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【発明の名称】 頭蓋内血管傷害非ヒト動物モデルおよびその作製方法
【発明者】 【氏名】島村 宗尚

【氏名】佐田 政隆

【氏名】若山 幸示

【氏名】森下 竜一

【要約】 【課題】頭蓋内血管障害をもつが脳梗塞を生じない動物モデルおよびそのような動物モデルを高い生存率で作出できる方法の提供。

【解決手段】頭蓋内血管に挿入可能でかつ挿入された血管部分を拡張しうる外径のエポキシ樹脂被覆層を有するナイロン糸からなる塞栓糸を、非ヒト動物の一過性血流遮断下の頭蓋内血管に挿入し、1〜5分間の所定時間留置した後、抜き取り、血流再開する、非ヒト動物における頭蓋内血管傷害モデルの作製方法。このモデルは、留置後の自然飼育において、頭蓋内血管の再狭窄を生じるが脳梗塞は生じない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋内血管に挿入可能でかつ挿入された血管部分を拡張しうる外径のエポキシ樹脂被覆層を有するナイロン糸からなる塞栓糸を、非ヒト動物の一過性血流遮断下の頭蓋内血管に挿入し、1〜5分間の所定時間留置した後、抜き取り、血流再開する、非ヒト動物における頭蓋内血管傷害モデルの作製方法。
【請求項2】
前記塞栓糸の留置される頭蓋内血管が、後交通動脈分岐部から中大脳動脈分岐部までの頭蓋内内頚動脈である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非ヒト動物がラットであり、前記外径が0.5〜0.7mmである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記非ヒト動物が、前記留置後の自然飼育において、頭蓋内血管の再狭窄を生じるが脳梗塞は生じない請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記非ヒト動物が、前記留置後の自然飼育において、少なくとも1月間、脳梗塞を病因として致死しない請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により作製された非ヒト動物における頭蓋内血管傷害モデル。
【請求項7】
頭蓋内血管再狭窄モデルである請求項6に記載の頭蓋内血管傷害モデル。
【請求項8】
請求項6または7に記載の頭蓋内血管傷害モデルを用いる頭蓋内血管傷害の評価方法。
【請求項9】
請求項6または7に記載の頭蓋内血管傷害モデル頭蓋内血管傷害モデルに被験物質を適用し、頭蓋内血管傷害への影響を検定するスクリーニング方法。
【請求項10】
頭蓋内血管に挿入可能でかつ挿入された該血管部分を拡張しうる外径のエポキシ樹脂被覆層をナイロン糸の一端側に所定長さ有する、非ヒト動物の頭蓋内血管傷害モデルを作製するための塞栓糸。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、頭蓋内血管傷害非ヒト動物モデル、その作製方法、そのための塞栓糸、頭蓋内血管傷害の評価方法および薬物のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
頭蓋内血管動脈硬化性狭窄は、脳梗塞の重要な一因であり、脳血管障害の患者の8〜10%に見られる。現時点での治療の主流は、抗血小板療法、抗凝固療法、高血圧、高脂血症、糖尿病などのリスク管理であり、現在バイパス術の効果も検討されている。そのようななかで、バルーンカテーテル、ステントを用いた頭蓋内血管形成術は処置として選択されるものであり、臨床で少しずつ検討されている。しかし血管形成後の動脈解離と動脈再狭窄(30〜50%)が見られ、頭蓋内血管形成術の臨床適用への妨げとなっている。このため、脳血管障害の有効な予防・治療法を確立するため、脳血管病変のメカニズム解明、薬物の有効性試験に適用しうる脳血管傷害動物モデル、特に扱いやすいラットなどの小動物モデルが早急に必要とされている。
【0003】
従来、小動物モデルにおける血管障害モデルとして、たとえば末梢血管での再狭窄ラットモデル(特許文献1など参照)、バルーンカテーテルを用いてウサギの耳の中心動脈に血管障害モデルを作製する方法、頚動脈へのカテーテル導入による血管傷害ラットモデル(特許文献3〜4など参照)などが知られている。しかしながら頭蓋内脳動脈は、外膜が薄い、外弾性板が存在しない、脳脊髄液に囲まれるなど特殊な血管であり、頭蓋内動脈の構造は頭蓋外動脈とはまったく異なるため、頭蓋外血管障害のこれらモデルが頭蓋内血管傷害モデルとして適用可能であるかはまったく不明である。
【0004】
頭蓋内血管傷害モデルとしては、重度複合免疫不全を呈するSCIDマウスについて、脳の血管(中大脳動脈)結紮による脳梗塞疾患モデルの提案がある(特許文献5参照)。
【0005】
通常のWistar系ラットを用いた脳梗塞モデルの報告もある(非特許文献1参照)。具体的に、4−0ナイロン糸に歯科用印象剤(バイエル日本歯科KK社,キサントプレイン)を被覆して作製した直径0.2〜0.3mmの塞栓を、総頚動脈より内頚動脈に挿入し、中大脳動脈分岐部を超えて閉塞し、一定時間留置した後抜去し、総頚動脈を結紮したまま血流再開を試みている。ここでは、上記塞栓を2〜6時間留置したラットを、血流再開2時間後に屠殺して、脳梗塞の海綿状状態を観察している。またここには、塞栓を留置した中大脳動脈分岐部付近の血管の内径について、中大脳動脈分岐部前の内頚動脈が約0.3mm、前・中大脳動脈は共に約0.2mmであること、6時間閉塞した動物では、再開後1時間50分で死亡した動物がいたことなどが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特表平11−500125
【特許文献2】特表2006−75150
【特許文献3】特開平11−199506
【特許文献4】特表2005−523327
【特許文献5】特開2005−287430
【非特許文献1】小泉ら,「虚血性脳浮腫の実験的研究 第1報 ラットを用いた血流再開可能な脳梗塞モデル」,脳卒中,1986:2,第8巻1号,8:1−8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、頭蓋内動脈構造は頭蓋外動脈とはまったく異なり、頭蓋内動脈での再狭窄のメカニズム解明、治療法の開発が必要である。このための頭蓋内血管障害をもつが脳梗塞を生じない動物モデルおよびそのような動物モデルを高い生存率で作出できる方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記のような課題を解決するために鋭意検討したところ、非ヒト動物の中大脳動脈分岐部付近の血管の内径(ラットで約0.2〜0.3mm)よりも大きめの所定の径をもつエポキシ樹脂被覆ナイロン糸を、1〜5分間という極めて短い時間留置した後抜去することにより、頭蓋内血管障害モデルを得ることができることを見出した。さらに、この留置による損傷後、新生内膜過形成における中膜細胞アポトーシスの急激な発現を示すことを確認し、また長期にわたり脳梗塞を発症して致死することのない再狭窄モデルであることを確認し、本発明を完成するに至った。本発明によれば、操作性のよい、安価な塞栓糸を用いて効率よく頭蓋内血管障害モデルを作製できる。また本発明に係る生存モデルは、頭蓋内動脈における血管形成術後再狭窄に新規な識見をもたらすであろう。特に、末梢動脈とは構造の異なる頭蓋内脳動脈における再狭窄のメカニズムが解明できれば、そのメカニズムに対応した薬物の開発が可能になる。また、頭蓋内脳動脈における新生内膜の形成を抑制できる薬物のスクリーニングにも応用可能であり、医薬分野での応用範囲は広いと考えられる。したがって以下のような本発明が提供される。
【0009】
本発明は、頭蓋内血管に挿入可能でかつ挿入された血管部分を拡張しうる外径のエポキシ樹脂被覆層を有するナイロン糸からなる塞栓糸を、非ヒト動物の一過性血流遮断下の頭蓋内血管に挿入し、1〜5分間の所定時間留置した後、抜き取り、血流再開する、非ヒト動物における頭蓋内血管傷害モデルの作製方法である。
上記塞栓糸の留置される頭蓋内血管は、具体的に、後交通動脈分岐部から中大脳動脈分岐部までの間の頭蓋内内頚動脈である。
【0010】
本発明における非ヒト動物は、好ましくは、ラットまたはマウスである。本発明の好ましい態様において、非ヒト動物はラットであり、この場合、上記塞栓糸のエポキシ樹脂被覆層部分の外径は、通常0.4〜1mm、好ましくは0.5〜0.7mmである。
非ヒト動物がマウスの場合、上記塞栓糸のエポキシ樹脂被覆層部分の外径は、通常、0.2〜0.5mmである。
【0011】
本発明において、上記非ヒト動物は、上記塞栓糸の留置後の自然飼育において、頭蓋内血管の再狭窄を生じるが脳梗塞は生じない。
また非ヒト動物は、上記留置後の自然飼育において、少なくとも1月間、脳梗塞を病因として致死しない。
【0012】
本発明では、上記方法により作製された非ヒト動物における頭蓋内血管傷害モデルを提供する。
本発明に係るモデルは、具体的に頭蓋内血管再狭窄モデルである。特に好ましくは頭蓋内血管再狭窄ラットモデルである。
【0013】
本発明に係るモデルは、新生内膜過形成の機構検討、メカニズムの解明、予防・治療薬の開発などに有用である。
したがって本発明では、上記頭蓋内血管傷害モデルを用いる頭蓋内血管傷害の評価方法も提供することができる。一例として、上記頭蓋内血管傷害モデルを用いて頭蓋内血管傷害を予防・治療するための薬物の評価方法を提供することができる。薬物としては、頭蓋内血管傷害を予防・治療するための薬物が挙げられる。たとえばシロリムス、スタチン、NF−κBデコイなどの公知の薬物であってもよい。
【0014】
また、上記頭蓋内血管傷害モデルに被験物質を適用し、頭蓋内血管傷害への影響を検定するスクリーニング方法も提供することができる。上記頭蓋内血管傷害モデルの頭蓋内血管傷害を予防・治療するために用いられる薬物をスクリーニングするための使用も提供することができる。
【0015】
本発明では、頭蓋内血管に挿入可能でかつ挿入された該血管部分を拡張しうる外径のエポキシ樹脂被覆層をナイロン糸の一端側に所定長さ有する、非ヒト動物の頭蓋内血管傷害モデルを作製するための塞栓糸も提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る塞栓糸は、簡素な構造で安価でかつ操作性もよい。本発明によれば、非ヒト動物、特に研究動物として有用であっても頭蓋内血管の微細な齧歯類においても、血管内皮傷害を操作性よく生じさせることができ、したがって頭蓋内血管傷害モデル、典型的に再狭窄モデルを効率よく作製することができる。
本発明で提供される頭蓋内血管傷害モデルは、再狭窄は生じるが、再狭窄は脳梗塞への進行には至らず、すなわち虚血による致死を免れるので、再狭窄メカニズムの研究、病態研究、予防・治療のための薬物スクリーニングのための再狭窄状態で生存する動物モデルとして極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明では、塞栓糸を、非ヒト動物の一過性血流遮断下の頭蓋内血管に挿入し、所定時間留置した後、抜き取り、血流再開して、非ヒト動物における頭蓋内血管傷害モデルを作製する。
非ヒト動物(以下、単に動物ともいう)としては、ラット、マウス、ハムスター、モルモットまたはウサギなどの小動物が挙げられ、なかでも齧歯類のラットまたはマウス、とりわけラットが取扱い易い。
ラットは、7−8週齢程度のWistarあるいはSDラットを使用することができる。
【0018】
本発明に係る塞栓糸は、ナイロン糸基材にエポキシ樹脂を被覆したものである。塞栓糸の外径は、損傷しようとする対象モデル動物によっても異なるが、最終的に頭蓋内血管に挿入可能でかつ挿入された血管部分(留置する頭蓋内動脈部位)を拡張しうる、内径よりも大きい径をもつ。
エポキシ樹脂の種類は特に制限されない。ナイロン糸との密着性がよく、操作性を損なわず、エポキシ樹脂被覆と同等の効果を奏することができれば他の材料を被覆することもできる。エポキシ樹脂は、平滑なナイロン糸の表面に均一に被覆されていることが望ましい。ナイロン糸の表面に液状エポキシ樹脂を被覆した後、紙に開けた所望外径に相当する穴を通過させることにより、所望の外径で均一なエポキシ樹脂被覆層を有する塞栓糸を容易に得ることができる。
【0019】
対象動物がラットの場合には、ナイロン糸は、通常4−0ナイロン糸あるいは3−0ナイロン糸が選ばれ、22〜24Gの針で開けた穴を通すことにより、塞栓糸の外径を0.5〜0.7mmとすることができる。
塞栓糸の長さは対象動物によっても異なるが、ラットの場合には、通常、全長25mm程度、その一端から5mm程度エポキシ樹脂層を形成する。
【0020】
本発明に係る塞栓糸は、特にラットなどの微細な頭蓋内血管に操作性よく挿入することができる。また、エポキシ樹脂は、ナイロン糸との密着性に優れており、挿入および抜去の操作を、エポキシ樹脂がナイロン糸から剥離することなく、確実に行うことができる。
また塞栓糸の径は、留置部位である中大脳動脈分岐部付近の血管よりも大きい径を有し、たとえばラットの中大脳動脈分岐部の血管内径が約0.2〜0.3mmであるのに対し、塞栓糸の径は、通常0.5〜0.7mmと大きいため、頭蓋内血管を拡張させることができる。後述するように新生内膜増殖を引き起こすデバイスとして有用である。
【0021】
本発明において、上記塞栓糸を留置する頭蓋内血管は、通常、後交通動脈分岐部から中大脳動脈分岐部までの間の頭蓋内内頚動脈である。
頭蓋内動脈部位への塞栓糸の留置は、塞栓糸を外頚動脈遠位部から挿入し、内頚動脈を経て上記頭蓋内血管に導入して達成することができる。
本発明では、塞栓糸を頭蓋内動脈部位に所定時間留置した後抜去し、血流を再開する。
【0022】
塞栓糸の留置は、概ね、挿入、留置、抜去操作を含む。図2を参照しながら具体的に説明する。
まず、ハロセンあるいはイソフルレンで吸入麻酔を行った動物の頚正中部より皮膚を切開し、総頚動脈、外頚動脈、内頚動脈を露出させる。
外頚動脈遠位部、総頚動脈および内頚動脈を結紮により一過性に血流遮断下、塞栓糸を上記外頚動脈遠位部に開けた穴より内頚動脈方向に挿入する。
内頚動脈の結紮を緩めて塞栓糸を頭蓋内に向かって進行させ、総頚動脈・内頚動脈分岐部から内頚動脈遠位部と中大脳動脈の分岐部に到達させる。
そこに1〜5分間の所定時間留置する。
その後、塞栓糸をゆっくりと抜き、塞栓糸の先端が外頚動脈遠位部の塞栓糸挿入部位に到達したところで挿入部位を結紮する。
総頚動脈の結紮をゆっくりと緩め、血流を再開させる。
【0023】
上記において、外頚動脈遠位部、総頚動脈および内頚動脈を結紮する糸は適宜に選択することができ、たとえば外頚動脈遠位部は絹糸で、総頚動脈および内頚動脈はナイロン糸で結紮することができる。
【0024】
上記留置の施された動物は、組織学的、分子機構メカニズム解析方法などにより評価される。これらの評価は実施例として後述するが、塞栓糸留置後の動物は、頭蓋内血管の内側面細胞アポトーシスの急激な発現を示し、新生内膜過形成(血管内膜肥厚)による再狭窄が確認されている。すなわち頭蓋内血管の内径よりも大きい塞栓糸の極めて短時間の留置により損傷を生じさせることができる。このような頭蓋内血管損傷による血管変性は、たとえばラットの例では、留置時間1分で、1日目には、頭蓋内脳動脈における内皮細胞の消失、内弾性板、平滑筋層の変性が認められ、7日目には増殖した新生内膜の出現が確認される(図4参照)。14日経過後は、0.2以上の内膜/中膜比(以下、I/M比)として評価される頭蓋内血管の再狭窄が認められる。
【0025】
また本発明において、再狭窄は、ある期間は経時的に進行するが、血管内を閉塞するには至らず、血管内腔が残る。
なお、本発明において、脳梗塞とは、脳血管が閉塞して脳血流が遮断された状態が長く続くことにより脳組織が損傷して死滅することをいう。したがって梗塞の語は、内腔が残り、脳血管内の血流が遮断されることのない狭窄とは別異な傷害または病態として区別して使用される。
【0026】
上記には、留置時間1分の例で説明したが、本発明における頭蓋内血管損傷による血管変性の経時性は、上記所定の留置時間内であればほとんど差異がないといえる。
また本発明の特徴は、上記のような留置の施された動物は、明らかに頭蓋内血管の再狭窄が認められる脳内血管障害モデルであるにも拘らず、その後の自然飼育により、行動学的な挙動は異常がみられないことである。観察された少なくとも1月間は、脳梗塞を発症して致死することがなかった。
【0027】
このように動物における脳内血管障害の生存モデルは、脳内血管障害のメカニズム解明、予防、治療のための薬物の評価、スクリーニング検定などのために有用であり、したがって本発明では上記で作製された脳内血管障害モデル、特に脳内血管再狭窄モデル、ならびに薬物評価、スクリーニングへの使用も提供することができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
<塞栓糸の作製>
25mmの長さの3−0ナイロン糸に、一端から5mmにエポキシ樹脂(クイックメンダー,コニシ(株))を塗布し、直ちに、普通紙に22Gの針で開けた穴に通し、外径0.6mmのエポキシ樹脂被覆ナイロン糸(塞栓糸)を得た。塞栓糸の写真を図1に示す。
【0029】
<損傷>
一過性血流遮断下の頭蓋内血管に塞栓糸を侵入させた。具体的には以下の手順により、総頸動脈を一過性に結紮し、外頸動脈から内頸動脈(ICA)中に塞栓糸を侵入させた。
1)ハロセン麻酔下、Wistar雄ラット(7−8週齢,n=42)の頚正中部より皮膚を切開し、総頚動脈、外頚動脈、内頚動脈を露出させた。
2)外頚動脈遠位部を6−0絹糸で結紮し、総頚動脈、内頚動脈に4−0ナイロン糸をかけ、ペアンでナイロン糸を引っ張り一過性に血流を遮断した。
3)外頚動脈遠位部に22Gの注射針で穴を開け、同部位より特殊ナイロン糸を内頚動脈方向に向け挿入した。
4)内頚動脈にかけられていた4−0ナイロン糸を緩め、塞栓糸を頭蓋内に向かって進行させた。総頚動脈・内頚動脈分岐部から18−20mmの長さまで塞栓糸を進行させることにより、内頚動脈遠位部と中大脳動脈の分岐部に塞栓糸が到達する。
5)塞栓糸を1〜5分間の所定時間留置する。
6)所定時間留置後、塞栓糸をゆるやかに抜去した。
7)塞栓糸の先端が、塞栓糸挿入部位である外頚動脈遠位部に到達したところで挿入部位を6−0絹糸で結紮する。挿入部位より表面に出ている塞栓糸は適当に切断する。
8)最後に総頚動脈にかけられた4−0ナイロン糸をゆっくりと緩め、総頸動脈で遮断していた血流をゆっくりと再開させた。
9)所定時間経過後、組織学的検査(図2参照)のためラットを解剖した。
【0030】
<組織学的検査>
上記傷害モデル作製から所定時間経過の動物を犠牲死させ、ホルマリンで固定し、パラフィン切片を作製した後、頭蓋内脳動脈(内頚動脈遠位部−中大脳動脈分岐部の脳動脈)を染色して評価する。
1)TUNEL染色を図3に示す。図3において、A:2時間後(n=2),B:12時間後(n=2)。
2)HE染色を図4に示す。図4において、A:正常(損傷前),B:1日目,C:7日目,D:14日目,E:28日目,F:56日目。
3)留置時間(1分,5分)によるI/M比(14日目)を図5に示す。
4)抗SMA抗体を用いて平滑筋細胞を免疫染色にて同定した。28日目の染色を図6に示す。図6において、A:SMA像,B:透過像,C:マージ像。
5)抗von Willebrand Factor(以下vWFと略)抗体を用いて血管内皮細胞を免疫染色にて同定した(図7)。図7において、A:正常,B:1日目,C:14日目。
6)抗PCNA抗体を用いて増殖している細胞を免疫染色にて同定した。傷害28日目の染色を図8に示す。図8において、A:PCNA像,B:透過像,C:マージ像。
【0031】
<評価>
上記組織学的検査より以下のとおり新生内膜過形成を確認した。
1.損傷2時間後には傷害血管の中膜にTUNEL陽性細胞が多数出現し、中膜におけるアポトーシスの急激な発現を確認した。12時間後にはTUNEL陽性細胞は急激に減少した。
2.HE染色では、1日経過後に中膜の皮薄化、内弾性板の変性、血管系の著明な拡張が認められ、7日目から新生内膜が出現し、14日目、28日目まで新生内膜の増殖が認められた。28日目以降は増殖が認められなかった。
3.新生内膜の一部は、SMAに対する免疫染色より平滑筋細胞であることが確認された(28日目)。
4.なお、留置時間1分間と5分間では、I/M比に統計的有意差は認められなかった。
5.内皮細胞(抗vWF抗体で染色される細胞)は傷害1日目で消失していたが、14日目には再出現を認めた。
6.PCNAに対する免疫染色では、中膜、新生内膜に増殖細胞が認められた。
【0032】
上記のとおり、α平滑筋アクチンについての免疫組織化学は、平滑筋細胞からなる内膜新生を示した。vWFについての免疫組織化学は、損傷後2週間ですでに内皮細胞の再増殖が観察された。すなわち、頭蓋内内膜新生の過形成(肥厚化)の形成に成功した。また内膜新生形成の時間的プロファイルは頭蓋外動脈のそれと同様であることがわかった。本モデルは、頭蓋内動脈における血管形成術後再狭窄に新規な識見をもたらすであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る塞栓糸の写真である。
【図2】塞栓糸を留置した頭蓋内血管の模式図である。
【図3】頭蓋内動脈のTUNEL染色図である。A:損傷2時間後,B:損傷12時間後。
【図4】損傷前後の頭蓋内動脈のHE染色図である。A:正常,B:1日目,C:7日目,D:14日目,E:28日目,F:56日目。
【図5】損傷14日目における塞栓糸留置時間とI/M比との関係を示す図である。
【図6】損傷28日目の頭蓋内動脈のSMAに対する免疫染色を示す。A:SMA像,B:透過像,C:マージ像。
【図7】頭蓋内動脈のvWFに対する免疫染色を示す。A:正常,B:傷害1日目,C:傷害14日目。
【図8】損傷後28日目の頭蓋内動脈のPCNA免疫染色を示す。A:PCNA像,B:透過像,C:マージ像。
【出願人】 【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
【出願日】 平成18年11月30日(2006.11.30)
【代理人】 【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔

【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子


【公開番号】 特開2008−136388(P2008−136388A)
【公開日】 平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願番号】 特願2006−324331(P2006−324331)