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【発明の名称】 キノコの発芽誘導栽培方法及びその装置
【発明者】 【氏名】吉田 和代

【氏名】鮎澤 澄夫

【氏名】枝 克昌

【氏名】山内 隆弘

【要約】 【課題】キノコの菌床栽培において、菌床の所望の部分にキノコの発芽を誘導して優れた品質のキノコをより多く収穫でるようにする方法を提供する。

【解決手段】キノコの菌床栽培において、上部に通気口を備えた栽培容器内に培地を充填し、該培地の上に遮蔽物を、菌が呼吸できるように菌床の上面の任意の一部を露出させて被覆する培地被覆工程と、その培地を栽培容器ごと加熱殺菌する殺菌工程と、常温に冷却した培地にキノコの菌を接種して栽培容器の封をする菌接種工程と、温度、照度及び湿度などの管理を行って菌床に菌糸が蔓延するまで又はキノコの原基が形成されるまで菌を培養する菌糸培養工程と、栽培容器の上部を開封して遮蔽物を除去する遮蔽物除去工程と、原基から成長したキノコが収穫し終わるまで菌床の温度・湿度及び水分などを管理する成長管理工程の各工程を順に行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコの菌床栽培において、上部に通気口を備えた栽培容器内の上部に通気空間を確保して培地を充填し、該培地の上に菌が呼吸しうる露出部を確保しつつ前記通気空間の空気と培地とを遮断する遮蔽物で培地上面の任意の部分を覆う培地被覆工程と、
前記培地被覆工程後、前記培地を前記栽培容器ごと加熱殺菌する殺菌工程と、
前記殺菌工程後、常温に冷却した前記培地にキノコの菌を接種して栽培容器の封をする菌接種工程と、
前記菌接種工程後、菌糸の培養に必要な環境を保つための管理を行って前記培地の上部又は全部に菌糸が蔓延するまで又はキノコの原基が形成されるまで菌を培養する菌糸培養工程と、
前記菌糸培養工程後、前記栽培容器の上部を開封して前記遮蔽物を除去する遮蔽物除去工程と、
前記遮蔽物除去工程後、原基から成長したキノコが収穫し終わるまでキノコの成長に必要な環境を保つための管理をする成長管理工程の各工程と、
から成り、前記遮蔽物により前記菌床の任意の部分にキノコの初期発芽を誘導できるようにしたことを特徴とするキノコの発芽誘導栽培方法。
【請求項2】
遮蔽物除去工程の前における前記菌糸培養工程後に、菌床を遮蔽物で被覆したまま、原基から途中まで成長したキノコの発芽及び成長に必要な環境を保つための管理をする被覆成長管理工程を有したことを特徴とする請求項1に記載のキノコの発芽誘導栽培方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキノコの発芽誘導栽培方法において、菌接種工程以降の工程中は、菌床の側面又は側面並びに底面を遮光して、該遮光面下の菌床部分に原基が形成されるのを抑制することによって菌床の上部に原基の形成及びキノコの初期発芽を誘導できるようにしたことを特徴とするキノコの発芽誘導栽培方法。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のキノコの菌床栽培方法を実施するためのキノコの菌床栽培装置であって、上部には閉じた通気空間が形成され、該通気空間に臨む面には通気口を備えた栽培容器と、
該栽培容器内に前記通気空間を確保して培地を充填したとき、該培地の上面に菌が呼吸しうる露出部が形成されるように該培地の上面に載置される遮蔽物と、を備えたことを特徴とするキノコの発芽誘導栽培装置。
【請求項5】
遮蔽物が、光の全透過性又は半透過性を有することを特徴とする請求項4に記載のキノコの発芽誘導栽培装置。
【請求項6】
菌床栽培装置の側面部位又は側面並びに底面部位を覆う遮光手段を設けたことを特徴とする請求項4又は5に記載のキノコの発芽誘導栽培装置。
【請求項7】
用いる遮蔽物の材質が、加熱変形して上面の凹凸に馴染む熱変形シートであることを特徴とする請求項4から6のうちいずれか1項に記載のキノコの発芽誘導栽培装置。
【請求項8】
用いる遮蔽物の形状が、菌床の上面の面積よりも小さい面積の一枚のシートであることを特徴とする請求項4から7のうちいずれか1項に記載のキノコの発芽誘導栽培装置。
【請求項9】
用いる遮蔽物の形状が、被覆面の一つ又は複数箇所に、孔を開けるか及び/又は被覆面の側部から切り欠くか及び/又は切り裂いて発芽誘導口を形成したことを特徴とする請求項4から8のうちいずれか1項に記載のキノコの発芽誘導栽培装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、シイタケなどのキノコの菌床栽培方法と、そのキノコの菌床栽培方法を実施するためのキノコの菌床栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シイタケなどのキノコの菌床栽培において、菌床の側面で発芽し成長したキノコは、子実体のクキが上方に湾曲しカサ部分が横に広がって側壁面に当たり、菌床同士が接近していると隣の菌床同士のキノコが接触して成長し、このときカサが押し潰されたような変形が生じて商品としての品質が低下する。子実体のカサにそのような変形がない高品質のキノコを収穫するためには、菌床の上面などの特定部位にキノコを発芽させることが重要であるが、シイタケなどのキノコは発芽するに適した条件さえあれば、菌床のいずれの箇所にでも発芽するので、栽培者が望む特定の箇所に限定してキノコを発芽させることは大変に困難であった。
そこで、菌床に菌糸が蔓延した後で、菌床の側面に形成される原基の成長を抑制してカサの変形が少ないように、菌床の上面部分にだけシイタケなどのキノコを発芽させるようとした下記特許文献1の栽培方法が提案され実施されてきた。
【特許文献1】特許第3087171号の特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、シイタケなどの菌床の側面にキノコが発芽するのを抑制することによって開放された菌床の上部に無理に発芽させようとするものであり、菌床に菌糸が蔓延して原基が形成されるまで栽培工程においては菌床の上部は空気に曝され乾燥が激しく、原基を形成するための生育条件が菌床の側面より悪くなり、菌床の上部の中央部からのキノコの発生数が遅れたり発生が少なかったりし、さらに管理が不十分で充分な側面からの発芽の抑制ができない場合には菌床の中央部よりは菌床の側面や上部辺縁部の好ましくない部分により多くキノコが発生してしまう難点があった。
即ち、菌床の側面に成長するキノコは、カサ部分が側壁面に当りつつ成長し、カサの当った部分が押し潰されたような形状に変形を起こし、また菌床の上部辺縁部に発芽するキノコは接近状態で並べられた隣の菌床に上部辺縁部に発芽するキノコと接触しカサ同士の当った部分が押し潰されたような形状に変形を起こし、これがキノコの品質低下の原因となっていた。
また、容器内で菌床の側面に発生したキノコは抑制するために入れた水に漬かって、成長途中で腐ってしまうので、腐敗菌の蔓延を防ぐため側面の発芽は見つけ次第除去しなければならず、この管理に多くの手間を要していた。
【0004】
また、上記特許文献1の方法を実施するにあたっては、高品質のきのこを多く得るために、菌床の側面の最上部から菌床の上部に被るように容器の縁を高くしたり、栽培容器内の水位をできるだけ高めに保持させたり、また細かい温度管理などの環境管理を行うことによって菌床の辺縁部を発芽にとって悪条件を作り出すことで、できるだけ上面の中央部に発芽するような工夫で問題を解決しようとしてきた。
しかしこのような種々の工夫により菌床の上部などの好ましい部位のみにキノコが発芽するための条件を整えようとしても、その管理は難しい割りは効果が容易に得られるものではなかった。
さらに、キノコの品種によっては、もともと菌床の上部からの発芽が極端に抑制される性質をもったものもあり、このようなキノコではさらに菌床の上部から強制的に発芽させることは容易ではなかった。
【0005】
そこで本発明はキノコの菌床栽培において、発芽抑制による栽培方法の上記問題に鑑みてなされたもので、これまで困難であった菌床の上部など好ましい所望箇所へ発芽を、菌床の他の部分での発芽を抑制することのみによらず、むしろ原基形成及び発芽を菌床の所望箇所へ積極的に誘導することによって、菌床の所望箇所に優先的にキノコを発芽成長させるようにして、高品質のキノコをより多く収穫することが可能となるキノコの発芽誘導栽培方法と、その栽培方法を実施するためのキノコの発芽誘導栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のキノコの発芽誘導栽培方法における請求項1に記載の発明は、キノコの菌床栽培において、上部に通気口を備えた栽培容器内の上部に通気空間を確保して培地を充填し、該培地の上に菌が呼吸しうる露出部を確保しつつ前記通気空間の空気と培地とを遮断する遮蔽物で培地上面の任意の部分を覆う培地被覆工程と、前記培地被覆工程後、前記培地を前記栽培容器ごと加熱殺菌する殺菌工程と、前記殺菌工程後、常温に冷却した前記培地にキノコの菌を接種して栽培容器の封をする菌接種工程と、 前記菌接種工程後、菌糸の培養に必要な環境を保つための管理を行って前記培地の上部又は全部に菌糸が蔓延するまで又はキノコの原基が形成されるまで菌を培養する菌糸培養工程と、前記菌糸培養工程後、前記栽培容器の上部を開封して前記遮蔽物を除去する遮蔽物除去工程と、前記遮蔽物除去工程後、原基から成長したキノコが収穫し終わるまでキノコの成長に必要な環境を保つための管理をする成長管理工程の各工程とで構成される。
そして、前記遮蔽物により前記菌床の任意の部分にキノコの初期発芽を誘導できるようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載のキノコの発芽誘導栽培方法において、上記遮蔽物除去工程の前における前記菌糸培養工程後に、菌床を遮蔽物で被覆したまま、原基から途中まで成長したキノコの発芽及び成長に必要な環境を保つための管理をする被覆成長管理工程を有したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1又は2に記載のキノコの発芽誘導栽培方法において、菌接種工程以降の工程中は、菌床の側面又は側面並びに底面を遮光して、該遮光面下の菌床部分に原基が形成されるのを抑制することによって菌床の上部に原基の形成及びキノコの初期発芽を誘導できるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1から3のうちいずれか1項に記載のキノコの菌床栽培方法を実施するためのキノコの菌床栽培装置であって、上部には閉じた通気空間が形成され、該通気空間に臨む面には通気口を備えた栽培容器と、該栽培容器内に前記通気空間を確保して培地を充填したとき、該培地の上面に菌が呼吸しうる露出部が形成されるように該培地の上面に載置される遮蔽物とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、上記請求項4に記載のキノコの菌床栽培装置であって、上記遮蔽物が、光の全透過性又は半透過性を有することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、上記請求項4又は5に記載のキノコの菌床栽培装置であって、上記菌床栽培装置の側面部位又は側面並びに底面部位を覆う遮光手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、上記請求項4から6のうちいずれか1項に記載のキノコの菌床栽培装置であって、用いる上記遮蔽物の材質が、加熱変形して上面の凹凸に馴染む熱変形シートであることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、上記請求項4から7のうちいずれか1項に記載のキノコの菌床栽培装置であって、用いる上記遮蔽物の形状が、菌床の上面の面積よりも小さい面積の一枚のシートであることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、上記請求項4から8のうちいずれか1項に記載のキノコの菌床栽培装置であって、用いる上記遮蔽物の形状が、被覆面の一つ又は複数箇所に、孔を開けるか及び/又は被覆面の側部から切り欠くか及び/又は切り裂いて発芽誘導口を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のキノコの発芽誘導栽培方法及びその装置は以上の構成であり、キノコの発芽誘導栽培方法においては、培地被覆工程で栽培容器内の上部に形成される通気空間と栽培容器に充填された培地の上面とが、上面の露出された任意の一部を除いた培地が遮蔽物で遮断される。
そして、殺菌工程で雑菌を殺菌した培地に接種されたキノコの菌のみが、菌糸培養工程で菌糸の培養に必要な環境を保つための温度、照度及び湿度などが最適に管理された環境下で、さらに菌床上面の露出された任意の一部を除いた培地の表面部分は覆われた遮蔽物で上部の通気空間にある空気との接触が遮断されて乾燥が防止され、この遮蔽物下の培地部分では光透過性の遮蔽物から入る光又は露出部分から照射される光と、好適な水分条件の下で、光を受けつつ菌糸の成長が促進されて菌糸が蔓延する。
【0016】
そしてこの菌糸培養工程で菌床に菌糸が蔓延した遮蔽物下の部分の露出部分との境目部分を中心に、他の部分より優先的にキノコの原基が形成されて、そこに優先的に発芽が起こる。
その後遮蔽物除去工程で前記遮蔽物は菌床から取り除かれ、キノコの発芽及び生長に必要な環境を保つための菌床の温度、照度、湿度及び水分などが管理されて、図14に示すように、前記遮蔽物があった境目部分を中心に原基が先に成長して発芽し、成長したキノコが収穫される。
【0017】
例えばシイタケでは、遮蔽物があった部分と露出されていた部分との境界を中心に優先的に原基が形成されやすい性質があるので、このことを考慮して菌床の任意の位置に計画的に前記遮蔽物を覆うことで、図15に示すように、所望の箇所に発芽させてキノコを成長させ、高品質のキノコを多く得ることが可能となる。
また、従来の上面栽培方法においては、側面および底面部の原基の形成を抑制するため、菌床を一定期間30°C程度の高温に維持間管理しなければならなかったが、本発明ではこの温度管理が省略でき、このため労力を軽減でき、さらには施設のランニングコストを抑えることが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明においては、菌床の側面又は側面と底面を遮光することで、この遮光面下の菌床部分に原基が形成されるのを抑制するこができ、この結果、遮光されない菌床の上部に原基の形成が促進されて菌床のこの部分にキノコの初期発芽が誘導される。
【0019】
請求項4に記載のキノコの菌床栽培装置では、菌床の上面に載置される遮蔽物によって上記方法を確実に実施することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明においては、光の全透過性又は半透過性を有する遮蔽物を通してその下にある菌床部分に光を照射できるので原基の形成及び成長を促すことができる。
ただし、本発明では光透過性がないシートなどの遮蔽物を用いた場合でも、遮蔽物に覆われていない露出部分から光が照射されるので、露出部分の大きさや形状によっては部分的に光が届かず原基の形成が若干遅れることはあっても、光が入る露出部分近辺では原基の形成がなされる。
【0021】
請求項6に記載の発明においては、遮光手段で菌床の側面又は側面と底面部分への光が遮断され、その遮光下の菌床面の原基の形成が抑制される。この結果、菌床の上部にキノコの初期発芽をより多く誘導できる。
この遮光手段は、栽培装置の側面部位や側面と底面部位を覆う大きさの遮光シートや、栽培容器の側面部位や側面と底面部位に塗布された遮光塗料などが採用できる。
この遮光性シートを装着するか又は遮光性の塗料を塗布するのは、元来、シイタケなどのキノコでは原基の形成に光が必須条件であるという性質を利用したもので、このように光を遮断すると、この部分には確実に原基を形成させないようにできる。
そして、遮光下の菌床面の原基の形成が抑制されて、該菌床の上部により積極的にキノコの初期発芽が誘導できるようになる。
【0022】
請求項7に記載の発明においては、用いる遮蔽物の材質が、加熱変形して上面の凹凸に馴染む熱変形シートとすれば、空気との接触や空気の流通がより抑えられ、菌床表面の乾燥の防止に役立つ。
【0023】
用いる遮蔽物の形状は、請求項8に記載の発明では、菌床の上面の面積よりも小さい面積の一枚のシートとし、その結果として確保される菌床の露出部分から、菌が呼吸することが可能となり、またそれとあわせて菌の接種も可能となる。
また請求項9に記載の発明では、被覆面の一つ又は複数箇所に設けた孔や被覆面の側部からの切欠き及び内部の切り裂きなどのうち、いずれか少なくともひとつを採用することにより発芽誘導口が形成され、このため遮蔽物を菌床の上に被せても、ここから菌の呼吸や菌の接種が可能となる。
そして、その菌床露出部分や発芽誘導口の位置や大きさなどを任意に形成することで菌床の所望場所に優先的にキノコの発芽を誘導することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、キノコの発芽誘導栽培方法とその栽培方法を実施するための装置である。
そこで先ず、キノコの発芽誘導栽培方法から説明する。
本発明の栽培法の工程は、図1に示すように、培地被覆工程、殺菌工程、菌接種工程、菌糸培養工程、遮蔽物除去工程、成長管理工程、の順に進み、最後にキノコが収穫される。
【0025】
この工程をさらに詳しく以下説明する。
本発明のキノコの菌床栽培方法は、前記培地被覆工程においては、図3に示すように、上部に通気口9を備えた栽培容器1を使用し、図4に示すように、その栽培容器1内に上部を空けてブロック状に培地19を充填する。以下前記栽培容器1は合成樹脂製の袋容器で説明するが、本発明における栽培容器はビンであっても良い。
この培地19は、シイタケの場合では、広葉樹チップ、オガコに栄養体及び水を加えた原料が使用される。
そして、図5に示すように、前記培地19の上に光の全透過性又は半透過性を有する非通湿性の遮蔽物5を、菌が呼吸できるように培地19の上面に所望の任意の一部(図5では中央の孔10が一ヶ所あること示す)を露出させて被覆する。
【0026】
前記遮蔽物5は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製で耐熱性を有したものやアルミシートなどの使用が可能である。
培地19の上面の任意の一部を露出させることが可能となる遮蔽物5の形状は、図17に示すような中央に一つの丸い孔15を開けた被覆シート5aや、図18に示すような複数の丸い孔15を開けた被覆シート5bや、図19に示すような矩形の孔15を開けた被覆シート5cや、図20に示すような周囲に切欠き17設けた被覆シート5dや、図21に示すような切り裂き16を入れた被覆シート5eなどが可能である。
また、前記図21に示す切り裂き16を入れた被覆シート5eでは、図22に示すように切込み16部分が菌床の凹凸で変形して隙間が生じるので、培地19の上面の任意の一部を露出させることが可能となる。
【0027】
次の前記殺菌工程では、図6に示すように、栽培容器1の上部側を折り畳んで、前記培地19を前記栽培容器1ごと加熱殺菌する。
【0028】
本発明では、前記殺菌工程を前記培地被覆工程後に行うことで、一度で、前記栽培容器1と前記培地19と前記被覆シート5eとを効率良く殺菌できるが、予め前記栽培容器1と前記培地19と前記被覆シート5eを別々に殺菌することもできる。この場合でもこの後に続く工程は全く同じように行うことができる。
【0029】
その次の前記菌接種工程では、前記殺菌工程後常温に冷却した培地19の露出部に、図7に示すように、キノコの種菌13を接種して、図8に示すように、栽培容器1の口1bの封をする。
【0030】
次に前記菌糸培養工程では、図8に示すように、栽培容器1の口1bを封した状態のままで、温度、照度及び湿度などの管理を行って菌床4に菌糸が蔓延するまで又はキノコの原基が形成されるまで菌を培養する。
【0031】
この菌糸培養工程においては、シイタケの菌糸は、種菌の接種後、予め開けておいた遮蔽物5の孔などに培地19の露出部分を通過し、培地19を分解及び腐朽し、菌床4の熟成が進行する。
遮蔽物5を置くと、置かない場合に比べて、種菌13と培地19の接触部分が少なく限定されるため、培地19の上部分から底部への菌糸の伸長速度はやや遅れるが、その分、キノコの発生を得たい上部分の菌床4の熟成は、側面や底面部より高めることができる。
その結果、目的とする菌床4の所望した上面部分には、遮蔽物5の効果と相俟ってより潤沢に原基を含んだ良好な菌糸塊12が形成される。
【0032】
この工程で培養した結果、側面や底面部に比べて菌床4の遮蔽物5の下部には原基がより旺盛に形成され、培養終了時に袋上部開放とともに遮蔽物5を取り除くと、確実に遮蔽物5を置いた菌床4の上部分から多くのきのこが発生する。
【0033】
次に前記遮蔽物除去工程では、図9に示すように、前記栽培容器1の上部を開封して遮蔽物5を除去する。
このとき、図14に示すように、前記菌床4の遮蔽物5を除去した上部分には潤沢に原基を含んだ良好な菌糸塊12が形成されている。
【0034】
この遮蔽物5を除去するタイミングは、キノコの種類によっては、このように前記菌糸培養工程後にすぐに行うことはせずに、前記菌糸培養工程後もしばらく菌床を遮蔽物で被覆したままにしておき、そのまま原基からキノコの生長途中までキノコの発芽及び成長に必要な環境を保つための管理をする工程、即ち被覆成長管理工程を行うほうが良いものもある。
この被覆成長管理工程においては、キノコは遮蔽物を下から押し上げつつ成長するが、遮蔽物により押し潰され変形してしまうようなことはなく、このため品質上には何ら問題はない。
【0035】
そして次の成長管理工程では、図10に示すように、前記栽培容器1の上部を開放した状態で前記菌床4の温度、照度、湿度及び水分などを管理すると、菌床の上部に誘導された原基から、図14に示すように、キノコが発芽を開始し、図15に示すように、成長する。
例えばシイタケでは、図15に示すように、菌床4の遮蔽物5があった部分Aと露出されていた部分Bの境界Cに最も優先的に原基が形成されやすい性質がある。したがって、このことを考慮して計画的に遮蔽物5で菌床4を覆うことで、菌床4の所望の箇所に初期発芽を誘導し、高品質のキノコを多く得ることが可能となる。
【0036】
なお、前記菌接種工程以降の栽培工程中においては、図11に示すように、前記菌床4の側面や底面を遮光手段14である遮光シート14aを用いて遮光し、該遮光面下の菌床部分に原基が形成されるのを抑制することによって、より確実に前記菌床4の上部に原基の形成及びキノコの初期発芽を誘導できるようにすることができる。
【0037】
また、上記成長管理工程においては、図2に示すように、次の方法(A)、(B)又は(C)の選択が可能である。
即ち、(A)それまで使用してきた栽培容器1に入れたまま菌床4の上部を露出させ(図12に示す)、その後そのまま原基から成長したキノコが収穫されるまで菌床4の温度、照度、湿度及び水分を管理し収穫する。さらに、次の2回目以降の原基から成長したキノコが収穫されるまで菌床4の温度、照度、湿度及び水分などを管理すれば、再度収穫することもできる。
(a)その際、図12、図13及び図15に示すように、菌床4の上部まで収納可能な容器を用い、該容器内に給水しつつ菌床4の上部近くまで水位を維持して水位下の原基の形成を水8で抑制することによって該菌床4の上部にキノコの発芽を継続的に誘導できるようにすることも可能である。
【0038】
(B)それまで使用してきた栽培容器1から菌床4を取り出し、該菌床4の少なくとも側面及び上面4aを露出させ、その後そのまま原基から成長したキノコが収穫されるまで菌床4の温度、照度、湿度及び水分を管理し収穫する。さらに、次の2回目以降の原基から成長したキノコが収穫されるまで菌床4の温度、照度、湿度及び水分などを管理すれば、再度収穫することもできる。
【0039】
(C)それまで使用してきた栽培容器1から菌床4を取り出し、該菌床4を別の管理容器18に移し替え、図16に示すように、その管理容器18に入れたまま該菌床4の上部を露出させ、その後そのまま原基から成長したキノコが収穫されるまで菌床4の温度、照度、湿度及び水分を管理し収穫する。さらに、次の2回目以降の原基から成長したキノコが収穫されるまで菌床4の温度、照度、湿度及び水分などを管理すれば、再度収穫することもできる。
(c)その際、菌床4の上部まで収納可能な容器を用い、該容器内に給水しつつ菌床4の上部近くまで水位を維持して水位下の原基の形成を水8で抑制することによって該菌床4の上部にキノコの発芽を継続的に誘導できるようにすることも可能である。
【0040】
上記いずれかの方法を選択した場合でも、図11に示すように、前記菌床4の側面4bを遮光手段14で遮光し、該遮光面下の菌床部分に原基が形成されるのを抑制することによって、より確実に前記菌床4の上部に原基を形成しそこから成長したキノコが収穫できるようになる。
【0041】
次に、上記キノコの発芽誘導栽培方法を実施するためのキノコの発芽誘導栽培装置について説明する。
本発明のキノコの発芽誘導栽培装置は、図8に示すように、上部には閉じた通気空間3が形成され、該通気空間3に臨む容器面には通気口2を備えた栽培容器1と、該栽培容器1内に前記通気空間3を確保して培地19を充填したとき、該菌床4の上面の一部にキノコの菌が呼吸しうる露出部が形成されるように培地19の上面に載置される光の全透過性又は半透過性を有し非通湿性の遮蔽物5とを備えて成る。
【0042】
前記培地19は、シイタケの場合、広葉樹チップ、オガコに栄養体及び水を加えた材料などが使用される。
前記遮蔽物5は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの光の全透過性又は半透過性を有する合成樹脂製で耐熱性を有したものやガラス板などが使用できる。
この遮蔽物5下の菌床部分では全透過性又は半透過性の遮蔽物5を介して光が照射され、好適な水分条件の下で光を受けつつ菌糸の成長が促進されて菌糸の蔓延が可能となる。
なお、光の非透過性を有したの遮蔽物5を使用した場合であっても、その遮蔽物5に覆われていない露出部分から光が照射されるので、その露出部分付近では原基の形成及び成長が可能となる。
そして、前記通気口2には雑菌侵入防止用の通気性フィルター9を被着する。
【0043】
また、図11に示すように、前記菌床4の側面4b部分に近接する菌床栽培装置の側面部位を覆う遮光手段14を設けることができる。
この遮光手段14は、各種形態が可能であるが、栽培装置1の側面1c部位や底面部位を覆う大きさの遮光シート14a又は栽培容器1の側面1c部位や底面部位に塗布された遮光塗料なども使用が可能である。
【0044】
この装置に用いる遮蔽物5の材質は、加熱変形して培地19の上面の凹凸に馴染む熱変形シートも使用することができ、その場合、殺菌工程での加熱によって培地19の上面の凹凸に沿った変形が起こり、培地19の凹凸間の隙間が減少して、より空気の流通が抑えられ、その遮蔽物5下の菌床の表面をより効果的に乾燥を防止させることができるようになる。
【0045】
また、用いる遮蔽物5の形状は、菌床4の上面の面積よりも小さい面積の一枚のシートである場合には、菌床の露出部分から菌の呼吸が可能となり、またあわせて菌の接種も可能となる。
さらに遮蔽物5の形状は、図17、図18及び図19に示すように、被覆面の一つ又は複数箇所に、孔15を開けるか、図20に示すように、被覆面の側部から切欠き17を設けるか、又は図21に示すように、切り裂き16を入れれば、菌床の上に被せた遮蔽物に発芽誘導口10などの菌床露出部分が形成され、ここから菌の呼吸が可能となり、またあわせて菌の接種も可能となる。
さらに、菌床露出部分や発芽誘導口の位置や大きさなどを任意に形成すれば、自由に菌床の所望場所にキノコの発芽を誘導することが可能となる。
また、前記発芽誘導口10は、シイタケの場合では、培地と種菌が接触して菌糸が活着伸長できるために、菌糸が培地に到達するための経路となり、また、培養中のシイタケ菌糸が培地19に蔓延して菌床4として熟成するために必要な空気の摂取が可能となる。
【0046】
(実験例1)
栽培容器の上部の通風口にポリエチレン製袋にフィルターが装着された袋容器を使用し、横20cm、縦12cm、高さ17cm重量約2,700gの角型培地を成型し、横20cm、縦12cm、中央部に直径3cmの孔を開けたポリプロピレン製のシート状遮蔽物(被覆シート)を培地の上部分に置いた。
その後、蒸気で加熱殺菌し、冷却して、その遮蔽物上からシイタケ種菌を接種した。
キノコの品種は北研607号(品種名)を使用し、菌糸培養工程では温度20°Cの調節して120日間管理を行った。
菌糸培養工程を終了してから、菌床の栽培容器を取り除き、合わせて被覆シートを取り除いた。
そして、成長管理工程では、温度15〜20°Cの日較差をつけた環境で管理した。
2回目以降の発芽については、数時間の浸水操作を行い、この発芽刺激によって計6回の収穫を行い、6回の収穫に要した期間は175日間である。
【0047】
この遮蔽物で被覆したシート被覆物群と、上記工程中で被覆を行わなかった通常群(コントロール群)との比較実験を行い、本発明の効果を確認した。
その比較実験の結果を下記表1に示す。
【0048】
【表1】


【0049】
(実験例2)
栽培容器の上部の通風口にポリエチレン製袋にフィルターが装着された栽培袋を使用し、横20cm、縦12cm、高さ17cm重量約2,700gの角型培地を成型し、横20cm、縦12cm、中央部に直径3cmの孔を開けたポリプロピレン製のシート状遮蔽物5aを培地上部分に置いた。
その後、加熱殺菌してこれを冷却し、シート状遮蔽物上からシイタケ種菌を接種し、接種後、菌床培地の側面と底面に遮光性のシート1を装着した。
キノコの品種は北研607号(品種名)を使用し、菌糸培養工程では温度20°Cの調節して120日間管理を行った。
菌糸培養工程を終了してから、菌床の栽培容器を取り除き、合わせて被覆シートを取り除いた。
そして、成長管理工程では、温度15〜20°Cの日較差をつけた環境で管理した。
2回目以降の発芽については、数時間の浸水操作を行い、この発芽刺激によって計6回の収穫を行い、6回の収穫に要した期間は175日間である。
【0050】
この遮蔽物を被覆し側面と底面に遮光性シート14を装着した当該シート+側面/底面遮光性フィルム装着群と、上記工程中で遮光性シートをせずに遮蔽物を被覆したシート被覆物群との比較実験を行い、本発明の効果を確認した。
その比較実験の結果を下記表2に示す。
【0051】
【表2】


【0052】
上記試験例1及び実験例2で、表1及び表2の実験データが得られ、この結果から、以下のことが確認できた。
即ち、上記試験例1では、遮蔽物のない通常群(コントロール群)においては、1回目の発生(初期発芽のよるもの)では、菌床の側面及び底面部からは32個と多く発生し、上部分には6個と側面及び底面部と比べて極めて少なく、この場合、キノコのかさの部分に変形が起きて品質の低い商品となる可能性が高いが、これに対して本発明である当該シート被覆群では、1回目のキノコの発生、即ち初期発芽が、シート状の遮蔽物を置いた上面部分を中心として優先的に起こり、ここに品質の優れたキノコが25個と多く発生した。そして、側面及び底面部はこれに比べて4個と極めて少ないことが分かる。
その後の2回目以降の発芽は特に3回目以降は遮蔽物による効果が殆どなくなり、どちらも同じような収穫で、本発明の被覆物による栽培方法では、このようにキノコの第1回目の発芽(初期の発芽)が菌床の上部分に誘導されるという特徴的な効果が得られることが実証された。
【0053】
また、上記実験例2では、遮蔽物を置き且つ菌床の側面及び底面部を遮光性シートで覆って菌床を培養すると、菌糸培養工程において、菌床の側面及び底面部からの原基の発生が確実に抑えられ、1回目のキノコの発生、即ち初期発芽が、遮蔽物を置いた上部分を中心として優先的に起こり、上部分に品質の優れたキノコが26個と、遮光性シートで覆うことにより、遮光性シートを使用しない当該シート被覆群よりも多くキノコを発生させることができた。
そして、このとき遮光性シートで覆った群の側面及び底面部では、キノコの発生は「0」であり、この分の栄養が菌床の上部分に回り1回目のキノコの発生数を増加させることとなったものと考えられる。
また、遮光性シートで覆った群の側面及び底面部は2回目以降でもキノコの発生が全て「0」であり、このとき上部分においてはいずれもキノコの発生数が遮光性シートをしない当該シート被覆群よりも増加していることが分かる。
以上の結果から、菌床の側面を遮光することによってキノコの発芽を抑制することの有効性が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の方法は、シイタケとそれ以外の各種キノコの菌床栽培に使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の栽培工程を示すフロー図である。
【図2】成長管理工程における工程解説図である。
【図3】(イ)が培地、(ロ)が栽培容器を示す斜視図である。
【図4】栽培容器に培地を入れた状態を示す斜視図である。
【図5】(イ)の遮蔽物を、(ロ)の培地を入れた栽培容器に入れる前の状態を示す斜視図である。
【図6】培地上に遮蔽物を載せて殺菌する際の状態を示す斜視図である。
【図7】種菌を培地に撒いた状態を示す斜視図である。
【図8】培地を入れた栽培容器の封をした状態を示す斜視図である。
【図9】栽培容器を開封して(イ)が除去した遮蔽物を、(ロ)が培地を入れた栽培容器を示す斜視図である。
【図10】栽培容器内の培地の上部を露出させた状態を示す斜視図である。
【図11】培地を入れた栽培容器の封をして、(イ)が遮光手段を、(ロ)がその遮光手段を栽培容器の施した状態を示す斜視図である。
【図12】菌床を入れた栽培容器の上部を開放した状態を示す縦断斜視図である。
【図13】菌床の縦断斜視図である。
【図14】原基が成長したときの菌床の縦断斜視図である。
【図15】キノコが成長したときの菌床の縦断斜視図である。
【図16】2回目のキノコが成長したときの菌床の縦断側面図である。
【図17】遮蔽物を示す斜視図である。
【図18】別の遮蔽物を示す斜視図である。
【図19】また別の遮蔽物を示す斜視図である。
【図20】また別の遮蔽物を示す斜視図である。
【図21】また別の遮蔽物を示す斜視図である。
【図22】培地の上に遮蔽物が載っている状態を示す要部の縦断斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 栽培容器
1a 栽培容器の上部
2 通風口
3 栽培容器の通風空間
4 菌床
4a 菌床の上面
5 遮蔽物
5a 被覆シート
5b 被覆シート
5c 被覆シート
5d 被覆シート
5e 被覆シート
6 栽培容器の開口部
7 キノコ
8 水
9 通風フィルター
10 発芽誘導口
11 輪ゴム
12 菌糸塊
13 種菌
14 遮光手段
14a 遮光シート
15 孔
16 切り裂き
17 切欠き
18 管理容器
19 培地
A シート被覆部
B 露出部
C 境目周辺
【出願人】 【識別番号】000242024
【氏名又は名称】株式会社北研
【出願日】 平成19年5月7日(2007.5.7)
【代理人】 【識別番号】100095739
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 俊夫


【公開番号】 特開2008−271918(P2008−271918A)
【公開日】 平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願番号】 特願2007−122082(P2007−122082)