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【発明の名称】 アホエン含有油脂の加工処理方法及びアホエン含有油脂
【発明者】 【氏名】日比 孝吉

【要約】 【課題】アホエンを油脂中で安定的に保持すること。

【構成】アホエン含有油脂にナイアシンを添加するか、アホエン含有油脂にナイアシンを加えて混合した後、濾過処理により不溶のナイアシンを除去することによって、アホエンを油脂中で安定的に保持することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アホエン含有油脂にナイアシンを添加することを特徴とするアホエン含有油脂の加工処理方法。
【請求項2】
前記ナイアシンはニコチンアミドであり、その添加量がアホエン含有油脂の0.001〜1重量%である、請求項1記載のアホエン含有油脂の加工処理方法。
【請求項3】
前記ナイアシンはニコチン酸であり、その添加量がアホエン含有油脂の0.01〜1重量%である、請求項1記載のアホエン含有油脂の加工処理方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のアホエン含有油脂の加工処理方法によって加工処理されたアホエン含有油脂。
【請求項5】
アホエン含有油脂にナイアシンを加えて混合した後、濾過処理により不溶のナイアシンを除去することを特徴とするアホエン含有油脂の加工処理方法。
【請求項6】
前記ナイアシンの添加量がアホエン含有油脂の0.01重量%以上である、請求項5記載のアホエン含有油脂の加工処理方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載のアホエン含有油脂の加工処理方法によって加工処理されたアホエン含有油脂。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アホエン含有油脂の加工処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニクはユリ科のネギ属に属する植物で、香辛料として広く用いられている。またニンニクは、民間薬としても知られており、動脈硬化、肺結核、気管支炎の治療、抗菌剤及び回虫などの駆虫剤として用いられてきた。これらの薬効を示す主要な原因物質は、アホエンなどの含硫黄有機化合物である。
【0003】
アホエンの血小板凝集抑制作用がアピツ−カストロ(Apitz−Castro)らによって研究されて以来、アホエンに関する様々な生理活性が報告されている。
ハットリ(Hattori)らは、アホエンにはアセトアミノフェンにより引き起こされる肝障害に対する保護効果あることを報告している〔バイオサイエンス・バイオテクノロジー・アンド・バイオケミストリー(Biosci.Biotechnol.Biochem.),65(11),2555−2557(2001)〕。またリー(Li)らは、アホエンがヒト前骨髄性白血病細胞のアポトーシスを誘導することを報告している〔ニュートリション・アンド・キャンサー(Nutrition and Cancer),42(2),241−247(2002)〕。さらにまた、ヤマダ(Yamada)らは、スコポラミンにより誘導された認知症に対するアホエンの予防効果を報告している〔ファルマコロジー・バイオケミストリー・アンド・ビヘイビア(Pharmacology,Biochemistry and Behavior),787−791(2004)〕。その他、アホエンの脳卒中抑制効果がヤマダ(Yamada)らによって〔バイオロジカル・アンド・ファーマセウティカル・ブレチン(Biol.Pharm.Bull.),29(4),619−621(2006)〕、抗ピロリ菌作用がカワセ(Kawase)らによって〔ナチュラル・メディスンス(Natural Medicines),59(4),171−174(2005)〕、糖尿病抑制効果がハットリ(Hattori)らによって〔ジャーナル・オブ・ニュートリショナル・サイエンス・アンド・ビタミノロジー(J.Nutr.Sci.Vitaminol.),51,382−384(2005)〕、それぞれ報告されている。
【0004】
このように様々な生理活性が示されているアホエンは不安定な成分であり、時間経過とともに他の成分への変化が進み、しかもその保持温度が高ければその傾向は顕著となる。例えばアホエン含有油脂を23℃保持した場合、油脂中のアホエンは18ヶ月で86%減少する。またアホエン含有油脂をゼラチンカプセル化した場合、23℃、18ヶ月経過により22%のアホエンが減少することが、ローソンらにより報告されている[ガーリック 第2版 ウィリアムス・アンド・ウィルキンス社(GARLIC,2nd edition),Williams & Wilkins),99−102(1995)]。
【非特許文献1】ガーリック 第2版 ウィリアムス・アンド・ウィルキンス社(GARLIC,2nd edition,Williams & Wilkins),99−102(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
油脂中のアホエンを、例えば12〜18ヶ月間安定的に保持するには冷蔵保存することが考えられるが、低温保存以外のアホエン安定化に関する具体的方策については、これまでに報告はない。
【0006】
本発明は上記の事実に基いてなされたものであり、本発明の目的は、生理活性の強いアホエンを安定的に保持するためのアホエン含有油脂の加工処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、アホエン含有油脂にナイアシンを添加することを特徴とするアホエン含有油脂の加工処理方法(請求項1)である。
同じく第2の発明は、アホエン含有油脂にナイアシンを加えて混合した後、濾過処理により不溶のナイアシンを除去することを特徴とするアホエン含有油脂の加工処理方法(請求項5)である。なお、第2の発明による、アホエン含有油脂にナイアシンを加えて混合した後、濾過処理により不溶のナイアシンを除去する処理を「ナイアシン処理」と呼ぶ。
【0008】
そして、第3の発明は第1の発明によって得られるアホエン含有油脂(請求項4)であり、第4の発明は第2の発明によって得られるアホエン含有油脂(請求項7)である。
【発明の効果】
【0009】
以上に説明したように、第1の発明の方法によってアホエン含有油脂を処理すれば、血小板凝集抑制作用をはじめ種々の生理活性が示されているアホエンを、油脂中で安定的に保持することが可能になる。
【0010】
また、第2の発明の方法によってアホエン含有油脂を処理すれば、ナイアシンを常に混在させることなく、生理活性の強いアホエンを油脂中で安定的に保持することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
アホエンは、上述したとおりニンニク由来の含硫黄有機化合物の一種である。これをニンニクから抽出する方法、アホエン含有油脂を調製する方法等に特段の制限はないが、特許第2608252号の方法に従えば、容易に、しかも高い収率でアホエン含有油脂を調製できる。
【0012】
ナイアシンはニコチン酸とニコチンアミドの総称であり、ビタミンB3とも呼ばれる。第1の発明、第2の発明とも、ニコチン酸又はニコチンアミドを単独で用いてもよいし、混用してもよい。
【0013】
第1の発明におけるナイアシンの添加量は、ニコチンアミドの場合、アホエン含有油脂の0.001重量%以上、好ましくは0.01〜1重量%であり、ニコチン酸の場合、同0.01重量%以上、好ましくは0.1〜1重量%である。
【0014】
第2の発明においてアホエン含有油脂に加えるナイアシンの量は、アホエン含有油脂の0.01重量%以上であればよい。但し、この量が多すぎては無駄になるだけであるから多くても同1重量%、また効果を確実にするには同0.1重量%以上が望ましい。つまり、0.1〜1重量%の範囲が好適である。
【0015】
第3の発明のアホエン含有油脂中には添加した分のナイアシンが混在する。
一方、第4の発明のアホエン含有油脂では濾過処理により不溶のナイアシンが除去されるので、ナイアシンの残留量は微量である。但し、第4の発明のアホエン含有油脂を水と混合すると、油脂中に微量溶解しているナイアシンは水層に移行するので、この水層を高速液体クロマトグラフィーで分析すれば、ナイアシンの有無を判別できる。
【0016】
第1〜4の発明によって油脂中のアホエンを安定化できる理由については未解明であるが、ナイアシンによる抗酸化性が何らかの影響を及ぼしていると推測される。
含有油脂
[実施例]
次に、実施例により発明の実施の形態及び効果をより具体的に説明する。なお、本発明は下記の各例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
(アホエン含有油脂の調製)
アホエン含有油脂は、特許第2608252号の方法に従って調製した。その概要は次の通りである。まず、生ニンニク(ホワイト6片)1kgに水300gを加え、フードプロセッサー(Cuisinart社製、DLC−X PULS型)を用いて粉砕し、ナイロン濾過布を使用して手で搾り800gの搾汁を得た。これに中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)(日本油脂株式会社製、商品名:パナセート810)800g加えてホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、M型)によって混合し、その後、37℃にて24時間保持し、アホエン含有油脂を得た。
(アホエンの分析)
アホエンの定量は下記の通りに行った。すなわち、処理液(アホエン含有油脂+ナイアシン)1.5mlを遠心分離(5000rpm×5分)後、上澄液1gを取りジクロロメタンで10mlに定容後、四フッ化エチレン(PTFE)フィルタ−(0.2μm,東洋濾紙株式会社製)で濾過処理を行い試料溶液とした。またアホエン標準品を同様にジクロロメタンに溶解して標準溶液とし高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。
【0017】
測定条件は下記の通りである。
分離カラム :SUPELCOSIL LC−Si 4.6(内径)×250mm(スペルコ・ジャパン株式会社製)
ガ−ドカラム:SUPELCOSIL LC−Si 4.4(内径)×33mm(スペルコ・ジャパン株式会社製)
溶離液 :ヘキサン:イソプロパノ−ル(95:5)(V/V)
流速 :2ml/min検出波長 :240nm
(ナイアシン添加によるアホエン安定性効果)
上記アホエン含有油脂の調製によって得られたアホエン含有油脂に対し、ナイアシン(ニコチンアミド、ニコチン酸ともに1.0重量%)を添加したものを、4℃,25℃,37℃,および60℃に保持した。これらから経時的に(3日、5日、7日、14日、28日、)試料を採取し、上記アホエンの分析によって油脂中のアホエン残存量を測定した。
【0018】
結果は表1に示す。この結果から、ナイアシンの添加により、各温度における経時的なアホエン減少が緩やかとなり、油脂中のアホエンの安定性が増していることが分かる。37℃保持では、ナイアシンを添加することにより、28日後のアホエン減少量は無添加の約1/7に抑えられた。
【0019】
【表1】


(アホエン安定化に対するナイアシン有効濃度の検証)
上記アホエン含有油脂の調製によって得られたアホエン含有油脂に対し、ニコチンアミドを0.0001〜1 重量%、及びニコチン酸を0.01〜1 重量% となるよう混合した後、37℃保持した。これらから経時的に(7日、14日、28日)試料を採取し、上記アホエンの分析により油脂中のアホエン残存量を測定した。
【0020】
結果を表2に示す。ニコチンアミドは0.001重量%以上、好ましくは0.01〜1重量%。ニコチン酸0.01%重量以上、好ましくは0.1〜1重量%を混合することにより、油脂中のアホエンが安定的に保持されることが分かる。
【0021】
【表2】


(ナイアシン処理効果)
上記アホエン含有油脂の調製によって得られたアホエン含有油脂100gに対し、ニコチンアミドを0.1g加え、よく混合した後、定性濾紙 NO.2(5μm,東洋濾紙株式会社製)で濾過処理により不溶ニコチンアミドを除去したものを、ナイアシン処理エキスとした。その後、4℃,25℃,37℃,および60℃に保持した。これらから経時的(7日、14日、28日)に試料を採取し、上記アホエンの分析によって油脂中のアホエン残存量を測定した。
【0022】
結果を表3に示す。ナイアシン処理を施すことにより、各温度における経時的なアホエン減少が緩やかになり、油脂中のアホエンが安定的に保持されることが分かる。
【0023】
【表3】


【出願人】 【識別番号】390033617
【氏名又は名称】名古屋製酪株式会社
【出願日】 平成18年8月9日(2006.8.9)
【代理人】 【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉


【公開番号】 特開2008−35822(P2008−35822A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−216987(P2006−216987)