の9割ほど回しながら加える。 3.手早く飛び散らないようにボールの中身を混ぜ合わせて、さらに生地を折りたたみながら押し伸ばす。 4.生地を2mm位の厚さまで麺棒で伸ばす。 5.まな板に打ち粉をして、生地を適当な太さに切る。 6.沸騰した湯にほぐしたうどんを入れ、7〜10分間ゆでる。 【0045】 【表8】
【0046】 本発明によれば、豆乳、乳及び/又は乳製品を添加して作製された発酵野菜は、トランスグルタミナーゼによる酵素処理を併用することによって、野菜臭が顕著にマスキングされたものである。発酵中に併用されるトランスグルタミナーゼの効果は大きく、従来の技術で行われていた発酵工程のみによるマスキング効果を大きく上回っていた。また、野菜とともに加えられる豆乳、乳及び/又は乳製品は、少量であっても野菜の臭みを抑制することが可能であるため、酵母と乳酸菌を併用して発酵することで問題となっていた発酵野菜の多様な食品に対する汎用性の問題をクリアしたものである。 【産業上の利用可能性】 【0047】 本発明の食品用素材を用いることで、野菜嫌いの人々にも美味しく発酵野菜を食べることができるだけでなく、種々の食品に好適に使用することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】390020189 【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年8月7日(2006.8.7) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100074561 【弁理士】 【氏名又は名称】柳野 隆生
【識別番号】100124925 【弁理士】 【氏名又は名称】森岡 則夫
【識別番号】100141874 【弁理士】 【氏名又は名称】関口 久由
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| 【公開番号】 |
特開2008−35783(P2008−35783A) |
| 【公開日】 |
平成20年2月21日(2008.2.21) |
| 【出願番号】 |
特願2006−214477(P2006−214477) |
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