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【発明の名称】 釣り糸
【発明者】 【氏名】岡野 信

【要約】 【課題】繊維軸方向とこれに直交する横方向の擦過に対して均等に優れた耐擦過性を有し、実釣時の根擦れ耐久性が著しく向上した釣り糸を提供する。

【解決手段】直径が0.05mm〜0.80mmのポリアミド系樹脂モノフィラメントからなる釣り糸であって、その外表面に、ポリシラザン透明ハードコート層及び/又は紫外線硬化型透明ハードコート層を有することを特徴とする釣り糸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が0.05mm〜0.80mmのポリアミド系樹脂モノフィラメントからなる釣り糸であって、その外表面に、ポリシラザン透明ハードコート層及び/又は紫外線硬化型透明ハードコート層を有することを特徴とする釣り糸。
【請求項2】
下記横方向擦過試験後の引張強力保持率が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の釣り糸。
擦過試験法:2個のフリーローラー(ローラー間距離:70mm)を底辺とし、擦過体としての仕上げ用の丸ヤスリ(NTカッター社製:RS−310P)を頂点とする二等辺三角形の頂点角度が120°になる位置に、前記擦過体をセットし、一端側を固定した釣り糸を、一方のフリーローラーの下側、擦過体の上側、他方のフリーローラーの下側、更に糸道規制用フリーローラーの上側の順になるようにセットし、この釣り糸の多端側に釣り糸の繊度(dtex)に対して0.196Xdtexの荷重(cN)を掛けてセットする。この状態で擦過体を釣り糸の繊維軸に対して垂直方向に速度:30往復/1分、移動距離:25mm/片道の条件で10往復擦過させた後の釣り糸を採取して、その引張強力をJIS L1013の規定に準じて測定する。この測定値から初期の引張強力に対する強力保持率(%)を算出し、この値を横方向擦過試験後の引張強力保持率とする。
【請求項3】
前記ハードコート層が種類の異なる2層以上の層からなることを特徴とする請求項1または2に記載の釣り糸。
【請求項4】
前記ハードコート層の厚さが0.5〜30μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の釣り糸。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維軸方向とこれに直交する横方向の擦過に対して均等に優れた耐擦過性を有し、実釣時の根擦れ耐久性が著しく向上した釣り糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚釣りに使用される釣り糸は、対象魚や釣りの手法により要求特性が異なり、それぞれの目的に応じた釣り糸を選択し、又は組み合わせて使用されている。
【0003】
従来からよく使用される釣り糸としては、ナイロン6、ナイロン6/ナイロン66共重合体、ナイロン6/ナイロン12共重合体などのポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂などからなるモノフィラメントが広く用いられている。
【0004】
なかでも、ポリアミド樹脂モノフィラメントは、柔軟性、強靱性、さらに適度な伸びがあることから、例えば海用の道糸、鮎用の水中糸、へら用の道糸、ルアーラインなど様々な釣りに使われている。
【0005】
しかしながら、ポリアミド樹脂モノフィラメントからなる釣り糸を使用する場合には、ウキやウキ止めなどの仕掛の移動時、釣り竿のガイド、更にリールのガイド及びスプール、水中の岩などの障害物など様々なケースで擦過され、キズが付くことにより、その強度が極端に低くなってしまい、糸切れによりせっかく掛けた魚を釣り逃がしてしまうという問題があった。したがって、ポリアミド樹脂モノフィラメントからなる釣り糸には、耐摩耗性の更なる改善が強く要求されていた。
【0006】
ポリアミド樹脂モノフィラメントからなる釣り糸の耐摩耗性を改善する方法としては、アミノ変性シリコンオイルが表面に付与されたポリアミドモノフィラメントからなる釣り糸(例えば、特許文献1参照)、ポリアミド樹脂に高分子量シリコン化合物を混合し溶融紡糸してなる釣り糸(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0007】
しかしながら、アミノ変性シリコンを表面に付与した釣り糸や、高分子量シリコンを配合した釣り糸は、いずれも釣り糸の滑り性を改善することにより、釣り竿のガイドやリールのスプールと言った表面の滑らかな物体に対する擦過によるキズの付き易さはある程度改善されるものの、水中の岩などのように擦過体の表面の凹凸が激しい物体との擦過に対しては、その耐擦過性が不十分なものであった。
【0008】
また、釣り糸の表面が放射線照射処理などにより架橋された釣り糸(例えば、特許文献3参照)も知られており、この釣り糸は、表面を架橋することにより糸表面が硬くなり、ある程度の耐擦過性向上効果が見られるが、この場合には繊維軸方向に延伸された糸の表面を架橋していることから、魚を掛けたときに起こる釣り糸の繊維軸方向に直交する横方向の擦過に対する耐性が不十分であり、更なる改善が望まれていた。
【0009】
その他の耐摩耗性釣り糸としては、ポリウレタン樹脂水分散液、鉱物油、含フッ素アルキル化合物を主体とする処理剤にて樹脂加工したハリス(例えば、特許文献4参照)等が提案されているが、このハリスは、糸表面のコーティング層がウレタンであるため、釣り糸同士の擦れ、糸と金属の擦れなどによる摩擦熱から釣り糸を守る効果はあるものの、水中の岩などのように擦過体の表面の凹凸が激しい物体との擦過に対しては、その耐性が未だに不十分であった。
【特許文献1】特開平4−4832号公報
【特許文献2】特開2006−115802号公報
【特許文献3】特開平8−112052号公報
【特許文献4】特開平5−316909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0011】
したがって、本発明の目的は、繊維軸方向とこれに直交する横方向の擦過に対して均等に優れた耐擦過性を有し、実釣時の根擦れ耐久性が著しく向上した釣り糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明によれば、直径が0.05mm〜0.80mmのポリアミド系樹脂モノフィラメントからなる釣り糸であって、その外表面に、ポリシラザン透明ハードコート層及び/又は紫外線硬化型透明ハードコート層を有することを特徴とする釣り糸が提供される。
【0013】
なお、本発明の釣り糸に置いては、
下記する試験方法で測定した横方向擦過試験後の引張強力保持率が70%以上であること、
前記ハードコート層が種類の異なる2層以上の層からなること、および
前記ハードコート層の厚さが0.5〜30μmの範囲にあること
が、いずれも好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たすことによりさらに優れた効果を取得することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば以下に説明する通り、釣り糸の表面にガラスに匹敵する高い耐磨耗性と耐擦傷性を有し、かつ透明性に優れたハードコート層を有するため、繊維軸方向とこれに直交する横方向の擦過に対して均等に優れた耐擦過性を有し、実釣時の根擦れ耐久性が著しく向上した釣り糸を得ることができる。
【0015】
つまり、本発明の釣り糸によれば、海底に存在する凹凸の激しい擦過体に対する繊維軸方向の擦れだけでなく、魚を掛けたときに起こる釣り糸の繊維軸に直交する横方向の擦れに対しても、均等に優れた耐根擦れ性を得ることができることから、釣り糸に擦過を生じる釣り全般に対して好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明の釣り糸について具体的に説明する。
【0017】
本発明の釣り糸は、直径が0.05mm〜0.80mm、好ましくは0.15mm〜0.50mmの範囲のポリアミド系樹脂モノフィラメントからなり、その外表面に、ポリシラザン透明ハードコート層及び/又は紫外線硬化型透明ハードコート層を有することを特徴とする。
【0018】
ここで、釣り糸の直径が0.05mmより小さいと、ハードコート層の影響が大き過ぎて太さの割に強度の低い釣り糸となりやすく、また直径が0.80mmより太いと、擦過に対する影響が小さくなりハードコート層を形成した意味が低減することから好ましくない。
【0019】
本発明の釣り糸を構成するポリアミド系樹脂モノフィラメントの素材ポリマーは、ポリアミドであれば特に制限はないが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、およびこれら各種ナイロンの共重合体から選ばれた少なくとも1種、中でもナイロン6,ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12の共重合体が好ましく使用され、これらポリアミドを単体または混合した原料を、公知の方法で溶融紡糸、延伸するにより、ポリアミド系樹脂モノフィラメントを得ることができる。
【0020】
前記ポリアミド系樹脂モノフィラメントには、本発明の目的の特性を阻害しない範囲であれば、例えば顔料、染料、酸化チタン、耐候剤、耐光剤、結晶化抑制剤、金属化合物、比重調整剤、撥水処理剤、親水処理剤、などの添加剤を含有させることができる。
【0021】
本発明の釣り糸において、ポリアミド系樹脂モノフィラメントの外表面に形成されるポリシラザン透明ハードコート層及び/又は紫外線硬化型透明ハードコート層は、いずれもプラスチックレンズ用のハードコート層として使用されているものであり、例えばポリシラザン透明ハードコート層の形成材料としては、東燃社製・商品名「L120」、サンヨウトレディング社製・商品名「マクマミカNP140−01」、エクスシア社製・商品名「EPP−N010」などの、また紫外線硬化型透明ハードコート層の形成材料としては、JSR社製光硬化樹脂・商品名「DesoliteZ7002」、「DesoliteZ7503」、ディーメック社製・商品名「SCR−735」などの市販品を適用することにより、本発明のハードコート層とすることができる。
【0022】
ハードコート層の形成は、例えばポリシラザン含有被覆組成物の硬化物を溶解した有機溶媒溶液あるいは紫外線硬化性透明樹脂を溶解した有機溶媒溶液を、ボリアミド系樹脂モノフィラメントの表面にコーティングし、これを加熱または活性エネルギ線照射により硬化すると共に、溶媒を蒸発させることにより行うことができる。
【0023】
ここで、釣り糸へのコーティングの方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用できる。たとえば、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、シャワーコート法、リングコート法、スピンコート法、エアーナイフ法、ダイコート法などの種々の方法を採用できる。本発明においては、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法などの方法が好ましく採用される。
【0024】
なお、ハードコート層は、種類の異なる2層以上の層からなることが好ましく、例えば、最外層がポリシラザンを含有する被覆組成物の硬化物の層、この最外層に接する内層が紫外線硬化性透明樹脂の硬化物の層である2層コート層とすることにより、内層に耐擦傷性効果を持つコート層、外層に耐擦過性効果を持つコート層が形成され、耐久性、耐摩耗性の点で一層優れた釣り糸を得ることができる。
【0025】
また、ハードコート層の厚みは、0.5〜30μm、好ましくは1〜10μmの範囲であることが好ましく、0.5μmより薄いと耐摩耗性改善効果が発揮できず、30μmより厚いと釣り糸の直径が極端に太くなってしまうことから好ましくない。
【0026】
そして、本発明の釣り糸は、下記の方法で測定した横方向擦過試験後の引張強力保持率が70%以上、特に80%以上と、優れた耐摩耗性を有するものである。
【0027】
ここで、本発明の横方向擦過試験後の引張強力保持率の測定方法を図1にしたがって説明する。
【0028】
すなわち、擦過試験法は、図1に示したように、まず2個のフリーローラー(ローラー間距離:70mm)6a,6bを底辺とし、擦過体4としての仕上げ用の丸ヤスリ(NTカッター社製:RS−310P)を頂点とする二等辺三角形の頂点角度3が120°になる位置に、前記擦過体4をセットし、一端側を固定した釣り糸1を、一方のフリーローラー6aの下側、擦過体4の上側、他方のフリーローラー6bの下側、更に糸道規制用フリーローラー6cの上側の順になるようにセットする。
【0029】
一方、この釣り糸1の多端側に釣り糸の繊度(dtex)に対して0.196Xdtexの荷重(cN)2を掛けてセットする。
【0030】
この状態で擦過体4を釣り糸1の繊維軸に対して垂直方向(A−A方向)に速度:30往復/1分、移動距離:25mm/片道の条件で、移動方向5へと10往復擦過させた後の釣り糸を採取して、その引張強力をJIS L1013の規定に準じて測定する。
この測定値から初期の引張強力に対する強力保持率(%)を算出し、この値を横方向擦過試験後の引張強力保持率とする。
【0031】
本発明の釣り糸においては、上記の方法で測定した横方向擦過試験後の引張強力保持率が70%〜100%、特に80%〜100%の範囲にあることが好ましい。
【0032】
強力保持率が70%を下回ると、魚を掛けたときに起こる釣り糸の繊維軸に直交する横方向の擦れに対しての摩耗性が低くなり、せっかく掛けた魚を釣り逃がしてしまうことになる。また、逆に100%を越える場合は測定誤差以外では考えられない。
【0033】
上記の方法で作られた釣り糸の表面には、釣り糸の特徴を阻害しない範囲でシリコン系撥水処理剤、フッ素系撥水処理剤、親水性油剤など任意に塗布することができる。
【0034】
以上の構成からなる本発明の釣り糸は、表面にガラスに匹敵する高い耐磨耗性と耐擦傷性を有し、かつ透明性に優れたハードコート層を有するため、繊維軸方向とこれに直交する横方向の擦過に対して均等に優れた耐擦過性を有し、実釣時の根擦れ耐久性が著しく向上した釣り糸を得ることができる。
【0035】
つまり、本発明の釣り糸によれば、海底に存在する凹凸の激しい擦過体に対する繊維軸方向の擦れだけでなく、魚を掛けたときに起こる釣り糸の繊維軸に直交する横方向の擦れに対しても、均等に優れた耐根擦れ性を得ることができることから、釣り糸に擦過を生じる釣り全般に対して好適に使用される。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の釣り糸を実施例に基づいてさらに詳しく説明する。なお、実施例における釣り糸の評価は以下の方法で行った。
【0037】
[直径測定]
アンリツ社製レーザー外径測定機「KL−151A」を使用し、釣り糸300mを30m/分の速度で計測部分を走行させることにより測定し、平均直径を算出した。
【0038】
[破断強度]
JIS L1013の規定に準じて、釣り糸を20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置後、(株)オリエンテック社製「テンシロンUTM−4−100型」引張試験機を使用して、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で引張破断強力を1サンプルに対して5回測定し、その平均を求め強度を算出した。
【0039】
[コーティング層厚み]
釣り糸の断面が観察可能な切片を作成し、キーエンス社製マイクロスコープVH−7000を使い倍率50倍に拡大してコーティング層の厚みを測定した。
【0040】
[横方向擦過試験後の強力保持率]
上記図1で説明した方法と同様に測定した。
【0041】
[繊維軸(縦)方向擦過試験]
図1の擦過試験において、擦過体4の移動方向を繊維軸方向(B−B方向)に変更した以外は、同様にして測定した。
【0042】
[実釣評価]
複数の釣り人に、実施例または比較例で得られた釣り糸を太さに合わせ、0.064mm、0.040mmは鮎釣り用水中糸として使用0.15mmは防波堤での根魚釣りに使用、0.218mmは磯釣り用道糸としてフカセ釣りで使用、0.70mm、1.05mmは磯釣り用道糸として石鯛釣り用道糸としてそれぞれ使用してもらい、魚を掛けたときの耐根擦れ性について次の2段階で評価を依頼した。
○:二日間連続で同じ糸を使い実釣テストを行ったが二日使用後の糸の表面に微キズの発生も無く使用前と変わらぬ光沢をしていた。また、太さに合わせて色々な釣り方で実釣テストを実施したが、いずれの太さも魚が掛かったときの横方向の擦れに対しても糸切れ擦ることなく、快適に釣りを楽しむことができた。
×:二日間の実釣で、釣り糸表面に微キズが発生して釣り糸の光沢が極端になくなっていたばかりか、従来の糸同様掛かった魚が底に向かって逃げるときの縦方向の擦れに対しては、ある程度持ちこたえた物の横に逃げ出したとき、横方向に糸が擦れた瞬間に釣り糸が切れてしまい魚を逃がしてしまった。
【0043】
[実施例1]
6/66共重合ナイロン樹脂(東レ製M6021H4:融点212℃、相対粘度4.65)を、エクストルーダー型紡糸機を使い270℃で溶融し、孔径1.0mmの口金を通して紡糸し、さらに20℃の水中で冷却した。
【0044】
次に、この未延伸糸を100℃の水蒸気延伸浴中で3.8倍に一段目延伸し、更に180℃の乾熱浴中で1.74倍に二段目延伸(全延伸倍率6.6倍)した後、引き続いて170℃の乾熱浴中に処理倍率0.9倍で通過させ熱処理を施すことにより、直径0.218mmのモノフィラメントを得た。
【0045】
得られたナイロンモノフィラメントに、紫外線硬化型ハードコート剤JSR社製光硬化樹脂DesoliteZ7002を使い、ディップコート法でコーティング(ウエット厚さ3μm)し、90℃の熱風循環浴中を倍率1倍で通過させて1次乾燥した後、空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギ量の紫外線を照射し、膜厚1μmの硬化物層を形成した。
【0046】
次に、この硬化物層の表面に、低温硬化性のペルヒドロポリシラザンのジブチルエーテル溶液(固形分濃度20質量%、東燃社製、商品名「L120」)を、ディップコート法でコーティング(ウエット厚さ3μm)して、90℃の熱風循環浴を倍率1倍で通過させ溶剤を除去した後、空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1000mJ/cmの紫外線を照射した。
【0047】
続いて100℃の熱風循環浴を倍率1倍で通過させ最外層を充分に硬化させ、釣り糸表面に厚さ1.5μmの2層ハードコート層を有する釣り糸を作成した。
得られた釣り糸の評価結果を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
ナイロンモノフィラメントの素材を6ナイロン樹脂(東レ製M1041:融点223℃、相対粘度4.30)に変更した以外は、実施例1に準じて釣り糸を作成した。得られた釣り糸の評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で作成した直径0.218mmのモノフィラメントに、低温硬化性のペルヒドロポリシラザンのジブチルエーテル溶液(固形分濃度20質量%、東燃社製、商品名「L120」)を、ディップコート法でコーティング(ウエット厚さ3μm)して、90℃の熱風循環浴を倍率1倍で通過させ溶剤を除去した後、空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1000mJ/cmの紫外線を照射した。続いて100℃の熱風循環浴を倍率1倍で通過させ最外層を充分に硬化させることにより、釣り糸表面に厚さ1.5μmの単層ハードコート層を有する釣り糸を作成した。得られた釣り糸の評価結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1]
実施例1の製法で得られたモノフィラメントに、ハードコート層を形成することなく、そのまま釣り糸として評価した結果を表1に示す。
【0051】
[比較例2]
モノフィラメントの表面に、ハードコート層の代わりに、アミノ当量2000のシリコンオイルを乳化剤を用いて濃度5%の水性エマルジョンとした溶液を塗布した以外外は、実施例1と同様にして、表面に厚さ1.5μmの乳化剤層を有する釣り糸を作成した。釣り糸を作成した。得られた釣り糸の評価結果を表1に示す。
【0052】
[比較例3]
モノフィラメントの表面に、ハードコート層の代わりに、荒川化学工業社製ポリウレタンコーティング剤・商品名「ユリアーノW−321」の溶液を使い、ディップコート法で塗布した以外は、実施例1と同様にして、表面に厚さ1.5μmの硬化層を有する釣り糸を作成した。得られた釣り糸の評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】


【0054】
表1の結果から明らかなように、本発明の釣り糸(実施例1〜3)は、いずれも耐久性に優れ、表面の凸凹が激しい物との擦過だけでなく、魚を掛けたときに起こる釣り糸の繊維軸に対して横方向の擦れに対しても摩耗性が改善されることから、全ての擦れに対して均等に優れた耐根擦れ性を持ち、釣り糸として使用したときに、糸の表面に微キズの発生も無く、魚が掛かったときの横方向の擦れに対しても糸切れ擦ることなく、快適に釣りを楽しむことができるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明の釣り糸は、表面にガラスに匹敵する高い耐磨耗性と耐擦傷性を有し、かつ透明性に優れたハードコート層を有するため、繊維軸方向とこれに直交する横方向の擦過に対して均等に優れた耐擦過性を有し、実釣時の根擦れ耐久性が著しく向上した釣り糸を得ることができる。
【0056】
つまり、本発明の釣り糸によれば、海底に存在する凹凸の激しい擦過体に対する繊維軸方向の擦れだけでなく、魚を掛けたときに起こる釣り糸の繊維軸に直交する横方向の擦れに対しても、均等に優れた耐根擦れ性を得ることができることから、釣り糸に擦過を生じる釣り全般に対して好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明で使用する擦過試験機の簡易説明図
【符号の説明】
【0058】
1 釣り糸
2 荷重
3 頂点角度
4 擦過体
5 移動方向
6 フリーローラー
【出願人】 【識別番号】000219288
【氏名又は名称】東レ・モノフィラメント株式会社
【出願日】 平成19年3月29日(2007.3.29)
【代理人】 【識別番号】100104950
【弁理士】
【氏名又は名称】岩見 知典


【公開番号】 特開2008−245535(P2008−245535A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−87995(P2007−87995)