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【発明の名称】 ラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法
【発明者】 【氏名】大江 健一

【氏名】木村 隆

【氏名】中野 博文

【氏名】村上 洋

【氏名】木曽 太郎

【氏名】桐生 高明

【要約】 【課題】ミネラル吸収促進作用を有するラクトビオン酸を含有する乳飲料の簡便な製造方法およびその方法により得られるラクトビオン酸含有乳飲料を提供する。

【解決手段】乳に酢酸菌を接種し発酵させることにより、乳に含まれるラクトースをラクトビオン酸に変換してラクトビオン酸含有乳飲料を得ることを特徴とするラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法であり、好ましくは、発酵が好気的発酵であり、また、発酵を開始した後ラクトースを添加しながら発酵を行うラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳に酢酸菌を接種し発酵させることにより、乳に含まれるラクトースをラクトビオン酸に変換してラクトビオン酸含有乳飲料を得ることを特徴とするラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法。
【請求項2】
発酵が、好気的発酵である請求項1記載のラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法。
【請求項3】
乳にラクトースを別途添加することを特徴とする請求項1又は2記載のラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とするラクトビオン酸含有乳飲料。
【請求項5】
請求項4記載のラクトビオン酸含有乳飲料を含むことを特徴とする飲食品。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法並びにこの製造方法により製造されるラクトビオン酸含有乳飲料及び飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成人のカルシウムの1日所要量は男女共に600mgと言われているが、日本人のカルシウム摂取量はこの所要量を下回っているのが現状であり、カルシウム摂取の必要性が謳われている。しかしながら、日本人の平均的な食生活では所要量のカルシウムを摂取することは困難である。また、カルシウム以外にも亜鉛、鉄、マグネシウムなどのミネラルについても不足しがちであり、ミネラルの吸収性を高める食品に対して関心が高まっている。
【0003】
一方、O-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-D-グルコン酸の一般式で表わされる二糖類のラクトビオン酸は、乳に含まれる二糖であるラクトースの酸化物であり、ミネラル吸収促進作用を示すことが知られている(特許文献1)。しかしながら、ラクトビオン酸は天然には存在が知られておらず、ラクトビオン酸を含有する飲食品は知られていなかった。
【特許文献1】特許第3501237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡便な方法によりラクトビオン酸を含有する乳飲料の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決する為に鋭意検討を行った結果、乳に酢酸菌を接種して発酵させることにより乳中のラクトースが酸化されてラクトビオン酸が生成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第一は、乳に酢酸菌を接種し発酵させることにより、乳に含まれるラクトースをラクトビオン酸に変換してラクトビオン酸含有乳飲料を得ることを特徴とするラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法を要旨とするものであり、好ましくは発酵が、好気的発酵である前記のラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法であり、また好ましくは、発酵を開始した後、ラクトースを添加しながら発酵を行う前記のラクトビオン酸含有乳飲料の製造方法である。
【0007】
また、本発明の第二は、前記したいずれかの製造方法により製造されることを特徴とするラクトビオン酸含有乳飲料を要旨とするものである。
【0008】
さらに、本発明の第三は、本発明の第二のラクトビオン酸含有乳飲料を含むことを特徴とする飲食品を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便な方法により効率的にラクトビオン酸含有乳飲料を得ることができ、このラクトビオン酸含有乳飲料を、カルシウムや鉄などのミネラルを含む飲食品の経口摂取時、あるいはその前後に摂取することで、飲食品に由来するミネラルの吸収を促進することができる。このことにより、充分なミネラルを吸収することが可能となり、骨粗鬆症や貧血に代表されるミネラルの欠乏による疾患の予防、発症を抑えることが可能となる。
【0010】
また、ラクトビオン酸含有乳飲料自体に含まれるカルシウムもラクトビオン酸の存在により吸収が促進されるため、普通の乳中のカルシウムよりもその吸収効率は高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明に用いられる乳としては、飲料として供せられるものであれば特に限定されないが、入手の容易さから牛乳やヤギ乳が好適に用いられる。また、乳としては、生乳のみならず脱脂乳やチーズを作る工程で副産物として生産される乳清(ホエー)も含まれる。これらのうち、生乳や脱脂粉乳が味質の点で好ましく、中でも生乳がより好ましい。上記のような乳中には通常ラクトースが、5質量%程度含有されているが、あらかじめラクトースを添加してラクトース含有量を多くしておいてもよい。
【0013】
また、本発明においては必要に応じ、ショ糖、果糖、転化糖、ブドウ糖等の糖類、水、果肉、果汁、香料、酸味料等を上記した乳に味質の点で好ましい範囲で適宜加えてもよい。
【0014】
本発明に用いられる酢酸菌としては、ラクトースを酸化してラクトビオン酸を生成することができるものであれば特に限定されないが、アセトバクター属、グルコノバクター属およびグルコノアセトバクター属からなる群の一の群に属する酢酸菌のうちでラクトース酸化活性の高いものが単独であるいは二種以上併せて用いられる。これらの中で、例えば、グルコノバクター・セリナスNBRC3267株やアセトバクター・オリエンタリスNBRC16606株などが高いラクトース酸化活性を有しているために好適である。なお、使用される酢酸菌は、通常の湿潤菌体であっても、凍結乾燥した菌であってもよい。
【0015】
これらの酢酸菌の種菌を準備するために酢酸菌を培養する必要がある。これらの酢酸菌は通常の微生物と同様に培養することができる。培地としては微生物が通常資化しうる炭素源、窒素源、ビタミン、ミネラルなどの成分を適宜配合したものが用いられる。培養は、酢酸菌が生育可能である温度、pHで行われるが、使用する菌株の最適培養条件で行うことが好ましい。培養方法としては静置培養、振とう培養、深部通気撹拌培養があげられる。培養温度は、20〜30℃が好適であり、培地のpHは塩酸、水酸化ナトリウム水溶液や炭酸カルシウムなどによりpH5〜8に維持することが好ましい。このような条件で培養を行うと、培養から15〜72時間で十分な量の微生物が得られる。
【0016】
本発明においては、上述のようにして準備した酢酸菌を種菌として、原料の乳中に108個/100ml以上、好ましくは5×108〜1011/100mlの濃度で菌体を加える。
【0017】
その後、発酵を行うこととなるが、その条件は以下のとおりである。通気条件としては、静置培養により嫌気的な条件でもよいが、振とうや曝気などを行なって好気的条件下で発酵することがラクトビオン酸の含量を高める上で望ましい。発酵温度としては、4℃〜30℃が好ましい。発酵時間は、12時間以上、好ましくは24〜72時間である。pHは、3〜7の範囲が好適である。
【0018】
上記のような発酵により、乳に5質量%程度含まれるラクトースが酸化されてラクトビオン酸が生成することとなり、ラクトビオン酸含有乳飲料が得られる。
【0019】
本発明においては、発酵前又は、発酵を行っている間にラクトースを別途添加することによりラクトビオン酸含量をより高めた乳飲料を製造することもできるため好ましい。ラクトースの添加量としては、1〜20%質量%が適当である。なお、ラクトースは数回に分けて添加してもよい。
【0020】
本発明のラクトビオン酸含有乳飲料は、上記のような方法によって製造されたものであって、その中にラクトビオン酸を0.1〜10質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは5〜10質量%含有しているものである。
【0021】
また、本発明の飲食品は、ラクトビオン酸含有飲料を各種加工し、各種飲食品に含ませた形態としたものである。そのような飲食品としては、例えば、アイスキャンデー等の冷菓、プリン、ゼリー、シュークリーム、ケーキ等の生菓子、ラムネ、アメ、チョコレート、ビスケット等の菓子、チーズ、バター、パン、シチュー、ドレッシングやその他の飲食品あるいは健康食品があげられる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお実施例中ラクトビオン酸の定量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い以下の条件により行った。また、%は質量%を示す。
[HPLC分析条件]
カラム アサヒパックNH2P-50 φ4.6mm×250mm(昭和電工社製)
移動相 アセトニトリル:40mMクエン酸−NaH2PO4緩衝液(PH5.0)=60:40(体積比)
カラム温度:40℃
流速:0.8mL/分
検出器:示差屈折計
【0023】
参考例〔酢酸菌の培養〕
〔前培養〕
試験管(18 mm×200 mm)に、グルコース0.5%、酵母エキス0.5%、ポリペプトン0.5%、硫酸マグネシウム0.1%(pH7.0)を含む培地3mLを分注し、121℃で20分間殺菌した。その試験管に一白金耳のグルコノバクター・セリナス NBRC 3267株を植菌し、30℃で1晩振とう培養(220rpm)した。次に上記組成培地を1L分注し121℃で20分間殺菌した3L三角フラスコに上記試験管培養液を植菌し30℃で3日間振とう培養(220rpm)した。
【0024】
〔本培養〕
ジャーファーメンターによる培養を行った。グルコース1.5%、ラクトース15%、酵母エキス0.5%、ポリペプトン0.5%、硫酸マグネシウム0.1%を含む培地(pH7.0)を20L調製し121℃で20分間殺菌した。これに上記前培養液1Lを植菌し、30℃で深部撹拌培養(300回転、1vvm)をした。培養48時間後に培養液を遠心分離により集菌し100gの湿菌体を得た。
【0025】
実施例1
100mlの三角フラスコに20mlの牛乳(明治乳業社製)を入れ、そこに上記の参考例で得られた酢酸菌体(グルコノバクター・セリナス NBRC 3267)1グラム(概数生菌数:5×1010)を加え、30℃で2日間静置培養を行なった。1日目、2日目に少量サンプリングしてラクトビオン酸を定量した。得られた結果を表1に示した。
【0026】
実施例2
培養条件として、静置培養の代わりに振とう(100rpm)培養を行なった以外は実施例1と同様にして乳飲料を作製し、同様に培養1日目、2日目にラクトビオン酸を定量した。得られた結果を表1に示した。
【0027】
実施例3
実施例1と同様にして培養を開始し、その後、5時間経過時点でラクトース2gを添加し、同様に培養1日目、2日目にラクトビオン酸を定量した。得られた結果を表2に示した。
【0028】
実施例4
培養条件として、静置培養の代わりに振とう(100rpm)培養を行なった以外は実施例3と同様にして乳飲料を作製し、同様に培養1日目、2日目にラクトビオン酸を定量した。得られた結果を表1に示した。
【0029】
【表1】


上記結果からも明らかなように、乳に酢酸菌を接種して発酵させることによりラクトビオン酸含有乳飲料を作製することができる。この際、好気的条件で培養することにより、また、乳中にラクトースを別途添加することによりラクトビオン酸含量を高めることができた。

【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【識別番号】591030499
【氏名又は名称】大阪市
【出願日】 平成19年3月30日(2007.3.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−245587(P2008−245587A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−92061(P2007−92061)