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【発明の名称】 ペプチド類含有酸性乳飲料の製造方法
【発明者】 【氏名】松井 彰久

【氏名】筧 永子

【氏名】井上 真依子

【氏名】水澤 進

【要約】 【課題】種々の生理効果を期待するために各種ペプチド類を選択して使用する場合であっても、酸性乳飲料における品質安定性を損なうことなく、かつ、必要十分量のペプチド類を、風味や食感に影響を与えることなく配合できるペプチド類含有酸性乳飲料の製造方法の提供。

【構成】ペプチド類含有酸性乳飲料の製造において、酸性乳飲料ベースに安定化剤を配合して、これを均質化処理した後、ペプチド類を加えて混合することを特徴とするペプチド類含有酸性乳飲料の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド類含有酸性乳飲料の製造において、酸性乳飲料ベースに安定化剤を配合して、これを均質化処理した後、ペプチド類を加えて混合することを特徴とするペプチド類含有酸性乳飲料の製造方法。
【請求項2】
ペプチド類を最終製品に対して0.1質量%〜10質量%の範囲で混合する請求項1記載のペプチド類含有酸性乳飲料の製造方法。
【請求項3】
ペプチド類が、平均分子量200〜10,000のペプチド類である請求項1又は2記載のペプチド類含有酸性乳飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の生理効果が期待できる各種ペプチド類を含有する酸性乳飲料の製造方法に関し、更に詳細には、ペプチド類を添加して得られ、長期保存しても沈殿や凝集、ホエー分離等を生じにくい品質安定性に優れた酸性乳飲料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
摂取したタンパク質は、消化器官で消化酵素により分解されたアミノ酸として吸収されるが、このとき、タンパク質の全てがアミノ酸に分解されて吸収されるのではなく、その一部は、複数のアミノ酸分子が結合した化合物、すなわち、ペプチドとして吸収される。このペプチドは、タンパク質よりも素早く吸収されることが特徴であるが、これまでの研究により、タンパク質の分解物であるアミノ酸よりも吸収効率に優れていることが報告されていることから、栄養補給を目的とした各種飲食品へ利用できる食品素材として注目されている。
また、ペプチドは、吸収性に優れていることに加え、筋肉の増強、新陳代謝の向上、脂肪燃焼や疲労回復効果等、その起源や種類によっても異なる様々な生理機能を有することが明らかとされており、近年の消費者らの健康志向への高まりに伴って、新たな機能性の付加という観点から各種飲食品へ利用する技術も報告されている(特許文献1〜4)。
【0003】
一方、乳を乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌、酵母等で発酵して酸性化した発酵乳飲料や、酸味料等を直接配合して酸性化した酸乳飲料は、乳由来の特有な風味を持つ嗜好性に優れた飲料であるが、これを長期間保存すると、乳成分中のカゼイン蛋白質が凝集、沈殿を起こしてしまい、外観上及び風味上の問題が生じてしまうことは良く知られている。そのため、酸性乳飲料の多くは、通常、ペクチンやアルギン酸プロピレングリコールエステル等の安定化剤を単独或いは2種以上併用添加することで、乳蛋白質の安定化を図っており(特許文献5及び6)、このような安定剤を含有する酸性乳飲料が数多く市販されている。
【0004】
この酸性乳飲料は、嗜好性に優れているだけではなく、健康飲料としても消費者等に広く認知されているため、これに様々な機能性を有する各種ペプチド類を更に配合することは、健康志向の高まる市場にとって非常に有用である。
しかしながら、この酸性乳飲料に各種ペプチド類を配合した場合、安定化剤による安定化が損なわれてしまい、長期の保存安定性が損なわれてしまう問題があった。このような安定性の低下は、安定化剤を多量に添加することである程度改善できるが、この場合、安定化剤由来の不快味が際立つことになってしまい、飲み口や風味の良好なものが得られず、一方で飲料そのものが増粘して飲用し難いものとなってしまう。また、ペプチド類の配合量を低減することでも長期の保存安定性は改善されるが、その程度の配合量では、ペプチド類を添加することにより期待できる生理効果が得られない等の問題があった。
【0005】
そこで、本発明者らは、酸性乳飲料にペプチド類を配合する技術として、平均分子量が特定の範囲にあるコラーゲン由来のペプチドと安定剤を併用することにより、品質安定性に優れた酸性乳飲料が得られることを見出し、既に報告している(特許文献7)。
【特許文献1】特開2001−95481号公報
【特許文献2】特開2005−192557号公報
【特許文献3】特表2006−512912号公報
【特許文献4】特許第3061316号
【特許文献5】特開平5−7458号公報
【特許文献6】特開平10−313781号公報
【特許文献7】特開2001−314152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、酸性乳飲料にペプチド類を配合するための方法として本発明者らが報告した技術は、配合するペプチドの種類が限定されてしまうため、様々な機能性を付加するために各種ペプチド類を使用したい場合には適用できないことが判明した。
従って、本発明は、種々の生理効果を期待するために各種ペプチド類を選択して使用する場合であっても、酸性乳飲料における品質安定性を損なうことなく、かつ、必要十分量のペプチド類を、風味や食感に影響を与えることなく配合できるペプチド類含有酸性乳飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、各種ペプチド類を配合した酸性乳飲料の製造方法について更に鋭意検討を行なった結果、酸性乳飲料ベースに安定化剤を配合して、これを均質化処理し、次いでペプチド類を別途混合することにより、ペプチドの起源や種類等に関わらず、品質安定性に影響を与えずに、風味良好な酸性乳飲料が簡便に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ペプチド類含有酸性乳飲料の製造において、酸性乳飲料ベースに安定化剤を配合して、これを均質化処理した後、ペプチド類を加えて混合することを特徴とするペプチド類含有酸性乳飲料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、様々な生理効果を有する各種ペプチド類を、その起源や種類に関係なく目的に応じて、且つ、保存による沈殿や凝集、又はホエーの分離などの物性の劣化を伴うことなく酸性乳飲料に配合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のペプチド類含有酸性乳飲料は、安定化剤と、酸性乳飲料ベースと、各種ペプチド類とを混合することにより調製される。
ここで、酸性乳飲料ベースとは、牛乳、山羊乳、羊乳、豆乳等の動物及び植物由来の液状乳;脱脂粉乳;全粉乳;或いは粉乳、濃縮乳から還元した乳をそのまま或いは水で希釈して乳酸菌やビフィズス菌等の微生物を用いて発酵処理して得られる発酵乳;乳製品乳酸菌飲料等の生菌タイプの飲料や殺菌処理の施された発酵乳を含有する乳性飲料;さらには、ケフィアの他、乳成分に有機酸、果汁等の酸成分を加えて酸性にしたものが挙げられる。
【0011】
酸性乳飲料ベースの調製を微生物発酵により行う場合、その製造に用いられる微生物としては、通常、食品製造に使用される乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌であれば特に限定されず、例えば、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ユーグルティ、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.ブルガリカス、ラクトバチルス・ジョンソニー等のラクトバチルス属細菌;ストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属細菌;ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ラフィノラクチス等のラクトコッカス属細菌;エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム等のエンテロコッカス属細菌;ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・アングラータム、ビフィドバクテリウム・ラクチス、ビフィドバクテリウム・アニマリス等のビフィドバクテリウム属細菌を挙げることができる。なお、これらの乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌は、単独で用いても、或いは2種以上を併用してもよい。
【0012】
また、上記乳酸菌等に他の微生物、例えば、サッカロミセス属、キャンディダ属、ロドトルーラ属、ピチア属、シゾサッカロミセス属、トルラ属、チゴサッカロミセス属等の酵母類、あるいは、アスペルギルス属、ペニシリウム属、ユウロチウム属、モナスカス属、ミコール属、ニュウロスポラ属、リゾープス属等の糸状菌等を併用しても良い。
【0013】
上記微生物を原料乳に作用させるための条件や発酵方法としては、通常の発酵乳の製造に使用される条件及び方法を適用すればよく、特に限定されない。例えば、発酵条件としては、30〜40℃の温度で、pHが3.0〜5.0になるまで発酵させればよく、発酵方法としては、静置発酵、攪拌発酵、振盪発酵、通気発酵等から適宜選択して発酵に用いる微生物に適した方法を用いればよい。
【0014】
一方、酸性乳飲料ベースを酸成分を用いて調製する場合には、乳原料に、各種酸味成分を添加してpHを3.0〜5.0に調整すればよい。ここで、使用することができる酸味成分としては、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸等の有機酸やレモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジ、ストロベリー、ブルーベリー、ピーチ、グレープ、アップル等の果汁を挙げることができ、これらを2種以上併用してもよい。
【0015】
本発明の方法においては、先ず、前記した酸性乳飲料ベースに安定化剤を配合する。酸性乳飲料ベースに安定化剤を配合する方法としては、特に限定されず、例えば、30〜40℃の水に安定化剤を溶解させた後10℃以下に冷却した安定化剤溶液を、調製した酸性乳飲料ベースに添加して混合しても良く、また、酸性乳飲料ベースを調製する際に、安定化剤又はそれを含む溶液を添加して混合してもよい。
【0016】
ここで配合される安定化剤とは、酸性pH域で凝集、沈殿等を起こすタンパク質等を安定化する化合物を指し、具体的には、ペクチン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロース又はその塩(CMC)、水溶性大豆多糖類、キサンタンガム、ジェランガム等の化合物を挙げることができる。
安定化剤の種類は、適用する酸性乳飲料ベースの物性、風味等を考慮して適宜選択して使用すればよいが、後述するペプチド類を配合しても十分な安定性を維持できる点等を考慮すると、ペクチン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロース又はその塩(CMC)、水溶性大豆多糖類から選ばれる安定化剤を1種又は2種以上使用することが好ましい。
【0017】
酸性乳飲料に対する安定化剤の配合量は、特に制限されず、最終製品に対し、0.1質量%〜1.0質量%、特に0.15質量%〜0.6質量%が好ましい。安定化剤の配合量が、0.1質量%よりも少ないと、酸性乳飲料における十分なタンパク質の安定化効果を得ることは難しく、ペプチド類を配合した場合に品質の劣化を生じやすくなる傾向がある。他方、1.0質量%よりも多くなると、増粘等により飲料そのものの風味が著しく悪くなるおそれがある。
【0018】
次いで、安定化剤を混合した酸性乳飲料ベースを均質化処理する。均質化処理は、ホモゲナイザーを用いて常法により行えばよく、その圧力は、ホモゲナイザーで15MPa程度が好ましい。なお、均質化処理時の圧力を高く設定しても製品の品質安定性には特に影響は与えない。
【0019】
次いで、前記安定化剤を含む均質化処理された酸性乳飲料ベースに、ペプチド類を添加、混合する。ここで混合するペプチド類の種類は特に制限されず、動物性又は植物性のタンパク質を加熱、酸又はアルカリ或いはプロテアーゼ等の蛋白分解酵素により分解して得られるものであって、食品素材として使用が可能なものであれば何れも好適に使用することができる。
【0020】
このようなペプチド類を具体的に例示すれば、乳成分の分解物であるカゼインペプチド又はホエーペプチド;大豆タンパク質の分解物である大豆ペプチド;コラーゲンの分解物であるコラーゲンペプチド;小麦グルテンの分解物である小麦蛋白分解物等を挙げることができる。これらは何れも市販されているものをそのまま或いは水等に溶解して使用することができる。
【0021】
また、本発明において用いるペプチド類は、安定化剤を含む酸性乳飲料ベースに配合した場合における品質の劣化を防止するため、平均分子量が小さいものほどより好適である。ただし、分子量が小さすぎると最終的に得られる酸性乳飲料の風味に大きく影響を与える場合があることから、平均分子量が200〜10,000、好ましくは300〜7,000、より好ましくは300〜5,000の範囲にあるペプチド類を使用することが好ましい。
【0022】
本発明の方法において、ペプチド類の配合量は特に制限されず、最終製品に対して0.1質量〜10質量%とすることが好ましく、特に1質量%〜5質量%とすることが好ましい。
【0023】
本発明のペプチド類含有酸性乳飲料は、安定化剤とペプチド類とを別々に、且つ、安定化剤を酸性乳飲料ベースに配合して均質化した後にペプチド類を加えて混合することが重要であり、両成分を一緒に、或いはペプチド類を酸性乳飲料ベースに混合して均質化した後に安定化剤を混合した場合には、後述する実施例において示すとおり所望の効果を十分に得ることができない。
【0024】
なお、本発明の方法においては、安定化剤又はペプチド類を添加、混合する場合、甘味料等の任意成分を溶解して得られるシロップ溶液にこれらの成分を含有させて、添加混合することも可能であるが、より優れた品質安定性を得るために、ペプチド類は単独で混合することが好ましい。
【0025】
このようにして得られる本発明のペプチド類含有酸性乳飲料には、更に、食品として通常用いられている種々の食品素材を配合することができる。例えば、シロップなどの甘味料、増粘(安定)剤、乳化剤、乳脂肪、酸味料、各種ビタミン剤、ミネラル分、フレーバー等の任意成分を適宜配合することができる。具体的には、ショ糖、グルコース、フルクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖等の糖質;ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール;アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料;寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類、アルギン酸プロピレングリコール等の各種増粘(安定)剤;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;クリーム、バター、サワークリーム等の乳脂肪;クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味剤;ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE類等の各種ビタミン類;カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等のミネラル分;ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、紫蘇系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、アプリコット系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等のフレーバー類を挙げることができる。
【実施例】
【0026】
以下、試験例及び実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0027】
試験例1 ペプチド類含有酸性乳飲料の製造方法の検討
最終製品の処方が、酸性乳飲料ベース1重量部、安定化剤0.15%、ペプチド1%となるように表1の通りペプチド類含有酸性乳飲料(サンプル1〜4)を調製し、それぞれ、粒度分布と強制沈殿量を測定して、製造方法の相違による製品物性に与える安定性の影響について検討した。サンプル調製には、安定化剤として大豆多糖類(三栄源エフ・エフ・アイ(株)社製)、ペプチドとしてカゼインタンパク分解物(平均分子量300)を用い、酸性乳飲料ベースは、1%脱脂粉乳溶液に無水クエン酸を0.2%添加し、15MPaで均質化処理して調製したものを用いた。
【0028】
各サンプルの調製方法は次の通りである。
酸性乳飲料ベース、安定化剤及びペプチドを同時に混合・溶解して15MPaで均質化処理して得たものをサンプル1;酸性乳飲料ベースと安定化剤を混合・溶解して、均質化処理した後、ペプチドを添加して得たものをサンプル2;酸性乳飲料ベースとペプチドを混合・溶解して、均質化処理した後、安定化剤を添加して得たものをサンプル3;酸性乳飲料ベースに、安定化剤とペプチドとを添加して得たものとサンプル4とした。なお、参考品として、酸性乳飲料ベースと安定化剤を混合・溶解して均質化処理して得たペプチドを含有しない製品を調製した。
【0029】
前記のようにした調製したサンプルを全て90℃、10分間加熱殺菌し、(株)島津製作所製 粒度分布測定装置SALD−2200を使用して粒度分布を測定した。また、日本農林規格検査法の不溶性固形物の測定方法に従い、サンプル10mlを所定の遠沈管に量りとり、回転半径14.5cmの遠心分離機で3,000r.p.m.、10分間遠心後の沈殿物の容積(強制沈殿量)を測定した。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】


【0031】
表1の結果から、まず、ペプチドを含まない参考品とサンプル1とを比較すると、ペプチドを加えて混合した溶液を均質化処理を行ったサンプル1は、平均粒子径が大きく、強制沈殿量も多いことから、ペプチドを添加することにより安定性が悪くなることが確認できた。また、酸性乳飲料ベースと安定化剤を混合・溶解した溶液を均質化処理した後、これにペプチドのみを別添加したサンプル2は、ペプチドを含まない参考品と同程度の平均粒子径と強制沈殿量であった。また、他の方法で調製したサンプル3及び4では、サンプル1よりも著しく物性の安定性が損なわれた。
以上の通り、ペプチドを配合した酸性乳飲料の調製においては、ペプチドの配合方法によって製品の物性の安定性が著しく損なわれる場合が多いが、酸性乳飲料ベースに安定化剤を混合・溶解し、これを均質化処理した後、別途ペプチドを添加することにより、安定性の劣化を有意に防止することが確認された。
【0032】
試験例2 効果検討(1)(ペプチド分子量比較)
表2に示す平均分子量を有するホエーペプチドを用いて、最終製品の処方が、脱脂粉乳1%、無水クエン酸0.2%、安定化剤0.15%、ペプチド1%となるように、乳性飲料を調製した。なお、安定化剤としては、大豆多糖類(三栄源エフ・エフ・アイ(株)社製)を用いた。
【0033】
1)乳性飲料の調製
脱脂粉乳、無水クエン酸、安定化剤を混合・溶解し、これを均質化処理した後、ペプチドを混合してサンプル5〜7を得た。また、全ての原材料を混合・溶解した後、均質化処理して得た乳性飲料を、それぞれのサンプルの比較対照品1〜3とした。
【0034】
2)物性評価
調製したサンプル5〜7及び比較対照品を、90℃、10分間加熱殺菌し、(株)島津製作所製 粒度分布測定装置SALD−2200を使用して粒度分布を測定した。また、日本農林規格検査法の不溶性固形物の測定方法に従い、サンプル10mlを所定の遠沈管に量りとり、回転半径14.5cmの遠心分離機で3,000r.p.m.、10分間遠心後の沈殿物の容積(強制沈殿量)を測定した。その結果を表2に示す。
【0035】
【表2】


【0036】
表2の結果から、脱脂粉乳、クエン酸及び安定化剤を混合・溶解して、均質化した後、別途平均分子量が200〜10,000、特に200〜7,000のペプチドを添加・混合した場合は、平均粒子径が小さくなり、また強制沈殿量も少なくなることが確認された。
【0037】
試験例3 効果検証(2)(ペプチド添加量比較)
表3に示す添加量の設定に従い、カゼインペプチド(平均分子量300)を用い、試験例2と同様に乳性飲料を調製し、サンプル8〜10及び比較対照品4〜6を得た。また、得られたサンプルと比較対照品について、試験例2と同様の方法で粒度分布及び強制沈殿量を測定した。その結果を表3に示す。
【0038】
【表3】


【0039】
表3の結果から、脱脂粉乳、クエン酸及び安定化剤を混合・溶解して、均質化した後、これにペプチドを別途添加した場合は、ペプチドの添加量に関係なく、サンプル全てにおいて、平均粒子径が小さくなり、また強制沈殿量も少なくなる傾向が認められ、比較対照品に比べて物性の安定性に優れていることが確認された。
【0040】
試験例4 効果検証(3)(各種ペプチドによる比較)
表4に示す各種ペプチドを用い、試験例2と同様に乳性飲料を調製し、サンプル11〜14及び比較対照品7〜10を得た。また、得られたサンプルと比較対照品について、試験例2と同様の方法で粒度分布を測定した。さらに、得られたサンプルと比較対照品については、室温で静置状態で1週間保存した後、沈殿量を目視で観察し、以下の指標で評価した。その結果を表4に示す。
【0041】
沈殿量の評価指標:
− ・・・ なし
± ・・・ 僅かにあり
+ ・・・ あり
++ ・・・ 多い
【0042】
【表4】


【0043】
表4の結果から、脱脂粉乳、クエン酸及び安定化剤を混合・溶解して、均質化した後、これにペプチドを別途添加した場合は、ペプチドの種類に関係なく、サンプル全てにおいて、平均粒子径は小さくなり、保存後の沈殿量が軽減されることが確認された。また、ペプチドの平均分子量は300〜7,000が特に好ましいことが判明した。
【0044】
実施例1 コラーゲンペプチド含有乳酸菌飲料の調製
18%の脱脂粉乳溶液を殺菌(95℃、5分間)処理したのちに乳酸菌(ストレプトコッカス・サーモフィルス)を0.1%接種して37℃でpHが4.3にまるまで培養し、酸性乳飲料ベースを得た。また、これとは別に、砂糖23%、HMペクチン(CPケルコ社製)0.6%、無水クエン酸0.2%を含む溶液と、平均分子量5,000のコラーゲンペプチドを5%含む溶液を調製して殺菌(115℃、3秒間)処理し、それぞれシロップ液、ペプチド液とした。
得られた酸性乳飲料ベースとシロップ液とを重量比18:52の割合で混合し、これを15MPaで均質化処理した後にペプチド溶液を20重量部添加した混合し、コラーゲンペプチド含有乳酸菌飲料(実施品1)を得た。
また、シロップ液、酸性乳飲料ベース、ペプチド液を52:18:20(重量比)の割合で混合した後、15MPaで均質化処理したものを比較品(比較品1)として調製した。
【0045】
前記して得られたコラーゲンペプチド含有乳酸菌飲料(実施品1及び比較品1)について、(株)島津製作所製 粒度分布測定装置SALD−2200を使用して粒度分布を測定した。また、実施品1及び比較品1の10mlを15ml容の遠沈管に量りとり、遠心分離機で2,300G、20分間遠心後、30分間倒置し、沈殿物の重量を測定した。その結果を表5に示す。
【0046】
【表5】


【0047】
表5の結果から、ペプチドを含有する乳酸菌飲料を調製する際、酸乳ベースに安定化剤を添加混合して均質化処理を施した後、ペプチド液を別添加することにより、製品における平均粒子径が小さくなり、沈殿も生じにくくなることが確認された。
【0048】
実施例2 コラーゲンペプチド含有発酵乳の調製
18%(重量部)の脱脂粉乳溶液を殺菌(95℃、5分間)処理したのちに乳酸菌(ストレプトコッカス・サーモフィルス)を0.1%接種し、37℃でpH4.3になるまで培養し、酸性乳飲料ベースを得た。また、これとは別に、砂糖28%、HMペクチン(CPケルコ社製)1.4%を含む溶液と、平均分子量5,000のコラーゲンペプチドを5%含む溶液を調製して、殺菌(115℃、3秒間)処理し、それぞれシロップ液、ペプチド液とした。
得られた酸性乳飲料ベースとシロップ液とを重量比48:22の割合で混合し、これを15MPaで均質化処理した後にペプチド溶液を20重量部添加した混合し、コラーゲンペプチド含有発酵乳(実施品2)を得た。
また、シロップ液、酸性乳飲料ベース、ペプチド液を22:48:20(重量比)の割合で混合した後、15MPaで均質化処理したものを比較品(比較品2)として調製した。
【0049】
前記して得られたコラーゲンペプチド含有発酵乳(実施品2及び比較品2)について、(株)島津製作所製 粒度分布測定装置SALD−2200を使用して粒度分布を測定した。また、実施品1及び比較品1の10mlを15ml容の遠沈管に量りとり、遠心分離機で2,300G、20分間遠心後、30分間倒置し、沈殿物の重量を測定した。その結果を表6に示す。
【0050】
【表6】


【0051】
表6の結果から、ペプチドを含有する発酵乳を調製する際、酸乳ベースに安定化剤を添加混合して均質化処理を施した後、ペプチド液を別添加することにより、製品における平均粒子径が小さくなり、沈殿も生じにくくなることが確認された。
【出願人】 【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
【出願日】 平成18年9月5日(2006.9.5)
【代理人】 【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所

【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸

【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄

【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫

【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹

【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人

【識別番号】100101317
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 ひろみ

【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高

【識別番号】100134935
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 詩木

【識別番号】100130683
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 政広

【識別番号】100140497
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 信宏


【公開番号】 特開2008−61518(P2008−61518A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−240133(P2006−240133)