| 【発明の名称】 |
飼育・培養槽 |
| 【発明者】 |
【氏名】石川 陽一
【氏名】岩瀬 光明
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| 【要約】 |
【課題】飼育又は培養に際し液流がない環境が必要な若しくは好適な水生生物や細胞等の対象物を飼育又は培養し得る飼育・培養槽を提供すること。
【構成】上面開口の内槽と、この内槽全体が液面下に収容される外槽とを具備する飼育・培養槽であって、上記内槽の中央部に上下に貫通して設けられ、上端が上記内槽の上面近傍で開口し、下端が上記内槽の底面で開口する筒と、上記筒の下端開口の近傍に設けられた通気手段と、上記内槽の外周囲に形成され、上記筒に連通する上記液の流通域とを備えている飼育・培養槽。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 上面開口で有底の内槽と、この内槽全体を液面下に収容する外槽とを具備する飼育・培養槽であって、 上記内槽の中央部に上下に貫通して設けられ、上端が上記内槽の上面近傍で開口し、下端が上記内槽の底面で開口する筒と、 上記筒の下端開口の近傍に設けられた通気手段と、 上記内槽の外周囲に形成され、上記筒に連通する上記液の流通域とを備えていることを特徴とする飼育・培養槽。 【請求項2】 上記内槽の上面開口を覆い、かつ、上記筒が上下に貫通する通液性の、飼育又は培養する対象物の流出防止部材を、上記筒の上端開口が上記流出防止部材の上面又はそれより上になるように備えていることを特徴とする請求項1記載の飼育・培養槽。 【請求項3】 上記液の流通域の一部である上記内槽の外周面とこの外周面に対向する上記外槽の内周面との間に形成される液の流通域の部分に有害物質の除去手段を備えていることを特徴とする請求項2又は3記載の飼育・培養槽。 【請求項4】 上記外槽の外周面又は上記液の流通域内に、液温を調節する熱交換手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の飼育・培養槽。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、水生生物や細胞等の飼育・培養槽、特に、飼育又は培養に際し液流がない環境が必要な若しくは好適な水生生物や細胞等の対象物の飼育又は培養に用いられる飼育・培養槽に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、水生生物や細胞等の飼育又は培養において、飼育液や培養液への酸素の供給法として、上記水生生物や細胞等の損傷を避けるために、機械的撹拌を併用しない通気のみによる方法があり、その一つとしてエアーリフト方式を採用して飼育又は培養する装置が知られている(例えば、特許文献1及び2等参照)。 また、上記エアーリフト方式による場合においても、例えば、水生生物のミジンコ(水生微小生物)の飼育又は培養では、水流(液流)が速いとその生物体の一部が死滅し、増殖が阻害されることがあるので、この障害をなくすために、エアーリフト方式を採用しつつも、緩やかな水流を起こす緩水流発生装置を備えた飼育・培養装置が知られている(例えば、特許文献3等参照)。 【0003】 特許文献1 特開2005−261341号公報 特許文献2 特開平7−67625号公報 特許文献3 特開2002−125509号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、上記した従来の飼育・培養装置では、飼育液や培養液の液流がない環境が必要な水生生物や細胞等の対象物の飼育又は培養が困難である。すなわち、例えば、遊泳力が弱いクリオネ等の水生生物を飼育する場合では、弱い液流でも押し流されてしまうことがあったり、更には、この液流や通気による気泡がストレスを与えたり、また、例えば、動物や植物の胚等の細胞を培養する場合では、液流の剪断力で細胞が変形したり、壊死したりする等という問題点がある。 【0005】 本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、飼育又は培養に際して液流がない環境が必要な若しくは好適な水生生物や細胞等の対象物を飼育又は培養し得る飼育・培養槽を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、 (1)飼育・培養槽を、その内部で上記対象物を飼育又は培養する上面開口の内槽と、この内槽全体を液面下に収容する外槽とを備えた二重槽にすること、 (2)内槽の中央部には、上下に貫通し、両端開口で、その下端開口の近傍に通気手段を有する筒を設けること、及び (3)内槽の外周囲には、エアーリフト作用によって筒内を上昇した液が循環する流通域を設けること 等により、液面下の内槽の上面近傍において、筒の上端開口から流出した新たに酸素が供給された液が内槽の上部の液等と連続的、かつ、部分的に入れ替わり、そして、この酸素の豊富な液は、液流ではなく、拡散作用で内槽の上面近傍以外の液流がない内槽内の液と徐々に入れ替わる等して、内槽内に液流がない飼育又は培養に好適な環境をつくり出すことができること等の新知見を得、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。 【0007】 すなわち、本発明の飼育・培養槽は、上面開口で有底の内槽と、この内槽全体を液面下に収容する外槽とを具備する飼育・培養槽であって、 上記内槽の中央部に上下に貫通して設けられ、上端が上記内槽の上面近傍で開口し、下端が上記内槽の底面で開口する筒と、 上記筒の下端開口の近傍に設けられた通気手段と、 上記内槽の外周囲に形成され、上記筒に連通する上記液の流通域とを備えていることを特徴とする。 【0008】 また、本発明の飼育・培養槽の好適形態は、上記内槽の上面開口を覆い、かつ、上記筒が上下に貫通する通液性の、飼育又は培養する対象物の流出防止部材を、上記筒の上端開口が上記流出防止部材の上面又はそれより上になるように備えていることを特徴とする。 【0009】 更に、本発明の飼育・培養槽の他の好適形態は、上記液の流通域の一部である上記内槽の外周面とこの外周面に対向する上記外槽の内周面との間に形成される流通域の部分に有害物質の除去手段を備えていることを特徴とする。 【0010】 そしてまた、本発明の飼育・培養槽の更に他の好適形態は、上記外槽の外周面又は上記液の流通域内に、液温を調節する熱交換手段を備えていることを特徴とする。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、エアーリフト方式を採用し、上記対象物が飼育又は培養される液面下の上記内槽の上面近傍で、上記通気手段によって上記筒内を上昇し流出した新たに酸素が供給された液が内槽の上部の液と連続的、かつ、部分的に入れ替わるようにし、更に、この酸素の豊富な液は、拡散作用で内槽の上面近傍以外の液流がない内槽内の液と徐々に入れ替わるようにする等としたため、飼育又は培養に際して液流がない環境が必要な若しくは好適な水生生物や細胞等の対象物を飼育又は培養し得る飼育・培養槽を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 以下、本発明の飼育・培養槽につき詳細に説明する。 【0013】 本発明の飼育・培養槽は、飼育又は培養に際し液流がない環境が必要な若しくは好適な水生生物や細胞等の対象物の飼育又は培養に用いられる。 上記の飼育又は培養する対象物としては、特に限定されないが、例えば、クリオネ、クラゲ、動植物の胚細胞や器官等が挙げられる。 なお、本発明のおいて、「液流がない」とは、液流が殆どないを含めた実質的に液流がないことを意味する。 【0014】 本発明の飼育・培養槽は、内槽と外槽とを具備する二重槽であり、上記対象物は、この内槽内で飼育又は培養される。 上記内槽は、その上面(上端面)が全面開口で有底のものであって、この内槽全体が上記外槽内の液面下に収容されている。このようにして収容するのは、後記のごとく、エアーリフト作用によって上記外槽内の上記内槽の外周囲に形成される液の流通域に循環流を円滑に生起させるためであり、このときの液面から内槽の上面までの深さは特に制限されない。 上記内槽と外槽の形状についても特に制限されないが、内槽と外槽とは相似しているのが好ましく、また、水平断面が円形のものが好適である。 なお、上記内槽及び外槽の材料についても、特に限定されず、例えば、ガラス、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂、ステンレス鋼等、適宜のものが選択、使用される。 【0015】 上記内槽の中央部には、適宜の径を有するエアーリフトのための筒が上下に貫通して設けられていて、その筒の上端は内槽の上面近傍で開口し、下端は内槽の底面で開口している。 なお、上記筒の上端開口の位置を上記内槽の上面近傍とするのは、その位置が内槽の上面より上の上記外槽内の液面より若干上の場合で、この上端開口から液が溢流の状態で流出するときには許容されるが、更にその上の位置では、筒内の上部で気液が分離して液の流出が少なくなるか、あるいはないため、後記する液の循環流が円滑に生起されず、また、内槽の上面より下の低い位置では、内槽内に乱流が生じ、目的とする環境をつくり出すのが困難になる等の理由からである。 また、上記筒の材料についても、上記内槽及び外槽と同様のもの等、適宜のものが使用される。 【0016】 上記筒の下端開口の近傍に設けられる上記通気手段としては、外部の加圧空気供給源、例えば、エアーポンプ、エアーコンプレッサー等から供給された加圧空気を気泡化するものであればよく、通常のものが好適に使用されるが、その気泡発生部材としては、例えば、ノズル、エアーストーン、各種スパージャー(多孔ノズル)等が挙げられる。 また、上記気泡発生部材への加圧空気の送給は、上記外槽の底面を貫通する送給管、あるいは、上記筒の上方から筒内に挿設された送給管等を介して行われる。 なお、上記通気手段の取り付け位置である上記筒の下端開口の近傍とは、筒内の下部、あるいは、上記筒の下方で開口部の近辺等をいい、発生した気泡が筒内に誘導され得る位置であればよい。 【0017】 上記内槽全体を上記外槽内の液面下に設置して収容するに際しては、内槽の外周面(外側面及び外底面)とこの外周面に対向する外槽の内周面(内側面及び内底面)との間に適宜の間隔が確保され、そして、内槽の外周囲、すなわち、内槽の上面上方及び外周(外側面及び外底面の外方向)に液の流通域が形成される。 更に、この液の流通域は、上記筒に連通して、槽全体としての液の流通域が形成される。 【0018】 上記構成により、上記液は、上記通気手段によって酸素が供給(溶解)されると共に、通気によって発生する気泡で上記筒内を下部から上昇(エアーリフト作用)して筒の上端開口から上記内槽の上面近傍の流通域の液中に流出し、そして、その周辺では、酸素が新たに供給された液が内槽の上部の液等と連続的、かつ、部分的に入れ替わる。更に、上記液は、上記内槽の上端縁から内槽の外周の液の流通域を下降流、水平流になって上記筒の下端開口に達し、以降、上記の状態が連続的に繰り返され、液の流通域では循環流が生起されることになる。 このようにして、上記内槽の上面近傍において、部分的ではあるが連続的に入れ替わった酸素が新たに供給された液は、拡散作用により、内槽の上面近傍以外の液流がない内槽内の液と徐々に入れ替わり、液流がない飼育又は培養に好適な環境がつくり出される。 【0019】 また、上記筒の材料として多孔質のもの(例えば、多孔質合成樹脂(多くの孔をあけた塩化ビニル樹脂製パイプ、合成樹脂製不織布を筒状に成形したもの等)、焼成セラミック等)、各種濾材(合成樹脂製濾材を筒状に成形したもの等)を用いたり、あるいは、上記筒の側面に上記内槽内に貫通するが実質的に液流が生じないような細隙(スリット)を設けたりすることもでき、このことによって、拡散作用で、この筒内の酸素が供給された液と内槽内の液とが徐々に入れ替わる等という利点がある。 そしてまた、上記筒の材料としてガス透過性のもの(例えば、シリコンゴム製チューブ等)を用いたり、上記筒の側面に設けた上記内槽に通じる開口部にガス透過性膜(例えば、シリコンゴム製等)を取り付けたり、更には、内槽内の底部に管状のガス透過性膜(例えば、シリコンゴム製等)を配置し、これに外部から酸素を送給したり等して、飼育又は培養の環境域により多くの酸素を供給することもできる。 なお、上記筒の場合と同様の目的で、上記内槽の材料として、剛性の多孔質やガス透過性のものを用いたり、また、内槽の周面(側面及び底面)にスリットを設けたり、更には、この周面に設けた開口部にガス透過性膜を取り付けたり等することもできる。 【0020】 上記飼育・培養槽において、上記内槽を上記外槽内で支持する方法等については、上記液の循環流が確保されるものであればよく、特に制限されないが、例えば、外槽及び内槽に対して着脱自在の支持部材(例:載置台)、あるいは、内槽の外周面又は外槽の内周面に固定された支持部材等により、内槽が外槽内の一定位置に取り外し可能に配置される。 【0021】 また、上記外槽の上面は、必要により、蓋体が覆設され、更に、この蓋体には、通気口や通気用除菌フィルター等を設けることもできる。 そしてまた、上記飼育・培養槽には、液の供給及び排出のための適宜の手段が設けられる。この場合、液の供給口や排出口は、上記内槽内に液流が生じない適宜の位置に設けられる。 更に、細胞等の対象物の無菌培養に際しては、滅菌処理され得る飼育・培養槽が用いられることは勿論のこと、空気及び液の供給及び排出系も亦、常法により無菌状態が確保されたものが用いられる。 更にまた、本発明の飼育・培養槽が給餌飼育又は給餌培養に用いられる場合には、上記内槽内の液流がない環境域に必要時に餌料を投入する適宜の餌料供給手段が設けられる。 【0022】 次に、本発明の飼育・培養槽において、上記内槽の上面が、上記のごとく、全面開口になっているので、飼育又は培養する対象物の一部が内槽外に流出したり、更には、内槽上面近傍の泡に接触してこの対象物が損傷を受けたり等することがある。 このような場合には、上記内槽の上面開口を通液性の、飼育又は培養する対象物の流出防止部材で覆う(仕切る)のが好適である。 このとき、上記流出防止部材は、上記筒がその上下に貫通し、そして、筒の上端開口がこの流出防止部材の上面又はそれより上になるように設けられる。 【0023】 このように構成することにより、上記筒の上端開口から上記流出防止部材の上面又は上方に流出した液は、この流出防止部材の近傍で内槽内の液と連続的、かつ、部分的に入れ替わると共に、内槽内の飼育又は培養する対象物の内槽外への流出が防止され、更には、この対象物が、筒の上端開口から流出する液に含まれる泡に接触するのも防ぐことができる。 【0024】 上記の飼育又は培養する対象物の流出防止部材は、通液性、すなわち、液が自由に通過できる性質を有する適宜の厚さのシート(薄板)状のものであって、その例としては、発泡樹脂(例えば、ポリウレタンフォーム等)、不織布等の多孔体、メッシュの細かい網等が挙げられる。 なお、上記流出防止部材の取り付け方法については、適宜の方法を採用すればよく、例えば、上記筒に接着剤等で固定する方法、上記内槽の上面周縁又は内壁に接着剤や支持部材で固定する方法、内槽の内壁や筒の上部に着脱自在に嵌合する方法等が挙げられる。 また、上記流出防止部材を上記内槽の上端縁面に載置して内槽の上面開口を覆うような場合には、流出防止部材の周縁を延長させて上記外槽の内周面に接するように設けてもよい。 【0025】 更に、本発明の飼育・培養槽を用いて対象物を飼育又は培養するに際し、アンモニア、有機酸等の代謝産物(水溶性の有害物質)、固形汚染物(排泄物、餌料の残物等)等の有害物質(老廃物)により、上記内槽内の飼育又は培養の環境域の液を含む全体の液が徐々に汚染されたりすることがある。 そもそも本発明の飼育・培養槽は、その使用に際して、対象物が飼育又は培養される上記内槽の液量の他に、循環流を生起させるための液量が用いられていることから、従来の飼育・培養装置に比較して、多量の液が用いられていることになり、有害物質濃度は希釈されるという利点を有している。 上記のことを更に改善する本発明の飼育・培養槽の形態の一つとして、上記液の流通域の一部である上記内槽の外周面とこの外周面に対向する上記外槽の内周面との間に形成される液の流通域(循環流の下降流部分と水平流部分)の部分に有害物質の除去手段を備えるのが好適である。 【0026】 通常は、上記内槽内の液のように、液流がない場合には、除去手段を用いて有害物質を除くことは非能率的、あるいは、困難である。 ところが、本発明の飼育・培養槽においては、徐々に入れ替わる内槽の汚染された液がエアーリフト作用で生起された液の循環流に含まれることになるので、この流れの力を利用して循環流の液を有害物質の除去手段で処理すれば、液より有害質物を連続して除いていくことができ、以て飼育又は培養の環境域は勿論のこと、系全体の液の浄化が図られ、極めて有効である。 【0027】 上記有害物質の除去手段としては、特に制限されず、上記対象物の飼育又は培養中に液に含まれるようになる有害物質に対応する除去手段が適宜採用される。 具体例としては、アンモニアや有機酸等の水溶性の有害物質の場合には、活性炭やゼオライト等による物理的又は化学的吸着、固定化微生物(不溶性担体に担持されるか、又は内部空間に閉じ込めれた微生物)による資化等の除去手段が、固形汚染物の場合には、物理的濾過等の除去手段が用いられる。 【0028】 上記有害物質の除去手段の設置方法等については、特に制限されないが、例えば、上記液の流通域のある部分に、上記循環流の液の一部又は全部を通過させて処理する上記除去手段(例えば、内槽と外槽の形状が水平断面円形の場合には、ドーナツ状の形状のもの等)を適宜の支持部材等を介して設ける等すればよい。 なお、上記の飼育又は培養する対象物の流出防止部材にも上記水溶性の有害物質の除去手段と同様の機能をもたせることもできる。 【0029】 更にまた、本発明の飼育・培養槽の他の形態として、上記外槽の外周面又は上記液の流通域内に、液温を調節する熱交換手段を備えるのが好適である。 一般に、対象物を飼育又は培養する際の液温をある範囲に調節する際には、飼育又は培養する液を直接循環させたり、撹拌したり等する方法が採用される。 しかしながら、これらの方法は、本発明のごとく、液流がない環境域の液温を調節する場合には採用することができない。 本発明の飼育・培養槽においては、上記外槽内の上記液の流通域内に循環流があるので、この循環流の液温を調節することにより、液流がない内槽内の液温を一定範囲に容易に維持することができる。 【0030】 上記熱交換手段としては、上記外槽の外周面(外側面及び外底面)に設ける場合には、この外周面に接する各種のヒーターやクーラー等が、また、上記液の流通域内に設ける場合には、投込みヒーター等の熱源や冷却水循環パイプ等の冷却源が挙げられる。 そして、上記循環流又は内槽内の液温センサーからの信号で制御される上記熱交換手段により、外周壁を介して、あるいは、直接、循環流の液温が調節され、その結果、内槽内の液温が一定範囲に維持されることになる。 【0031】 また、冷水域水生生物、例えば、クリオネ等を観賞用として飼育又は培養する場合には、上記飼育・培養槽における外槽の外周面の結露が問題になる。このようなときには、飼育・培養槽の全体を、例えば、外気遮蔽手段(観賞面は空気等の気体が封入された透明な中空体からなるもの等を使用)で仕切られた密閉の空間部内に、少なくともこの外気遮蔽手段の上面及び側面と非接触状態で収容すること等により、その結露が防止される。 【実施例】 【0032】 以下、本発明を図面を参照しつつ更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0033】 (実施例1) 図1は、本発明の飼育・培養槽の一実施例を示す概略断面及び平面図であり、この平面図については、外槽の蓋体を取り外したときのものである。 同図において、飼育・培養槽1は、上面が全面開口で水平断面が円形の内槽2(例:透明な塩化ビニル樹脂製)が、水平断面が円形の外槽3(例:透明な塩化ビニル樹脂製)内に支持部材(図示せず)を介して設置され、内槽2全体が液面下になるように収容されてなるものである。 【0034】 内槽2の中央部には、上下に貫通する筒4(例:透明な塩化ビニル樹脂製)が設けられ、この筒4の上端は、内槽2の上面よりやや低い位置(上面近傍)で開口し、その下端は、内槽2の底面で開口している。 さらに、この筒4の下端開口の近傍には、スパージャー等の通気手段5が設けられ、この通気手段5は空気送給管6を介して、また、必要により、除菌フィルター等を介して、エアーコンプレッサー等の加圧空気供給源(図示せず)に連結されている。 【0035】 内槽2は、外槽3内に取り外し可能に設置されているが、この設置に際しては、内槽2の外周面(外側面及び外底面)とそれに対向する外槽3の内周面(内側面及び内底面)との間に適宜の間隔が確保され、そして、内槽2の外周囲、すなわち、内槽2の上面上方及び外周(外側面及び外底面の外方向)に液の流通域が形成されている。 更に、この液の流通域が筒4に連通して槽全体としての液の流通域が形成され、この液の流通域おいて、エアーリフト作用による液の循環流が生起される。 なお、3aは、外槽3の上面を覆う蓋体であり、これには、必要により、通気口、通気用除菌フィルター等(図示せず)が設けられる。 【0036】 本実施例の飼育・培養槽1の使用例について説明する。 先ず内槽2の全体が液面下になるように液が外槽3内に充填される。 次いで、飼育又は培養する対象物が内槽2内に収容される。 飼育又は培養が開始されると、図1において矢印で示すごとく、液には通気手段5によって酸素が供給(溶解)されると共に、液は通気によって発生する気泡で筒4内を下部から上昇(エアーリフト作用)して筒4の上端開口から内槽2の上面近傍の流通域の液中に流出し、そして、その周辺では、酸素が新たに供給された液が内槽2の上部の液と連続的、かつ、部分的に入れ替わる。更に、液は、内槽2の上端縁から内槽2の外周の液の流通域を下降流、水平流になって筒2の下端開口に達し、以降、上記の状態が連続的に繰り返され、液の流通域では循環流が生起されることになる。 【0037】 このようにして、内槽2の上面近傍において、部分的ではあるが連続的に入れ替わった酸素が新たに供給された液は、拡散作用により、内槽2の上面近傍以外の液流がない内槽2内の液と徐々に入れ替わり、液流がない飼育又は培養に好適な環境がつくり出され、そして、内槽2内の対象物は、正常に飼育又は培養される。 【0038】 (実施例2) 図2は、本発明の飼育・培養槽の他の実施例を示す概略断面図である。 なお、以下の実施例において、上記の実施例の場合と実質的に同一の部材・箇所には同一の符号を付し、その説明を省略する。 図2に示した飼育・培養槽11は、次に記載の通液性の、飼育又は培養する対象物の流出防止部材7を備えていること及び筒14の上端が内槽2の上面よりやや高い位置(上面近傍)で開口していること以外は、実施例1に記載したと同様の構成を有するものである。 【0039】 流出防止部材7は、通液性で薄い板状のスポンジ状多孔体(例:ポリウレタンフォーム)であって、内槽2の上端縁面に載置されて上面開口の全面を覆うように設けられている。 そして、流出防止部材7は、その中央部の上下に貫通する穴に筒14が嵌合されることによって取り付けられており、また、筒14の上端開口は、流出防止部材7の上面より僅かに高く位置している。 【0040】 次に、本実施例の飼育・培養槽11の使用例を示す。 実施例1に記載したと同様にして飼育又は培養が開始されると、筒14の上端開口から流出した酸素が新たに供給された液は、その周辺で通液性で薄い板状の流出防止部材7を介して内槽2の上部の液等と連続的、かつ、部分的に入れ替わる。このとき、流出防止部材7は、内槽2内の飼育又は培養する対象物が内槽2外に流出するのと、この対象物が筒14の上端開口から流出する液に含まれる泡に接触するのとを防ぐ作用を有している 以降、実施例1に記載したと同様にして液の循環流が生起され、また、このようにして内槽2の上面近傍において、部分的ではあるが連続的に入れ替わった酸素が新たに供給された液は、拡散作用により、内槽2の上面近傍以外の液流がない内槽2内の液と徐々に入れ替わり、液流がない飼育又は培養に好適な環境がつくり出され、そして、内槽2内の対象物は正常に飼育又は培養される。 【0041】 (実施例3) 図3は、本発明の飼育・培養槽の他の実施例を示す概略断面図である。 図3に示した飼育・培養槽21は、冷水域水生生物の一種であるクリオネの飼育用に、かつ、観賞用として用いられるものであって、次に記載の有害物質の除去手段8及び熱交換手段9を備えていること並びに蓋体が覆設されていないこと以外は、実施例2に記載したと同様の構成を有するものであり、また、この飼育・培養槽21には、後記する結露防止策が講じられている。 【0042】 有害物質の除去手段8は、液の流通域の一部である内槽2の外底面及びその延長面と外槽3の内底面とで形成される液の流通域に備えられていて、その中心部に筒14より大径の空洞部を有するドーナツ状のものである。そして、この有害物質の除去手段8には、濾材(例:ガラス繊維)が用いられている。 また、循環流の液温センサー(図示せず)からの信号で制御される熱交換手段9として、電子冷却装置(サーモ・クーラー)が、外槽3の外周面である外底面に接して設けられていてその壁を介して循環流の液温が調節される。 なお、飼育又は培養する対象物の流出防止部材7には、実施例2に例示のポリウレタンフォームの代わりに、クリオネは流出しないが、浮遊する排泄物(固形分)は通過、流出するメッシュの網が用いられている。 【0043】 また、飼育・培養槽21は、結露防止のために、外気遮蔽手段50で形成される実質的に密閉の空間部51内に、その槽全体が収容されている。 この外気遮蔽手段50は、透明で円筒状の二重壁からなる中空体の側面区画部材50b(例:透明な塩化ビニル樹脂製)と、側面区画部材50bの上端部が周縁近傍に形成された溝に嵌合される円板状の上面区画部材50a(例:透明又は不透明の塩化ビニル樹脂製)と、側面区画部材50bの下端部が周縁近傍に形成された溝に嵌合されるドーナツ状(輪形)の下面区画部材50c(例:透明又は不透明の塩化ビニル樹脂製)との3区画部材からなり、このドーナツ状の下面区画部材50cの空洞部には外槽3の底部が挿嵌されている。このとき、飼育・培養槽21は、外気遮蔽手段50の上面区画部材50a及び側面区画部材50bの内面に非接触状態で収容されている。 なお、側面区画部材50bの中空体には空気が封入されている。 また、上面区画部材50aの中央には、空気抜き用の細孔52が設けられている。 【0044】 次に、本実施例の飼育・培養槽21の使用例を示す。 先ず、飼育・培養槽21内の液(海水)を、通気をしながら、熱交換手段9によりあらかじめ2〜5℃に冷却、維持しておき、次いで、上面区画部材50aを取り外して内槽2内にクリオネ(図示せず)を入れ、上面区画部材50aを取り付けた後、通気をしながら、飼育を行ない、23〜25℃の室温下でクリオネを観察、観賞した。 遊泳力が弱いクリオネは、液流がない内槽2内で僅かな動き(浮遊)を見せながら、正常な生息が維持された。 【0045】 また、飼育又は培養する対象物の流出防止部材7の下面近傍に浮遊している一部の排泄物は、流出防止部材を通過して有害物質の除去手段8の濾材により除去され、更に、飼育するにつれてこの濾材にアンモニア資化能を有する微生物が着生して代謝産物のアンモニアも除去され、良好な飼育環境が維持された。 なお、外気遮蔽手段50の空間部51内の気体層(液温と略同様の低温における飽和水蒸気)と側面区画部材50bの中空体内の気体(空気)層との2層の気体層の断熱作用により、観察、観賞面である外槽3の外側面の結露が防止され、飼育・培養槽21内のクリオネを良好な状態で観察、観賞できた。 【図面の簡単な説明】 【0046】 【図1】は、本発明の飼育・培養槽の一実施例を示す概略断面及び平面図である。 【図2】は、本発明の飼育・培養槽の他の実施例を示す概略断面図である。 【図3】は、本発明の飼育・培養槽の更に他の実施例を示す概略断面図である。 【符号の説明】 【0047】 1、11、21 飼育・培養槽 2 内槽 3 外槽 4、14 筒 5 通気手段 7 流出防止部材 8 有害物質の除去手段 9 熱交換手段 50 外気遮蔽手段 51 空間部
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| 【出願人】 |
【識別番号】591101490 【氏名又は名称】エイブル株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年9月12日(2006.9.12) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2008−67679(P2008−67679A) |
| 【公開日】 |
平成20年3月27日(2008.3.27) |
| 【出願番号】 |
特願2006−276923(P2006−276923) |
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