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【発明の名称】 やわらか漬物及びその製造方法
【発明者】 【氏名】坂本 宏司

【氏名】柴田 賢哉

【氏名】石原 理子

【氏名】中津 沙弥香

【氏名】▲高▼谷 健市

【氏名】山口 祥子

【氏名】沖本 克也

【氏名】村上 理絵

【要約】 【課題】漬物具材の形状、色、味、香りを保持し、栄養成分の溶出を抑制し、摂取者の摂取能力に応じて好ましい硬さならびに食感に容易に調整することができ、従来、漬物を食することができなかった咀嚼・嚥下困難者の食欲増進を図ると共に誤嚥を抑制し、食べる楽しみを提供することができるやわらか漬物や、取り扱いが容易で作業性がよく、衛生的に製造することができ、発酵工程での微生物による変敗を抑制でき、無駄なく、簡単且つ安価に製造可能なやわらか漬物の製造方法を提供する。

【解決手段】漬物具材を凍結、凍結・解凍、凍結・乾燥、又は、誘電加熱した後、分解酵素を含有する調味液と接触させ、加圧又は減圧して圧力処理をし、3〜22℃の品温下で発酵時間を調整して発酵させた後、殺菌処理し、漬物具材の形状を保持したやわらか漬物を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
漬物具材を凍結、凍結・解凍、凍結・乾燥、又は、誘電加熱した後、分解酵素を含有する調味液と接触させ、加圧又は減圧して圧力処理をし、3〜22℃の品温下で発酵時間を調整して発酵させた後、殺菌処理し、漬物具材の形状を保持したやわらか漬物を製造することを特徴とするやわらか漬物の製造方法。
【請求項2】
漬物具材の解凍を、22℃以下の空気中、水中、又は調味液中で行うことを特徴とする請求項1記載のやわらか漬物の製造方法。
【請求項3】
分解酵素が、ペクチナーゼ又はセルラーゼ活性を有することを特徴とする請求項1又は2記載のやわらか漬物の製造方法。
【請求項4】
調味液が、3質量%以上の食塩と、乳酸菌又は調味料のいずれか一方又は双方を含み、pHを2〜10の範囲に調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のやわらか漬物の製造方法。
【請求項5】
圧力処理を包装材中で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のやわらか漬物の製造方法。
【請求項6】
圧力処理を、10mmHg〜60mmHgの減圧状態を10秒〜500秒間維持した後、密封する真空包装により行うことを特徴とする請求項5記載のやわらか漬物の製造方法。
【請求項7】
発酵を3℃〜22℃の品温下で8時間〜180時間行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のやわらか漬物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載のやわらか漬物の製造方法によって得られる、具材の形状を保持した咀嚼・嚥下困難者用やわらか漬物であって、硬さが5.0×105N/m2以下であることを特徴とするやわらか漬物。
【請求項9】
冷凍食品又はチルド食品であることを特徴とする請求項8記載のやわらか漬物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者等の、咀嚼・嚥下困難者用食品に適し、漬物具材を元の形状を維持して柔軟にし、食欲を誘うことができるやわらか漬物や、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では急速な高齢社会の進展に伴い、要介護下の生活を送る高齢者の割合が増加する傾向にある。摂食・嚥下障害は、脳神経障害や機能不全など様々な疾患で発症するが、加齢も大きな要因の一つであり、高齢者において摂食・嚥下障害の兆候を示す傾向は強い。健康増進法では、摂食・嚥下障害に対応するため、特別用途食品として、硬さ又は粘度を基準とした咀嚼・嚥下困難者用食品の許可基準が示されている。
【0003】
一方、病院や介護施設等で利用されている、咀嚼・嚥下困難者を対象とした介護用食品を見ると、安全性や機能性を重視したものが多く、QOL(quality of life)の視点でみると未だ発展途上にある。例えば、高齢者又は介護用食品として利用されている食品の多くは、煮る、刻む、ペースト状にする等の処理を行い、咀嚼や嚥下機能を補助するような形態で製造されている。これら介護食の製造には、様々な工夫が施されているものの、何の食材を食しているか認識できない状態の食品では、食欲をそそる食品とは言えない現状がある。本来、食品は栄養学的に優れていることはもちろんのこと、色、味、香りに加え形状から受ける視覚的要素も重要な構成要素である。また、食欲の低下は、摂食・嚥下障害者の低栄養化の一因ともなっている。すなわち、介護食品には生体機能の維持のみでなく、食事の楽しみや親睦・交流の場を与え、精神衛生の向上の機能が求められる。高齢者は、特に漬物を好む傾向が強く、漬物をきざみ食として高齢者の摂食障害者に提供する場合もあるが、総じて障害度の高い高齢者は食することもできない状況にある。
【0004】
本発明者らは、植物食品素材を凍結、解凍後、減圧下で酵素液に浸漬し、原型を留めた状態で、植物食品素材の組織へ酵素を導入する方法(特許文献1)や、減圧下で植物性食品を酵素液に浸漬し組織へ酵素を導入し、調味し、加熱加圧殺菌する方法(特許文献2)等を既に開発している。この方法により得られる食品は、高齢者等咀嚼が困難な者が食することが困難な硬い食材をその食材本来の形状、色、味、香り、食感、栄養成分を維持した形態で賞味することができ、しかも、摂取者が必要とする硬さの程度に応じて、食品の硬さを調整することができ、効率よく製造することができるものである。しかしながら、漬物は発酵工程を有するため、腐敗微生物の成育を制御する必要があり、漬物具材の形状を保持したまま、発酵中の型崩れの抑制と好ましいソフトな歯応えを有し、高齢者等の咀嚼・嚥下困難者にとって食欲を増進させる漬物は従来の方法によっては製造することは困難である。
【特許文献1】特許第3686912号公報
【特許文献2】特開2006−223122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、漬物具材の形状、色、味、香りを保持し、栄養成分の溶出を抑制し、摂取者の摂取能力に応じて好ましい硬さならびに食感に容易に調整することができ、従来、漬物を食することができなかった咀嚼・嚥下困難者の食欲増進を図ると共に誤嚥を抑制し、食べる楽しみを提供することができ、精神衛生面でも有効なやわらか漬物を提供することにある。更に、柔軟であっても型崩れに細心の注意を払うことを不要とし、製造工程、搬送、流通過程において取り扱いが容易で作業性がよく、かつ、衛生的に製造することができ、発酵工程での微生物による変敗を抑制でき、無駄なく、簡単且つ安価に製造することができるやわらか漬物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、咀嚼・嚥下困難者にとって好ましい硬さと呈味性を有し、かつ、食欲の増進と誤嚥の抑制を両立できる漬物を製造するため、鋭意研究を重ねた。その結果、浅漬け又は古漬けの製造工程において、内部に分解酵素の導入を容易にする前処理を行った漬物具材に分解酵素を含有する調味液を接触させ、圧力処理をすることにより、漬物具材の内部に分解酵素を均一に分布させ、3℃〜22℃の品温下で緩慢な発酵及び酵素反応を行わせることにより、過度の発酵による腐敗微生物の増殖を抑制し、漬物具材中で均一な酵素反応及び発酵を促進させることができ、高齢者・介護用として好適なやわらか漬物を得ることができることを見い出した。特に、3%以上の食塩濃度の調味液を用い、乳酸菌や調味料、栄養物等を含有させることにより、分解酵素と同時にこれらを食品素材内部に導入することができ、腐敗を抑制し、均一な軟化、発酵を可能とし、見た目がよく、味、香り、食感を保持し、咀嚼・嚥下困難者の食欲の増進を図り、適した硬さに調整したやわらか漬物を製造することができることの知見を得た。更に、特定の条件による真空包装を行うことにより、取り扱いが容易で作業性がよく、衛生的に製造でき、更に冷凍又はチルドして流通の容易を図ることができることの知見を得て、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。冷凍食品またはチルド食品として適している。
【0007】
すなわち、本発明は漬物具材を凍結、凍結・解凍、凍結・乾燥、又は、誘電加熱した後、分解酵素を含有する調味液と接触させ、加圧又は減圧して圧力処理をし、3〜22℃の品温下で発酵時間を調整して発酵させた後、殺菌処理し、漬物具材の形状を保持したやわらか漬物を製造することを特徴とするやわらか漬物の製造方法に関する。
【0008】
また、本発明は、上記やわらか漬物の製造方法によって得られる、具材の形状を保持した咀嚼・嚥下困難者用やわらか漬物であって、硬さが5.0×105N/m2以下であることを特徴とするやわらか漬物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のやわらか漬物は、漬物具材の形状、色、味、香りを保持し、栄養成分の溶出を抑制し、摂取者の摂取能力に応じて好ましい硬さならびに食感に容易に調整することができ、従来、漬物を食することができなかった咀嚼・嚥下困難者の食欲増進を図ると共に誤嚥を抑制し、食べる楽しみを提供することができ、精神衛生面でも有効である。また、本発明のやわらか漬物の製造方法は、柔軟であっても型崩れに細心の注意を払うことを不要とし、製造工程、搬送、流通過程において取り扱いが容易で作業性がよく、かつ、衛生的に製造することができ、発酵工程での微生物による変敗を抑制でき、無駄なく、簡単且つ安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のやわらか漬物の製造方法は、漬物具材を凍結、凍結・解凍、凍結・乾燥、又は、誘電加熱した後、分解酵素を含有する調味液と接触させ、加圧又は減圧して圧力処理をし、3〜22℃の品温下で発酵時間を調整して発酵させた後、殺菌処理し、漬物具材の形状を保持したやわらか漬物を製造することを特徴とする。
[漬物具材]
本発明のやわらか漬物の製造方法に用いる漬物具材としては生野菜、塩蔵野菜等いずれであってもよく、具体的には、大根、ニンジン、ゴボウ、蕪、筍、蓮根、ラッキョウ、南瓜、キュウリ、瓜、茄子、白菜、キャベツ、野沢菜、広島菜、高菜等の生野菜や、ラッキョウ、ザーサイ、菜芯、レンコン、ニンジン、大根の塩蔵野菜を挙げることができる。これらは、予め、ブランチング処理することが好ましい。
【0011】
生野菜は浅漬け具材として用いることが好ましい。生野菜は、例えば、必要に応じて皮むきし、適宜カットした後、下処理工程として、腐敗微生物の増殖を抑制するため電解水殺菌し、加熱処理することが好ましい。具材の大きさとしては、具材の表面に接触した分解酵素や調味料等が圧力処理により組織内部に効率的に浸透する大きさであればよいが、圧力処理を効率よく行うために、概略10mm〜50mm角程度を挙げることができる。具体的には、例えば、大根は25mm×25mm×5mmのイチョウ切り、ラッキョウは10mm〜20mm長丸球形、キュウリは15mm〜30mm長さの輪切り等を挙げることができる。
【0012】
塩蔵野菜は、長期保存目的で、例えば、15%以上の塩分で3ヶ月以上塩漬けして乳酸醗酵させた野菜で、主に古漬け具材として用いることが好ましい。塩蔵野菜は、脱塩後、適宜カットし、下処理工程として加熱処理することが好ましい。塩蔵野菜の具材の大きさも、上記生野菜と同様の大きさを具体的に挙げることができる。
【0013】
[凍結、凍結・解凍、凍結・乾燥、又は、誘電加熱]
漬物具材の組織に緩みを生じさせるのは、漬物具材の組織内部に分解酵素や、発酵に係る乳酸菌等の微生物の導入を容易にするために行う。漬物具材の組織に緩みを生じさせる方法としては、凍結、凍結後解凍、凍結後乾燥、若しくは誘電加熱を挙げることができる。
【0014】
漬物具材の凍結は、具材の組織内部の水分を氷結させ、解凍により組織の緩みを生じさせ、これを利用して組織内部の気体と分解酵素等との置換を容易にし、具材の中心部への分解酵素等の導入を促進させ得る条件で行うことが好ましい。凍結温度としては−5℃以下を挙げることができる。凍結温度が−5℃以下であれば急速凍結、緩慢凍結いずれも適用することができるが、氷結晶を内部全体に均一に分布させ、食感を悪化させないことを考慮すると、実用的な面から−15℃程度が好ましい。凍結時間は漬物具材内部全体に氷結晶を均一に分布させることが可能であれば、30分で十分であるが、これより長時間凍結してもよい。
【0015】
また、表皮が厚い具材では、凍結後、表面の水分の減少率が2〜10質量%程度になるまで表面の水分を蒸発させることが、分解酵素等の導入効率を高めることができるため、好ましい。表面水分の蒸発には冷風乾燥、温風乾燥、凍結乾燥が好適である。
【0016】
上記凍結した漬物具材は凍結状態のまま用いることもできるが、解凍して用いもよい。凍結した具材の解凍方法としては、22℃以下の品温度での解凍方法が好ましく、例えば、24時間以上で緩慢に解凍することが、具材組織内部に比較的大きく、かつ均一に空隙を成形することができることから、好ましい。解凍は、空気中で行うこともできるが、具材を水、又は調味液等の液体に浸漬して行うことができる。かかる液体としては塩分3〜5質量%のものを挙げることができる。また、漬物具材を分解酵素を含有する調味液中に浸漬させて解凍を行うことにより、後工程の分解酵素を含有する調味液を具材に接触させる工程を同時に行うこともできる。
【0017】
液体中での解凍は、19℃24時間で行うことが好ましい。この温度で解凍を行うことにより、腐敗微生物の増殖を抑制し、品質の劣化を抑制することができる。液体の使用量としては、凍結漬物具材が完全に液体中に浸漬するように、凍結漬物具材と液体の質量比が1:1の割合であることが好ましい。
【0018】
また、具材の誘電加熱は、漬物具材内の組織間及び細胞内に含まれる水を蒸散させ、具材中の含水量を低減させ、水分移動と水蒸気拡散過程を急速に行わせることにより、分解酵素の通り道をつくり、これにより、分子量が大きい分解酵素の細胞内への導入を容易にさせ得る。
【0019】
上記誘電加熱には高周波、マイクロ波のいずれも使用することができるが、マイクロ波誘電加熱が好ましく、周波数300MHz〜30GHz(波長1cm〜1m)のマイクロ波を用いることが好ましい。誘電加熱を行う出力としては、加熱時間との関連により適宜調整することができ、低出力であれば加熱時間を長く、高出力であれば加熱時間を短くすることにより調整することができる。
【0020】
誘電加熱時の温度は、具材の水分の蒸散効果を得るため、具材の中心温度が60℃以上であることが好ましく、より好ましくは80〜100℃である。加熱時間は具材に応じて設定する必要があるが、短いものでは20秒程度の加熱でも十分である。
【0021】
このような誘電加熱を行う装置としては、一般家庭で使用されている電子レンジや店舗で使用されている業務用レンジ、また、大量生産用に工場レベルで使用されるマイクロ波加熱機や減圧マイクロ波加熱機、加圧マイクロ波加熱機等を使用することもできる。
【0022】
誘電加熱は、具材の含水量を具材に対して3質量%以上低減するように行うことが好ましい。具材の含水量が具材に対して3質量%以上低減することにより、具材中において水分移動と水蒸気拡散が充分に行われ、後述する分解酵素と具材内の空気との置換効率を飛躍的に上昇させることができる。具材の含水量の低減は60質量%以下であることが、漬物具材の形状や性状が損なわれるのを抑制することができるため、好ましい。また、誘電加熱は具材を乾燥できるという特徴をもっており、水分の蒸散の程度によっては具材表面から乾燥が起こる。漬物具材が硬い外皮をもつ場合、この乾燥処理を利用して表面乾燥を兼ねた誘電加熱は更に分解酵素と具材内の空気の置換効率が上がり有効な場合もある。しかしながら、いずれの具材であっても過度の誘電加熱は、具材の形状や性状が失われてその品質を著しく損なう場合があり、圧力処理による分解酵素と空気の置換効率を却って低減させる原因となる場合があり、過度の乾燥を避ける必要がある。
【0023】
ここで、漬物具材の含水量の低減は、105℃の高温加熱により変化量する水分量を測定し、本来の具材が含有する水分量に対する、処理を行った具材が含有する水分量の割合の算出値を採用することができる。
【0024】
誘電加熱後、具材を冷却することが、加熱により膨張した具材内の組織及び細胞を収縮させ、具材の細胞間隙の広がり、細胞の損傷や緩みを生じさせるため、好ましい。誘電加熱後の具材の冷却は、分解酵素の接触に際して酵素失活が起こらないように、また、微生物の発酵による変敗を抑制するため22℃以下とすることが好ましい。後工程の圧力処理を直後に行わない場合は、冷蔵保存しておくことも可能である。
【0025】
誘電加熱は具材の凍結・解凍処理と併用し、具材の凍結・解凍の前、又は後に行い、具材の組織間、細胞内の間隙を拡張させ、分解酵素の導入をより容易に行うこともできる。また、誘電加熱を行う場合は、漬物具材の腐敗微生物死滅処理を兼ねることができる。
【0026】
[分解酵素接触]
上記凍結、凍結・解凍、凍結・乾燥、又は、誘電加熱を行った具材と、分解酵素を含有する調味液との接触は、調味液を浸漬、塗布、噴霧する方法等により行うことができる。調味液は分解酵素と共に、3質量%以上の食塩と、乳酸菌、糖類又はアミノ酸のいずれか1つ又は2つ以上とを含むことが好ましい。
【0027】
調味液に加える分解酵素としては、ペクチナーゼ活性又はセルラーゼ活性を有する分解酵素が、ペクチンやセルロースを加水分解でき、漬物具材を柔軟にすることができることから、好ましい。かかる分解酵素としては、例えば、市販されているスミチームPTE(新日本化学)、ヤクルトペクチナーゼ(ヤクルト薬品工業)、スクラーゼN(三共ライフテック)、セルラーゼA「アマノ」3(天野エンザイム)等を好適に列挙できる。分解酵素の調味液中の濃度としては、最終製品総質量中0.01〜1質量%が適している。例えば、浅漬け大根の場合は、最終製品総質量中0.01〜0.03質量%が好適である。調味料中の分解酵素濃度が0.01質量%以上であれば、圧力処理により漬物具材内部まで分解酵素が浸透し、漬物具材を充分に軟化させ、呈味性を増加させることができる。ここで、最終製品とは、包装材中に収納されたやわらか漬物及び同時に収納された調味液を含むものをいう。
【0028】
上記調味液には乳酸菌が含有されることが、得られるやわらか漬物に爽快な酸味と漬物らしい風味を付与することができるため、好ましい。乳酸菌は調味液中に106〜108個/g含有されることが好ましい。
【0029】
また、上記調味液には調味料として3質量%以上の食塩が含有されることが、腐敗菌の発生を抑制し、好適な発酵を行うことができることから、好ましく、食塩の含有量が3〜5質量%であることが、過分の塩分摂取を抑制できることから好ましい。調味料は得られるやわらか漬物に風味を付与し、食欲を増進させることから好ましい。かかる調味料としては、醤油、味噌、酢、砂糖等の糖類、アミノ酸類、核酸類等、油脂、香辛料や、着色料等を挙げることができ、例えば、醤油、発酵調味料、糖類、かつおだし、昆布だし等を配合することができる。上記調味液には、その他栄養物等を含有させることができる。
【0030】
調味液は具材によって、適したpHを選択することができるが、pH2.0〜10.0が好ましく、pH2.0〜6.0であることがより好ましい。例えば、浅漬けの大根の場合は、pH4.2〜4.7が適当である。
【0031】
調味液のpHを2〜10の範囲に調整する方法としては、酢、クエン酸等を添加する方法を挙げることができる。
【0032】
このような調味液の使用量としては、漬物具材が完全に調味液中に浸漬した状態になるように、漬物具材に対し、質量比において同量とすることが好ましい。
【0033】
また、上記凍結具材の解凍を、液中で行った場合は、残液に所定量の分解酵素を添加し、必要に応じて乳酸菌、糖類、アミノ酸等を添加し、更に、液量を、漬物具材に対し質量比で同量となるように調整して調味液を調製することができる。
【0034】
上記調味液と漬物具材との接触は、浸漬、噴霧、塗布等により行うことができるが、漬物具材を包装する包装材中に、具材と共に収納することによって行うこともできる。
【0035】
[圧力処理]
分解酵素を含む調味液と接触した後行う圧力処理は、減圧、加圧、これらを適宜組み合わせてもよく、必要に応じて複数回反復することもできる。減圧としては10〜60mmHg程度、加圧としては10〜4000気圧等を挙げることができる。この範囲の圧力処理により、例えば、30秒〜60分間等短時間で、凍結処理等により組織が緩んだ具材内部に解酵素等を容易に導入することができる。
【0036】
このような圧力処理は、漬物具材を包装材中に収納して行うことが、分解酵素が導入され軟化した具材の取り扱いが容易であるため、好ましい。圧力処理は漬物具材を収納した包装材の密封の前、又は後に行うことができるが、真空包装により行うことが具材の包装を同時に行うばかりでなく、その後の発酵処理や流通過程における取り扱い性に優れることから好ましい。
【0037】
真空包装に用いる包装材としては、気密、液密の密封状態を維持できるシール性に優れ、真空包装に対する耐久性を有するものであれば、いずれであってもよいが、軽量で、運搬性に好適なプラスチック製や、気密性を向上させるためにアルミ蒸着プラスチック製等が好ましい。その形状としては、容器、可撓性を有する袋(軟包装材)等を挙げることができる。使用する袋としては、例えば、浅漬けの大根の場合、大根100g及び調味残液50gに対し、160mm×250mmの大きさであることが、調味液を放逸させずに減圧包装を行うことができることから好ましい。
【0038】
上記漬物具材の真空包装は、具材の種類、大きさによって適宜選択することができるが、10mmHg〜60mmHgの減圧状態を10秒〜500秒間維持した後、密封することが好ましく、50mmHg前後で、処理時間30秒〜100秒で行うことが適当である。真空包装としては、実用的な面から、真空包装機を使用することが好ましい。真空包装機を用いることが、減圧処理と同時に包装材を密封シールすることができ、実用性の点からも好適である。具体的には、例えば、浅漬けのキュウリの場合、調味液に接触後、キュウリ150gのみを160mm×250mmの袋に収納し、真空包装機を用いて、50mmHg下30秒間処理し、シールする方法等を挙げることができる。
【0039】
[発酵]
発酵は3℃〜22℃の品温下で発酵時間を調整して行う。22℃以下で緩慢な発酵を行うことにより、腐敗菌の増殖を抑制することができ、均一な柔軟性を有するものとでき、また、発酵温度が3℃以上であれば、製造効率の低下を抑制することができる。発酵時間は、発酵においては、漬物の生成と、酵素による分解による柔軟化も同時に進行するため、具材の種類や、摂取者が必要とする柔軟性によって、所望の風味や、柔軟性が得られるように、環境温度や発酵温度を考慮して適宜選択することができ、例えば、1時間〜180時間等を挙げることができる。具体的には、キュウリの場合、19℃で1〜24時間、大根、ラッキョウの場合、19℃で24時間〜96時間、ザーサイ、レンコン、ニンジンの場合、5〜10℃120時間〜168時間を挙げることができ、更に、大根は19℃で72時間、キュウリは19℃で24時間、ラッキョウは19℃で48時間等が適している。また、ザーサイは5〜10℃で168時間、ニンジンは5〜10℃で120時間、レンコンは5〜10℃で144時間が適している。発酵時間が上記範囲を超えると、腐敗微生物が増殖して、風味が低下しガスを発生させ製品価値を低下させる傾向にある。
【0040】
また、嚥下障害者用漬物を製造する場合、発酵後、漬物具材に増粘剤を含有させることもできる。漬物具材の組織中に、増粘剤を均一に含有させることができように、漬物具材に接触させ再度圧力処理を行うこともできる。増粘剤が内部組織に含有されることにより、漬物の咀嚼時に漬物内部から滲出する水分の減少を図り、咀嚼・嚥下困難者の誤嚥を抑制することができる。増粘剤としては、具体的には、小麦デンプン、米デンプン、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、サツマイモデンプン、カードラン、ガム類、寒天、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム等を挙げることができる。
【0041】
[殺菌]
発酵後、腐敗菌微生物の死滅、発酵、酵素による軟化の進行を停止のために行う。殺菌は真空包装の状態で、例えば、80〜95℃で20〜50分行うことが、80℃以上10分以上で酵素が失活し、75℃30分以上で腐敗微生物がほぼ死滅するため、好ましい。具体的には、浅漬けの大根は、80℃で30分が好適である。
【0042】
真空包装を行った場合は、レトルト食品として流通させることもできるが、例えば、−15℃以下等で冷却し、冷凍食品又はチルド食品として流通させると、取り扱いが容易であり、風味の低下を抑制することができるため、が好ましい。
【0043】
[やわらか漬物]
上記の方法により得られる本発明のやわらか漬物は、発酵の程度、分解酵素による作用により得られる漬物具材の軟らかさを調整することができ、咀嚼、嚥下困難者にとって、容易に摂取することができ、嗜好を満足させ、食欲増進を図ることができる。やわらか漬物の柔軟性としては、例えば、咀嚼困難者が舌で容易に咀嚼できる硬さとして、5.0×105N/m2以下であることが好ましく、嚥下障害者としては、5.0×105N/m2以下、好ましくは5.0×104N/m2以下が好ましいといえる。ここで、漬物の硬さは(株)山電製物性測定器で測定した値を採用することができる。
【実施例】
【0044】
次に本発明について実施例より詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
[実施例1−1]
生大根を5〜7mm幅の厚みに皮むきし、幅1辺15mmイチョウ切りにしたものを、電解水に15〜60分浸漬し、加熱処理2〜4分を施して、氷水で冷却したものを凍結した。電解水又は次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理すると、微生物増殖を制御し、失活の際のガスの発生を防ぐ効果がある。凍結は冷蔵庫で−15℃以下40時間行った。
【0046】
pH4.2〜4.7、Bx30〜32、食塩4質量%前後でMSG、コハク酸Na、クエン酸、果糖ぶどう糖液糖、水、ウコン色素、カラメル色素からなる調味液を作成し、凍結大根:調味液=1:1の質量割合(凍結大根が完全に液に漬かる量)で袋に入れ、19℃の温度帯で24時間放置した。24時間以下では解凍が不完全であり、24時間以上の場合菌数が増えてしまい、膨れの原因となった。
【0047】
液漬解凍大根を液切りし、残液に酵素スミチームPTEを入れた。このときの酵素量は、液中0.075質量%とした。液切りした解凍大根:酵素入り残液=2:1の質量割合で袋詰めした。この割合は真空包装機で減圧操作をする際に、袋から液がこぼれない最適の量である。真空包装機(東静電機社製)を用いて真空時間30秒間減圧処理を行った。
【0048】
19℃の温度帯で48〜96時間酵素反応を行い、均一な軟らかさの漬物を得た。この反応時間は高齢者が容易に咀嚼できる硬さの漬物とでき、腐敗菌の増殖を抑制できる時間であった。得られたやわらか漬物の硬さを山電製物性測定器で硬度を測定したところ、5.0×105N/m2以下であり、漬物は原型を留めていた。酵素の機能を失活させ軟化を停止させるため、殺菌も兼ねて、80℃30分加熱した。その後、冷凍し冷凍食品とした。
【0049】
[比較例1−1]
反応時間を5時間とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた漬物は柔軟になっていたが、5.0×105N/m2以上であり、硬さは高齢者にとって、舌でつぶすには困難な硬さであり、均一な硬さではなかった。
【0050】
[比較例1−2]
反応時間を96時間とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた漬物の硬度は5.0×103N/m2以下であった。硬さは形状を保持できない状態であった。
【0051】
上記より大根の場合は、発酵時間は5時間以上96時間以下を選択することができることが分かる。
【0052】
[実施例2]
15%以上の塩分濃度に塩蔵したラッキョウを、2〜3夜流水脱塩(塩分が0.5%以下まで)し、加熱処理3〜7分を施して、氷水で冷却し、凍結した。凍結は冷蔵庫で−15℃以下40時間行った。
【0053】
pH2.3〜2.4、Bx45〜47、食塩4.8質量%、醸造酢、砂糖、発酵調味料、水、調味料(アミノ酸等)からなる調味液を作成し、凍結ラッキョウ:調味液=1:1の質量割合(凍結ラッキョウが完全に液に漬かる量)で袋に入れ、19℃の温度帯で24時間放置した。24時間以下では解凍が不完全であり、24時間以上の場合菌数が増えてしまい、膨れの原因となった。
【0054】
液漬解凍ラッキョウを液切りし、残液に酵素スミチームPTEを入れた。このときの酵素量は、液中2〜3質量%とした。液切りした解凍ラッキョウ:酵素入り残液=2:1の質量割合で袋詰めした。この割合は、真空包装機で減圧操作をする際に、袋から液がこぼれない最適の量である。真空包装機(東静電気社製)を用いて真空時間30秒で減圧処理を行った。
【0055】
19℃の温度帯で48時間、発酵及び酵素反応を行い、均一な柔らかさの漬物を得た。この反応時間は高齢者が容易に咀嚼できる硬さの漬物とでき、腐敗菌の増殖を抑制できる時間であった。得られた漬物の硬さは5.0×105N/m2以下であり、漬物は原型を留めていた。酵素の機能を失活させ軟化を停止させるため、殺菌も兼ねて、80℃30分加熱した。その後、冷凍し冷凍食品とした。
【0056】
[比較例2−1]
反応時間を5時間とした以外は、実施例2と同様に行った。得られた漬物は柔軟になっていたが、5.0×105N/m2以上であり、硬さは高齢者にとって、舌でつぶすには困難な硬さであり、均一な硬さではなかった。
【0057】
[比較例2−2]
反応時間を120時間とした以外は、実施例2と同様に行った。得られた漬物の硬度は5.0×103N/m2以下であった。硬さは形状を保持できない状態であった。
【0058】
上記より塩蔵ラッキョウの場合は、発酵時間は5時間以上120時間以下を選択することができることが分かる。
【0059】
[実施例3]
生のキュウリを縦縞模様に皮むきし、幅15mm〜30mmに輪切りにしたものを、電解水に15〜60分浸漬し、加熱処理0.5分〜1.5分を施して、氷水で冷却したものを凍結した。凍結は冷蔵庫で−15℃以下40時間行った。
【0060】
pH4.5〜5.0、Bx10〜12、食塩濃度4.8質量%、MSG、グリチミン、熱湯、醤油、発酵調味料、低塩濃縮梅酢、しそ香料、しょうがペーストからなる調味液を作成し、これに酵素スミチームPTEを入れた。このときの酵素量は、0.01〜0.04質量%とした。凍結キュウリ:調味液=1:1の質量割合(凍結キュウリが完全に液に漬かる量)で袋に入れ、19℃の温度帯で24時間放置した。24時間以下では解凍が不完全であり、24時間以上の場合菌数が増えてしまい、膨れの原因となった。
【0061】
酵素入り液漬解凍キュウリを液切りし、1袋に150gの解凍キュウリを入れ、真空包装機(東静電気社製)を用いて真空時間30秒で減圧処理を行った。
【0062】
19℃の温度帯で24時間、発酵及び酵素反応を行い、均一な柔らかさの漬物を得た。この反応時間は高齢者が容易に咀嚼できる硬さの漬物とでき、腐敗菌の増殖を抑制できる時間であった。得られたやわらか漬物の硬さは5.0×105N/m2以下であり、漬物は原型を留めていた。酵素の機能を失活させ軟化を停止させるため、殺菌も兼ねて、80℃30分加熱した。その後、冷凍し冷凍食品とした。
【0063】
[比較例3−1]
反応時間を5時間とした以外は、実施例3と同様に行った。得られた漬物は柔軟になっていたが、5.0×105N/m2以上であり、硬さは高齢者にとって、舌でつぶすには困難な硬さであり、均一な硬さではなかった。
【0064】
[比較例3−2]
反応時間を48時間とした以外は、実施例3と同様に行った。得られた漬物の硬度は5.0×103N/m2以下であった。硬さは形状を保持できない状態であった。
【0065】
[実施例4]
下処理工程において、うりの皮を縞剥きにして縦半割にして種を取り除き、更に縦2〜3割、15〜20mm幅にカットし、調味液として食塩3.7質量%、発酵調味料、水、MSGを用いた他は、実施例3と同様にして漬物を得た。得られた漬物の硬さは5.0×105N/m2以下で、漬物は原型を留めていた。
【0066】
[実施例5]
下処理工程において、塩蔵ザーサイを脱塩する前に厚さ10mmにスライスし、発酵を5〜10℃、168時間行い、調味液を食塩4.7質量%、水、核酸、粉唐辛子、発酵調味料、粉末寒天、リンゴ酸、醤油、砂糖、MSGから調製した他は実施例2と同様にして漬物を得た。得られた漬物の硬さは5.0×105N/m2以下で、漬物は原型を留めていた。
【0067】
[実施例6]
下処理工程において、塩蔵ニンジンを脱塩する前に縦半割、厚さ10mmにスライスし、発酵を5〜10℃、120時間行い、調味液を食塩4.7質量%、MSG、グリシン、アラニン、クエン酸Na、粉唐辛子、発酵調味料、昆布エキス、クエン酸、乳酸、しそ香料、湯、醤油から調製した他は実施例2と同様にして漬物を得た。得られた漬物の硬さは5.0×105N/m2以下で、漬物は原型を留めていた。
【0068】
[実施例7]
下処理工程において、塩蔵レンコンを脱塩する前に縦半割、厚さ10mmにスライスし、発酵を5〜10℃、144時間行い、調味液を食塩3.7質量%、粉唐辛子、ガーリックパウダー、穀物原酢、発酵調味料、MSG、果糖ぶどう糖液糖、醤油から調製した他は実施例2と同様にして漬物を得た。得られた漬物の硬さは5.0×105N/m2以下で、漬物は原型を留めていた。
【0069】
[実施例8]
下処理工程において、塩蔵菜芯を脱塩する前に縦半割、厚さ10mmにスライスし、発酵を5〜10℃、144時間行い、調味液を食塩4.6質量%、核酸、クエン酸、乳酸、カラメル、発酵調味料、湯、醤油、砂糖、ソルビトール、MSGから調製した他は実施例2と同様にして漬物を得た。得られた漬物の硬さは5.0×105N/m2以下で、漬物は原型を留めていた。
【0070】
[実施例9]
下処理工程において、生ニンジンを皮を厚めに剥いて、縦半割、厚さ15〜20mmに半月切りにし、調味液を食塩4.3質量%、砂糖、醸造酢、水、ベジタブルエキス、白ワイン、ガーリックパウダー、クエン酸、唐辛子、コリアンダーから調製した他は実施例1と同様にして漬物を得た。得られた漬物の硬さは5.0×105N/m2以下で、漬物は原型を留めていた。
【0071】
[実施例10]
下処理工程において、生カボチャを皮を剥いて、縦半割にして種を取り、25mm×25mm×15mmにカットし、調味液を食塩4.3質量%、砂糖、黒酢、水、山椒、クエン酸、カラメル色素、藻塩から調製した他は実施例1と同様にして漬物を得た。得られた漬物の硬さは5.0×105N/m2以下で、漬物は原型を留めていた。
【0072】
【表1】


【出願人】 【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
【識別番号】507101923
【氏名又は名称】株式会社 山豊
【出願日】 平成19年3月29日(2007.3.29)
【代理人】 【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫

【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸

【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭


【公開番号】 特開2008−245546(P2008−245546A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−89177(P2007−89177)