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【発明の名称】 コーヒー飲料
【発明者】 【氏名】北川 剛司

【氏名】澤本 武

【氏名】松本 浩治

【要約】 【課題】生豆換算で7.8〜13質量%のコーヒー抽出液及び乳成分を含有するコーヒー飲料であって、白色浮遊物の発生および耐熱性フラットサワー菌による品質劣化が抑制されたコーヒー飲料を提供することを目的とする。

【解決手段】生豆換算で7.8〜13質量%のコーヒー抽出液及び乳成分を含有するコーヒー飲料であって、下記のA成分と、B成及び/又はC成分とを含有することを特徴とするコーヒー飲料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生豆換算で7.8〜13質量%のコーヒー抽出液及び乳成分を含有するコーヒー飲料であって、下記のA成分と、B成及び/又はC成分とを含有することを特徴とするコーヒー飲料。
A成分:(i)トリグリセリン脂肪酸エステル100質量%中、遊離のポリオールの含有量が10質量%未満、モノエステル体の含有量が35質量%以上50質量%未満であるトリグリセリン脂肪酸エステル及び(ii)グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、及び(iii)ショ糖ステアリン酸エステル100質量%中のモノエステル体の含有量が52質量%以上であるショ糖ステアリン酸エステル;
B成分:ショ糖パルミチン酸エステル100質量%中、モノエステル体の含有量が70質量%以上であるショ糖パルミチン酸エステル;
C成分:トリグリセリン脂肪酸エステル100質量%中、モノエステル体の含有量が50質量%以上であるトリグリセリン脂肪酸エステル。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は乳成分を含有するコーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
乳成分を含有するコーヒー飲料では、従来、保存中に乳成分が凝集して白色浮遊物が発生するいわゆるネックリングの問題や、該飲料をホットベンダーなどで加温販売する場合において耐熱性フラットサワー菌芽胞の発芽・増殖による品質劣化が生じるなどの問題があった。
【0003】
このような問題を解決する手段として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステルなどを組み合わせて添加したコーヒー飲料が、数多く提案されている。
【0004】
それらは、例えば、(A)ジグリセリン脂肪酸モノエステルと、(B)グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、HLB3〜16のポリグリセリン脂肪酸エステルおよびHLB3〜16のショ糖脂肪酸エステルから成る群から選ばれた少なくとも一つの乳化剤とが含有されており、且つ前記ジグリセリン脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸の組成が、ミリスチン酸および/またはパルミチン酸の合計量が70質量%以上であり、しかもモノエステルの含有量が70質量%以上のジグリセリン脂肪酸モノエステルであることを特徴とする乳成分含有飲料(特許文献1参照)、コーヒー水性抽出液、乳成分、甘味料からなるコーヒー飲料にショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルを配合することを特徴とする安定なコーヒー飲料(特許文献2参照)、コーヒー水性抽出液、乳成分、甘味料からなるコーヒー飲料にポリグリセリン脂肪酸エステルとクエン酸モノグリセライドを配合することを特徴とする安定なコーヒー飲料(特許文献3参照)、油脂を含有する密封容器入飲料であって、乳化剤として蔗糖脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドが含有されていることを特徴とする密封容器入飲料(特許文献4参照)、コーヒー生豆換算で7.5〜10重量部のコーヒー分を含む缶コーヒーに、HLB15〜16の蔗糖脂肪酸エステルとHLB3〜7の乳化剤を組み合わせ、その平均HLBが13.3〜14.4である乳化剤を添加する事を特徴とする乳入り缶コーヒーの沈殿防止方法(特許文献5参照)、生豆換算で5〜10gのコーヒー抽出液を含有する原料液中にジグリセリン脂肪酸エステル及びHLB3〜11の蔗糖脂肪酸エステルを含有させる方法(特許文献6参照)などである。
【0005】
一方、近年、原料のコーヒー豆を比較的多く使用することでコーヒーの風味をより強調したコーヒー飲料が好まれる傾向にあり、これにより乳化状態を良好に保つことがより困難になってきている。しかしながら、上記技術はいずれも、このようなコーヒー飲料について、白色浮遊物の発生の問題および耐熱性フラットサワー菌芽胞の発芽・増殖による品質劣化の問題を実用上十分に解決するものではない。
【特許文献1】特開平10−165151号公報
【特許文献2】特開昭62−215345号公報
【特許文献3】特開昭63−105640号公報
【特許文献4】特開平2−16959号公報
【特許文献5】特開平8−228686号公報
【特許文献6】特開2002−262773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生豆換算で7.8〜13質量%のコーヒー抽出液及び乳成分を含有するコーヒー飲料であって、白色浮遊物の発生および耐熱性フラットサワー菌による品質劣化が抑制されたコーヒー飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、遊離のポリオールの含有量が10質量%未満およびモノエステル体の含有量が35質量%以上50質量%未満であるトリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びモノエステル体の含有量が52質量%以上であるショ糖ステアリン酸エステルと、モノエステル体の含有量が70質量%以上であるショ糖パルミチン酸エステル及び/又はモノエステル体の含有量が50質量%以上であるトリグリセリン脂肪酸エステルを使用することにより、目的とするコーヒー飲料が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、下記からなっている。
生豆換算で7.8〜13質量%のコーヒー抽出液及び乳成分を含有するコーヒー飲料であって、下記のA成分と、B成及び/又はC成分とを含有することを特徴とするコーヒー飲料。
A成分:(i)トリグリセリン脂肪酸エステル100質量%中、遊離のポリオールの含有量が10質量%未満、モノエステル体の含有量が35質量%以上50質量%未満であるトリグリセリン脂肪酸エステル及び(ii)グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、及び(iii)ショ糖ステアリン酸エステル100質量%中のモノエステル体の含有量が52質量%以上であるショ糖ステアリン酸エステル;
B成分:ショ糖パルミチン酸エステル100質量%中、モノエステル体の含有量が70質量%以上であるショ糖パルミチン酸エステル;
C成分:トリグリセリン脂肪酸エステル100質量%中、モノエステル体の含有量が50質量%以上であるトリグリセリン脂肪酸エステル。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコーヒー飲料は、生豆換算で7.8〜13質量%のコーヒー抽出液を含有するものであっても、約55℃で約4週間保存した後に、乳成分由来の白色浮遊物が発生せず、耐熱性フラットサワー菌による品質劣化が抑制されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のコーヒー飲料は、生豆換算で7.8〜13質量%のコーヒー抽出液、及び、例えば牛乳または山羊乳などに含まれる乳成分、即ち乳脂肪および/または無脂乳固形分を含有する飲料を指し、具体的には、例えばコーヒー乳飲料、ミルクコーヒー、カフェオレ、カフェラテなどが挙げられる。
【0010】
本発明のコーヒー飲料に含有される「生豆換算で7.8〜13質量%のコーヒー抽出液」は、該コーヒー飲料100質量%を作製するために使用されるコーヒー生豆の量が7.8〜13質量%のものをいう。なお、生豆換算は、『缶・びん詰・レトルト食品・飲料 製造講義 各論編』(日本缶詰協会)の記載に準じ、焙煎コーヒー豆1gはコーヒー生豆1.3gに相当するものとして行う。
【0011】
本発明に使用されるコーヒー抽出液の調製に用いられるコーヒー豆の種類としては、特に制限はなく、例えばアラビカ種、ロブスタ種等が挙げられる。これらコーヒー豆は、一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。また、コーヒー抽出液の調製では、コーヒー豆の焙煎の方法、焙煎度、コーヒー液の抽出方法などに特に制限はなく、常法に従って調製することができる。
【0012】
上記無脂乳固形分とは乳脂肪以外の乳固形分を指し、具体的には、例えばカゼイン、ホエイ蛋白質(β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミンなど)などの蛋白質、乳糖などの糖質、カリウム、ナトリウム、カルシウム、リンおよび塩素などの無機質、ビタミンB1、ビタミンB2、ニコチン酸、ビタミンB6およびパントテン酸などの水溶性ビタミン類などが挙げられる。また、上記無脂乳固形分を含有する物質としては、例えば牛乳、牛乳を遠心分離して得られるクリーム類、ヨーグルトなどの発酵乳、加糖れん乳、無糖れん乳、濃縮乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダーおよびバターミルクパウダーなどの粉乳類、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、ホエイチーズ、濃縮ホエイおよびカゼインナトリウムなどが挙げられる。
【0013】
本発明のコーヒー飲料における乳成分の含量は、飲料の種類、嗜好などにより異なり一様ではないが、通常乳固形分に換算して約0.4〜7.0質量%、好ましくは約0.8〜3.0質量%である。
【0014】
本発明の乳成分含有飲料は、下記のA成分と、B成分および/またはC成分とを含有することを特徴とするものである。
【0015】
A成分
本発明でA成分として用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルは、トリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応など自体公知の方法で製造される。
A成分として用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるトリグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸またはアルカリ(例えば、水酸化ナトリウムなど)を触媒として添加し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180〜260℃の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が約2.5〜3.4、好ましくは平均重合度が約3.0のトリグリセリン混合物が挙げられる。また、トリグリセリンはグリシドールまたはエピクロルヒドリンなどを原料として得られるものであっても良い。反応終了後、所望により中和、脱塩、または脱色などの処理を行ってよい。
【0016】
本発明のA成分においては、上記トリグリセリン混合物を、例えば蒸留またはカラムクロマトグラフィーなど自体公知の方法を用いて精製し、グリセリン3分子からなるトリグリセリンを約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上に高濃度化した高純度トリグリセリンが、好ましく用いられる。
【0017】
A成分として用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)または不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸など)などが挙げられ、炭素数16〜18の飽和または不飽和脂肪酸から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸の混合物が好ましい。とりわけパルミチン酸および/またはステアリン酸を約90質量%以上含有する飽和脂肪酸が好ましい。
【0018】
A成分として用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例として、遊離のポリオールの含有量が約10質量%未満、好ましくは約6質量%以下で、且つモノエステル体の含有量が約35質量%以上50質量%未満であるトリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。このような組成のトリグリセリン脂肪酸エステルは、トリグリセリンと脂肪酸(例えば、ステアリン酸など)を約1:0.8〜1:1.2、好ましくは約1:1のモル比でエステル化反応させて得られる反応混合物から、未反応のトリグリセリンを除去することにより得ることができる。例えば、トリグリセリン1モルと脂肪酸(例えば、ステアリン酸など)1モルを反応させた場合、無差別分布則に基づく計算によれば、エステル化生成物中における未反応のトリグリセリンの推定含量は約15質量%、モノエステル体の推定含量は約41質量%となる。従って、この仕込み比率で反応して得られた反応混合物から、例えば約10質量%に相当する量の未反応のトリグリセリンを除去すると、計算上では未反応のトリグリセリンの含量が約5.6質量%、モノエステル体の含量が約45.6質量%のトリグリセリン脂肪酸エステルが得られることになる。なお、未反応のトリグリセリンの除去は、未反応のトリグリセリンを含有するポリオールとして除去され得る。
ここでポリオールとは、分子中に2個以上の水酸基をもつアルコールを指し、本発明においては、具体的にはトリグリセリン、トリグリセリン以外のポリグリセリン(例えば、ジグリセリン、テトラグリセリン、環状グリセリンなど)およびグリセリンなどが挙げられる。
【0019】
反応混合物から未反応のトリグリセリンを除去する方法としては、例えば液液抽出、吸着分離など自体公知の方法(例えば、特開平7−173380号公報参照)が挙げられるが、好ましくは反応混合物中にグリセリンを添加して混合し、その後未反応のトリグリセリンを含むグリセリン相を分離し、除去する方法などが挙げられる。
【0020】
A成分として用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルの製法としては、例えば次の方法が好ましく挙げられる。例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板などを備えた通常の反応容器に、トリグリセリンと脂肪酸をモル比で約1:0.8〜1.2で仕込み、通常触媒として水酸化ナトリウムを加えて攪拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定の反応温度で加熱する。反応温度は通常、約180〜260℃の範囲、好ましくは約200〜250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下または常圧下で、反応時間は約0.5〜15時間、好ましくは約1〜3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、酸価約12以下を目安に決められる。得られた反応液は、未反応の脂肪酸、未反応のトリグリセリン、トリグリセリンモノ脂肪酸エステル、トリグリセリンジ脂肪酸エステル、トリグリセリントリ脂肪酸エステル、トリグリセリンテトラ脂肪酸エステルおよびトリグリセリンペンタ脂肪酸エステルなどを含む混合物である。
【0021】
エステル化反応終了後、反応混合物中に残存する触媒を中和する。その際、エステル化反応の温度が約200℃を超える場合は液温を約180〜200℃に冷却してから中和処理を行うのが好ましい。また反応温度が約200℃以下の場合は、そのままの温度で中和処理を行ってよい。触媒の中和は、例えば、触媒として水酸化ナトリウムを使用し、これをリン酸(85質量%)で中和する場合、以下に示す中和反応式(1):
【0022】
【化1】


で計算されるリン酸量を0.85で除した量(水酸化ナトリウムの使用量を1.0gとすると、約0.96gとなる。)以上のリン酸(85質量%)を、好ましくは中和反応式(1)で計算されるリン酸量を0.85で除した量の約2〜3倍量のリン酸(85質量%)を反応混合物に添加して、良く混合することにより行われる。中和後、その温度で好ましくは約0.5時間以上、更に好ましくは約1〜10時間放置する。未反応のトリグリセリンが下層に分離した場合はそれを除去するのが好ましい。
【0023】
次に、上記反応混合物を、必要なら冷却して、約60℃以上180℃未満、好ましくは約120℃以上180℃未満、更に好ましくは約130〜150℃に保ち、反応仕込み時のトリグリセリンと脂肪酸の合計質量の約0.5〜10倍量、好ましくは約0.5〜5倍量のグリセリンを添加する。反応混合物とグリセリンを良く混合した後、その温度で約0.5時間以上、好ましくは約1〜10時間放置し、二相に分離した下層(未反応のトリグリセリンを含むグリセリン相)を抜き取るか、または遠心分離し、未反応のトリグリセリンを含むグリセリン相を除去するのが好ましい。反応混合物に対するグリセリンの添加量が少ないと未反応のトリグリセリンの除去が不十分となる。また、グリセリンの添加量が多すぎると、グリセリン相の分離と除去に時間がかかり、生産性の低下を招き好ましくない。
【0024】
上記処理により得られたトリグリセリン脂肪酸エステルを、好ましくは、更に減圧下で蒸留して残存するグリセリンを留去し、必要であれば脱塩、脱色またはろ過などの処理を行い、最終的に、遊離のポリオールを約10質量%未満、好ましくは約6質量%以下に減少せしめ、且つモノエステル体を約35質量%以上50質量%未満含むトリグリセリン脂肪酸エステルを得る。該トリグリセリン脂肪酸エステルは、遊離のポリオールの含有量が少ないため、単位重量当たりの界面活性剤としての効果が優れており、更にモノエステル体を約35質量%以上50質量%未満にすることにより、乳成分を含有する飲料の乳化剤として特に優れた乳化能が発揮される。
【0025】
本発明でA成分として用いられるグリセリンコハク酸脂肪酸エステルは、通常グリセリンモノ脂肪酸エステルと無水コハク酸(またはコハク酸)との反応、若しくはグリセリンとコハク酸と脂肪酸との反応など自体公知の方法により得ることができる。グリセリンコハク酸脂肪酸エステルは前記トリグリセリン脂肪酸エステルの乳化能を補助する作用を有する。
【0026】
グリセリンコハク酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)または不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸など)などが挙げられ、好ましくは炭素数16〜18の飽和または不飽和脂肪酸から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸を含む混合物である。とりわけパルミチン酸および/またはステアリン酸を約90質量%以上含有する脂肪酸物を用いるのが好ましい。
【0027】
グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの製法の概略は以下の通りである。例えば、グリセリンモノ脂肪酸エステルを溶融し、これに無水コハク酸を加え、温度120℃前後(約110〜130℃)で約90分間反応する。グリセリンモノ脂肪酸エステルと無水コハク酸との比率は質量比で約1/1〜1/2が好ましい。さらに、反応中は生成物の着色、臭気を防止するために、反応器内を不活性ガスで置換するのが好ましい。得られたグリセリンモノ脂肪酸エステルと無水コハク酸との反応物は、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの他に、コハク酸、未反応のグリセリンモノ脂肪酸エステル、その他を含む混合物である。グリセリンコハク酸脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムB−10(製品名;理研ビタミン社製)、サンソフトNo.681SPV(製品名;太陽化学社製)およびステップSS(製品名;花王社製)などが商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0028】
A成分として用いられるショ糖ステアリン酸エステルは、ショ糖とステアリン酸とのエステル化生成物であり、その構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はない。工業的には、ステアリン酸を約90質量%以上含有する脂肪酸を用いるのが好ましい。
【0029】
A成分として用いられるショ糖ステアリン酸エステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル100質量%中、モノエステル体の含有量が約52質量%以上であるショ糖ステアリン酸エステルが好ましく、モノエステル体の含有量が約70質量%以上であるショ糖ステアリン酸エステルが更に好ましい。モノエステル体の含有量が約70質量%以上のショ糖ステアリン酸エステルは乳飲料の安定性を一層向上させる作用を有する。ショ糖ステアリン酸エステル中のモノエステル体の含有量は、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる有機系GPC分析(ゲル浸透クロマトグラフ分析)を行い、順相系カラムクロマトグラフィーにより精製したショ糖モノステアリン酸エステルを標準試料として作成した検量線から、絶対検量線法により求めることができる。
【0030】
A成分として用いられるモノエステル体の含有量が約50質量%以上であるショ糖ステアリン酸エステルとしては、例えば、リョートーシュガーエステルS−1170(三菱化学フーズ社製)、DKエステルF−110(第一工業製薬社製)、DKエステルF−140(第一工業製薬社製)などが挙げられる。また、モノエステル体の含有量が約70質量%以上であるショ糖ステアリン酸エステルとしては、例えば、リョートーシュガーエステルS−1570(三菱化学フーズ社製)、リョートーシュガーエステルS−1670(三菱化学フーズ社製)、DKエステルF−160(第一工業製薬社製)、DKエステルSS(第一工業製薬社製)などが挙げられる。
【0031】
B成分
本発明でB成分として用いられるショ糖パルミチン酸エステルは、ショ糖とパルミチン酸とのエステル化生成物であり、その構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はない。工業的には、パルミチン酸を約90質量%以上含有する脂肪酸を用いるのが好ましい。
【0032】
B成分として用いられるショ糖パルミチン酸エステルとしては、ショ糖パルミチン酸エステル100質量%中、モノエステル体の含有量が約70質量%以上であるショ糖パルミチン酸エステルが好ましく、モノエステル体の含有量が約80質量%以上であるショ糖パルミチン酸エステルが更に好ましい。モノエステル体の含有量が約80質量%以上のショ糖パルミチン酸エステルは乳飲料中に存在する耐熱性胞子の発芽、増殖を抑制する作用が強く飲料の安定性を一層向上させる。ショ糖パルミチン酸エステル中のモノエステル体の含有量は、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる有機系GPC分析(ゲル浸透クロマトグラフ分析)を行い、順相系カラムクロマトグラフィーにより精製したショ糖パルミチン酸エステルを標準試料として作成した検量線から、絶対検量線法により求めることができる。
【0033】
モノエステル体の含有量が約70質量%以上であるショ糖パルミチン酸エステルとしては、例えば、リョートーシュガーエステルP−1570(三菱化学フーズ社製)、リョートーシュガーエステルP−1670(三菱化学フーズ社製)などが挙げられる。
【0034】
C成分
C成分として用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル体を約50質量%以上、好ましくは約70質量%以上含むトリグリセリン脂肪酸エステルであり、グリセリン3分子からなるトリグリセリンを約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上に高濃度化した高純度ポリグリセリンと脂肪酸を自体公知の方法等でエステル化反応させた後、好ましくは、更に減圧下で蒸留して残存する未反応のトリグリセリンを留去し、続いて、例えば流下薄膜式分子蒸留装置または遠心式分子蒸留装置などを用いて分子蒸留するか、またはカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出などの方法を用いて精製することにより得ることができる。
【0035】
C成分として用いられるジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)または不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸など)が挙げられる。とりわけラウリン酸やミリスチン酸、パルミチン酸を約70質量%以上、より好ましくは約90質量%以上含有する飽和脂肪酸の混合物を用いるのが好ましい。
【0036】
C成分として用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルにはコーヒー飲料を変敗させる耐熱性胞子の発芽、増殖を抑制する効果がある。とりわけラウリン酸やミリスチン酸、パルミチン酸からなるモノエステル体の含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上でその効果が顕著に発揮され、本発明におけるコーヒー飲料の加温時の保存性向上に寄与している。商業的に販売されているものとしては、例えばポエムTRP−97RF(理研ビタミン社製)などが挙げられる。
【0037】
なお、本発明の乳成分含有飲料において、第一必須成分はA成分であり、第二必須成分はB成分および/またはC成分である。
【0038】
本発明の乳成分含有飲料には、上記のA成分と、B成分および/またはC成分の他に、各種の乳化剤を含有させることができる。該乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(前記A成分およびB成分を除く)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの外、例えばグリセリン酢酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル(例えば、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルなど)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(前記A成分およびC成分を除く)およびポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが含まれる。またレシチンとしては、例えば大豆レシチンおよび卵黄レシチンなど油分を含む液状レシチン、液状レシチンから油分を除き乾燥した粉末レシチン、液状レシチンを分別精製した分別レシチン並びにレシチンを酵素で処理した酵素分解レシチンおよび酵素処理レシチンなどが挙げられる。
【0039】
本発明のコーヒー飲料は、飲料のベースとなるコーヒー抽出液に、乳脂肪および/または無脂乳固形分を含有する物質、乳化剤(上記A成分、B成分及び/またはC成分は必須、その他は所望により加える。)、砂糖、異性化液糖(ぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、高果糖液糖など)、砂糖混合異性化液糖、蜂蜜などの糖類、アラビアガム、カラギナン、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガムまたはローカストビーンガムなどの増粘安定剤、香料、ビタミンCなどのビタミン類、トコフェロール、茶抽出物などの酸化防止剤などを配合して製造される。また、コーヒー抽出液をベースとする飲料では、コーヒー抽出液のpHを調整するため、通常pH調整剤(例えば、炭酸水素ナトリウムなど)が添加される。
【0040】
本発明の乳成分含有飲料100質量%中の上記A成分の含量は、約0.001〜0.1質量%、好ましくは約0.003〜0.05質量%、B成分の含量は0.001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.05質量%、C成分の含量は、0.001〜0.3質量%、好ましくは0.005〜0.1質量%である。A成分、B成分またはC成分は飲料中に直接添加してもよく、また予め水分散液を調製して添加しても良い。さらには、澱粉や澱粉分解物、還元澱粉加水分解物等とあらかじめ混合し直接飲料に添加したり、または同混合品を用いてあらかじめ水分散液を調整して飲料に添加する事も可能である。
【0041】
本発明のコーヒー飲料の製造方法に特に制限はないが、例えばコーヒー乳飲料の製法としては、次の方法が好ましく挙げられる。例えば、焙煎されたコーヒー豆から約90〜98℃の精製水で抽出されたコーヒー抽出液に、牛乳、全粉乳または脱脂粉乳などの乳成分、砂糖並びに上記のA成分と、B成分および/またはC成分とを加えて溶解し、所望により増粘安定剤の水溶液を添加し、更に所望により炭酸水素ナトリウムの水溶液を添加してpHを約5〜7に調整する。次に、得られた乳飲料を、例えば高圧式均質化処理機などを用いて均質化する。高圧式均質化処理機としては、例えばAPVゴーリンホモジナイザー(APV社)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社)、アルティマイザー(スギノマシン社)、ナノマイザー(大和製罐社)などが挙げられる。均質化は、乳飲料を例えば温度約60〜70℃、圧力約15〜20MPaの条件で約1〜3回処理することにより行われ得る。
【0042】
均質化されたコーヒー乳飲料は、続いて加熱殺菌を施されるのが好ましい。加熱殺菌の方法としては、缶入り飲料の場合はレトルト殺菌が、またPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル入り飲料の場合はUHT(Ultra High Temperature)殺菌が好ましく用いられる。レトルト殺菌は、コーヒー乳飲料を缶に充填して密封し、レトルト殺菌機により、通常約121〜124℃、約20〜40分間の加熱条件で行われ得る。UHT殺菌の方法としては、コーヒー乳飲料に直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクション式やコーヒー乳飲料を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式などの直接加熱方式、プレートやチューブなど表面熱交換器を用いる間接加熱方式などが挙げられ、好ましくはプレート式殺菌装置を用いる方法である。プレート式殺菌装置を用いるUHT殺菌は、通常約130〜150℃で、121℃の殺菌価(F0)が約10〜50に相当する加熱条件で行われ得る。UHT殺菌されたコーヒー乳飲料は、無菌的にPETボトルに充填され、密栓されるのが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に本発明を製造例、試験例および実施例に基づいて、より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[製造例1]
トリグリセリン混合物の製造
攪拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた反応釜にグリセリン20kgを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム20w/v%水溶液100mLを加え、窒素ガス気流中250℃で4時間グリセリン縮合反応を行った。
得られた反応生成物を約90℃まで冷却し、リン酸約20gを添加して中和した後ろ過し、ろ液を160℃、250Paの条件下で減圧蒸留してグリセリンを除き、続いて200℃、20Paの高真空条件下で分子蒸留してジグリセリンを回収し、更に蒸留残液を、240℃、20Paの高真空条件下で分子蒸留し、グリセリン0.2質量%、ジグリセリン5質量%、トリグリセリン88量%およびテトラグリセリン6質量%、環状グリセリン0.8質量%を含む留分約1.5kgを得た。次に、該留分に対して1質量%の活性炭を加え、減圧下にて脱色処理した後ろ過した。得られたトリグリセリン混合物の水酸基価は約1170で、その平均重合度は約3.0であった。
【0045】
[製造例2]
トリグリセリン脂肪酸エステルの製造
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得たトリグリセリン混合物240g(約1.0モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)78g、ステアリン酸(商品名:NAA−180;日本油脂社製)181g(C16・C18混合脂肪酸として約0.94モルに相当)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液10mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を約180℃まで冷却し、リン酸(85質量%)2.3gを添加して触媒を中和し、その温度で約1時間放置し、分離した未反応のトリグリセリンを含むポリオール約35gを除去した。次に、反応混合物を約150℃まで冷却し、グリセリン410gを加えて均一に混合後その温度で約1時間放置し、分離したグリセリン相約330gを除去した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを、約150℃、約400Paの条件で減圧蒸留して残留するグリセリンを留去し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1)約420gを得た。このものの酸価は約1.8であった。
【0046】
[製造例3]
トリグリセリン脂肪酸エステルの製造
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得たトリグリセリン混合物240g(約1.0モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)120g、ステアリン酸(商品名:NAA−180;日本油脂社製)120g(C16・C18混合脂肪酸として約0.89モルに相当)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液10mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を約180℃まで冷却し、リン酸(85質量%)2.3gを添加して触媒を中和し、その温度で約1時間放置し、分離した未反応のトリグリセリンを含むポリオール約40gを除去した。次に、反応混合物を約150℃まで冷却し、グリセリン400gを加えて均一に混合後その温度で約1時間放置し、分離したグリセリン相約320gを除去した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを、約150℃、約400Paの条件で減圧蒸留して残留するグリセリンを留去し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品2)約390gを得た。このものの酸価は約1.6であった。
【0047】
[製造例4]
トリグリセリン脂肪酸エステルの製造
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得たトリグリセリン混合物240g(約1.0モル)、およびパーム極度硬化油脂肪酸(商品名:P−ST;ミヨシ油脂社製)258g(約0.96モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液10mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を約180℃まで冷却し、リン酸(85質量%)2.3gを添加して触媒を中和し、その温度で約1時間放置し、分離した未反応のトリグリセリンを含むポリオール約40gを除去した。次に、反応混合物を約150℃まで冷却し、グリセリン420gを加えて均一に混合後その温度で約1時間放置し、分離したグリセリン相約340gを除去した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを、約150℃、約400Paの条件で減圧蒸留して残留するグリセリンを留去し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品3)約430gを得た。このものの酸価は約2.0であった。
【0048】
[製造例5]
トリグリセリン脂肪酸エステルの製造
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得たトリグリセリン混合物240g(約1.0モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)120g、ステアリン酸(商品名:NAA−180;日本油脂社製)120g(C16・C18混合脂肪酸として約0.89モルに相当)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液10mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を約180℃まで冷却し、リン酸(85質量%)2.3gを添加して触媒を中和し、中和後液温を約150℃まで冷却してその温度で約1時間放置し、分離した未反応のトリグリセリンを含むポリオール約40gを除去し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品4;比較用試作品)約410gを得た。このものの酸価は約1.6であった。
【0049】
[製造例6]
トリグリセリン脂肪酸エステルの製造
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得たトリグリセリン混合物240g(約1.0モル)、およびパーム極度硬化油脂肪酸(商品名:P−ST;ミヨシ油脂社製)430g(約1.6モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液10mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を約180℃まで冷却し、リン酸(85質量%)2.3gを添加して触媒を中和し、中和後液温を約150℃まで冷却して、その温度で約1時間放置し、未反応のトリグリセリンを含むポリオールの分離がほとんど認められないことを確認し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品5;比較用試作品)約630gを得た。このものの酸価は約2.0であった。
【0050】
[試験例]
遊離のポリオールおよびモノエステル体の含有量の測定
製造例2〜7で得たトリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1〜5)中の遊離のポリオールおよびモノエステル体の含有量を、下記する方法により測定した。結果を表1に示した。
【0051】
[遊離のポリオール含有量測定法]
ガラス製カラム(長さ:21cm、直径:2cm)に、逆相系シリカゲル(商品名:イナートシルODS−3;ジーエルサイエンス社)約30gを乾式法で充填した。被検試料(試作品1〜6)約10gを精密に量り、25容量%メタノール水溶液50mLに溶解してカラム上層に流し込み、続いて25容量%メタノール水溶液200mLを流速1mL/1分間で通液し、流出した液を回収した。この流出液を重量既知の濃縮フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いて、約90℃、約4kPaの条件で濃縮後、デシケーター中で放冷し、総重量を精密に量り、次式により遊離のポリオール含有量(質量%)を求めた。
【0052】
【数1】


【0053】
[モノエステル体含有量測定法]
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いてエステル組成分析を行い、モノエステル体の定量を絶対検量線法により行った。HPLCは以下に示すHPLC分析条件により行った。分析後データ処理装置によってクロマトグラム上に記録された被検試料(試作品1〜6)のモノエステル体に相当するピーク面積を測定し、順相系カラムクロマトグラフィーにより精製したトリグリセリンモノステアリン酸エステルを標準試料として作成した検量線から、被検試料(試作品1〜5)のモノエステル体含有量(質量%)を算出した。
【0054】
HPLC分析条件を以下に示す。
<HPLC分析条件>
装置 島津高速液体クロマトグラフ
ポンプ(型式:LC−10A;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO−10A;島津製作所社製)
データ処理装置(型式:C−R7A;島津製作所社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF−802;昭和電工社製)
2本連結
移動相 THF
流量 1.0mL/min
検出器 RI検出器(型式:RID−6A;島津製作所社製)
カラム温度 40℃
検液注入量 15μL(in THF)
【0055】
【表1】


【0056】
[実施例1〜3]
焙煎コーヒー豆300gを95℃の精製水3000gで抽出し、コーヒー抽出液(Brix3.1)2400gを得た。該コーヒー抽出液2339g、牛乳(乳脂肪3.5%以上、無脂乳固形分8.3%以上)500g、グラニュー糖200g、カゼインナトリウム2.0g、表1に記載のトリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1〜5)0.2g、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル(理研ビタミン社製 ポエムB−10)0.5g、ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:リョ−トーシュガーエステル;S−1670三菱化学フーズ社製;モノエステル体含有量75%)1.0gおよびモノエステル体含量が70質量%以上のショ糖パルミチン酸エステル(商品名:リョ−トーシュガーエステル P−1670;三菱化学フーズ社製;モノエステル含有量約80%;パルミチン酸約80%)1.6gを配合し、これに精製水を加えて全量を4000gとし、生豆換算9.5gのコーヒー飲料を得た。この溶液に炭酸水素ナトリウムを加えて殺菌後のpHが6.8となるように調整し、高圧式均質化処理機(製品名;APVゴーリンホモジナイザー;APV社製)を用いて、液温約60〜70℃、第一段圧力約15MPa、第二段圧力5MPaの条件で均質化した。得られた均質化溶液190gを飲料缶20個にそれぞれ充填して密封し、約123℃で20分間レトルト殺菌し、缶入りコーヒー飲料を得た。
【0057】
次に、缶入りコーヒー飲料を55℃の恒温器内に保存し、4週間後および6週間後にそれぞれ10缶ずつ取り出し、5℃で一晩保存後開缶し、白色浮遊物の有無を観察した。結果を表2に示した。尚、実施例1〜3において耐熱性フラットサワー菌による品質劣化はいずれの試験区においても全く認められなかった。
【0058】
【表2】


【0059】
表2から明らかなように、試作品1〜3及びグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、さらにモノエステル体含量が52質量%以上のショ糖ステアリン酸エステル、モノエステル体含量が70%質量以上のショ糖パルミチン酸エステルを添加した缶入りコーヒー飲料中には、4週間後および6週間後のいずれにおいても白色浮遊物が認められなかった。それに対し、試作品4〜5とともにグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、モノエステル体含量が50質量%以上のショ糖ステアリン酸エステル、モノエステル体含量70質量%以上のショ糖パルミチン酸エステルを添加した缶入りコーヒー飲料中には、4週間後または6週間後に白色浮遊物が認められた。
【0060】
[実施例4〜6]
焙煎コーヒー豆300gを95℃の精製水3000gで抽出し、コーヒー抽出液(Brix3.1)2400gを得た。該コーヒー抽出液2339g、牛乳(乳脂肪3.5%以上、無脂乳固形分8.3%以上)500g、グラニュー糖240g、カゼインナトリウム2.0g、表1に記載のトリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1)0.2g、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムB−10;理研ビタミン社製)0.6g、表2記載のショ糖ステアリン酸エステル1.2gおよびトリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムTRP−97RF;理研ビタミン社製;モノエステル体含有量82%;パルミチン酸99%)2.4g、これに精製水を加えて全量を4000gとし、生豆換算9.5gのコーヒー飲料を得た。この溶液に炭酸水素ナトリウムを加えて殺菌後のpHが6.8となるように調整し、高圧式均質化処理機(製品名;APVゴーリンホモジナイザー;APV社製)を用いて、液温約60〜70℃、第一段圧力約15MPa、第二段圧力5MPaの条件で均質化した。得られた均質化溶液190gを飲料缶30個にそれぞれ充填して密封し、約123℃で33分間レトルト殺菌し、缶入りコーヒー飲料を得た。
【0061】
レトルト殺菌後、10本の缶入りコーヒー飲料は20℃で1日静置後に缶をゆっくり反転させた後開缶し、レトルト殺菌により発生した沈殿凝集物が缶底部に蓄積した状況を観察した。また、残り20本の缶入りコーヒー飲料は、レトルト殺菌終了後に55℃の恒温器内に保存し4週間後、6週間日後それぞれ10缶ずつ取り出し、5℃で一晩保存後開缶し、白色浮遊物の有無を観察した。これら結果を表3に示した。
【0062】
【表3】


【0063】
表3から明らかなように、表1記載の試作品1とグリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びモノエステル含有量が50質量%以上のショ糖ステアリン酸エステル、モノエステル体含量50質量%以上のトリグリセリンパルミチン酸エステルを添加した缶入りコーヒー飲料中には、レトルト殺菌後に沈殿凝集物が発生せず、さらに55℃で4週間、6週間保存しても白色状浮遊物が認められなかった。それに対し、試作品1とグリセリンコハク酸エステル及びモノエステル含有量が50質量%以下のショ糖ステアリン酸エステル、モノエステル体含量が50質量%以上のトリグリセリンパルミチン酸エステルを添加した缶入りコーヒー飲料中には、レトルト殺菌後に沈殿・凝集物が発生し、かつ4週間後または8週間後に白色状浮遊物の発生が認められた。
【0064】
[実施例7〜10]
焙煎コーヒー豆300gを95℃の精製水3000gで抽出し、コーヒー抽出液(Brix3.1)2400gを得た。該コーヒー抽出液2092g、牛乳(乳脂肪3.5%以上、無脂乳固形分8.3%以上)800g、グラニュー糖200g、カゼインナトリウム2.0g、表1に記載のトリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1)0.2g、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムB−10;理研ビタミン社製)0.6g、ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:リョ−トーシュガーエステルS−1670;三菱化学フーズ社製;モノエステル含有量75%)1.2gおよび表4に記載の乳化剤2.4gを配合し、これに精製水を加えて全量を4000gとし、生豆換算8.5gのコーヒー飲料を得た。この溶液に炭酸水素ナトリウムを加えて殺菌後のpHが6.8となるように調整し、高圧式均質化処理機(製品名:APVゴーリンホモジナイザー;APV社製)を用いて、液温約60〜70℃、第一段圧力約15MPa、第二段圧力5MPaの条件で均質化した。得られた均質化溶液190gを飲料缶20個にそれぞれ充填し、これに耐熱性フラットサワー菌の芽胞懸濁液(Moorella thermoacetica、2.0×105個/mL)0.4mLを接種して密封し、約123℃で20分間レトルト殺菌し、缶入りコーヒー飲料を得た。
【0065】
次に、缶入りコーヒー飲料を55℃の恒温器内に保存し、4週間後に20缶すべてを取り出し開缶し、油分分離の有無および異臭(腐敗臭)の有無を観察した。結果を表4に示した。
【0066】
【表4】


【0067】
表4から明らかなように、表1記載の試作品1とグリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びモノエステル含有量が50質量%以上のショ糖ステアリン酸エステル、さらに表4記載(実施例7〜10)の乳化剤を併用したコーヒー飲料は、油分分離も無く耐熱性フラットサワー菌の増殖も認められなかった。それに対し、表1記載の試作品1とグリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びモノエステル含有量が52質量%以上のショ糖ステアリン酸エステル、さらに表4記載(比較例6〜8)の乳化剤を併用したコーヒー飲料は、油分分離が認められ、また耐熱性フラットサワー菌の増殖も認められた。
【出願人】 【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
【出願日】 平成19年3月30日(2007.3.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−245598(P2008−245598A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−92922(P2007−92922)