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【発明の名称】 昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法
【発明者】 【氏名】近藤 幸盛

【氏名】田口 義広

【要約】 【課題】昆虫寄生菌を昆虫に接種、感染させた後に、昆虫寄生菌の子実体の形成を一定期間停止させ、その後子実体の形成を再開して子実体を容易に形成することができ、子実体の生産を効率良く行うことができる昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法を提供する。

【解決手段】昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法では、昆虫に昆虫寄生菌が接種され、感染されて硬化された昆虫体12又は子実体原基が形成された昆虫体12を、温度が20〜25℃で相対湿度が55〜75%の容器内に保管し、昆虫体の水分量が5〜15%になるように予備乾燥する。その後、0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で保存する。この場合、予備乾燥した昆虫体を容器内に充填された乾燥剤15中に投入した後、容器内の相対湿度を0〜55%に維持し、次いで0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で保存することが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫に昆虫寄生菌が接種され、感染されて硬化された昆虫体又は子実体原基が形成された昆虫体を、温度が20〜25℃で相対湿度が55〜75%の容器内に保管し、昆虫体の水分量が5〜15%になるように予備乾燥した後、0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で保存することを特徴とする昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法。
【請求項2】
前記予備乾燥した昆虫体を容器内に充填された乾燥剤中に投入した後、容器内の相対湿度を0〜55%に維持し、次いで0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で保存することを特徴とする請求項1に記載の昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法。
【請求項3】
前記乾燥剤はシリカゲルであることを特徴とする請求項2に記載の昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法。
【請求項4】
前記昆虫体の複数個体を容器内に保管することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法。
【請求項5】
前記昆虫寄生菌は冬虫夏草菌類であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、健康食品、医薬品、化粧品等として利用される冬虫夏草菌類等の昆虫寄生菌の子実体(キノコ)の生産能を有する昆虫体の保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昆虫寄生菌類(昆虫病原菌類)は、冬虫夏草菌などのように漢方薬の原材料や高級食材として利用されている。通常、冬虫夏草菌のような子実体は天然に生息しているものを採取するため絶対数が少なく、また、大きさが揃わず、品質も一定していないことが多い。昆虫寄生菌類は、例えばサナギタケのような同一の属種であっても、生育速度、菌叢の生育及び病原性に差が現れるのが普通であった。このため、優良な昆虫寄生菌の探索や人工培養法の研究が盛んに行われてきた。
【0003】
例えば、冬虫夏草菌を寄主昆虫に人工接種し、寄主昆虫が発育しない程度の低温で温度管理しつつ飼育し、子実体を得る方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法では、冬虫夏草菌の子嚢胞子の懸濁液に寄主昆虫の蛹を浸漬する方法により接種が行われている。しかし、常温でこの方法を行うと殆どの蛹が羽化してしまうか、又は細菌の発生が著しく、求める子実体が得られる確率が著しく低い場合が多い。懸濁液による接種感染方法は感染個体にむらを生じ、感染までの時間が著しく長い。一方、低温で管理すると、子嚢胞子に由来する子実体を形成するまでに著しく長い時間を要していた。
【0004】
また、蚕の蛹の抽出液を使用して培地を作製し、この培地を用いて冬虫夏草菌の子実体を形成させ、その子嚢胞子を利用する方法も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。この場合、子嚢胞子懸濁液に蛹を浸漬したり、菌糸を蛹に触れさせて接種したりする他、子嚢胞子懸濁液を蛹に直接接種する方法も行われている。これらの方法に加え、冬虫夏草菌などの昆虫寄生菌のハイファルボディを含む接種剤を作製して、これを昆虫体内に注射接種して導入し、この昆虫を昆虫菌床として子実体を形成させる方法も知られている。
【0005】
昆虫寄生菌の継代は培地を用いた培養により行われ、培養菌糸を低温で貯蔵する方法が一般に行われている。しかし、ハイファルボディを用いて培養しても子嚢胞子の形成はできなかった。また、上記のいずれの子実体の生産方法も昆虫寄生菌の接種及び感染から子実体の形成までは一連の休みのない作業として行われ、途中で停止し、保留しておくことができなかった。
【0006】
昆虫寄生菌の子実体を形成させる方法として、本発明者らは既に寄主昆虫の表皮に傷を付けて昆虫寄生菌を感染させる方法を提案した(特許文献3を参照)。この方法によれば、昆虫寄生菌の感染が早く、昆虫体内に菌糸が蔓延しやすく、子実体の揃いが良く、安定した子実体を確保することができる。また、昆虫寄生菌は、子実体から得られた子嚢胞子を培地上に落下させた後、冷凍又は冷蔵して保存することができる。
【特許文献1】特開平8−75号公報(第2頁及び第3頁)
【特許文献2】特開平10−42691号公報(第2頁、第4頁及び第5頁)
【特許文献3】特許第3902216号公報(第1頁、第2頁及び第8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、昆虫体内にはもともと腸内細菌などが存在しており、もとより無菌的培養が難しい性質を有している。冬虫夏草菌のような昆虫寄生菌を昆虫に接種する場合でも、工程のすべてを無菌的に経過させることは困難であった。特に、昆虫寄生菌の分離時に発生する細菌は昆虫寄生菌に親和性が高く、又は共生関係にあり、多くの場合細菌を除菌することは困難であった。そのため、このような有菌的状況下にあったとしても子実体を形成させる必要があった。さらには、昆虫に産卵させて人工餌を与えるときに、餌に抗菌物質を混ぜることも多く、これらが昆虫寄生菌の感染を阻んでいた。
【0008】
また、一般に昆虫寄生菌の子実体形成までの期間は著しく長く、例えば鱗翅目昆虫蛹としてのハスモンヨトウ蛹では羽化させないように10℃程度の温度で管理するため、蛹内に昆虫寄生菌が蔓延するまでに2〜3ヶ月の期間を要していた。しかし、これでは感染個体を得るまでの見通しが立たず、次の子実体を発生させる工程へ移ることができないばかりか、この作業工程の間で停止することすらできなかった。
【0009】
前記特許文献1及び2に記載された子実体の生産方法も昆虫寄生菌の接種及び感染から子実体の形成までは、一連の休みのない作業として行われ、途中で停止や中断することができなかった。また、特許文献3に記載されている冷凍又は冷蔵による菌糸の保存では、冷凍又は冷蔵を解除して子実体を得るには必要な養分を補給するなど適切な条件を設定しなければならず、所望の子実体を得ることが難しいという状況であった。従って、昆虫寄生菌の子実体の形成を一旦中止し、その後適切な時期に子実体の形成を再開でき、子実体の生産を効率良く行う技術が期待されていた。
【0010】
そこで、本発明の目的とするところは、昆虫寄生菌を昆虫に接種、感染させた後に、昆虫寄生菌の子実体の形成を一定期間停止させ、その後子実体の形成を再開して子実体を容易に形成することができ、子実体の生産を効率良く行うことができる昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法は、昆虫に昆虫寄生菌が接種され、感染されて硬化された昆虫体又は子実体原基が形成された昆虫体を、温度が20〜25℃で相対湿度が55〜75%の容器内に保管し、昆虫体の水分量が5〜15%になるように予備乾燥した後、0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で保存することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法は、請求項1に係る発明において、前記予備乾燥した昆虫体を容器内に充填された乾燥剤中に投入した後、容器内の相対湿度を0〜55%に維持し、次いで0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で保存することを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法は、請求項2に係る発明において、前記乾燥剤はシリカゲルであることを特徴とする。
請求項4に係る昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明において、前記昆虫体の複数個体を容器内に保管することを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法は、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明において、前記昆虫寄生菌は冬虫夏草菌類であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明では、昆虫に昆虫寄生菌が接種され、感染されて硬化された昆虫体又は子実体原基が形成された昆虫体を、温度が20〜25℃で相対湿度が55〜75%の容器内に保管し、昆虫体の水分量が5〜15%になるように予備乾燥を行う。その後、0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で昆虫体を保存するものである。このため、前記昆虫体は容器内の温度及び相対湿度の条件により、その表面の水分が除去された後、昆虫体内部の水分が徐々に表面に移行して除去され、昆虫体の水分量が菌糸の成長と保存に適した状態となる。続いて、冷蔵又は冷凍保存されることにより、昆虫体は腐敗することなく、長期間に渡って保存される。従って、昆虫寄生菌を昆虫に接種、感染させた後に、昆虫寄生菌の子実体の形成を一定期間停止させ、その後子実体の形成を再開して子実体を容易に形成することができ、子実体の生産を効率良く行うことができる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、予備乾燥した昆虫体を容器内に充填された乾燥剤中に投入した後、容器内の相対湿度を0〜55%に維持し、次いで0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で保存するものである。このため、請求項1に係る発明の効果に加えて、予備乾燥後に昆虫体の乾燥を促進することができ、子実体の形成を再開したときに子実体の形成率を向上させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、乾燥剤はシリカゲルであることから、請求項2に係る発明の効果に加えて、乾燥能力を容易に高めることができる。
請求項4に記載の発明では、昆虫体の複数個体を容器内に保管することから、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加えて、昆虫体の複数個体を同時に保存することができ、昆虫寄生菌の子実体の生産性を向上させることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、昆虫寄生菌は冬虫夏草菌類であることから、冬虫夏草菌類について請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果を発揮することができ、その利用価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法は、昆虫に昆虫寄生菌が接種され、感染されて硬化された昆虫体又は子実体原基が形成された昆虫体を予備乾燥した後、冷蔵又は冷凍条件下で保存するものである。予備乾燥では、温度が20〜25℃で相対湿度(単に湿度ともいう)が55〜75%の容器内に保管し、昆虫体の水分量が5〜15%になるように乾燥が行われる。冷蔵は0〜6℃の条件で行われる。この保存方法により、昆虫寄生菌の子実体の保存性が良く、その後子実体の形成を再開したとき子実体を容易に形成することができる。
【0020】
前記昆虫は特に制限されないが、鱗翅目の昆虫、甲虫目の昆虫等が用いられる。鱗翅目の昆虫としては、ハスモンヨトウ、タバコガ、カイコガ、コナガ、ネキリムシ、コウモリガ等が挙げられる。甲虫目の昆虫としては、コガネムシ、カミキリムシ、コメツキムシ等が挙げられる。ここで、昆虫とは幼虫、蛹、成虫等の成長過程におけるいずれの形態(生態)をも含む概念であるが、取り扱いのよさから蛹の形態が好ましい。
【0021】
対象となる昆虫寄生菌としては、アカントケミス属、ギベルラ属、コルディセプス属、スティルペラ属、ティラクリディウム属、トリポクラディウム属、トルビエラ属、ノムラエア属、パライサリア属、ヒメノスティルベ属、ヒルステラ属、ペキロマイセス属、ボーベリア属及びメタリジウム属等の菌類が挙げられる。ここで、冬虫夏草菌類は、子嚢菌門、麦角(バッカク)菌目、麦角(バッカク)菌科の一属(冬虫夏草属)に該当する菌類である。冬虫夏草菌類として具体的には、麦角菌科のコルディセプス属、ギルベラ属、トルビエラ属及びヒルステラ属に属する菌類である。また、冬虫夏草菌類のうち、例えばコルディセプス属のサナギタケ(Cordyceps militaris)、ウスキサナギタケ等が挙げられる。
【0022】
前記昆虫に昆虫寄生菌を接種する方法は特に制限されないが、容易かつ有効に行うために、昆虫の表皮に傷を付ける方法が好ましい。その方法としては、針、金属片、ガラス、セラミック等の硬い鋭利な刃物又はレーザー光を利用して行うことができる。昆虫の傷付けられた部分(以下、付傷部という)に昆虫寄生菌が接種されることで、昆虫寄生菌の感染が促進され、昆虫の体内で寄生菌の増殖が容易に行われ、昆虫が硬化し、又は子実体原基が形成される。ここで、子実体原基とは子実体の元になる粒状の部分(芽)を指す。付傷させた昆虫の付傷部に昆虫寄生菌を接種すると、昆虫の体内で繁殖し昆虫は菌糸体となり、昆虫の表皮に子実体原基が形成される。
【0023】
例えば、昆虫寄生菌のサナギタケを用い、22℃の条件で寒天培地としてのPDA培地(Potato Dextrose Agar、馬鈴薯砂糖寒天培地)上でサナギタケを純粋培養してその菌糸を蔓延させる。一方、非休眠のハスモンヨトウ蛹に先端が鋭利なピンセットで傷を付け、PDA培地上に置いてサナギタケを接種し、数日間保存して感染させる。その後、蛹の動きが止まり硬化させることができる。通常、昆虫の皮膚には、寄生菌に対する防御機構があるため寄生菌が感染しにくいが、昆虫の表皮に軽度の付傷部を形成し、そこに昆虫寄生菌を接種すると感染速度が高まり、昆虫の体内で寄生菌の増殖を速やかに行うことができる。培地としては、籾米、小麦、大麦等を使用した穀物培地等を用いることもできる。
【0024】
このように、培地上に昆虫寄生菌の菌糸(菌叢)が形成された状態、特に菌糸が蔓延した状態で昆虫を置いて接種することにより、昆虫が本来保持している細菌等の影響を排除し、昆虫寄生菌の速やかな感染を得ることが可能である。この結果、昆虫寄生菌の感染確率も高く、歩留まりの向上が可能である。
【0025】
次に、前記昆虫体の予備乾燥について説明する。
この予備乾燥は、前記昆虫体を温度が20〜25℃で相対湿度が55〜75%の容器(密閉容器)内に保管し、昆虫体の水分量が5〜15%になるように行われる。該予備乾燥では、上記温度及び相対湿度の容器内に7〜10日間保管することが望ましい。係る予備乾燥により、昆虫体表面の水分又は水滴が除去されると共に、昆虫体内から表面に移行しつつある水分も除去され、昆虫体の体内水分を低下させることができる。温度が20℃未満の場合には温度が低く、乾燥の効率が悪くなり、25℃を超える場合には乾燥の進行が速くなり、昆虫体の水分量が少なくなる。相対湿度が55%より低いときには乾燥が速く進行し、昆虫体の水分量が不足し、75%より高いときには昆虫体の乾燥が遅れ、昆虫体の水分量が過剰になる。加えて、容器内での昆虫体の保管期間が7日に満たない場合には昆虫体の水分量の低減を図ることが難しくなり、10日を越える場合には昆虫体の水分量が過度に低下する傾向を示す。予備乾燥で昆虫体の水分量は5〜15%に設定されるが、5%を下回る場合には昆虫体の保存後、子実体の形成を再開したときに所望とする子実体の形成が得られなくなる。その一方、15%を上回る場合には、昆虫体の水分量が多くなり過ぎて、昆虫体の保存中に昆虫体が腐敗する結果を招く。
【0026】
また、前記予備乾燥した昆虫体を容器内に充填された乾燥剤中に投入した後、容器内の相対湿度を0〜55%に維持することが望ましい。この場合、昆虫体を容器内に投入した直後における容器内の相対湿度を0〜20%に保持することが好ましい。容器内の相対湿度が55%を超える場合、昆虫体の保管中に昆虫体が腐敗したり、冷蔵又は冷凍保存後に昆虫寄生菌の子実体の形成率が低下する。また、昆虫体を容器内に投入した直後における容器内の相対湿度が20%を超える場合、容器内の相対湿度を55%以下に維持することが難しくなる。
【0027】
この乾燥処理により、昆虫体のもつ水分を速やかに吸収して乾燥を促し、子実体の形成を再開した際に子実体の形成率を高めることができる。乾燥剤としては、シリカゲル(SiO・nHO)、モレキュラーシーブ(分子篩)、塩化カルシウム、生石灰、活性アルミナ等が用いられるが、これらのうち乾燥能力を容易に高めることができる点からシリカゲルが好ましい。係る乾燥処理に当たっては、密閉性の高いガラス容器を用い、そのガラス容器内に乾燥剤を好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上充填する。この場合には、乾燥剤による水分吸収量を増大させることができる。さらに、乾燥処理に際し、昆虫体を乾燥剤中に埋没させて乾燥剤による昆虫体の水分吸収効果を上げることが望ましい。
【0028】
このような操作により、昆虫体内から排出される水分を乾燥剤が吸収するため、昆虫体表面には水滴が存在しなくなる。その結果、昆虫体の表面に糸状菌や細菌が繁殖することを防止することができる。例えば、シリカゲル100gに対して、昆虫体の質量15gの状態で保持すると、容器内の相対湿度を20%以下に保持することが可能となり、最大の相対湿度を55%以下で管理することが可能となる。この方法は、さらに冷蔵又は冷凍保管を助けるという効果を発揮することができる。
【0029】
乾燥剤の使用量は、乾燥剤としてシリカゲルを用いたとき、容器の単位体積当たりのシリカゲルの質量として0.1〜0.13g/cmであることが好ましい。また、冬虫夏草菌を保菌した昆虫体の場合、昆虫体の質量に対してシリカゲルの質量は、7〜17倍であることが好ましく、13〜17倍であることがより好ましい。シリカゲルの使用量が0.1g/cm未満又は7倍未満の場合には、容器内の湿度を十分に低下させることができず、ひいては昆虫体の水分を15%以下にすることが容易ではない。一方、0.13g/cmを超える場合又は17倍を超える場合には、過剰のシリカゲルによって容器内の湿度が過度に低下し、昆虫体の水分を5%を下回るおそれがある。乾燥剤を容器内に入れるとき、そのまま入れておくこともできるが、網袋などに入れておくことが望ましい。なお、シリカゲル等の乾燥剤が昆虫体に直接触れても何ら問題になることはない。
【0030】
続いて、予備乾燥後の保存は、0〜6℃の冷蔵又は冷凍(凍結)にて行われる。係る保存条件によって予備乾燥後の状態が保持され、長期間例えば1年以上、最良の場合には4年間以上に渡って子実体生産能を保持することができる。冷蔵の場合、その温度6℃より高くなると保存状態が悪く、昆虫体が腐敗を生ずる。冷蔵の温度は、0〜2℃であることが好ましい。また、冷凍の温度は、0℃未満で−70℃程度以上であることが好ましく、−10〜−30℃であることがさらに好ましい。冷凍温度を−70℃より低くすることは、冷凍条件が厳しくなり、現実的ではない。
【0031】
昆虫体を冷凍条件下に置く場合には、子実体原基を形成する直前の保菌昆虫体を用いることが望ましい。子実体原基を形成している場合には、これが凍結により壊死しやすいため、子実体を再度生産しようとした場合に子実体の発生数が少なくなる傾向がある。
【0032】
保存に際しては、昆虫体を大量に生産できると共に、低温に維持できかつ湿度調整が可能な容器内に入れることが好ましい。この方法は、大量生産した昆虫体を密閉できる容器、具体的にはガラス瓶又はプラスチック容器に乾燥剤と同時に入れた後、大型の冷蔵室内において保存することも可能である。この方法で再度子実体を発生させるために供用するまで維持することができる。
【0033】
昆虫を冷蔵又は冷凍条件下で保存するためには、子実体原基の成長がないことが必要であり、子実体が形成されつつあるものは、これらの保存により障害又は損傷を受けるのでこれらの方法は適していない。障害又は損傷というのは、具体的には、凍結による子実体原基組織の壊死であり、損傷とは先端の破損又は昆虫体からの欠落等、ひいては生育の遅延、生育の不良をいう。しかし、冷凍に供する昆虫体の形態は、子実体を形成する直前の状態の昆虫体内に冬虫夏草菌が十分に蔓延した保菌状態が望ましい。この状態の昆虫体の生産には14〜20日程度が目安であるが、子実体原基が形成されていない昆虫体の硬化の程度で判断することができる。
【0034】
図1は、昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存装置を模式的に示す説明図である。この図1に示すように、冷蔵庫又は冷凍庫11内には、冬虫夏草菌を保菌した複数個体の昆虫体12が収容され、蓋体13が被せられた複数(図1では2つ)の密閉容器14が保管されている。密閉容器14内には、乾燥剤としてのシリカゲル15が充填され、その中に多数の昆虫体12が埋め込まれている。密閉容器14内の乾燥は予め行っておくことが好ましい。すなわち、昆虫体12の表面に発生した微細な水滴は、昆虫体12をエアーコンディショナー稼働室内に置いて除去した後に密閉容器14内に入れることが好ましい。
【0035】
冷蔵又は冷凍後には、常態、例えば温度20〜25℃、湿度30〜70%に戻して保湿することにより子実体の形成が再開され、所望とする昆虫寄生菌の子実体が容易に得られる。昆虫体は、冷蔵室又は冷凍室から取り出したばかりのときには表面に濡れなどがあり、この表面の水分の乾燥を速やかに行うため、エアーコンディショナーなどで乾燥させた無菌室内に上記密閉容器を配置し、冬虫夏草菌を保菌した昆虫体の表面の微小水滴を蒸発させ湿度を下げることが好ましい。このような操作によって早急に乾燥を行うことができるため、保管した昆虫体の個体品質の向上を図ることができる。また、子実体の大きさは昆虫体からの子実体の発生数に左右されることから、1本の子実体が欠落しても他の子実体が残っていれば事実上の生産には支障がないことが多い。これらの方法により大量の品質の揃った昆虫体が確保できるようになり、子実体の形成に当たって一斉に生産できるという効果を発揮する。
【0036】
上記のように、本実施形態の昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法では、乾燥条件と低温条件とを最適に組合せることで、昆虫体内の菌糸が安定して保存されるため、保存後の子実体の形成率も高く、子実体を速やかに形成させることが可能になる。通常、昆虫寄生菌である冬虫夏草菌の菌糸を人工的に繁殖させて昆虫に感染させると、昆虫が硬化して子実体原基を形成し、該昆虫体は引き続き子実体を形成させる工程に入る。しかし、生産の都合上から昆虫体を一時的に保留しておく必要が生じた場合には、前記冷蔵又は冷凍条件下に保存することにより、長期間例えば1年以上、さらに保存状態が良好な場合には4年以上の保存が可能となる。該昆虫体内の水分を一定の水分量、すなわち昆虫体の水分量を保存可能な程度まで低下させ、菌糸を十分に蔓延させることができる。さらに、昆虫体の中に冬虫夏草菌の菌糸を蔓延させるときに水分が排出されるが、前記乾燥条件によってその水分が吸収され、この工程を円滑に進行させることができる。
【0037】
このことは冬虫夏草菌の子実体の発生を人工的に制御でき、子実体の生産を遅延させることができることを意味する。つまり、冬虫夏草菌を保菌した昆虫体による冬虫夏草菌の子実体の生産制御を可能ならしめるものである。実際の昆虫は気温の上昇により生育が進み、特有の定められた積算温度になれば、幼虫から蛹化、又は蛹から羽化の段階に進む。これを制御して冬虫夏草菌を保菌させ、子実体の生産を行うためには、昆虫の生産量に合わせた子実体の生産が必要となる。冬虫夏草菌子実体の生産が昆虫体のストックという形で計画的に実施できるようになる。
【0038】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような作用及び効果が発揮される。
・ 本実施形態における昆虫に昆虫寄生菌が接種され、感染されて硬化された昆虫体又は子実体原基が形成された昆虫体を、温度が20〜25℃で相対湿度が55〜75%の容器内に保管し、昆虫体の水分量が5〜15%になるように予備乾燥を行う。その後、0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で昆虫体を保存するものである。このため、前記昆虫体は容器内の温度及び相対湿度の条件により、その表面の水分が除去された後、昆虫体内部の水分が徐々に表面に移行して除去され、昆虫体の水分量が菌糸の成長と保存に適した状態となる。続いて、冷蔵又は冷凍保存されることにより、昆虫体は腐敗することなく、長期間に渡って保存される。
【0039】
従って、昆虫寄生菌を昆虫に接種、感染させた後に、昆虫寄生菌の子実体の形成を一定期間停止させ、その後子実体の形成を再開して子実体を容易に形成することができ、子実体の生産を効率良く行うことができる。すなわち、昆虫に対する昆虫寄生菌の感染、子実体の形成という一連の作業工程を途中で停止させて昆虫体を保存し、再度子実体を形成させる作業工程に入ることができる。言い換えれば、昆虫体に対する昆虫寄生菌の感染時期を揃えることが可能になり、昆虫寄生菌の子実体の生産を途中で制御することができ、子実体生産の調整が可能になり、昆虫体を保存して蓄積管理し、必要な個体数が確保できた段階で子実体生産工程に移ることができるようになる。
【0040】
・ 前記予備乾燥した昆虫体を容器内に充填された乾燥剤中に投入した後、容器内の相対湿度を0〜55%に維持し、次いで0〜6℃の冷蔵又は冷凍条件下で保存することが好ましい。この場合、予備乾燥後に昆虫体の乾燥を促進することができ、子実体の形成を再開したときに子実体の形成率を向上させることができる。
【0041】
・ 前記乾燥剤がシリカゲルであることにより、乾燥能力を容易に高めることができる。
・ 昆虫体の複数個体を容器内に保管することにより、昆虫体の複数個体を同時に保存することができ、昆虫寄生菌の子実体の生産性を向上させることができる。
【0042】
・ 昆虫寄生菌が冬虫夏草菌類であることにより、前述の効果を発揮することができ、その利用価値を高めることができる。
【実施例】
【0043】
以下、参考例及び実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
(参考例1〜4及び実施例1、2、保存条件の相違による子実体形成試験)
冬虫夏草菌を主とする昆虫寄生菌(サナギタケ(Cordyceps militalis)、以下の試験は全てサナギタケで行った)の菌糸を人工的に繁殖させてハスモンヨトウ蛹(以下の試験は全てハスモンヨトウ蛹で行った)に感染させ、硬化させた昆虫体又は昆虫体が硬化して子実体原基を形成した昆虫体を用いた。参考例1(乾燥のみ)では、この昆虫体を、乾燥条件として相対湿度80、60、50、40、30、20及び10%以下の乾燥室に置き、定期的に取り出して子実体の形成状態を調べた。参考例2(冷蔵のみ)では、昆虫体を、冷蔵条件として0〜2℃、4〜6℃及び8℃の冷蔵庫内に置き、定期的に取り出して子実体の形成状態を調べた。参考例3(冷凍のみ)では、昆虫体を、冷凍条件として−1、−10及び−70℃の冷凍庫内に置き、定期的に取り出して子実体の形成状態を調べた。なお、参考例4として、無処理の場合の昆虫体について、子実体の形成状態を調べた。
【0044】
実施例1及び2では、予備乾燥として、昆虫体を温度20℃、相対湿度60%とした容器内に10日間保存し、昆虫体の水分量を10%(昆虫体中の水分減少率が90%)とした。そして、実施例1では、予備乾燥した昆虫体を温度2℃で冷蔵保存した。実施例2では、予備乾燥した昆虫体を−20℃で冷凍保存した。保存期間中に定期的に取り出して常態(温度25℃、湿度50%、以下同じ)に戻し、子実体の形成状態を調べた。それらの結果を表1に示した。なお、試験には各々の区に10個体の冬虫夏草菌を保菌した昆虫体を供試した。
【0045】
【表1】


表1に示した結果より、参考例1においては、湿度80、60、50、40、30、20及び10%以下の恒湿度室で保存した昆虫体の発芽は、湿度80%では形成されなかった。湿度60%では1ヶ月後に子実体が一部形成された。湿度50%と40%区では2ヶ月以上安定して1個体から1〜3本以上の子実体が安定して形成された。しかし、3ヶ月を経過すると発生する子実体が0本となるものも発生し、安定しなくなった。湿度30%、20%及び10%以下の条件では3ヶ月間安定して子実体の形成が認められたが、4ヶ月以降はやや不安定となった。従って、湿度の低下に伴って保存の安定化を助長できることが判明した。
【0046】
参考例2において、0〜2℃に保管した昆虫体は6ヶ月後でも子実体の形成が認められ、4〜6℃に保管した昆虫体は3ヶ月後でも子実体の形成が認められた。しかし、8℃の条件で冷蔵保管した場合には、2ヶ月の間は子実体の形成が認められたが、3ヶ月以降では子実体の形成が認められなかった。この結果、2℃以下であれば保管が6ヶ月以上の長期に渡って安定してできることが判明した。
【0047】
参考例3において、−1、−10、−20及び−70℃に保存した昆虫体は6ヶ月間子実体の形成が認められた。さらに、−70℃に保管した昆虫体は24ヶ月後に子実体の形成が良好で、40ヶ月後も子実体の形成が認められた。この結果、冷蔵よりも冷凍の方が長期間の保存に耐え得ることが判明した。
【0048】
参考例4において、無処理では1ヶ月程度で子実体の形成が認められなくなった。
実施例1においては、18ヶ月後までの昆虫体は安定して昆虫体から1〜3本の子実体を形成し、1本の子実体を形成した場合には比較的大型の子実体となった。18ヶ月を過ぎるとそれまでよりはやや不安定であったが、27ヶ月後まで昆虫体からは子実体の形成が認められた。この結果、予備乾燥と冷蔵とを組み合わせることにより、長期間に渡って安定した状態で保存できることが判明した。
【0049】
実施例2においては、48ヶ月間安定して子実体の形成が認められた。従って、長期に渡って保存しようとすれば予備乾燥した後、冷凍する方法が適していることが明らかになった。
(実施例3、子実体原基の形成と冷蔵及び冷凍保存との関係)
昆虫体の保存時に子実体原基が形成され、大きくなっているか否かで冷凍保存後の子実体の形成が影響を受けるか否かについて調べた。子実体原基が形成されていない昆虫体20個体と、子実体原基が形成されて1mm以上の大きさになった昆虫体20個体を各々乾燥冷凍(−70℃)と保管湿度10%の乾燥冷蔵(2℃)をして保存し、3ヶ月後に子実体原基の状況を調べると共に、取り出して常態下で子実体の形成を調べた。
【0050】
この結果、予備乾燥後に冷蔵処理した場合には、子実体原基の形成の如何を問わず子実体の形成に差がなく、子実体も1本から数本形成された。一方、予備乾燥後に冷凍処理した場合には、子実体原基が1mm以上になっているものは組織が壊死し、子実体の形成は悪かった。しかし、この子実体が壊死しても、僅かに認められる子実体原基からは子実体が形成され、これが1本の場合には比較的大型の子実体に成長した。このような結果は予備乾燥後の冷蔵でも同様であった。これらの結果から、昆虫体の保存は子実体原基形成直前までの昆虫体が適していることが判明した。
(実施例4、乾燥剤の処理条件による子実体形成試験)
密閉した保存容器(縦20cm、横20cm及び高さ10cm)内にシリカゲルを50、100、200、300、400及び500gを入れた区を作り、予備乾燥を終了させた昆虫体300個体を同時に入れ、湿度の推移を調べた。400及び500g区は量が多いため、シリカゲル内に昆虫体を埋没させた。その後、温度−20℃の冷凍庫内に昆虫体を保存し、定期的に取り出して常態に戻し、子実体を形成させてその形成率を調べた。
【0051】
その結果、50及び100g区では、湿度が一時的に低下したが、昆虫体内から水分が排出されると湿度が70%以上まで達したため、シリカゲルの量が少ないことが明らかになった。200g区では湿度が一時的に20%程度まで下がり、その後55%程度まで上昇した。300g区では湿度が10%程度まで低下し、その後40〜50%まで上昇した。400及び500g区では湿度が早期に10%以下となり、その後緩やかに40%程度まで上昇した。これらの昆虫体を取り出して子実体の形成を調べた結果、400〜500g区で安定して80%以上の子実体形成率を示した。また、腐敗昆虫体もなかった。
【0052】
このことから、容器の体積当たりのシリカゲル量が400〜500g/4000cm、すなわち0.1〜0.125g/cmのシリカゲル量が適当であると判明した。さらに、昆虫体1個体は約0.1gであることから、昆虫体の質量に対してシリカゲルの質量は、(400〜500)/(300×0.1)=13.3〜16.7、すなわち13〜17倍が適当であると判明した。
(参考例5、冬虫夏草菌を保菌した昆虫体の予備乾燥)
冬虫夏草菌が感染して硬化しはじめたハスモンヨトウの蛹を、15、18、20、23、25及び27℃で、相対湿度50、60、70、80及び90%とした容器内に10日間保存し、昆虫体表面の水分を除去すると共に体内水分を減らし、蛹の重さを量って水分減少量(%)を測定し、その後保湿して子実体を形成させてその形成率(%)を測定した。昆虫体の水分減少量(%)を表2に示し、子実体の形成率(%)を表3に示した。なお、昆虫体の水分減少率は、昆虫体をミイラ化することによって昆虫体のもつ水分絶対量を測定することにより算出した。
【0053】
【表2】


【0054】
【表3】


表2に示した結果より、昆虫体の水分減少量(%)は温度20〜25℃、湿度60〜70%で95〜85%減少した(昆虫体中の水分量は5〜15%)。また、表3に示した結果より、前記条件下での子実体形成率も89〜91%と高かった。一方、湿度が80%以上、又は温度が27℃では腐敗個体が増加した。この結果、冬虫夏草菌が感染して硬化しはじめたハスモンヨトウの蛹は所定の予備乾燥を行うことにより菌糸が蔓延して水分が排出され、腐敗が少なくなり、子実体の形成率が高まることが判明した。
(実施例5、6及び参考例6、乾燥処理による水分除去)
冬虫夏草菌を主とする昆虫寄生菌(サナギタケ)の菌糸を人工的に繁殖させてハスモンヨトウ蛹に感染させ、硬化させた昆虫体を用いた。予備乾燥として、昆虫体を温度20℃、相対湿度60%とした容器内に10日間保存し、昆虫体の水分量を10%(昆虫体中の水分減少率が90%)とした。予備乾燥した昆虫体を、ガラス容器(1000ml)に充填されたシリカゲル10、50、100、200、300及び400gにそれぞれ投入した。そして、参考例6では、常温(25℃)で保存、実施例5では4〜6℃の冷蔵庫内で冷蔵保存、及び実施例6では−20℃の冷凍庫内で冷凍保存し、定期的に昆虫体を取り出して常態に戻し、子実体の形成状態を調べた。それらの結果を表4に示した。
【0055】
【表4】


上記の結果、蛹を入れる前の容器内の相対湿度は0〜20%の範囲で推移した。その後、蛹を容器内に入れると湿度は0〜70%の範囲で推移した。シリカゲルが200gを越すと湿度は55%以下で推移し、10gでは70%まで上昇した。10gの区では蛹の腐敗が起こり、水分を十分除去することができなかった。しかし、湿度が55%以下で推移すると腐敗はなくなった。このことから、蛹を容器内に入れるときの湿度は0〜20%で、その後の相対湿度は0〜55%に保持されと腐敗は生じないことが判明した。
【0056】
また、表4に示した結果より、参考例6の常温で保存したときには、子実体の形成は不良又は子実体は形成されなかった。その一方、実施例5の冷蔵保存した場合には、シリカゲルが300g又は400gで、保存期間が12ヶ月までのとき子実体の形成が良好であった。実施例6の冷凍保存した場合には、シリカゲルが300g又は400gで、保存期間が48ヶ月までのとき子実体の形成が良好であった。
【0057】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記容器として、自動的に恒温、恒湿状態を確保できる装置を備えた容器を用い、予備乾燥などの乾燥を自動的に行うこともできる。
【0058】
・ 昆虫の1固体毎に分けて容器に入れ、1固体に必要な乾燥剤を収容し、各昆虫体の水分量が速やかに5〜15%になるように構成することもできる。
・ 昆虫寄生菌による昆虫の感染度に応じて、昆虫体の予備乾燥の条件を設定することも可能である。
【0059】
・ 予備乾燥中に昆虫体の水分量(又は水分減少量)を測定し、予備乾燥条件を変更して予備乾燥期間を短縮するように構成することも可能である。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0060】
・ 前記昆虫体を、温度が20〜25℃で相対湿度が55〜75%の容器内に7〜10日間保管することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法。このように構成した場合、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、予備乾燥で昆虫体の水分量を容易に5〜15%にすることができる。
【0061】
・ 前記昆虫体を容器内に投入した直後における容器内の相対湿度を0〜20%に保持することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法。このように構成した場合、請求項2から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加えて、容器内の相対湿度を0〜55%に容易に維持することができる。
【0062】
・ 前記予備乾燥した昆虫体を容器内に充填された乾燥剤中に、昆虫体が埋没されるように投入することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存方法。このように構成した場合、請求項2から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加えて、昆虫体内から表面に移行する水分を効果的に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】昆虫寄生菌の子実体生産能を有する昆虫体の保存装置を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0064】
12…昆虫体、14…容器としての密閉容器、15…乾燥剤としてのシリカゲル。
【出願人】 【識別番号】505424457
【氏名又は名称】近藤 幸盛
【出願日】 平成19年6月6日(2007.6.6)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣

【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠


【公開番号】 特開2008−301738(P2008−301738A)
【公開日】 平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願番号】 特願2007−150345(P2007−150345)