| 【発明の名称】 |
ジャガイモの保存方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】佐藤 広顕
【氏名】高野 克己
【氏名】内野 昌孝
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| 【要約】 |
【課題】収穫したジャガイモの萌芽を抑制し、安全性に問題なく、また低温貯蔵設備および特別な貯蔵管理を必要としないで、室温でジャガイモを保存する方法の提供。
【構成】ジャガイモの表層(表皮)部を60℃ないし100℃の熱水と、7秒ないし100秒間接触させることにより萌芽抑制処理した後、そのジャガイモを室温で貯蔵する。従来のような低温貯蔵をする必要がないので、省エネルギーで低コストに保存することが可能となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ジャガイモの表層(表皮)部を60℃ないし100℃の熱水と接触させることにより萌芽抑制処理した後、そのジャガイモを室温で貯蔵することを特徴とするジャガイモの保存方法。 【請求項2】 熱水による萌芽抑制処理時間を7秒ないし100秒とすることを特徴とする請求項1記載のジャガイモの保存方法。 【請求項3】 ジャガイモの表層の目の組織の部分に熱水をかけて萌芽抑制処理することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のジャガイモの保存方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、収穫したジャガイモ(馬鈴薯)の長期保存方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 ジャガイモ(馬鈴薯)は、休眠期間が過ぎると萌芽し始め、塊茎部の養分を消耗し著しく品質が低下する。さらに萌芽したジャガイモはエグ味を伴うなど食味の面でも商品価値の低下が大きい。このため、ジャガイモの長期保存に際しては萌芽を有効に抑制することが重要な課題となる。ジャガイモの萌芽抑制には0〜5℃での低温貯蔵、コバルト60を用いた放射線照射ならびにマレイン酸ヒドラジドの施用などが有効とされている。しかし、低温貯蔵では低温貯蔵倉庫などの特別な施設を必要とする上、低温貯蔵のためのエネルギーを要する。さらに、低温スウィートニングにより還元糖の増加が問題となる。また、放射線照射では、食の安全志向の高まりに伴う消費者の受け入れ難という問題があり、さらにマレイン酸ヒドラジドでは、近年明らかになった発ガン性の問題から使用が禁止されている。 このため、現状では、ジャガイモは低温貯蔵倉庫に入れて保存を行っているが、特別な施設を必要とし低温に維持するためのエネルギーを消費するだけでなく、豊作時には収穫したジャガイモが低温貯蔵倉庫に入りきらないという問題や、貯蔵施設の構造や貯蔵管理によっては低温貯蔵でもジャガイモの緑化や萌芽等の問題が生じることがある。 【0003】 このような問題を解決する一つの手段として、透湿度が1000〜20000g/m2・dayであり、波長200nm〜800nmにおける光線遮光率が95%以上である乾燥・保存用シートを用いてジャガイモを包装することにより乾燥・保存を行う方法が提案されている(下記特許文献1参照)。しかし、この方法では特殊なシートを必要とし、かつ包装作業を要するため、経済性に問題がある。 【0004】 このような理由から、省エネルギーで安全性が高く、かつ経済性にも優れた、ジャガイモの長期保存法(長期萌芽抑制法)を開発することが待望されている。 【特許文献1】 特開平6−225692号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の目的は、上記の課題を解決し得るジャガイモの室温保存方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 そこで、本発明者らは、上記目的を達成するため、ジャガイモの目の組織を熱水処理し、そのときの熱水処理温度と萌芽との関係を研究し、簡易な熱水処理で安定に長期の室温保存が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0007】 かくして、本発明によれば、ジャガイモの表層(表皮)部を60℃ないし100℃の熱水と接触させることにより萌芽抑制処理した後、そのジャガイモを室温で貯蔵することを特徴とするジャガイモの保存方法、が提供される。 この方法では、熱水による萌芽抑制処理時間を7秒ないし100秒とすることが適当である。 また、この方法において、ジャガイモの表層の目の組織の部分に熱水をかけて萌芽抑制処処理することが効果的である。 【発明の効果】 【0008】 本発明では、収穫直後のジャガイモを特定の条件で熱水処理するだけで萌芽が効果的に抑制され、したがって、従来のような低温貯蔵や特殊なフィルムによる包装は必要としない。したがって、本発明方法は、特別な施設や包装材料を必要とせず、省エネルギーで、経済性かつ安全性に優れた保存方法である。このため、従来法に比べてジャガイモの長期の保存(貯蔵)や輸送にコストを大幅に低減させることが可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 本発明方法が適用されるジャガイモの種類や大きさには特に制限はないが、収穫直後のものが好ましい。ジャガイモの比重は、本発明の効果に殆ど影響しないため、比重が1.079以下の低比重のもの、1.080〜1.089の中比重のもの、1.090以上の高比重のものに対して同様に適用することができる。 【0010】 本発明では、ジャガイモの表層(表皮)部の少なくとも目の部分を熱水で処理することで萌芽を抑制するが、熱水処理温度は、60〜100℃とする必要がある。熱水処理温度が60℃未満では萌芽抑制効果が小さい。 好適な熱処理温度は、ジャガイモの用途によって上記温度範囲から適宜選択すべきであるが、スライスしてポテトチップとする場合は、60℃以上80℃未満が好ましい。熱水処理温度が80℃以上ではポテトチップが褐変することが多いので商品価値が低下する。煮炊きして食用にする場合の熱水処理温度は、100℃付近が好ましい。これは蒸煮したときのテクスチャー(硬さ)が熱水処理温度によって影響され、保存後のジャガイモを蒸煮して食するときは、熱水処理温度を100℃にするとき、蒸煮後に最も食感のよいテクスチャーを示すことによる。 【0011】 本発明で実施する熱水処理の具体的な方法としては、たとえば、 (1)ジャガイモの表層(表皮)部の目の部分のみへ散水機で熱水をかける方法、 (2)ジャガイモの表面全体に熱水を散布する方法、 (3)ジャガイモを熱水浴に浸漬する方法、 などの方法が採用される。 これらの中でも、上記(1)または(2)の方法が好ましい。 【0012】 熱水処理時間は、7秒以上であればよく、10秒以上が好ましい。ただし、余り長時間になるとジャガイモ自体が変質するおそれがあるので、100秒を超えない時間が好ましい。 熱水処理に代えて、水蒸気処理を行うことも可能と考えられる。この場合は、処理温度は実質的に100℃又はその付近となる。 【0013】 熱水処理により萌芽抑制されたジャガイモは、自然乾燥または通風乾燥などで表面に付着した水分を除去した後、保存(貯蔵)される。保存条件は通常の室温(10〜25℃程度)でよく、従来のように0〜5℃のような低温で貯蔵する必要はなく、また、特殊なフィルムで包装する必要もない。 【実施例】 【0014】 以下、実施例によって本発明の保存方法を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。 【0015】 試料には、平成17年度北海道産の男爵薯を用いた。なお、ジャガイモは比重により性状が異なるため、低比重:1.079以下、中比重:1.080〜1.089、高比重:1.090以上のランクで比重毎に分類して試料条件を揃え、本実験には低比重の男爵薯を用いた。 試料の男爵薯の目付近の表層(表皮)部にそれぞれ60℃、70℃、80℃、90℃および100℃の熱水を分注機にて10秒間掛けて処理した。その後、それぞれの試料を20℃にて60日間貯蔵した。なお、60℃、70℃で処理したものについては30、60および90秒間処理したものについても貯蔵した。なお、対照として未処理のジャガイモを同条件にて貯蔵した。 【0016】 上記の熱水処理後、20℃にて60日間貯蔵した各試料(ジャガイモ)の萌芽状態を確認した。目に対し1mm以上芽が出たものを萌芽とみなし、萌芽した割合を調べたところ、熱水処理温度が60℃以上でジャガイモの萌芽が抑制され、温度が高いほど抑制効果が大きく90℃以上の処理では貯蔵中に萌芽が見られなかった。それらの結果のうち10秒間処理した例を図1及び図6に示す。 【0017】 しかしながら、処理温度が高くなると表層部が褐変した。すなわち、熱水処理したジャガイモ表層部の褐変度(色調)を色彩色差計(ミノルタ社製)にて測定した。その結果は図2に示す。なお、L値とは明るさ、a値、b値はそれぞれ赤と黄色の色度を表す。いずれも数値が大きくなるにしたがって色が鮮やかになり、逆に0に近いほどくすんだ色を示す。図2から明らかなように、表層部の色調は、処理温度の上昇にしたがい増大し、L値およびb値が低下しており、萌芽抑制効果の高いものほど褐変度の大きなことが明らかとなった。 このように、熱水処理温度が高いほどジャガイモの萌芽が大きく抑制され、90℃以上の処理では貯蔵中に萌芽が見られなかったが、処理温度が高くなると表層部が褐変することがわかった。 【0018】 さらに、熱水処理したジャガイモの品質評価をするため、熱水処理後20℃、50日間貯蔵したジャガイモを用い含有成分量(デンプンおよび遊離糖)の差異について検討した。 なお、デンプンおよび遊離糖は次のような抽出方法によって調製した。すなわち、ジャガイモの表皮を含む表層部10gをヒスコトロンにて破砕したものを熱抽出し、遠心分離したものの上澄み液を試料とし、フェノール・硫酸法にて全糖量を、ソモギー・ネルソン法にて還元糖量を測定した。また、沈殿は次のような処理を行い、得られた溶液をフェノール・硫酸法にてデンプン含量を測定した。 その結果、図3に示すとおり、熱水処理による貯蔵中のデンプン含量には大きな差は見られなかったが、還元糖量は80℃〜100℃処理試料で若干増加した。 以上のように、熱水処理による貯蔵中のデンプン含量には大きな差は見られなかったが、還元糖量は80〜100℃での熱水処理試料では若干増加した。 【0019】 次に、80℃〜100℃で熱水処理した貯蔵60日後のジャガイモのチップカラーを測定した。その結果を図4に示す。図4から明らかなように、80℃〜100℃熱水処理した貯蔵60日後のジャガイモのチップカラーは、L値(明度)が低下しa値(赤色度)が大きくなった。したがって、ポテトチップ用のジャガイモについては、80℃以下の熱水処理が適している。 【0020】 さらに、蒸煮試料の硬さの測定を行った。ここでは、熱水処理後20℃にて60日間貯蔵したジャガイモを直径10mm、高さ10mmの円柱状に整形し、20分間蒸煮し、デジケーター内で1時間放置した後、レオナーにてテクスチャー(硬さ)の測定を行った。その結果、図5に示すとおり、蒸煮試料の硬さは、100℃処理では無処理ジャガイモの貯蔵開始時とほぼ同様であったが、処理温度が低いほど軟化した。つまり、蒸煮試料の硬さは、100℃処理では無処理ジャガイモの貯蔵開始時とほぼ同様であったが、処理温度が低いほど軟化した。 【0021】 以上のように、熱水処理を行うことにより萌芽が抑制され、貯蔵性が高まることを確認した。そこで次に、その萌芽抑制効果のメカニズムを解明するため、熱水処理を行ったジャガイモ表層部の未萌芽の目付近の組織から抽出したタンパク質を二次元電気泳動に供した。この際の試料溶液の抽出法は次のように行った。 未処理および熱水処理したジャガイモの目付近0.5gに、DTT10mg、抽出bufferを1ml加え、マルチビーズショッカーにて破砕し、遠心分離にて得られた上澄み液を抽出液とした。この抽出液に対し、1/10量の1Mアクリルアミド溶液を加えタンパク質量として50μgおよび100μgを2次元電気泳動に供した。タンパク質量はLowry法にて、ゲルの染色は銀染色によって行った。 【0022】 二次元電気泳動の結果、熱水処理によって33.5kDa、pI8.3およびpI8.5の2つのタンパク質スポットの発現が確認され、これらのスポットは処理温度が高いほど明瞭であった。このことは、上記の2種のタンパク質が萌芽抑制に関与している可能性があることを示唆している。 【産業上の利用可能性】 【0023】 本発明によれば、収穫したジャガイモに簡便な温水処理を行うだけで有効に萌芽抑制をすることができるため、ジャガイモを通常の倉庫で保存・貯蔵することができる。このため、本発明はジャガイモの生産〜流通〜加工の各分野の保存において有効に利用することができる。 【図面の簡単な説明】 【0024】 【図1】萌芽率と熱水処理温度との関係を示すグラフ 【図2】熱水処理温度と処理後のジャガイモの色(L値、a値、b値)の関係を示すグラフ 【図3】熱水処理温度と熱水処理したジャガイモの20℃、60日間貯蔵後のデンプン量、可溶性全糖量および遊離糖量の変化を示すグラフ 【図4】熱水処理温度とチップカラーの測定結果との関係を示すグラフ 【図5】熱水処理温度と熱水処理したジャガイモを20℃、60日間貯蔵した後の蒸煮試料のテクスチャー(硬さ)を示すグラフ 【図6】各温度で熱水処理したジャガイモの20℃、60日間貯蔵後の萌芽状態を示す写真
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| 【出願人】 |
【識別番号】598096991 【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
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| 【出願日】 |
平成18年6月21日(2006.6.21) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2008−117(P2008−117A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月10日(2008.1.10) |
| 【出願番号】 |
特願2006−196151(P2006−196151) |
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