| 【発明の名称】 |
生物学的物質用の保存及び貯蔵媒体 |
| 【発明者】 |
【氏名】デパブロ ジュアン ジェイ
【氏名】ミラー ダンフォース ピー
【氏名】コンラド ポール ビー
【氏名】コルティ ホラティオ
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| 【要約】 |
【課題】凍結、乾燥、及び凍結乾燥による生物学的物質を保存するための水性保存媒体を提供する。
【構成】水性保存媒体は、(a)生物学的物質、(b)少なくとも一種のポリヒドロキシ化合物であって、前記媒体中の合計量が、該媒体の約5質量%から約60質量%までであるポリヒドロキシ化合物、及び(c)リン酸イオンを含む。リン酸イオンは、媒体中の合計量が、リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.0625から約0.625までであるような量である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生物学的物質を保存するための水性保存媒体であって、以下の成分、 (a)生物学的物質、 (b)少なくとも一種のポリヒドロキシ化合物であって、前記媒体中の合計量が、該媒体の約5質量%から約60質量%までであるポリヒドロキシ化合物、及び (c)リン酸イオンであって、該媒体中の合計量が、リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.0625から約0.625までであるような量であるリン酸イオン、 を含むことを特徴とする水性保存媒体。 【請求項2】 前記媒体のpHが、約5から約10までである請求の範囲第1項記載の水性保存媒体。 【請求項3】 前記ポリヒドロキシ化合物が、単糖類、二糖類、及び多糖類からなる群から選ばれる請求の範囲第1項記載の水性保存媒体。 【請求項4】 前記ポリヒドロキシ化合物が、トレハロースである請求の範囲第3項記載の水性保存媒体。 【請求項5】 前記媒体中のポリヒドロキシ化合物の合計量が、該媒体の約10質量%から約30質量%までである請求の範囲第1項記載の水性保存媒体。 【請求項6】 前記媒体中のポリヒドロキシ化合物の合計量が、該媒体の約10質量%から約30質量%までである請求の範囲第3項記載の水性保存媒体。 【請求項7】 前記生物学的物質が、細胞、タンパク質、及び酵素からなる群から選ばれる請求の範囲第1項記載の水性保存媒体。 【請求項8】 生物学的物質を保存するための水性保存媒体であって、以下の成分、 (a)生物学的物質、 (b)トレハロースであって、前記媒体の約5質量%から約60質量%までの量で存在するトレハロース、及び (c)リン酸イオンであって、該媒体中のリン酸イオンの合計量が、リン酸イオン対トレハロースのモル比が約0.5から約5までであるような量であるリン酸イオン、 を含むことを特徴とする水性保存媒体。 【請求項9】 前記トレハロースが、該媒体の約10質量%から約30質量%までの量で存在する請求の範囲第8項記載の水性保存媒体。 【請求項10】 前記pHが、約5から約10までである請求の範囲第9項記載の水性保存媒体。 【請求項11】 前記生物学的物質が、細胞、タンパク質、及び酵素からなる群から選ばれる請求の範囲第8項記載の水性保存媒体。 【請求項12】 保存された生物学的物質組成物の調製方法であって、以下の工程、 (a)水性保存媒体を生成する工程であって、前記媒体が、(i)生物学的物質、(ii)少なくとも一種のポリヒドロキシ化合物であって、前記媒体中の合計量が、該媒体の約5質量%から約60質量%までであるポリヒドロキシ化合物、及び(iii)リン酸イオンであって、該媒体中の合計量が、リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.0625から約0.625までであるような量であるリン酸イオン、を含む工程、そして (b)少なくとも一種の保存方法を使用して水性保存媒体を保存する工程、 を有することを特徴とする方法。 【請求項13】 前記保存方法が、凍結、凍結乾燥、周囲空気乾燥、真空乾燥、及び噴霧乾燥からなる群から選ばれた一種以上の方法である請求の範囲第12項記載の方法。 【請求項14】 前記媒体のpHが、約5から約10までである請求の範囲第12項記載の方法。 【請求項15】 前記ポリヒドロキシ化合物が、単糖類、二糖類、及び多糖類からなる群から選ばれる請求の範囲第12項記載の方法。 【請求項16】 前記ポリヒドロキシ化合物が、トレハロースである請求の範囲第12項記載の方法。 【請求項17】 前記媒体中の前記ポリヒドロキシ化合物の合計量が、該媒体の約10質量%から約30質量%までである請求の範囲第12項記載の方法。 【請求項18】 前記媒体中の前記ポリヒドロキシ化合物の合計量が、該媒体の約10質量%から約30質量%までである請求の範囲第15項記載の方法。 【請求項19】 前記生物学的物質が、細胞、タンパク質、及び酵素からなる群から選ばれる請求の範囲第12項記載の方法。 【請求項20】 保存された生物学的物質組成物の調製方法であって、以下の工程、 (a)水性保存媒体を生成する工程であって、前記媒体が、(i)生物学的物質、(ii)トレハロースであって、該媒体中のポリヒドロキシ化合物の合計量が、該媒体の約5質量%から約60質量%までであるトレハロース、及び(iii)リン酸イオンであって、該媒体中の合計量が、リン酸イオン対トレハロースのモル比が約0.5から約5までであるような量であるリン酸イオン、を含む工程、そして (b)少なくとも一種の保存方法を使用して水性保存媒体を保存する工程、 を有することを特徴とする方法。 【請求項21】 前記保存方法が、凍結、凍結乾燥、周囲空気乾燥、真空乾燥、及び噴霧乾燥からなる群から選ばれた一種以上の方法である請求の範囲第20項記載の方法。 【請求項22】 前記トレハロースが、該媒体の約10質量%から約30質量%までの量で存在する請求の範囲第20項記載の方法。 【請求項23】 前記pHが、約5から約10までである請求の範囲第22項記載の方法。 【請求項24】 前記生物学的物質が、細胞、タンパク質、及び酵素からなる群から選ばれる請求の範囲第20項記載の方法。 【請求項25】 生物学的物質の保存用の固体形態の保護剤混合物であって、以下の成分、 (a)少なくとも一種のポリヒドロキシ化合物であって、前記混合物中の合計量が、該混合物の約10質量%から約95質量%までであるポリヒドロキシ化合物、及び (b)リン酸イオンであって、該混合物中の合計量が、リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.025から約0.625までであるような量であるリン酸イオン、 を含むことを特徴とする保護剤混合物。 【請求項26】 前記混合物中の該ポリヒドロキシ化合物の合計量が、該混合物の約20質量%から約95質量%までである請求の範囲第25項記載の保護剤混合物。 【請求項27】 前記ポリヒドロキシ化合物が、単糖類及び多糖類からなる群から選ばれる請求の範囲第25項記載の保護剤混合物。 【請求項28】 前記ポリヒドロキシ化合物が、トレハロースである請求の範囲第27項記載の保護剤混合物。 【請求項29】 リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基の前記モル比が、約0.0375から約0.625までである請求の範囲第25項記載の保護剤混合物。 【請求項30】 生物学的物質の保存用の固体形態の保護剤混合物であって、以下の成分、 (a)トレハロースであって、前記混合物中に、該混合物の約10質量%から約95質量%までの量で存在するトレハロース、及び (b)リン酸イオンであって、該混合物中の合計量が、リン酸イオン対トレハロースのモ ル比が約0.2から約5までであるような量であるリン酸イオン、 を含むことを特徴とする保護剤混合物。 【請求項31】 前記トレハロースが、該混合物の約20質量%から約95質量%までの量で存在する請求の範囲第30項記載の保護剤混合物。 【請求項32】 リン酸イオン対トレハロースの前記モル比が、約0.3から約5までである請求の範囲第30項記載の保護剤混合物。 【請求項33】 水溶液の形態の保護剤混合物であって、以下の成分、 (a)少なくとも一種のポリヒドロキシ化合物であって、前記混合物中の合計量が、該混合物の約5質量%から約60質量%までであるポリヒドロキシ化合物、及び (b)リン酸イオンであって、前記混合物中の合計量が、リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.0625から約0.625までであるような量であるリン酸イオン、 を含むことを特徴とする保護剤混合物。 【請求項34】 前記混合物中の該ポリヒドロキシ化合物の合計量が、該混合物の約10質量%から約30質量%までである請求の範囲第33項記載の保護剤混合物。 【請求項35】 前記ポリヒドロキシ化合物が、単糖類及び多糖類からなる群から選ばれる請求の範囲第33項記載の保護剤混合物。 【請求項36】 リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基の前記モル比が、約0.0375から約0.625までである請求の範囲第33項記載の保護剤混合物。 【請求項37】 水溶液の形態の保護剤混合物であって、以下の成分、 (a)トレハロースであって、前記混合物中に、該混合物の約5質量%から約60質量%までの量で存在するトレハロース、及び (b)リン酸イオンであって、前記混合物中の合計量が、リン酸イオン対トレハロースのモル比が約0.5から約5までであるような量であるリン酸イオン、 を含むことを特徴とする保護剤混合物。 【請求項38】 前記トレハロースが、該混合物の約10質量%から約30質量%までの量で存在する請求の範囲第37項記載の保護剤混合物。 【請求項39】 請求の範囲第12項又は第20項記載の方法により製造された保存され た生物学的物質組成物。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は一般に凍結、乾燥、及び凍結乾燥による生物学的物質の保存及び安定化、更に詳しくは生物学的物質を保存するための保護剤混合物及び水性保存媒体、並びに生物学的物質の保存方法及び保存された生物学的物質組成物それ自体に関する。 【背景技術】 【0002】 生物学的分子の構造及び機能の保存は生物学、生化学、及び医療に基本的に重要である。生物学的物質、例えば、タンパク質、酵素、細胞、組織、核酸、精液、血液及びその成分、哺乳類の器官、及び食品はその後の使用のためにしばしば貯蔵され、保存される必要がある。これらの生物学的物質の保存は通常凍結もしくは乾燥、又はその二つの方法の組み合わせにより達成される。幾つかの普通使用される乾燥技術がある:移動するガス流への蒸発による乾燥(周囲空気乾燥)、周囲温度における真空下の乾燥(真空乾燥)、又は液滴の微細なミストを温かい空気と接触させることによる乾燥(噴霧乾燥)。乾燥が有害又は不要である場合に、簡単な凍結がしばしば行なわれる。或る種の生物学的物質は、サンプルが最初に凍結され、次いで真空下で低温で乾燥される2工程方法である凍結乾燥により最良に保存される。 殆どの生物学的物質の構造及び機能はそれらの水性環境に依存する。それ故、凍結方法及び乾燥方法から生じるそれらの水性環境の変化がしばしば生物学的物質に劇的な結果を有し得る。更に、凍結乾燥は凍結及び乾燥の両方のためのストレスを組み合わせる。この方法の凍結工程は望ましくない副作用、例えば、タンパク質及び酵素の変性、並びに細胞の破裂を有し得る。これらの作用はこれらの物質中の氷の結晶化により誘発された機械的ストレス、化学的ストレス、及び浸透圧ストレスから生じる。結果として、再水和後の生物学的物質の活性は完全に失われ、又はその物質が最早その意図される目的に有益ではないような有意な程度に失われる。 【0003】 再構成又は再水和後の副作用を防止又は低減するために、保護剤、例えば、低温保護剤又は凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)(凍結乾燥)が使用される。このような保護剤が有効であるためには、それらが保存方法中に見られる濃度で生物学的物質に無毒性である必要があり、しかも水及び生物学的物質と有利に相互作用する必要がある。種々の保護剤が種々の成功の程度で当業界で使用されていた。これらとして、魚タンパク質、或る種のポリマー、スキンミルク、グリセロール、ジメチルスルホキシド、及びトレハロースの如き二糖類が挙げられる。不運なことに、好適な保護剤及び低温保存プロトコルは制限された数の系のみについて開発されていた。 【0004】 蔗糖及びトレハロースの如き二糖類は天然の低温保護剤である。トレハロースが特に魅力的な低温保護剤である。何とならば、それは干ばつの期間中に停止された活気の状態に留まる植物及び動物から実際に単離されていたからである。トレハロースは周囲空気乾燥及び凍結乾燥の両方で種々の生物学的物質に有効な保護剤であることが示されていた。研究は、トレハロースの存在下で乾燥されたリポソームが再水和後にそれらの機能上及び構造上の保全性の両方を保持することを示していた(Crowe, J.H., Crowe., L.M.及びMouriadian, R., Cryobiology, 20, 346-356 (1983)を参照のこと)。米国特許第5,556,771号明細書は逆転写酵素及びRNAポリメラーゼを保存するためのトレハロース、又はポリビニルピロリドンと組み合わせてのトレハロースの使用を開示している。米国特許第5,512,547号明細書はボツリナム神経毒素を保存するためのトレハロースの使用を開示している。同様に、米国特許第4,891,319号明細書はトレハロースを使用してタンパク質及びその他の生物学的巨大分子、例えば、酵素、血清、血清補体、抗体、抗原、蛍光タンパク質及びワクチン成分を保存する方法を開示している。詳しくは、巨大分子及びトレハロースを含む水性混合物が水性系の0.05質量%から約20質量%までのトレハロースの存在下で凍結より上の温度で乾燥される。 【0005】 しかしながら、唯一の低温保護剤としてのトレハロースの使用と関連する幾つかの欠点がある。多くの生物学的物質を凍結乾燥により保存するために、多量のトレハロースが使用される必要がある。所定の保存媒体の60質量%より大きいトレハロースの濃度が時折必要である。これはコストがかかる。更に、高濃度のトレハロースは系中のその他の溶質の溶解性を低下する。 こうして、ポリマーゲル化剤、例えば、カルボキシメチルセルロース又はカルボキシエチルセルロースと組み合わせてトレハロースを使用することが提案されていた。ポリマーと組み合わせてのサッカリドが純粋なトレハロースよりも有効な低温保護剤であることがヒト血液について示唆されていた。米国特許第5,171,661号明細書;Sutton, R.L., J.Chem.Soc.Faraday Trans., 87, 3747 (1991)を参照のこと。不運なことに、ゲル化剤の有益な効果を確かめようとする試みは成功しなかった(G. Spieles, I. Heschel及びG. Rau, Cryo-Letters 17, 43-52 (1996), J.H. Crowe, A.E. Oliver, F.A. Hoekstra及びL.M. Crowe, Cryobiology 35, 20-30 (1997))。更に、この保護組み合わせは医療目的に使用し得ない。 何とならば、ポリマーゲル化剤は人体により良く受け入れられないからである。 結果として、この組み合わせは非常に有益ではなく、トレハロース単独の使用よりもあったとしても多くの実用的な改良を与えない。 【0006】 トレハロースの使用と関連する別の、更に重大な問題はトレハロース単独を使用して保存された生物学的物質、特に周囲温度以上の温度及び/又は湿った環境で貯蔵されたものが時間の延長された期間にわたって貯蔵安定性ではないことである。換言すれば、トレハロースで保存された生物学的物質が、貯蔵条件の湿度及び温度に応じて、数時間又は数日のうちにそれらの活性を失い得る。 それ故、現在では、トレハロースによる凍結乾燥は広範囲の貯蔵条件にわたって生物学的物質、例えば、タンパク質、酵素、細胞、組織、核酸、精液、血液及びその成分、哺乳類の器官、並びに食品の延長された貯蔵期間についての使用が制限されている。何とならば、その物質が分解し、再構成後に充分な活性を有しないからであろう。実用的な観点から、これは医療製品には明らかに受け入れられない。何とならば、物質を最初の場所で保存することの理由の一つが貯蔵安定性製品を提供することであるからである。 【0007】 種々の室温乾燥技術の多くが現在有効に使用し得ない。これらの方法は、凍結乾燥よりも複雑ではなく、しかもコストがかからないが、一般に生物学的物質に対し一層破壊性である。多くの生物学的物質は凍結乾燥が使用される場合よりも周囲温度で行なわれる方法を使用して保存される場合に大きなコンホーメーションの変化及び望ましくない反応を受け易い。結果として、現在知られている保護剤が使用される場合でさえも、多くの再水和された生物学的物質の活性はそれ自体不満足であるとともに、また凍結乾燥により保存される場合よりも有意に小さい。 こうして、広範囲の生物学的物質に有益である保護剤混合物に対する要望がある。凍結乾燥方法及び周囲温度乾燥を伴う乾燥方法の両方に有効に使用し得る保護剤混合物に対する更なる要望が存する。又、現在使用される保護剤混合物よりもコストがかからない保護剤混合物に対する要望がある。最後に、非常に重要なことに、高温及び種々の程度の湿度(これらは物質の輸送及び貯蔵中に見られる)における時間の延長された期間にわたる生物学的物質の保存のための安定な媒体を提供するとともに、再水和後に有意な量の活性を依然として保持する保護剤混合物に対する要望がある。 これらの要望の全てが本発明の保護剤混合物、水性保護媒体及び得られる保存された生物学的物質組成物により満足される。 【発明の開示】 【課題を解決するための手段】 【0008】 生物学的物質の保存用の保護剤混合物であって、(a)少なくとも一種のポリヒドロキシ化合物(混合物中のポリヒドロキシ化合物の合計量は混合物が水溶液である場合には混合物の約5質量%から約60質量%までであり、又、混合物が固体形態である場合には約10質量%から約95質量%までである)、及び(b)リン酸イオン(媒体中のリン酸イオンの合計量はリン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.025から約0.625までであるような量である)を含む保護剤混合物は、多種の生物学的物質とともに使用されて水性保存媒体を得ることができることがわかった。次いでこの水性保存媒体は、凍結、凍結乾燥及びその他の乾燥方法、例えば、噴霧乾燥や、真空乾燥、又は周囲空気乾燥を含む、多くの保存方法に使用されて関係する生物学的物質の安定な、保存された組成物を得ることができる。この保存された組成物は周囲温度以上の温度及び/又は相対湿度における時間の延長された期間にわたって安定である。更に、保存された生物学的物質組成物が再水和される場合、保存された生物学的物質の構造上かつ機能上の保全性は生物学的物質がその意図される目的に使用し得るような程度に保持された。 それ故、本発明は又上記保存媒体からの保存された生物学的物質組成物の調製方法だけでなく、保存された生物学的物質組成物それ自体を提供する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 本発明は、生物学的物質が本発明の保護剤混合物と合わされて水性保存媒体を生成し、これが順に本発明の水性媒体を(1)凍結乾燥、周囲空気乾燥、真空乾燥、及び噴霧乾燥を含む、種々の乾燥技術、又は(2)凍結の如き当業界で知られているその他の保存方法にかけることにより保存された生物学的物質組成物に生成される場合に、生物学的物質が実質的な活性を保持しつつ保存し得るという格別の発見に基づいている。本発明の保護剤混合物は(a)少なくとも一種のポリヒドロキシ化合物(混合物中のポリヒドロキシ化合物の合計量は混合物が水溶液である場合には混合物の約5質量%から約60質量%までであり、又、混合物が固体形態である場合には約10質量%から約95質量%までである)、及び(b)リン酸イオン(混合物中のリン酸イオンの合計量はリン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.025から約0.625までであるような量である)を含む。本発明の水性保存媒体は(a)生物学的物質、(b)少なくとも一種のポリヒドロキシ化合物(媒体中のポリヒドロキシ化合物の合計量は媒体の約5質量%から約60質量%までである)、及び(c)リン酸イオン(媒体中のリン酸イオンの合計量はリン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.025から約0.625までであるような量である)を含む。 【0010】 生物学的物質 広範囲の生物学的物質が本発明の保護剤混合物とともに使用されて本発明の水性保存媒体を生成し得る。次いでこの保存媒体が本発明の方法にかけられて保存された生物学的物質組成物をつくることができる。 これらの生物学的物質として、 (a)酵素、例えば、ラクテートデヒドロゲナーゼ及びホスホフラクトキナーゼ、 (b)タンパク質、例えば、インスリン、 (c)血清補体、 (d)ワクチン、 (e)皮膚、静脈及び動脈を含む組織、 (f)ウイルス、例えば、アデノウイルス、 (g)哺乳類の器官、例えば、肝臓、膵臓及び肺、 (h)血液、並びに赤血球、白血球及び血小板を含むその成分、 (i)原核生物細胞(細菌を含む)及び真核生物細胞を含む細胞、 (j)精液、 (k)核酸、及び脂質小胞を含むその他の生物学的物質、並びに (l)食品、 が挙げられるが、これらに限定されない。 以上は特許請求の範囲に記載の本発明の保護剤混合物、水性保存媒体及び方法を使用して特許請求の範囲に記載の本発明の保存された生物学的物質組成物にし得る生物学的物質の非常に多数のうちの幾つかの単なる例示である。その後の使用のための保存が望ましい生物学的物質は保護剤混合物とともに使用されて、保存媒体を生成することができ、次いでこれが本発明の保存方法により保存されて保存された組成物を生成し得る。 【0011】 ポリヒドロキシ化合物 本発明に有益なポリヒドロキシ化合物として、天然及び合成の単糖類及び多糖類、その他の炭水化物、並びにポリアルコール及びそれらの誘導体が挙げられる。ここで、“多糖類”は二つ以上のモノサッカリド単位を含むサッカリドと定義される。個々のポリヒドロキシ化合物は単独で、又はその他の型のポリヒドロキシ化合物と組み合わせて使用し得る。多種の有益なポリヒドロキシ化合物から、モノサッカリド及びポリサッカリドの使用が好ましい。サッカリドのうち、二糖類、例えば、トレハロース、マルトース、ラクトース、及び蔗糖が本発明における使用に好ましく、トレハロースが最も好ましい。 本発明の保護剤混合物、保存媒体、及び保存された組成物中に存在するポリヒドロキシ化合物の量は使用のために選ばれる特定のポリヒドロキシ化合物、及び生物学的物質だけでなく、保存される生物学的物質の質量に依存する。これは所定の系について調節され、最適化し得る。 【0012】 一般に、ポリヒドロキシ化合物は、混合物が水溶液である場合には、混合物の約5質量%から約60質量%までの合計量で本発明の保護剤混合物中に存在する。 保護剤混合物が固体、例えば、粉末として供給される場合、ポリヒドロキシ化合物は混合物の約10質量%から約95質量%までの合計量で存在すべきであり、混合物の約20質量%から約95質量%までの範囲の量が好ましい。保護剤混合物が水溶液である場合、ポリヒドロキシ化合物は混合物中のポリヒドロキシ化合物の合計量が混合物の約5質量%から約40質量%までであるような合計量で存在することが好ましく、混合物の約10質量%から約30質量%の範囲の量が特に好ましい。 同様に、ポリヒドロキシ化合物は水性保存媒体中のポリヒドロキシ化合物の合計量が水性保存媒体の約5質量%から約60質量%までであるような量で本発明の保存媒体中に存在すべきである。存在するポリヒドロキシ化合物の合計量は水性保存媒体の約5質量%から約40質量%であることが好ましく、水性保存媒体の約10質量%から約30質量%までの範囲の量が特に好ましい。 【0013】 上記範囲は、例えば、保存媒体中の生物学的物質の量及び使用に選ばれた保存方法に応じて変化し得ることが強調されるべきである。 本発明の水性保存媒体中のポリヒドロキシ化合物の上記の量の使用は液体水の部分的又は完全除去後に組成物の約5質量%から約95質量%のポリヒドロキシ化合物を有する保存された生物学的物質組成物をもたらすであろう。再度、この量は保存される生物学的物質の質量、存在するリン酸塩の量、及び保存中に系から除去される水の量に依存するであろう。保存された生物学的組成物中のポリヒドロキシ化合物の量は保護剤混合物及び/又は水性保存媒体中に存在する量から測定し得る。又、保存された生物学的物質組成物中のポリヒドロキシ化合物の量は当業界で知られている分析方法、例えば、カラムクロマトグラフィーにより測定し得る。 【0014】 リン酸イオン リン酸イオンのあらゆる源が本発明の保護剤混合物、保存媒体、保存方法、及び保存された組成物に使用し得る。いかなる特別な理論により束縛されたくないが、リン酸イオンはポリヒドロキシ化合物と錯体を生成し、これはリン酸イオンにより架橋された三次元の超分子構造中にポリヒドロキシ化合物の幾つかの分子を含み得る。水性保存媒体は同じ量のポリヒドロキシ化合物単独を含む系よりも極めて高い粘度を有し、保存された生物学的物質組成物はポリヒドロキシ化合物のみを含む組成物よりも高いガラス転移温度(Tg)を有する。 先に記載したように、リン酸イオンは酸及び塩を含むあらゆる源から用意し得る。ナトリウム塩及びカリウム塩の使用が好ましい。カリウム塩が最も好ましい。何とならば、それらが低温で優れた溶解性特性を有し、無水結晶として結晶化するからである。それ故、リン酸イオンはナトリウム塩及び/又はカリウム塩の使用により用意されることが好ましく、一塩基性リン酸カリウムと二塩基性リン酸カリウムの混合物が特に好ましい。 【0015】 所定の保護剤混合物及び/又は保存媒体に最適であるリン酸イオンの量は保存すべき特定の生物学的物質、保護剤混合物及び/又は保存媒体中のポリヒドロキシ化合物の量及び型、並びに系中の生物学的物質の量を含む幾つかの変数に依存する。一般に、リン酸イオンはリン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.025から約0.625までであるような合計量で保護剤混合物及び/又は水性保存媒体中に存在すべきである。リン酸イオンはリン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比が約0.0375から約0.625までであるような量で存在することが好ましい。 リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比は保存方法中に実質的に一定に留まり、リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基の実質的に同じモル比を有する保存された生物学的物質をもたらすであろう。こうして、保存された生物学的物質組成物中に存在するリン酸イオンの量は直接に水性保存媒体中に存在する量ということになる。又、保存された生物学的物質組成物中のリン酸イオンの量は、イオンクロマトグラフィー及びケミルミネセンスを含む、当業界で知られている方法により分析で測定し得る。 【0016】 又、リン酸イオンの有益な量は上記の比に使用されるポリヒドロキシ化合物1モル当りに存在するヒドロキシル基の数を掛けることによりポリヒドロキシ化合物の1モル当りのリン酸イオンのモル数に基づいて決められる。例えば、トレハロース及び蔗糖は化合物1モル当り8モルのヒドロキシル基を有する。それ故、トレハロース又は蔗糖がポリヒドロキシ化合物として使用される場合、ヒドロキシル基1モル当りリン酸イオンの約0.025モルから約0.625モルの比が約0.2から約5までのリン酸イオン対蔗糖又はトレハロースのモル比を得るのに充分なリン酸イオンを添加することにより得られる。トレハロース又は蔗糖について、約0.0375から約0.625までの好ましいモル比は約0.3から約5までのリン酸イオン対蔗糖又はトレハロースのモル比と言い換えられる。 所定の生物学的物質の構造及び機能を安定化し、保存する際のリン酸イオンの有効性はリン酸イオン対ヒドロキシル基のモル比が0から増大するにつれて増大するが、或る点(最適比)までに過ぎず、その後に追加のリン酸イオンの使用は有効性に増大を与えず、又はほんのわずかな増大を与えるに過ぎないことがわかった。既に説明したように、最適比は使用される生物学的物質の量及び型、保存媒体中のポリヒドロキシ化合物の量及び型、保存媒体のpH、並びに利用される保存技術を含む、幾つかの因子に依存する。 【0017】 本発明の所定の水性保存媒体について最適であることがわかったモル比よりも高いリン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比におけるリン酸イオンの使用は、多くの状況で、保存後に、ポリヒドロキシ化合物のみを含む水性保存媒体から得られる保存された組成物に対し改良された構造上及び機能上の保全性、例えば、再水和における改良された活性、貯蔵安定性、又はコストもしくは加工上の利点を有する保存された生物学的物質組成物を依然としてもたらし得る。それ故、本発明の所定の水性保存媒体に関する比は再水和後に最適の安定性及び活性をもたらす比以下であることが好ましく、最適比の使用が最も好ましい。しかしながら、再水和後の保存された生物学的物質の最適の活性に必要とされる比よりも大きい比を有する水性保存媒体が使用し得る。 【0018】 その他の成分 本発明の保護剤混合物及び/又は水性保存媒体はその他の成分を含み得る。例えば、それらは所定の生物学的物質について媒体のpHを最適値に維持するために緩衝剤を含んでもよい。混合物及び/又は媒体中のリン酸イオンは同様に緩衝剤として作用し、こうして追加の非リン酸塩緩衝剤が必要とされなくてもよいことが注目されるべきである。リン酸塩緩衝剤が使用される場合、緩衝剤中に存在するリン酸イオンの量は混合物及び/又は水性保存媒体だけでなく、得られる保存された生物学的物質組成物中のリン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル基のモル比を決める際に含まれるべきである。所定の生物学的物質が最も安定であるpHは当業界で知られている。一般に、本発明の保存媒体は約5から約10までの範囲のpHを有するべきであり、約6から約9までの範囲のpHが最も好ましい。 【0019】 保護剤混合物及び/又は水性保存媒体は又一種以上の酸化防止剤、例えば、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムを含んでもよい。酸化防止剤が使用される場合、それは当業界で有益であることが知られている量で存在し得る。 保護剤混合物及び/又は水性保存媒体は又乾燥剤及び/又は浸透圧保護剤として作用し得るその他の成分、例えば、メタノール、エタノール、グリセロール及びDMSOを含んでもよい。これらの成分は本発明の水性保存媒体からつくられた保存された生物学的物質組成物において残留水分を減少し、又は浸透圧ストレスを相殺する傾向があり、これらは或る場合に一層良好な貯蔵能力をもたらし得る。 【0020】 本発明の保護剤混合物、水性保存媒体及び保存された組成物の調製 本発明の保護剤混合物は以下のように調製し得る。ポリヒドロキシ化合物及びリン酸イオンの源が所望の比率で水溶液に添加される。リン酸イオン源はポリヒドロキシ化合物の添加の前にその溶液に溶解されることが好ましい。混合物は溶解を行なうために必要により加熱されてもよい。溶液は、均一な保護剤混合物が得られるまで、充分に混合されるべきである。次いでこの保護剤混合物が水溶液として貯蔵でき、又は当業界で知られている種々の方法にかけられて固体混合物、例えば、粉末を製造し得る。粉末は無水であってもよく、又は部分結晶性水和物質であってもよい。保護剤混合物が粉末の如き固体である場合、それが本発明の水性保存媒体をつくるのに使用される前にそれは水溶液で再構成されるべきである。しかしながら、固体混合物は生物学的物質を含む水溶液に直接添加されて水性の本媒体を生成し得る。 次いで水溶液の形態の保護剤混合物が生物学的物質の水溶液に添加される。保護剤混合物が水性緩衝液中で調製された場合、生物学的物質の水溶液は同緩衝液中で調製されることが好ましい。次いでこれらの2種の溶液が充分に混合されて、本発明の水性保存媒体を生成する。酸化防止剤が使用されている場合、それは一般に保護剤溶液の添加の前に生物学的物質の水溶液に添加される。 【0021】 本発明の水性保存媒体中に使用される生物学的物質の量は、例えば、保存すべき特定の生物学的物質、存在するリン酸イオン及びポリヒドロキシ化合物の量、使用される保存技術に応じて、所望により変化し得る。 次いで水性保存媒体が、凍結、凍結乾燥、真空乾燥、周囲空気乾燥、及び/又は噴霧乾燥を含む、当業界で知られている一種以上の技術により保存されて、本発明の保存された生物学的物質組成物を得ることができる。得られる保存された生物学的物質組成物は無水であってもよく、又は部分結晶性水和物質であってもよい。保存された生物学的物質はその性質が実質的に無水であることが好ましい。ここで、“実質的に無水”は保存された生物学的物質組成物がカールフィッシャー分析により測定して10%未満の水を含むことを意味する。 【実施例】 【0022】 実施例1 前もって決めた量のポリヒドロキシ化合物及びリン酸イオンを添加し、混合して均一な溶液を生成することにより、水溶液形態の種々の保護剤混合物をバターフィールド緩衝液(7.2のpHを有する0.6mMリン酸カリウム緩衝水)中でつくった。次いで所定の保護剤混合物を1:1の質量比でL.アシドフィルス細胞溶液に添加し、得られる水性保護媒体を充分に混合し、室温で30分間インキュベートした。 L.アシドフィルス細胞溶液を以下のように調製した。15.3質量%の乾燥質量を有する濃縮L.アシドフィルス細菌培養物を1.9%のチオ硫酸ナトリウムと混合してL.アシドフィルス細胞溶液を生成し、室温で30分間インキュベートした。 次いで上記様式でつくった夫々の水性保護媒体のサンプルを凍結、凍結乾燥又は真空乾燥にかけた。 【0023】 凍結されたサンプルについて、水性保存媒体を25ゲージのシリンジニードルにより液体窒素にドリップした。液滴が通常直径2-3mmのペレットを形成し、これらが約10秒以内に完全に凍結した。次いで保存された細胞組成物のこれらのサンプルを開放雰囲気中で室温で解凍した。 凍結乾燥されたサンプルを先に詳述したように凍結にかけ、得られるペレットをビルチス12EK凍結乾燥機中で-45℃以下の温度に前もって冷却した棚の上に置いた。更に、保存媒体の小サンプルを計量してそれらの密度を測定し、次いでガラス皿中で薄層として凍結乾燥した。これらのサンプルを凍結乾燥の前後に計量して凍結乾燥中に夫々のサンプルにより失われた水の量を計算し、それ故、再水和に必要とされる水の量を測定した。 【0024】 凍結乾燥したサンプルの全てを下記の凍結乾燥プロトコルにかけ、この場合、圧力及び温度は設定値である。サンプルを先に説明したように凍結乾燥機に入れた後、凍結乾燥機を0パスカル(0ミリトル)の圧力で排気した。サンプルを1200分間にわたって-45℃で0パスカル(0ミリトル)に保持し、その後に温度及び圧力を50分間の期間にわたって夫々-40℃及び2.7パスカル(20ミリトル)に上昇させた。次いでサンプルを600分間にわたって-40℃及び2.7パスカル(20ミリトル)に保った。次いで温度を50分間の期間にわたって-35℃に上昇させ、次いでサンプルを600分間にわたって-35℃及び2.7パスカル(20ミリトル)に保った。次に温度及び圧力を50分間にわたって夫々-30℃及び6.7パスカル(50ミリトル)に上昇させ、次いでサンプルを600分間にわたって-30℃及び6.7パスカル(50ミリトル)に保った。時間のその期間の終了時に、温度及び圧力を50分間にわたって夫々-25℃及び13.3パスカル(100ミリトル)に上昇させ、サンプルを600分間にわたって-25℃及び13.3パスカル(100ミリトル)に保った。次いで温度を50分間にわたって-20℃に上昇させ、次いでサンプルを600分間にわたって-20℃及び13.3パスカル(100ミリトル)に保った。次に温度を100分間にわたって-10℃に上昇させ、サンプルを600分間にわたってその温度及び13.3パスカル(100ミリトル)に保った。 【0025】 次いでサンプルを6.7パスカル(50ミリトル)で0.5℃/分の速度で40℃の最終温度に上昇させた。次いでサンプルを1200-2400分間にわたって0パスカル(0ミリトル)で最終温度に保った。次いで凍結乾燥機を窒素ガスで排気し、保存された細胞組成物サンプルを除去し、50mlのプラスチック遠心分離管中にシールし、37℃のインキュベーター中に貯蔵した。 真空乾燥にかけたサンプルについて、保存媒体0.2mlを1.8mlのプラスチック微小遠心分離管に入れた。次いでサンプルをサバント・インストルメンツSVC-100Hスピードバク・コンセントレーター真空乾燥機に入れ、11.3パスカル(85ミリトル)の最終圧力で約4日にわたって室温で回転蒸発させて、保存された細胞組成物を得た。次いで管をシールし、デシケーター中で室温で貯蔵した。 サンプルをつくり、凍結、真空乾燥又は凍結乾燥にかけた時点で、水性保存媒体からの追加のサンプルを採取し、希釈し、通常の注入塗布技術を使用して寒天培地に塗布して保存方法を行なう前に保存媒体中の生存細胞数を測定した。最初に、サンプルを希釈して約100の細胞/mlの細胞濃度を得た。次いで希釈された保存媒体1ml又は2mlをペトリ皿に入れ、45℃で液体寒天増殖培地(55g/LのMRSラクトバチルス・ブロース及び0.1%のL-システインを含む15g/Lの寒天)と混合した。皿を冷却し、寒天を固化し、その時点で皿を倒立させ、37℃で2-3日にわたって嫌気増殖チャンバー(ガスパック・ジャー)に入れ、その時点でコロニーが寒天中で見えた。原則として、夫々のコロニーは保存媒体中の単一生存細胞に相当する。 【0026】 種々の時点で、凍結乾燥及び真空乾燥により調製された保存された細胞組成物の一部をバターフィールド緩衝液中で再水和した。凍結乾燥したサンプルをそれらの初期濃度の約1/100まで再水和し、30分間インキュベートし、希釈し、上記のように塗布した。真空乾燥したサンプルをそれらの初期濃度の約1/5まで再水和し、混合してペレットを充分に溶解し、希釈し、上記のように塗布した。全てのサンプルを少なくとも3回反復で塗布した。これらの実験について、0時はサンプルが乾燥機から除去された時点である。保存媒体のサンプルを液体窒素中で凍結することにより調製された保存された細胞組成物を室温における完全な解凍が起こった後に上記のように塗布した。 サンプルの所定の組に関する結果を下記の表1に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
【0027】 【表1】
【0028】 1括弧中の数字はトレハロース1モル当りのリン酸イオンのモル数を示す。2“チオ”は1.9%のチオ硫酸ナトリウムの略語である。3NA:10%未満の回復のサンプルはその後の時点でアッセイされなかった。 実施例2 種々の量のポリヒドロキシ化合物とともにリン酸イオン、炭酸イオン、又は硫酸イオンを使用して、実施例1の操作を繰り返した。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表2に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
【0029】 【表2】
【0030】 1括弧中の数字はポリヒドロキシ化合物1モル当りのリン酸イオン、炭酸イオン又は硫酸イオンのモル数を示す。2“チオ”は1.9%のチオ硫酸ナトリウムの略語である。3pHはこれらのサンプルについて調節されなかった。指示薬紙はpHを約11と推定した。これはおそらく不十分な回復の原因である。4NA:10%未満の回復のサンプルはその後の時点でアッセイされなかった。 実施例3 凍結乾燥したサンプルを50℃に乾燥した以外は、種々の量のリン酸イオンの種々の源、及び種々の量のトレハロースを含む保存媒体を使用して、実施例1の操作を繰り返した。加えて、凍結乾燥したサンプル中の残留水をカールフィッシャー(KF)分析により測定し、ガラス転移温度(Tg)を得た。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表3に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。 【0031】 【表3】
【0032】 注:1括弧中の数字はトレハロース1モル当りのリン酸イオンのモル数を表す。2“チオ”は1.9%のチオ硫酸ナトリウムの略号である。*このサンプルは不当に希釈され、400%より大きい回復をもたらした。 実施例4 凍結乾燥したサンプルを50℃の温度に乾燥した以外は、保存媒体中に種々の量のトレハロース及び異なるリン酸イオン源を使用して、実施例1の操作を繰り返した。2種のサンプルでは、エタノールを乾燥剤として保存媒体に添加し、一方、一種のサンプルでは、L.アシドフィルス細胞を“洗浄”(遠心分離、デカントそして再懸濁)して残留増殖培地を除去した。又、異なる緩衝液を含む媒体を試験した。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表4に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
【0033】 【表4】
1括弧中の数字はトレハロース1モル当りのリン酸イオンのモル数を表す。2“チオ”は1.9%のチオ硫酸ナトリウムの略号である。3NA:10%未満の回復のサンプルをその後の時点でアッセイしなかった。 【0034】 実施例5 サンプルを50℃の温度に凍結乾燥した以外は、トレハロース、リン酸イオン、及び種々の酸化防止剤を使用して、又は使用しないで、実施例1の操作を繰り返した。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表5に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。 【0035】 【表5】
注:1括弧中の数字はトレハロース1モル当りのリン酸イオンのモル数を表す。2“チオ”はチオ硫酸ナトリウムの略号である。3トレハロース-リン酸塩のpHは6.5を目標としたが、酸化防止剤又は細胞の添加後に測定しなかった。最終pHはおそらく6.0〜6.5であった。 【0036】 実施例6 ペディオコッカス種をL.アシドフィルス細胞に代えて使用し、凍結乾燥したサンプルを25℃の温度に乾燥し、又は更に50℃に乾燥した以外は、実施例1の操作を繰り返した。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表6に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独+チオ”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
【0037】 【表6】
注:1括弧中の数字はトレハロース1モル当りのリン酸イオンのモル数を表す。2“チオ”は1.9%のチオ硫酸ナトリウムの略号である。3トレハロース-リン酸塩のpHは細胞と混合する前に6.5と測定した。最終pHはおそらく6.5未満であった。 【0038】 実施例7 L-ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH、EC1.1.1.27、型II、ウサギの筋肉)を4℃でpH7.5の100mMリン酸カリウム緩衝液中で一夜透析した。シグマ・ケミカル社(セントルイス、ミズーリー)から購入したタンパク質測定キットであるシグマ・ダイアグノスチックを使用し、Ohnishi及びBarr, “ビウレット試薬及びフェノール試薬を使用するタンパク質を定量するための簡素化方法”, Analytical Biochem. 86:193-200 (1978)の改良ビウレット方法を使用して、全タンパク質含量をアッセイした。バリアンUVスペクトロフォトメーターを使用してタンパク質アッセイを室温で725nmにおける特徴的な吸収で行なった。反応混合物は100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、0.150mM NADH、及び1.20mMピルビン酸を含んでいた。 サンプルを調製するために、透析したLDHを透析に使用されたのと同じリン酸カリウム緩衝液で希釈した。得られる酵素溶液は100mMのリン酸イオン濃度、及び50μg/mlのLDH濃度を有していた。次いで保護剤混合物の三つの組をつくった。混合物の組は夫々200mM、400mM及び600mMのトレハロース濃度を有していた。 夫々の混合物の組は夫々100mM、300mM、500mM及び700mMの濃度のリン酸イオンを含む、4種の別々の保護剤サンプルからなった。トレハロースを所定の量のリン酸イオンを含むリン酸塩水溶液に溶解することによりこれらのサンプルをつくった。 次いでLDH溶液2mlを12種の保護剤混合物の夫々2mlと混合して100mM、200mM、又は300mMのトレハロース濃度、25μg/mlのLDH濃度、及び100mM、200mM、300mM又は400mMのリン酸イオン濃度を有する水性保存媒体の溶液4mlを得た。上記サンプル調製を表7に示す。
【0039】 【表7】
【0040】 次いで48のバイアルを保存媒体の上記サンプルの夫々について調製した。夫々のバイアルを標識し、計量し、保存媒体1mlを夫々のバイアルにピペットで入れた。次いで夫々のバイアルを再度計量した。次いでサンプルを液体窒素中のバイアルの浸漬(“急冷”)又は-45℃以下の温度における凍結乾燥機中の前もって冷却した棚の上の配置(“遅い凍結”)により凍結した。凍結乾燥したサンプルの全てをビルチス12EL凍結乾燥機中の下記の凍結乾燥プロトコルにかけ、この場合、全ての圧力温度を設定値に設定する。サンプルを先に説明したように凍結乾燥機に入れた後に、凍結乾燥機を0パスカル(0ミリトル)の圧力で排気した。サンプルを600分間にわたって-45℃及び0パスカル(0ミリトル)に保ち、その後に温度及び圧力を50分間の期間にわたって夫々-40℃及び2.7パスカル(20ミリトル)に上昇させた。次いでサンプルを600分間にわたって-40℃及び2.7パスカル(20ミリトル)に保った。次いで温度を50分間の期間にわたって-35℃に上昇させ、次いでサンプルを600分間にわたって-35℃及び2.7パスカル(20ミリトル)に保った。次に温度及び圧力を50分間にわたって夫々-30℃及び6.7パスカル(50ミリトル)に上昇させ、次いでサンプルを600分間にわたって-30℃及び6.7パスカル(50ミリトル)に保った。時間のその期間の終了時に、温度及び圧力を50分間にわたって夫々-25℃及び13.3パスカル(100ミリトル)に上昇させ、サンプルを600分間にわたって-25℃及び13.3パスカル(100ミリトル)に保った。次いで温度を50分間にわたって-20℃に上昇させ、次いでサンプルを600分間にわたって-20℃及び13.3パスカル(100ミリトル)に保った。次に温度を100分間にわたって-10℃に上昇させ、サンプルを600分間にわたってその温度及び13.3パスカル(100ミリトル)に保った。 【0041】 次いでサンプルを700分間の期間にわたって6.7パスカル(50ミリトル)で25℃の温度に上昇させた。次いでサンプルを荷卸しまで2140分間にわたって0パスカル(0ミリトル)でその最終温度に保った。次いで凍結乾燥機を窒素ガスで排気し、バイアル中の保存されたLDHサンプルを除去し、LDH活性について測定した。活性を測定する前に、夫々のサンプルを計量して水損失の量を測定し、失われた水の量の精製水(ミリポア社からのミリQシステム)で再水和した。次いで先に説明したのと同じ方法を使用してLDH活性を測定した。 サンプルの所定の組に関する結果を図1(凍結乾燥)及び図2(凍結)に示す。 【0042】 実施例8 L-ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH、EC1.1.1.27、型II、ウサギの筋肉)を4℃でpH7.5の100mMリン酸カリウム緩衝液中で一夜透析した。シグマ・ケミカル社(セントルイス、ミズーリー)から購入したタンパク質測定キットであるシグマ・ダイアグノスチックを使用し、Ohnishi及びBarr, “ビウレット試薬及びフェノール試薬を使用するタンパク質を定量するための簡素化方法”, Analytical Biochem. 86:193-200 (1978)の改良ビウレット方法を使用して、全タンパク質含量をアッセイした。バリアンUVスペクトロフォトメーターを使用してタンパク質アッセイを室温で725nmにおける特徴的な吸収で行なった。反応混合物は100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、0.150mM NADH、及び1.20mMピルビン酸を含んでいた。 【0043】 サンプルを調製するために、LDHを四つの50mlの容器に添加し、透析に使用されたのと同じリン酸カリウム緩衝液で希釈して溶液25mlをつくった。サンプルの夫々において、酵素濃度は50μg/mlであった。次いで25mlの容積を有する4種の保護剤混合物を50mlの容器中で調製した。夫々の混合物は400mMのトレハロース、及び種々の量のリン酸イオンを含んでいた。第一混合物(基準)をつくるために、トレハロースを10mMリン酸カリウム溶液に溶解した。第二混合物について、トレハロースを100mMリン酸カリウム溶液に溶解した。トレハロースを500mMリン酸カリウム溶液及び900mMリン酸カリウム溶液の夫々に溶解することにより第三混合物及び第四混合物をつくった。 次いでLDHサンプルを保護剤混合物と混合して25μg/mlのLDH濃度、200mMのトレハロース濃度並びに種々のLDH濃度及びリン酸イオン濃度を有する水性保存媒体の溶液50mlを得た。サンプル1-4に関するリン酸イオン濃度は夫々10mM、100mM、300mM、及び500mMであり、サンプル1について0.05、サンプル2について0.5、サンプル3について1.5、又サンプル4について2.5のリン酸イオン対トレハロースのモル比であった。上記サンプル調製を下記の表8に示す。 【0044】 【表8】
【0045】 次いで40のバイアルを保存媒体の上記の四つのサンプルの夫々について調製した。夫々のバイアルを標識し、計量し、保存媒体1mlを夫々のバイアルにピペットで入れた。次いで夫々のバイアルを再度計量した。次いで実施例7に記載されたのと同じプロトコルを使用してサンプルを凍結乾燥した。 凍結乾燥が完結した後、バイアル中の保存されたLDHサンプルを除去し、バイアルをシールし、37℃のインキュベーター、30℃のインキュベーター又は4℃の冷蔵庫中で貯蔵した。 次いでLDH活性をサンプルについて周期的に測定した。活性を測定する前に、夫々のサンプルを計量して水損失の量を測定し、失われた水の量の精製水(ミリポア社からのミリQシステム)で再水和した。次いで先に説明したのと同じ方法を使用してLDH活性を測定した。 サンプルの所定の組に関する結果を図3-5に示し、図中、“Z”はリン酸イオン対トレハロースのモル比である。 【0046】 実施例9 実施例1の操作を繰り返した。結果を下記の表9に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
【0047】 【表9】
注:1括弧中の数字はトレハロース1モル当りのリン酸イオンのモル数を表す。2“チオ”は1.9%のチオ硫酸ナトリウムの略号である。 【0048】 実施例10 モル基準で7.5%の蔗糖又はトレハロースと一リン酸カリウムもしくは二リン酸カリウムにより得られた種々の量のリン酸イオンとを含む水性保護剤混合物を調製し、夫々の混合物25μlをアルミニウム示差走査熱量測定パンにシールした。次いでサンプルを液体窒素中の浸漬により急冷し、示差走査熱量測定器(これは-140℃に前もって冷却されていた)に装填した。次いでサンプルを50℃の温度まで5℃/分の速度で走査し、ガラス転移温度(Tg)を測定した。夫々のサンプルに関する結果を図6に示す。 【図面の簡単な説明】 【0049】 【図1】種々の量及びモル比のリン酸塩及びトレハロースを使用してつくられた凍結乾燥されたラクテートデヒドロゲナーゼ組成物から回復された活性%のグラフである。 【図2】種々の量及びモル比のリン酸塩及びトレハロースを使用してつくられた凍結されたラクテートデヒドロゲナーゼ組成物から回復された活性%のグラフである。 【図3】種々の量及びモル比のリン酸塩及びトレハロースを使用してつくられた凍結乾燥されたラクテートデヒドロゲナーゼ組成物から経時回復された活性%のグラフである。 【図4】種々の量及びモル比のリン酸塩及びトレハロースを使用してつくられた凍結乾燥されたラクテートデヒドロゲナーゼ組成物から経時回復された活性%のグラフである。 【図5】種々の量及びモル比のリン酸塩及びトレハロースを使用してつくられた凍結乾燥されたラクテートデヒドロゲナーゼ組成物から経時回復された活性%のグラフである。 【図6】本発明の種々の保護剤混合物に関するガラス転移温度のグラフである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】500395761 【氏名又は名称】ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
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| 【出願日】 |
平成19年9月18日(2007.9.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100059959 【弁理士】 【氏名又は名称】中村 稔
【識別番号】100067013 【弁理士】 【氏名又は名称】大塚 文昭
【識別番号】100082005 【弁理士】 【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100065189 【弁理士】 【氏名又は名称】宍戸 嘉一
【識別番号】100084009 【弁理士】 【氏名又は名称】小川 信夫
【識別番号】100086771 【弁理士】 【氏名又は名称】西島 孝喜
【識別番号】100084663 【弁理士】 【氏名又は名称】箱田 篤
【識別番号】100093300 【弁理士】 【氏名又は名称】浅井 賢治
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| 【公開番号】 |
特開2008−44953(P2008−44953A) |
| 【公開日】 |
平成20年2月28日(2008.2.28) |
| 【出願番号】 |
特願2007−241092(P2007−241092) |
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