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原木木材の害虫駆除システム - 特開2008−245541 | j-tokkyo
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【発明の名称】 原木木材の害虫駆除システム
【発明者】 【氏名】松尾 健一

【氏名】白川 忠秀

【氏名】上野 光

【氏名】千品 裕嗣

【氏名】川崎 義則

【要約】 【課題】原木木材中の害虫を短時間で効率よく駆除できる原木木材の害虫駆除システムを提供する。

【解決手段】放射線遮蔽壁2s,2sによって区画形成され、原木木材Lを流下させて移送するための流路2の途中で、原木木材Lに放射線を照射して原木木材L中の害虫を駆除するシステム1において、流路2の途中に設けられ、原木木材Lの両端部を把持して原木木材Lを軸回りに回転させる回転機構と、回転機構によって回転されている原木木材Lに放射線を照射するための放射線発生装置と、放射線発生装置の上流側及び下流側の流路を所定長さ屈曲させ、該屈曲された流路2の放射線遮蔽壁に放射線を反射させて減衰させるように構成したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線遮蔽壁によって区画形成され、原木木材を流下させて移送するための流路の途中で、上記原木木材に放射線を照射して上記原木木材中の害虫を駆除するシステムにおいて、上記流路の途中に設けられ、上記原木木材の両端部を把持して上記原木木材を軸回りに回転させる回転機構と、該回転機構によって回転されている原木木材に放射線を照射するための放射線発生装置と、該放射線発生装置の上流側及び下流側の上記流路を所定長さ屈曲させ、該屈曲された流路の放射線遮蔽壁に上記放射線を反射させて減衰させるように構成したことを特徴とする原木木材の害虫駆除システム。
【請求項2】
上記回転機構は、上記原木木材の両端部を把持する把持部材を有し、上記流路の流れ方向に走行自在に設けられる請求項1記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項3】
上記回転機構は、上記流路の幅方向にスライド自在に設けられる請求項1または2記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項4】
上記回転機構は、その回転機構を上記流路の流れ方向に沿って搬送するための搬送台車上に設けられる請求項1〜3いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項5】
上記流路、あるいは上記流路の途中の上方に搬送台車用レールを敷設し、その搬送台車用レールに沿って上記搬送台車を自走させる請求項4記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項6】
上記搬送台車の上部に回転機構用レールを敷設し、その回転機構用レール上に上記回転機構を自走させる請求項4または5記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項7】
上記流路の途中の両側に、上記原木木材の照射中心位置を維持するための可動式の位置出し用ガイドを設けた請求項1〜6いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項8】
上記流路の途中となる上流側に、上記原木木材の径を確認する可動式の径確認用ガイドを設けた請求項1〜7いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項9】
上記流路は、上記原木木材を上記流路に沿って案内する搬送用ガイドと、上流から流れてきた上記原木木材を一時止めるストッパーと、上記原木木材を下流に押し出す押し出し機構とを有する請求項1〜8いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システム。
【請求項10】
上記放射線発生装置で発生する放射線はX線あるいは電子線であり、その照射線量が50〜2000Gyである請求項1〜9いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、原木木材中の害虫を駆除するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の輸入原木木材(丸太(横断面が丸型の木材)、あるいは原木ともいう)の殺虫方法には、1)原木を所定時間熱処理する熱処理による殺虫方法、2)原木に臭化メチルを噴霧、あるいは原木を臭化メチル中に浸す臭化メチルによる殺虫方法、または3)原木を長期間海水に浸す海水による殺虫方法がある。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−275540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には以下の問題がある。
【0006】
1)の熱処理方法は、一般的な規定では、原木の内部中心温度が56℃以上で30分以上連続加熱する必要があるが、大型の木材に対しては、熱処理に数時間要するため時間がかかり、スループットが低下し、駆除処理の効率が悪くなることが見込まれる。
【0007】
2)の臭化メチル方法では、木材の表層に近い範囲しか殺虫できないため、内部に存在する害虫を駆除しにくい。特に、害虫の卵やさなぎは耐性が強く、これらに対する殺虫効力が低い。また、臭化メチルは人体・環境(温暖化など)に有害な物質のため、世界的な使用規制が図られている。
【0008】
3)の海水殺虫方法でも、数日間要するため時間がかかり、しかも害虫の卵やさなぎに対する殺虫効力が低い。また、原木を海水に浸すため、害虫を窒息死させるための時間がかかる。さらに、検疫にも時間を要する。
【0009】
一方、原木中の害虫を駆除する方法として、放射線を利用することも考えられるが、現状では、放射線を利用した大型木材の殺虫システムは世の中に存在しない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、原木木材中の害虫を短時間で効率よく駆除できる原木木材の害虫駆除システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、放射線遮蔽壁によって区画形成され、原木木材を流下させて移送するための流路の途中で、上記原木木材に放射線を照射して上記原木木材中の害虫を駆除するシステムにおいて、上記流路の途中に設けられ、上記原木木材の両端部を把持して上記原木木材を軸回りに回転させる回転機構と、該回転機構によって回転されている原木木材に放射線を照射するための放射線発生装置と、該放射線発生装置の上流側及び下流側の上記流路を所定長さ屈曲させ、該屈曲された流路の放射線遮蔽壁に上記放射線を反射させて減衰させるように構成した原木木材の害虫駆除システムである。
【0012】
請求項2の発明は、上記回転機構は、上記原木木材の両端部を把持する把持部材を有し、上記流路の流れ方向に走行自在に設けられる請求項1記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0013】
請求項3の発明は、上記回転機構は、上記流路の幅方向にスライド自在に設けられる請求項1または2記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0014】
請求項4の発明は、上記回転機構は、その回転機構を上記流路の流れ方向に沿って搬送するための搬送台車上に設けられる請求項1〜3いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0015】
請求項5の発明は、上記流路、あるいは上記流路の途中の上方に搬送台車用レールを敷設し、その搬送台車用レールに沿って上記搬送台車を自走させる請求項4記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0016】
請求項6の発明は、上記搬送台車の上部に回転機構用レールを敷設し、その回転機構用レール上に上記回転機構を自走させる請求項4または5記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0017】
請求項7の発明は、上記流路の途中の両側に、上記原木木材の照射中心位置を維持するための可動式の位置出し用ガイドを設けた請求項1〜6いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0018】
請求項8の発明は、上記流路の途中となる上流側に、上記原木木材の径を確認する可動式の径確認用ガイドを設けた請求項1〜7いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0019】
請求項9の発明は、上記流路は、上記原木木材を上記流路に沿って案内する搬送用ガイドと、上流から流れてきた上記原木木材を一時止めるストッパーと、上記原木木材を下流に押し出す押し出し機構とを有する請求項1〜8いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【0020】
請求項10の発明は、上記放射線発生装置で発生する放射線はX線あるいは電子線であり、その照射線量が50〜2000Gyである請求項1〜9いずれかに記載の原木木材の害虫駆除システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、原木木材を短時間で効率よく駆除処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明者らは、放射線を利用した大型木材の殺虫システムを研究するにあたり、まず、 i)漏洩放射線量を規制値以下に抑制する構造・システムであること
ii)照射線量を均一化するため、原木を一定速度で運搬し、その全表面に均一に照射するシステムであること
iii)処理量が他の殺虫方法に比べ優れたシステムであること
iv)比較的コンパクトなシステムであること(特に、陸上の閉じられた空間において)を念頭においた。
【0023】
また、本発明者らは、
v)放射線の照射線量を最適化することで、原木木材に影響を与えない範囲で、木材内部に浸透した害虫の成虫、卵、さなぎを不妊化または殺虫することができる点、
vi)放射線に対しては、成虫が最も耐性が強く、卵、さなぎは、比較的低い線量で死滅しやすいが、成虫の場合、死滅に到らなくとも不妊化できれば繁殖を抑制できる点、
vii)照射線量の最適値については、現在も諸機関で研究・実験が行われているところであるが、巨大な原木木材に放射線を照射する場合、全表面の均一照射は必要不可欠であり、その調整により、照射線量を制御することが可能である点
などが必要であることを考慮し、鋭意研究した結果、本発明を完成した。
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
図1は、本発明の好適な実施形態である原木木材の害虫駆除システムの全体構成を示す平面断面図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る原木木材(丸太(横断面が丸型の木材)、あるいは原木ともいう)の害虫駆除システム(以下、害虫駆除システム)1は、主として港や空港近傍の陸上(例えば、税関など)に設置されて使用され、原木L中の害虫を放射線照射によって駆除するためのものである。
【0027】
ここでいう駆除は、原木Lの品質に影響を与えない範囲で、原木L内部に浸透した害虫の成虫を不妊化または殺虫、あるいは卵、さなぎを殺虫することをいう。
【0028】
害虫駆除システム1で害虫を駆除処理する原木Lは、直径:約50〜200cm、長さ:約10〜20m、密度が0.5g/cm3 とすると、重量が1.5〜24tの原木である。図5には、その一例として、長さXが15m、直径がそれぞれφa:50cmの原木La、φb:100cmの原木Lb、φc:200cmの原木Lcを示した。
【0029】
害虫駆除システム1は、迷路型流路2と、その迷路型流路2の途中に設けられ、原木Lに放射線を照射するための照射部3と、その照射部3に設けられる放射線発生装置41(図2〜図4参照)とを備える。
【0030】
迷路型流路2は、全体がほぼ放射線遮蔽によって区画形成され、原木Lを流下させて移送するための、すなわち、水wを張ってその水wに原木Lを浮かべ、流水で移動させるためのものであり、深さが原木Lの径よりも十分深く形成される。この迷路型流路2は、放射線発生装置41の上流側及び下流側を所定長さ屈曲させ、屈曲された放射線遮蔽壁に放射線発生装置41からの放射線を反射させて減衰させるように構成したものである。
【0031】
ここでいう迷路型流路2の一例としては、折れ曲がった曲線流路やループ状に形成した循環流路などがある。本実施形態では、迷路型流路2として、6個の第1角部2a〜第6角部2fを有する略d字形のループ状に形成した循環流路を用いた。
【0032】
迷路型流路2の第1角部2a近傍は、迷路型流路2に原木Lを投入する最上流の投入部Tであり、第6角部2f近傍は、迷路型流路2から原木Lを回収する最下流の回収部Cである。
【0033】
迷路型流路2は、第1角部2aと第6角部2fを除いて、両側が放射線遮蔽壁としての側壁2s,2sで外部と仕切られると共に、これら側壁2s,2sの上方が放射線遮蔽壁としての天井壁5(図2〜図4参照)で覆われる。側壁2s,2sと天井壁5は、放射線の外部への漏れを防止する壁である。これら側壁2s,2sと天井壁5で迷路型建屋兼遮蔽構造物が構成される。側壁2s,2sと天井壁5には、コンクリート壁を用いた。
【0034】
迷路型流路2の第1角部2aと第6角部2f間には、迷路型流路2に張った水wを流して一方向(図1では、左回り)に強制的に流れる一定流量の流水を発生させるための流水用ポンプ(循環用ポンプ)4が接続される。
【0035】
図1中には示していないが、流水用ポンプ4に加え、迷路型流路2の途中に、さらに複数個の排水口を設けたり、排水口に排水用ポンプを接続したり、給水タンクや給水ポンプを接続したりしてもよい。この場合、流水の流速、水wの流量、迷路型流路2の水位などをより簡単に調整できる。
【0036】
照射部3は、迷路型流路2の中央部付近(図1では、第3角部2cと第4角部2d間)の上方となる天井壁5上に設けられる。この照射部3の近傍として、照射部3の流れ方向に沿った前後の下方に位置する迷路型流路2の部分が照射区域Zである。照射部3には、照射区域Zを通過する原木Lに放射線を照射する図示しない放射線発生装置が収納される。
【0037】
害虫駆除システム1は、原木Lの両端部を(厳密には、原木Lの中心軸あるいはその近傍を両端から)把持して軸回りに回転させるための後述する回転機構28と、その回転機構28を迷路型流路2の流れ方向に沿って搬送するための2台の搬送台車6u(上流側),6d(下流側)を備える。
【0038】
回転機構28と各搬送台車6u,6dは、照射区域Zの流れ方向に走行自在に設けられる。回転機構28と搬送台車6u,6dの詳細は、図2〜図4で後述する。
【0039】
迷路型流路2をより詳細に説明する。迷路型流路2は、原木Lの投入管理の面から、また、ほぼ所定の時間ごとに投入される原木Lが、迷路型流路2内で互いに衝突せず、流水でスムーズに移動できるように、以下に説明する種々の部品を備える。
【0040】
各部品は、固定式の場合、側壁2sや水中に設けるとよい。各部品が可動式や移動式の場合には、複雑な防水構造を不要とし、かつ低コスト化や耐久性、メンテナンス性を向上させるため、機械的な干渉がない範囲で天井壁5や側壁2sの上部に、モータなどの駆動手段を設けるとよい。
【0041】
ただし、本実施形態では、後述する搬送台車6u,6dや回転台車27を防水構造とした例で説明する。もちろん、搬送台車や回転台車についても、モータなどの駆動手段を防水構造にせず、天井壁5や側壁2sの上部に設けてもよい。
【0042】
投入部Tには、原木Lを投入部Tへ案内するための図示しない斜路が接続される。両側壁2s,2sの投入部T側の端部間には、迷路型流路2をほぼ横切るように、原木L投入の可否を決めるための開閉自在な投入可否ストッパー7が設けられる。投入可否ストッパー7の開閉方向は、上下左右でもよく、片開きや観音開きでもよい。以下で開閉自在は、特に開閉方向を問わない意味で用いる。
【0043】
第1角部2aと第2角部2b間、第2角部2bと第3角部2c間、第4角部2dと第5角部2e間の側壁2sには、原木Lを迷路型流路2に沿って案内する搬送用ガイド8が複数個設けられる。
【0044】
本実施形態では、側壁2sの片側から迷路型流路2の幅方向に突出させて固定式の搬送用ガイド8を設けた。搬送用ガイド8は側壁2sの両側に設けてもよいし、可動式であってもよい。
【0045】
第2角部2bの入口には、迷路型流路2をほぼ横切るように、上流から流れてきた原木Lを一時止める開閉自在な第1開閉ストッパー9aが設けられる。同様に、第3角部2cの入口には第2開閉ストッパー9b、第5角部2eの入口には第3開閉ストッパー9cがそれぞれ設けられる。
【0046】
第1開閉ストッパー9aと対向する側壁2sには、上流から流れてきた原木Lを方向転換させるために、原木Lの先端が当たって原木Lを一時止める第1固定ストッパー10aが設けられる。第1固定ストッパー10aには、原木Lの先端が当たった後、後述する第1押し出し機構11aを作動させるため、放射線に耐性が強いリミットスイッチなどの機械式スイッチが設けられる。
【0047】
第1開閉ストッパー9aと第1固定ストッパー10a間に位置し、下流側に臨む側壁2sには、第1固定ストッパー10aで止めた原木Lの側面を押して下流側に押し出す第1押し出し機構11aが設けられる。第1押し出し機構11aは、油圧駆動でも空気圧駆動でもよい。以下で説明する押し出し機構の駆動方式も同様である。
【0048】
第1押し出し機構11aと対向する側壁2sには、原木Lの側面が当たって原木Lを一時止める第2固定ストッパー10bが設けられる。第2固定ストッパー10bには、原木Lの側面が当たった後、後述する第2押し出し機構11bを作動させるため、放射線に耐性が強いリミットスイッチなどの機械式スイッチが設けられる。
【0049】
第3角部2cと第4角部2d間に位置する迷路型流路2の最上流部には、第2固定ストッパー10bで止めた原木Lの後端を押して下流側に押し出す第2押し出し機構11bが設けられる。本実施形態では、第2押し出し機構11bを天井壁5からつり下げると共に、流れ方向に沿って移動自在に設けた。第2押し出し機構11bには、原木Lを押し出した後、所定の時間後に後述する径確認用ガイド13を作動させるため、放射線に耐性が強いリミットスイッチなどの機械式スイッチが設けられる。
【0050】
また、第1固定ストッパー10a、第1押し出し機構11aと同じ構成のものを、第4角部2dに第3固定ストッパー10c、第3押し出し機構11cとして設け、第2固定ストッパー10b、第2押し出し機構11bと同じ構成のものを、第5角部2eに第4固定ストッパー10d、第4押し出し機構11dとして設けた。
【0051】
照射区域Zの入口のすぐ下流側には、原木Lへの放射線の照射に先立ち、上流から流れてきた原木Lの先端が当たって原木Lを一時止める照射前ストッパー12が設けられる。本実施形態では、照射前ストッパー12を天井壁5からつり下げた。
【0052】
この照射前ストッパー12は、原木Lを一時止める位置から原木Lを開放する位置まで移動自在(例えば、迷路型流路2の幅方向や上下方向にスライド自在、あるいは迷路型流路2の下流側に開くように開閉自在)に設けられる。
【0053】
照射前ストッパー12は、原木Lの先端が当たることで、照射区域Zの入口に原木Lが到着したことを搬送台車6u,6dや後述する径確認用ガイド13に知らせる図示しない到着センサを備える。
【0054】
照射区域Zの入口となる両側壁2s,2sには、原木Lの径を確認する迷路型流路2の幅方向に移動自在な可動式の径確認用ガイド(丸太幅確認機構)13がそれぞれ設けられる。これら径確認用ガイド13は、第2押し出し機構11bが原木Lを押し出した直後、全開の状態である。この状態から照射前ストッパー12に原木Lが当たると、各径確認用ガイド13は、互いに等しい距離ずつ幅方向に進出し、かつ両方の径確認用ガイド13が所定の圧力を受けたとき、停止することで、原木Lの径を確認する(原木Lのセンター出しを行う)。
【0055】
ここで、主に図1〜図4を用いて、照射区域Zとその近傍、回転機構28および搬送台車6u,6dをより詳細に説明する。
【0056】
図1〜図4に示すように、照射区域Zの中央部付近の上方となる天井壁5上の照射部3に、放射線発生装置41が迷路型流路2の長さ方向に沿って複数個(図2では、3個)収納される。
【0057】
放射線発生装置41としては、X線照射装置を用いる。このX線照射装置で発生させたX線を放射線rとして原木Lに照射する。放射線発生装置41の照射口42は、照射区域Z内に突出しており、照射区域Z内において昇降自在に設けられるとよい。
【0058】
放射線rは距離の2乗に比例して強度が小さくなるので、照射口42と原木Lとの距離D(図3参照)は、照射区域Z内を原木Lが通過できる範囲で極力近づけた方がよい。このため、本実施形態では、照射口42を適宜昇降させたり、迷路型流路2に張る水wの量を増減したりする。
【0059】
X線の照射線量は、原木Lの直径や種類にもよるが、50〜2000Gy、好ましくは100〜500Gy、さらに好ましくは140〜300Gyにする。
【0060】
照射区域Zの床面上、およびその上下流側近傍となる迷路型流路2の床面上には、2本の搬送台車用レール21が敷設される。これら搬送台車用レール21上を搬送台車6u,6dが自走する。第3角部2cから照射区域Z下流の外側までの天井壁5には、搬送台車6u,6dをそれぞれ天井壁5から支持する台車用支持部材22が走行する支持部材用レール23が敷設される。支持部材用レール23には、台車用支持部材22だけでなく、第2押し出し機構11bの支持部材も走行する。
【0061】
搬送台車6u,6dは同じ構成であり、搬送台車用レール21上の上下流に対向して配置される。搬送台車6uは、台車本体6mと、台車本体6m上に設けられ、幅方向に長い台車板24と、台車板24から起立した台車用支持部材22とで主に構成される。
【0062】
台車本体6mの下部には、搬送台車用レール21上を走行するための車輪25が2個設けられる。例えば、金属製の搬送台車用レール21を用いる場合は車輪25も金属製にし、コンクリート製の搬送台車用レール21を使用する場合には、車輪25をゴム製にするとよい。本実施形態では、横断面が凹状の搬送台車用レール21を用いた。
【0063】
台車本体6mには、各車輪25を駆動する台車用モータと、その台車用モータを駆動するインバータと、相手側の搬送台車の位置やその作動状態(後述する相手側の搬送台車が有する把持部材30が原木Lに突き刺さっているか、切り離されているかなど)を検出する相手側搬送台車検出用センサと、これら各部品を制御する搬送台車用制御盤などが備えられる。
【0064】
台車板24上には、搬送台車用レール21と同様に、後述する回転台車(回転用台車)27が走行する(すなわち、回転機構28が走行する)回転機構用レールとしての2本の回転台車用レール(方向レール)26が、搬送台車用レール21と高さ方向に離されて直角に交差するように敷設される。これら回転台車用レール26上を回転台車27が自走する。
【0065】
搬送台車6uは、さらに迷路型流路2の幅方向にスライド自在な回転台車27を有する。回転台車27は、回転台車本体27mと、原木Lの両端部を把持して軸回りに回転させるための回転機構28とで主に構成される。
【0066】
回転台車本体27mの下部には、回転台車用レール26上を走行するための車輪29が、片側に2個、合計4個設けられる。
【0067】
回転機構28は、原木Lの中心軸あるいはその近傍を両端から把持する把持部材30と、その把持部材30と回転台車本体27m間を連結し、把持部材30を水平方向に伸縮させる回転自在なアーム31とからなる。
【0068】
回転台車本体27mには、アーム31を回転させるアーム用モータと、そのアーム用モータを駆動するインバータと、アーム31を伸縮させる伸縮装置と、アーム用モータの回転数を検出するロータリエンコーダなどの回転センサと、これら各部品を制御する回転台車用制御盤などが備えられる。
【0069】
本実施形態では、搬送台車用制御盤と回転台車用制御盤を独立して備える例で説明するが、例えば、搬送台車用制御盤が回転台車用制御盤の機能の一部あるいは全部を有するようにしてもよい。
【0070】
図3に示すように、把持部材30は、アーム31の先端から水平方向に突出するほぼ円錐状に形成された複数本(図3では4本)の爪部材32からなる。各爪部材32の基部には、爪部材32が原木Lの端面に突き刺さった後、所定の長さまでアーム31を伸長させるため、放射線に耐性が強いリミットスイッチなどの機械式スイッチが設けられる。
【0071】
図1または図3に示すように、照射区域Zの両側壁2s,2sには、照射直前から照射直後まで原木Lの照射中心位置を維持するための可動式の位置出し用ガイド33が、複数個(図1では、片側に2個、合計4個)設けられる。各可動式ガイド33は、水平方向に伸縮自在に設けられ、原木Lの直径に応じて伸長し、原木Lの側面に当たると原木Lから若干距離を隔てて停止する。各可動式ガイド33は、水wに浸るため防水構造にする。
【0072】
搬送台車本体6mと回転台車本体27mに供給する電力は、例えば、搬送台車本体6mと回転台車本体27mのそれぞれに設けたバッテリ、搬送台車本体6mと回転台車本体27mのそれぞれに接続した給電ケーブル、あるいは迷路型流路2の上部側方に布設した架線(トロリ線)と、その架線から電力を取り入れる集電装置(トロリ)とによって行う。
【0073】
次に、図1、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)を用いて、本実施形態の作用を害虫駆除システム1の動作と共に説明する。
【0074】
図1に示すように、まず、迷路型流路2に、原木Lの直径、重量に応じて水wを張っておく。流水用ポンプ4を運転し、水wを上流から下流へある一定流量で流して迷路型流路2内に流水を発生させ、循環させる。
【0075】
この状態で、投入可否ストッパー7が開であれば、ピッキング装置、クレーン、あるいは作業員により、斜路に原木Lを載せて投入部Tに投入する。投入された原木Lを水wに浮かせ、流水によって下流へ順次搬送して移動させる。
【0076】
原木Lは、流水により、第1角部2aと第2角部2b間の搬送用ガイド8に沿って移動し、第1固定ストッパー10aに到達する。第2角部2bに、先行して投入された原木Lがある場合には、第1開閉ストッパー9aを閉め、その手前で原木Lを待機させる。
【0077】
原木Lは、第1押し出し機構11aで下流へ押し出されて方向を変えられ、第2角部2bと第3角部2c間の搬送用ガイド8に沿って移動し、第2固定ストッパー10bに到達する。第3角部2cに、先行して投入された原木Lがある場合には、第2開閉ストッパー9bを閉め、その手前で原木Lを待機させる。
【0078】
第3角部2cから照射区域Zへ原木Lを搬送するため、原木Lは、第2押し出し機構11bで下流側に押し出されて方向を変えられ、径確認用ガイド13間を原木Lの先端部が通過して照射前ストッパー12で一旦停止される。ここで、径確認用ガイド13により、原木Lの直径に応じて、原木Lの搬送位置を調整する(図6(a))。
【0079】
照射区域Zで先行して投入された原木Lの放射線rの照射が完了したら、各搬送台車6u,6dの回転台車27を迷路型流路2の幅方向に(例えば、図3の一点鎖線で示す位置まで)スライドさせ、原木Lや他の部品との干渉を避けながら、原木Lの後端に臨む上流まで搬送台車6uを、原木Lの先端に臨む下流まで搬送台車6dを走行させる。(手順1)
【0080】
搬送台車6dの回転台車27をスライドさせて迷路型流路2の中央部まで戻し、照射前ストッパー12を開き、流水により回転台車27の把持部材30に原木Lの先端を当てる。その後、同様に搬送台車6uの回転台車27をスライドさせ、搬送台車6uを原木Lの後端まで走行させ、その後端に回転台車27の把持部材30を当てる。さらに、各搬送台車6u,6dが有する回転台車27のアーム31を伸長させ、原木Lの中心軸あるいはその近傍を両端から把持部材30で把持する(図6(b))。(手順2)
【0081】
この状態で照射部3の放射線発生装置41により、原木LにX線照射を開始する。照射中、搬送台車6u,6dを定速度で走行させると共に、回転機構28で原木Lを定速度で回転させ、照射部3の直下を通過させて原木Lの全表面にX線を均一に照射する(図6(c))。
【0082】
原木Lの後端(末端)までX線の照射が完了したら、原木Lの回転と搬送台車6u,6dを停止し、原木L中の害虫を駆除する駆除処理が終了する。終了後、搬送台車6dの把持部材30による原木Lの把持を切り離し(図7(a))、続いて搬送台車6uの把持部材30による原木Lの把持を切り離す。
【0083】
以後、搬送台車6u,6dは、図7(b)および図7(c)に示すように、再び上述した手順1,2を経て、上述した動作を順次繰り返す。
【0084】
照射が完了した原木Lは、第2角部2bや第3角部2cと同様にして、第4角部2dと第5角部2eを通過し、第6角部2fまで到達し、回収部Cにて、ピッキング装置やクレーンなどで回収される。
【0085】
このように、害虫駆除システム1は、強制的に水の流れを作った迷路型の放射線遮蔽体内に駆除処理対象となる原木Lを流し、これを遮蔽区域Zにおいて放射線照射を行うバッチ式のシステムである。
【0086】
害虫駆除システム1は、照射区域Zにおいて、原木Lの搬送速度および回転速度を適正かつ確実に制御できる搬送台車6u,6dを走行させることにより、確実な木材搬送と放射線rの均一な適正照射が可能なシステムとなっている。
【0087】
害虫駆除システム1は、流路を迷路型にすることで、照射区域Zからの放射線rが迷路型流路2の床面、側壁2s,2sおよび天井壁5で繰り返し反射して減衰するため、木材出入り口部の放射線rの漏洩を低く抑えることが可能である。つまり、害虫駆除システム1では、投入部Tや回収部Cから漏れる放射線rは、人体に影響がなく、法律の規制値未満である。
【0088】
また、害虫駆除システム1は、強制循環させる流水により、原木Lを移動させるための機械的可動部への負荷が小さく、回転動作への負荷も小さくなる。
【0089】
すなわち、害虫駆除システム1は、迷路型流路2に張った水wに原木Lを浮かべ、これを流水で搬送するため、その浮力を利用することで、原木Lの全表面にX線を均一に照射するために必要な回転動力を軽減し、各搬送台車6u,6dの回転機構28の負担を減少できる。
【0090】
しかも、害虫駆除システム1では、迷路型流路2に張った水wの水面高さ(水位)を調整する管理を行えば、原木Lの太さ(径)に関わらず、放射線発生点から原木Lまでの距離Dを一定に保つことができ、照射線量と照射効率の管理が容易に行える。
【0091】
害虫駆除システム1は、照射区域Z内において、把持部材30を有する各回転機構28により、原木Lの中心軸を両端から把持して軸回りに回転させながら搬送するため、原木Lを定速度で回転させることができ、原木Lの全表面にX線を均一に、かつ確実に照射できる。
【0092】
さらに、害虫駆除システム1は、各搬送台車6u,6dにより、その上に設けた回転台車27を搬送するため、各搬送台車6u,6dの搬送速度と、原木Lの回転速度とを所望の値に制御でき、原木LへのX線の照射線量を高精度に制御できる。
【0093】
この害虫駆除システム1の各搬送台車6u,6dは、迷路型流路2の幅方向にスライド自在な回転台車27を有するので、その回転台車27を適宜回避させることで、次の原木Lを把持するために、照射後に下流から上流まで移動する際、次の原木Lや他の部品・機構と干渉することがない。
【0094】
害虫駆除システム1では、照射区域Zの両側に可動式の位置出し用ガイド33を設けているため、原木Lの径によらず、迷路型流路2の中央部を通過するように原木Lを搬送でき、原木Lの照射位置を確実に維持できる。
【0095】
また、害虫駆除システム1は、照射区域Zの上流(入口)に可動式の径確認用ガイド13を設けているため、放射線rの照射に先立ち、原木Lの直径に応じて原木Lの搬送位置を簡単に調整できる。
【0096】
さらに、害虫駆除システム1は、迷路型流路2の形状に合わせて、その適切な箇所に、搬送用ガイド8、開閉ストッパー、固定ストッパー、押し出し機構を複数個設けているため、順次投入される原木Lの流水による円滑な移動を補助できる。
【0097】
害虫駆除システム1の効果を以下にまとめる。
【0098】
(1)迷路型の遮蔽体構造とすることで、放射線rの漏洩線量を低く抑えることができる。
【0099】
(2)水wの浮力を利用することで、回転機構28の負担が減少する。
【0100】
(3)流水を利用することで、搬送台車6u,6dの機械的負荷が小さくなる。
【0101】
(4)原木Lの径に比して迷路型流路2の深さが深いため、放射線発生点から原木L表面までの距離Dが、原木Lの太さの差異程度に収めることもできる。また、迷路型流路2に張った水wの水面高さを調整する機構を設ければ、原木Lの径によらず、距離Dを常に一定に保つことも可能である。
【0102】
(5)流水中において、照射区域Zに機械式の搬送台車6u,6dと回転台車27を設けることで、原木Lに放射線rを確実かつ均一に照射制御できる。
【0103】
(6)各搬送台車6u,6dの回転台車27は、迷路型流路2の幅方向にスライド自在に設けられているので、次の木材や他の部品・機構と干渉することなく、原木Lの確実な搬送と把持が可能である。
【0104】
(7)迷路型流路2が幅方向を完全に横断するような遮蔽扉で仕切られていないので、原木Lへの放射線rの比較的連続的な照射が可能で、スループットが向上する。
【0105】
(8)適所にストッパーや押し出し機構および搬送用ガイド8が設けられているので、原木Lの円滑で確実な搬送を制御できる。
【0106】
したがって、害虫駆除システム1によれば、原木Lを短時間で効率よく駆除処理できる。
【0107】
上記実施形態では、迷路型流路2に水wを張ったが、原木Lよりも比重が大きい海水などの他の液体を張ってもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、放射線発生装置41として、透過力が大きいX線を発生させるX線照射装置を用いたが、原木Lの直径や種類によっては、X線に比べると透過力が小さい電子線を発生させる電子線照射装置を使用してもよい。
【0109】
上記実施形態とは異なり、放射線rの漏洩を防止でき、原木Lを移動できる範囲であれば、迷路型流路として、折れ曲がった曲線流路を用いてもよい。曲線流路の例としては、数回蛇行させたほぼ直線状の流路、ほぼU字状の流路などがある。また、循環流路の例としては、円形状や楕円形状の流路などがある。
【実施例】
【0110】
(実施例1)
害虫駆除システム1において、放射線rとしてX線を用い、この場合の照射線量と照射時間の関係を実験した。照射時間は、必要線量、放射線発生装置41の能力、照射点位置、搬送台車6u,6dの搬送速度、原木Lの回転速度、原木Lの直径などに応じて決まる。X線の条件を表1に、原木Lの直径、X線ターゲット−原木L間距離(照射口42と原木Lとの距離Dに比例)を種々に変えたときのX線による処理時間を表2、表3に示す。
【0111】
【表1】


【0112】
【表2】


【0113】
【表3】


(実施例2)
害虫駆除システム1において、放射線rとして電子線を用い、この場合の照射線量と照射時間の関係を実験した。照射時間は、必要線量、放射線発生装置41の能力、照射点位置、搬送台車6u,6dの搬送速度、原木Lの回転速度、原木Lの直径などに応じて決まる。電子線の条件を表4に、原木Lの直径、照射線量を種々に変えたときの電子線による処理時間を表5に示す。
【0114】
【表4】


【0115】
【表5】


駆除処理に必要な照射線量は害虫の種類によって異なるが、表1〜表5に示すように、主に放射線rの照射線量、原木Lの直径、X線ターゲット−原木L間距離で搬送台車6の搬送速度を設定すれば、原木Lを短時間で効率よく駆除処理できることがわかった。
【0116】
また、本発明者らの実験により、原木L内部に浸透した害虫の成虫を不妊化するのに必要な照射線量は、殺虫に必要な照射線量の半分であることもわかった。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の好適な実施形態である原木木材の害虫駆除システムの全体構成を示す平面断面図である。
【図2】図1の2A−2A線断面矢視図である。
【図3】図1の3A−3A線断面矢視図である。
【図4】図2のA部の拡大図である。
【図5】原木木材の一例を示す平面図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、図1に示した原木木材の害虫駆除システムの動作を説明する縦断面図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、図6(c)に引き続き、図1に示した原木木材の害虫駆除システムの動作を説明する縦断面図である。
【符号の説明】
【0118】
1 原木木材の害虫駆除システム
2 迷路型流路(流路)
2s,2s 側壁(放射線遮蔽壁の一部)
3 照射部(放射線発生装置41を収納)
4 流水用ポンプ
6u,6d 搬送台車(回転機構28を有する)
L 原木木材
w 水
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
【出願日】 平成19年3月29日(2007.3.29)
【代理人】 【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄


【公開番号】 特開2008−245541(P2008−245541A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−88647(P2007−88647)