トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業

【発明の名称】 魚釣用リール
【発明者】 【氏名】天野 誠之

【要約】 【課題】復帰操作時の作動性を向上させ、釣糸巻き取り位置への誤復帰を好適に防止する。

【解決手段】基部材2bに設けられた操作部材の操作によって回動し、釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに切り換えられる切換手段20と、基部材2bと切換手段20との間に設けられ、切換手段20を釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とにそれぞれ付勢力をもって振り分ける付勢手段28と、ハンドル操作に連動して釣糸放出位置にある切換手段20を釣糸巻き取り位置に復帰可能とする復帰手段と、を備え、釣糸放出位置の付勢手段の一端部分に係脱可能に係止される係止手段20aを、基部材2bまたは切換手段20のいずれか一方に設けたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部材に設けられた操作部材の操作によって回動し、釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに切り換えられる切換手段と、
前記基部材と前記切換手段との間に設けられ、前記切換手段を釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とにそれぞれ付勢力をもって振り分ける付勢手段と、
ハンドル操作に連動して釣糸放出位置にある前記切換手段を釣糸巻き取り位置に復帰可能とする復帰手段と、を備え、
釣糸放出位置の前記付勢手段の一端部分に係脱可能に係止される係止手段を、前記基部材または前記切換手段のいずれか一方に設けたことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記魚釣用リールは、巻き取り駆動機構の駆動力を伝達許容状態と伝達不可状態とに切り換えるクラッチ機構を備えた両軸受けリールであり、
前記基部材がリール本体であるとともに、前記切換手段が、前記クラッチ機構の釣糸巻き取り位置となるクラッチオン位置と、釣糸放出位置となるクラッチオフ位置とに切り換える作動部材であることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記魚釣用リールは、ハンドル操作に連動回転するロータに支持腕が設けられたスピニングリールであり、
前記基部材が前記支持腕であるとともに、
前記切換手段が前記支持腕の前部に揺動可能に設けられて釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに切り換えられる、前記操作部材としてのベールを有する支持部材であることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記係止手段は、前記付勢部材の一端部分が係止可能な凹部であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な魚釣用リールとして両軸受けリールについて説明すると、両軸受けリールは、リ−ル本体に回転自在に支持されたスプ−ルを巻き取り駆動可能とする動力伝達許容状態のクラッチオン位置と、スプールをフリー状態とする動力伝達不可状態のクラッチオフ位置とに切り換えるクラッチ機構を備えている。また、ハンドルの回転操作によって、クラッチオフ位置からクラッチオン位置に復帰させる復帰機構を備えている。
【0003】
クラッチ機構は、通常、振り分け用のばね部材を備えており、このばね部材の付勢力によってクラッチオン位置(釣糸巻き取り時)とクラッチオフ位置(釣糸放出時)とに、それぞれ振り分け保持されるようになっている。そして、キャスティング操作時には、クラッチオフ位置に操作して釣糸の放出を行うが、釣竿をスイングさせる勢い等によって、不意にハンドルが回転することがあった。そのようなハンドルの回転を生じると、復帰機構が機能してクラッチ機構が釣糸巻き取り時のクラッチオン位置に誤復帰してしまう虞があった。
【0004】
また、従来の一般的な魚釣リールとしてのスピニングリールにおいても、同様に、誤復帰してしまう虞があった。スピニングリールでは、ベールを有する支持部材が、ばね部材の付勢力によって釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とにそれぞれ振り分け保持されるように構成されているが、キャスティング操作時の釣竿をスイングさせる勢い等によって、不意にハンドルが回転することがあり、この場合にも、復帰機構が機能して釣糸巻き取り位置に誤復帰する虞があった。
【0005】
そこで従来では、ばね部材の支持端部の支持位置が変位可能となるように構成することで、ばね部材による付勢力に変化をもたせ、誤復帰し難くするようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特許第3483784号公報
【特許文献2】特開2000−281873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した特許文献1,2の魚釣用リールでは、ばね部材の支持端部が長孔内に支持されて、この長孔内を移動(変位)することで付勢力に変化をもたせる構成であるため、ばね部材の振り分けが行われる振り分け境界位置から、ばね部材の支持端部が遊動する状態となり、その遊動によって切り換え操作時にタイムラグが生じていた。このため、復帰操作に対応した鋭敏な操作感が得られず、復帰操作時の作動性に劣っていた。また、ばね部材の支持端部が長孔内を変位することで付勢力に変化をもたせる構成であるため、変位がうまくいかないときには、誤復帰する虞もあった。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、復帰操作時の作動性を向上させることができるとともに、釣糸巻き取り位置への誤復帰を好適に防止することができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、基部材に設けられた操作部材の操作によって回動し、釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに切り換えられる切換手段と、前記基部材と前記切換手段との間に設けられ、前記切換手段を釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とにそれぞれ付勢力をもって振り分ける付勢手段と、ハンドル操作に連動して釣糸放出位置にある前記切換手段を釣糸巻き取り位置に復帰可能とする復帰手段と、を備え、釣糸放出位置の前記付勢手段の一端部分に係脱可能に係止される係止手段を、前記基部材または前記切換手段のいずれか一方に設けたことを特徴とするものであり、両軸受けリールおよびスピニングリールのいずれの魚釣用リールにも適用することができるものである。
【0009】
この魚釣用リールによれば、基部材または切換手段のいずれか一方に、釣糸放出位置の付勢手段の一端部分に係脱可能に係止される係止手段が設けられているので、基部材に設けられた操作部材を操作して、切換手段を釣糸巻き取り位置から釣糸放出位置に回動させると、付勢手段によって切換手段が釣糸放出位置に付勢力をもって振り分けられ、これとともに、付勢手段の一端部分に係止手段が係止されることとなる。これによって、釣糸放出位置にある切換手段に対して、これを釣糸放出位置に保持する力が付勢手段の係止によって付加されることとなり、切換手段が釣糸放出位置に振り分け保持されることと相俟って、切換手段が釣糸放出位置に好適に保持される。
したがって、キャスティング操作時の釣竿をスイングさせる勢い等によって、不意にハンドルが回転することがあっても、切換手段が釣糸巻き取り位置に誤復帰することを好適に防止することができる。
【0010】
しかも、付勢手段の一端部分が係止手段に係脱可能とされた構成であるので、従来のように変位を伴って付勢力に変化をもたせるときのような誤復帰を生じ難く、切換手段を釣糸放出位置に好適に保持することができる。また、付勢手段の一端部分が係止手段に係脱される構成であるので、切り換え操作時に従来のような遊動を生じることがなく、復帰操作に対応した鋭敏な操作感が得られ、復帰操作時の作動性がよい。
【0011】
また、本発明の魚釣用リールが、巻き取り駆動機構の動力伝達を伝達許容状態と伝達不可状態とに切り換えるクラッチ機構を備えた両軸受けリールであるときには、前記基部材がリール本体であるとともに、前記切換手段が、前記クラッチ機構の釣糸巻き取り位置となるクラッチオン位置と、釣糸放出位置となるクラッチオフ位置とに切り換える作動部材である構成とするのがよい。
【0012】
このような魚釣用リールによれば、両軸受けリールにおいて、リール本体または作動部材のいずれか一方に、釣糸放出位置の付勢手段の一端部分に係脱可能に係止される係止手段が設けられることとなり、係止手段によって作動部材が釣糸放出位置に好適に保持されるようになる。
【0013】
また、本発明の魚釣用リールが、ハンドル操作に連動回転するロータに支持腕が設けられたスピニングリールであるときには、前記基部材が前記支持腕であるとともに、前記切換手段が前記支持腕の前部に揺動可能に設けられて釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに切り換えられる、前記操作部材としてのベールを有する支持部材である構成とするのがよい。
【0014】
このような魚釣用リールによれば、スピニングリールにおいて、支持腕または支持部材のいずれか一方に、釣糸放出位置の付勢手段の一端部分に係脱可能に係止される係止手段が設けられることとなり、係止手段によって支持部材が釣糸放出位置に好適に保持されるようになる。
【0015】
また、係止手段は、前記付勢部材の一端部分が係止可能な凹部である構成とするのがよい。このような魚釣用リールによれば、凹部に付勢部材の一端部分が係止するという簡単な構造で切換手段(作動部材、支持部材)を釣糸放出位置に好適に保持することができる。また、例えば、凹部の深さを適宜設定することによって、付勢部材の一端部分と凹部との係止による保持力を容易に設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、復帰操作時の作動性を向上させることができるとともに、釣糸巻き取り位置への誤復帰を好適に防止することができる魚釣用リールが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
参照する図面において、図1は本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールとしての両軸受けリールの全体構成を示す図、図2(a)はクラッチオン状態とされたときの様子を示す図、図2(b)は図2(a)のb部分の拡大図、図2(c)は図2(b)を背面側から見た図、図2(d)は図2(b)のd−d線に沿う断面図である。また、図3(a)はクラッチオフ状態とされたときの様子を示す図、図3(b)は図3(a)のb1部分の拡大図、図3(c)は図3(b)を背面側から見た図、図3(d)は図3(b)のd1−d1線に沿う断面図である。
なお、以下の説明において、「前、後」「左、右」「上、下」は、両軸受けリールを釣竿Rに取り付けた状態を基準とする。
【0018】
図1に示すように、両軸受けリールのリール本体1は、左右フレーム2a,2bと、これら左右フレーム2a,2bに所定の空間をもって夫々シール材を介して装着される側面視で円形状の左右側板3a,3bと、を備えている。左右フレーム2a,2bは、複数の支柱を介して一体化されており、下方の支柱には、釣竿Rの図示しないリールシートに装着されるリール脚2c(図2(a)参照)が設けられている。
【0019】
左右フレーム2a,2b(左右側板3a,3b)間には、スプール軸5が軸受6を介して回転可能に支持されており、このスプール軸5には、釣糸が巻回されるスプール5aが取り付けられている。
【0020】
右フレーム2bと右側板3bには、図示しない軸受を介してハンドル軸7が回転可能に支持されており、その端部には、ハンドル7aが装着されている。これにより、スプール5aは、ハンドル7aを回転操作することによって、駆動力伝達機構10を介して回転駆動される。なお、ハンドル軸7は、右側板3bとの間に介在された公知の転がり式の一方向クラッチ11(逆転防止機構)によって、釣糸巻取方向にのみ回転可能となっている。
【0021】
また、右フレーム2bと右側板3bとの間には、駆動力伝達機構10の駆動力の伝達を継脱するクラッチ機構12と、魚釣時にスプール5aから釣糸が繰り出された際、スプール5aにドラグ力を付与する公知のドラグ機構(不図示)が収容されている。
【0022】
駆動力伝達機構10は、ハンドル軸7に回転可能に支持された駆動歯車13と、この駆動歯車13に噛合するピニオン14とを備えている。ピニオン14は、前記スプール軸5と同軸上に延出し、右側板3bに軸受を介して回転可能に支持されたピニオン軸5bに設けられており、このピニオン軸5bに沿って軸方向に移動可能となっている。
また、ピニオン14の端部には、図示しない嵌合部が形成されており、ピニオン14が、以下に説明するクラッチ機構12の後記する可動部材22によってスプール5a側に移動され、嵌合部がスプール軸5の端部に形成されている断面非円形の係合部に嵌合することで駆動力の伝達許容状態(クラッチオン)となり、ピニオン14が可動部材22によって右側板3b側に移動され、嵌合部がスプール軸5の端部の係合部から外れることで駆動力の伝達不可状態(クラッチオフ)となる。なお、ピニオン14は、その外周に形成された円周溝が可動部材22に係合して、スプール軸5の軸方向に移動可能となっている。
【0023】
クラッチ機構12は、図2(a)に示すように、右フレーム2bに沿って操作レバー21(操作部材)の操作により回動される所定の角度に、回動可能に配設されたクラッチ作動板20(作動部材)を備えている。そして、クラッチ機構12は、リール本体1の後部から突出した操作レバー21を下方に押圧操作することで回動駆動されるようになっている。
【0024】
クラッチ作動板20は、操作レバー21の操作により、図2(a)において矢印D1,D2方向に駆動されるようになっており、その表面には、ピニオン14の円周溝14aに嵌合した可動部材22と係合可能な一対のカム面23,23が形成されている。
可動部材22は、ピニオン14の円周溝14aに略180°に亘って嵌合するとともに、ピニオン14を中心として直径方向に延出する一対の腕部22a,22aを有しており、各腕部22a,22aの裏面にカム面23,23がそれぞれ係合するようになっている。また、各腕部22a,22aの先端側は、右フレーム2bに突設された支持ピン25によって保持されており、可動部材22は、各支持ピン25に配設されたばね部材(不図示)によって、常時、クラッチ作動板20側に付勢された状態となっている。なお、図2(a)は、可動部材22が、ばね部材(不図示)によってクラッチ作動板20側に付勢された状態を示しており、このとき、ピニオン14はスプール軸5の端部に形成されている係合部に嵌合してクラッチオン状態となっている。
【0025】
また、クラッチ作動板20には、右フレーム2bに突設されたボス26が係合する円弧溝27が形成されるとともに、右フレーム2b(リール本体1)との間で付勢手段としての振り分け保持ばね28が設けられている。このようなクラッチ作動板20は、操作レバー21を操作することで、クラッチオン位置(釣糸巻き取り位置、図2(a)参照)と、クラッチオフ位置(釣糸放出位置、図3(a)参照)との間で、位置決めされ、振分け保持されるようになっている。
【0026】
本実施形態では、図2(b)(c)に示すように、クラッチ作動板20に、クラッチオフ位置の振り分け保持ばね28の一端部分28aが係脱可能に係止される凹部20a(係止手段)が設けられている。この凹部20aは、振り分け保持ばね28の一端のボス28Aが挿通支持される、支持孔20Aの口縁に直交するようにして形成されている。
ここで、振り分け保持ばね28は、ねじりばねであり、クラッチ作動板20に形成された支持孔20Aに一端のボス28Aが挿通されて配置され、右フレーム2bに形成された支持穴2Bに他端のボス28Bが挿入されて配置されることで、クラッチ作動板20と右フレーム2bとの間に設けられている。
そして、振り分け保持ばね28は、そのクラッチ作動板20側の一端部分28aが、後記するクラッチ作動板20の釣糸放出位置において、凹部20aに係止されるように構成されている。つまり、図2(b)(c)に示すように、クラッチ作動板20が釣糸巻き取り位置にある状態では、振り分け保持ばね28の一端部分28aの軸線方向が、凹部20aの溝の長手方向から外れた位置(凹部20aに隣接する周部位置)にあり、振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部20aに係止されることがない。
一方、図3(a)〜(d)に示すように、クラッチ作動板20が釣糸放出位置に回動された状態では、凹部20aの溝の長手方向と振り分け保持ばね28の一端部分28aの軸線方向とが一致する位置関係(図3(c)参照)となり、これによって、振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部20aに入り込んで係止されるようになっている。本実施形態では、凹部20aの溝深さをばね径よりも小さくしてある(図3(c)参照)。
【0027】
また、振り分け保持ばね28は、図2(d)に示すように、クラッチ作動板20に支持される側がコイル巻き部から一端部分28aへ向けて傾斜状に形成されており、その結果、クラッチ作動板20に支持される一端側が、凹部20aの形成される側(下面側)にもぐり込むようにして挿入されて、そのボス28Aがクラッチ作動板20の支持孔20Aを通じて反対側(上面側)へ挿通される構成であるので、一端部分28aは、クラッチ作動板20側へ付勢されて押圧状態とされる。これによって、図3(a)〜(d)に示すように、クラッチ作動板20が釣糸放出位置に回動されると、振り分け保持ばね28の一端部分28aが、その付勢力により凹部20aに容易に入り込むようになっている(図3(b)〜(c)参照)。
【0028】
前記したクラッチ機構12には、クラッチオフ状態において、ハンドル7aを巻き取り操作した際に、自動的にクラッチ作動板20をクラッチオン位置に復帰させる復帰機構が設けられている。
この復帰機構は、図2(a)、図3(a)に示すように、クラッチ作動板20に対して回動可能に支持されたキックプレート30と、このキックプレート30と右フレーム2bとの間に設けられ、キックプレート30を所定の位置で保持するばね部材31とを備えて構成されている。
このキックプレート30には、第1当接部30aと第2当接部30bが形成されており、これらはそれぞれ、クラッチ作動板20に形成された第1当て付け部24,第2当て付け部24aと、ハンドル軸7に回り止め固定され、外周に爪歯32aが形成されたラチェット32に係合可能となっている。
【0029】
この場合、クラッチオン位置では、第1当て付け部24がキックプレート30の第1当接部30aに当接しており、この状態で操作レバー21を下方に押圧操作すると、図2(a)において、D1方向にクラッチ作動板20が回動し、キックプレート30は、支持ピン25を中心に反時計方向に回動される。このとき第1当接部30aの第1当て付け部24による規制が解除されるため、キックプレート30の第2当接部30bは、ばね部材31の付勢力により、ラチェット32の爪歯32aの回転軌跡内に位置するようになっている(図3(a)参照)。
【0030】
そして、図3(a)に示すクラッチオフ位置からハンドル7aを巻き取り操作すると、ハンドル軸7を介してラチェット32が時計回り方向に回転駆動され、キックプレート30は、回転する爪歯32a、第2当接部30bおよびばね部材31の付勢力に抗して、支持ピン25を中心に反時計方向に回動される。このとき、キックプレート30の第1当接部30aは、クラッチ作動板20の第2当て付け部24aに当接してクラッチ作動板20をD2方向に回動させ、振り分け保持ばね28の死点(デッドポイント)を越えることによって、クラッチ作動板20がクラッチオン位置(図2(a)参照)に自動復帰され、付勢力をもって保持される。
【0031】
次に、以上のように構成された両軸受けリールの作用について説明する。
図示しない仕掛けを投擲する(釣糸を放出する)場合、図2(a)に示したクラッチオン位置から操作レバー21を下方へ押圧操作することで、クラッチオフ位置(図3(a)参照)に切り換え、スプール5aをフリー回転可能な状態にする。そうすると、振り分け保持ばね28によってクラッチ作動板20が釣糸放出位置に付勢力をもって振り分けられ、これとともに、図3(b)〜(d)に示すように、振り分け保持ばね28の一端部分28aがクラッチ作動板20の凹部20aに係止される。
【0032】
これによって、釣糸放出位置にあるクラッチ作動板20に対して、これを釣糸放出位置に保持する力が振り分け保持ばね28の一端部分28aの係止によって付加されることとなり、クラッチ作動板20が釣糸放出位置に振り分け保持されることと相俟って、クラッチ作動板20が釣糸放出位置に好適に保持される。
【0033】
したがって、仕掛けを投擲すべく図示しない釣竿Rを振り下ろした際等に、瞬時に作用する慣性力によってハンドル7aが回転し、復帰機構の前記作用によってクラッチ作動板20が釣糸巻き取り位置に誤復帰しようとしても、そのクラッチ作動板20の図3(a)〜(d)におけるD2方向の回動が前記凹部20aへの振り分け保持ばね28の一端部分28aの係止によって付加された保持力によって好適に阻止されることとなり、クラッチ作動板20が釣糸放出位置に好適に保持されることとなる。
これによって、クラッチ作動板20が釣糸巻き取り位置に誤復帰することが好適に防止される。
【0034】
なお、ハンドル7aを巻き取り方向に回動操作することによって復帰機構を作動させると、クラッチ作動板20の凹部20aに係止されていた振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部20aから外部に脱し、振り分け保持ばね28と凹部20aとの係止状態が解除される。これによって、クラッチ作動板20が釣糸放出位置から釣糸巻き取り位置に振り分け保持ばね28によって振り分けられることとなり、自動的に復帰されることとなる。
【0035】
以上説明した本実施形態の両軸受けリールによれば、クラッチ作動板20に、釣糸放出位置の振り分け保持ばね28の一端部分28aが係脱可能に係止される凹部20aが設けられているので、クラッチ作動板20が釣糸放出位置に振り分けられて一端部分28aが凹部20aに係止されると、釣糸放出位置にあるクラッチ作動板20に対して、これを釣糸放出位置に保持する力が付加されることとなり、振り分け保持ばね28による付勢力と相俟って、クラッチ作動板20は、釣糸放出位置に好適に保持される。
したがって、キャスティング操作時の釣竿Rをスイングさせる勢い等によって、不意にハンドル7aが回転することがあっても、クラッチ作動板20が釣糸巻き取り位置に誤復帰することを好適に防止することができる。
【0036】
しかも、振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部20aに係脱可能とされた構成であるので、従来のように変位を伴って付勢力に変化をもたせるときのような誤復帰を生じ難く、クラッチ作動板20を釣糸放出位置に好適に保持することができる。また、振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部20aに係脱される構成であるので、切り換え操作時に従来のような遊動を生じることがなく、復帰操作に対応した鋭敏な操作感が得られ、復帰操作時の作動性がよい。
【0037】
また、凹部20aに振り分け保持ばね28の一端部分28aが係止するという簡単な構造でクラッチ作動板20を釣糸放出位置に好適に保持することができる。また、例えば、凹部20aの深さを適宜設定することによって、振り分け保持ばね28の一端部分28aと凹部20aとの係止による保持力を容易に設定することができる。
【0038】
図4は本実施形態に係る魚釣用リールとしての両軸受けリールの変形例を示す図であり、(a)はクラッチオン状態における振り分け保持ばねの様子を示す図、(b)は図4(a)のb2−b2線に沿う断面図、(c)はクラッチオフ状態における振り分け保持ばねの様子を示す図、(d)は図4(c)のb3−b3線に沿う断面図である。この例では、右フレーム2b(リール本体1)側に係脱可能な係止手段としての凹部201を設け、この凹部201にクラッチオフ位置の振り分け保持ばね28の他端部分28bが係脱可能に係止されるように構成してある。
【0039】
凹部201は、右フレーム2bに突設された円筒状突起202の端面に形成されており、その形成位置は、クラッチ作動板20の釣糸放出位置において、振り分け保持ばね28の他端部分28bが係止される位置となっている。つまり、図4(a)(b)に示すように、クラッチ作動板20が釣糸巻き取り位置にある状態では、振り分け保持ばね28の他端部分28bの軸線方向が、凹部201の溝の長手方向から外れた位置(凹部201に隣接する周部位置)にあり、振り分け保持ばね28の他端部分28bが凹部201に係止されることがない。
一方、図4(c)(d)に示すように、クラッチ作動板20が釣糸放出位置に回動された状態では、凹部201の溝の長手方向と振り分け保持ばね28の他端部分28bの軸線方向とが一致する位置関係となり、これによって、振り分け保持ばね28の他端部分28bが凹部201に入り込んで係止されるようになっている。この例では、凹部201の溝深さをばね径と略同等としたが適宜設定することができる。
【0040】
このような構成においても、クラッチ作動板20が釣糸放出位置に振り分けられて振り分け保持ばね28の他端部分28bが凹部201に係止されると、釣糸放出位置にあるクラッチ作動板20に対して、これを釣糸放出位置に保持する力が付加されることとなり、振り分け保持ばね28による付勢力と相俟って、クラッチ作動板20は、釣糸放出位置に好適に保持される。
したがって、キャスティング操作時の釣竿Rをスイングさせる勢い等によって、不意にハンドル7a(図1参照)が回転することがあっても、クラッチ作動板20が釣糸巻き取り位置に誤復帰することを好適に防止することができる。
【0041】
図5は本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールとしてのスピニングリールの全体構成を示す図、図6(a)は釣糸巻き取り位置の支持腕の様子を示した断面図、図6(b)は釣糸放出位置の支持腕の様子を示した断面図、図6(c)は係止の様子を示す断面図である。なお、以下の説明において、同様の部分には同様の符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態では、支持腕41bとベール41fを有する支持部材41dとの間に、振り分け保持ばね28が設けられており、釣糸放出位置の振り分け保持ばね28の一端部分28aに係脱可能に係止される係止手段としての凹部47が支持部材41dに設けられた構成となっている。
【0042】
図5に示すように、主として、スピニングリールは、図示しない釣竿に装着するための脚部40Aが形成されたリール本体40と、リール本体40の前方に回転可能に設けられたロータ41と、このロータ41の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール42とを有して構成される。
【0043】
リール本体40には、図示しない軸受を介してハンドル軸43が回転可能に支持されており、その突出端部には、巻き取り操作されるハンドル44が取り付けられている。ハンドル軸43には、ロータ41を巻き取り駆動するための内歯が形成されたドライブギヤ(不図示)が、ハンドル軸43と直交する方向に延出する回転軸(不図示)に噛合している。なお、回転軸には、先端側にスプール42を取り付け、オシレーティング機構に係合したスプール軸(不図示)が、軸方向に移動可能に挿通されて、支持されている。
【0044】
ロータ41は、スプール42のスカート部42a内に位置する円筒部41aと、一対の支持腕41b,41c(支持腕41bのみ図示、以下同じ)を具備している。各支持腕41b,41cの前端部には、支持部材41d,41e(支持部材41dのみ図示、以下同じ)が釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されており、これらの支持部材41d,41e間には、放出状態にある釣糸をピックアップするベール41fが配設されている。ベール41fは、一方の基端部が支持部材41dに一体的に設けられた釣糸案内部41gに取り付けられており、他方の基端部が支持部材41eに取り付けられている。
ロータ41の内側には、図示しない公知の復帰機構が設けられており、この復帰機構は、支持部材41d,41eが釣糸放出位置にされた状態でハンドル44を巻き取り操作した際に、自動的に支持部材41d,41eを釣糸巻き取り位置に復帰させるようになっている。
【0045】
スプール42は、スカート部42aとフランジ42bとの間に図示しない釣糸が巻回される胴部42cを備えており、スプール軸に図示しないドラグ機構を介して摩擦結合され、ノブ42dを回動操作することでスプール42のドラグ力が調節される。
【0046】
そして、支持部材41d,41eは、支持腕41bに設けられた振り分け保持ばね28によって、釣糸巻き取り位置(図6(a)参照)または釣糸放出位置(図6(b)参照)に保持される。
ここで、支持部材41dは、図6(a)に示すように、回転軸を形成する取付ピン45を中心として回動して、釣糸巻き取り位置(図6(a)参照)または釣糸放出位置(図6(b)参照)に保持されるようになっており、取付ピン45から偏心した位置に振り分け保持ばね28の一端のボス28Aが挿通支持される支持孔46が形成されている。
【0047】
そして、支持部材41dには、この支持孔46の口縁に直交するようにして係止手段としての凹部47が形成されており、この凹部47には、振り分け保持ばね28の一端部分28aが、支持部材41dの釣糸放出位置において、前記実施形態と同様にして係止されるように構成されている。つまり、図6(a)に示すように、支持部材41dが釣糸巻き取り位置にある状態では、振り分け保持ばね28の一端部分28aの軸線方向が、凹部47の溝の長手方向から外れた位置(凹部47に隣接する周部位置)にあり、振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部47に係止されることがない。
一方、図6(b)に示すように、支持部材41dが釣糸放出位置に回動された状態では、凹部47の溝の長手方向と振り分け保持ばね28の一端部分28aの軸線方向とが一致する位置関係となり、これによって、振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部47に入り込んで係止されるようになっている(図6(c)参照)。ここでは、凹部47の溝深さをばね径よりも小さくしてある(図6(c)参照)。なお、振り分け保持ばね28の他端のボス28Bは、支持腕41bに形成された支持穴41bに挿通されて配置されている。
【0048】
次に、以上のように構成されたスピニングリールの作用について説明する。
図示しない仕掛けを投擲する(釣糸を放出する)場合、図6(a)に示した釣糸巻き取り位置から図6(b)に示した釣糸放出位置にベール41fおよび支持部材41d,41eを回動操作し、ロータ41をフリー回転可能な状態にする。そうすると、振り分け保持ばね28によって支持部材41dが釣糸放出位置に付勢力をもって振り分けられ、これとともに、図6(b)(c)に示すように、振り分け保持ばね28の一端部分28aが支持部材41dの凹部47に係止される。
【0049】
これによって、釣糸放出位置に振り分け保持された支持部材41dに対して、振り分け保持ばね28の一端部分28aの係止による保持力が付加される状態となり、支持部材41dが釣糸放出位置に好適に保持される。
【0050】
したがって、仕掛けを投擲すべく図示しない釣竿を振り下ろした際等に、瞬時に作用する慣性力によってハンドル44が回転し、復帰機構の前記作用によって支持部材41dが釣糸巻き取り位置に誤復帰しようとしても、その支持部材41dの釣糸巻き取り位置への回動が前記係止によって付加された保持力によって好適に阻止されることとなり、支持部材41dが釣糸放出位置に好適に保持されることとなる。
これによって、支持部材41dが釣糸巻き取り位置に誤復帰することが好適に防止される。
【0051】
なお、ハンドル44を巻き取り方向に回動操作することによって復帰機構を作動させると、支持部材41dの凹部47に係止されていた振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部47から外部に脱し、振り分け保持ばね28と凹部47との係止状態が解除される。これによって、支持部材41dが釣糸放出位置から振り分け境界位置(死点、デッドポイント)を越えて釣糸巻き取り位置側に振り分けられ、釣糸巻き取り位置に自動的に復帰されることとなる。
【0052】
以上説明した本実施形態のスピニングリールによれば、支持部材41dに、釣糸放出位置の振り分け保持ばね28の一端部分28aが係脱可能に係止される凹部47が設けられているので、支持部材41dが釣糸放出位置に振り分けられて一端部分28aが凹部47に係止されると、釣糸放出位置にある支持部材41dに対して、これを釣糸放出位置に保持する力が付加されることとなり、振り分け保持ばね28による付勢力と相俟って、クラッチ作動板20は、釣糸放出位置に好適に保持される。
したがって、キャスティング操作時の釣竿をスイングさせる勢い等によって、不意にハンドル44が回転することがあっても、支持部材41dが釣糸巻き取り位置に誤復帰することを好適に防止することができる。
【0053】
しかも、振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部47に係脱可能とされた構成であるので、従来のように変位を伴って付勢力に変化をもたせるときのような誤復帰を生じ難く、支持部材41dを釣糸放出位置に好適に保持することができる。また、振り分け保持ばね28の一端部分28aが凹部47に係脱される構成であるので、切り換え操作時に従来のような遊動を生じることがなく、復帰操作に対応した鋭敏な操作感が得られ、復帰操作時の作動性がよい。
【0054】
また、凹部47に振り分け保持ばね28の一端部分28aが係止するという簡単な構造であるので、支持腕41b内の狭いスペースにあっても容易にこれらの構成を採用することができる。支持部材41dを釣糸放出位置に好適に保持することができる。また、例えば、凹部47の深さを適宜設定することによって、振り分け保持ばね28の一端部分28aと凹部47との係止による保持力を容易に設定することができる。
【0055】
なお、凹部47は、支持腕41b側に設けてもよく、この凹部47に釣糸放出位置の振り分け保持ばね28の他端部分が係脱可能に係止されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールとしての両軸受けリールの全体構成を示す図である。
【図2】(a)はクラッチオン状態とされたときの様子を示す図、(b)は図2(a)のb部分の拡大図、(c)は図2(b)を背面側から見た図、(d)は図2(b)のd−d線に沿う断面図である。
【図3】(a)はクラッチオフ状態とされたときの様子を示す図、(b)は図3(a)のb1部分の拡大図、(c)は図3(b)を背面側から見た図、(d)は図3(b)のd1−d1線に沿う断面図である。
【図4】本実施形態に係る魚釣用リールとしての両軸受けリールの変形例を示す図であり、(a)はクラッチオン状態における振り分け保持ばねの様子を示す図、(b)は図4(a)のb2−b2線に沿う断面図、(c)はクラッチオフ状態における振り分け保持ばねの様子を示す図、(d)は図4(c)のb3−b3線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールとしてのスピニングリールの全体構成を示す図である。
【図6】(a)は釣糸巻き取り位置の支持腕の様子を示した断面図、(b)は釣糸放出位置の支持腕の様子を示した断面図、(c)は係止の様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 リール本体
2b 右フレーム(基部材)
5 スプール軸
5a スプール
7 ハンドル軸
7a ハンドル
10 駆動力伝達機構
11 一方向クラッチ
12 クラッチ機構
14 ピニオン
20 クラッチ作動板(切換手段、作動部材)
20a 凹部(係止手段)
20A 支持孔
21 操作レバー(操作部材)
23 カム面
28 振り分け保持ばね(付勢手段)
28a 一端部分
28A ボス
28B ボス
28a 一端部分
28b 他端部分
31 部材
32 ラチェット
40 リール本体
41 ロータ
41b 支持腕(基部材)
41d 支持部材(切換手段)
41e 支持部材(切換手段)
41f ベール(操作部材)
41g 釣糸案内部
42 スプール
44 ハンドル
47 凹部(係止手段)
201 凹部(係止手段)
【出願人】 【識別番号】000002495
【氏名又は名称】ダイワ精工株式会社
【出願日】 平成19年3月30日(2007.3.30)
【代理人】 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造

【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫


【公開番号】 特開2008−245566(P2008−245566A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−90186(P2007−90186)