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【発明の名称】 原木木材の害虫駆除システム
【発明者】 【氏名】松尾 健一

【氏名】白川 忠秀

【氏名】上野 光

【氏名】千品 裕嗣

【氏名】川崎 義則

【要約】 【課題】原木木材中の害虫を短時間で効率よく駆除できる原木木材の害虫駆除システムを提供する。

【解決手段】原木木材L中の害虫を駆除するシステムにおいて、原木木材Lを移送するための直線状に形成した流路2と、その流路2の途中に設けられ、放射線の外部への漏洩を防止すべく所定長さ遮蔽するための遮蔽路3と、その遮蔽路3内に設けられ、原木木材Lの両端部を把持して原木木材Lを軸回りに回転させる回転機構と、その回転機構で回転させている原木木材Lに放射線を照射するための放射線発生装置とを備えたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原木木材中の害虫を駆除するシステムにおいて、上記原木木材を移送するための直線状に形成した流路と、その流路の途中に設けられ、放射線の外部への漏洩を防止すべく所定長さ遮蔽するための遮蔽路と、その遮蔽路内に設けられ、上記原木木材の両端部を把持して上記原木木材を軸回りに回転させる回転機構と、その回転機構で回転させている原木木材に放射線を照射するための放射線発生装置とを備えたことを特徴とする原木木材の害虫駆除システム。
【請求項2】
上記遮蔽路は、上記流路の上流側に設けられた搬入口と、下流側に設けられた搬出口とを備え、上記遮蔽路内に搬入される上記原木木材の少なくとも1本を囲むべく放射線遮蔽壁で区画形成されると共に、上記搬入口と上記搬出口とに開閉自在な遮蔽扉が設けられて構成される請求項1記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項3】
上記回転機構は、上記原木木材の両端部を把持する把持部材を有し、上記流路の流れ方向に走行自在に設けられる請求項1または2記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項4】
上記回転機構は、上記流路の幅方向にスライド自在に設けられる請求項1〜3いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項5】
上記回転機構は、その回転機構を上記流路に沿って搬送するための搬送台車上に設けられる請求項1〜4いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項6】
上記遮蔽路内、あるいはその上方に走行レールを敷設し、その走行レールに沿って上記搬送台車を自走させる請求項5記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項7】
上記搬送台車の上部に回転機構用走行レールを敷設し、その回転機構用走行レール上に上記回転機構を自走させる請求項5または6記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項8】
上記遮蔽路の両側に、上記原木木材の照射中心位置を維持するための可動式の位置出し用ガイドを設けた請求項1〜7いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項9】
上記放射線発生装置で発生する放射線はX線あるいは電子線であり、その照射線量が50〜2000Gyである請求項1〜8いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、原木木材中の害虫を駆除するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の輸入原木木材(丸太(横断面が丸型の木材)、あるいは原木ともいう)の殺虫方法には、1)原木を所定時間熱処理する熱処理による殺虫方法、2)原木に臭化メチルを噴霧、あるいは原木を臭化メチル中に浸す臭化メチルによる殺虫方法、または3)原木を長期間海水に浸す海水による殺虫方法がある。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−275540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には以下の問題がある。
【0006】
1)の熱処理方法は、一般的な規定では、原木の内部中心温度が56℃以上で30分以上連続加熱する必要があるが、大型の木材に対しては、熱処理に数時間要するため時間がかかり、スループットが低下し、駆除処理の効率が悪くなることが見込まれる。
【0007】
2)の臭化メチル方法では、木材の表層に近い範囲しか殺虫できないため、内部に存在する害虫を駆除しにくい。特に、害虫の卵やさなぎは耐性が強く、これらに対する殺虫効力が低い。また、臭化メチルは人体・環境(温暖化など)に有害な物質のため、世界的な使用規制が図られている。
【0008】
3)の海水殺虫方法でも、数日間要するため時間がかかり、しかも害虫の卵やさなぎに対する殺虫効力が低い。また、原木を海水に浸すため、害虫を窒息死させるための時間がかかる。さらに、検疫にも時間を要する。
【0009】
一方、原木中の害虫を駆除する方法として、放射線を利用することも考えられるが、現状では、放射線を利用した大型木材の殺虫システムは世の中に存在しない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、原木木材中の害虫を短時間で効率よく駆除でき、かつ小型で簡単な構成の原木木材の害虫駆除システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、原木木材中の害虫を駆除するシステムにおいて、上記原木木材を移送するための直線状に形成した流路と、その流路の途中に設けられ、放射線の外部への漏洩を防止すべく所定長さ遮蔽するための遮蔽路と、その遮蔽路内に設けられ、上記原木木材の両端部を把持して上記原木木材を軸回りに回転させる回転機構と、その回転機構で回転させている原木木材に放射線を照射するための放射線発生装置とを備えた原木木材の害虫駆除システムである。
【0012】
請求項2の発明は、上記遮蔽路は、上記流路の上流側に設けられた搬入口と、下流側に設けられた搬出口とを備え、上記遮蔽路内に搬入される上記原木木材の少なくとも1本を囲むべく放射線遮蔽壁で区画形成されると共に、上記搬入口と上記搬出口とに開閉自在な遮蔽扉が設けられて構成される請求項1記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0013】
請求項3の発明は、上記回転機構は、上記原木木材の両端部を把持する把持部材を有し、上記流路の流れ方向に走行自在に設けられる請求項1または2記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0014】
請求項4の発明は、上記回転機構は、上記流路の幅方向にスライド自在に設けられる請求項1〜3いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0015】
請求項5の発明は、上記回転機構は、その回転機構を上記流路に沿って搬送するための搬送台車上に設けられる請求項1〜4いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0016】
請求項6の発明は、上記遮蔽路内、あるいはその上方に走行レールを敷設し、その走行レールに沿って上記搬送台車を自走させる請求項5記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0017】
請求項7の発明は、上記搬送台車の上部に回転機構用走行レールを敷設し、その回転機構用走行レール上に上記回転機構を自走させる請求項5または6記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0018】
請求項8の発明は、上記遮蔽路の両側に、上記原木木材の照射中心位置を維持するための可動式の位置出し用ガイドを設けた請求項1〜7いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0019】
請求項9の発明は、上記放射線発生装置で発生する放射線はX線あるいは電子線であり、その照射線量が50〜2000Gyである請求項1〜8いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、原木木材を短時間で効率よく駆除処理でき、かつ小型で簡単な構成である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者らは、放射線を利用した大型木材の殺虫システムを研究するにあたり、まず、 i)漏洩放射線量を規制値以下に抑制する構造・システムであること
ii)照射線量を均一化するため、原木を一定速度で運搬し、その全表面に均一に照射するシステムであること
iii)処理量が他の殺虫方法に比べ優れたシステムであること
iv)比較的コンパクトなシステムであること(特に、陸上の閉じられた空間において)を念頭においた。
【0022】
また、本発明者らは、
v)放射線の照射線量を最適化することで、原木木材に影響を与えない範囲で、木材内部に浸透した害虫の成虫、卵、さなぎを不妊化または殺虫することができる点、
vi)放射線に対しては、成虫が最も耐性が強く、卵、さなぎは、比較的低い線量で死滅しやすいが、成虫の場合、死滅に到らなくとも不妊化できれば繁殖を抑制できる点、
vii)照射線量の最適値については、現在も諸機関で研究・実験が行われているところであるが、巨大な原木木材に放射線を照射する場合、全表面の均一照射は必要不可欠であり、その調整により、照射線量を制御することが可能である点
などが必要であることを考慮し、鋭意研究した結果、本発明を完成した。
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0024】
図1は、本発明の好適な実施形態である原木木材の害虫駆除システムの全体構成を示す平面断面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る原木木材(丸太(横断面が丸型の木材)、あるいは原木ともいう)の害虫駆除システム(以下、害虫駆除システム)1は、主として港や空港近傍の陸上(例えば、税関など)に設置されて使用され、原木L中の害虫を放射線照射によって駆除するためのものである。
【0026】
ここでいう駆除は、原木Lの品質に影響を与えない範囲で、原木L内部に浸透した害虫の成虫を不妊化または殺虫、あるいは卵、さなぎを殺虫することをいう。
【0027】
害虫駆除システム1で害虫を駆除処理する原木Lは、直径:約50〜200cm、長さ:約10〜20m、密度が0.5g/cm3 とすると、重量が1.5〜24tの原木である。図6には、その一例として、長さXが15m、直径がそれぞれφa:50cmの原木La、φb:100cmの原木Lb、φc:200cmの原木Lcを示した。
【0028】
害虫駆除システム1は、原木用流路2と、その原木用流路2の途中に原木用流路2と一体に形成されて設けられ、放射線の外部への漏洩を防止すべく原木用流路2を所定長さ遮蔽するための遮蔽路(遮蔽区域)3と、その遮蔽路3の上方に設けられ、原木Lに放射線を照射するための照射部Iと、その照射部I内に収納して設けられる放射線発生装置41(図2〜図4参照)とを備える。
【0029】
原木用流路2は、原木Lを流下させて移送するための、すなわち、水wを張ってその水wに原木Lを浮かべ、流水で移動させるためのものであり、深さが原木Lの径よりも十分深く形成される。原木用流路2は、少なくとも両側が側壁2s,2sで外部と仕切られていればよく、上方が開放されて横断面が凹状に形成されていても、天井が備えられて横断面が矩形状、ほぼ円状、あるいはほぼ楕円状に形成されていてもよい。
【0030】
遮蔽路3は、原木用流路2の中央部と、その中央部の前後(後述する遮蔽側壁3s,3sの両端)に開閉自在にそれぞれ設けられた遮蔽扉4f,4bと、原木用流路2の側壁2s,2sの長手方向に延長した直線上に設けられ、放射線の外部への漏れを防止する放射線遮蔽壁としての遮蔽側壁3s,3sと、これら遮蔽側壁3s,3sと原木用流路2を覆う図示しない放射線遮蔽壁としての天井壁5(図3〜図5参照)とで区画形成される。
【0031】
原木用流路2の上流側となる遮蔽路3の上流端は、原木Lが搬入される搬入口3fであり、原木用流路2の下流側となる遮蔽路3の下流端は、原木Lが搬出される搬出口3bである。
【0032】
本実施形態では、全周囲が放射線遮蔽壁で囲まれ、横断面が矩形状の遮蔽路3を用いる例で説明するが、横断面の形状は特に限定しない。また、遮蔽路3の長さは、その内部に少なくとも1本の原木Lを搬入できる長さであればよい。
【0033】
本実施形態では、原木用流路2を直線状に形成すると共に、その直線状の原木用流路2の途中に遮蔽路3を平面視で同一直線上となるように一体形成した。すなわち、原木Lの投入から回収まで、原木Lが真っ直ぐに移動する(搬送される)害虫駆除システム1である。
【0034】
原木用流路2の一端部(図1では、手前(下)側の部分)は、原木用流路2に原木Lを投入する最上流の投入部Tであり、原木用流路2の他端部(図1では、奥(上)側の部分)、原木用流路2から原木Lを回収する最下流の回収部Cである。
【0035】
遮蔽側壁3s,3sには、コンクリート壁を用いた。遮蔽扉としては、放射線の外部への漏れを防止でき、かつ開閉自在であれば開閉方向は上下左右問わない。本実施形態では、原木用流路2の幅方向を横断するようにスライド自在に設けられ、片開きする2枚の遮蔽扉4f,4bを用いた。
【0036】
遮蔽扉4f,4bと、その駆動機構は同じ構成である。図5に示すように、遮蔽扉4fは、天井壁5を挿通するように天井裏からつり下げられて設けられる。天井裏には、遮蔽扉4fを天井裏からつり下げると共に、遮蔽扉4fを開閉させるための扉駆動機構51が設けられる。天井壁5上(天井裏の床面上)には、2本の扉駆動機構用走行レール52が敷設される。これら扉駆動機構用走行レール52上を扉駆動機構51が自走する。
【0037】
扉駆動機構51は、駆動機構本体51mと、その駆動機構本体51mの下部に設けられ、扉駆動機構用走行レール52上を走行するための複数個の車輪53と、駆動機構本体51mと一体に設けられ、各車輪53を駆動する扉用モータ54と、駆動機構本体51mに接続され、扉用モータ54に電力を供給する給電ケーブル55とからなる。
【0038】
さらに本実施形態では、扉駆動機構51が設けられる天井裏の前後に、コンクリート壁からなる天井裏隔壁56をそれぞれ設け、放射部Iからの放射線の漏れをより確実に防止する構成とした。
【0039】
図1に示すように、原木用流路2には、原木用流路2に張った水wを上流側から下流側に(図1では、下から上に)強制的に流れる一定流量の流水を発生させるための図示しない流水用ポンプが接続される。
【0040】
本実施形態では、一例として、少なくとも原木Lが投入されてから回収されるまで移動する部分の原木用流路2(図1で示される部分)を直線状に形成し、それ以外の図示しない流路、すなわち給排水用流路の形状は、特に限定しない。
【0041】
給排水用流路としては、例えば、原木用流路2の水平方向に沿って並列配置した給排水用流路や、原木用流路2の垂直上方向あるいは垂直下方向に沿って並列配置した給排水用流路など、遮蔽路3を迂回するように形成したバイパス流路がある。このようなバイパス流路を遮蔽路3の上下流側に接続するとよい。バイパス流路の幅や深さは、原木用流路2の幅や深さと同じにしてもよいし、これよりも狭かったり浅かったりしてもよい。
【0042】
原木用流路2や給排水用流路には、流水用ポンプに加え、さらに複数個の排水口を設けたり、排水口に排水用ポンプを接続したり、給水タンクや給水ポンプを接続したりしてもよい。この場合、流水の流速、水wの流量、原木用流路2の水位などをより簡単に調整できる。
【0043】
害虫駆除システム1は、遮蔽路3内に、原木Lの両端部を(厳密には、原木Lの中心軸あるいはその近傍を両端から)把持して軸回りに回転させるための後述する回転機構28と、その回転機構28を原木用流路2の流れ方向に沿って搬送するための2台の搬送台車6u(上流側),6d(下流側)を備える。
【0044】
回転機構28と各搬送台車6u,6dは、遮蔽路3内において、流れ方向に走行自在に設けられる。回転機構28と搬送台車6u,6dの詳細は、図2〜図4で後述する。
【0045】
また、原木用流路2には、原木Lの投入管理の面から、また、ほぼ所定の時間ごとに投入される原木Lが、原木用流路2内で互いに衝突せず、流水でスムーズに移動できるように、以下に説明する種々の部品を備える。
【0046】
各部品は、固定式の場合、側壁2s、遮蔽側壁3s、あるいは水中に設けるとよい。各部品が可動式や移動式の場合には、複雑な防水構造を不要とし、かつ低コスト化や耐久性、メンテナンス性を向上させるため、機械的な干渉がない範囲で天井壁5、側壁2s、あるいは遮蔽側壁3sの上部に、モータなどの駆動手段を設けるとよい。
【0047】
ただし、本実施形態では、後述する搬送台車6u,6dや回転台車27を防水構造とした例で説明する。もちろん、搬送台車や回転台車についても、モータなどの駆動手段を防水構造にせず、天井壁5、側壁2s、あるいは遮蔽側壁3sの上部に設けてもよい。
【0048】
投入部Tには、原木Lを投入部Tへ案内するための図示しない斜路を接続してもよい。遮蔽路3の上流側には、原木用流路2をほぼ横切るように、原木L投入の可否を決めるための開閉自在な投入可否ストッパー7が設けられる。投入可否ストッパー7の開閉方向は、上下左右でもよく、片開きや観音開きでもよい。
【0049】
遮蔽路3の入口のすぐ下流側には、原木Lへの放射線の照射に先立ち、上流から流れてきた原木Lの先端が当たって原木Lを一時止める照射前ストッパー8が設けられる。本実施形態では、照射前ストッパー8を天井壁5からつり下げた。
【0050】
この照射前ストッパー8は、原木Lを一時止める位置から原木Lを開放する位置まで移動自在(例えば、原木用流路2の幅方向や上下方向にスライド自在、あるいは原木用流路2の下流側に開くように開閉自在)に設けられる。
【0051】
照射前ストッパー8は、原木Lの先端が当たることで、遮蔽路3の入口近傍に原木Lが到着したことを搬送台車6u,6dや後述する径確認用ガイド9に知らせる図示しない到着センサを備える。
【0052】
遮蔽路3内の入口近傍となる両遮蔽側壁3s,3sには、原木Lの径を確認する原木用流路2の幅方向に移動自在な可動式の径確認用ガイド(丸太幅確認機構)9がそれぞれ設けられる。これら径確認用ガイド9は、原木Lを投入した直後、全開の状態である。この状態から照射前ストッパー8に原木Lが当たると、各径確認用ガイド9は、互いに等しい距離ずつ幅方向に進出し、かつ両方の径確認用ガイド9が所定の圧力を受けたとき、停止することで、原木Lの径を確認する(原木Lのセンター出しを行う)。
【0053】
ここで、主に図1〜図4を用いて、遮蔽路3とその近傍、回転機構28および搬送台車6u,6dをより詳細に説明する。
【0054】
図1〜図4に示すように、遮蔽路3の中央部付近の上方となる天井壁5上の照射部Iに、放射線発生装置41が原木用流路2の長さ方向に沿って複数個(図2では、3個)収納される。
【0055】
放射線発生装置41としては、X線照射装置を用いる。このX線照射装置で発生させたX線を放射線rとして原木Lに照射する。放射線発生装置41の照射口42は、遮蔽路2内に突出しており、遮蔽路3内において昇降自在に設けられるとよい。
【0056】
放射線rは距離の2乗に比例して強度が小さくなるので、照射口42と原木Lとの距離D(図3参照)は、遮蔽路3内を原木Lが通過できる範囲で極力近づけた方がよい。このため、本実施形態では、照射口42を適宜昇降させたり、原木用流路2に張る水wの量を増減したりする。
【0057】
X線の照射線量は、原木Lの直径や種類にもよるが、50〜2000Gy、好ましくは100〜500Gy、さらに好ましくは140〜300Gyにする。
【0058】
遮蔽路3の床面上、すなわち、その上下流側近傍となる原木用流路2の床面上には、2本の搬送台車用走行レール21が敷設される。これら搬送台車用走行レール21上を搬送台車6u,6dが自走する。遮蔽路3上の天井壁5には、搬送台車6u,6dをそれぞれ天井壁5から支持する台車用支持部材22が走行する支持部材用レール23が敷設される。
【0059】
搬送台車6u,6dは同じ構成であり、搬送台車用走行レール21上の上下流に対向して配置される。搬送台車6uは、台車本体6mと、台車本体6m上に設けられ、幅方向に長い台車板24と、台車板24から起立した台車用支持部材22とで主に構成される。
【0060】
台車本体6mの下部には、搬送台車用走行レール21上を走行するための車輪25が2個設けられる。例えば、金属製の搬送台車用走行レール21を用いる場合は車輪25も金属製にし、コンクリート製の搬送台車用走行レール21を使用する場合には、車輪25をゴム製にするとよい。本実施形態では、横断面が凹状の搬送台車用走行レール21を用いた。
【0061】
台車本体6mには、各車輪25を駆動する台車用モータと、その台車用モータを駆動するインバータと、相手側の搬送台車の位置やその作動状態(後述する相手側の搬送台車が有する把持部材30が原木Lに突き刺さっているか、切り離されているかなど)を検出する相手側搬送台車検出用センサと、これら各部品を制御する搬送台車用制御盤などが備えられる。
【0062】
台車板24上には、搬送台車用走行レール21と同様に、後述する回転台車(回転用台車)27が走行する(すなわち、回転機構28が走行する)回転機構用レールとしての2本の回転台車用レール(方向レール)26が、搬送台車用走行レール21と高さ方向に離されて直角に交差するように敷設される。これら回転台車用走行レール26上を回転台車27が自走する。
【0063】
搬送台車6uは、さらに流路2の幅方向にスライド自在な回転台車27を有する。回転台車27は、回転台車本体27mと、原木Lの両端部を把持して軸回りに回転させるための回転機構28とで主に構成される。
【0064】
回転台車本体27mの下部には、回転台車用走行レール26上を走行するための車輪29が、片側に2個、合計4個設けられる。
【0065】
回転機構28は、原木Lの中心軸あるいはその近傍を両端から把持する把持部材30と、その把持部材30と回転台車本体27m間を連結し、把持部材30を水平方向に伸縮させる回転自在なアーム31とからなる。
【0066】
回転台車本体27mには、アーム31を回転させるアーム用モータと、そのアーム用モータを駆動するインバータと、アーム31を伸縮させる伸縮装置と、アーム用モータの回転数を検出するロータリエンコーダなどの回転センサと、これら各部品を制御する回転台車用制御盤などが備えられる。
【0067】
本実施形態では、搬送台車用制御盤と回転台車用制御盤を独立して備える例で説明するが、例えば、搬送台車用制御盤が回転台車用制御盤の機能の一部あるいは全部を有するようにしてもよい。
【0068】
図3に示すように、把持部材30は、アーム31の先端から水平方向に突出するほぼ円錐状に形成された複数本(図3では4本)の爪部材32からなる。各爪部材32の基部には、爪部材32が原木Lの端面に突き刺さった後、所定の長さまでアーム31を伸長させるため、放射線に耐性が強いリミットスイッチなどの機械式スイッチが設けられる。
【0069】
図1または図3に示すように、遮蔽路3の遮蔽側壁3s,3sには、照射直前から照射直後まで原木Lの照射中心位置を維持するための可動式の位置出し用ガイド10が、複数個(図1では、片側に2個、合計4個)設けられる。各可動式ガイド10は、水平方向に伸縮自在に設けられ、原木Lの直径に応じて伸長し、原木Lの側面に当たると原木Lから若干距離を隔てて停止する。各可動式ガイド10は、水wに浸るため防水構造にする。
【0070】
搬送台車本体6mと回転台車本体27mに供給する電力は、例えば、搬送台車本体6mと回転台車本体27mのそれぞれに設けたバッテリ、搬送台車本体6mと回転台車本体27mのそれぞれに接続した給電ケーブル、あるいは流路2の上部側方に布設した架線(トロリ線)と、その架線から電力を取り入れる集電装置(トロリ)とによって行う。
【0071】
次に、図1、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)を用いて、本実施形態の作用を害虫駆除システム1の動作と共に説明する。
【0072】
図1に示すように、まず、原木用流路2に、原木Lの直径、重量に応じて水wを張っておく。流水用ポンプを運転し、水wを上流から下流へある一定流量で流して原木用流路2内に流水を発生させる。
【0073】
この状態で、ピッキング装置、クレーン、あるいは作業員により、斜路などに原木Lを載せて投入部Tに投入する。投入された原木Lを水wに浮かせ、流水によって下流へ順次搬送して移動させる。
【0074】
ここでは、遮蔽路3内で、先行して投入された原木Lの放射線照射が行われているものとするので、投入可否ストッパー7が閉、照射前ストッパー8が開、遮蔽扉4f,4bが全閉である。
【0075】
先行投入された原木Lの放射線照射が終了したら、照射前ストッパー8を閉にし、遮蔽扉4f,4bを開き、流水によって先行投入された原木Lを遮蔽路3の下流へ移動させる。このとき、各搬送台車6u,6dの回転台車27を原木用流路2の幅方向に(例えば、図3の一点鎖線で示す位置まで)スライドさせ、原木Lや他の部品との干渉を避けながら、原木Lの後端に臨む上流まで搬送台車6uを、原木Lの先端に臨む下流まで搬送台車6dを走行させる。(手順1)
その後、投入可否ストッパー7を開くと、原木Lは、径確認用ガイド9間を先端部が通過して照射前ストッパー8で一旦停止される。ここで、径確認用ガイド9により、原木Lの直径に応じて、原木Lの搬送位置を調整する(図7(a))。(手順2)
搬送台車6dの回転台車27をスライドさせて原木用流路2の中央部まで戻し、照射前ストッパー8を開き、流水により回転台車27の把持部材30に原木Lの先端を当てる。その後、同様に搬送台車6uの回転台車27をスライドさせ、搬送台車6uを原木Lの後端まで走行させ、その後端に回転台車27の把持部材30を当てる。さらに、各搬送台車6u,6dが有する回転台車27のアーム31を伸長させ、原木Lの中心軸あるいはその近傍を両端から把持部材30で把持する(図7(b))。(手順3)
この状態で遮蔽扉4f,4bを閉め、照射部Iの放射線発生装置41により、原木LにX線照射を開始する。照射中、搬送台車6u,6dを定速度で走行させると共に、回転機構28で原木Lを定速度で回転させ、照射部Iの直下を通過させて原木Lの全表面にX線を均一に照射する(図7(c))。
【0076】
原木Lの後端(末端)までX線の照射が完了したら、原木Lの回転と搬送台車6u,6dを停止し、原木L中の害虫を駆除する駆除処理が終了する。終了後、搬送台車6dの把持部材30による原木Lの把持を切り離し(図8(a))、続いて搬送台車6uの把持部材30による原木Lの把持を切り離す。その後、遮蔽扉4f,4bを開くと、遮蔽路3の下流へ移動された原木Lは、回収部Cでピッキング装置やクレーンなどで回収される。
【0077】
以後、搬送台車6u,6dは、図8(b)および図8(c)に示すように、再び上述した手順1〜3を経て、上述した動作を順次繰り返す。
【0078】
このように、害虫駆除システム1は、強制的に水の流れを作った直線状の放射線遮蔽体内を通過させるように駆除処理対象となる原木Lを流し、これを遮蔽路3において放射線照射を行うバッチ式のシステムである。
【0079】
害虫駆除システム1は、遮蔽路3において、原木Lの搬送速度および回転速度を適正かつ確実に制御できる搬送台車6u,6dを走行させることにより、確実な木材搬送と放射線rの均一な適正照射が可能なシステムとなっている。
【0080】
また、害虫駆除システム1は、強制循環させる流水により、原木Lを移動させるための機械的可動部への負荷が小さく、回転動作への負荷も小さくなる。
【0081】
すなわち、害虫駆除システム1は、原木用流路2に張った水wに原木Lを浮かべ、これを流水で搬送するため、その浮力を利用することで、原木Lの全表面にX線を均一に照射するために必要な回転動力を軽減し、各搬送台車6u,6dの回転機構28の負担を減少できる。
【0082】
特に、害虫駆除システム1は、原木用流路2と遮蔽路3とを平面視で直線状に形成しているため、放射線処理で一般的に用いられている迷路構造(折れ曲がりや蛇行構造)が不要となり、システム全体を構築するための建屋構造物が簡便で安価となる。しかも、駆除処理に要する時間も短くなり、スループットが向上する。
【0083】
さらに、害虫駆除システム1では、遮蔽路3の出入り口に遮蔽扉4f,4bを設けているため、これらを閉めれば、遮蔽路3外への放射線漏洩を確実に防止できる。
【0084】
しかも、害虫駆除システム1では、原木用流路2に張った水wの水面高さ(水位)を調整する管理を行えば、原木Lの太さ(径)に関わらず、放射線発生点から原木Lまでの距離Dを一定に保つことができ、照射線量と照射効率の管理が容易に行える。
【0085】
害虫駆除システム1は、遮蔽路3内において、把持部材30を有する各回転機構28により、原木Lの中心軸を両端から把持して軸回りに回転させながら搬送するため、原木Lを定速度で回転させることができ、原木Lの全表面にX線を均一に、かつ確実に照射できる。
【0086】
害虫駆除システム1は、各搬送台車6u,6dにより、その上に設けた回転台車27を搬送するため、各搬送台車6u,6dの搬送速度と、原木Lの回転速度とを所望の値に制御でき、原木LへのX線の照射線量を高精度に制御できる。
【0087】
この害虫駆除システム1の各搬送台車6u,6dは、原木用流路2の幅方向にスライド自在な回転台車27を有するので、その回転台車27を適宜回避させることで、次の原木Lを把持するために、照射後に下流から上流まで移動する際、次の原木Lや他の部品・機構と干渉することがない。
【0088】
害虫駆除システム1では、遮蔽路3の両側に可動式の位置出し用ガイド10を設けているため、原木Lの径によらず、原木用流路2の中央部を通過するように原木Lを搬送でき、原木Lの照射位置を確実に維持できる。
【0089】
また、害虫駆除システム1は、遮蔽路3に可動式の径確認用ガイド9を設けているため、放射線rの照射に先立ち、原木Lの直径に応じて原木Lの搬送位置を簡単に調整できる。
【0090】
さらに、害虫駆除システム1は、原木用流路2の形状に合わせて、その適切な箇所に、投入可否ストッパー7や照射前ストッパー8を設けているため、順次投入される原木Lの流水による円滑な移動を補助できる。
【0091】
害虫駆除システム1の効果を以下にまとめる。
【0092】
(1)遮蔽体構造である遮蔽路3を含む原木用流路2を直線状に形成することで、システム全体が小型で簡単な構成になり、ひいては低コストなシステムを実現できる。
【0093】
(2)水wの浮力を利用することで、回転機構28の負担が減少する。
【0094】
(3)流水を利用することで、搬送台車6u,6dの機械的負荷が小さくなる。
【0095】
(4)原木Lの径に比して原木用流路2の深さが深いため、放射線発生点から原木L表面までの距離Dを、原木Lの太さの差異程度に収めることもできる。また、原木用流路2に張った水wの水面高さを調整する機構を設ければ、原木Lの径によらず、距離Dを常に一定に保つことも可能である。
【0096】
(5)流水中において、遮蔽路3に機械式の搬送台車6u,6dと回転台車27を設けることで、原木Lに放射線rを確実かつ均一に照射制御できる。
【0097】
(6)各搬送台車6u,6dの回転台車27は、原木用流路2の幅方向にスライド自在に設けられているので、次の木材や他の部品・機構と干渉することなく、原木Lの確実な搬送と把持が可能である。
【0098】
(8)適所に投入可否ストッパー7や照射前ストッパー8が設けられているので、原木Lの円滑で確実な搬送を制御できる。
【0099】
したがって、害虫駆除システム1によれば、原木Lを短時間で効率よく駆除処理できる。
【0100】
上記実施形態では、原木用流路2に水wを張ったが、原木Lよりも比重が大きい海水などの他の液体を張ってもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、放射線発生装置41として、透過力が大きいX線を発生させるX線照射装置を用いたが、原木Lの直径や種類によっては、X線に比べると透過力が小さい電子線を発生させる電子線照射装置を使用してもよい。
【実施例】
【0102】
(実施例1)
害虫駆除システム1において、放射線rとしてX線を用い、この場合の照射線量と照射時間の関係を実験した。照射時間は、必要線量、放射線発生装置41の能力、照射点位置、搬送台車6u,6dの搬送速度、原木Lの回転速度、原木Lの直径などに応じて決まる。X線の条件を表1に、原木Lの直径、X線ターゲット−原木L間距離(照射口42と原木Lとの距離Dに比例)を種々に変えたときのX線による処理時間を表2、表3に示す。
【0103】
【表1】


【0104】
【表2】


【0105】
【表3】


【0106】
(実施例2)
害虫駆除システム1において、放射線rとして電子線を用い、この場合の照射線量と照射時間の関係を実験した。照射時間は、必要線量、放射線発生装置41の能力、照射点位置、搬送台車6u,6dの搬送速度、原木Lの回転速度、原木Lの直径などに応じて決まる。電子線の条件を表4に、原木Lの直径、照射線量を種々に変えたときの電子線による処理時間を表5に示す。
【0107】
【表4】


【0108】
【表5】


【0109】
駆除処理に必要な照射線量は害虫の種類によって異なるが、表1〜表5に示すように、主に放射線rの照射線量、原木Lの直径、X線ターゲット−原木L間距離で搬送台車6の搬送速度を設定すれば、原木Lを短時間で効率よく駆除処理できることがわかった。
【0110】
また、本発明者らの実験により、原木L内部に浸透した害虫の成虫を不妊化するのに必要な照射線量は、殺虫に必要な照射線量の半分であることもわかった。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の好適な実施形態である原木木材の害虫駆除システムの全体構成を示す平面断面図である。
【図2】図1の2A−2A線断面矢視図である。
【図3】図1の3A−3A線断面矢視図である。
【図4】図2のA部の拡大図である。
【図5】図1に示した原木木材の害虫駆除システムの遮蔽扉近傍の横断面図である。
【図6】原木木材の一例を示す平面図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、図1に示した原木木材の害虫駆除システムの動作を説明する縦断面図である。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、図7(c)に引き続き、図1に示した原木木材の害虫駆除システムの動作を説明する縦断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1 原木木材の害虫駆除システム
2 原木用流路(流路)
2s,2s 側壁
3 遮蔽路
3s,3s 遮蔽側壁
6u,6d 搬送台車(回転機構28を有する)
I 照射部(放射線発生装置を収納)
L 原木(原木木材)
w 水
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
【出願日】 平成19年3月29日(2007.3.29)
【代理人】 【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄


【公開番号】 特開2008−245542(P2008−245542A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−88651(P2007−88651)