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【発明の名称】 ティートカップライナー
【発明者】 【氏名】町田 一幸

【要約】 【課題】搾乳時のクリーピングアップやライナースリップ現象による落下を防止でき、かつ搾乳機能の優れたティートカップライナーを提供することを目的とする。また自動洗浄時の洗浄性を悪化させない改良型のティートカップライナーを提供することを他の目的とする。

【解決手段】リップ部25の一部で直径29mmとなる箇所に不連続に厚みの変わる段差部25bを設け、開口の縁と段差部との間にはさまれた内周部25aの厚みを1.8mmとし、段差25bと周縁部26との間にはさまれた外周部25cの厚みを3mmとする。リップ部の外側に当たる面は平坦とし、内側に段差を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティートカップライナーのリップ部の中央より所定半径の箇所に厚みの変わる段差部を設け、内周部を略平坦としたことを特徴とする搾乳機のティートカップライナー。
【請求項2】
ティートカップライナーのリップ部の中央より所定半径の箇所に厚みの変わる段差部を設け、内周部の厚さを2mm以下としたことを特徴とする搾乳機のティートカップライナー。
【請求項3】
前記リップ部の段差部を設ける箇所の直径を35mm以下としたことを特徴とする請求項1または2記載の搾乳機のティートカップライナー。
【請求項4】
前記段差部においてリップ部のライナー外側にあらわれる面を平坦とし、内側に段差を設けたことを特徴とする、請求項1ないし3記載の搾乳機のティートカップライナー。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は搾乳機に使用されるティートカップライナーの形状に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は標準的なティートカップが牛の乳頭Tに装着された状態を示す主要部の縦断面図である。ティートカップはティートカップシェル1とそれに嵌装されるティートカップライナー2との二つの部品からなっている。ティートカップシェル1は堅固な金属(例えばステンレス)からなる略円筒形の部材であり、上端に大きい開口11を有し、下端に内側へ絞られた小さい開口12を有し、側面下端よりにはパルセータからの真空チューブを接続するための接続口12が設けられている。ティートカップライナー2は天然又は合成ゴムなどの柔軟な材料から一体成形されており、牛の乳頭Tが挿入される頭部21と、シェル1に内嵌される胴部12と、シェル1の下端開口から突出させる延長部23からなっている。
【0003】
ティートカップライナーの頭部21はさらに、乳頭Tが挿入される開口の縁を形成するリップ部25と、該リップ部から連続してシェル1の開口11の縁を保護する略円筒形の肉厚の周縁部26、及び該周縁部26から後方に向かって略円筒形に延出してシェル1の開口11の外周を押えるスカート部27からなっている。胴部22とリップ部25は乳頭Tに直接接する部分であり、比較的薄く成型されており牛体に追従して変形するようになっている。また胴部22と延長部23の境界にはシェル1の開口12と係合される嵌入溝28を有する拡径部29が設けられている。
【0004】
このようなティートカップシェルの開口11にライナー2を下端から挿入し、開口12の縁をライナー2の嵌入溝28に係合させて上端をスカート部21の基部に当接させると、ライナーとシェルの間に大気圧から遮断された真空室24が形成される。さらにライナー2の下端(図示せず)をミルククローの所定の接続口に接続し、側部の接続口12にパルセータラインを接続することにより、搾乳可能な状態となる。真空2系統の搾乳装置ではティートライナー内部にはミルククロー内部の調整弁にて一定圧に調整された搾乳用真空圧が供給され、ライナーとシェルで囲まれた真空室24にはパルセータからの脈動真空圧が供給され、これらの差圧でライナーの胴部22を脈動させて搾乳を行う。
【0005】
図2はパイプラインミルカーにおける搾乳時に交互に反復される2つの状態を示す。「搾乳期」と呼ばれる時期にパルセータは真空側に接続され真空室24に真空が供給されるので、図2(a)のようにライナーが開いて搾乳を行う。「マッサージ期」と呼ばれる時期はパルセータで大気開放され負圧を遮断するので、図2(b)のようにライナーが閉じて搾乳を休止する。泌乳終了までの間電磁弁を自動で開閉してこの搾乳期とマッサージ期を繰り返すことにより、乳頭Tに対して授乳時に子牛の口がするような刺激を与えるとともに連続搾乳によるうっ血を防ぎ、乳牛にストレスを与えないように搾乳を行うことができる。
【0006】
搾乳作業における大きな問題は吸引・休止の繰返しによるクリーピングアップ及びライナースリップによるカップの離脱である。クリーピングアップは、搾乳中に搾乳期(吸引)とマッサージ期(休止)を繰り返すうちに徐々にリップ部がせり上がる現象で、乳頭の変形・個体差などが主因である。クリーピングアップが起こると乳頭の根元が締め付けられて泌乳が止まってしまうことから乳房内に残乳が生じ、乳房炎の原因となることがあるので問題である。ライナースリップ現象によるカップの離脱は、逆にライナーが下側に移動することによりティートカップが乳頭から外れて接続口から空気が入ることで、ユニット落下による雑菌の混入、牛乳の逆流による乳頭端への負担増、他の乳頭への細菌感染などを起こし、やはり乳房炎の原因となるほか、作業性の低下をも招くので問題である。
【0007】
搾乳中のティートカップのせり上がりや離脱を防止するには、リップ部の開口の縁を乳頭Tの周囲に十分に密着させて一体性を保つ必要があり、また搾乳ユニットの傾きなどから生じるリップ部の変形を防止する必要がある。一般にライナーのリップ部が薄いほど乳頭Tに追従しやすいが変形しやすくなる。そこで従来は図5のようにライナーのリップ部全体にテーパーをつけ、開口の縁の部分は薄くし、外側に行くほどなだらかに厚くしていた。
【0008】
また特開2000−106778号公報には、マウスピース口部の内周に上(乳房側)に行くほど外側に広がる折り返し部(クリーピングアップ防止リップ)を形成したことによりクリーピングアップを防止したティートカップライナーが記載されている。
【特許文献1】特開2000−106778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
搾乳中のティートカップの移動防止のためにライナーのリップ部全体にテーパーをつけたものでは、全体を同じ厚みとした場合に比べると柔軟性があるが、内周部を薄くしすぎると全体の強度に影響するので、あまり柔軟にすることができなかった。そのため依然として搾乳性能が十分でなかった。特許文献1記載の発明のような形状のティートカップライナーでは、構造が相当複雑となり製造コストがかかると共に、自動洗浄時の洗浄性を悪化させるおそれがある。またクリーピングアップは防止できてもライナースリップによる落下の防止効果は期待できない。
【0010】
そこで本発明は、ティートカップライナーのリップ部の強度と柔軟性を両立させて、搾乳時のクリーピングアップやライナースリップ現象による落下を防止でき、かつ搾乳機能の優れたティートカップライナーを提供することを目的とする。また本発明は、自動洗浄時の洗浄性を悪化させない改良型のティートカップライナーを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明はティートカップライナーのリップ部の中央より所定半径の箇所に厚みの変わる段差部を設け、それより内周部を略平坦としたことを特徴とする搾乳機のティートカップライナーである。一定の位置に急に厚みの変わる段差部を設け、内周部(リップ部の内側の縁から一定の部分)はほぼ一定の厚みとなりテーパーさせない点が従来のものと相違している。変形時の屈曲点を明確にし、内側を略平坦にすることによりリップ部全体の柔軟性を確保し、搾乳性能を向上させようとするものである。また外周部の強度により永久変形や偏りのある変形を防止し、クリーピングアップやライナースリップ現象による落下などを防ぐ一方、内周部の柔軟性により乳頭の形状が変動したり乳頭の位置が多少ずれても追従し乳頭との密着を維持できる。段差部の形状は不連続に厚みを増してもよいが、段差部から外側へ向かって徐々に肉厚となるようテーパーさせてもよい。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の搾乳機のティートカップライナーにおいて、前記リップ部の内周部の厚さを2mm以下としたものである。好ましくは内周部の厚さを約1.8mmとすることができる。また外周部を略平坦とし、厚さを約3mmとすることができる。内周部・外周部は完全に平坦とすることもできるが、必要に応じて小さい凹凸を設けてもよい。内周側全体を2mm以下(好ましくは約1.8mm)の肉薄とすることで、乳頭への追従性が著しく改善される。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の搾乳機のティートカップライナーにおいて、前記リップ部の段差部を設ける箇所の直径を35mm以下としたことを特徴とする。好ましくはこの箇所の直径を約29mmとすることができる。開口部の直径は通常21mm程度となっており、標準的な乳頭のサイズに合わせて搾乳性能と強度ががバランスする最適な位置としたものである。
【0014】
請求項4記載の発明では請求項1ないし3記載の搾乳機のティートカップライナーにおいて前記リップ部のライナー外側に当たる面を平坦とし、ライナー内側に段差を設けたことを特徴とする。自動洗浄時の洗浄性(外側から水が回り込みやすいこと、ウォッシャーカップに残水が残りにくいこと)を考慮して段差を内側に付けたものである。また外側を平坦にすることで、万一落下してもリップ部が汚れにくいという利点もある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るティートカップライナーの構造では、搾乳時のティートカップのクリーピングアップやライナースリップによる離脱を防止し搾乳作業を安全・効率的に行うことができる。段差部を内側に設ければ、自動洗浄時の洗浄性が悪化することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の具体的な実施形態について説明する。図3は本発明の代表的な実施例に係るティートカップライナーの頭部21の縦断面図である。従来技術と同様に、ティートカップライナーの頭部21は乳頭Tが挿入される開口の縁を形成するリップ部25と、該リップ部から連続してシェル1の開口11の縁を保護する略円筒形の肉厚の周縁部26、及び該周縁部26から後方に向かって略円筒形に延出してシェル1の開口11の外周を押えるスカート部27からなっている。ティートカップライナーのリップ部25の開口の直径は21mmである。本実施例では、リップ部25の一部で直径29mmとなる箇所に厚みの変わる段差部25bを設けてある。開口の縁と段差部との間にはさまれた内周部25aは略平坦であり、厚みは1.8mmとなっている。段差25bと周縁部26との間にはさまれた外周部25cは再び略平坦となり、3mm程度の均一の厚みとなっている。本実施例では、段差部25bにおいてリップ部内側に垂直の面を設けることで不連続に厚みを増大させている。またリップ部の外側の面25dは平坦である。
【0017】
図4は実施例のような頭部の断面を持つティートカップライナー2を乳頭Tに適用した様子を説明する略断面図である。搾乳期において真空室24に真空圧が適用されると、ライナーの胴部22が開いて乳頭Tが搾乳真空圧により下側に引張られるが、リップ部25の内周部25aが柔軟に乳頭に追従することにより乳頭Tとの密着状態を維持するので、ティートカップ2のクリーピングアップが防止される。また外周部25cの存在によりリップ部25の変形が防止されるので、搾乳中に多少搾乳ユニットが振れたり乳頭Tが変形してもリップ部25と乳頭Tの密着状態が維持される。従って流路30に空気が入り込んでティートカップが乳頭Tから離脱することが防止できる。
【0018】
上記の実施例では外周部25cをフラットとしているが、段差部25bから外周部25cにかけてテーパーするものであってもよい。上記の実施例ではリップ部の段差部を1ヶ所(2段)としているが、必要に応じて段差部を複数設け、3段以上とすることもできる。各部の径等の寸法は一種類に限らず牛体のサイズに合わせて複数用意することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば搾乳時のティートカップのずり上がり・離脱を防止し搾乳作業を安全・効率的に行うことができ、乳房炎の予防にもつながるので、牛乳の品質保証に大きな効果があり、産業上の利用可能性は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術に係るティートカップの主要部の縦断面図
【図2】搾乳過程でのティートカップライナーの動作を示す縦断面図
【図3】本発明に係るティートカップライナーの頭部の縦断面図
【図4】図3のティートカップライナーが乳頭に装着された状態を示す説明図
【図5】従来技術に係るティートカップライナーの頭部の縦断面図
【符号の説明】
【0021】
1 ティートカップシェル
11 開口
12 開口
13 接続口

2 ティートカップライナー
21 頭部
22 胴部
23 延長部
24 真空室
25 リップ部
26 周縁部
27 スカート部
28 嵌入溝
29 拡径部
【出願人】 【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
【出願日】 平成18年10月13日(2006.10.13)
【代理人】 【識別番号】100062373
【弁理士】
【氏名又は名称】稲木 次之

【識別番号】100110906
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和彦


【公開番号】 特開2008−92887(P2008−92887A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−279686(P2006−279686)