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【発明の名称】 そば飲料、そばエキスの製造方法、及び、そば飲料の原料の製造方法
【発明者】 【氏名】渡辺 典浩

【要約】 【課題】普通種のそばの葉や茎に由来するルチンを多く含有し、いつでも手軽に飲用できるそば飲料、そば飲料に含有させるそばエキスの製造方法、及びそば飲料の原料の製造方法を提供する。

【構成】そばエキスの製造方法は、普通種のそばの葉及び茎を3〜5mmの長さに切断する切断工程S6と、切断されたそばの葉及び茎を水分含量7〜8重量部まで乾燥させる乾燥工程S7と、乾燥されたそばの葉及び茎を焙煎する焙煎工程S8と、焙煎されたそばの葉及び茎から、95℃以上の熱水を用いてそばエキスを抽出する抽出工程S9とを具備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
普通種のそばの葉及び茎から水を溶媒として抽出されたそばエキスを含有するそば飲料。
【請求項2】
普通種のそばの葉及び茎を3〜5mmの長さに切断する切断工程と、
切断された前記そばの葉及び茎を水分含量7〜8重量部まで乾燥させる乾燥工程と、
乾燥された前記そばの葉及び茎を焙煎する焙煎工程と、
焙煎された前記そばの葉及び茎から、95℃以上の熱水を用いてそばエキスを抽出する抽出工程と
を具備することを特徴とするそばエキスの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のそば飲料の原料を製造するそば飲料の原料の製造方法であって、
普通種のそばを、
紫外線透過型の被覆材を用いたハウス内で、播種から収穫までの積算気温が少なくとも600℃となるように温度調整して育成し、
開花前に収穫してそば飲料の原料とする
ことを特徴とするそば飲料の原料の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、そば飲料、そばエキスの製造方法、及び、そば飲料の原料の製造方法に関するものであり、特に、普通種のそばを原料とするそば飲料、そば飲料に含有させるそばエキスを製造するそばエキスの製造方法、及び、そば飲料の原料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
普通種のそばは日本で広く栽培され、その実を原料としたそば麺は、古くから日本人が好んでいる食品であるが、ルチンを多く含有することから、近年では機能性食品として改めて着目されている。ここで、ルチンは、フラボノイド配糖体の一種でビタミンPとも呼ばれ、毛細血管の強化作用、血圧降下作用、抗酸化作用等を有すると言われている。
【0003】
このルチンは、実よりも葉や茎の部分に多く含まれる。そこで、最近では、発芽したそばを10〜15cm程度に成長させた新芽も、食材として生産されている。
【0004】
上記の従来技術は、公然に実施されているものであり、出願人は、この従来技術が記載された文献を、本願出願時においては知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のそばの新芽は、ルチンの他、ビタミン、ミネラル、繊維質等が豊富で健康によい食材として好まれ、例えば、サラダ、あえもの、薬味、ジュースなどとして飲食されている。しかしながら、ルチン等の成分を充分に摂取するためには、そばの新芽を大量に飲食する必要があることから、そばの葉や茎に含まれるルチン等の成分をより効率的に摂取したいという要望があった。また、新鮮な状態のものを何らかの調理を経て飲食されるそばの新芽とは別に、いつでも手軽に、そばの葉や茎に由来するルチン等の、健康に有効な成分を摂取できる飲食物が望まれていた。
【0006】
一方、ルチンを多く含有する飲料として、ダッタン種のそばの実を原料とした飲料が、「そば茶」として市販されている。しかしながら、ダッタン種のそばは、内モンゴル地区、チベット自治区、ネパール、中国雲南省等の高度2000メートル以上の山岳地帯を原産地とするものであり、生産地が限定される傾向がある。また、ダッタン種のそばは、「苦そば」とも称されるように独特の苦味を有するため、それだけでは、普通種のそばに長年慣れ親しんできた日本人の嗜好には合いにくい。
【0007】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、普通種のそばの葉や茎に由来するルチンを多く含有し、いつでも手軽に飲用できるそば飲料、そば飲料に含有させるそばエキスの製造方法、及びそば飲料の原料の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるそば飲料は、「普通種のそばの葉及び茎から水を溶媒として抽出されたそばエキスを含有する」ものである。
【0009】
そばはタデ科ソバ属の植物で、普通種、ダッタン種、宿根種に大別される。日本で古くから広く栽培されている日本そばは「普通種」に属する。
【0010】
そばの「葉及び茎」は、花芽が生成している場合にはこれを含むが、開花後の花房は含まない意で用いている。また、「そばエキス」は、そばに含まれるルチン、ビタミン、ミネラル、旨み成分、香り成分などの、種々の成分を総称して用いている。
【0011】
従って、本発明によれば、日本での栽培に適し、日本人の嗜好に合った普通種のそばを原料としたそば飲料を提供することができる。特に、味や香りにくせがなく、万人に好まれ易い飲料となる。
【0012】
更に、一般的に、普通種のそばの実に含まれるルチンは、ダッタン種のそばの実の百分の一程度であると言われており、普通種のそばの実を原料とした飲料の場合は、ダッタン種のそばの実を原料とした飲料に比べ、ルチンの含有量が極めて少ないものとなる。これに対し、本発明のそば飲料は、ルチンが多く含まれる普通種のそばの葉及び茎を原料とし、毛細血管の強化作用、血圧降下作用、抗酸化作用等を有すると言われているルチンを多く含有した、機能性に優れる飲料となる。
【0013】
加えて、そばの葉及び茎は、そばの実に比べて、ルチンだけではなく、各種のビタミンやミネラル等を豊富に含有するため、健康によい成分をバランスよく含んだ飲料となる。
【0014】
次に、本発明にかかるそばエキスの製造方法は、「普通種のそばの葉及び茎を3〜5mmの長さに切断する切断工程と、切断された前記そばの葉及び茎を水分含量7〜8重量部まで乾燥させる乾燥工程と、乾燥された前記そばの葉及び茎を焙煎する焙煎工程と、焙煎された前記そばの葉及び茎から、95℃以上の熱水を用いてそばエキスを抽出する抽出工程とを」を具備して構成されている。
【0015】
本発明によれば、上記のそば飲料に含有させるそばエキスの製造に適したそばエキスの製造方法を提供することができ、ルチンを始め、各種のビタミンやミネラル等を豊富に含有する普通種のそばの葉及び茎から、それらの成分が充分に抽出されたそばエキスを製造することができる。
【0016】
ここで、そばの葉及び茎は、粉砕すれば表面積が増大してそばエキスは抽出され易くなるものの、抽出液との分離が不十分となったりフィルタの目詰まりを生じたりする不具合が生じ易くなる。逆に、そばの葉及び茎を大きく切断すれば、取扱いは容易となるものの、そばエキスが抽出されにくくなる。これに対し、本発明では、切断工程でそばの葉及び茎を3〜5mmに切断しているため、工場での大規模な生産においても扱いが容易で、且つ、抽出工程でそばエキスが良好に抽出される。
【0017】
また、乾燥工程では、水分含量7〜8重量部まで乾燥させているため、有効成分の損失やカビの発生の恐れを減じて保存することができ、焙煎工程まで時間をおくことも可能となる。また、乾燥工程以前の工程と乾燥工程より後の工程とを、別の工場で行うことも可能となる。
【0018】
更に、抽出工程では、95℃以上の熱水という、後述のようにルチンが抽出され易い条件で行っているため、そばの葉や茎に含まれているルチンを多く含有するそばエキスを製造することができる。そして、一定の条件で抽出工程まで行って得られたそばエキスを用いて、そば飲料を製造することが可能となるため、焙煎後の葉や茎を使用して消費者が自分で抽出操作を行って飲料とする必要がなく、いつでも手軽に飲用できるそば飲料を製造することが可能となる。また、消費者が自分で抽出操作を行う場合は、その条件によってはルチン等の有効な成分が充分に抽出されないこともあり得るのに対し、本発明によれば、ルチン等の成分が充分に抽出されたそばエキスを製造し、製造されたそばエキスをもとに、品質が一定に管理されたそば飲料を製造することが容易となる。
【0019】
次に、本発明にかかるそば飲料の原料の製造方法は、「上記に記載のそば飲料の原料を製造するそば飲料の原料の製造方法であって、普通種のそばを、紫外線透過型の被覆材を用いたハウス内で、播種から収穫までの積算気温が少なくとも600℃となるように温度調整して育成し、開花前に収穫してそば飲料の原料とする」ものである。
【0020】
農業用・園芸用のハウスの被覆材として用いられるシートやフィルムでは、一般的に「農ビ」と称される塩化ビニル樹脂製のもののように、紫外線吸収剤の添加等により紫外線の透過率を抑制させたものが多用されている。これは、被覆材自体の耐候性を高めるためであり、また、胞子形成に紫外線を要するカビによる病害や、紫外線のある環境下を好む病害虫の侵入を防ぐためでもある。また、特に、葉や茎を食用とする野菜類は、紫外線の少ない環境の方が生育が良いことから、紫外線を抑制する効果のある被覆材が用いられるのが一般的である。
【0021】
これに対し、本発明では、葉や茎を収穫することを目的とするものではあるが、敢えて紫外線の透過率の高い被覆材を使用する。ここで、「紫外線透過型の被覆材」は、紫外線吸収剤を添加されていない被覆材の意であり、「農PO」と称されるポリオレフィン樹脂製のもの、「紫外線透過型農ビ」と称される塩化ビニル樹脂製のものを例示することができる。
【0022】
そばにとってのルチンは、人間の肌にとってのメラニン色素のように、紫外線の照射に対して紫外線を防御するために生成される。従って、本発明によれば、紫外線の多い環境下でそばを育成することにより、そば飲料の原料となるそばの葉や茎に、ルチンをより多く生成させることができる。
【0023】
また、一般的に、そばは冷涼な気候の下での栽培に適しているが、本発明では、播種から開花前に行われる収穫までの積算気温が、少なくとも600℃となるように、比較的高温の環境でそばを育成する。これは、そばの実の収穫が目的である場合は、冷涼な環境が望ましいのに対し、本発明では葉や茎を収穫することを目的とするからである。このような高温下で栽培することにより、葉や茎がよく成長し繁茂する。
【0024】
更に、結実すれば有効な成分が葉や茎から実の方に移行してしまうため、本発明では、開花前にそばを収穫する。平均すると、蒔種から25〜35日の短期間で、そばを収穫することができる。これにより、蒔種から収穫までのサイクルを一年に何回も繰り返すことができ、そば飲料の原料となるそばの葉及び茎を、多く収穫することができる。
【0025】
加えて、ハウス内で育成することから、温度調整がし易いものとなる。また、降雨によってそばが倒れ、葉や茎が汚れたり傷んだりすることによって、そば飲料の原料として適さないものとなることを防止できる。そして、紫外線を充分にあて、積算温度を少なくとも600℃として温度条件を揃えて栽培することにより、栽培場所や収穫時期が異なっても、そばの葉や茎に含まれるルチンの含有量の均一化を図ることができる。これにより、これらを原料として製造されるそば飲料のルチンの含有量を一定とし、品質を一定化するよう管理することが容易なものとなる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の効果として、普通種のそばの葉や茎に由来するルチンを多く含有し、いつでも手軽に飲用できるそば飲料、そば飲料に含有させるそばエキスの製造方法、及びそば飲料の原料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の最良の一実施形態であるそば飲料、そば飲料に含有させるそばエキスの製造方法、及びそば飲料の原料の製造方法(以下、単に「原料製造方法」という)について、図1乃至図4に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の原料製造方法及びそばエキスの製造方法における工程の流れを示す工程図であり、図2は焙煎後のそばの葉及び茎の成分分析結果を普通種のそば粉の成分と対比させた表であり、図3は抽出温度とルチンの濃度との関係を示すグラフであり、図4は本実施形態のそば飲料のルチン濃度を市販のそば茶と対比させた表である。
【0028】
まず、本実施形態の原料製造方法について説明する。本実施形態の原料製造方法は、紫外線の透過率の高い「紫外線透過型農ビ」と称される塩化ビニル樹脂製の被覆材を使用したハウス内で実施している。また、実施時期は、4月上旬から11月中旬が適しているが、温度や光の調整を行うことにより、それ以外の時期においても可能である。
【0029】
原料製造方法は、図1に示すように、播種工程S1と、育成工程S2と、収穫工程S3とを具備して構成されている。播種工程S1では、風通しを考慮し、約10cm間隔の条播を行う。このとき、播種量は35〜45g/mが適している。また、本実施形態では、窒素肥料約0.005kg/m、リン酸肥料約0.01kg/m、カリウム肥料約0.105kg/mによる施肥を行っている。播種されたそばは、約10日で発芽し、茎を分枝させながら成長するが、葉や茎が充分に成長するよう、播種から花芽が生成するまでの積算気温が少なくとも600℃となるよう、温度を調整して育成する(育成工程S2)。なお、そばは短日植物であるので、栽培時期によっては、葉や茎が充分成長しない内に花芽が生成してしまうため、適宜日長の制御を行うと良い。
【0030】
その後、花芽が生成し始めた段階で収穫を行う(収穫工程S3)。これは、花芽の生成以降は、葉や茎が成長する栄養成長に対して、開花・結実のための生殖成長が主体となり、機能性を有する有効な成分が葉や茎から花の方へ移行してしまうためである。なお、茎の下部は赤味を帯びており、ここにはアントシアニンが多く含まれている。アントシアニンは、抗酸化作用や血圧降下作用を有すると言われている。そのため、なるべく茎の根元部分で刈り取るのが望ましい。
【0031】
次に、そばエキスの製造方法について、同じく図1を用いて説明する。まず、上記のように収穫された原料(そばの葉及び茎)を水洗し(水洗工程S4)、脱水を行う(脱水工程S5)。その後、そばの葉及び茎を3〜5mmに切断する(切断工程S6)。この長さは、後の抽出工程S9で抽出液との分離が不十分となったりフィルタの目詰まりを生じたりする不具合が生じない程度に、なるべくそばエキスの抽出が良好となるように設定されており、工場での大規模生産に適したものとなっている。
【0032】
次に、切断されたそばの葉及び茎を、約60℃で約16時間、圧力980hPaで、水分含量が7〜8重量部となるまで減圧乾燥する(乾燥工程S7)。このとき、本実施形態では、水分含量の測定を赤外線水分計を使用して行っている。このように、水分含量が7〜8重量部となるまで乾燥させることにより、有効成分の損失やカビの発生の恐れを減じて保存することができるため、乾燥工程S7まで行ったそばの葉及び茎をこの状態で保存することや、これより後の工程を別の工場で行うことが可能となる。
【0033】
次に、約90℃で約8分間焙煎を行う(焙煎工程S8)。この焙煎温度は、そばの有する味や香りが充分に引き出され、且つ、焦げ臭がしない程度に香ばしくなるよう設定されている。なお、焙煎後の水分含有量は、4〜5重量部となる。ここで、焙煎後のそばの葉及び茎の成分分析結果を、普通種のそばの実と対比させた表を、図2に示す。表から分かるように、普通種のそばの葉及び茎には、普通種のそばの実(そば粉)に比べて、ビタミン等が多く含まれている。
【0034】
その後、焙煎された葉及び茎に対し、質量比で30倍の水を使用し、そばエキスの抽出を行う(抽出工程S9)。例えば、焙煎されたそばの葉及び茎15kgに対し、450kgの水で抽出操作を行う。このとき、抽出温度は95〜98℃としている。これは、図3に示した予備的な実験において、温度が高いほどルチンが多く抽出され、沸騰水を使用した場合に最もルチンが多く抽出された結果による。実際に工場で大規模生産する場合は、水が沸騰して蒸気となるのは不都合であるため、本実施形態では、上記のように抽出温度を95〜98℃としている。
【0035】
ここで、図3に示した予備的な実験は、焙煎後のそばの葉及び茎を粉砕した試料2.5gから水500mlに抽出されたルチンを、高速液体クロマトグラフ法で測定したものである。なお、この実験では、本実施形態の切断工程S6とは異なり、そばの葉及び茎を粉砕しているため、抽出されるルチンの濃度は、本実施形態よりも大きなものとなる。
【0036】
なお、高速液体クロマトグラフ法によるルチンの濃度測定は、システムコントローラ(島津製作所製、SCL−6B)、インジェクタ(島津製作所製、SIL−6B)、ポンプ(島津製作所製、LC−6AD)、検出器(島津製作所製、SPD−6AV)、データ処理装置(島津製作所製、クロマトパックC−R7A)で構成されたシステムにより、移動相0.05mol/l HCOOH:CHCN=80:20、流速0.8ml/min、測定波長260nmの条件で行った。
【0037】
上記の抽出工程S9により、茶色がかった透明な黄色の抽出液が得られる。この抽出液は濃厚であるので、味及び製造コストを考慮し、本実施形態では、抽出原料である焙煎後のそばの葉及び茎に対し質量比で200倍となるように水で希釈して、密閉容器に充填し封入している(充填工程S10)。本実施形態のそば飲料は、くせのない万人に好まれ易い味であることから、ダッタン種のそばの実を原料としたそば茶のように、緑茶、ウーロン茶、大豆粉末等を添加して味を調整する必要はなく、そばエキスを水で希釈したのみでそば飲料とし、密閉容器への充填を行っている。
【0038】
このそば飲料のルチンの含有量を、上記と同様の方法により高速液体クロマトグラフ法で測定したところ、35.7mg/lであった。ここで、ダッタン種のそばの実を主原料とし、「そば茶」として市販されている製品におけるルチン含有量を、本実施形態のそば飲料中のルチン含有量と対比した表を図4に示す。
【0039】
図4に示したように、ダッタン種のそばの実を原料としたそば茶は、36〜100mg/lのルチンを含有している。ここで、一般的に、普通種のそばの実に含まれるルチンは、ダッタン種のそばの実に含まれるルチンの含有量の百分の一程度であると言われているため、普通種のそばの実を原料とした場合のルチンの濃度は、ダッタン種のそばの実を原料とした飲料の百分の一程度の極めて小さいものとなると考えられる。これに対し、本実施形態のそば飲料は、ダッタン種のそばの実を原料とするそば茶と、同オーダーの濃度でルチンを含有しており、実ではなく葉や茎を原料とすることにより、普通種のそばを原料としても、ルチンの濃度の高いそば飲料が製造された。
【0040】
なお、上記のように、普通種のそばの葉及び茎から抽出されたそばエキスを水で希釈したのみで、味や風味に優れ、ルチンも多く含有するそば飲料を製造できるのであるが、他の材料を混合してそば飲料とすることを妨げるものではない。例えば、上記のそば飲料の原料の製造方法と同様の方法で、ダッタン種のそばの葉及び茎を収穫し、適宜の条件で切断し乾燥し焙煎する。そして、焙煎後のダッタンそばの葉及び茎を、上記の乾燥工程S7を経て得られた普通種のそばの葉及び茎と適宜ブレンドし、この混合物からそばエキスを抽出し、水で希釈してそば飲料とすることができる。その場合は、ダッタン種のそばによってそば飲料の味や風味が損なわれることがないよう、普通種のそばダッタン種のそばとの混合比を調整する必要がある。例えば、混合物の全量に対するダッタン種の割合を5〜30重量部とすることにより、普通種のそばによって日本人に好まれやすい味や風味を発揮させ、ダッタン種のそばによってルチンの含有量を増加させることが可能となる。
【0041】
次に、本実施形態のそば飲料が血圧に及ぼす影響を、ラットを使用して検討した結果を示す。実験は、4週齢のSHR高血圧自然発症ラット12匹、及び正常血圧ラット12匹を、それぞれ半数ずつの実験群及び対照群に分け、実験群には本実施形態のそば飲料を、対照群には蒸留水を自然摂取させて行った。なお、食餌については、両群に共通のものを自然摂取させた。
【0042】
両群のラットについて、1週間おきに血圧の測定を行った結果、SHR高血圧自然発症ラットでは、蒸留水を摂取させた対照群に比べ、本実施形態のそば飲料を摂取させた実験群は、徐々に血圧が降下する傾向が見られた。この結果から、本実施形態のそば飲料は、血圧を降下させる医薬品のように即効性のあるものではないが、穏やかな作用でゆるやかに血圧を正常化する効果を有すると考えられた。
【0043】
また、そばは、食物アレルギーを誘発する可能性が高いとして、平成14年の食品衛生法関連法規の改定により、由来するタンパク質が所定値以上の場合に表示が義務付けられた特定原材料5品目(卵・乳・小麦・そば・落花生)に含まれる。そこで、(a)Bradford法によるタンパク質の定量、(b)そばアレルギー患者の血清との反応試験、(c)FASTKITエライザVer.2(日本ハム社製)によるタンパク質の検出実験を行った。
【0044】
(a)及び(b)は、本実施形態のそば飲料の原料であるそばの葉及び茎(以下、単に「そば葉茎」という)の乾燥後の粉末、及び対照例としてのそば粉(そばの実の粉砕物)について、Coca液(塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム)、及びPBS(塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸−水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム)のそれぞれに一晩浸漬して振盪し、13000回転で30分遠心分離後、濾別して得た抽出液を試料として、検討を行った。
【0045】
その結果、(a)対照例の「そば粉」については、Coca液抽出液で6.1mg/ml、PBS抽出液で2.3mg/mlのタンパク質が検出されたのに対し、「そば葉茎」については、Coca液抽出及びPBS抽出ともに、色素が発色を妨げると共に測定限界以下の値であった。
【0046】
(b)「そば葉茎」及び「そば粉」のCoca液抽出液及びPBS抽出液について、それぞれ4〜20%のゲルを用いて電気泳動させ、タンパク質を分子量によって分離させた後、分離されたゲル上のタンパク質をメンブレン上に転写し、二人のそばアレルギー患者(3歳男児及び8歳男児、共にそばIgE RAST5)の血清と反応させた。その結果、反応したタンパク質の種類には相違があったが、何れの看者の血清も、「そば粉」試料とは強い反応を示したのに対し、「そば葉茎」試料との反応は弱いものであった。
【0047】
(c)本実施形態のそば飲料、及び「そば葉茎」の乾燥後の粉末のエライザキット抽出液について、酵素免疫測定法(ELISA法)によるタンパク質の検出を行った。その結果、「そば葉茎」の粉砕試料には約4.5μg/gのタンパク質が検出され、「そば葉茎」をそのまま食するとしても、アレルギーを誘発する可能性が低い「微量原材料」と判断される「数μg/g濃度レベル未満」という基準の近傍の値であった。一方、本実施形態のそば飲料からは、タンパク質は検出されなかった。
【0048】
以上の結果により、アレルギーを誘発する恐れがあるタンパク質の含有量は、本実施形態のそば飲料では極めて小さいと考えられた。そのため、従来では、そばアレルギー患者が、そば茶をそれと知らずに飲用して重篤な症状に陥った例もあったが、本実施形態のそば飲料の場合は、そのような恐れは著しく低減されると考えられる。
【0049】
上記のように、本実施形態のそば飲料の原料の製造方法、及びそばエキスの製造方法によれば、日本での栽培に適した普通種のそばを原料とし、日本人の嗜好に合いやすいそば飲料を製造することができる。また、普通種のそばは、ダッタン種に比べてルチンの含有量が少ないと言われているが、ダッタン種のそばの実を原料とした市販のそば茶と同程度にルチンを含有するそば飲料が製造された。
【0050】
特に、本実施形態では、紫外線の透過率の高い被覆材を用いたハウス内で、播種から収穫までの積算気温が少なくとも600℃となるように、比較的高温に温度調整してそばを育成しているため、そばの葉や茎にルチンが多く生成すると共に、そばの葉や茎が繁茂し、そば飲料の原料となるそばの葉や茎を多く収穫することができる。
【0051】
加えて、紫外線を充分にあて、温度条件を揃えてそばを育成することにより、栽培場所や収穫時期の異なるそばの葉や茎に含まれるルチンの含有量の均一化を図ることができ、製造されるそば飲料の品質を一定化することが容易なものとなる。
【0052】
更に、抽出工程までを終えてそばエキスを製造し、これをもとにそば飲料としているため、消費者が自分で抽出操作を行う必要がなく、いつでも手軽に飲用することができるそば飲料となる。また、焙煎後の葉や茎を使用して消費者が自分で抽出操作を行う場合に比べ、ルチン等の成分が充分に抽出されたそば飲料となる。
【0053】
また、本実施形態のそば飲料は、血圧降下作用を有すると言われるルチンを多く含有し、実際に血圧を正常化する作用を有すると考えられた。加えて、ルチンの他、ビタミンやミネラルを多く含有し、健康の維持や病気の予防に役立つ機能性に優れた飲料であると期待される。更に、本実施形態のそば飲料は、そばタンパク質の含有量も極めて少なく、そばの実を原料とした場合に比べ、そばアレルギーを誘発する恐れが低減されると考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態のそば飲料の原料の製造方法及びそばエキスの製造方法における工程の流れを示す工程図である。
【図2】焙煎後のそばの葉及び茎の成分分析結果を普通種のそば粉の成分と対比させた表である。
【図3】抽出温度とルチンの濃度との関係を示すグラフである。
【図4】本実施形態のそば飲料のルチン濃度を市販のそば茶と対比させた表である。
【符号の説明】
【0055】
S1 播種工程
S2 育成工程
S3 収穫工程
S4 水洗工程
S5 脱水工程
S6 切断工程
S7 乾燥工程
S8 焙煎工程
S9 抽出工程
S10 充填工程
【出願人】 【識別番号】301078870
【氏名又は名称】株式会社 日本ライン促成
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次

【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代


【公開番号】 特開2008−11759(P2008−11759A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185389(P2006−185389)