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【発明の名称】 ティートカップライナーの搾乳性能低下判定方法及び手段
【発明者】 【氏名】町田 一幸

【要約】 【課題】複雑な装置を使用せずに、ライナーの使用による劣化、特に胴部(ボア部)の永久変形及び弾力性の低下を簡単に測定し、ライナーの交換時期を判断できるようにする方法及び手段を提供する。

【解決手段】搾乳機のティートカップライナーの胴部の先端から約70mmの位置に、軸方向に延びた長方形状の突起からなる測定手段を設け、ティートカップシェルから外した後一定時間内に長方形突起の両端にノギス状の治具をさしわたし突起の両端を挟めるかどうかをみることにより、残留変形が許容地位かであるかどうかを判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳機のティートカップライナーの胴部に縦方向に整列した2個以上の測定ポイントからなる測定手段を設け、ティートカップシェルから外した後一定時間内に前記測定ポイントの間隔を測ることを特徴とするティートカップライナーの搾乳性能の低下判定方法。
【請求項2】
胴部の外周に、縦方向に整列した2個以上の測定ポイントからなる測定手段を有するティートカップライナー。
【請求項3】
前記測定手段が、平面上で90°離れた位置に二組設置されていることを特徴とする請求項1または2記載のティートカップライナー。
【請求項4】
ティートカップライナーの2個以上の測定ポイントの間隔を測定するための測定手段を有するティートカップシェル。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はパイプラインミルカー等に使用されるティートカップライナーの胴部(ボア部)の変形性能に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は牛の乳頭Tに装着された標準的なティートカップの主要部の縦断面図である。ティートカップはティートカップシェル1とそれに嵌装されるティートカップライナー2の二つの部品からなっている。ティートカップシェル1は堅固な金属(例えばステンレス)からなる略円筒形の部材10からなり、上端に大きい開口11を有し、下端に内側へ絞られた小さい開口12を有し、側面下端よりにはパルセータからの真空チューブを接続するための接続口12が設けられている。ティートカップライナー2は天然又は合成ゴムなどの柔軟な材料から一体成形されており、牛の乳頭Tが挿入される頭部21と、シェル1に内嵌される胴部22と、シェル1の下端開口から突出させる延長部23からなっている。
【0003】
ティートカップライナーの頭部21はさらに、乳頭Tが挿入される開口の縁を形成するリップ部25と、該リップ部から連続してシェル1の開口11の縁を保護する略円筒形の肉厚の周縁部26、及び該周縁部26から後方に向かって略円筒形に延出してシェル1の開口11の外周を押えるスカート部27からなっている。胴部22とリップ部25は乳頭Tに直接接する部分であり、比較的薄く成型されており牛体に追従して変形するようになっている。また胴部22と延長部23の境界にはシェル1の開口12と係合される嵌入溝28を有する拡径部29が設けられている。
【0004】
このようなティートカップシェルの開口11にライナー2を下端から挿入し、開口12の縁をライナー2の嵌入溝28に係合させて上端をスカート部21の基部に当接させることにより、ライナーとシェルの間に大気圧から遮断された真空室24を形成する。さらにライナー2の下端(図示せず)をミルククローの所定の接続口に接続し、側部の接続口12にパルセータラインを接続することにより搾乳できる状態となる。真空2系統の搾乳装置においては、ティートライナー内部にはミルククロー内部の調整弁にて一定圧に調整された搾乳用真空圧が供給され、ライナーとシェルで囲まれた真空室24にはパルセータからの脈動真空圧が供給され、これらの差圧でライナーの胴部22を脈動させて搾乳を行う。
【0005】
図2はパイプラインミルカーにおける搾乳時に交互に反復される2つの状態を示す。「搾乳期」と呼ばれる時期にパルセータは真空側に接続され真空室24に真空が供給されるので、図2(a)のようにライナーが開いて搾乳を行う。「マッサージ期」と呼ばれる時期はパルセータで大気開放され負圧を遮断するので、図2(b)のようにライナーが閉じて搾乳を休止する。泌乳終了までの間電磁弁を自動で開閉してこの搾乳期とマッサージ期を繰り返すことにより、乳頭Tに対して授乳時に子牛の口がするような刺激を与えるとともに連続搾乳によるうっ血を防ぎ、乳牛にストレスを与えないように搾乳を行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ライナーはミルカーの中で唯一乳牛(乳頭)に接する部分であって、毎日の搾乳で常に同じ動きを繰り返し、その動きが直接に乳頭に伝わる。またライナーの劣化はクリーピングアップやティートカップ離脱の原因にもなる。従ってティートカップの機能を維持し細菌感染のない一定品質の牛乳を生産しつづけるためには、ティートカップライナーの性能がきわめて重要である。
【0007】
古くなったライナーは弾力性を失うと共に真空圧の影響で長く、太く伸びてしまう。ライナーが伸びて弾力性がなくなると搾乳期におけるライナーの開きが遅くなって搾乳性が低下し、またライナーの閉じる動きが遅くなって搾乳時間が長くなりマッサージ不足となるなど、搾乳に様々な影響をもたらすから、ライナーの劣化の度合を何らかの方法で随時確認し、劣化したものはすみやかに交換する必要がある。しかし従来はライナーの劣化による永久変形や弾力性の低下を可視化・数値化し得る良い測定方法がなく、搾乳性能の低下を簡単に判定することができなかった。そのため搾乳性能の低下を放置し、交換時期が遅れて乳房炎等の病気につながる場合があった。
【0008】
図7は従来ライナーの搾乳性能低下の判定に使用されていたつぶれ圧測定装置7の一例である。つぶれ圧とはライナーを閉じるために必要なライナー内外の差圧をいう。この方法ではティートカップをミルククローから取り外して先端(検査口71)に栓をして装置に接続し、真空ゲージ72の指度を確認しながら調整ツマミ73を操作して徐々に大きい真空圧をかけ、ライナーがつぶれる時の圧力(つぶれ圧)を測定して、その値によりライナーの劣化を判定していた。しかし調整ツマミ、真空ゲージ等を備えた専用の装置を準備する必要があるため手数がかかってひんぱんに測定できない、費用がかかる等の問題があった。
【0009】
そこで本発明は、複雑な装置を使用せずに、ライナーの使用による劣化、特に胴部(ボア部)の永久変形及び弾力性の低下を簡単に測定し、ライナーの交換時期を判断できるようにする方法及び手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、搾乳機のティートカップライナーの胴部に縦方向に整列した2個以上の測定ポイントからなる測定手段を設け、ティートカップシェルから外した後一定時間内に前記測定ポイントの間隔を測ることを特徴とするティートカップライナーの搾乳性能の低下判定方法により、上記の課題を解決する。シェルに嵌装された状態のライナーはシェルから受けていた引張力により胴部が伸びた状態にあるので、この伸びが元に戻らない間、例えばシェルから外した直後に所定の治具を使って測定ポイント間の間隔を測ることにより、永久変形と弾力性の低下などの劣化状況を総合的に判断することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1の搾乳性能の低下判定方法に使用するための、2個以上の測定ポイントからなる測定手段を胴部外周に備えたティートカップライナーである。測定ポイントは縦方向に並ぶ各点の位置を定めるものであればよく具体的な形状は何でもよいが、ライナーの胴部の変形性能に影響を与えない形状とする必要がある。好ましくは、ライナーの胴部に軸方向に延びた長方形状の突起を設けてその両端(短辺)を測定ポイントとすることができる。そしてノギス状の治具をさしわたして両端を挟めるかどうかをみれば測定ポイント間の間隔の増大が許容範囲内であるかを容易に判定することができる。
【0012】
一組の測定ポイントの数は2個とは限らず3個以上であっても良い。好ましくはライナーの先端(リップ部)から約70mmの位置に適切な間隔で2個の測定ポイントを設けることができる。この位置は乳頭先端付近に相当し、搾乳時に脈動真空圧の導入により一番苛酷な変形を受ける箇所であるためもっとも劣化が進みやすく、したがって歪みも大きくなるからである。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のティートカップライナーにおいて、前記測定手段を断面上(ライナーの胴部の周上)で90°離れた位置に二組設置したものである。複数の測定手段を設ける理由は、搾乳中のつぶれ方等によってライナー胴部の劣化に方向性が生じ、一個所の測定で正しく判定できない場合があるからである。(ライナー胴部22がつぶれた状態を乳頭側から見た様子を図8として示す。)ライナーは製造過程でのゴム材料の偏肉等によりもっとも弱い部分が座屈してつぶれるので、断面上のどの位置からつぶれるか、それによりどこに変形や劣化が生じるか製造時には予測できない。そこで90°離れた位置に2組の測定ポイントを配置することにより独立した2軸での測定を行えば、最も簡単な構成で正確な判定を行うことができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項2や3のティートカップライナーに設けられた2個以上の測定ポイントの間隔を測定するための測定手段を有するティートカップシェルである。具体的な測定手段としては例えばライナーの測定ポイントと対応する複数のマークや凹凸をシェルの外面に設けることが考えられる。ライナーの劣化判定に用いる測定手段をシェルの外面に設けることにより、特別な道具を準備しなくても、ティートカップライナーをシェルから取り外してまだ一時的な変形が残っているうちに直ちに判定を行うことができ、実用上きわめて便利である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法及び手段によれば、複雑な装置を用いなくてもティートカップライナーの永久変形と弾力性の低下などの劣化状況を総合的に判断して、交換が必要かどうかを判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の具体的な実施形態について説明する。図3(a)は本発明のティートカップライナーの劣化判定方法の一つの実施例において使用する測定手段を示す部分側面図である。ライナー胴部の先端(リップ部)から70mm程度の位置に胴部の縦方向に沿って延びた所定長さの長方形の突起22aを設けてあり、この突起22aの両端が劣化判定における測定ポイントとなる。また図3(b)は他の測定手段の一例であり、ライナーの胴部に所定間隔だけ離れた2個のマーク22bが印刷されている。
【0017】
図4は図3(a)の実施例に係るティートカップライナーのA−Aにおける断面図であり、2個の長方形の突起22aが互いに90°離れた位置に設けられていることが示されている。90°離れた個所で歪みを測定することにより、主な変形がいかなる方向に生じていても測定値に変化があらわれるので、交換時期を見逃すことなく判定することができる。
【0018】
図5は長方形の突起22aの両端の間隔を測定するための測定手段の一例であるノギス状の専用治具30のを示す側面図である。専用治具30は本体30aと側方に分岐した枝部30b、30cからなる。本体30aの一部は枝部30cの位置よりさらに延設されて把手30dを構成する。枝部30b、30cの間隔はライナー胴部の長方形突起22aの両端の変形に関して許容される最大の間隔に対応している。
【0019】
これらの測定手段を用いてティートカップライナーの搾乳性能の低下を判定する手順を説明すると、ティートカップライナー2をシェル1から外した後一定時間内に、ライナー胴部の長方形突起22aの両端にノギス状の専用治具をさしわたして、枝部30b、30cが突起22aの両端を挟むようにし、突起22aが長すぎて挟めない場合は許容値以上の変形であり、使用に不適当な状態であるため交換が必要となる。一方、挟むことができればその箇所における変形は許容値以内となり、90°離れた別の突起22aの測定に移る。全ての突起22aの変形が許容範囲内であれば、ティートカップライナー2は使用可能な状態であると判定される。
【0020】
図6は本発明の搾乳性能低下判定方法の他の測定手段の一例であり、ティートカップシェル1の本体側面に2個の突起部10b、10bを有するゲージ10bが設けられている。この突起部10b、10bの間隔がライナー胴部の長方形突起22aの両端の変形に関して許容される最大の間隔に対応する。ティートカップライナー2をシェル1から外した後一定時間内に、ライナー2の胴部にシェル1をあてがい、ゲージ10aの突起部10b、10bがライナーの長方形突起22aに当接するようにする。そして前の実施例と同様に長方形突起22aの両端を突起部10b、10bで挟むようにし、いずれかの突起22aが長すぎて挟めない場合は許容値以上の変形であり、使用に不適当な状態であるため交換が必要となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明では複雑な装置を使用せずに、ライナーの使用による劣化、特に胴部(ボア部)の永久変形及び弾力性の低下を簡単に測定し、ライナーの交換時期を判断できるので、乳牛の乳房炎の防止、牛乳の品質改善に多大な効果があり、産業上の利用可能性は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術に係るティートカップの主要部の縦断面図
【図2】搾乳過程でのティートカップライナーの動作を示す縦断面図
【図3】ティートカップライナー上の測定手段の例を示す部分側面図
【図4】図3(a)のティートカップライナーのA−Aにおける横断面図
【図5】ノギス状の専用治具の側面図
【図6】ティートカップシェル上の測定手段の例を示す部分側面図
【図7】従来のライナーのつぶれ圧測定装置の全体側面図
【図8】ライナーのつぶれた状態を乳頭側から見た図
【符号の説明】
【0023】
1 ティートカップシェル
10 本体
10a ゲージ
10b 突起部

2 ティートカップライナー
22 胴部
22a 突起

30 専用治具
30a 本体
30b、30c 枝部
30d 把手

【出願人】 【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
【出願日】 平成18年10月13日(2006.10.13)
【代理人】 【識別番号】100062373
【弁理士】
【氏名又は名称】稲木 次之

【識別番号】100110906
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和彦


【公開番号】 特開2008−92888(P2008−92888A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−279688(P2006−279688)