| 【発明の名称】 |
海苔発酵食品及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】浅川 牧夫
【氏名】惠良 聖子
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| 【要約】 |
【課題】海苔の新規食品・新規素材としての利用の一手段として、麹菌の産生する多様な酵素を利用し、海苔中のタンパク質や多糖類を発酵分解することにより海苔の風味をもつ呈味性および機能性を強化した新規発酵食品を提供すること。
【構成】(1)(a)海苔又は海苔と大豆の混合物、(b)小麦又は米、及び(c)麹菌を混合して製麹を行う工程、及び(2)工程(1)で得た混合物に塩水を添加して発酵及び熟成させる工程を含む、海苔発酵食品の製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)(a)海苔又は海苔と大豆の混合物、(b)小麦又は米、及び(c)麹菌を混合して製麹を行う工程、及び(2)工程(1)で得た混合物に塩水を添加して発酵及び熟成させる工程を含む、海苔発酵食品の製造方法。 【請求項2】 海苔及び大豆が蒸煮されたものである、請求項1に記載の海苔発酵食品の製造方法。 【請求項3】 大豆が脱脂加工大豆又は丸大豆である、請求項1又は2に記載の海苔発酵食品の製造方法。 【請求項4】 小麦又は米が、炒熬されたものである、請求項1から3の何れかに記載の海苔発酵食品の製造方法。 【請求項5】 麹菌がAspergillus oryzae 及び/又はAspergillus sojaeである、請求項1から4の何れかに記載の海苔発酵食品の製造方法。 【請求項6】 工程(1)の製麹を、混合物の温度を26℃〜40℃、外気湿度を90〜95%に調節しながら24時間以上行う、請求項1から5の何れかに記載の海苔発酵食品の製造方法。 【請求項7】 工程(2)の発酵及び熟成を、温度14〜35℃で行う、請求項1から6の何れかに記載の海苔発酵食品の製造方法。 【請求項8】 請求項1から8の何れかに記載の海苔発酵食品の製造方法によって製造される、海苔発酵食品。 【請求項9】 ペースト状または液状である、請求項8に記載の海苔発酵食品。 【請求項10】 塩分の含有量が10〜20%であり、pHが4.0〜7.0である、請求項8又は9に記載の海苔発酵食品。 【請求項11】 遊離アミノ酸の含有量が発酵前より増加している、請求項8から10の何れかに記載の海苔発酵食品。 【請求項12】 遊離アミノ酸総量に対する旨味アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)の含有量が15〜35%であり、遊離アミノ酸総量に対する苦味アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、チロシン)の含有量が35〜60%であり、遊離アミノ酸総量に対する甘味アミノ酸 (プロリン、トレオニン、アラニン、グリシン、セリン)の含有量が15〜30%である、請求項8から11の何れかに記載の海苔発酵食品。 【請求項13】 中性糖及びペプチドの含有量が発酵前より増加している、請求項8から12の何れかに記載の海苔発酵食品。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、海苔発酵食品及びその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、麹菌の産生する多様な酵素を利用した海苔発酵食品及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 海苔は、古くから日本人に食されてきた海藻で、非常になじみ深い食品である。干し海苔の年間消費量は近年約100億枚強で推移しており、コンビニエンスストアのおにぎりをはじめとする業務用の占める割合が年々増加して60%を超えている。一方、贈答用消費は景気の低迷やギフト商品の多様化などによって年々減少し、近年は7〜8%にすぎない。また、家庭用消費量は約30億枚で横這い傾向にある(非特許文献1)。このような中、生産者の減少、環境悪化による生産量への影響、規制緩和の流れによる海苔の輸入自由化など海苔業界に深刻な影響を与える要因も多く、現在の食生活に合う新規海苔商品の開発が望まれている。また、近年発生している色落ち海苔や、下等海苔、加工時に発生する屑海苔は、未利用又は一部しか利用されておらず、大部分は堆肥化又は廃棄されており、その資源の有効利用が望まれている。 【0003】 また、従来の海苔を用いた食品は、板海苔、味付け海苔、ふりかけ、佃煮などであるが、新形態の商品はほとんど開発されていない。さらに、海苔は豊富な栄養・有効成分を含有するが、厚い細胞壁を持つため、そのままの形では消化が悪く、有効成分を効率的に体内に取り入れることができない。 【0004】 一方、古来よりわが国では、食文化の一つとして麹菌を用いた発酵醸造食品である醤油や味噌などを嗜好してきた。麹菌は様々な酵素を産生するが、中でも醤油麹菌の産生する酵素はタンパク質分解酵素、多糖類分解酵素、核酸分解酵素など非常に多様であり、同一作用の酵素でも基質特異性や最適作用条件が互いに異なるものもある(非特許文献2)。また、麹菌はその安全性や生理活性などの有用性も広く認められている。 【0005】 特許文献1には、海藻に麹菌等の醗酵菌株を振り掛け、海藻が含有する栄養素を分解抽出し、更に人体への作用と健康維持を高める、栄養素含有の大豆、脱脂大豆、オカラ、乾燥ビール酵母を混和した海藻の醗酵食品が記載されている。 【0006】 【非特許文献1】岩渕光伸:「全国水産加工品総覧」(福田裕,山澤正勝,岡崎恵美子 監修),光琳,2005,p525. 【非特許文献2】栃倉辰六郎:「増補 醤油の科学と技術」日本醸造協会,1994,p328 【特許文献1】特開平10−229855号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、海苔の新規食品・新規素材としての利用の一手段として、麹菌の産生する多様な酵素を利用し、海苔中のタンパク質や多糖類を発酵分解することにより海苔の風味をもつ呈味性および機能性を強化した新規発酵食品を提供することを解決すべき課題とした。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、醤油麹を用いて主原料として海苔・小麦・大豆・米を用いて試醸を行った結果、麹菌の産生する多様な酵素を利用して海苔を分解することにより海苔の風味をもち、多種のアミノ酸、ペプチド、中性糖を含む新規発酵食品を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0009】 即ち、本発明によれば、(1)(a)海苔又は海苔と大豆の混合物、(b)小麦又は米、及び(c)麹菌を混合して製麹を行う工程、及び(2)工程(1)で得た混合物に塩水を添加して発酵及び熟成させる工程を含む、海苔発酵食品の製造方法が提供される。 【0010】 好ましくは、海苔及び大豆は蒸煮されたものである。 好ましくは、大豆は脱脂加工大豆又は丸大豆である。 好ましくは、小麦又は米は、炒熬したものである。 【0011】 好ましくは、麹菌は、Aspergillus oryzae 及び/又はAspergillus sojaeである。 【0012】 好ましくは、工程(1)の製麹を、混合物の温度を26℃〜40℃、外気湿度を90〜95%に調節しながら24時間以上行う。 好ましくは、工程(2)の発酵及び熟成を、温度14〜35℃で行う。 【0013】 本発明の別の側面によれば、上記した本発明による海苔発酵食品の製造方法によって製造される、海苔発酵食品が提供される。 【0014】 好ましくは、本発明の海苔発酵食品はペースト状または液状である。 好ましくは、本発明の海苔発酵食品においては、塩分の含有量が10〜20%であり、pHが4.0〜7.0である。 【0015】 好ましくは、本発明の海苔発酵食品においては、遊離アミノ酸の含有量が発酵前より増加している。 好ましくは、本発明の海苔発酵食品においては、遊離アミノ酸総量に対する旨味アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)の含有量が15〜35%であり、遊離アミノ酸総量に対する苦味アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、チロシン)の含有量が、35〜60%であり、遊離アミノ酸総量に対する甘味アミノ酸 (プロリン、トレオニン、アラニン、グリシン、セリン)の含有量が、15〜30%である。 【0016】 好ましくは、本発明の海苔発酵食品においては、中性糖及びペプチドの含有量が発酵前より増加している。 【発明の効果】 【0017】 本発明では、麹菌の産生する多様な酵素を利用することにより、この酵素分解により有用なアミノ酸、ペプチド、オリゴ糖等が生成される可能性が高く、それらが高い機能性を有することが期待できる。 【0018】 本発明の海苔発酵食品は、海苔の風味を有し、滑らかな食感を有する。本発明では海苔を発酵分解することにより低分子化でき、人が栄養成分として摂取しやすくなった。また、本発明の海苔発酵食品は、本醸造醤油に匹敵する多種のアミノ酸を含み、またペプチド・オリゴ糖を含むため、機能性素材としても利用することができ、これにより海苔の用途を広げることができる。さらに、本発明の海苔発酵食品の製造においては、海産物をもとに発酵・醸造を行うため、穀類原料を用いた場合とは異なる人体に有用な乳酸菌や酵母が含まれている可能性がある。 【0019】 本発明の海苔発酵食品は、食品分野における新規食品、食品添加物、調味料等のほか、例えば代替医療食品や化粧品等の素材としても利用することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0020】 以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。 本発明では、麹菌の産生する多様な酵素を利用して、海苔を分解することにより海苔の風味をもち多種のアミノ酸、ペプチド、中性糖を含む新規発酵食品を得ることに成功した。本明細書に記載する実施例の結果に示す通り、醤油麹を用いて海苔の分解を試みた結果、以下のことが明らかとなった。 【0021】 (1)蒸煮した海苔または海苔と大豆の混合品に、炒熬した小麦と醤油麹Aspergillus oryzaeをあらかじめ混合したものを混ぜて製麹を行い、塩水と合わせて仕込み熟成させるとペースト状または液状の生成物が得られた。その生成物における遊離アミノ酸組成の比率は本醸造醤油より苦味が少なく旨味の割合が多いものであった。 【0022】 (2)得られた生成物は多種のペプチドを含んでいた。海苔のペプチドには今までに様々な機能性が報告されており、海苔の分解により新たに生成したペプチドにも何らかの機能性を有することが期待できる。 (3)本発明の製造方法で海苔と穀類を分解し発酵熟成すると、仕込み後15ヵ月経過した諸味は中性糖やペプチドの含有量が増加しており、ペプチドの低分子化もみられた。 【0023】 海苔はそのままで摂取しても消化されにくい細胞壁に覆われているため、海苔中に豊富にある栄養成分を取り込むことは困難である。しかし、本発明における醤油麹Aspergillus oryzaeの産生する酵素で分解した生成物では、高分子多糖類などが大豆や小麦の成分とともにペプチドやオリゴ糖にまで低分子化されたものが含まれ、人が栄養成分を摂取しやすい性状に変えることができた。また、旨味の割合が多い機能性を持つ新規食品としての種々の用途開発が期待できる。 【0024】 上記の通り、本発明は、(1)(a)海苔又は海苔と大豆の混合物、(b)小麦又は米、及び(c)麹菌を混合して製麹を行う工程、及び(2)工程(1)で得た混合物に塩水を添加して発酵及び熟成させる工程を含む、海苔発酵食品の製造方法、及び上記製造方法により製造される海苔発酵食品に関するものである。 【0025】 本発明では、高価な酵素製剤は使用せず、麹菌を用いて製麹を行い、その産生する多様な酵素を利用して、海苔発酵食品を製造することができる。また、海苔の成分の一つである粘性多糖類ポルフィランの性質により、てりやとろみが付与され、海苔発酵食品の食感がより滑らかに改良される。 【0026】 本発明で用いる海苔及び大豆の種類は特に限定されないが、予め蒸煮した海苔及び大豆を用いることが好ましい。蒸煮は、例えば、オートクレーブにて120℃で15分間蒸煮することにより行うことができる。なお、本発明においては、大豆は使用してもよいし、使用しなくてもよい。大豆を使用する場合、その種類は特に限定されず、例えば、脱脂加工大豆や丸大豆などを使用することができる。 【0027】 本発明で使用する小麦又は米としては、炒熬したものを使用することが好ましい。 【0028】 本発明では、海苔または海苔と大豆の混合物に、小麦または米を、例えば1:1(重量比)の割合で配合することができる。また、麹菌は、小麦または米に予め混ぜておき、これを、海苔または海苔と大豆の混合物と混ぜることが好ましい。 【0029】 本発明では、海苔又は海苔と大豆の混合物、小麦又は米、及び麹菌を混合して製麹を行う。麹菌は、分類上異なる複数の菌種が存在する。本発明で使用する麹菌の菌種は特に限定されず、黄麹菌、白麹菌、黒麹菌、紅麹菌などを使用することができるが、好ましくは黄麹菌であるAspergillus oryzae及び/又はAspergillus sojaeである。麹菌は、1種類の菌種を使用してもよいし、2種類以上の菌種を組み合わせて使用してもよい。 【0030】 本発明の方法における製麹は、(a)海苔又は海苔と大豆の混合物、(b)小麦又は米、及び(c)麹菌の混合物を、温度26℃〜40℃、外気湿度90〜95%に調節して24時間以上放置することにより行うことができる。製麹は、24時間以上、一般的には2日程度(48時間程度)行うことが好ましい。このようにして麹菌を生育させることにより、麹が製造される。 【0031】 本発明の方法では、続いて、上記の製麹で得られた混合物に塩水を添加して発酵及び熟成を行う。発酵及び熟成は、好ましくは温度14〜35℃で行うことができる。発酵及び熟成の期間は、所望の海苔発酵食品を得るのに十分な期間であれば特に限定されず、一般的には1ヶ月から数年程度であり、好ましくは1ヶ月から24ヶ月であり、さらに好ましくは2ヶ月から24ヶ月程度である。 【0032】 本発明の海苔発酵食品の形態は特に限定されないが、通常は、ペースト状または液状である。 【0033】 また、本発明の海苔発酵食品において塩分の含有量は10〜20%であることが好ましく、pHは4.0〜7.0であることが好ましく、pHは4.0〜6.0であることがさらに好ましい。 【0034】 本発明の海苔発酵食品の好ましい態様においては、遊離アミノ酸総量に対する旨味アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)の含有量が15〜35%であり、遊離アミノ酸総量に対する苦味アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、チロシン)の含有量が、35〜60%であり、遊離アミノ酸総量に対する甘味アミノ酸 (プロリン、トレオニン、アラニン、グリシン、セリン)の含有量が、15〜30%である。また、本発明の海苔発酵食品の好ましい態様においては、中性糖およびペプチドの含有量が発酵前より増加している。 【0035】 以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。 【実施例】 【0036】 (1)発酵調味料の製造方法 (1−1)材料 タンパク質原料として、有明海で生産された乾燥海苔、または左記の海苔に中国産脱脂加工大豆もしくは国内産丸大豆を加えたものを用いた。炭水化物原料として、カナダ産の小麦または国内産のうるち米を用いた。麹菌はヒグチモヤシ製のスリーダイヤ(Aspergillus oryzaeのみ)またはハイソーヤ(Aspergillus oryzae とAspergillus sojaeの混合品)を用いた。水は市販のミネラルウォーターを用いた。 【0037】 (1−2)海苔発酵食品調製方法(図1) (1−2−1)原料処理 海苔は、微粉末化または板海苔を約1cm角に裁断し、2.15倍量の水に浸漬した。丸大豆は4倍量の水を添加し15時間浸漬した後水きりした。 脱脂加工大豆は1.2倍量の水を添加し40分間浸漬した。浸漬した海苔および大豆はオートクレーブにて120℃で15分間蒸煮した。小麦と米は200〜500℃で炒熬後、割砕したものを用いた。 【0038】 (1−2−2)製麹方法 タンパク質原料(海苔または海苔と大豆の混合物)に炭水化物原料(小麦または米)を1:1(浸漬前の重量比)の割合で配合した。割砕小麦または米に麹菌を混ぜたものをあらかじめ準備し、品温40℃以下で海苔または海苔と大豆の混合物に混ぜ合わせた。室蓋に混合物を盛り込み、品温26℃〜40℃、外気湿度90〜95%に調節しながら48時間製麹して三日麹を出麹とした。また、穀類を使用しない海苔のみでの製麹も行った。この場合、蒸煮した海苔を40℃以下に冷まし、直接麹菌を振りかけて混合して製麹した。種麹は仕込量1Lあたり0.12g用いた。対照として、大豆と小麦を原料としたものも製麹した。 【0039】 (1−2−3)仕込み方法 麹に23〜25%塩水(15℃)を原料合計1Kgあたり2〜5L添加し、5.6L程度の蓋付陶器製のカメまたは10Lの蓋付きポリバケツ中に仕込み、約14〜35℃で発酵熟成を行った。 【0040】 (1−2−4)サンプリングおよび試料調製 1ヶ月〜2ヶ月毎に諸味を抜き取り、凍結保存した。 諸味1gを10mlの蒸留水で懸濁後、遠心分離(3000rpm,10min)した上澄みをろ過し、分析用の試料とした。 【0041】 (1−3)分析方法 各試料を経時的に分取し、遊離アミノ酸(Watersピコタグ法)およびペプチドパターン(ゲル濾過法)の分析を行った。 【0042】 (2)結果および考察 (2−1)海苔発酵食品の製造過程 原料処理: 海苔は蒸煮による加熱殺菌・変性後、約3倍の重量となった。 【0043】 製麹段階: 盛込みの際、海苔に炒り小麦や炒り米をほぼ等量混合すると、海苔の表面をその粉末が覆い、ぱらぱらした手入れのしやすい麹が出来上がった。盛り込み時の水分は40〜60%であった。盛込みから出麹までの麹は、恒温恒湿器を用いて温度および湿度を制御し、図2のように本醸造醤油製麹時と同様の温度経過とした。出麹時の麹の水分は30〜45%であった。 【0044】 仕込み段階: 一般的な醤油醸造の汲水量をそのまま海苔に換算して塩水の添加を行うと、海苔の保水力が非常に高いため塩水を吸水した部分と全く塩水に浸らない部分ができ、塩水と麹の混合が困難であった。麹に未浸漬部分が存在すると非耐塩性の雑菌が繁殖して発熱したり悪臭が発生したりして諸味の品質を劣化させるため、塩水を醤油より多めに添加する必要があった。仕込時の諸味は、海苔中の多糖類が水により抽出され粘性および「てり」がみられ、組成の荒い味噌のような状態となった。仕込み日より一週間ほぼ毎日攪拌を行ったところ、塩水が海苔麹になじみ、次第にペースト状または液状となった。 【0045】 諸味の塩分は、発酵熟成が進んだ最終濃度で15〜16%、pH 4.8〜5.5であった。 【0046】 一方,原料を海苔のみとして穀類を添加せずに試醸を行ったものは、製麹時には顕微鏡下で麹菌の着生・出芽・発育・菌糸の成長や胞子形成も見られ、麹は出来上がったものの、仕込み後の諸味は弱アルカリ性(pH 7.7)となり、分解があまり進まずアンモニア臭の強い腐敗したようなものとなった。 【0047】 (2−2)遊離アミノ酸組成 海苔発酵食品および市販本醸造醤油の遊離アミノ酸の分析値を表1に示した。海苔発酵食品は本醸造醤油と同様に多種の遊離アミノ酸を含んでいた。 【0048】 【表1】
【0049】 また、遊離アミノ酸を苦味(Arg, Lys, His, Phe, Leu, Ile, Met, Val, Tyr)、甘味(Pro, Thr, Ala, Gly, Ser)および旨味(Asp, Glu)として味の構成比を図3に示した。海苔・小麦・大豆原料でAspergillus oryzaeを使用したものが苦味となる成分の割合が最も少なく、旨味のある遊離アミノ酸の割合が多かった。また、甘味成分は、米を使用したものがもっとも低い割合であった。 【0050】 海苔・小麦・大豆原料でAspergillus oryzaeを使用したものとAspergillus oryzaeとAspergillus sojaeの混合品を使用したものとでは原料の配合が同じで使用菌株のみ異なるが、Aspergillus oryzaeとAspergillus sojaeの混合品を使用したもののほうが脱脂加工大豆を使用した本醸造醤油にパターンが似ていた。アミノ酸成分の構成のみで菌株の優劣の判断は困難だが、Aspergillus oryzaeのみを用いたほうが醤油とは異なる特徴のある味の調味料を製造するのに適していると考えられた。 【0051】 (2−3)ペプチド分子量分布パターン 海苔発酵食品中のペプチド分子量分布パターンは、図4のようであった。高分子から低分子まで多くのペプチドを含むことが明らかになった。 【0052】 海苔のペプチドについては、いくつか報告がなされており、その機能性についても研究が進んでいるが、麹菌を使用した分解・発酵により新たに生成するペプチドについての報告はほとんどない。しかし、原材料の麹菌による分解物中には血圧降下作用をもつ物質や抗酸化性物質が含まれると考えられる。 【0053】 (2−4)ゲルろ過によるクロマトグラフィー 海苔発酵食品(原料 海苔:小麦=1:1)の仕込み直後と15ヶ月後の上澄みをそれぞれSephacryl S-400 High Resolutionカラムにてゲルろ過を行った結果を図5に示した。 【0054】 中性糖(Hexose)およびペプチド(280nmに吸収を持つ低分子量の成分)ともに15ヵ月後に高い値を示しており、発酵熟成過程で海苔および小麦の分解が進み、その結果水に抽出される成分が増加したと考察された。また、ペプチド成分のピークは、15ヶ月経過後極大吸収の位置が遅くなり、新たなピークもより遅いフラクションに出現しており、調製直後のペプチド成分は熟成過程が長くなるにつれて分解をうけ、より低分子のペプチドに変換されていることが明らかになった。 【図面の簡単な説明】 【0055】 【図1】図1は、海苔発酵食品製造工程を示す。 【図2】図2は、製麹時の温度経過を示す。 【図3】図3は、遊離アミノ酸中の呈味成分の構成比を示す。 【図4】図4は、海苔発酵食品中のペプチド分子量分布パターンを示す。 【図5】図5は、海苔発酵食品の仕込日と15ヶ月目のSephacryl S-400 High Resolution クロマトグラフィーを示す。
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| 【出願人】 |
【識別番号】504159235 【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
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| 【出願日】 |
平成18年7月6日(2006.7.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000109 【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
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| 【公開番号】 |
特開2008−11781(P2008−11781A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月24日(2008.1.24) |
| 【出願番号】 |
特願2006−186211(P2006−186211) |
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