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【発明の名称】 釣竿、及び釣竿に装着される木製部品の撥水処理方法
【発明者】 【氏名】菅谷 英二

【要約】 【課題】導管部分からの水分の吸収を防ぎ、割れ等を生じさせない木製部品を装着した釣竿を提供する。

【解決手段】本発明の釣竿は、元竿杆の基端部に、竿尻部品10のような木製部品を装着している。そして、その木製部品の表面部11aである導管15が露出する部分に、撥水被膜16を形成したことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製部品を装着した釣竿において、
前記木製部品の表面部の導管露出部に撥水処理を施したことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記導管の少なくとも一部が開口した状態で撥水処理を施したことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記木製部品の導管露出部は、表面が凹凸状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿
【請求項4】
釣竿に装着される木製部品に撥水処理を施す方法において、
容器内に収容され、撥水性を有する粒子と母材と溶剤の比率を(5〜10):(2.5〜5):(92.5〜85)とした溶液に前記木製部品の導管露出部側を浸漬する工程と、
前記容器を減圧して上記した混合比率の溶液を木製部品の導管内に吸引させる工程と、
前記木製部品を乾燥する乾燥工程と、
を有することを特徴とする釣竿に装着される木製部品に撥水処理を施す方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、木製部品を装着した釣竿、及び、そのような木製部品に撥水処理を施す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然の木材を様々な形態に加工した部品(木製部品と称する)を装着した釣竿が知られている。木製部品は、加工性に優れ、手で触ったときの感触が良いため、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されているように、竿尻部品に用いられることがある。
【0003】
ところが、このような木製部品は、その素材故、根から水分等を運ぶための多数のミクロンオーダの導管を備えた状態になっていることから、その表面に水分が付着すると、毛細管現象によって、それを内部に吸収、保持してしまう。そして、導管内において水分を保持した状態で気化すると、膨張して割れの原因になることがある。特に、木製部品の表面部に塗装などを施していると、膨張した際に塗装割れが生じてしまい、外観も低下してしまう。
【0004】
このため、特許文献1や特許文献2に開示されている釣竿は、木製部品の内部に水分が侵入しないように、ゴムや樹脂等の弾性体(被覆部材)を、外面に被着することが行われている。
【特許文献1】実開昭56−37873号
【特許文献2】特開2001−321029号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1に開示されているように、木製部品の表面を、接着剤を介して弾性体で被着するだけでは、水分の内部浸入を効果的に防止することはできない。特に、上記した竿尻部品は、竿管内部に水が侵入すると、その水は表面部分で溜まってしまうことから、接着層が劣化することもあり、これにより、水分が弾性体との境界部分から内部に入り込んでしまい、最終的に気化することで割れ等が生じてしまう。また、特許文献2に開示された技術では、被覆部材をネジによって竿尻部品に固定するものの、被覆部材の隙間部分から水分が内部浸入することがあり、同様に、上記したような割れの問題が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、導管部分からの水分の吸収を防ぎ、割れ等を生じさせない木製部品を装着した釣竿を提供することを目的とする。
また、本発明は、そのような木製部品の撥水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、木製部品を装着した釣竿において、前記木製部品の表面部の導管露出部に撥水処理を施したことを特徴とする。
【0008】
このように、木製部品の導管露出部に撥水処理を施すことにより、木製部品の内部への水分の侵入を効果的に抑制して割れ等を防止することが可能となる。なお、このような構成では、木製部品の導管(構成部材である木材が元来有する導管)の少なくとも一部が開口する状態で撥水処理が施されていることが好ましい。すなわち、このように導管が開口した状態にあると、たとえ内部に水分が保持された状態で温度変化等によって水分が気化しても、その水分は開口を通じて外部に排出されることから、木材が膨張することがなくなって、割れ等を効果的に防止することができる。
【0009】
上記したように、導管を開口した状態で撥水処理を施す木製部品は、容器内に、撥水性を有する粒子と母材と溶剤の比率を(5〜10):(2.5〜5):(92.5〜85)とした溶液を準備し、この溶液に木製部品の導管露出部側を浸漬する工程と、前記容器を減圧して上記した混合比率の溶液を木製部品の導管内に吸引させる工程と、前記木製部品を乾燥する乾燥工程と、を有する撥水処理方法によって実現することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、木製部品を装着した釣竿において、水分の影響によって前記木製部品に割れ等を生じさせることのない釣竿が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る釣竿の一実施形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す側面図である。
本実施形態の釣竿1は、複数の竿杆を順次継合して構成されており、元竿杆2と、複数の中竿杆3と穂先竿杆4とを備えている。この場合、各竿杆は、例えば、強化繊維(炭素繊維やガラス繊維等)に合成樹脂を含浸せしめた、いわゆるFRPによって管状に形成されており、振り出し式、或いは並継式によって、各竿杆は継合されている。また、用途によっては、継合される竿杆の中に、中実状の物を含んでいても良い。
【0012】
前記元竿杆2の基端側には、リール(図示せず)が装着されるリールシート7が設けられており、各竿杆には、リールから繰出される釣糸が案内されるように、複数のガイド部材8が装着されている。また、元竿杆2の基端側には、木製の竿尻部品10が取着されている。
【0013】
上記した竿尻部品10は、木材、例えば、ヒノキ等の針葉樹、ケヤキ等の広葉樹を切削加工することで成形され、図2及び図3に示すように、図1に示した元竿杆2の基端部に嵌入される円柱状の嵌入部11と、その後方側に形成され扁平状の大径握り部12とを備えている。
【0014】
上記した木材は、加工前の樹生状態において、根から水分を運搬する導管15が多数形成されており、竿尻部品を加工するに際しては、好ましくは、その導管15の方向が軸方向となるように切削加工する。このように木材が本来備えている導管15は、その樹齢にもよるが、その直径は、およそ10μm〜800μm程度であり、切断した表面には、多数の導管が露出した状態(開口した状態)となっている。なお、図2及び図3では、導管15を分かり易くするために、デフォルメして示してある。
【0015】
上記したように導管15が多数形成された嵌入部11の竿杆内部に位置する露出面(表面部)11aには、撥水処理が施されている。この撥水処理による被膜(撥水被膜)16は、その露出面11aのみに被着されていても良いが、図2に示すように、露出する導管15を介して、その内部(導管15の内面15a)にも被着され、かつ導管15自体、少なくとも一部が図4に示すように、開口した状態になっていることが好ましい。
【0016】
すなわち、撥水被膜16を、水分が溜まって接触する部分となる露出面11aに施すことにより、竿尻部品10の内部への水分の侵入を効果的に抑制し、これにより、水分の気化、膨張による割れ等を防止することは可能であるが、図4に示すように、導管15の少なくとも一部が開口する状態で撥水被膜16が形成されていることが好ましい。このように導管15が開口した状態にあると、たとえ内部に水分が保持された状態で温度変化等によって水分が気化しても、その水分は開口を通じて外部に排出されるため、木材が膨張することがなくなって、割れ等を効果的に防止することが可能となる。
【0017】
次に、図4に示したように、露出面11aにおいて、導管15の少なくとも一部を開口させて上記した撥水被膜16を形成する撥水処理方法の一例について説明する。
【0018】
まず、撥水性を有する粒子、例えば、フッソ系・シリカ系の撥水粒子を、母材である樹脂(例えば、シリコン系・フッソ系の樹脂)と混合し、これを、揮発性を有する液状の溶剤(例えば、イソオクタン、ノルマルヘプタン)に混入する。
【0019】
上記した撥水性を有する粒子は、0.1〜2μm程度であり、これを5wt%、母材を2.5wt%、溶剤を92.5wt%の比率で混合する。すなわち、撥水性を有する粒子と母材と溶剤の比率を(5〜10):(2.5〜5):(92.5〜85)とした溶液(粘度は、20〜100mPa・Sが好ましい)を準備し、これを容器内に設置する。
【0020】
次に、この溶液中に上記した竿尻部品10を浸漬させて容器内を減圧する。このとき、空気が次第に排出されることに伴い、上記した溶液が導管15内に入り込み導管を閉塞するようになる。そして、このように導管15内に撥水性の溶液が充填された竿尻部品を乾燥させると、その構成成分である溶剤が揮発して表面部分に撥水被膜16が形成される。このとき、導管15の内部に充填された溶液は、溶剤が揮発する際に、少なくとも一部の導管15を開口するようになり、その内面に撥水被膜16が形成された状態となる。
【0021】
なお、導管15内に入り込んで定着する撥水被膜16は、容器の減圧状態や溶液の粘度等によって、導管開口からの形成長さが変化するが、そのような撥水被膜は、少なくとも10μm以上形成しておくことが好ましい。また、露出面11aに形成される撥水被膜16の膜厚については、余り厚くし過ぎると剥がれ易くなってしまうため、1μm〜1mm程度にしておくことが好ましい。
【0022】
このように、水分と接触する露出面11aに、撥水被膜16を形成すると共に、少なくとも一部の導管15が開口するような状態で撥水被膜を形成することで、水分を寄せ付けることなく、水分の内部侵入が効果的に防止できると共に、たとえ内部に水分が保持された状態になって温度変化等によって水分が気化しても、その水分は導管15の開口を通じて外部に排出可能であるため、木材が膨張することがなくなって、割れ等を効果的に防止することが可能となる。
【0023】
また、上記した構成においては、図5に示すように、導管15の露出部となる表面11aは、凹凸形状に形成されていることが好ましい。すなわち、このような凹凸形状によって撥水被膜16が定着し易くなって、これにより撥水性の向上が図れ、膨張や割れをより効果的に防止することが可能となる。このような凹凸17については、表面処理加工によって形成しても良いが、木材を切断加工する際に凹凸が残る状態で形成することが可能である。なお、凹凸17の高低(高い部分と低い部分の高低差)については、撥水性の向上が図れるように、30〜500μmにすることが好ましい。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、釣竿に用いられる木製部品は、竿尻部品に限定されることはなく、上栓等、様々な部品に適用することが可能である。また、釣竿の構成については、特定の形態に限定されることはなく、釣糸ガイドが装着されていない釣竿、中通し式の釣竿等に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る釣竿の一実施形態を示す側面図。
【図2】竿尻部品の構成を示す部分断面図。
【図3】竿尻部品の構成を示す斜視図。
【図4】竿尻部品の導管部分の拡大図。
【図5】竿尻部品の変形例を示し、導管部分の拡大図。
【符号の説明】
【0026】
1 釣竿
2 元竿杆
10 竿尻部品(木製部品)
11 嵌入部
11a 露出面
15 導管
16 撥水被膜
17 凹凸
【出願人】 【識別番号】000002495
【氏名又は名称】ダイワ精工株式会社
【出願日】 平成19年3月30日(2007.3.30)
【代理人】 【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司

【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章

【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義

【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行

【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅


【公開番号】 特開2008−245568(P2008−245568A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−90424(P2007−90424)