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【発明の名称】 コーヒー抽出液
【発明者】 【氏名】河南 俊郎

【要約】 【課題】コーヒー風味良好なクロロゲン酸豊富なコーヒー抽出液を効率良く製造する。

【構成】窒素雰囲気下で焙煎し、L値が20.5〜30.5であるコーヒー豆から抽出し、(A)クロロゲン酸類/Brixが0.11〜0.19であるコーヒー抽出液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素雰囲気下で焙煎し、L値が20.5〜30.5であるコーヒー豆から抽出し、(A)クロロゲン酸類/Brixが0.11〜0.19であるコーヒー抽出液。
【請求項2】
コーヒー抽出液中の(B)クロロゲン酸類量が223mg/100ml〜3160mg/100mlである請求項1記載のコーヒー抽出液。
【請求項3】
抽出方法が、ボイリング式、エスプレッソ式、サイホン式又はドリップ式である請求項1又は2記載のコーヒー抽出液。
【請求項4】
抽出において、コーヒー豆と水の重量比率が、1:2〜1:16である請求項1〜3の何れか1項記載のコーヒー抽出液。
【請求項5】
抽出において、水のpHが5.0〜7.8である請求項1〜4の何れか1項記載のコーヒー抽出液。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載のコーヒー抽出液から製造したインスタントコーヒー組成物。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項記載のコーヒー抽出液を配合したコーヒー飲料。
【請求項8】
請求項7記載のコーヒー飲料を充填した容器詰コーヒー飲料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー豆の焙煎を窒素雰囲気下で行った後、抽出することを特徴とするクロロゲン酸類を固形物当り高濃度で含むコーヒー抽出液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣病を予防するための食材として広く食品中に存在する抗酸化機能を有するカテキンやクロロゲン酸類が注目されている。コーヒー中にはポリフェノール類としてクロロゲン酸類が多く存在しており、その摂取効果の一つとして、コーヒー等の食品に含まれているクロロゲン酸、カフェ酸、フェルラ酸等が優れた血圧降下作用を示すことが報告されている(特許文献1〜3)。
【0003】
従って、コーヒーポリフェノール類を利用した製品の開発においては、コーヒー中のクロロゲン酸類を如何にして高濃度に確保するかが製造上の重要な問題となっている。
一方、コーヒー豆には多くのクロロゲン酸類が含まれているにも関わらず、焙煎によりかなりのクロロゲン酸類が消失する事が知られている(非特許文献1)。そこで高濃度のクロロゲン酸類を確保するためには、生豆抽出物もしくは低焙煎のコーヒー豆を用いるという製法も考えられる。しかし、この場合、生豆由来の生臭臭が存在し、これがコーヒー製品の風味低下原因となっていた。
コーヒー豆の焙煎に関する公知技術としては、コーヒー又は落花生の加熱加工法(特許文献4)があるが、当該公知技術は、加熱時の空気酸化を防止し本来のその食品の特味を保存しようとするものである。当該公知技術を遂行する方法としては、外空気を遮断する容器内に被加熱加工体を収納し容器内の脱酸素剤にて無酸素ガスとし又はそのガスをリサイクルし、この条件下で加熱を行うものである。
しかし、本発明では、本来のその食品の特味を保存しようとするものでない点が当該公知技術とは根本的に異なる。また、当該公知技術では、脂質の酸化変質についてのみ述べられている。
また、低酸素焙煎コーヒー豆の焙煎方法及びその製造方法(特許文献5)があるが、風味、呈味の観点から、容器詰飲料としては、満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開2002−363075号公報
【特許文献2】特開2002−22062号公報
【特許文献3】特開2002−53464号公報
【特許文献4】特開昭54−122754号公報
【特許文献5】特開2003−274862号公報
【非特許文献1】コーヒー焙煎の化学と技術(中林敏郎ら・弘学出版)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、コーヒー風味良好なクロロゲン酸豊富なコーヒー抽出液を効率良く製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者はコーヒー豆の焙煎条件を種々検討した結果、コーヒー豆の焙煎を窒素雰囲気下において行うと、その焙煎豆を抽出したコーヒー抽出液は空気存在下で焙煎した豆を用いた場合に比較し、クロロゲン酸類が高濃度に存在し、しかも、生臭のしない風味良好なコーヒー抽出液が得られることを見い出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、 窒素雰囲気下で焙煎し、L値が20.5〜30.5であるコーヒー豆から抽出し、(A)クロロゲン酸類/Brixが0.11〜0.19であるコーヒー抽出液である。
【0006】
本発明では、窒素雰囲気下で行った焙煎豆のL値20.5〜30.5のコーヒー抽出液は、空気存在下で行った同L値のものに比べクロロゲン酸類の含有量が高いこと、また、風味も良好であることを見出したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法を用いればクロロゲン酸が豊富で、かつ、風味の良好なコーヒー飲料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、コーヒー豆の焙煎を窒素雰囲気下で行うこと、並びにL値が20.5〜30.5内に保つよう焙煎すること以外は、通常の焙煎と同様の方法で良い。尚、本発明で言うL値とは、通常の公知の手法により色差計で測定した焙煎度を示す値である。
コーヒー豆の種類は、特に限定されないが、例えばブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテン等が挙げられる。コーヒー豆種としては、アラビカ種、ロブスタ種などがある。コーヒー豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。コーヒー豆を焙煎により焙煎コーヒー豆とする方法については、特に制限はなく、焙煎温度、焙煎環境についても制限はない。
本発明では、コーヒー豆の焙煎を窒素雰囲気下で行うこと、並びにL値が20.5〜30.5内に保つよう焙煎を行う。L値が本設定範囲外になるまで焙煎したのでは、クロロゲン酸の含有量増加は望めない。
本発明における窒素雰囲気下とは、具体的には、焙煎雰囲気中の窒素含有率が、90〜100容積%、好ましくは、95〜100容積%、更に好ましくは、98〜100容積%である雰囲気を言う。
また、焙煎度の好ましい範囲としては、L値20.5〜30.5、好ましくは21〜28、更に好ましくは、22から26である。
抽出液中の(A)クロロゲン酸類/Brixの範囲は、0.11〜0.19、好ましくは、0.12〜0.18、さらに好ましくは、0.13〜0.16である。この範囲であれば、酸味があり、かつ、飲みやすいコーヒー抽出液を得ることができる。
【0009】
更にその豆からの抽出方法についても何ら制限はなく、例えば焙煎コーヒー豆又はその粉砕物から水〜熱水(0〜100℃)を用いて10秒〜30分抽出する方法が挙げられる。抽出方法は、ボイリング式、エスプレッソ式、サイホン式、ドリップ式(ペーパー、ネル等)等が挙げられる。
この時、焙煎コーヒー豆、またはその粉砕物は、それらの豆重量:水=1:2〜1:16(水〜熱水)により抽出できる。そのとき用いる水のpHは5.0〜7.8の範囲で、実施できる。
【0010】
本発明のコーヒー豆からの抽出条件は、抽出液100gあたりコーヒー豆を生豆換算で1g以上使用したものをいう。好ましくはコーヒー豆を2.5g以上使用しているものである。更に好ましくはコーヒー豆を5g以上使用しているものである。
コーヒー抽出物中の固形分濃度としては、0.1〜5.0重量%であることが、風味の点から好ましい。
【0011】
本発明における当該クロロゲン酸類としては、モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、ジカフェオイルキナ酸の三種を含有する。ここでモノカフェオイルキナ酸としては3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。またフェルラキナ酸としては、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。ジカフェオイルキナ酸としては3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び4,5−ジカフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。当該クロロゲン酸類の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。HPLCにおける検出手段としては、UV検出が一般的であるが、CL(化学発光)検出、EC(電気化学)検出、LC−MS検出等により更に高感度で検出することもできる。
【0012】
本発明により得られるコーヒー抽出液は、コーヒー組成物、インスタントコーヒー組成物、コーヒー飲料に適用できる。
【0013】
抽出液中のクロロゲン酸濃度としては、好ましくは、223mg/100ml〜3160mg/100ml、さらに好ましくは、230mg/100ml〜2800mg/100ml、特に好ましくは、250mg/100ml〜2550mg/100mlである。この範囲内の濃度であれば、風味良好なコーヒー飲料の調製・制御が容易である。
本発明のコーヒー組成物を使用したインスタントコーヒーの形態としては、液状であってもゲル状、固体状であってもよい。固体状の形態としては、顆粒、タブレット、粉末などが選択できる。
コーヒー組成物を使用して、コーヒー飲料を調製する場合は、液状のコーヒー組成物は、そのまま或いは水(湯も含む)で希釈又は溶解した後、加熱処理することによりコーヒー飲料を調製することができる。固体状のコーヒー組成物は、水(湯も含む)で希釈又は溶解しコーヒー飲料を調製することができる。
【0014】
本発明のコーヒー飲料には、所望により、ショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブドウ糖液、糖アルコール等の糖分、乳成分、抗酸化剤、pH調整剤、乳化剤、香料等を添加することができる。乳成分としては、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、れん乳等が挙げられる。本発明のコーヒー飲料のpHとしては、3〜7.5、更に4〜7、特に5〜7が飲料の安定性の面で好ましい。
【0015】
本発明のコーヒー飲料は、殺菌した容器詰コーヒー飲料であることが好ましい。
当該容器詰コーヒー飲料の加熱殺菌処理は、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で行われる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ食品衛生法に定められた条件と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が挙げられる。
【0016】
本発明の容器詰コーヒー飲料の容器としてはPETボトル、缶(アルミニウム、スチール)、紙、レトルトパウチ、瓶(ガラス)等が挙げられる。
【実施例】
【0017】
<クロロゲン酸類の分析方法>
コーヒー組成物及びコーヒー飲料のクロロゲン酸類の分析法は次の通りである。分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通り。UV−VIS検出器:L−2420((株)日立ハイテクノロジーズ)、カラムオーブン:L−2300((株)日立ハイテクノロジーズ)、ポンプ:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ)、オートサンプラー:L−2200((株)日立ハイテクノロジーズ)、カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))。
【0018】
分析条件は次の通り。サンプル注入量:10μL、流量:1.0mL/min、UV−VIS検出器設定波長:325nm、カラムオーブン設定温度:35℃、溶離液A:0.05M 酢酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液、溶離液B:アセトニトリル。
【0019】
濃度勾配条件
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
【0020】
HPLCでは、試料1gを精秤後、溶離液Aにて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
【0021】
クロロゲン酸類の保持時間(単位:分)
・モノカフェオイルキナ酸:5.3、8.8、11.6の計3点、フェルラキナ酸:13.0、19.9、21.0の計3点、ジカフェオイルキナ酸:36.6、37.4、44.2の計3点。ここで求めた9種のクロロゲン酸類の面積値から5−カフェオイルキナ酸を標準物質とし、質量%を求めた。尚、インスタントコーヒーは適宜水で希釈して同様に分析を行った。
【0022】
<Brix測定>
Brixはデジタル屈折計RX−5000(株式会社アタゴ)を用いて、20℃にて測定を行った。
【0023】
<色差計測定>
焙煎豆をコーヒーミル(Kalita)で細挽きした後、分析用セルにつめ、Spectro color 2000(NIPPON DENSHOKU)にてL値を測定した。
【0024】
実施例1(窒素雰囲気下での焙煎コーヒーの調製)
市販コーヒー生豆(コロンビアEX)120gを窒素雰囲気下に設置した焙煎器MR−101に仕込み、焙煎器内部が十分窒素で置換された後、任意の焙煎時間で焙煎を実施した。焙煎後コーヒー豆が室温に戻った段階で、コーヒーミルにより粉砕し、粉砕物を色差計にてL値を測定した(L値23.8)。
65.0gの粉砕物に対し520gの熱湯を加え抽出(95℃、約300rpmで30分撹拌)を行った。抽出後、GAF(5μm)フィルターでろ過し、318gの抽出液を得た(Brix3.62)。
本抽出液を用い、Brix2%のコーヒー飲料を調製し、クロロゲン酸類の測定を行った。
具体的測定値としては、窒素雰囲気下では、コーヒー豆(L値23.8)のクロロゲン酸類は296.4mg/100g(クロロゲン酸類/Brix=0.15)であった。
空気存在下で行った場合に比べ、窒素雰囲気下でのでは固形物あたりのクロロゲン酸類の収量は高かった。
【0025】
比較例1(空気存在下焙煎豆抽出液の調製)
市販コーヒー生豆(コロンビアEX)120gを焙煎器MR−101(ダイニチ工業社製)に仕込み、任意の焙煎時間で焙煎を実施した。焙煎後コーヒー豆が室温に戻った段階で、コーヒーミルにより粉砕し、粉砕物を色差計にてL値を測定した(L値23.8)。65.6gの粉砕物に対し525gの熱湯を加え抽出(95℃、約300rpmで30分撹拌)を行った。抽出後GAF(5μm)フィルターでろ過し、Brix3.61%、335gの抽出液を得た。本抽出液を用い、Brix2%のコーヒー飲料を調製し、クロロゲン酸類の測定を行った。通常の焙煎方法(空気存在下)で焙煎したコーヒー豆(L値23.8)の抽出液から調製したコーヒー飲料のクロロゲン酸類濃度は、249.4mg/100g(クロロゲン酸類/Brix)=0.13であった。
【0026】
比較例1および実施例1を含め、空気存在下と窒素雰囲気下でので焙煎度を種々変化させたコーヒー豆を調製し、その抽出液中のクロロゲン酸類を測定した。図1には、それらのコーヒー豆のL値とクロロゲン酸類(CGA)/Brix比をプロットした。
【0027】
実施例2(風味評価用コーヒーの調製)
比較例1および実施例1で調製したコーヒー抽出液を用い、pH5.4、Brix2%に調製したコーヒー組成物を缶に充填、巻絞めを行った後、123℃10分でレトルト殺菌を行い、風味評価用コーヒー飲料とした。
【0028】
空気存在下調製コーヒーと窒素雰囲気下での調製コーヒーの風味比較
実施例2でそれぞれ調製したコーヒーの風味評価(パネラー:5名)を行った。
窒素雰囲気下での調製コーヒー 空気存在下での調製コーヒー
「飲みやすい」 40% 20%
「酸味」 40% 20%
窒素雰囲気下での焙煎したものは、比較的「酸味」に富んだ「飲みやすい」風味になっている。
【0029】
実施例3(インスタントコーヒーの作製)
実施例1で得られた窒素雰囲気下焙煎コーヒー抽出物を凍結乾燥してインスタントコーヒーを得た。
得られたコーヒー粉末を溶解後のコーヒーは風味も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】空気存在下と窒素雰囲気下で行ったコーヒー焙煎豆のL値とクロロゲン酸類(CGA)/Brix比の関係を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【出願日】 平成18年7月20日(2006.7.20)
【代理人】 【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡

【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦

【識別番号】100091845
【弁理士】
【氏名又は名称】持田 信二

【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌


【公開番号】 特開2008−22751(P2008−22751A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−197624(P2006−197624)