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【発明の名称】 魚の養殖装置
【発明者】 【氏名】新谷 博一

【要約】 【課題】簡易な構成でありながら、網型の生け簀内に新たな海水を常時供給させることができ、生け簀の網目が詰まるのを防ぐと共に生け簀内の海水が古くなるのを防ぐことができる魚の養殖装置を提供することを目的とする。

【解決手段】海中5に沈められる網箱型生け簀2を具備する。かつ、上方開口状の流入口10を有する海水貯め室11と流入口10の周囲に形成され外縁から流入口10に向かって上り勾配として波を流入口10に誘導する波誘導勾配部12とを有する海面7に浮かぶ浮き部材1と、浮き部材1の貯め室11と生け簀2とを連通連結する可撓パイプ3と、を具備する。かつ、浮き部材1は、平面視多角形状であって、各辺に対応して誘導勾配部12は台形状に形成され、かつ、台形の左右斜辺18,18に沿って、波上昇誘導鉛直壁片4が立設される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中(5)に沈められる網箱型生け簀(2)と、上方開口状の流入口(10)を有する海水貯め室(11)と該流入口(10)の周囲に形成され外縁から該流入口(10)に向かって上り勾配として波(6)を該流入口(10)に誘導する波誘導勾配部(12)とを有する海面(7)に浮かぶ浮き部材(1)と、該浮き部材(1)の貯め室(11)と上記生け簀(2)とを連通連結する可撓パイプ(3)と、を具備することを特徴とする魚の養殖装置。
【請求項2】
上記浮き部材(1)は、平面視多角形状であって、各辺に対応して上記誘導勾配部(12)は台形状に形成され、かつ、該台形の左右斜辺(18)(18)に沿って、波上昇誘導鉛直壁片(4)が立設されている請求項1記載の魚の養殖装置。
【請求項3】
上記浮き部材(1)に吊り下げ状に連結されて海中(5)に沈められ海面(7)において上記浮き部材(1)が波の動きに合わせて大きく上下動するのを防ぐ抵抗力発生重り部材(8)を具備する請求項1又は2記載の魚の養殖装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の養殖装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の海中に沈められて使用される養殖装置として、金属製網と繊維製網とを組み合わせて包囲状として生け簀を形成し、海中に沈めた生け簀の中で魚等を養殖するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−305174公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
生け簀を長期間海中に沈めて使用すると、海中の浮遊物や藻等が網目に詰まって生け簀内の海水の流動が非常に悪くなる。すると、生け簀内の海水が腐敗したり酸素不足等を引き起こすため、養殖魚が病気になったり死滅してしまう虞れがある。
【0004】
そこで、本発明は、簡易な構成でありながら、網型の生け簀内に新たな海水を常時供給させることができ、生け簀の網目が詰まるのを防ぐと共に生け簀内の海水が古くなるのを防ぐことができる魚の養殖装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る魚の養殖装置は、海中に沈められる網箱型生け簀と、上方開口状の流入口を有する海水貯め室と該流入口の周囲に形成され外縁から該流入口に向かって上り勾配として波を該流入口に誘導する波誘導勾配部とを有する海面に浮かぶ浮き部材と、該浮き部材の貯め室と上記生け簀とを連通連結する可撓パイプと、を具備するものである。
【0006】
また、上記浮き部材は、平面視多角形状であって、各辺に対応して上記誘導勾配部は台形状に形成され、かつ、該台形の左右斜辺に沿って、波上昇誘導鉛直壁片が立設されている。
また、上記浮き部材に吊り下げ状に連結されて海中に沈められ海面において上記浮き部材が波の動きに合わせて大きく上下動するのを防ぐ抵抗力発生重り部材を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の魚の養殖装置によれば、浮き部材内に流入した海水が、その水位差(ヘッド圧)によって、パイプを通って生け簀内へと流入するので、生け簀の網目に藻や小ゴミや水アカ等が詰まるのを防ぐことができる。しかも、波はほぼ一定の間隔(リズム)で継続して発生するので、生け簀内へは海水を一定間隔で継続して流入させることができ、網目の詰まりは確実に防がれる。しかも、波は自然発生するので、ポンプ等の設備を設けなくてもよく、簡素な構成にすることができると共に、設備コストも抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1〜図4は本発明に係る魚の養殖装置の実施の一形態を示し、海中5に沈められる網箱型生け簀2を備える。生け簀2は、樹脂材や金属線材等を網状に編んで包囲状に形成したものである。
【0009】
また、1は、海面7に浮かぶ浮き部材である。
浮き部材1は、上方開口状の流入口10を有する海水貯め室11と、流入口10の周囲に形成され外縁から流入口10に向かって上り勾配として波6を流入口10に誘導する波誘導勾配部12…とを有する。浮き部材1は、平面視多角形状である。図例の浮き部材1は平面視四角形状を有する。そして、浮き部材1は、平面視四角形状の各辺に対応して、各誘導勾配部12は台形状に形成されている。かつ、浮き部材1は、各誘導勾配部12の外縁から下方に延設された側壁14と、4つの側壁14…から成る包囲部を下端縁から塞ぐように形成される底壁13とを有する。
【0010】
言い換えると、浮き部材1は、四角形状の底壁13と底壁13の四辺から立設された側壁14…と、4枚の側壁14…の上端縁から平面視中央方向へ上り勾配として形成され各々の左右斜辺18,18にて連結状となった台形状の波誘導勾配部12…とを有し、波誘導勾配部12…の上端縁15…が、波6が流入する流入口10を形成する。浮き部材1は、底壁13と4つの側壁14…と4つの波誘導勾配部12…とから一体形成され、その内部に貯め室11を形成する。また、浮き部材1の底壁13の下面に、浮き部材1を海面7に浮かせるための空気を封入した浮き袋部材19が取り付けられる。
【0011】
そして、浮き部材1の貯め室11と生け簀2とが、可撓パイプ3によって連通連結されている。可撓パイプ3の上端3aは、浮き部材1の底壁13(あるいは、側壁14の下部)に形成した孔部から貯め室11に挿入されて連通している。可撓パイプ3の下端3bは、生け簀2に形成した孔部から内部20に挿入されて連通している。可撓パイプ3は、海水の流動により浮き部材1と生け簀2の位置関係・間隔が変化するのに伴って柔軟に可撓するフレキシブル性を有し、かつ耐蝕性を有するゴム等から成る。
【0012】
また、浮き部材1は、台形の波誘導勾配部12の左右斜辺18,18に沿って波上昇誘導鉛直壁片4,4が立設されている。即ち、隣り合う波誘導勾配部12,12の連結部の斜辺18に長手方向に沿って、一枚の帯板状の誘導鉛直壁片4が付設されており、四角形状の浮き部材1には計4枚の誘導鉛直壁片4…が付設される。各波誘導勾配部12の下端に達した波6が、両サイドの一対の誘導鉛直壁片4,4にガードされて(誘導されて)流入口10に流入する。仮に誘導鉛直壁片4が付設されていなければ、一の波誘導勾配部12を上った波6が、流入口10に達する前に、斜辺18を横断して、隣接する波誘導勾配部12へと逸れてしまる虞れが大きく、貯め室11内に海水が流入しなくなってしまう。
なお、浮き部材1は、平面視三角形状や五角以上の多角形状に形成されてもよい。即ち、三角形状の場合は、三角形状の底壁13と3面の側壁14…,誘導勾配部12…を有し、かつ、3枚の誘導鉛直壁片4…が付設される。五角形状以上の場合についても、夫々の形状に応じて形成される。
【0013】
また、浮き部材1には、海中5に沈められ海面7において浮き部材1が波の動きに合わせて大きく上下動するのを防ぐ抵抗力発生重り部材8が吊り下げ状に連結されている。重り部材8は、浮き部材1の下方に略水平状(底壁13の下面に平行状)でもって海中5に沈められる抵抗板8aと、抵抗板8aの上面と底壁13の下面とを連結する複数本(図例では2本)の硬質の連結杆8b…とを具備し、浮き部材1と抵抗板8aとは位置関係が不変となるように保持される。
【0014】
海面7に浮かべられた浮き部材1は、海面7の激しい波の(上下方向等の)力を受けるが、抵抗板8aが、海中5において上面側・下面側から抵抗力を受けており、絶対的な上下の位置がほとんど不変である(図3参照)。従って、浮き部材1は、海面7が波打っても、ほとんどつられず(影響されず)、位置変動が抑えられる。そして、波6が、浮き部材1の波誘導勾配部12を上り易く、流入口10へと非常に効率よく流入する。抵抗板8aは数十キログラムの樹脂製板材や、鉄板を防蝕処理したもの等である。
なお、浮き部材1がどの程度の深さまで沈んだ状態で浮かぶのかについて述べると、穏やかな状態の海面7が、浮き部材1の誘導勾配部12の外縁より僅かに上部に達する程度が好ましい。
【0015】
そして、本発明の養殖装置の使用について説明すると、海中5に沈められた生け簀2の内部20には養殖魚等が入っている。そして、浮き部材1の周囲で波6が常時発生しており、海面7が波打つことで、波6が浮き部材1の各波誘導勾配部12を上昇していく。このとき、波6は、一対の誘導鉛直壁片4,4にガードされて(誘導されて)流入口10に流入する(図4参照)。誘導鉛直壁片4により、波6が隣の誘導勾配部12へ逃げることなく流入口10へと誘導されるので、海面5が穏やかな(小波しか発生しない)状態であっても、効率よく波6を貯め室11内に流入させることができる。
【0016】
そして、浮き部材1の貯め室11内はパイプ3を介して海中5と連通しているため、貯め室11内は、海水が(パスカルの法則で説明されるように、)海面7と同じ水位の水面17(以下、基本水面17aとよぶ。)まで満たされている。そのため、上述のように貯め室11内に海水が流入した直後には、水位が一時的に基本水面17aよりも上昇するが(図2参照)、その後、図3のように、貯め室11内の水面17が基本水面17aになるまで、海水がパイプ3から流出する。そして、貯め室11内から流出した海水が、パイプ3を通って生け簀2の内部20へと流入するので、生け簀2の網目に藻や小ゴミや水アカ等が詰まるのが防がれる。波6が、浮き部材1の貯め室11、パイプ3を介して、生け簀2内にほぼ一定の間隔(リズム)で継続的に流入するので、網目が詰まることが確実に防がれる。
また、図2において、流入口10から貯め室11内に餌を入れると、餌が、海水と共に生け簀2の内部20へと流入するので、海中5に潜ることなく、餌を与えることも可能となる(図示省略)。
【0017】
以上のように、本発明に係る魚の養殖装置は、海中5に沈められる網箱型生け簀2と、上方開口状の流入口10を有する海水貯め室11と流入口10の周囲に形成され外縁から流入口10に向かって上り勾配として波6を流入口10に誘導する波誘導勾配部12とを有する海面7に浮かぶ浮き部材1と、浮き部材1の貯め室11と生け簀2とを連通連結する可撓パイプ3と、を具備するので、貯め室11内に流入した海水が、その水位差(ヘッド圧)によって、パイプ3を通って生け簀2内へと流れて、生け簀2の網目に藻や小ゴミや水アカ等が詰まるのを防ぐことができる。しかも、波6はほぼ一定の間隔(リズム)で継続して発生するので、生け簀2内へ海水を一定間隔で継続して流入させることができ、網目の詰まりは確実に防がれる。また、波は自然発生するので、ポンプ等の設備を設けなくてもよく、簡素な構成にすることができると共に、設備コストも抑えることができる。
また、浮き部材1は波誘導勾配部12を有するので、小波であっても波6を効率よく流入口10へと誘導できる。
【0018】
また、浮き部材1は、平面視多角形状であって、各辺に対応して誘導勾配部12は台形状に形成され、かつ、台形の左右斜辺18,18に沿って、波上昇誘導鉛直壁片4が立設されているので、波6は、誘導鉛直壁片4によりガードされて、隣の誘導勾配部12へと逃げることなく流入口10へと誘導される。よって、海面5が穏やかな(小波しか発生しない)状態であっても、波6を効率よく貯め室11内に流入させることができ、生け簀2内への海水の供給を、確実に継続して行わせることができる。
【0019】
また、浮き部材1に吊り下げ状に連結されて海中5に沈められ海面7において浮き部材1が波の動きに合わせて大きく上下動するのを防ぐ抵抗力発生重り部材8を具備するので、海面7が波打っても、浮き部材1は波の動きにほとんどつられず(影響されず)、絶対的な位置における(上下の)変動を抑えることができる。よって、波6が、浮き部材1の波誘導勾配部12を上り易く、効率よく流入口10へと流入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る魚の養殖装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】一部断面要部側面図である。
【図3】一部断面要部側面図である。
【図4】説明用要部斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 浮き部材
2 生け簀
3 可撓パイプ
4 誘導鉛直壁片
5 海中
6 波
7 海面
8 重り部材
10 流入口
11 貯め室
12 誘導勾配部
18 斜辺
【出願人】 【識別番号】507055578
【氏名又は名称】鬼塚 和子
【出願日】 平成19年2月20日(2007.2.20)
【代理人】 【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣


【公開番号】 特開2008−199945(P2008−199945A)
【公開日】 平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願番号】 特願2007−38846(P2007−38846)