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【発明の名称】 害虫防除資材
【発明者】 【氏名】神谷 克巳

【氏名】祖父江 勇気

【要約】 【課題】ヨトウガ又はオオタバコガに対する害虫防除効果を発揮する害虫防除資材を提供する。

【解決手段】日本に生息する野生のハスモンヨトウ核多角体病ウイルスは、A〜Cの3種類のタイプに分類される。これら3種類のタイプのウイルスは、EcoRI制限酵素を用いたゲノムDNAの制限酵素切断解析により、それぞれ異なる電気泳動パターンを示すことで区別される。害虫防除資材は、Cタイプのハスモンヨトウ核多角体病ウイルスを含有する。Cタイプのウイルスは、ゲノムDNAをEcoRI制限酵素にて切断したとき、16kbpより長いDNA断片が認められるとともに、4.7〜5.9kbpの長さのDNA断片が認められないことに特徴を有する。Cタイプのウイルスは、ハスモンヨトウ及びスポドプテラ・リトラリスに加えて、ヨトウガやオオタバコガの幼虫に対する殺虫作用を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスを含有する害虫防除資材であって、
前記ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスは、ゲノムDNAをEcoRI制限酵素にて切断したとき、16kbpより長いDNA断片が認められるとともに、4.7〜5.9kbpの長さのDNA断片が認められないものであり、
当該害虫防除資材は、ヨトウガ又はオオタバコガの幼虫に対する殺虫作用を有することを特徴とする害虫防除資材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスを含有し、野菜や花卉等の様々な農産物に対する摂食被害をもたらす害虫を防除するための害虫防除資材に関する。
【背景技術】
【0002】
日本に生息する野生のハスモンヨトウ核多角体病ウイルスは、特許文献1に開示されているように、A〜Cの3種類のタイプに分類される。これら3種類のタイプのウイルスは、EcoRI制限酵素を用いたゲノムDNAの制限酵素切断解析により、それぞれ異なる電気泳動パターンを示すことで分類される。Cタイプのウイルスは、本発明者らによって岐阜県内に生息するハスモンヨトウ罹病虫から単離されたものである。Cタイプのウイルスの電気泳動パターンでは、16kbpより長いDNA断片が認められるとともに、4.7〜5.9kbpの長さのDNA断片が認められないという特徴がある。そして、この特徴により、Cタイプのウイルスと他のタイプのウイルスとが区別される。
【0003】
A〜Cタイプのウイルスはいずれも、ハスモンヨトウ(スポドプテラ・リチュラ;Spodoptera litura)を宿主として感染するウイルスであり、該宿主の生体内で増殖した後に宿主を死滅させる殺虫能力を有している。ハスモンヨトウは、大豆葉等を食い荒らす農作物の害虫である。このハスモンヨトウは、卵から幼虫、蛹、成虫と変態を繰り返すライフサイクルに従って成長する昆虫であり、幼虫の時期に最も大きな農業被害を引き起こす。これに対して、A〜Cタイプのウイルスはいずれも、ハスモンヨトウの幼虫に感染して死滅させることにより、害虫防除効果を発揮する。また、A〜Cタイプのウイルスはいずれも、ハスモンヨトウの近縁種であるスポドプテラ・リトラリス(Spodoptera littoralis)に対する感染致死能力も備えている。
【0004】
一方、非特許文献1には、ハスモンヨトウ核多角体病ウイルス及びスポドプテラ・リトラリス核多角体病ウイルスが、ハスモンヨトウの幼虫に対して同様な病原性を示したことが報告されている。さらに、同文献には、これら2種類の核多角体病ウイルスをそれぞれ、ヨトウガ、カブラヤガ、アワヨトウ、クサシロヨトウ及びカイコに添食させたところ、いずれも病原性が認められなかったことも報告されている。
【特許文献1】特開2004−290113号公報
【非特許文献1】岡田齊夫、「核多角体病ウイルスによるハスモンヨトウの防除に関する研究」、中国農業試験場報告、農林省中国農業試験場、昭和52年3月、E(環境部)、第12号、p.9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、クローニングされた各タイプのハスモンヨトウ核多角体ウイルスを用いて、深刻な農業被害を引き起こすことが報告されている様々な害虫に対する殺虫作用を調査した。その結果、Cタイプのウイルスがヨトウガ及びオオタバコガに対して殺虫作用を有することを見出した。そして、これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。本発明の目的とするところは、ヨトウガ又はオオタバコガに対する害虫防除効果を発揮する害虫防除資材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスを含有する害虫防除資材であって、前記ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスは、ゲノムDNAをEcoRI制限酵素にて切断したとき、16kbpより長いDNA断片が認められるとともに、4.7〜5.9kbpの長さのDNA断片が認められないものであり、当該害虫防除資材は、ヨトウガ又はオオタバコガの幼虫に対する殺虫作用を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヨトウガ又はオオタバコガに対する害虫防除効果を発揮する害虫防除資材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の害虫防除資材を具体化した一実施形態について説明する。
本実施形態の害虫防除資材は、ハスモンヨトウ、スポドプテラ・リトラリス、ヨトウガ及びオオタバコガから選ばれる少なくとも一種の害虫に対する生物的防除を行う有効成分として、Cタイプのハスモンヨトウ核多角体ウイルス(Nuclear Polyhedrosis Virus(Baculoviridae subgroup A)、以下、SpltNPVと記載する)からなるウイルス成分を含有している。
【0009】
CタイプのSpltNPVは、ハスモンヨトウ及びスポドプテラ・リトラリスに対する殺虫作用を有することに加え、ヨトウガやオオタバコガの幼虫に対する殺虫作用を有する。
CタイプのSpltNPVのゲノムDNAについて、EcoRI制限酵素を用いた制限酵素切断解析を行うと、約26本の染色バンドが確認される電気泳動パターンを示す。このCタイプのSpltNPVの電気泳動パターンでは、約19kbpの長さのDNA断片が明確に認められることに最も大きな特徴がある。AタイプのSpltNPVの電気泳動パターンには、16kbpより長いDNA断片が認められない(検出できない)ため、CタイプのSpltNPVの電気泳動パターンにおいて16kbpより長いDNA断片が認められるという特徴は、両者を区別する上で重要である。
【0010】
次に、このCタイプのSpltNPVの電気泳動パターンでは、4.7〜6.4kbpの長さのDNA断片が認められない(検出できない)ことに大きな特徴があり、続いて全体にDNA断片の長さが分散していることに特徴がある。BタイプのSpltNPVの電気泳動パターンには、4.7〜5.9kbpの長さのDNA断片が認められるため、CタイプのSpltNPVの電気泳動パターンにおいて4.7〜5.9kbpの長さのDNA断片が認められない(検出できない)という特徴は、両者を区別する上で重要である。
【0011】
なお、前記DNA断片が認められない(検出できない)とは、前記電気泳動パターンにおいて、2kbp以下の長さの染色バンドが目視又はデンシトメータ等の定量装置にて確実に検出される条件で、該当する長さのDNA断片が目視又は前記定量装置にて検出できないことを意味する。ちなみに、Cタイプに属するSpltNPVの電気泳動パターンには、クローン間で若干の個体差が存在するが、上述したような16kbpより長いDNA断片が認められるとともに、4.7〜5.9kbpの長さのDNA断片が認められないという特徴は、いずれのクローンにも共通している。
【0012】
ハスモンヨトウは、ヤガ科、ヨトウガ亜科、スポドプテラ属(Spodoptera)に属し、北海道、本州、小笠原、四国、九州、対馬、沖縄諸島沖縄本島、沖縄諸島阿嘉島、沖縄諸島久米島、沖縄諸島慶留間島、沖縄諸島伊江島、宮古島、石垣島、西表島、与那国島、大東諸島南大東島、大東諸島北大東島、台湾、インド、太平洋地域、オーストラリア等に生息する。ハスモンヨトウは、豆類(ダイズ、青刈ダイズ,ラッカセイ、アズキ、ササゲ等)やイモ類(サトイモ、ヤマノイモ、サツマイモ、ジャガイモ等)、アブラナ科野菜類(キャベツ、ダイコン、ハクサイ、カブ、ブロッコリー等)、ナス、トマト、ピーマン、ネギ、アスパラガス、シュンギク、キクナ、レタス、ホウレンソウ、ソバ、オオバ、オクラ、イチゴ、キュウリ、ニンジン、ツケナ類、ハス、花卉類(トルコギキョウ、ダリア、キンセンカ、カーネーション、シクラメン、キク等)、ラジノクローバに摂食被害をもたらす農作物の害虫である。ハスモンヨトウによる農業被害の報告は、80種類以上にも及び、極めて深刻な問題となっている。スポドプテラ・リトラリスは、ハスモンヨトウの近縁種である。
【0013】
ヨトウガ(Mamestra brassicae)は、ヤガ科(Noctuidae)、ヨトウガ亜科(Hadeninae)、マメストラ属(Mamestra)に属し、北海道、本州、四国、九州(佐賀)、対馬等に生息する。ヨトウガは、タデ科(ソバ、アイ等)、マメ科(エンドウ等)、アブラナ科(キャベツ、ハクサイ、アブラナ、ダイコン、カブラ等)、マメ科(ソラマメ、ダイズ、アズキ等)、ナス科(ジャガイモ、ナス、トマト、タバコ等)、キク科(チシャ、ゴボウ等)、ウリ科(キュウリ等)、セリ科(ニンジン等)、ヒルガオ科(サツマイモ、アサガオ等)、アカザ科(テンサイ、フダンナ、ホウレンソウ等)、アサ科(アサ等)、アマ科(アマ等)、アオイ科(ワタ、アオイ等)、ケシ科(ケシ等)、シソ科(ハッカ等)、イネ科(サトウキビ等)、バラ科(バラ等)の植物に対して摂食被害をもたらす害虫である。
【0014】
オオタバコガ(Helicoverpa armigera)は、ヤガ科(Noctuidae)、タバコガ亜科(Heliothinae)、ヘリコベルパ属(Helicoverpa)に属し、北海道、本州、小笠原、四国、九州(佐賀)、対馬、屋久島、沖縄諸島沖縄本島、沖縄諸島伊江島、大東諸島、南大東島、朝鮮、中国、台湾、ミクロネシア、オーストラリア、アフリカ等に生息する。オオタバコガは、イネ科(トウモロコシ、シコクビエ、キビ等)、アオイ科(ワタ、オクラ等)、カキノキ科(カキ等)、アブラナ科(キャベツ、ダイコン等)、ウリ科(スイカ、キュウリ、メロン等)、キク科(レタス、キク等)、セリ科(ニンジン等)、ナス科(トマト、ピーマン、ナス、タバコ等)、ナデシコ科(カーネーション、ナデシコ、セキチク等)、バラ科(バラ等)、リンドウ科(トルコギキョウ等)の植物に対して摂食被害をもたらす害虫である。
【0015】
このため、CタイプのSpltNPVを含有する害虫防除資材は、野菜や花卉等の様々な種類の農作物に対する摂食被害を抑えるために、日本国内を始めとするアジア・オセアニア地域の農場等に散布するために使用される。さらに、この害虫防除資材は、日齢の不揃いな幼虫集団に対して高い殺虫作用を発揮するため、高い害虫防除効果が期待される。
【0016】
この害虫防除資材には、大量のSpltNPVを容易に取り扱うことができるうえ保存性及び散布後の残留性に優れていることから、包埋体が含有されていることが好ましい。包埋体は、CタイプのSpltNPVをハスモンヨトウ、スポドプテラ・リトラリス、ヨトウガ又はオオタバコガの幼虫に感染させ、その幼虫の生体内で前記SpltNPVを大量に増殖させることによって製造されるものであり、前記SpltNPVのウイルス粒子が感染細胞中に包埋された罹患虫の死骸、又は該死骸の破砕物を濾過した濾過物により構成される。
【0017】
包埋体を製造する際に用いられるSpltNPVは、高い害虫防除効果を発揮させるために、インビトロクローニング法によりクローニングされた単一のSpltNPVクローンであることが好ましい。インビトロクローニング法は、単層培養された昆虫由来の培養細胞に対してSpltNPVを感染させた後、プラーク法等の公知のクローニング技術を用いて単一のSpltNPVクローンを単離する方法である。プラーク法としては、例えばHink and Vail(Journal of Invertebrate Pathology, 22, P158-174, 1983)の方法が挙げられる。
【0018】
さらに、包埋体を製造する際には、CタイプのSpltNPVを幼虫の体内に注射又は接触させて感染させる感染工程を経て製造することが望ましい。詳細なデータは示さないが、本発明者らは、CタイプのSpltNPVの包埋体を製造する際に、該ウイルスをハスモンヨトウ幼虫の体内に注射又は接触させると、経口感染させる場合よりも、より一層大量生産に適していることを既に確認している。
【0019】
なお、前記SpltNPVを感染させるための幼虫は、包埋体の大量生産が容易であることから、ハスモンヨトウ幼虫であることが好ましい。さらに、SpltNPVを感染させるための幼虫としてハスモンヨトウを用いる場合、好ましくは4齢後半〜5齢、さらに好ましくは4齢の末日又は5齢0日目、特に好ましくは5齢0日目のステージの幼虫を用いることが好ましい。5齢0日目のハスモンヨトウ幼虫は、脱皮直後であるためウイルス感染が成立しやすい。また、4齢後半〜5齢のステージでウイルスを感染させると、幼虫の身体がほぼ最大となる6齢でハスモンヨトウ罹病虫が致死しやすいため、ウイルス包埋体の収量を容易に高めることができる。詳細なデータは示さないが、これらの知見についても、本発明者らによって既に確認されている。
【0020】
ウイルスを幼虫の体内に注射する場合、ウイルスを含有する液(以下、ウイルス含有液と記載する)を注射器(注射針)にて幼虫の体内(体腔内)へと注入する。その結果、注入されたウイルス含有液中のSpltNPVが幼虫に感染して増殖する。一方、ウイルスを幼虫の体内に接触させる場合、幼虫の表皮よりも硬質の材料(例えば金属、鉱物、樹脂、結晶化された炭素等)からなる体内挿入部を備えた体内挿入部材を用い、該体内挿入部の表面にウイルス含有液が付着した状態でその体内挿入部を幼虫の体内(体腔内)へと挿入する。具体的には、先端部に略針状をなす体内挿入部が設けられた体内挿入部材を幼虫の体内に挿入する第1の方法、又は略粒状をなす体内挿入部材(体内挿入部)をパーティクルガンにて幼虫の体内に挿入する第2の方法が採用される。
【0021】
第1の方法は、体内挿入部の表面にウイルス含有液を付着させた状態で、該体内挿入部を幼虫の表皮を貫通させてその体内へと挿入することにより行われる。この第1の方法において、前記体内挿入部には、表面張力等の物理的な作用によってウイルス含有液を一時的に保持するための貫通孔、微細孔、凹部(窪み)又は凸部が設けられていることが好ましい。第1の方法における体内挿入部材は、幼虫の表皮よりも硬質の材料により略針状に形成された体内挿入部と、当該体内挿入部を支持するための支持部とを備えている。支持部の形状は特に限定されないが、例えば錐や千枚通しの持ち手、或いは剣山の台座のような形状を採用することができる。
【0022】
第2の方法は、幼虫の表皮よりも硬質の金やタングステン等の微粒子の表面にウイルス含有液を付着させた状態で、当該微粒子をパーティクルガンにて幼虫の体内へと打ち込む(挿入する)ことにより行われる。なおこのとき、前記微粒子は体内挿入部及び体内挿入部材を構成する。前記微粒子の表面には、前記貫通孔、微細孔、凹部(窪み)又は凸部が設けられていることが好ましい。
【0023】
従って、本実施形態の害虫防除資材は、CタイプのSpltNPV、好ましくはCタイプのSpltNPVの包埋体を含有している。このため、この害虫防除資材は、ハスモンヨトウ、スポドプテラ・リトラリス、ヨトウガ及びオオタバコガから選ばれる少なくとも一種の害虫に対する害虫防除効果を発揮することができる。これらの害虫はいずれも、極めて多種類の農作物に対して甚大な農業被害を引き起こすため、本実施形態の害虫防除資材は、極めて多くの種類の農作物(野菜類及び花卉類)に対して有効な農薬として機能する。
【実施例】
【0024】
<SpltNPVの殺虫スペクトルの調査>
人工飼料インセクタLF(日本農産工業社製)1gあたりに1×10個多角体/mlのSpltNPV溶液を100μl添加することにより、ハスモンヨトウ、オオタバコガ、アワヨトウ及びアメリカシロヒトリの幼虫に与えるための飼料を作製した。キャベツ葉を5×10個多角体/mlのSpltNPV溶液に浸した後に風乾することにより、ヨトウガ、タマナギンウワバ、コナガ及びモンシロチョウの幼虫に与えるための飼料を作製した。ダイズ莢を5×10個多角体/mlのSpltNPV溶液に浸した後に風乾することにより、シロイチモンジマダラメイガの幼虫に与えるための飼料を作製した。ダイコン葉を5×10個多角体/mlのSpltNPV溶液に浸した後に風乾することにより、カブラヤガ、ハイマダラメイガ及びカブラハバチの幼虫に与えるための飼料を作製した。ウリ葉を1×10個多角体/mlのSpltNPV溶液に浸した後に風乾することにより、ワタヒロクロノメイガの幼虫に与えるための飼料を作製した。なお、前記SpltNPV溶液に含まれるSpltNPVとしては、下記表1に示すように、インビトロクローニング法にてクローニングしたAタイプ又はCタイプのSpltNPVの単一クローンを用いた。
【0025】
次に、野外圃場で下記表1に示す害虫を無作為に採取した後、それらの害虫を種毎にまとめ、上記各飼料が入ったプラスチックカップ内でそれぞれ2週間飼育した。2週間飼育後の各プラスチックカップ内の害虫を目視にて観察し、各SpltNPVによる殺虫能を評価した。結果を表1に示す。なお、殺虫能の評価において、各プラスチックカップ内で飼育した害虫のうち8割以上の個体が死亡していた場合を○印、8割以上の個体が生存していた場合を×印として表1に示したが、○印と×印との間の状態にあるプラスチックカップは存在しなかった。また、生存していた個体の大多数は、調査後羽化した。
【0026】
【表1】


表1より、CタイプのSpltNPVは、ヨトウガ及びオオタバコガに対して高い殺虫作用を有していた。さらに、CタイプのSpltNPVは、野外圃場で無作為に採取した日齢の不揃いなハスモンヨトウ、ヨトウガ及びオオタバコガの幼虫に対していずれも高い殺虫作用を有していたため、農場等に散布する害虫防除資材の有効成分として大いに期待される。ちなみに、表1の殺虫能欄に○印が付されているプラスチックカップ内の害虫の体腔内を顕微鏡観察したところ、いずれもSpltNPVが確認された。
【0027】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 害虫防除資材には、ウイルス成分以外の成分(非ウイルス成分)が含有されていてもよい。非ウイルス成分としては、害虫に対する経口感染の成立を増進させるための経口感染増進剤(スチルベン系の蛍光漂白剤等)や展着剤、紫外線によるSpltNPVの不活化を防ぐための添加剤等が挙げられる。
【0028】
・ 害虫防除資材には、CタイプのSpltNPVに加えて、Aタイプ及び/又はBタイプのSpltNPVが含有されていてもよい。例えば、Aタイプ及びCタイプのSpltNPVを含有する害虫防除資材は、ハスモンヨトウ、スポドプテラ・リトラリス、ヨトウガ及びオオタバコガから選ばれる少なくとも一種の害虫に対して高い害虫防除効果を発揮し得るため、ヤガ科の害虫防除に対して幅広く有効なものとなり得る。
【0029】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスは単一クローンからなる請求項1に記載の害虫防除資材。
【0030】
(2) 前記ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスは、インビトロクローニング法によりクローニングされたものであることを特徴とする請求項1に記載の害虫防除資材。
(3) 前記ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスの包埋体を含有することを特徴とする請求項1に記載の害虫防除資材。
【0031】
(4) 前記包埋体は、前記ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスを含有するウイルス含有液を5齢0日目のハスモンヨトウの幼虫の体内に注射又は接触させて感染させる感染工程を経て製造されたものであることを特徴とする前記(3)に記載の害虫防除資材。
【0032】
(5) 前記感染工程は、前記ウイルス含有液を前記ハスモンヨトウの体内に注射器を用いて注入する工程であることを特徴とする前記(4)に記載の害虫防除資材。
【出願人】 【識別番号】391016842
【氏名又は名称】岐阜県
【識別番号】591043950
【氏名又は名称】揖斐川工業株式会社
【出願日】 平成18年10月18日(2006.10.18)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣

【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠


【公開番号】 特開2008−100931(P2008−100931A)
【公開日】 平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願番号】 特願2006−283470(P2006−283470)