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【発明の名称】 塩蔵食品の製造方法及び前記方法により製造された塩蔵食品,並びに塩蔵食品製造用浸漬液
【発明者】 【氏名】三上 勲

【要約】 【課題】浸漬時間等の調整が容易であると共に,長期保存性を有し,見た目,食味共に優れる塩蔵食品を提供する。

【解決手段】ビワの葉及び/又はビワの種子を煮出して得た抽出液を含む,塩分濃度0.5〜20%の浸漬液を得,この浸漬液に食材を10〜360分浸漬する。好ましくは,前記抽出液を,凍結又は乾燥したビワの葉及び/又はビワの種子を粉砕して,海水,塩水又は真水100〜200ccに対して2gの割合で添加し,80〜98℃の温度で当初の水量に対し,水量が5〜10%減少するまで煮出して得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビワの葉及び/又はビワの種子を煮出して得た抽出液を含む,塩分濃度0.5〜20%の浸漬液に,食材を10〜360分浸漬することを特徴とする塩蔵食品の製造方法。
【請求項2】
前記抽出液を,凍結又は乾燥したビワの葉及び/又はビワの種子を粉砕して,海水,塩水又は真水100〜200ccに対して2gの割合で添加し,80〜98℃の温度で当初の水量に対し,水量が5〜10%減少するまで煮出して得ることを特徴とする請求項1記載の塩蔵食品の製造方法。
【請求項3】
前記浸漬液を,前記抽出液の塩分濃度を調整して得ることを特徴とする請求項1又は2記載の塩蔵食品の製造方法。
【請求項4】
前記食材の浸漬を,浸漬液の温度を0〜25℃に調整して行うことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の塩蔵食品の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の方法により製造された塩蔵食品。
【請求項6】
立塩法により塩蔵食品を製造する際に食材の浸漬に使用され,
ビワの葉及び/又はビワの種子を煮出して得た抽出液を含み,塩分濃度が0.5〜20%である塩蔵食品製造用浸漬液。
【請求項7】
前記抽出液が,凍結又は乾燥して粉砕されたビワの葉及び/又はビワの種子を,海水,塩水又は真水100〜200ccに対して2gの割合で添加し,80〜98℃の温度で当初の水量に対し,水量が5〜10%減少するまで煮出して得た煮出し汁であることを特徴とする請求項6記載の塩蔵食品製造用浸漬液。
【請求項8】
前記抽出液の塩分濃度を調整して得た請求項6又は7記載の塩蔵食品製造用浸漬液。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は,魚介類や食肉等の食材を,食塩水溶液に浸漬することにより行う,所謂「立塩法」による塩蔵食品の製造方法及び塩蔵食品,並びに塩蔵食品製造用浸漬液に関し,より詳細には,前記塩蔵処理に際してビワの葉及び/又はビワの種子から抽出した成分を用いる塩蔵食品の製造方法及び塩蔵食品,並びに塩蔵食品製造用浸漬液に関する。
【背景技術】
【0002】
塩蔵食品は,魚介類や食肉等の食材を食塩水溶液に浸漬するか(立塩法),又は食塩を振りかけることにより(撒塩法),食材に食塩を浸透させて貯蔵性を与えたものであり,イワシ,サバ,サンマ,タラ,イカ等の魚介類の切り身や開き等を塩漬けしたものが一般的であるが,その他にも,食肉等を対象としたもの,さらには,食塩を浸透させた食材を更に乾燥させた干物や,ハムやベーコン等のように食塩を浸透させた後に薫製にしたものも一種の塩蔵食品である。
【0003】
このような塩蔵は,元来,食材に対する食塩添加によって細菌の繁殖を抑制し,食材に長期保存性を持たせることを目的として行われてきたものであり,この目的のためには一般に8〜25%程度の食塩添加が必要であるとされている。
【0004】
しかし,健康志向の高まりつつある今日にあっては,比較的薄味の食材が消費者に好まれる傾向にあり,塩蔵食品においても食塩添加量を低減した,「減塩」食品に対する需要は大きい。
【0005】
なお,塩蔵食品に対する使用例ではないが,健康の増進や病気の予防,治療等を目的としてビワの葉や種子の抽出物を経口摂取することは従来より行われており,ビワの葉に肉桂や甘茶などを混ぜ合わせたものの煎汁は,暑気あたりや痢病を防ぐ効能がある「枇杷葉湯」として知られている。
【0006】
また,ビワの葉に比較して,より健康に有用な成分を多量に含むとする種子を原料とした茶や(特許文献1,2参照),ビワの種(枇杷核)より抽出したエキスをベースとした健康食品等も提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特開2004−105080号公報
【特許文献2】特開2005−237270号公報
【特許文献3】特開2003−245056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように近年にあっては塩蔵食品においても塩気の薄いものが好まれる傾向にあるが,塩蔵食品は元来,食材を腐敗等させる細菌の繁殖を,食塩の添加によって抑制していたのであるから,食塩の添加量を少なくして薄味とすればする程,出来上がった塩蔵食品の保存性は低下する。
【0009】
そのため,このような薄味に加工された塩蔵食品の中には,冷蔵等を行うことなしに長期保存をすることができないものも多く,また,長期保存性を得るために保存剤,防腐剤,抗酸化剤,防かび剤等が添加されているものも珍しくない。
【0010】
しかし,前述のように健康志向の高まりつつある今日において,このような食品添加剤の添加された商品は消費者に敬遠されがちであると共に,食品添加剤等を添加していない商品は,それ自体が高い付加価値となり高価で販売できることから,食品に対するこのような添加剤の添加を行うことなく,又は添加する場合であっても,例えば植物等を原料として抽出した天然由来の成分によって,保存性を向上させることが望まれている。
【0011】
また,立塩法によって塩蔵食品を製造する場合,出来上がった塩蔵食品を薄味に仕上げようとすれば,食材を浸漬する浸漬液(食塩水)の塩分濃度についても低くする必要があるが,この浸漬液は1回限りの使用によって廃棄されるものではなく,塩分や水分を補充しながら繰り返し使用されるものであるために,塩分濃度を低くすることによりこの浸漬液自体にも微生物や細菌類が繁殖するおそれがあり,腐敗や悪臭が発生し易いものとなる。
【0012】
そのために浸漬液の頻繁な交換が必要となり,食塩等,原材料の消費量が増加すると共に,浸漬液の交換時には,食材を浸漬液に浸漬する作業を行うことができず,作業の中断により生産性が低下する。
【0013】
さらに,このような塩蔵食品を製造する際に使用される前述の浸漬液の塩分濃度,その他の添加剤の調合や,食材の浸漬時間や浸漬時における温度管理等は,天候,気温,湿度,塩蔵する食材の種類や大きさ等に応じて,職人による感と経験により行われるために,これらの作業を行うためには熟練が必要であり,職人の経験値が出来上がる製品の品質に大きく影響し,均一な品質の製品を製造することが難しいものとなっていた。
【0014】
なお,前掲の特許文献1〜3では,ビワの葉や種子の健康食品乃至は飲料としての用途を開示するものの,ここではビワの葉や種子より抽出した成分を健康の増進や病気の予防等を目的として経口摂取するものであり,ビワの葉や種子より抽出した成分が,塩蔵食品の保存性,食味,外観等に良好な影響を与えることを伺わせる記載はない。
【0015】
本発明は,上記従来の塩蔵食品に関する欠点を解消するためになされたものであり,天候,気温,湿度,塩蔵する食材の種類や大きさ等による浸漬液の塩分濃度,その他の添加剤等の調合や,食材の浸漬時間や浸漬時における温度管理等が殆ど必要なく,また,微生物や細菌の繁殖を抑制することができ,従って腐敗や悪臭の発生等が生じ難い浸漬液を提供すると共に,この浸漬液を使用して食材に塩蔵処理を施すことにより,塩気を抑えた味付けでありながら,保存剤,防腐剤,抗酸化剤等の添加剤を別途添加することなしに長期保存を行うことができ,しかも食味及び見た目ともに向上すると共に,前記ビワの葉,種子より抽出された成分を塩蔵食品と共に摂取できて健康にも良い塩蔵食品の製造方法,及び前記方法により製造された塩蔵食品,並びに前記塩蔵食品の製造方法に使用する浸漬液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は,発明者による試行錯誤の結果,ビワの葉及び/又はビワの種子より抽出した成分を,立塩法により塩蔵食品を製造する際に使用する浸漬液に添加することで,前記従来技術が有する問題点が解消するだけでなく,冷凍保存時における冷凍ヤケの防止や,出来上がりの見た目や食味等が改善されること,さらには,製造する塩蔵食品が干物である場合には,天日干しを行った場合に害虫を忌避する効果を発揮することを見出したことに基づいてなされたものであり,
本発明は,ビワの葉及び/又はビワの種子を煮出して得た抽出液を含む,塩分濃度0.5〜20%の浸漬液,及びこの浸漬液に食材を10〜360分浸漬することにより塩蔵食品を製造する方法,及び前記方法により得た塩蔵食品を対象とする。
【0017】
前記抽出液は,凍結又は乾燥したビワの葉及び/又はビワの種子を粉砕して,海水,塩水又は真水100〜200ccに対して2gの割合で添加し,80〜98℃の温度で当初の水量に対し水量が5〜10%減少するまで煮出して得ることができる。
【0018】
さらに,前記浸漬液は,基本的には,塩(食塩)のみにより,前記抽出液の塩分濃度を調整して得るものとしても良い。
【0019】
なお,前記浸漬液に対する食材の浸漬は,浸漬液の温度を0〜25℃に調整して行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した本発明の構成により,本発明の塩蔵食品の製造方法,塩蔵食品,及び浸漬液によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0021】
(1)ビワの葉及び/又はビワの種子より抽出した成分を含む浸漬液を使用することにより,添加する塩分を低減した場合であっても,得られた塩蔵食品及び浸漬液において微生物や細菌の繁殖を抑制することができ,長期保存が可能であると共に悪臭等が発生し難い塩蔵食品及び塩蔵食品製造用の浸漬液を提供することができた。
【0022】
(2)また,前述した浸漬液を使用した塩蔵食品の製造方法にあっては,浸漬する食材の材質や大きさ等に対応して浸漬時間や温度管理を厳密に行う必要がなく,浸漬時間や温度管理等はこれを大まかに行うことで対応することができることから,熟練した職人によらず,何人によっても一定の品質の塩蔵食品を製造することが可能となった。
【0023】
(3)さらに,本発明の浸漬液を使用して製造された塩蔵食品は,食材のツヤや輝き,肉色の透明感,血合い部分の色等の見た目や,食味,匂い等の味覚面でも向上した塩蔵食品を得ることができた。
【0024】
(4)加えて,本発明の浸漬液を使用して製造された塩蔵食品は,冷凍しても冷凍焼けが生じず,また,天日干しによりこれを干物に加工した場合にも,例えばハエ等の害虫が寄ってこない等,害虫に対する忌避効果も得られるものであった。
【0025】
(5)なお,ビワの葉,及び/又はビワの種子より抽出された成分は,塩分と共に食材に浸透し,又は食材に付着することから,前記浸漬液を使用して得られた塩蔵食品は,これを食することにより同時に従来より健康促進,病気の予防や治療等の目的で摂取されてきたこれらの成分についても併せて摂取することができるものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に,本発明の実施形態について添付図面を参照しながら以下説明する。
【0027】
製造方法の全体構成
本発明の塩蔵食品の製造方法は,凍結粉砕,又は乾燥粉砕したビワの葉,及び/又はビワの種子を,海水,塩水又は真水で煮出してビワの葉,及び/又はビワの種子中に含まれる成分が抽出された抽出液を得,このようにして得られた抽出液の塩分濃度を調整して,食材を浸漬する浸漬液とし,この浸漬液に,食材である魚介類や食肉等を所定時間浸漬するものである。
【0028】
このようにして,前記浸漬液に浸漬することにより塩分及びビワの葉や種子中に含まれる成分が浸透した食材は,これをそのまま最終製品である塩蔵食品としても良く,又は必要に応じて天日干し,温風乾燥,冷風乾燥等して干物とし,又は薫製等して,これを本発明の塩蔵食品としても良い(図1参照)。
【0029】
浸漬液
前述した塩蔵食品の製造に使用する浸漬液の原料であるビワの葉及び/又はビワの種子は,自生,又は栽培しているビワの木より採取したものを使用し,原料とするビワの葉は,後述する粉砕前に必要に応じて洗浄する等して汚れ等を予め除去しておく。
【0030】
原料として使用するビワの種子は,例えばビワの実を原料とした缶詰,ジャム,飲料,菓子等の製造工程において,果肉より分離されたものを使用することができ,果肉の部分が取り除かれて,廃棄等されるビワの種子を回収し,必要に応じて洗浄等することにより汚れ等を除去して原料として使用することができる。
【0031】
前述したビワの葉,及びビワの実は,いずれか一方のみを本発明の浸漬液の原料として使用しても良く,または,両者を混合して使用しても良い。
【0032】
以上のようにして得られたビワの葉,及び/又はビワの種子は,これを凍結,又は乾燥した後,粒径0.1〜6mm程度に破砕乃至は粉砕する。
【0033】
粉砕されたビワの葉及び/又はビワの種子は,海水,塩水,又は真水100〜200ccに対して約2gの割合で添加され,このようにしてビワの葉及び/又はビワの種子の破砕粉が添加された海水,塩水,又は真水を加熱して,ビワの葉及び/又はビワの種子中に含まれる成分を煮出すことで抽出する。
【0034】
この成分の抽出は,ビワの葉及び/又はビワの種子の破砕粉が添加された海水,塩水,又は真水の加熱開始後,この煮出し液は当初の水量に対し水量が5〜10%減少するまで煮出し80〜98℃の温度に維持することにより行われる。
【0035】
このようにして,ビワの葉及び/又はビワの種子を煮出して得た煮出し汁は,この煮出し汁中に含まれるビワの葉及び/又はビワの種子の破砕粉をそのままとしてもよく,又,必要に応じて濾し器等を使用して除去し,抽出液を得る。
【0036】
このようにして得られた抽出液は,必要に応じて食塩を追加して塩分濃度を0.5〜20%に調整し,本発明の塩蔵食品の製造に使用される浸漬液が得られる。
【0037】
塩分濃度を低下調整するには,真水を使用するとビワ液の濃さも薄くなってしまうので,前記と同様に抽出した抽出液を追加投入することにより行う。
【0038】
塩蔵食品の製造
以上のようにして得られた浸漬液は,これを0℃〜25℃の温度に調整し,この浸漬液に魚介類や食肉等の食材を10分〜360分浸漬して,食材に塩分を浸透させる。
【0039】
このようにして本発明の浸漬液に浸漬することにより塩分が浸透した食材は,浸漬液より取り出した後,これをそのまま最終製品である塩蔵食品としても良く,また,必要に応じて天日干し,温風乾燥,冷風乾燥等によって干物に加工しても良く,さらにはハムやベーコン等のように薫製等に加工して最終製品としても良い。
【0040】
前記浸漬液による作用等
以上のように,本発明の浸漬液を使用して塩蔵食品を製造する場合には,従来,魚介類,食肉の種類や形状等によって微調整が必要であった浸漬液の塩分濃度,つけ込み時間,温度に関し,厳格な調整は不要となり,おおよその調整によって良質な塩蔵食品を得ることが可能であった。
【0041】
また,前述した本発明の浸漬液を使用して製造された塩蔵食品は,添加する塩分量を減少した場合であっても,合成添加剤等の添加なしに長期保存性にも耐え得るものであり,また,悪臭などの発生もない。
【0042】
同様に,浸漬液についても腐敗や悪臭の発生等が生じにくいものとなり,繰り返しの使用にも耐え得るものとなっていた。
【0043】
しかも,本発明の浸漬液を使用する場合には,単に塩蔵食品の長期保存性が得られるのみでなく,一例として魚の干物(開き)に関して観察した結果では,表皮面の状態が艶及び輝き共に向上し,肉色の透明度が増していた。さらに,血合いの部分の色が鮮明かつ濃くなり,塩蔵食品の見た目の美観が増していた。
【0044】
また,低塩で処理したことに伴う風味の向上に加え,肉質自体についても柔らかみが増し,これによる食味の向上も得られるものとなっていた。
【0045】
さらに,このようにして浸漬液に浸漬した食材を天日干しとした場合であっても,この塩蔵食品に対する害虫の付着がなく,害虫に対する忌避効果があることも確認された。
【0046】
しかも,前記浸漬液にこれらの効果を与えている成分は,従来より煎汁は茶として,抽出物は健康食品等として食用に供されているビワの葉や種子を原料とした天然由来の成分であることから,人体に害がないだけでなく,これらの抽出成分は,健康の増進,病気の予防や治癒の効果があるものとされているものであり,これを併せて摂取することができるものとなっている。
【0047】
また,塩蔵食品の製造に使用された前記浸漬液についても,前述のように植物であるビワの葉,種子より抽出した天然由来の成分であることから,これを廃棄等するに際しても環境に対する負荷が極めて小さいものとなっている。
【0048】
このような作用が生じる明確な理由は必ずしも明らかではないが,粉砕したビワの葉,及び/又はビワの種子を煮出すことによって得られた抽出液中には,塩蔵食品に対し,前述の保存性や,外観,食味を向上させ得る例えばサポニンやタンニン,アミグダリン等の成分が適当な割合で含まれており,これらの作用によって塩蔵食品に対して効果的な作用を及ぼしているものと考えられる。
【0049】
一例として,ビワの葉,ビワの種子に含まれる前記タンニンには抗酸化作用,殺菌作用等があり,また,アミグダリンには殺菌,消臭作用等があることから,これらの物質が塩蔵食品や浸漬液に長期保存性を与えると共に,悪臭の発生等を防止しているものと考えられる。
【0050】
また,同様にビワの葉,ビワの種子に含まれるサポニンには界面活性効果があり,細胞膜を破壊する等の作用があることから,これにより肉質が柔らかくなると共に,浸漬時間を厳密に調整することなく塩分の浸透が得られているものと考えられる。
【実施例】
【0051】
次に,本発明の方法により製造された塩蔵食品について,被験者の五感による観察試験を行った結果を以下に示す。
【0052】
試験の概要
本願発明の方法により製造した魚の干物(本願例)と,従来の方法で製造した魚の干物(比較例)について,それぞれ視覚的検査項目(透明感,光沢,血合いの色),味覚的検査項目(柔らかさ,甘み,生臭さ,旨味),及び両者から受けるイメージ,並びに全体評価を,数値によって評価した。
【0053】
試験対象
本願発明の方法により製造した魚の干物は,体長20cm前後のアジを開きにして内臓を除去,洗浄した後,本発明の浸漬液に30分間浸漬したものを天日干しにて,180分間干したものを使用した。
【0054】
浸漬に使用した本発明の浸漬液は,ビワの葉と種子の破砕粉を重量比で6:4の割合で混合したもの18.7gを,1000ccの真水で5分間煮出して抽出液を得,この抽出液に食塩を加えて塩分濃度を3%に調整して浸漬液とした。
【0055】
一方,比較例とした魚の干物は,塩分濃度3%の食塩水(ビワの葉,種子の抽出成分を含まず)を浸漬液として使用した点を除き,その他の条件を前記本願例と同様にして得られた魚の干物である。
【0056】
ちなみに,既知の製法は,開き加工→洗浄→酸化防止剤添加→乾燥である。
【0057】
試験方法
10〜60代(下表1に示す世代構成の)の男女50名(男女比1:1)を被験者とし,前述した視覚的検査項目(透明感,光沢,血合いの色),味覚的検査項目(柔らかさ,甘み,生臭さ,旨味),及び両者から受けるイメージに関する評価,並びに全体評価を行わせた。
【0058】
このうち,視覚的検査項目(透明感,光沢,血合いの色)については,調理前の干物(焼いていないもの)を対象とし,味覚的検査項目(柔らかさ,甘み,生臭さ,旨味)については,本願例及び比較例共に同一条件で焼いた干物を対象とした。
【0059】
【表1】


【0060】
評価方法
各評価項目に対し,被験者に「良い」,「悪い」,「どちらでもない」を数値によって評価をさせた。
【0061】
評価方法は,上記のうち「どちらでもない」を0ポイントとし,「良い」の程度を最高+3として,「悪い」の程度を最低を−3として評価させた。
【0062】
試験結果
以上のようにして得た評価数値を平均化し,グラフで表したものを図2に示す。
【0063】
図2からも明らかなように,本願例の干物は,いずれの評価項目においても比較例の干物よりも高い評価が得られており,視覚的,味覚的のいずれの項目においても,ビワの葉,種子の抽出液を含まない浸漬液を使用して製造された干物に比較して優れたものとなっていることが確認された。
【0064】
また,本願発明の効果として,下記の事項を挙げることが出来る。
(1)浸漬の際,厳格な塩分濃度や温度等の調整が不要であること。
<実施事例>
実施例[A]と同様の魚の干物で,体長20cm前後の秋刀魚を「開きにしたもの」と,実施例[A−2]として,これを「丸の状態」で同様に,内臓を除去,洗浄した後,本発明の浸漬液に30分間浸漬したものを天日干しにて,180分間干したものを準備した。
浸漬に使用した本発明の浸漬液は,実施例[A]と同じ。
【0065】
通常,「開き」と「丸」では塩分の浸透率が変わり,丸は肉厚が厚いので,開きの塩分濃度より高く,かつ浸透時間を長くすることが知られているが,前記,モニタリングと同等の内容で,両実施例[A],[A−2](丸と開き)について,前記50人全員が,ほぼ味が変わらないと評価した。
【0066】
(2)低塩分でも長期の保存が可能であること。
<実施事例>
市販品(保存剤等使用)と本発明方法により製造した魚の干物実施例[A]を7日後に比較した。匂い等,腐敗状況は市販品(保存剤使用)と変わるところがなかった。
【0067】
市販品は通常チルド温度で4日が賞味期間と言われているが,本発明方法により,保存剤等使用の市販品と比較しても,同等の効果が得られた。
【0068】
(3)害虫が付きにくいこと。
<実施事例>
本願発明の方法により製造した魚の干物実施例[A]と比較例[B]を屋外の同じ場所に各10枚を1セットにして1m間隔に離して置き害虫の着地状況を1時間観察した。
実施例[A]では,着地無しであったが,比較例[B]では,8回着地した。
【0069】
(4)天日干し時,「魚の油脂分」が酸化(過酸化物)の発生を抑える。
<実施事例>
実施例[A] 本願発明方法により製造した魚の干物
体長20cm前後のアジを開きにして内臓を除去,洗浄した後,本発明の浸漬液に30分間浸漬したものを天日干しにて,180分間干したもの。
【0070】
浸漬に使用した本発明の浸漬液は,ビワの葉と種子の破砕粉を重量比で6:4の割合で混合したもの18.7gを,1000ccの真水で5分間煮出して抽出液を得,この抽出液に食塩を加えて塩分濃度を3%に調整して浸漬液とした。
【0071】
比較例[B] 比較例とした魚の干物は,塩分濃度3%の食塩水(ビワの葉,種子の抽出成分を含まず)を浸漬液として使用した点を除き,その他の条件を前記本願例と同様にして得られた魚の干物。
【0072】
上記[A][B]を各20枚,2日間直射日光に投射し,官能試験を試みたところ,
・変化臭(油脂系食品独特の悪臭)では,比較例[B]の8割が発生,
・油焼変色(表面が黄色やがて赤褐色)では,比較例[B]の6割が発生したが,
実施例[A]には上記2件の発生は認められなかった。
【0073】
(5)チルド(5℃)状態保管でのパサつき。
上記[A][B]を各10枚チルド温度(5℃)で30日間保管。
ラップなどせず,直接冷気に触れる状態として,
比較例[B]の8割が,その表面が乾燥しパサパサ感あり。
実施例[A]は,湿度を保っていた。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明における塩蔵食品の製造方法のフロー図。
【図2】評価試験結果のグラフ。
【出願人】 【識別番号】507106124
【氏名又は名称】三上 勲
【出願日】 平成19年3月30日(2007.3.30)
【代理人】 【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明


【公開番号】 特開2008−245578(P2008−245578A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−91140(P2007−91140)