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【発明の名称】 容器詰コーヒー飲料
【発明者】 【氏名】小林 俊雄

【氏名】小林 洋昭

【要約】 【課題】容器詰コーヒー飲料において、保存温度が常温を超える場合であっても、コーヒー飲料に含まれるクロロゲン酸類の血圧降下作用を維持する。

【構成】コーヒー飲料40が個別充填包装容器(缶容器1)に充填密封された容器詰コーヒー飲料100であって、該容器内周面に、クロロゲン酸類に対してヒドロキシヒドロキノンを選択的に吸着除去する多孔質吸着体が固定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー飲料が個別充填包装容器に充填密封された容器詰コーヒー飲料であって、該容器内周面に、クロロゲン酸類に対してヒドロキシヒドロキノンを選択的に吸着除去する多孔質吸着体が固定されている容器詰コーヒー飲料。
【請求項2】
容器が、缶、PETボトル又は包装袋である請求項1記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項3】
多孔質吸着体が、細孔半径0.7nm以下の細孔の容量が細孔容積全体の10%以上の活性炭である請求項1又は2記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項4】
多孔質吸着体含有塗料の塗布により、多孔質吸着体が容器内周面に固定されている請求項1〜3のいずれかに記載の容器詰コーヒー飲料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、缶、PETボトル等に充填密封されたコーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー飲料には、血圧降下作用、抗酸化作用を発揮するクロロゲン酸類と、その血圧降下作用を阻害するヒドロキシヒドロキノンが含有されている。そこで、コーヒー飲料中のヒドロキシヒドロキノンを活性炭で選択的に吸着除去することにより、コーヒー飲料中のクロロゲン酸類含有量に対するヒドロキシヒドロキノン含有量を0.1質量%未満に低減させ、コーヒー飲料に血圧降下作用をもたせることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】WO2005/072533A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように、コーヒー飲料中のクロロゲン酸類含有量に対するヒドロキシヒドロキノン含有量を低減させても、それを保存する温度環境によって、ヒドロキシヒドロキノンが増加したり、クロロゲン酸類が減少したりすることにより、クロロゲン酸類含有量に対するヒドロキシヒドロキノン含有量が増加する。この現象は、活性炭でヒドロキシヒドロキノン含有量を低減させたコーヒー飲料を、酸素非透過性容器に保存した場合にも生じる。
【0005】
具体的には、ヒドロキシヒドロキノン含有量を低減させたコーヒー飲料を室温で保存すると、クロロゲン酸類の含有量は低減しないが、温度50℃以上で保存するとヒドロキシヒドロキノンが増加し、クロロゲン酸類が低減することにより、クロロゲン酸類含有量に対するヒドロキシヒドロキノン含有量が増加して血圧効果作用が低下する。このため、コーヒー飲料が缶コーヒー等の容器詰飲料として提供される場合には、輸送中や倉庫内での温度上昇によってヒドロキシヒドロキノンの増加とクロロゲン酸類の減少が生じ、血圧降下作用が低下することが問題となり、特に、コーヒー飲料がホットベンダーで提供される場合には、血圧降下作用の低下が顕著となる。
【0006】
これに対し、本発明は、容器詰コーヒー飲料の保存温度が常温を超える場合であっても、コーヒー飲料において、クロロゲン酸類含有量に対するヒドロキシヒドロキノン含有量を低く抑制し、クロロゲン酸類の血圧降下作用が最大限発揮されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、コーヒー飲料を個別充填包装容器に充填密封する場合に、その容器内周面に、クロロゲン酸類に対してヒドロキシヒドロキノンを選択的に吸着除去する多孔質吸着体を固定しておくと、コーヒー飲料の保存温度が流通又は保管時に上昇しても、コーヒー飲料におけるクロロゲン酸類の血圧降下作用を維持できること、また、コーヒー飲料を飲む前に多孔質吸着体を除去することが不要となり、従前通り容器から直接的にコーヒー飲料を飲めることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、コーヒー飲料が個別充填包装容器に充填密封された容器詰コーヒー飲料であって、該容器内周面に、クロロゲン酸類に対してヒドロキシヒドロキノンを選択的に吸着除去する多孔質吸着体が固定されている容器詰コーヒー飲料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の容器詰コーヒー飲料によれば、その容器内周面に、クロロゲン酸類に対してヒドロキシヒドロキノンを選択的に吸着除去する多孔質吸着体が固定されているので、流通又は保管時にコーヒー飲料の保存温度が常温を超えても、特に、ホットベンダーによって60℃以上で数週間以上保存されても、コーヒー飲料中のクロロゲン酸類の血圧降下作用を最大限維持することができる。
【0010】
さらに、本発明の容器詰コーヒー飲料によれば、多孔質吸着体がコーヒー飲料中に分散して容器口部から漏れ出ることはない。したがって、コーヒー飲料を飲む前に、多孔質吸着体を除去する操作は不要であり、従前の容器詰コーヒー飲料と同様に、容器から直接的にコーヒー飲料を飲むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の容器詰コーヒー飲料は、コーヒー飲料を個別充填包装容器に充填密封したもので、その容器内周面に、クロロゲン酸類に対してヒドロキシヒドロキノンを選択的に吸着除去する多孔質吸着体を固定したものである。
【0012】
ここで、個別充填包装容器としては、DI缶等の2ピース缶、溶接缶等の3ピース缶、リシール缶等の金属容器、瓶、PETボトル、パウチ袋、ガゼット袋等の包装袋、カップ状容器、所謂牛乳パック等のような紙パック容器、ペットボトル等を挙げることができる。
【0013】
コーヒー飲料としては、コーヒー抽出液100gあたり、焙煎コーヒー豆を、生豆換算で1g以上、好ましくは2.5g以上、さらに好ましくは5g以上使用して常法により抽出したコーヒー豆抽出物を主原料とし、それに必要により、糖分、乳成分、抗酸化剤、pH調整剤、乳化剤、香料等を添加して調製したものを使用することができる。このうち、糖分としては、ショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブトウ糖液、糖アルコール等を使用することができ、乳成分としては、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、練乳等を使用することができる。
【0014】
なお、コーヒー飲料に用いるコーヒー豆の種類に特に制限はなく、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテン等を使用することができ、コーヒー豆種としては、アラビア種、ロブスタ種等を用いることができる。また、コーヒー豆の焙煎方法、焙煎温度、焙煎環境等特に制限はないが、好ましい焙煎温度は100〜300℃、特に150〜250℃であり、好ましい焙煎方法としては、直火式、熱風式、半熱風式、回転ドラムを有する方式等がある。風味の点からは、焙煎後、1時間以内に0〜100℃、特に10〜60℃に冷却することが好ましい。
【0015】
コーヒー液の抽出方法も、ボイリング式、エスプエッソ式、サイホン式、ドリップ式等常法によることができ、例えば、焙煎コーヒー豆またはその粉砕物を水〜熱水(0〜100℃)を用いて10秒〜30分で抽出することができる。
【0016】
また、血圧降下作用の点から、コーヒー飲料としては、クロロゲン酸類を0.01〜1質量%含有するものが好ましく、より好ましくは0.05〜1質量%、特に0.1〜1質量%含有するものが好ましい。
【0017】
さらに、血圧降下作用の点から、容器詰コーヒー飲料が生産ラインで製造された後、一般ユーザーが飲む時点で、クロロゲン酸類含有量に対するヒドロキシヒドロキノン含有量が、0.1質量%未満となるように、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.03質量%以下となるようにする。ヒドロキシヒドロキノン含有量は0.00%でもよい。このようにクロロゲン酸含有量に対するヒドロキシヒドロキノン含有量を一般ユーザーが飲む時点で上記質量%とするためには、個別充填包装容器に密封充填する前の時点においても、この含有量の比を上記の範囲とすることが好ましい。さらにコーヒー飲料が個別充填包装容器に充填密封された後60℃以上の高温下に置かれる場合には、密封充填前の時点で、0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%以下にすることがより好ましい。
【0018】
通常、抽出直後のコーヒー液において、クロロゲン酸類含有量に対するヒドロキシヒドロキノン含有量は1%程度であるから、密封充填の時点でこれを0.05質量%以下にするには、抽出直後のコーヒー液を、クロロゲン酸類に対してヒドロキシヒドロキノンを選択的に吸着除去する多孔質吸着体によって処理しておくことが好ましい。かかる処理をしない場合には、充填する容器内に多量の多孔質吸着体を入れておくことが必要となる場合がある。
【0019】
クロロゲン酸類としては、(i)3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸等のモノカフェオイルキナ酸、(ii)3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸、5−フェルラキナ酸等のフェルラキナ酸、(iii)3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、4,5−ジカフェオイルキナ酸等のジカフェオイルキナ酸等を挙げることができ、本発明のコーヒー飲料はこれらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0020】
クロロゲン酸類に対してヒドロキシヒドロキノンを選択的に吸着除去する多孔質吸着体としては、活性炭、逆相担体等を挙げることができ、なかでも、細孔半径について、0.7nm以下の細孔の容量が細孔容積全体の10%以上、更には30%以上、特に50%以上であり、細孔容量が0.5cm3/g以上、更には0.6cm3/g以上の活性炭が好ましい。ここで細孔半径は、文献(Colloid and Interface Sc.,26,46(1968))記載のMP法により測定される値である。0.7nm以下の細孔の容量が細孔容積全体の10%未満であると、ヒドロキシヒドロキノンの他にクロロゲン酸等も吸着されて血圧降下作用が低下しやすい。また、細孔容量が0.5cm3/g未満でもヒドロキシヒドロキノンが吸着されにくい。
【0021】
このような細孔半径を有する多孔質吸着体としては、市販品を使用することができ、例えば、活性炭としては、EHSS、WH2C8(日本エンバイロシステムズ)、白鷺WH2c(日本エンバイロケミカルズ)、太閤CW(二村化学)、クラレコールGW(クラレケミカル)等を使用することができる。また、逆相担体としては、YMC・ODS−A(YMC)、C18(GLサイエンス)等を使用することができる。これらは、必要に応じて、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
多孔質吸着体を容器内周面に固定する態様としては、粉粒体の多孔質吸着体を含有する塗料を容器内周面に塗布して塗膜を形成したり、粉粒体の多孔質吸着体を含ませた活性炭シートを容器内周面に接着したり、粉粒体又は所定形状の成型体を接着剤で容器内周面に接着する態様などを挙げることができる。ここで、塗料のバインダーとしては、エポキシ樹脂等を挙げることができる。活性炭シートとしては、抄紙時に粉粒体の多孔質吸着体を混ぜて固定したものや、シートの乾燥工程でプレス加工により固定したものが挙げられる。また、多孔質吸着体を容器内周面に接着する接着剤としては、容器内周面の材料に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0023】
多孔質吸着体の容器内周面への固定量は、容器の内容積、多孔質吸着体の種類、細孔半径の大きさ等よって、適宜定めることができる。例えば、細孔半径が0.7nmの細孔の容量が細孔容積全体の10%以上の粉粒状の活性炭をエポキシ樹脂系バインダーに分散した活性炭塗料を内容積200mLの容器に使用する場合、活性炭の固定量は0.4g以上とすることが好ましい。
【0024】
図1(a)に示す容器詰コーヒー飲料100は、DI缶等の缶容器1にコーヒー飲料40を充填密封した本発明の具体的な一実施例であって、缶胴3の内周面に活性炭塗料の塗膜30を形成したものである。なお、この缶容器1は、図1(b)に示すように、缶蓋4上のプルタブ5を引き起こすことにより、スコア線に囲まれた舌片状の容器口部形成域2が押し下げられて開口するものであり、従来より缶入りコーヒーの容器として広く使用されているものを使用することができる。
【0025】
この容器詰コーヒー飲料100の製造方法としては、スチール缶の内面にポリエステルラミネートフィルムを設ける公知の方法に準じて、高張力薄鋼板の表面に、活性炭の粉粒体を分散させたラミネートフィルムを貼着するか、あるいは活性炭の粉粒体を分散させたラミネートフィルム形成用塗料を塗布して鋼板表面にフィルムを形成し、次いでそれをストレッチフォーミングし、2ピース缶とする方法を挙げることができる。
【実施例】
【0026】
実施例1、比較例1(容器詰コーヒー飲料の製造)
活性炭シートとして、抄紙時に微粉状活性炭(日本エンバイドシステムズ(株)、EHSS)をパルプに混ぜたものを作製し、それを2ピース缶の缶胴の内壁にエポキシ系接着剤で固定した。ここで、活性炭シートを接着した缶胴としては、1缶あたりの活性炭量が0.2g、0.4g、0.6gの3種を作製した。
【0027】
一方、コーヒー飲料として、コーヒー抽出液を次のように得た。
【0028】
焙煎コーヒー豆の粉砕物から熱水(90〜100℃)を用いて抽出し、それを活性炭処理してクロロゲン酸類に対するヒドロキシヒドロキノンの比(HHQ/CGA)の比を5/10000以下に調整し、そのpHを重曹を用いて6.4に調整した(ミルク入りコーヒーのpHを想定)。
【0029】
得られたコーヒー抽出液200mLを直ちに上述の缶胴に入れ、缶蓋を閉めレトルト殺菌(128℃、11分)を行い、実施例1の容器詰コーヒー飲料とした。
【0030】
比較例1として、活性炭シートを使用しない以外は、実施例1と同様にして容器詰コーヒー飲料を製造した。
【0031】
実施例2、比較例2(容器詰コーヒー飲料の製造)
微粉状活性炭(日本エンバイドシステムズ(株)、EHSS)に代えて粒状活性炭(日本エンバイドシステムズ(株)、WH2C8)を使用して活性炭シートを作成し、実施例1と同様に容器詰コーヒー飲料を製造した。
【0032】
評価(保存テスト)
20℃又は60℃で4週間保存し、コーヒー抽出液中に含まれるクロロゲン酸類とヒドロキシヒドロキノンの定量を、WO2005/072533A1の実施例に記載の方法によりHPLCで行い(分析機器:島津製作所、カラム Inertsil ODS-2 内径4.6mm、サンプル注入量10μL、流量 1.0mL/min、クロロゲン酸類の検出 UV325nm、ヒドロキシヒドロキノンの検出 UV290nm、溶離液A 0.05M酢酸3%アセトニトリル溶液、溶離液B 0.05M酢酸100%アセトニトリル溶液)、クロロゲン酸類に対するヒドロキシヒドロキノンの含有量の比(HHQ/CGA)が保存前に対して保存後に減少した場合を◎、維持された場合を○、増加した場合を×と評価した。
【0033】
結果を表1に示す。表1から、実施例1、2の容器詰コーヒー飲料によれば、20℃で保存した場合にも、60℃で保存した場合にも、クロロゲン酸類に対するヒドロキシヒドロキノンの含有量が増加しないこと、また、活性炭の量が多いほど、クロロゲン酸類に対するヒドロキシヒドロキノンの含有量の比(HHQ/CGA)が減少傾向にあることがわかる。
【0034】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、缶、PETボトル等に充填密封された容器詰コーヒー飲料に血圧降下作用を付与するものであり、容器詰コーヒー飲料の販売促進に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の容器詰コーヒー飲料100の密封状態(a)と開口状態(b)の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 缶容器
2 容器口部形成域
4 缶蓋
5 プルタブ
6 リブ
30 活性炭塗料の塗膜
40 コーヒー飲料
100 容器詰コーヒー飲料
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−43238(P2008−43238A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−220675(P2006−220675)