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【発明の名称】 植物栽培装置及びこれを用いた植物クローン無菌栽培方法
【発明者】 【氏名】内田 英伸

【氏名】竹村 美保

【氏名】大山 莞爾

【要約】 【課題】二次代謝産物を蓄積する植物、気根を形成する植物の根の発生・発達と培養培地の状態を迅速に把握することにより、効率よく培養継代することを可能にさせる植物クローン無菌栽培装置を提供する。

【解決手段】酸素要求性の根を有する植物のクローン無菌栽培装置であって、透明な培養容器を傾斜設置し、該培養容器の上方に照明器具、下方に鏡面を配設する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素要求性の根を有する植物のクローン無菌栽培装置であって、透明な培養容器が傾斜設置され、該培養容器の上方に照明器具、下方に鏡面が配設されていることを特徴とする植物クローン無菌栽培装置。
【請求項2】
請求項1の植物クローン無菌栽培装置において、培養容器底部の根・培地状態を鏡面に反射投影した像を視認することにより、培地交換期にある培地を判別し、交換することで、植物クローンを継代移植することを特徴とする植物クローン無菌栽培方法。
【請求項3】
無菌栽培する植物クローンは、Euphorbia(ユーフォルビア属)植物であることを特徴とする請求項2の植物クローン無菌栽培方法。
【請求項4】
Euphorbia(ユーフォルビア属)植物がEuphorbiaceae(トウダイグサ科)、Anacardiaceae(ウルシ科)、Asclepiadaceae(ガガイモ科)、Apocynaceae(キョウチクトウ科)、Moraceae(クワ科)、Saotaceae(アカテツ科)の植物のいずれか、または、マングローブ植物、Araceae(サトイモ科)植物、Orchidaceae(ラン科)植物のいずれかである請求項3の植物クローン無菌栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、酸素要求性の根を有する植物のクローン無菌栽培装置と、これを用いて培地交換期にある培地を判別し、植物クローンを継代移植する、植物クローン無菌栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Euphorbia tirucalli(アオサンゴ、ミドリサンゴ、ユーフォルビア・ティルカリ, Milk bush, Finger tree, Pencil tree, Asubgwa, Ngesa, Ojuok)などの多肉観葉植物は、葉が薄く乾燥に弱い草本植物などと異なる方法で水やりをおこなう。多肉植物は、鉢土が常に水分過多状態であると根が枯れるので、水をやる間隔を十分にあけ、水やり時には一度に多量の水を与えるようにする。多肉植物でこのように給水の緩急の差を大きくする理由は、根の活動に酸素が必要で、水やりにより空気中と水に溶けている酸素が根に運ばれるからであるが(非特許文献1)、さらには、多肉植物の根の酸素要求性がその他の植物に比べて大きいという理由も考えられる。
【0003】
トウダイグサ科・ガガイモ科その他の多肉植物には、根に多量のサポニンが蓄えられる(非特許文献2)。サポニンの前駆体であるステロール・トリテルペンはメバロン酸経路で合成され、この経路は酸素付加反応を触媒するモノオキシゲナーゼであるスクアレンエポキシダーゼの活性により律速されており(非特許文献3)、さらに、ステロール・トリテルペンへの糖付加の反応経路にもP450型のモノオキシゲナーゼが関与している。
【0004】
根にサポニンの多いMedicargo truncatula(アルファルファ)にはスクアレンエポキシダーゼ遺伝子が発現しており(非特許文献4)、根にサポニンのたいへん少ないBrassica napus(ナタネ)では同遺伝子が発現しておらず(非特許文献5)、二次代謝産物ステロール・テルペノールサポニンの蓄積と根の酸素要求性との相関が示唆されている。
【0005】
また、アオサンゴは石油植物と呼ばれ、採取した乳液をクラッキング、発酵させることによりそれぞれ、ガソリン代替物、メタンガスなどのバイオ燃料が得られる。また、その乳液成分をゴム(ポリテルペン)代替物とする。
【0006】
アオサンゴの乳液は、ベータ-シトステロール(beta-sitosterol)、カンペステロール(campesterol)、スティグマステロール(stigmasterol)、シクロアルテノール(cycloartenol) 、ラノステロール(lanosterol)、タラクサステロール(taraxasterol)、タラクセロン(taraxerone)などのステロイド、アルファ-アミリン(alpha-amyrin)、ベータ-アミリン(beta-amyrin)、ルペオール(lupeol)、ルペノン(lupenone) 、グルティノール(glutinol)などのトリテルペノイドを含む。さらに、アオサンゴはユーフォール(euphol)、ティルカロール(tirucallol)、ユーフォルビノール(euphorbinol)、シクロユーフォルノール(cycloeuphornol)などのトウダイグサ科植物に特有なトリテルペノールを含み、トリテルペノイド総含有量も草本植物に比べて非常に多く、例えば、ユーフォールはアオサンゴ新鮮重に対し0.1%も含まれており(非特許文献6)、これが石油植物と呼ばれる理由となっている。
【0007】
そして、これまでの植物のクローン増殖に関連する発明では、植物体への光照射、発根などについての検討がなされてきている。
【0008】
例えば、植物への光照射量を増加するために鉢を傾斜させる方法などが開発されている(特許文献1参照)。しかし、この発明は、野外という開放環境下で、酸素が浸入しやすい土壌粒子の間隙に非無菌状態で根を生育させるものであり、また、鉢が必ずしも透明ではなく根の発達具合を外から確認できない。
【0009】
また、植物などの光合成生物の培養装置には、鏡面が頻繁に用いられている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらは培養光を鏡面により乱反射させ培養庫内の光量を増加ないし均一化するためのものである。
【0010】
発根方法については、例えば、移植基盤材(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。しかし、この発明は、開放的な屋外という非無菌的な環境下で使用するものであり、また、移植基盤剤が透明な素材からできていることを保証しておらず、これを使用したときに根周辺の状況は必ずしも観察できない。
【0011】
これら前述の発明に対して、本発明は、無菌的条件下における増殖方法を目的とするものであり、また、負の光屈性をもつ根の成長を促すために、鏡面による光量増加法を採用せずに行うものである。
【0012】
さらに、近年、Arabidopsis thaliana(アラビドプシス、シロイヌナズナ)などのモデル植物による遺伝子組み換え技術が著しく進歩し、その技術を二次代謝産物を多量に蓄積するような有用植物へ応用する機運が高まっている。
しかし、アオサンゴに代表される有用植物は、モデル植物に比べ遺伝子導入効率が低いため、数多くの植物切片に対して遺伝子導入操作をおこなう必要がある。さらに、アオサンゴなどの熱帯・亜熱帯産の有用植物の種子は温帯域で得ることが不可能であったり、発芽率が低いことが多く、その場合、滅菌種子実生を用いた遺伝子導入ができない。
【0013】
また、遺伝子導入操作と安全性評価の間、植物体を無菌的状態で物理的・生物学的に封じ込めておく必要がある。
【0014】
そのため、有用植物をインビトロ無菌培養株として効率よく栄養増殖させる新規培養技術が必要である。
【0015】
しかし、インビトロ無菌培養は、植物体が大きくなったときに、一回り大きい培養容器へ移植する継代培養の繰り返し操作を要する。すなわち、移植植物片に根がないと植物体が実質的には成長しないし、根が培養容器底部に十分根張りすると植物体の成長がほぼ停止するため、植物の継代増殖のスピードは植物片からの根の発生・発達具合により律速される。また、同時期に植え継いだ植物片の中でもそれぞれに根の発生・発達する時程がばらつくため、各植物片の根の発達具合を適宜観察しなくてはならない。しかし、培養空間に高密度に配置した数多くの培養容器群の中の個々の容器の根の状態を一つ一つ見るのは煩雑な仕事である。
【0016】
また、これまでに公知となっている発根促進方法の一つは、固形培地に適当な濃度のサイトカイニン・オーキシンなどの植物ホルモンを組み合わせて、または、単独で添加し、発根誘導培地を決定し、その培地に植物片を挿し穂する方法である(例えば、非特許文献7)。しかし、植物ホルモンを添加した培地は、発根には最適ではあっても、発生後の根の生育・発達には必ずしも適していない。そのため、発生した根と併発するカルスが急速に褐色化し、培地中へポリフェノール類を放出し、根の生理活性が低下してしまう。この事態を避けるために、ホルモンフリーの培地を調製し直し、この培地に継代移植しなければならないという煩雑さが生じる。
【0017】
さらに、気根を発生する着生ランの鉢植えを水耕栽培すると、発根しかけの根を除いてほとんどが褐色化し枯死してしまう(非特許文献8)。このように、気根を形成する植物を含む科・植物グループにとっても閉鎖的環境下での培養を行う際には根への酸素供給が重要な問題となっている。
以上述べてきたように、酸素要求性の根を発生・発達させるためには、培養容器底部が水分過多にならないようにし、根が十分根張りするまで、ある程度の期間待機でき、また、培地内いっぱいに根張りした後には培養植物片を適宜継代することが必要になる。
【0018】
すなわち、植物無菌継代培養において根への酸素供給量をより多くし、根の発生・発達を促す技術、根が十分発達した特定培養容器を容易に識別する技術、さらに、褐色化培地、水分過多培地の培養容器を特定化する技術が求められている。
【特許文献1】特開平9−9807号広報
【特許文献2】特開平5−146287号広報
【特許文献3】特開2004−154059号広報
【非特許文献1】小笠原亮ほか(1994)、NHK趣味の園芸新園芸相談9 観葉植物、日本放送出版協会、東京、p7, 137-139
【非特許文献2】三橋博(1988)、原色牧野和漢薬草大図鑑(初版)、北隆館、東京
【非特許文献3】Abe and Prestwich (1999), Comprehensive natural products chemistry vol 2, Isoprenoids including carotenoids and steroids, Cane (ed), Elsevier Science, Oxford, pp267-298)
【非特許文献4】Suzuki et al (2002), Plant J 32:1033-1048
【非特許文献5】Schafer (1999), Plant Mol Biol 39:721-728
【非特許文献6】橋本隆秀(2001)、アオサンゴ(Euphorbia tirucalli L.)の二次代謝成分の分析 京都大学修士論文(農学研究科応用生命科学専攻)
【非特許文献7】Uchida et al (2004), Plant Biotechnol 21:397-399
【非特許文献8】唐沢耕司ほか(2001)、花卉園芸大百科15 ラン、農山漁村文化協会、p3-29)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
この出願は以上の事情に鑑みてなされたものであって、多肉植物、気根を形成する植物などの酸素要求性の植物の根の発達具合と、培地の劣化状態を簡便にかつ迅速に把握しながら、しかも、閉鎖系における根の発達を促進させる新規栽培装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この出願の発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意努力した結果、二次代謝産物を多量に蓄積し、気根形成能を持つ多肉植物アオサンゴの根がモノオキシゲナーゼ遺伝子を発現し、酸素要求活性を有していることを明らかにし、さらに、この植物を閉鎖的環境下にある無菌固形培地上で栽培するために、培地中の溶存酸素量の増加方法について検討し、根の発達を確認した。
【0021】
さらに、従来は、培養後に培養容器一つ一つを持ち上げてその底面を覗き込んで根の発達状況を調べていたが、鏡面を設置することにより、培養容器底面の発達根や、固形培地の褐色化、及びゲルからの漏出水増加を鏡面反射像として視認し、継代植え継ぎをするべき時期にある特定培養容器を迅速に峻別する方法を開発した。
【0022】
すなわち、この出願の発明は、前記の課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0023】
第1の発明は、酸素要求性の根を有する植物の無菌栽培装置であって、透明な培養容器が傾斜設置され、該培養容器の上方に照明器具、下方に鏡面が配設されていることを特徴とする植物クローン無菌栽培装置を提供する。
【0024】
第2の発明は、前記の植物クローン無菌栽培装置において、培養容器底部の根・培地状態を鏡面に反射投影した像を視認することにより、培地交換期にある培地を判別し、交換することで、植物クローンを継代移植することを特徴とする植物クローン無菌栽培方法を提供する。
【0025】
第3の発明は、無菌栽培する植物クローンが、Euphorbia(ユーフォルビア属)植物であることを特徴とする前記植物クローン無菌栽培方法を提供する。
【0026】
第4の発明は、前記Euphorbia(ユーフォルビア属)植物がEuphorbiaceae(トウダイグサ科)、Anacardiaceae(ウルシ科)、Asclepiadaceae(ガガイモ科)、Apocynaceae(キョウチクトウ科)、Moraceae(クワ科)、Saotaceae(アカテツ科)の植物のいずれか、または、マングローブ植物、Araceae(サトイモ科)植物、Orchidaceae(ラン科)植物のいずれかである植物クローン無菌栽培方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、多肉植物ないし気根生成植物などの二次代謝産物高蓄積植物の無菌継代培養装置と培地交換期を判別することによる効率のよい継代培養方法が提供される。
【0028】
そのため、本発明はさまざまな有用二次代謝産物の産生能力を制御する遺伝子に関する遺伝子組み換え体植物の作出・評価過程に用いることができる。上記有用二次代謝産物とは、例えば、以下の原材料となるものである。すなわち、下剤、利尿剤、鎮痛剤、リュウマチ治療剤、気管支炎治療剤、のど荒れ治療薬、胃薬、強心剤、血圧降下剤、心筋梗塞治療薬、不整脈治療薬、血小板減少治療薬、血小板活性化因子拮抗剤、心室細動治療薬、抗HIV剤、レトロウイルス疾患治療薬、抗酸化ストレス剤、吸収性骨疾患治療薬、抗癌剤(前立腺癌・大腸癌・胃癌・肺癌他の癌病治療薬)、アルツハイマー病治療薬、脳梗塞治療薬、ハンチントン病治療薬、パーキンソン病治療薬、蛇毒吐剤、肝機能障害治療薬、抗コリン剤、避妊薬、子宮収縮抑制剤、生活習慣病抑制剤、痴呆症治療薬、コラーゲン生産促進剤、抗う蝕剤、口腔用組成物、エラクターゼ活性阻害剤、持久力増強剤、頭髪用材(育毛料、脱毛防止効果養毛料、フケ防止頭部用組成物、発毛促進料、白髪防止用組成物など)、化粧品素材(臭気発生抑制組成物、エアゾール化粧料、化粧品用抗酸化剤、メラニン生成抑制素材、メラニン産生抑制材、色素沈着予防材、紫外線ダメージ改善料、美白化粧料、肌荒れ防止用皮膚外用材、保湿性組成物、老化防止用化粧料)、飲食品等用の抗酸化剤、肥満改善用飲食組成物、抗微生物性組成物、花芽形成誘導剤、駆虫剤、動物忌避剤、矢毒、魚毒、ゴム、種子油、薬膏原料、バイオ燃料(ガソリン代替物、メタンガス供給材料など)、ロウ、樹脂、漆、チクル、接着剤などである。また、本発明は、マングローブ植物その他の遺伝子組み換え体植物根の耐塩性、耐冠水性などの環境ストレスに関する形質の評価過程に用いることができる。
【0029】
さらに、本発明は遺伝子改変を行う前の野生型形質の植物の育成にも用いることができる。例えば、ダイオキシン・農薬・環境ホルモンなどの動物への有害・有毒物が混入しない植物の生産、ウイルス・菌などの寄生生命体フリーな植物の培養増殖、小型着生ラン科植物・観葉植物などの園芸植物の増殖などに利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本願発明は、前記のとおりの特徴を有するものであるが、以下に、発明を実施するための形態を図1及び図2を参照して説明する。
【0031】
図1は、本願発明の植物クローン無菌栽培装置の一実施形態を例示した斜視図である。
【0032】
図2は、本願発明の植物クローン無菌栽培装置の一実施形態を例示した側面図である。
【0033】
本願発明の植物クローン無菌栽培装置は、格子状ないし網状の傾斜棚1の上面に、例えば、植物固形培地2等の、植物または植物切片3を挿して培養を行わせる水・酸素・栄養分供給と根保持のための透明な媒体の入った透明な培養容器4が傾斜設置される。そして、下方に向けて光照射する照度可変蛍光灯5が上記培養容器4の上方に配設され、さらに、上記培養容器4の下方には、鏡面6が配設される。培養者7は、鏡面6に反射投影される培養容器4底部の根8・培地2状態の反射像9を適宜視認することができる。
【0034】
ここで、本出願においては、以下、図1に示すように、水平面と傾斜棚1からなる角度を仰角θ1とし、水平面と鏡面6からなる角度を伏角θ2とする。
【0035】
また、本発明で用いる固化培地2は、培養容器4を傾斜設置した状態で固化させることにより、気相と培地との境界面10の面積を水平培地よりも2倍以上に増大させている。これにより、培地表層部ほかの培地内特定部分の溶存酸素量が増大した培地2とすることができる。
【0036】
溶存酸素量を増大させるためには、培地2の内部に釣鐘状構造体11を埋没させることにより、気泡を固化培地内に包埋させてもよい。この釣鐘状構造体11は、釣鐘状カップ11aに柄11bを付けてひしゃく状にし、釣鐘状カップ11aが培養容器4の中で常に下向きに開いた状態のままで、培養容器4を振動させても下開きの釣鐘状カップ11aがひっくり返らないものであることが望ましい。
【0037】
また、培地2への気泡の導入・培地固化の処置を高酸素分圧下で行うことにより、包埋気泡周辺ないし培地表層部などの培地特定部位の溶存酸素濃度をさらに上昇させてもよい。
【0038】
さらに、本発明では、培養容器4底部像の観察時以外の培養期に、培養容器4内の根8への下方からの光照射量を軽減するために、傾斜棚1の下面に脱着可能な遮光板12を設置し、根8の被光量を減らすことが可能である。これにより、根8が強度な光照射を受け続けることによる、根8の伸長抑制・褐色化の進行などのネガティブな影響を防ぐことが可能である。さらに、傾斜棚1の下方の設置鏡面6は、脱着可能であり、植物培養期間には鏡面6を取り外すことも可能である。
【0039】
培養容器4は、その入り口の開口部を、例えば、アルミフォイルないしアルミ製、プラスチック製、ゴム製などのキャップなどを培養容器栓13で塞ぎ、入り口からバクテリアなどのコンタミネーションが起こらないようにし、かつ、外気と培養容器内部との通気が保たれているものであるが、その栓の形状・大きさは培養容器4の気相部分表面を極力被陰しないものであることを望ましい様態とする。
【0040】
そして、本発明に用いる培地2は、Linsmaier and Skoog (LS)培地(非特許文献9)、B5培地(非特許文献10)、N6培地(非特許文献11)、スランキスの培地(非特許文献12)、スタインハルトらの(SSS)培地(非特許文献13) 、ウォルター・スクーグ(WS)培地(非特許文献14)、改変ホワイトの培地(非特許文献15)、ムラシゲ・スクーグ(MS)培地(非特許文献16)、WPM培地(非特許文献17)、BTM培地(非特許文献18)、IS培地(非特許文献19)、CD 培地(非特許文献20) 、LP培地 (非特許文献21)、SBK培地 (非特許文献22)、シェンク・ヒルデブラント(SH)培地(非特許文献23)などの公知の植物培地を、原濃度または、希釈濃度で用いるものとする。
【非特許文献9】Linsmaier and Skoog (1965), Physiol Plant 18:100-127
【非特許文献10】Gamborg et al (1968), Exp Cell Res 50:151-158)
【非特許文献11】Chu et al (1975), Scientia Sinic 18:659-668
【非特許文献12】Slankis (1948), Physiol Plant 1:278-289
【非特許文献13】Steinhart et al (1961),Amer J Bot 48:465-472
【非特許文献14】Wolter and Skoog (1966), Amer J Bot 53:263-269
【非特許文献15】White and Risser (1964), Physiol Plant 17:600-619
【非特許文献16】Murashige and Skoog (1962), Physiol Plant 15:437-497
【非特許文献17】Lloyd and McCown (1980), Comb Proc Int Plant Propagator’s Soc 30:421-427
【非特許文献18】Chalupa (1984), Biologia Plantarum (Praha) 26:374-377
【非特許文献19】Saito and Ide (1985), J Jpn For Soc 67:373-375
【非特許文献20】Campbell and Durzan (1975), Can J Bot 53:1652-1657
【非特許文献21】Aitken-Christie and Thorpe (1984), Cell culture and somatic cell genetics of plants, vol 1:82-95, Academic Press
【非特許文献22】Sommer et al (1975), Bot Gaz 136:196-200
【非特許文献23】Schenk and Hildebrandt (1972), Can J Bot 50:199-204 そして、これらに、ジェルライト(Gelrite、ジェランガム、gellan gum)、寒天(agar)、アガロース(agarose)などの公知の固化剤を、単品ないし混合して液体培地に添加、溶解し、高圧蒸気処理、ないし、濾過などの公知の方法により滅菌し、ガラス試験管、ガラスフラスコ、プラスチック容器などの透明培養容器4の内部で、公知の方法で傾斜無菌培地として固化させる。
【0041】
ここに述べた固化剤とは、傾斜培地2の傾斜固化状態を保持し、植物片3に水、酸素、栄養分を供給しうるものであり、例えば、ジェルライトのように、固化後培地が高い透明度を持ち、培地中の有色物体の像が水平・鉛直方向の培養容器4の外へ明瞭に投影するものであり、かつ、植物培養の継続後に培地養分減少などによりゲルの強度・保水力の低下(漏出水の増加)が起こるものであることが望ましい。固化剤の使用濃度は、培地を固化させるために必要な任意の値であり、例えば、ジェルライトのように培地濃度の希釈とともに使用濃度を上昇させてもよい。
【0042】
また、本願発明では、植物または植物切片3を、培地2の特定部分の溶存酸素量を増大させた固形培地入り培養容器4内部に無菌的に挿して移植し、この培養容器4を傾斜状態に設置し、鉛直上方から培養容器4に向け斜めに照度可変光を照射して植物培養し、当該植物において根8の発達を促進させながら、植物培養を行うことが可能である。
【0043】
ここで、この発明に記載する根8の発達とは、培養植物において茎基部からの主根の発生と伸長、主根の重量化、側根の分節と伸長、側根の重量化、主根・側根からの毛状根の分節発生、毛状根の重量化、培地気泡周囲での主根・側根の周回伸展、気根の発生・発達、気根による露などの水分吸収、気根による隣接物の接触認識、隣接物づたいの気根伸長などの根形態の発達的諸現象の少なくとも1つ以上の事象を促進させることを指し示す。
【0044】
さらに、本願発明においては、培養者7は、発達した根8の像、褐色劣化培地の像、または、ゲルからの漏出水の増加した培地の像などの培養容器4底部の根8付近の情報映像を、培養容器4の下方に設置した鏡面6に反射投影された反射像9を視認することで、任意の特定培養容器4の継代移植適宜期を知ることが可能である。
【0045】
これにより、培養後、ポリフェノールなどの褐色物質が蓄積した培地や軟化してゲルからの漏出水が増加した培地等、交換期にある培地2を容易に判別することができる。
【0046】
さらに、前述の釣鐘状構造体11の一部分、例えば、その柄11bは褐色に対して対照性の高い色で着色されていることが好ましい。この着色像は、傾斜培地表層面へ結像し、さらに、これらの像が、培養容器4底面へ投影され、装置鏡面6上に反射する。その着色像を発する培養容器4群を振動させて、その色を特定培養容器の周囲に乱反射させたり、あるいは適切な色・強度の光を特定培養容器周辺に照射することにより、褐色化した特定培養容器4を色彩的に強調させ当該培地を容易に識別することも可能である。
【0047】
本願発明で対象とする植物の一部は多肉植物であり、例えば、Euphorbiaceae(トウダイグサ科)、Anacardiaceae(ウルシ科)、Asclepiadaceae(ガガイモ科)、Apocynaceae(キョウチクトウ科)、Moraceae(クワ科)、ないし、Saotaceae(アカテツ科)の植物である。
【0048】
その具体的な対象植物の例を以下に、学名(和名など、synonymousな種名など)で示す。トウダイグサ科植物では、例えば、Acalypha(エノキグサ(アカリファ)属)、A. hispida(ナガボアミガサノキ)、Aleurites cordata(アブラギリ)、A. fordii(シナアブラギリ)、Breynia(ブライニア属)、B. disticha(ブライニア・ディスティカ)、Codiaeum variegatum cv. pictum(クロトンノキ)、Croton birmanicus(ハッサクーン、クロトン・バーマニカス)、C. campestris(ベラメドカンポフォールハス)、C. eluteria(カスカリラ)、C. tiglium(ハズ)、Euphorbia adenochlora(ノウルシ)、E. cotinifolia(ユーフォルビア・コティニフォリア)、E. ebracteolata(マルミノウルシ)、E. helioscopia(トウダイグサ、ユーフォルビア・ヘリオスコピア)、E. hirta(シマニシキソウ)、E. intisy(ゴムサンゴ)、E. jolkinii(イワタイゲキ)、E. kansui(ユーホルビア・カンスイ)、E. lathyris(ホルトソウ)、E. milii var. splendens(ハナキリン)、E. neriifolia(キリンカク)、E. officinarum(ユーフォルビア・オッフィキナルム)、E. pekinensis(タカトウダイ)、E. pilulifera(ユーホルビア・ピルリフェラ)、E. pulcherrima(ポインセチア)、E. resinifera(サボテンダイゲキ)、E. sieboldiana(ナツトウダイ)、E. supina(コニシキソウ)、E. tirucalli(アオサンゴ、ミドリサンゴ、ユーフォルビア・ティルカリ、エウフォルビア・ティルカリ、Milkbush, Finger tree, Pencil tree, Asubgwa, Ngesa, Ojuok)、E. trigona(サイウンカク)、E. virosa(ヤドクキリン、ユーフォルビア・ウィロサ)、Glochidion obovatum(カンコノキ)、Hevea brasiliensis(パラゴムノキ)、Jatropha curcus(Jatropha curcas、タイワンアブラギリ、ナンヨウアブラギリ)、J. gossypifolia(ジャトロファ・ゴシピフォリア)、J. podagrica(サンゴアブラギリ)、Macaranga tanarius(オオバギ)、Mallotus japonicus(アカメガシワ)、M. philippinensis(クスノハガシワ)、Mercurialis leiocarpa(ヤマアイ)、Phyllanthus emblica(アンマロク)、P. niruri(キダチミカンソウ)Ricinus communis(トウゴマ)、Sapium japonicum(シラキ)、Securinega suffruticosa(ヒトツバハギ)、Speranskia tuberculata(ダイダイグサ)、Triadica sebifera(ナンキンハゼ)である。
【0049】
ウルシ科植物では、例えば、Anacardium occidentale(カシュー、カシューナット)、Antrocaryon micraster(アントロカリオン・ミクラスター)、Astronium(アストロニウム属)、Cotinus coggygria(ハグマノキ)、Lannea acida(ランネア・アシダ)、Mangifera indica(マンゴー)、Pistacia chinensis(ランシンボク)、P. intergerrima(ピスタシア・インテルゲリマ)、P. lentiscus(マスチックスノキ)、P. vera(ピスタシオ、ピスタシオノキ)、Rhus ambigua(ツタウルシ)、R. javanica(ヌルデ)、R. silvestris(ヤマハゼ)、R. succedanea(ハゼノキ)、R. trichocarpa(ヤマウルシ)、R. verniciflua(ウルシ)、R. vulgaris(ルス・ブルガリス)、Schinus molle(コショウボク)、Sclerocarya caffra (スクレロカリヤ・カフラ)、Semecarpus anacardium(スミウルシノキ)、Spondias mombin(スポンディアス・モンビン)である。
【0050】
キョウチクトウ科では、例えば、Adenium(アデニウム属)、Allamanda(アリアケカズラ(アラマンダ)属)、A. cathartica(アリアケカズラ)、A. oenotheraefolia(ヒメアリアケカズラ)、Alsotonia boonei(アルソトニア・ボオネイ)、A. scholaris(ジタノキ)、Alycia reindwartii(プロワラス)、Amsonia elliptica(チョウジソウ)、Apocynum cannabium(アメリカアサ)、A. venetum(アポキヌム・べネーツム)、Aspidosperma quebracho-blanco(アスピドスペルマ・ケブラコブランコ)、Beaumontia(ボーモンティア属)、Carissa(カリッサ属)、Catharanthus roseus(ニチニチソウ)、Cerbera(ミフクラギ属)、C. manghas (ミフクラギ、オキナワキョウチクトウ)、Chonemorpha(コネモルファ属)、Cryptostegia(クリプトステギア属)、C. grandiflora(オオバナアサガオ)、Ervatamia microphylla(エルヴァタミア・ミクロフィラ)、Geissospermum sericeum(ゲイソスペルマム・セリセウム)、G. vellosii(ゲイソスペルマム・ヴェロシイ)、Himatanthus(ヒマタンツス属)、Holarrhena antidysenterica(コネッシ)、Kopsia(コプシア属)、K. pauciflora(コプシア・パウシフロラ)、Mandevilla(マンデヴィラ属)、M. splendens(マンデヴィラ)、Nerium indicum(キョウチクトウ)、N. oleander(セイヨウキョウチクトウ)、Odontadenia(オドンタテニア属)、Pachypodium(パキポディウム属)、Parameria laevigata(パラメリア・ラエビガータ)、Pleioscarpa bicarpellata(プレイオスカルパ・ビカルペラータ)、Plumiera(インドソケイ(プルメリア)属)、P. acutifolia(インドソケイ)、P. mexicana(メキシカーナインドソケイ)、Rauvolfia(インドジャボク(ラウヴォルフィア)属)、R. serpentina(インドジャボク)、R. verticillata(ホウライアオキ)、R. yunnanensis(ラウオルフィア・ユンナネンシス)、Strophanthus(キンリュウカ(ストロファンツス)属)、S. hispidus(ストロファンツス・ヒスピズス)、S. kombe(ストロファンツス)、Tabernaemontana(サンユウカ属)、T. divaricata cv. Flore Pleno(ヤエサンユウカ)、Thevetia(キバナキョウチクトウ属)、T. peruviana(キバナキョウチクトウ)、Trachelospermum asiaticum(テイカカズラ)である。
【0051】
クワ科では、例えば、Artocarpus (パンノキ属)、A. integrifolius(パラミツ)、Broussonetia kazinoki(コウゾ)、Cudrania tricuspidata(ハリグワ)、Ficus(イチジク属)、F. carica(イチジク)、F. elastica(インドゴムノキ)、F. neriifolia(フィカス・ネリフォリア)、F. pumila(オオイタビ)、F. religiosa (テンジクボダイジュ、インドボダイジュ)、F. retusa(ガジュマル)、Humulus lupulus(セイヨウカラハナソウ、ホップ)、Morus alba(マグワ、トウグワ)である。
【0052】
ガガイモ科では、例えば、Asclepias(アスクレピアス(トウワタ)属)、A. curassavica(トウワタ)、Calotropis(カロトロピス属)、Cynanchum acuminatifolium(クサタチバナ)、C. atratum(フナバラソウ)、C. caudatum(イケマ)、C. glaucescens(キナンクム・グラウケセンス)、C. paniculatum(スズサイコ)、C. stauntonii(キナンクム・スタウントニイ)、C. versicolor(キナンクム・ベルシコロル)、C. wilfordi(コイケマ)、Gongronema latifolium (ゴングロネマ・ラティフォリウム)、Gymnema sylvestre(ギムネマ・シルベスタ)、Hoodia(フーディア属)、Hoya multiflora(ホヤ・ムルティフロラ)、Huernia(フエルニア属)、Marsdenia tenacissima(マルスデニア・テナキシマ)、M. tomentosa(キジョラン)、Metaplexis japonica(ガガイモ)、Oxypetalum(オクシぺタルム属)、Periploca sepium(クロバナカズラ)、Stapelia(スタペリア属)、Stephanotis(シタキソウ属)、Streptocaulon griffithii(ストレプトカウロン・グリフィシイ)、Tylophora ovata(ティロフォラ・オバータ)である。
【0053】
アカテツ科では、例えば、Bumelia obtusifolia subsp. Excelsa(コロニーリャ)、Calocarpum sapote (オオミアカテツ、サポテ、Lucuma mammosa、Achras mammosa)、C. viride(ミドリサポテ)、Chrysophyllum cainito(スターアップル、スイショウガキ、ホシリンゴ、カイミット)、Glycoxylon praealtum(パウ・ドーセ)、Lucuma nervosa(カニステル)、L. salicifolia(イエローサポテ)、 Manilkara balata(バラタゴムノキ、Mimusops balata)、M. bidentata (バラータ)、M. excelsa (マサランヅーバ、M. huberi)、M. kauki (サワノキ)、M. rufula(マサランヅーバ・ド・セアラー)、M. zapota (サポジラ、Achras zapota)、Mimusops elengi(ミサキノハナ)、M. laurifolia(ペルセア)、M. parvifolia(ワイルドディリー)、Planchonella obovata(アカテツ)、Pouteria caimito(アビウ、Lucuma caimito)、P. campechiana(サポテアマリヨ、クダモノタマゴ、Lucuma nervosa)、P. gardneriana(アグアイー・グァスー、Lucuma gardneriana) 、P. lasiocarpa(アビウラー、Lucuma lasiocarpa) 、P. laurifolia(グァペーバ・ヴェルメーリャ、Lucuma laurifolia) 、P. lucuma(ポウテリア・ルクマ)、P. macrophylla(クティティリバー)、P. salicifolia (マッタ・オーリョ)、P. sapota(ポウテリア・サポタ)、P. viridis(ミドリサポテ)、Pradosia lactescens(ブラーニェン)、 Richadella dulcifica(ミラクルフルーツ、Synsepalum dulcificum、Sideroxylon dulcificum)、Sideroxylon rugosum (マシェイラ・デ・ボイ))である。
【0054】
本発明で対象とする植物の一部は、気根を発生する植物を含む科ないし植物グループであり、例えば、マングローブ植物、サトイモ科植物、ないし、ラン科植物などである。その具体例を以下に示す。
【0055】
すなわち、マングローブ植物では、例えば、ヤブコウジ科のAegicerascorniculatum(アエギセラスコルニキュラツム)、クマツヅラ科のAvicennia marina(ヒルギダマシ)、ヒルギ科のBruguiera gymnorrhiza(オヒルギ、B. conjugata)、センダン科のCarapa granatum(ホウガンヒルギ)、ヒルギ科のCeripos tagal(コヒルギ)、トウダイグサ科のExcoecaria agallocha(シマシラキ)、ガガイモ科のFinleysonia maritima(ウミベガガイモ)、ヒルギ科のKandelia candel(メヒルギ)、トウダイグサ科のMelanolepis multiglandulosa(ヤンバルアカメガシワ)、ヒルギ科のRhizophora mucronata(ヤエヤマヒルギ)、Salvadoraceae科のSalvadora persica(サルバドラ・ペルシカ)である。
【0056】
サトイモ科植物では、例えば、Acorus calamus(ショウブ)、Amorphophalus konjac(コンニャク)、Anchomanes differmis(アンコマネス・ディフェルミス)、Anchomanes differmis(アンコマネス・ディフェルミス)Arisaema consanguineum(アリセマ・コンサグィネウム)、A. limbatum(ミミガタテンナンショウ)、A. monophyllum(ヒトツバテンナンショウ)、A. serratum(マムシグサ)、A. urashima(ウラシマソウ)、Colocasia antiquorum(サトイモ)、Epipremnum(エピプレムヌム属)、Lysichiton camtschatense(ミズバショウ)、Monstera(ホウライショウ属)、Philodendron(フィロデンドロン属)、Syngonium(シンゴニウム属)である。
【0057】
ラン科植物では、例えば、Aerides(ナゴラン属)、Angraecum(フウラン属)、Anoectochilus (アネクトキルス属)、A. formosanus(アネクトキルス・フォルモサヌス)、A. koshunensis(アネクトキルス・コシュネンシス)、A. reinwardii(アネクトキルス・レイニワルディイ)、A. roxburghii(アネクトキルス・ロクスブルギイ)、Bletilla(シラン属)、B. formosana (アマナラン、ブレティラ・ホルモサーナ)、B. ochracea (ブレティラ・オキラシア、黄花白■、Huang hua bai nai)、B. striata(シラン)、B. szetschuanica (ブレティラ・ツエチュアニカ)、Calanthe(エビネ属)、C. discolor(エビネ)、Cattleya(カトレア属)、Cephalanthera longibracteata (ササバギンラン)、Cymbidium (シンビジウム(シンビジューム)属)、C. dayanum(ヘッカラン、シンビジウム・デイアヌム)、C. ensifolium(スルガラン)、C. goeringii(シュンラン)、C. kanran(カンラン)、C. pumilum(キンリョウヘン)、C. sinense(ホウサイラン)、Cym.Great Flower 'Marie Laurencin(シンビジウム・グレートフラワー・マリーローランサン)、Cym. ensifolium xMiretta(ピーターパン、Peter Pan)、Dendrobium(デンドロビウム(デンドロビューム、セッコク)属)、D. chrysanthum(デンドロビウム・クリサンスム)、D. fimbriatum var. oculatum(デンドロビウム・フィンブリアツム・オクラツム)、D. linawianum(サクラセッコク)、D. loddigesii(デンドロビウム・ロディゲシイ)、D. moniliforme(セッコク、D. monile)、D. nobile(オオバナセッコク)、Disa(ディサ(ディーサ)属)、D. uniflora(ディサ・ユニフロ−ラ)、Doritaenopsis(ドリテノプシス属)、Epipactis (カラキン属) 、Galeola septentrionalis(ツチアケビ)、Laeliocattleya(レリオカトレア属)、Luisia(ボウラン属)、L. teres(ボウラン)、Miltonia(ミルトニア属)、Neottia nidus-avis (サカネラン)、Odontchilus bisaccatus(オドントキルス・ビサッカツス)、O. inabai(オドントキルス・イナバイ)、Oncidium(オンシジウム属)、Orchis aristata(ハクサンチドリ)、O. fauriei(オノエラン)、O. graminifolia(ウチョウラン、Ponerorchis graminifolia)、O. joo-iokiana(ニョホウチドリ)、Paphiopedilum(パフィオペディルム)、Phajus(ガンゼキラン属)、P. minor(ガンゼキラン)、Phalaenopsis(ファレノプシス(コチョウラン)属)、P. aphrodite(コチョウラン)、P. equestris(ヒメゴチョウ、ファレノプシス・エクエストリス)、Ponerorchis(ウチョウラン属)、Saccolabium japonicum(カシノキラン)、Sarcanthus scolopendrifolius(ムカデラン)、Sarcochilus(カヤラン属)、Vanda(バンダ属)、Vanilla(バニラ属)、V. planifolia(バニラ、バニラ・プラニフォリア)、ないし、これらの少なくとも1種を親ないし祖先とする交雑子孫である。
【0058】
以下、実施例を示して、この出願の発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0059】
屋外でのEuphorbia tirucalli(アオサンゴ)の根の発達の様子を観察するために、アオサンゴの枝を切り、植木鉢に挿し木し、温室内で3年半栽培した。その結果、土壌より空気中に突き出たさまざまな気根の様子を図3に示す。すなわち、幹直下の根基部が地上に留まったもの、地中に入った主根が屈曲根14として地上部に出たもの、空中の主根から支柱根15としてタコ足状に分岐して地中に入るもの、側根が直立根16として地上部に突き出したものであった。
【実施例2】
【0060】
アオサンゴの根の酸素要求性を調べるために、温室栽培したアオサンゴ鉢中の根を採集し、全RNAを抽出し、オリゴdTプライマーを加え逆転写酵素(Reverse transcriptase)反応を行った。そして、スクアレンエポキシダーゼ遺伝子(EtSE)特異的オリゴDNAプライマーをもちいて、変性94度10秒、アニーリング60度30秒、伸長72度60秒のサイクルを28回、ポリメラ―ゼチェイン反応(PCR)を行った。得られた産物をアガロース上で電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色した。また、対照としてアクチン遺伝子産物を増幅した。その結果、図4に示すように、EtSE産物由来の0.5kbの断片、アクチン遺伝子産物由来の0.7kbのバンドが検出された。それぞれを制限酵素SphI処理したところ、既知の塩基配列から予測されるサイズのバンドに切断された。以上の結果から、アオサンゴの根ではEtSEが発現していることを明らかにした。そして、上記EtSEはエポキシダーゼ遺伝子機能を持つことは既に報告されている(非特許文献24)。したがって、アオサンゴの根は酸素要求活性をもつことが判った。なお、プライマーのセットは、EtSE(そのcDNA塩基配列はアクセッション番号AB253602 としてDDBJデータベースに登録済) 用(開始コドン第一塩基から615番塩基より1076番塩基にわたる領域を増幅するもの)である5’-TAAAGCTTATGCTCCTCTCACTGTT-3' と 5’-ACTGTCATTCCACCACCAGTTAAT-3'; アオサンゴアクチン遺伝子プライマー用(対照)である 5’-TTGGTATGGGTCAAAAGGATGC-3’ と 5’-ATACCAGCAGCTTCCATTCCAA-3’をそれぞれ用いた。
【非特許文献24】内田英伸、竹村美穂、中谷内修、大山莞爾(2006)、石油植物ユーフォルビアのスクアレンエポキシダーゼ遺伝子のクローニング。日本植物学会第70回大会研究発表記録、P109
【実施例3】
【0061】
近年開発された高感度ニードル式酸素濃度計(Presence MICROX TX3 OXYGEN METER、日本環境計測)では、従来のものでは不可能であった0.01ppmの差の測定が可能になった。この測定機を用い、無菌植物培養用の固化培地内各所の溶存酸素量のばらつきぐあいを調べた。0.25%ジェルライト入りLS固化培地40mlを円柱型ガラス棒ビン内に作成した。表1に示すように、容器内気相部、培地表面直下(表層鉛直に2mm下がった地点)、培地底部の3地点の酸素濃度を測定し、その結果、培地の表面直下の溶存酸素濃度は培地底部よりも0.05ppm高いことを明らかにした。培地容器は、内径36mm、培地は鉛直方向と培地表面のなす角(以下、θ3という)=26度になるように固化した。
【0062】
【表1】


【実施例4】
【0063】
培地を傾斜させて固化させたときの表層面の広さについてシミュレーションを行う。図5に示すように、培地傾斜角(θ3)を90度から26度へ変化させ、円筒形培養容器4に固形培地2を作成した。両者の培地・気相境界の楕円面10の面積を計算した結果を表2に示す。その面積比を比較すると、θ3=26度の表面積は、θ3=90度の時の2.2倍であった。
【0064】
【表2】


【実施例5】
【0065】
図6に示すように、固形培地2の内部に気泡を形成させるために、釣鐘状構造体11をつくり、釣鐘状カップ11aに気相の空気を捕えさせてLS培地20ml内に埋め、オートクレーブ滅菌後、培地を固化した。釣鐘状構造体11は、容積1.5mlのエッペンチューブをハサミで成形し、柄11bを有しており、山形に切れ込みの入った切口部11dを有する釣鐘状カップ11aとし、柄11bに金属製Rピン11cをはめて作成した。柄11bの全長(プラスチック部+Rピン部11c)は試験管内径23mmより長くして、釣鐘状カップ11aが吊り下げた釣鐘状態の体勢のまま培養容器(試験管)4内でひっくり返らないようにした。釣鐘状カップ11a内は切口部11dを有するために、試験管の直立時には気相とつながり、培地傾斜固化時には培地表面の下に埋没し、培地表面は植物片の挿入に支障の無いものとなった。
【実施例6】
【0066】
培地への溶存酸素量の増加処理により発根が促進されるかどうかを調べた。試験管内に0.25%ジェルライト入りLS水平固化培地(9本)、気泡なしの傾斜培地入り(9本)、気泡入りの同傾斜培地(9本)を作成し、それぞれに8cmに切断した無根アオサンゴ植物片を挿し穂した。そして、傾斜棚1の上に、上記3種類の培地入り試験管を設置し、これらを3週間培養し、発根した主根数をそれぞれ計測した結果を図7に示す。水平培地使用時に比べ、気泡なし傾斜培地使用時、気泡あり傾斜培地使用時はそれぞれ、1.7倍、2.7倍の発根数となり、溶存酸素増加処理に対応して発根数が増加することが判った。また、実験は、培地の傾斜角(θ3)はθ3=26度、90度、光照度は500Lux(プラントルクス、松下)、光周期は16時間明期、8時間暗期、傾斜棚1の仰角(θ1)=16.6度の条件で行った。
【実施例7】
【0067】
図8に示すように、培養容器(試験管)4を傾斜棚1の上に設置し、上方から光照射する場合の容器上への照射光量を、鉛直設置時と比べるために、傾斜設置(仰角(θ1)=10度とした)時、鉛直設置(θ1=0度とした)時のそれぞれにおいて、培養容器4間の間隙をすり抜けて下部に至る光量を調べた。培養容器4の真上から蛍光灯5(白色光、ラッキー蛍光灯、FR4213)を照射し、その下部に縦5列x横4列の計20本入りの試験管立てにアルミフォイル栓付き試験管4を入れ、試験管立て下部の照度を照度計17(DX-100、竹村電気製作所)にて計測した。その結果、表3に示すように、培養容器4を鉛直状態から傾斜状態にすることにより、試験管下照度が低下することが確認された。これにより、培養容器を傾斜状態にすることで、容器上に照射する光量が増加することが確認された。
【0068】
【表3】


【実施例8】
【0069】
鉛直設置した試験管、傾斜設置した試験管それぞれから発生する根の重量を調べた。上記それぞれ6本に無根植物片を挿し穂し、実施例7と同様に3週間培養し、発生した根をそれぞれ回収し、凍結乾燥、シリカゲル乾燥した後に、オートバランス電子天秤(AD6、パーキンエルマー)を用いて秤量した。その結果、図9に示すように、傾斜状態での根の乾燥重量は、鉛直状態に比べ2.3倍になった。
【実施例9】
【0070】
図10に、試験管に気泡18を固定させた培地にEuphorbia tirucalli(アオサンゴ)無菌植物片を挿し穂し、培養し、発根させた様子を示す。その結果、主根19が培地内に固定した気泡18の周囲を周回し、主根19・側根20の一部が気泡18の内部へ進入した。そして、気泡18内部では毛状根の気根21の形成が確認できた。
【実施例10】
【0071】
試験管内に0.25%ジェルライト入りLS傾斜固形培地を作成し(傾斜角(θ3)=26度)、未発根のアオサンゴを無菌培養した。その結果、図11に示すように、主根の一部が、培地から気相に飛び出して、気根21として伸長し、さらにその一部が、吸水根22として水滴の結露した試験管内壁に向けて伸長し、結露水23を吸収し、かつ、内壁を接触認識した後、付着根22として内壁づたいに伸長する様子を観察した。
【実施例11】
【0072】
設置鏡面6による反射像9から、特定の試験管の発根の有無を判別できるかどうかを調べた。傾斜棚1の上に2本x2本入りの試験管立てを設置し、試験管立ての手前側2ヵ所に未発根植物入りの試験管を、奥側2箇所に発根した植物入りの試験管を配置した。鏡面6を使わずに、栽培装置手前やや上方向から全試験管を観察した。その結果、図12(a)に示すように、奥2本の試験管の培地は手前2本の試験管の陰に隠れ、その中の発根状態を目視できなかった。次に、傾斜設置した装置鏡面6への反射像9を観察したところ、図12(b)に示すように、全ての設置試験管の底部像が見え、そのうち、奥側2本に発根を識別できた。
【実施例12】
【0073】
植物片培養の期間が長くなったときの固化培地ゲルからの漏出水発生について示す。容量500mlのメリクロンフラスコに140mlの0.25%ジェルライト入りLS水平培地を作成した。植物体部分の長さが5cmの発根済みアオサンゴ植物を植え、培養開始後5日、ないし3ヶ月後に培地の全成分を回収し、ろ紙(アドバンテック東洋No.2)を通過した濾液(漏出水分)と残さ(培地保持水分)を回収し、漏出水分量の全水分量に対する割合を計算した結果を表4に示す。表4に示すように相対的漏出水分量は培養5日後で6.6%、培養3ヶ月では12.5%であり、培養を3ヶ月間行うことにより培地ゲルからの水分漏出が多く発生することが示された。一方、植物の培養を行わず4ヶ月おいた培地の同割合は5.6%であり、漏出水発生は、単に、培地が古くなったために生じたのではないことが判った。
【0074】
【表4】


【実施例13】
【0075】
培養容器4内での培地漏出水増加を外側から観察できるかどうかを調べた。培養容器設置棚を水平(仰角(θ1)=0度)に設定し、その上に実施例12に示した2種の培地、すなわち、軟化前(培養5日目)、軟化後(培養3ヶ月目)の固形培地入りメリクロンフラスコ24を設置し、これらを栽培装置手前水平方向から観察した。その結果、両者の培地に物性上の違いは識別できず、軟化培地26を識別することはできなかった。次に、図13(a)に軟化した培地入りのフラスコを傾斜設置した場合の縦断面図を示す。傾斜棚1(仰角(θ1)=11度)、鏡面設置板も傾斜(伏角(θ2)=8.2度)状態に設定した。また、上記フラスコ24の底部の装置鏡面6への反射像9を観察した図を図13(b)に示す。軟化した培地26はフラスコ24の片側に寄り、図13に示す培地・フラスコ壁間の隙間25が観察された。一方、軟化していない培地にはそのような間隙は見られなかった。
【実施例14】
【0076】
傾斜固化培地表層部は、空気と水という光屈折率の異なる媒体の境界面であり、鏡面として機能する。2本の内径27mmの試験管に0.25%ジェルライト入りLS培地20mlを入れ1本は傾斜培地とし、他の1本は水平培地として固化した。図14に両培地の側面図及び鏡面反射像9を示す。すなわち、固化直前にRピン11cで挟んだ青色テープ片27を試験管内に入れた各培地を横方向から観察したところ、水平培地では青色テープ27の実像のみが観察されたが、傾斜培地では青色テープ27の実物の像とともに、この像が培地傾斜面上に結像した青色テープの像28も観察された。水平、傾斜の各培地入り上記各試験管を培養容器設置棚1の上に設置し、その底部を装置鏡面6の反射像9として観察した。その結果、傾斜培地では、青色テープ片本体の鏡面反射像29と、傾斜培地の傾斜面上に結像した青色テープ片の像の鏡面反射像30の2つの青色像が観察された。一方、水平培地では青色テープ片の像の鏡面反射像29のみが確認された。
【実施例15】
【0077】
色彩と明るさを調整することで褐色化した培地を見つけやすくできるかどうかについて実験を行った。図15(a)に示すように、褐色物質が放出され褐色化した固形LS培地の入った試験管を、実施例14に述べた青色テープ入りの傾斜培地試験管2本の間に挟み、試験管立てを軽く手でゆすりながら、3本の試験管の鏡面6反射像9を観察したところ、観察時に、外側2本の試験管の青色物体が、周囲の試験管外壁に乱反射し、それ全体が鏡面6に映り、褐色試験管の周辺がぼやけた青色のバックグラウンドとして見え、褐色試験管の色彩を引き立たせた。次に、図15(b)に示すように、両側試験管内のテープ片を青色のものから黄色に換え、同様に観察したところ、黄色の周囲バックグラウンドは青色時ほど中央の褐色を引き立たせなかった。すなわち、褐色と同色調の黄色テープを用いた時に比べ、褐色の補色に近い青色のものを用いた方が、中央の褐色試験管の色彩がより際立って見えた。
【0078】
また、培養光を供する蛍光灯5の光量を連続的に増減しながら中央の試験管を観察することによって、色の薄い褐色培地の存在も識別できた。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この出願の植物クローン無菌栽培装置の一実施形態を示した斜視図である。
【図2】この出願の植物クローン無菌栽培装置の一実施形態を示した側面図である。
【図3】Euphorbia tirucalli(アオサンゴ)の気根が生成したことを示す図である。
【図4】アオサンゴの根に酸素要求活性があることを示す図である。
【図5】傾斜培地と水平培地における気相と培地との境界面の面積の差を示す図である。
【図6】釣鐘状構造体を包埋することで傾斜固化培地の内部に気泡を固定したことを示す図である。図(a)(a’)は、培地固化前における試験管の側面図である。図(b)、 (b’)は、それぞれ傾斜培地固化後の側面図及び底面図である。
【図7】水平培地、傾斜培地、気泡を固定した傾斜培地のそれぞれにおける発根数の違いを示す図である。
【図8】試験管を傾斜設置した場合と鉛直設置した場合の試験管下照度の違いを示す斜視図である。
【図9】試験管を傾斜設置した場合と鉛直設置した場合のそれぞれにおける発生した根の乾燥重量の違いを示す図である。
【図10】この出願の植物クローン無菌栽培装置を使用した場合に観察されたアオサンゴの発根の様子を示す図である。
【図11】この出願の植物クローン無菌栽培装置を使用した場合に観察されたアオサンゴの発根の様子を示す図である。
【図12】(a)鏡面を使用しないで試験管内部を観察した場合の、試験管及びその内部の培地の様子を示す図である。(b)鏡面を使用して試験管内部を観察した場合の、試験管及びその内部の培地の様子を示す図である。
【図13】(a)軟化した培地入りのフラスコを傾斜設置した場合の縦断面図である。(b)軟化した培地入りのフラスコを傾斜設置した場合の、鏡面反射像を示す図である。
【図14】青色テープを入れた傾斜培地及び水平培地における、青色テープの像の様子を示す側面図及び、鏡面反射像の様子を示す図である。
【図15】(a)褐色培地を含む試験管の両側に、青色テープを傾斜培地中に入れた試験管を設置した図である。(b)褐色培地を含む試験管の両側に、黄色テープ傾斜培地中に入れた試験管を設置した図である。
【符号の説明】
【0080】
1 傾斜棚
2 培地
3 植物または植物切片
4 培養容器
5 蛍光灯
6 鏡面
7 培養者
8 根
9 反射像
10 気相と培地との境界面
11 釣鐘状構造体
11a 釣鐘状カップ
11b 柄
11c Rピン
11d 切口部
12 遮光板
13 培養容器栓
14 屈曲根
15 支柱根
16 直立根
17 照度計
18 気泡
19 主根
20 側根
21 気根
22 吸水根、付着根
23 結露水
24 フラスコ
25 固形培地とフラスコ壁との間隙
26 軟化した培地
27 青色テープ片
28 傾斜培地の傾斜面上に結像した青色テープ片の像
29 青色テープ片本体の鏡面反射像
30 傾斜培地の傾斜面上に結像した青色テープ片の像の鏡面反射像
【出願人】 【識別番号】591040236
【氏名又は名称】石川県
【出願日】 平成19年3月30日(2007.3.30)
【代理人】 【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫


【公開番号】 特開2008−245625(P2008−245625A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−94644(P2007−94644)