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【発明の名称】 フルーツチョコレートの製造方法
【発明者】 【氏名】大谷 七帆子

【要約】 【課題】添加物をほとんど使用せず、チョコレートと天然果実とを渾然一体となった状態で硬化でき、かつ適度なやわらかさと果実の清涼感、フレッシュ感を有したフルーツチョコレート塊を製造する方法を提供する。

【構成】生の果肉、果汁を加熱して生成した果実ペースト液2を、細断された原料チョコレート1に混合して攪拌し、さらにバター3を付加して攪拌した後、攪拌した混合物4を、10℃より高く20℃より低い温度雰囲気中で10〜24時間静置させて、硬化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生の果肉、果汁を加熱して生成した果実ペースト液を、細断された原料チョコレートに混合して攪拌し、さらにバターを付加して攪拌した後、攪拌した混合物を、10℃より高く20℃より低い温度雰囲気中で10〜24時間静置させて、硬化させることを特徴とするフルーツチョコレート塊の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記原料チョコレートの重量に対する上記果肉、果汁の重量比を30〜60%としたことを特徴とするフルーツチョコレート塊の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で製造したフルーツチョコレート塊を所定サイズに切断して、その切断塊を加熱溶融させたチョコレート液に浸して、チョコレート外殻を形成することを特徴とするフルーツチョコレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレートと果実とを混合させたフルーツチョコレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、その製造時に含水量の高いものを配合すると、固化、成形できない。そのため、水分を多く含む果実をチョコレートに配合することは技術的に困難とされており、チョコレートと天然果実を渾然一体に混ぜ合わせ加工したフルーツチョコレートは従来にはなく、果実入りチョコレートといっても、乾燥果実粉砕物、果実粉末、果実リキュールなどを含ませた、フルーツ風味チョコレートがほとんどであった。
【0003】
例えば、果実リキュールを含むフルーツ風味チョコレートは、まず原料チョコレートにカカオバター、生クリーム、果実リキュール、水あめなどを混合してガナッシュクリームを作っておき、それをひと口サイズのチョコレート殻に入れて製造することができ、このガナッシュクリームはそれだけでもフルーツ風味を有しているが、生クリームや果実リキュールなどには多くの水分が含まれているため、チョコレートと乳化しにくく完全には固化しない。そのため、成形製品にはなりえない。
【0004】
そこで、成形化するために、この果実リキュールを含んだガナッシュクリームをチョコレート外殻で包むものが存在している。図4には、その製造工程を示している。
【0005】
図示するように、このフルーツ風味チョコレートは、加熱溶融したチョコレート液100を、複数のひと口サイズの成型穴111を有した型110に流し込んだ後(図4(a)参照)、型110を裏返す(図4(b)参照)などして流し込んだチョコレート液110のほとんどを取り除いて、成型穴111内に付着したチョコレートのみを外殻100aとして残し、チョコレート100aが残存付着した成型穴111に、上記ガナッシュクリーム101を注入し(図4(c)参照)、その上からさらにチョコレート液100で蓋をして固めて成形される。
【0006】
一般に、加熱溶融させたチョコレート液に浸してチョコレートの外殻を形成する方法があるが、果実リキュール入りガナッシュクリーム101には定形性がないため、そのような方法で外殻を形成させることは不可能であり、図4に示すように、先に外殻100aを作ってから、そこにガナッシュクリーム101を流し込むという方法しか採れない。
【0007】
また、このような製造方法で製造すると、外殻100aは厚くなりがちで、厚く硬めに形成された外殻100aを噛み砕かないと、やわらかな口当たりのフルーツ風味のガナッシュクリーム101を味わうことはできない。もちろん、外殻100aで包まれたガナッシュクリーム101は、果実の風味と生クリームによるしっとりとしたやわらかさはあっても、生の果実を使用していないため果実本来の清涼感、フレッシュ感はほとんどない。
【0008】
更に、乾燥果実粉砕物、果実粉末などを配合した果実入りチョコレートでは、果実粉末等とチョコレートの油脂成分とが均一に混合しにくいため、製造されたチョコレートはチョコレート特有のなめらかさはなく、ざらついた食感となる。また、乾燥果実は、その乾燥工程において風味を損なうおそれもある。特許文献1には、果汁粉末を配合したチョコレートが記載されている。
【特許文献1】特開平5−304892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、従来のフルーツチョコレートはリキュール、粉末などの加工果実を混合したものがほとんどであるため、生の果実を使用し、かつチョコレートと生の果実が渾然一体に混合されるようなフルーツチョコレートを製造する方法が望まれていた。
【0010】
また、乳化剤によってチョコレートと生の果実を乳化させて、固化、成形することもできるが、そのようなものでは、投入する乳化剤によって果実の清涼感、フレッシュ感は損なわれ、また、添加物のなるべく少ないチョコレートからもほど遠いものとなる。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮し、チョコレート製造現場に永く携わってきた本発明者が試行錯誤を繰り返し、鋭意検討した結果、到達し提案されたもので、その目的は、添加物をほとんど使用せず、チョコレートと天然果実とを渾然一体化させた状態で硬化でき、適度なやわらかさと果実の清涼感、フレッシュ感を有したフルーツチョコレートを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のフルーツチョコレート塊の製造方法は、生の果肉、果汁を加熱して生成した果実ペースト液を、細断された原料チョコレートに混合して攪拌し、さらにバターを付加して攪拌した後、攪拌した混合物を、10℃より高く20℃より低い温度雰囲気中で10〜24時間静置させている。
本発明者によれば、10℃以下であっても、攪拌した混合物が結晶化されず、カードルを取り除いても型崩れすることなく硬化できればよいが、攪拌した混合物を静置する環境温度によって、静置時間は10〜24時間の間で変動する。
また、環境温度や環境湿度をコントロールし、チョコレート混合物4の水分率を精細に制御することができれば、12時間の静置よりも早い処理も可能である。
【0013】
請求項2では、原料チョコレートの重量に対する果肉、果汁の重量比を30〜60%としたことを特徴としている。
【0014】
請求項3では、請求項1または2で製造したフルーツチョコレート塊を所定サイズに切断して、その切断塊を加熱溶融させたチョコレート液に浸して、チョコレート外殻を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の本発明方法によれば、原料チョコレートと果実ペースト液とを混ぜ合わせた後、10℃〜15℃の温度雰囲気中で12〜24時間静置させることで硬化させて、チョコレート塊を生成することができた。その結果、製造されたフルーツチョコレート塊は、乳化剤などの添加物を含まず、チョコレートと果実とが渾然一体となった製品となり、従来では味わえない果実に富んだ風味とまろやかさを有したものとなった。
【0016】
この製造方法では、原料チョコレートと果実ペースト液とが添加物を使用せずに乳化されるため、製造されたチョコレートはチョコレート特有のなめらかさを有している。また、製造されたチョコレートは自然な状態で、内容物を乾燥させずに型崩れもなく塊状に硬化され、そのまま塊状の、あるいはひと口サイズに切断した製品にできる。
もちろん、生の天然果実を使用しているため、果実の清涼感、フレッシュ感を味わうことができ、果実水分により口当たりがやわらかく、口どけもよい。
【0017】
請求項2に記載の本発明方法によれば、原料チョコレートの重量に対する果肉、果汁の重量比を30〜60%としているため、より清涼感のあるみずみずしいフルーツチョコレートを製造できる。
【0018】
請求項3に記載の本発明方法は、上記方法で製造されたフルーツチョコレート塊を、所定サイズに切断して、その切断塊を加熱溶融させたチョコレート液(テンパリング液)に浸してチョコレート外殻を形成するようにしている。フルーツチョコレート塊をチョコレート外殻で包み込むので、チョコレート塊をフレッシュな状態に保持でき、冷蔵庫や冷所に静置しておけば、ある程度の日持ち、保存も可能である。また、テンパリング液をコーティングする手法であるため、フルーツチョコレートの表面を、つやと軽い歯ごたえのある薄表皮に形成できる。更に、外のチョコレート殻と中のフルーツチョコレート塊とで、2種類の味を楽しむことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面とともに説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明のフルーツチョコレート製造方法の工程を示したフローチャートである。図2(a)は攪拌工程の説明図、(b)は成形工程の説明図である。本発明方法では、原料チョコレートおよび果実原料などを、料理店などで使用されるフードプロセッサに投入して攪拌する。なお、フードプロセッサは業務用に限らず、家庭用のものでもよく、原料の重量に応じたサイズのものを使用すればよい。
【0021】
原料チョコレートとして、市販されている種々のものが使用できるが、カカオバター含有率の高く純粋なクーベルチュールチョコレート(最高級製菓用チョコレート)を使用することが望ましい。チョコレートの種類としては、スイート、ミルク、ダーク、ホワイトのいずれでもよく、またこれらを混合したものを使用してもよい。
また、天然果実原料も、限定されないが、ラズベリー、パッションフルーツ、ココナッツ、マンゴー、パパイヤ、イチゴ、オレンジ、メロンなどは製造が容易である。
【0022】
原料チョコレートと果実原料との重量比は、例えば約2対1とする。原料チョコレートに対し30〜60%程度の果実を混合すれば、果実水分を多く含んだやわらかいフルーツチョコレートを製造することができ、果実の配合量がそれより少ない場合には、チョコレート風味が果実よりも優るが、この重量比には限定されず、さらに多く含んでもよいし、少なくてしてもよい。
【0023】
より具体的な例で説明すると、まず、約200gの上記原料チョコレート1を細かく切断し、それをフードプロセッサ20に入れておき、次に、約100gの生の状態の上記天然果実の果肉、果汁を加熱、沸騰させてペースト状にした果実ペースト液2を、原料チョコレート1を入れたフードプロセッサ20に投入し、攪拌混合する(ステップS1)。
フードプロセッサ20で攪拌すると、加熱された果実ペースト液2の熱で原料チョコレート1も溶融し、全体がペースト状となって、2つの原料は原料の区別がつかない程度に混じり合う。
【0024】
約1分間、攪拌した後、常温で放置しておいた約40gのバター3を投入し、さらに約30秒間、攪拌する(ステップS2)。
原料を確実に混合させる程度の攪拌時間が必要で、攪拌しすぎると分離するなど混合状態がかえって悪くなることもあるため、バター3投入前で30秒〜3分、投入後には30秒〜2分程度とすることが望ましい。
【0025】
このバター3は、製品チョコレートに風味を加えるとともに、原料のつなぎとしても有効に作用する。
バター3とともにトリモリン(水あめ)(不図示)などの転化糖を加えてもよい。この転化糖によって、砂糖の結晶化を防止し、製品チョコレートをよりしっとりとさせることができる。
【0026】
攪拌を止め、プロセッサ20内のペースト状のチョコレート混合液4を、シルパット21を敷いた矩形状のカードル(型枠)22に流し込み、表面を平らにし、その状態で、湿度50%以下において、10〜15℃の温度雰囲気中で12〜24時間静置させる(ステップS3)。
そうすると、時間が経過するにしたがいペースト状のチョコレート混合物4はゆっくりと乳化が進み、弾力を有したやわらかい状態で硬化し、カードル22を取り除いても型崩れすることなく、矩形の塊状に成形することができる。このフルーツチョコレート塊10は定形性があるため、その状態で商品として流通し、販売も可能である。
静置する時間を12時間より短くすると硬化が十分には進まず、24時間より長くすると水分率が低下しすぎて結晶化するおそれもあるため、上記時間の範囲で静置することで製品をより良い状態に仕上げられることを、本発明者は見出している。しかしながら、環境温度や環境湿度をコントロールし、チョコレート混合物4の水分率を精細に制御することができれば、12時間の静置よりも早い処理も可能なことはいうまでもない。
【0027】
本発明では、以上のようにして製造したチョコレート塊10を、所定の湿度(60%以下、望ましくは50%以下)、温度環境(10〜20℃未満、望ましくは10℃〜15℃)で所定時間静置して硬化、固化させることが重要であり、これが、本発明者が永年の検討、研究の結果、知得した新規な手法である。
このような手法によって、乳化剤を使用することなく、原料チョコレート1と果実ペースト液2とが渾然一体となるよう乳化でき、その結果、チョコレート特有のなめらかさを有した、定形性のあるフルーツチョコレート塊10を製造することができる。
【0028】
また、生の果実を加熱して生成した果実ペースト液2を使用しているため、果実の清涼感、フレッシュ感を有し、果実水分により口当たりがやわらかく、口どけのよいフルーツチョコレート塊10を製造することができる。
【0029】
もちろん、フルーツチョコレート塊10を例えばひと口サイズに切断してもよく、更に、その切断したひと口サイズのチョコレート塊を、加熱溶融させたチョコレート液に浸すことによってチョコレート外殻で包み込ませてもよい。
【0030】
図3にはチョコレート外殻付きのフルーツチョコレートの製造工程を示しており、(a)は切り込みを入れた板状のフルーツチョコレート塊、(b)は切断工程、(c)は外殻形成工程のそれぞれを示している。なお、図中の23は切り込み線、24はナイフ、25は加熱溶融したチョコレート液5を入れた鍋、26はチョコレートフォークである。
【0031】
図1の方法によって製造されたフルーツチョコレート10は定形性があり、ナイフ24で切断しても型崩れすることがないため、図3に示すように、ひと口サイズに切断した後で、そのまわりに外殻を形成することができる。外殻は、加熱溶融したチョコレート液5(テンパリング液)に浸し、そのチョコレート液5でコーティングさせて形成するため、外殻を薄くかつ軽い歯ごたえ感のある状態に形成できる。
【0032】
以上では、カードル22を用いて板状のチョコレート塊10に硬化する例を示しているが、硬化が進行中の、ある程度やわらかいチョコレート混合物4を絞り袋に(不図示)入れて、絞り袋を絞って粒状のフルーツチョコレートを生成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のフルーツチョコレート製造方法の工程を示したフローチャート。
【図2】(a)は攪拌工程説明図、(b)は成形工程説明図。
【図3】(a)は製造された板状のチョコレート塊の斜視図、(b)切断工程説明図、(c)は外殻形成工程説明図。
【図4】従来のフルーツ風味チョコレートの製造方法を示す図。(a)は型へのチョコレート液の流し込み、(b)チョコレート液の除去、(c)ガナッシュクリーム注入の各状態を示す図。
【符号の説明】
【0034】
10 フルーツチョコレート塊
11 チョコレート外殻付きのひと口サイズフルーツチョコレート
1 原料チョコレート
2 果実ペースト液
3 バター
4 チョコレート混合液(物)
5 外殻用のチョコレート液
20 フードプロセッサ
【出願人】 【識別番号】506234620
【氏名又は名称】大谷 七帆子
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】 【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行


【公開番号】 特開2008−11821(P2008−11821A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188572(P2006−188572)