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【発明の名称】 抗肥満性食用油脂組成物、それを用いた飲食品および飼料
【発明者】 【氏名】伏見 直也

【氏名】八木 隆

【氏名】野村 蘭

【氏名】鈴木 邦夫

【要約】 【課題】加工食品製造時の加熱工程、フライ・炒め等の加熱調理に耐え得る熱安定性のある、抗肥満作用を有する食用油脂組成物並びにそれを用いた飲食品および飼料の提供。

【構成】4−カンペステノンを含有することを特徴とする食用油脂組成物。4−カンペステノンを有効成分とし、抗肥満作用を有する。上記いずれかの食用油脂組成物を用いた飲食品。痩身用飲食品、糖尿病食、動脈硬化予防食、中性脂肪低減食または血圧降下食である飲食品。上記の食用油脂組成物を用いた飼料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−カンペステノンを含有することを特徴とする食用油脂組成物。
【請求項2】
4−カンペステノンを有効成分とし、抗肥満作用を有する請求項1の食用油脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2の食用油脂組成物を用いた飲食品。
【請求項4】
痩身用飲食品、糖尿病食、動脈硬化予防食、中性脂肪低減食または血圧降下食である請求項3の飲食品。
【請求項5】
請求項1または2の食用油脂組成物を用いた飼料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は4−カンペステノンを含有する食用油脂組成物、好ましくは抗肥満性食用油脂組成物、およびそれを用いた飲食品および飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の食事は著しく欧米化し、高カロリー化が進んでいる。その結果、肥満が増大し、大きな社会問題になりつつある(非特許文献1)。肥満は、糖尿病、高血圧症、心血管障害、高脂血症、動脈硬化等の生活習慣病の要因であり(非特許文献2)、体脂肪、特に内臓脂肪を減少させることは、生活習慣病予防の観点から喫緊の課題となっている。肥満を抑制する方法については、薬物による治療など多方面から研究されているが、肥満の原因の多くは冒頭述べたように欧米化、高カロリー化した食事によるものであり、食生活の改善を通じて肥満を抑制していくことが、副作用および医療費の面から見ても望ましい。
【0003】
食生活の改善による肥満抑制には、総摂取カロリーの抑制が必要なのは言うまでもないが、中でも油脂は重量比カロリーが大きく、その摂取抑制は重要である。しかし、油の摂取を過度に抑制すると、栄養のバランスが崩れる、食生活が貧困になり満足感が得られない、といった問題がある。満腹感が得られず、過食を引き起こすこともある。そこで、摂取する油脂を、抗肥満作用を有する食用油脂に置き換えることが提案されている。
抗肥満作用を有する調理用油脂の調製方法として、油脂の主成分であるトリグリセリド自体を改変あるいはその構成成分である脂肪酸を置換して抗肥満作用を持たせる方法と、抗肥満作用のある物質を油脂に含有させる方法が知られている。
【0004】
前者としては、ジグリセリド(特許文献1、2)、中鎖脂肪酸含有油(特許文献3、4、5)などを挙げることができる。ジグリセリドは腸管吸収後のトリグリセリドへの再構成を抑制することで、中鎖脂肪酸は肝臓に直接運ばれ、優先的に代謝分解されることで、該物質自体の脂肪組織への蓄積を低減させる。しかし、人が摂取する脂肪分のうち、肉や魚、豆類といったほかの食品に含まれる脂肪分、いわゆる「見えないあぶら」から摂取する部分が75%と大部分を占め、調理用油脂やバターといったいわゆる「見えるあぶら」は約25%に過ぎない(非特許文献3)ことを考えると、これらは摂取する油脂のうち最大で25%を置換することしかできず、十分な抗肥満効果は期待できなかった。また、ごま油やオリーブ油など、油脂の風味を生かした飲食品を提供することはできなかった。
【0005】
それに対して、抗肥満作用を持つ物質を油脂に添加する、後者の方法は、油脂の風味を生かし、さらに「見えないあぶら」にも作用せしめる点で優れている。
油溶性抗肥満物質として、カプサイシン等の辛味成分が挙げられる。特許文献10には、ジグリセリドと辛味成分を併用して体脂肪を低下させる油脂組成物が提案されているが、濃度によっては不快な辛味が発生する場合がある。
特許文献11には、辛味のないカプサイシノイド様物質を有効成分として含有する肥満抑制剤が提案されているが、アドレナリン分泌を促進する作用によることから、多量に摂取した場合、副作用が発生する恐れがある。
【0006】
さらに油溶性物質であるステノン類の一部に抗肥満作用があることが知られている。例として、4−コレステン−3−オン(特許文献6)、5−コレステンー3−オン、5−コレスタンー3−オン、5−コレスター4,6−ジエンー3−オン、6−ブロモー4−コレステンー3−オン、6−ヒドロキシー4−コレステンー3−オン、4−コレステンー3,6−ジオン(特許文献7)、6−ヒドロキシー4−シトステンー3−オン、5−シトステンー3−オン(特許文献8)、24−メチルコレスト−5−エン−3−オン(特許文献9)の抗肥満剤が挙げられる。一方で、4−シトステン−3−オンには抗肥満作用がない(特許文献8)など、その作用は実際に確認するまで不明である。
また、上記の特許文献中には動植物油にあらかじめ溶解して使用することが記載されてはいるが、保存性や加熱調理への適応性など食用油脂としての大切な機能については全く言及されていない。また、加工食品製造上の加熱工程における安定性も何ら検討されていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平8−60180号公報
【特許文献2】特開2004−156046号公報
【特許文献3】特開2000−309794号公報
【特許文献4】特開2001−161265号公報
【特許文献5】特開2001−226693号公報
【特許文献6】特開平5−170651号公報
【特許文献7】特開平7−165587号公報
【特許文献8】特開平11−193296号公報
【特許文献9】特開2001−240544号公報
【特許文献10】特開2001−122778号公報
【特許文献11】特開2001−026538号公報
【非特許文献1】国民栄養の現状 平成14年厚生労働省国民栄養調査結果、52頁
【非特許文献2】第124回日本医学会シンポジウム記録集、3頁
【非特許文献3】「あぶら」は訴える 油脂栄養論、98〜100頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
抗肥満作用を有する食用油脂組成物を提供する場合、加熱時に有用成分が分解するようなものであっては、目的とする食用油脂組成物としての品質を達成したとはいえない。このことは食用油脂組成物を使用して加工食品を製造する際の、煮沸・蒸煮・油ちょう・殺菌等の加熱工程においても全く同様である。
【0009】
したがって、本発明の課題は、加工食品製造時の加熱工程、フライ・炒め等の加熱調理に耐え得る熱安定性のある、抗肥満作用を有する食用油脂組成物を提供することにある。
【0010】
また、本発明は、抗肥満作用を有する食用油脂組成物を用いた飲食品および飼料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討した結果、4−カンペステノンを含む食用油脂組成物が、抗肥満作用を有し、かつ、加工食品製造時の加熱工程、フライ・炒め等の加熱調理時にも安定であることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、4−カンペステノンを含有する食用油脂組成物を要旨とする。
【0012】
また、本発明は、4−カンペステノンを有効成分とする、抗肥満作用を有することを特徴とする食用油脂組成物を要旨とする。
【0013】
さらにまた、本発明は、4−カンペステノンを含有する食用油脂組成物、好ましくは4−カンペステノンを有効成分とする、抗肥満作用を有することを特徴とする食用油脂組成物を用いた飲食品、好ましくは痩身用飲食品、糖尿病食、動脈硬化予防食、中性脂肪低減食または血圧降下食を要旨とする。
【0014】
また、本発明は、4−カンペステノンを含有する食用油脂組成物、好ましくは4−カンペステノンを有効成分とする、抗肥満作用を有することを特徴とする食用油脂組成物を用いた飼料を要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による4−カンペステノンを含有した食用油脂組成物は、4−カンペステノンに基づく、抗肥満作用を示し、それらの用途の食品、飼料として有用である。
【0016】
本発明でいう抗肥満作用とは、肥満予防作用、または肥満改善作用を指す。肥満予防作用として、体重増加抑制作用、脂肪組織の増加抑制作用が挙げられる。また、肥満改善作用として、体重減少作用、脂肪組織低減作用が挙げられる。
肥満は、ホルモンやサイトカイン等を介して糖尿病等の生活習慣病を引き起こすことが知られている。したがって、本発明品は肥満予防作用や肥満改善作用といった直接的な作用と共に、これらの作用を介して糖尿病・動脈硬化・高脂血症・高血圧・脂肪肝・高尿酸血症・関節炎・睡眠障害・乳癌・前立腺癌等の予防および/または改善作用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
4−カンペステノン(別名;4−カンペステン−3−オン、24−メチルコレスト−4−エン−3−オン)およびその誘導体について説明する。4−カンペステノンは下記の式で表される。
【化1】


4−カンペステノンは、カンペステロールを原料に化学的に変換する方法、酵素を用いて変換する方法、天然に存在するものを抽出・分離する方法のいずれかを単独または組み合わせて用いることで入手することができる。
化学的に変換する方法としては、カンペステロールを原料に、Parishらの選択的酸化法(Synthetic Communications, 22: 2839-2847,1992)にて5−カンペステノンを合成し、これを異性化して得る方法等が知られている。
酵素を用いて変換する方法としては、カンペステロールにコレステロールオキシダーゼ(cholesterol:oxigen oxidoreductase:EC1.1.3.6)を作用させて得る方法、または微生物による発酵により得る方法等が知られている。前者の場合、コレステロールオキシダーゼは動植物起源のもの、微生物起源のものいずれも用いることができ、それらは液体、粉末、固定化菌体等いずれの形態でも使用することができる。
後者の場合、発酵する微生物に関しては、4−カンペステノンを生産する能力を持っていれば、特に制限されない。例として、ブレビバクテリウム(Brevibacterium sp.) 、セルロモナス(Cellulomonas sp.)、ノカルジア エリスロポリス(Nocardia erythropolis)、シュードモナス フルオレツセンス(Pseudomonas fluorescens)、シゾフィラム コミユーン(Schizophyllum commune)、ストレプトマイセス(Streptomyces sp.)、およびミコバクテリウム コレステロリカム(Mycobacterium cholesterolicum)等を挙げることができる。
以上のようにして変換して得られた4−カンペステノンは、さらにクロマトグラフや再結晶法により精製し、高純度の4−カンペステノンを得ることができる。
【0018】
天然に4−カンペステノンを含むものとしては、Harrisonia abssinica樹皮(Balde et.al. Plant Med. 66: 67-69,2000)、Phoenix dactylifera幹(Fernandez et. al., Phytochem. 22:2087-2088,1983)等が知られており、これらから抽出・分離することができる。さらに、遺伝子組換の技術等により、4-カンペステノンを生産するように品種改良した植物、例えば大豆、菜種、コーン、ヤシ、パーム、オリーブ、亜麻仁、ひまわり、紅花、つばき、綿実、米、ゴマ、クヘア等から抽出・分離することも可能である。
上記のような油糧作物から抽出・分離および精製する方法としては、圧搾、溶剤抽出、超臨界炭酸ガス抽出、脱ガム、アルカリによる脱酸、白土による脱色、水蒸気蒸留による脱臭等の、通常行う公知の食用油脂製造技術を適用することができる。
【0019】
本発明の食用油脂組成物は、4−カンペステノンを食用油脂、乳化剤、脂肪酸から選ばれる1種または2種以上に含有するものをいう。その他、必要に応じて抗酸化剤を添加してもよい。4−カンペステノン含量は特に限定されないが、飲食品の製造に利用することを考えると、0.05%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは30%以上含有するのが望ましい。該食用油脂組成物は、液状、固体状、半固体状等用途に応じた任意の状態にすることができる。
【0020】
4−カンペステノン含有食用油脂組成物は、4−カンペステノンを食用油脂、乳化剤、脂肪酸から選ばれる1種または2種以上に添加する方法のほか、カンペステロールを含有する油脂を、コレステロールオキシダーゼ等による酵素反応、または微生物による発酵により4−カンペステノンに変換することにより製造することができる。
【0021】
用いる油脂は、通常の食用油脂であればよく、特に制限されない。例えば大豆油、菜種油、高オレイン酸菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、魚油、アザラシ油、藻類油、ジグリセリド含有油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、品質改良によって低飽和化されたこれらの油脂およびこれらの水素添加油脂、分別油脂、あるいはこれらの1種または2種以上をエステル交換した油脂を使用することができる。また、飼料として用いる場合は、これらの廃油および/またはその再生油も使用することができる。
【0022】
用いる乳化剤は、特に制限されない。例えば、モノグリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルといったグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンおよび酵素処理レシチン等を使用することができる。
【0023】
用いる脂肪酸は、炭素鎖が2以上のものであれば、特に制限されない。例えば、酪酸、カプロン酸等の短鎖脂肪酸、カプリル酸、カプリン酸等の中鎖脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の長鎖飽和脂肪酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸等の長鎖一価不飽和脂肪酸、リノール酸、アラキドン酸、γ―リノレン酸等のω−6系長鎖多価不飽和脂肪酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等のω−3系長鎖多価不飽和脂肪酸等を使用することができる。
【0024】
用いる抗酸化成分は、特に制限されない。例えば、トコフェロール類およびそれらの誘導体、トコトリエノール類およびそれらの誘導体、セサミン、エピセサミン、セサミノール、セサモリン、セサモール等のリグナン類およびそれらの配糖体、β−カロチン等のカロテノイド類及びその誘導体、没食子酸やエラグ酸等のタンニン類及びそれらの誘導体、フラボン、カテキン、ケルセチン、ロイコアントシアニジン等のフラボノイド類、ユビキノンやビタミンK等のキノン類、オリザノール等のフェルラ酸誘導体、オリーブ抽出物等を使用することができる。
【0025】
本発明の食用油脂組成物はそのまま喫食することもでき、また、食用油脂を含有する食品の原料として用いることもできる。
【0026】
本発明の飲食品とは、4−カンペステノンを含有する食用油脂組成物を原料として含有する飲料もしくは食品をいう。具体的には、調理用油脂、油脂加工品、加工食品、健康食品、飲料、調理用油脂を用いた調理品である。調理用油脂とは、本発明の食用油脂組成物を食用油脂で希釈して、大豆油、菜種油、コーン油や米油といった、一般に市販されている通常の食用油脂と同様に使用するものである。また、粉末状に加工して用いることもできる。油脂加工品、加工食品、健康食品、飲料には、本発明の食用油脂組成物あるいは調理用油脂を原料として使用することができる。油脂加工品としては、例えばドレッシング、マヨネーズ、ファットスプレッド、ショートニング、クリーム等が挙げられる。加工食品としては、例えば菓子類、パン類、ケーキ類、レトルト食品、冷凍食品、チルド食品等が挙げられる。健康食品としては、錠剤、カプセル剤、液剤、顆粒剤等が挙げられる。飲料としては、例えば清涼飲料、栄養ドリンク等が挙げられる。調理用油脂を用いた調理品としては、例えば畜肉製品、魚介製品、米飯類、乳製品等が挙げられる。
【0027】
また本発明の飲食品には、各種機能の向上等を目的として、抗酸化成分、油性成分、栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等を配合することができる。抗酸化成分としては、特に制限は無いが、例えば、トコフェロール類およびそれらの誘導体、トコトリエノール類およびそれらの誘導体、セサミン、エピセサミン、セサミノール、セサモリン、セサモール等のリグナン類およびそれらの配糖体、β−カロチン等のカロテノイド類及びその誘導体、没食子酸やエラグ酸等のタンニン類及びそれらの誘導体、フラボン、カテキン、ケルセチン、ロイコアントシアニジン等のフラボノイド類、ユビキノンやビタミンK等のキノン類、オリザノール等のフェルラ酸誘導体、オリーブ抽出物等等を使用することができる。栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等の種類については特に制限はないが、食品添加物公定書に定められるものが望ましい。
【0028】
本発明の食用油脂組成物は、ヒト以外の動物、例えば、牛、馬、豚、羊などの家畜用哺乳類、鶏、ウズラ、ダチョウなどの家禽類、は虫類、鳥類或いは小型哺乳類などのペット類、養殖魚類などの飼料用にも同様に応用することができる。例えば、ドライドッグフード、ドライキャットフード、ウェットドッグフード、ウェットキャットフード、セミモイストドックフード、養鶏用飼料、牛、豚などの家畜用飼料に配合することができる。飼料自体は、常法に従って調製することができる。
【0029】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
[4−カンペステノン含有組成物の抗肥満作用]
抗肥満作用について実験動物を用い、試験を行った。4−カンペステノンは、カンペステロール(タマ生化学製)を原料に、Parishらの選択的酸化法(Synthetic Communications, 22: 2839-2847,1992)にて5−カンペステノンを合成し、これを異性化して得たもの(純度99.9%以上)を用いた。この4−カンペステノン1.0重量部とラード(純正化学製)14.6重量部を混合して、4−カンペステノン含有食用油脂組成物とした。6週齢のICR雄マウス(オリエンタル酵母工業より購入:各群8匹)に高脂肪食を8週間ペアフィーディングにより摂取させた。ICRは種々の実験に汎用されるマウス系統である。与えた高脂肪食の組成を表1に示す。高脂肪食は、油抜き改変AIN(オリエンタル酵母工業製)を基礎とし、4−カンペステノン含有食用油脂組成物を均一に混合して、試験飼料を調製した。対照群の飼料の場合は4−カンペステノンを添加しないラード14.6重量部を混合して調製した。ミネラル混合およびビタミン混合はAIN76組成のものを使用した。データは示していないが、両群の総摂餌量はほぼ同じであった。
【0031】
【表1】


【0032】
試験飼料投与期間中の体重推移を図1に示す。実験開始3週間後より、4−カンペステノン含有食用油脂組成物投与群が対象群より低い値を示し、その差は経過と共に大きくなった。投与8週間後には、対照群と比べて体重が約10%低減しており、分散分析の結果、対照群に比べて4−カンペステノン含有食用油脂組成物投与群は体重増加が有意に抑制されたことがわかった(有意水準1%)。
試験飼料投与8週間後に全数解剖し、腹腔内脂肪重量を測定した。測定結果を図2に示す。対照群に比べて4−カンペステノン含有食用油脂組成物投与群は、腹腔内脂肪重量が約30%低減しており、上記体重の増加抑制作用が脂肪組織、特に内臓脂肪の増加抑制作用に由来していることが明らかとなった。
また、試験期間中に死亡例・外見上の異常はなく、剖検時に各組織に異常の見られた個体はなかった。上記体重の増加抑制は、病的な要因によるものでない。
実施例1から、4−カンペステノン含有食用油脂組成物は、脂肪組織の低減により抗肥満作用を持つことが明らかになった。したがって、4−カンペステノン含有食用油脂組成物を含有する飲食品が抗肥満作用を有することは明らかである。効果も高いことから、治療用あるいは医薬品としての使用も可能であると考えられる。
【実施例2】
【0033】
[4−カンペステノン含有食用油脂組成物の熱安定性]
(2)−1.保存中の安定性(40℃)
4−カンペステノン、5−カンペステノンは、実施例1と同様に合成したものを用いた。上記ステノン類を、油として大豆油(市販品;和光純薬製)に6000ppmになるように溶解した。溶解後の油を遮光下40℃に保った。保存0日目の濃度を100%として、30日保存後の残存率を表2に示した。
【0034】
【表2】


4−カンペステノンは、高温の場所に保存しても安定であるのに対して、5−カンペステノンは不安定であり、4−カンペステノン含有食用油脂組成物は室内で長期間保存することができることが分かる。
【0035】
(2)−2.調理中の安定性(100℃、フライ想定180℃、炒め想定200℃)
4−カンペステノン、5−カンペステノンは、実施例1と同様に合成したものを用いた。5−コレステノンは市販品(シグマ社製)を用いた。
(フライ想定)上記ステノン類を、油としてトリオレイン(市販品;シグマ社製)に6000ppmになるように溶解した。溶解後の油500gを、鍋にて100℃または180℃に加熱した。加熱前の濃度を100%として、各温度での1時間および5時間加熱後における各ステノン類の残存率を表3および表4に示す。
【0036】
【表3】


【0037】
【表4】


【0038】
表3および表4から分かるように、他のステノン類に比較して、4−カンペステノン含有食用油脂組成物は、フライ等を想定した180℃の加熱に対して非常に安定であった。
【0039】
(炒め想定)上記と同様に調製したステノン類含有油脂組成物を加熱天板上に薄膜状態に広げ、200℃に保持した。加熱前の濃度を100%として、10分間加熱後における残存率を表5に示す。
【0040】
【表5】


【0041】
表5から分かるように、他のステノン類に比較して、4−カンペステノン含有食用油脂組成物は、炒め等を想定した薄膜状態における加熱に対しても非常に安定であった。
実施例2より、4−カンペステノン含有食用油脂組成物は、少なくとも200℃以下で熱安定性を有しており、一般的な製造/調理で行われる加熱に対して安定であることが明らかになった。
【実施例3】
【0042】
〔調理用油脂の製造〕
4−カンペステノンを30重量%含有する本発明の食用油脂組成物10重量部に対して、大豆油〔昭和産業(株)製〕90重量部を配合し、攪拌機を用いて適宜加熱しながら溶解混合して調理用油脂を得た。
【実施例4】
【0043】
〔食用油カプセルの製造〕
実施例3で得られた調理用油脂を芯部用組成物として用いた。可食性皮膜材としてはゼラチンを使用し、ロータリーダイ式ソフトカプセル製造機により常法に従い芯部用組成物を充填した食用油カプセルを得た。(カプセル中芯部全量4g、皮膜重量0.6g)
【実施例5】
【0044】
〔炊飯〕
米2合(300g)を洗米、水切り後、米を炊飯器〔ナショナルIHジャー炊飯器SRA10A型、松下電器産業(株)製〕の釜に入れて、米と水の合計量が720gとなるように加水し、30分間吸水させた。その後、実施例4で得られた食用油カプセルを投入し、炊飯器をセットして炊飯し、米飯を得た。
【実施例6】
【0045】
[マヨネーズの製造]
加塩卵黄15重量部、食酢4重量部、水8.4重量部、砂糖1重量部、グルタミン酸ナトリウム0.3重量部、粉末マスタード0.3重量部、食塩1重量部を混合撹拌し、20℃まで冷却した後、予め加熱溶解混合しておいた4−カンペステノンを60重量%含有する本発明の食用油脂組成物10重量部と大豆油〔昭和産業(株)製〕60重量部の混合物を徐々に加えながら減圧下で攪拌し、マヨネーズを得た。
【実施例7】
【0046】
[アイスクリームの製造]
4−カンペステノンを60重量%含有する本発明の食用油脂組成物1重量部、脱脂粉乳8.5重量部、砂糖5.5重量部、水あめ20重量部、ひまわり油10.7重量部、パーム油1.3重量部、乳化安定剤0.3重量部を水52.7重量部に均一に混合溶解し、65℃に加温して、メッシュでろ過して不純物・不溶物を除去した。ホモゲナイザーで均質化した後、5℃のインキュベーターで一昼夜エージングさせ、ミックスを調製した。このミックスをバッチ式のフリーザーでフリージングして、アイスクリームを得た。
【実施例8】
【0047】
[チョコレートの製造]
4−カンペステノンを60重量%含有する本発明の食用油脂組成物2重量部、カカオマス20重量部、ココアバター20重量部、粉糖38重量部、全脂粉乳20重量部、レシチン0.4重量部、香料0.1重量部の混合物を、常法通りロール掛け、コンチング及びテンパリング処理した後、モールドに充填し冷却硬化後、離型してチョコレートを得た。
【実施例9】
【0048】
[パンの製造]
小麦粉 100重量部、イースト 2重量部、イーストフード 0.1重量部、食塩 2重量部、グラニュー糖 4重量部、水 70重量部をミキサーに投入し、低速3分、中速5分混捏後、予め混合しておいた4−カンペステノンを60重量%含有する本発明の食用油脂組成物5重量部と、ショートニング1重量部の混合物を投入し、低速2分、中速3分混捏した。その後、発酵、分割、成型、ホイロ(38℃、相対湿度85%、60分)、焼成(215℃、30分)し、食パンを得た。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、4−カンペステノン含有食用油脂組成物の熱安定性、ならびに、動物においての抗肥満作用がはじめて明らかになった。このことは、ヒトにおいても4−カンペステノンおよび/またはその誘導体が肥満予防および/または肥満状態改善作用を現すことを推測させる結果であり、肥満の予防ならびに対処に新しい手段を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】各群のマウスの平均体重の時間変化を示す。図中、4−カンペステノン群とは、4−カンペステノン含有食用油脂組成物投与群を指す。値は平均値±標準誤差で示した。
【図2】実験食摂取8週間後の、各群のマウスの平均腹腔内脂肪量を示す。図中、4−カンペステノン群とは、4−カンペステノン含有食用油脂組成物投与群を指す。値は平均値±標準誤差で示した。
【出願人】 【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
【識別番号】504271973
【氏名又は名称】有限会社テクノフローラ
【出願日】 平成18年9月15日(2006.9.15)
【代理人】 【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子

【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸


【公開番号】 特開2008−67677(P2008−67677A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−251794(P2006−251794)