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【発明の名称】 植物栽培施設における植物栽培装置
【発明者】 【氏名】仁科 弘重

【氏名】高山 弘太郎

【氏名】羽藤 堅治

【氏名】村川 昇万

【氏名】牟田 博一

【氏名】大野 雄三

【氏名】吉田 和弘

【要約】 【課題】自動的に、しかも品質の高い植物(例えば高糖度)を栽培するための植物の栽培方法と装置を提供すること。

【解決手段】生育途中のトマトなど植物の葉を所定位置のカメラ2で撮影し、撮影された画像データの基準とする画像データと比較してCPU3bにより葉の萎れ度合を判定し、葉の萎れ度合に基づいて萎れを解消するべく培養液供給装置5から植物へ水分、養分を供給する。また、植物の培地から排液が排出されることに基づいて、植物への培養液供給を停止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生育途中の植物の葉を所定位置から撮影する撮影装置(2)と、
該撮影装置(2)で撮影された画像データに基づいて葉の萎れ度合を判定する萎れ判定手段(3b)と、
該萎れ判定手段(3b)で判定した萎れ度合に基づいて萎れを解消するべく植物へ培養液を供給する培養液供給装置(5)とを設け、
該培養液供給装置(5)は、植物の培地から排液が排出されることに基づいて植物への培養液供給を停止する構成とした植物栽培施設(10)における植物栽培装置。
【請求項2】
前記撮影装置(2)により植物栽培施設(10)内の各所を撮影できるように、該撮影装置(2)を移動させる移動装置(12)を設けた請求項1記載の植物栽培施設における植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培施設において、自動的に植物に培養液を供給する給液制御が行える植物の栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食用植物および鑑賞用植物の栽培は人手にたよる作業が多いにもかかわらず、農業人口の減少と近隣諸国の安い農作物等の輸入等により、日本の農業の将来性が危ぶまれている。この様な背景にもとに農作業の機械化と自動化の研究開発が活発化している。
特に果実、なかでも糖度の高いトマトなど商品価値の高い作物を人手を掛けずに自動的に栽培する技術開発が行われている。
【0003】
例えば特開2002−238361号公報記載のトマトの栽培方法の発明では、給水と施肥方法の工夫と植物の成長に応じた茎の支持方法の工夫により、品質が高く収穫量が多いトマトを栽培する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−238361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の発明は、トマトの栽培時の給水などを適切に行い、高品質のトマトを栽培するというものであるが、果実の栽培を自動化したとはいえず、手間の掛かる栽培方法を踏襲するものである。
【0005】
本発明の課題は、自動的に、しかも品質の高い植物(例えば高糖度)を栽培するための植物栽培施設における植物の栽培装置を提供することである。
なお、植物とは果実、蔬菜、穀物等の農作物に限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、生育途中の植物の葉を所定位置から撮影する撮影装置(2)と、該撮影装置(2)で撮影された画像データに基づいて葉の萎れ度合を判定する萎れ判定手段(3b)と、該萎れ判定手段(3b)で判定した萎れ度合に基づいて萎れを解消するべく植物へ培養液を供給する培養液供給装置(5)とを設け、該培養液供給装置(5)は、植物の培地から排液が排出されることに基づいて植物への培養液供給を停止する構成とした植物栽培施設(10)における植物栽培装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記撮影装置(2)により植物栽培施設(10)内の各所を撮影できるように、該撮影装置(2)を移動させる移動装置(12)を設けた請求項1記載の植物栽培施設における植物栽培装置である。
なお、本発明の培養液供給装置(5)から植物に供給される培養液は肥料含有液のみならず水も含まれる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、撮影装置(2)で撮影された画像データに基づいて葉の萎れ度合を萎れ判定手段(3b)で判定し、この萎れ度合に基づいて萎れを解消するべく植物へ水分、養液などを供給できるので、植物を萎れさせて枯らすようなことを防止でき、ひいては植物に適度な水ストレスを与えながら栽培することができる。更に、植物の培地から排液が排出されることに基づいて植物への水分などの供給を停止する構成としたので、必要以上に水分等の供給がなされることがなく、しかも植物に確実に水分などを供給することができ、植物を萎れさせて枯らすようなことを確実に防止できる。
【0009】
また、請求項2の発明によると、請求項1の発明の効果に加えて、移動装置(12)により撮影装置(2)を移動させて施設(10)内の各所を撮影できるので、施設(10)内の局所で萎れが発生していても逸早く萎れを判断でき、ひいては植物を萎れさせて枯らすようなことを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を図面とともに説明する。
図1に本実施例の植物の栽培方法の概念図を示す。植物としてトマトを例に説明するが、本発明はトマトに限定されるものではない。
トマト生育施設(ハウス)10(図3、図4)内の栽培容器1に植えられて生育中のトマトの葉をトマトの上方から撮影するために、デジタルカメラ(撮影装置)2をハウス10の適宜の支持部材(図示せず)に支持させてトマトの上方に配置する。またカメラ2で撮影された画像のデジタルデータは制御装置(コンピュータ)3に送信する構成になっている。さらにトマトの植えられた栽培容器1には培養液供給装置5から培養液が供給される。
【0011】
またトマトの植えられた栽培容器1はガーター6に載せておき、該ガーター6の底部には排液流通口6aを設けておき、栽培容器1に供給された培養液はトマト生育に利用された後に落下して排液タンク7に回収される。ガーター6の底部に設けた排液流通口6aには排液感知器9が設置されており、該排液感知器9が排液を検出すると、該検出信号が制御装置3に送信され、制御装置3は培養液供給装置5から栽培容器1への培養液の供給を停止させる。
なお、上記デジタルカメラ2は、その他の用途のためのハウス10内に設置されるカメラをタイムシェアリングしながら利用することもできる。
【0012】
また、一回の培養液のトマトへの供給量は植物に応じてそれぞれ適切な量とするが、トマトの場合は一個の栽培容器1に対して50から200mlとする。
トマトの葉の萎れ度合を判定する萎れ判定は制御装置3の萎れ度合判定手段である中央演算装置(CPU)3bで行うが、CPU3bによる葉の萎れ度合の判定は図2に示すフローチャートに従って行う。
【0013】
図2に示すフローで、ステップ1でカメラ2で撮影した画像が制御装置3内の画像入力装置3aに入力されると、ステップ2で葉の上方から撮影した画像を2値化したデータとしてトマトの葉の投影面積を制御装置3内のCPU3bと記憶装置3cを用いて算出する。
【0014】
上記トマトの上方からの投影面積は葉の投影面積を正確に算出する必要はなく、たとえば葉に特定の色に対応する画素の数を求めれば足りる。撮影された各画像に対して投影面積を求めてもよく、一定の時間内に撮影された複数の画像を平均化した上で投影面積を求めてもよい。
【0015】
次にステップ3ではステップ2で求めたトマトの葉の投影面積の記憶装置3c中に予め設定されている最大の投影面積に対する比率を求める。ステップ4では前記投影面積比に基づき給液をすべきかどうかを判断する。例えば、75%を給液基準値とし、投影面積比がこの給液基準値を下回るか否かを基準とすれば、簡単に判断することができる。さらに、投影面積比の時間変化率(微分量)や時間積分量も判断材料に加えても良い。このように所定の給液基準値(70〜90%が望ましい)を葉の萎れ度合の判定の目安とする。
【0016】
トマトに対する給液を不要と判断すれば、画像入力のステップ1へ戻る。給液を必要と判断すれば、ステップ5で給液信号を給液信号出力装置3dに出力し、該給液信号の出力によって培養液供給装置5のポンプ5aを作動して、トマトに給液を行う。そして、そのときの投影面積の値を最大投影面積として記憶装置3cでの最大投影面積を更新する。
【0017】
トマトの葉の萎れ度合の判定で、培養液を供給する必要があると、前述のように所定量の培養液を供給するが、一価の培養液の供給で萎れが回復していないと判定されると、一定時間毎(例えば10〜20分毎)に萎れ度合いの判定を行い、萎れが無くなり正常値(98〜100%)に戻るまで、給液を繰り返す。
【0018】
一度に大量の給液を行うと、根圏の変化が大きくなり、根の病気、生理障害等の起因になるため、培養液の所定量を少しずつ供給することでストレスを与えつつも、急激な変化を抑制することで栽培期間を長くすることが可能になる。
【0019】
また、図1に示すデジタルカメラ(撮影装置)2によりトマト生育施設内の各所を撮影できるように、該カメラ2を移動させる移動装置をハウス10内のカメラ支持部材に設ける。図3(図3(a)の側面図と図3(b)の平面図)はハウス10内のラチス11の下にレール12を設け、またカメラ2にはレール12上を移動できるアクチュエータ(図示せず)を連結している。また、レール12上を移動するカメラ2の撮影点を予め設定しておき、レール12の近傍の要所要所のカメラ撮影点となる位置にカメラ2が接近したことを検出する近接センサ(図示せず)を配置している。
【0020】
こうして、レール12上を移動するカメラ2が近接センサを配置された特定位置の近傍に来ると、当該特定位置でのトマトの画像を繰り返し撮影することができるので、トマトの葉の萎れ度合を判定することができる。
なお、カメラ2の移動時には撮影しないで、撮影点は固定しており、撮影点の近傍に設けた近接センサがカメラ2を検知して初めて撮影が可能となる。
【0021】
図4にはハウス10内のラチス11の下に矩形レール12を設け、またカメラ2を矩形レール12上を移動できるようにし、かつ矩形レール12にカメラ2を設置した実施例を示す。図4(a)にはハウス10内の平面図を示し、図4(b)には図4(a)の矩形レール12部分の拡大図を示す。カメラ2には近接センサ14を搭載させておき、矩形状のレール12の各コーナ部分に近接センサ14が検知できる反射板15をそれぞれ配置している。
従って、デジタルカメラ2がレール12のコーナ部に近づくと、近接センサ14が反射板15を検知するので、カメラ2は、移動を停止する。カメラ2が停止するとトマトの葉をカメラ2が撮影し、その場で待機する。
【0022】
次いで、カメラ2はレール12上を次のコーナ部に向けて移動して、先ほどと同様にコーナ部で停止した後、トマトの葉の撮影をする。このようにレールコーナ部における定点撮影でトマトの葉の萎れ度合が判定できる。
また、上記トマトの葉の萎れの程度だけでなく、トマトの果実の糖度を予測するシステムにより果実の糖度を予測し、糖度予測値と共に前記培養液供給制御を行っても良い。さらにハウス10内の温度制御も行うことで高品質トマトを作成するシステムを採用してもよい。
【0023】
目的の糖度のトマトを収穫するために、まず(1)糖度の予測は糖度予測システムを使用する。次いで(2)培養液の制御は、前述した制御方法を使用した植物の投影面積により適切な培養液の量、濃度を供給する。このとき(3)24時間一定温度にて(17℃位)となるように温室内環境の温度制御を行う。
【0024】
上記(1)の糖度予測システムは、例えば、発光部及び受光部を備え、発光部からの光を果実に当て、果実からの反射光又は果実を通過したあとの透過光を受光部で受光し、その受光の測定値に基づいて糖度を推測する糖度推測装置を使用して構成することができる。
【0025】
上記(2)の培養液の供給制御は、SPA(Speaking Plant Approach)を使用した植物の投影面積比により適切な培養液の量、又は適切な濃度にした培養液を供給する。併せて、例えば糖度推測装置の測定から得られた栽培果実の成熟時の予測糖度と栽培果実の成熟時の目標として予め設定される目標糖度とを比較し、両者の差異が大きいときは水ストレスを多くかけ、両者の差異が小さいときは水ストレスを抑えるべく、培養液の量又は濃度を設定して培養液を供給する。
【0026】
このとき、トマトのカメラ2による投影面積比に基づき適切な濃度の培養液の量を供給する。図5にその例を示す。萎れの程度が大きいと培養液の供給量を多くするが、萎れの程度が小さくなると共に(a)培養液の供給量を減らし、(b)培養液の濃度を高くする。なお、培養液の供給量と濃度のうち、いずれかのみを変動させる構成にしてもよい。
【0027】
この様にして得られたトマト糖度の予測値に基づいて、目標糖度より低い場合はトマトの前記投影面積比を指標にして、ストレスをかけて給液を行い、目標より高くなる場合、ストレスをかけないように給液を行うことが可能となり、目標糖度のトマトが自動給液により生産可能となる。
【0028】
また、上記(3)の温室内環境の温度制御は、トマトの葉の温度を表面温度センサで測定して温室内の温度を制御してもよい。 例えば朝方は葉の温度より+1℃、昼は葉の温度より+5℃、夕方は葉の温度より+2℃になるようにトマトにストレスを掛けながら温度制御を行うことで糖度制御に活用する。
【0029】
このように、室温を葉の温度より若干高い温度に設定することによりストレスがかかりやすくなり、糖度の予測値とトマトの投影面積比と葉温を培養液の供給制御に反映させることで、きめ細かい給液が可能となり、目標糖度のトマト生産が可能となる。
【0030】
なお、トマトの場合の培養液中の肥料の主成分は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硝酸態窒素、燐酸等である。また、上述の実施例では、果実としてトマトを例にして詳述したが、これに限られるものではなく、トマト以外の果実に応用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明により、生育途中で葉の萎れ度合を主な判定基準として、培養液の供給をこまめに自動的に行うことで所望の品質の植物を収穫することができると共に、栽培の省力化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例の植物の栽培方法の概念図である。
【図2】図1に示す植物の栽培方法に用いる葉の萎れ度合の判定を行うフローチャートである。
【図3】図1に示す植物の栽培方法に用いる葉の萎れ度合の判定手段のハウス内への設置例を説明する図である。
【図4】図1に示す植物の栽培方法に用いる葉の萎れ度合の判定手段のハウス内への他の設置例を説明する図(図4(a)は施設内の天井梁部分の平面図、図4(b)は図4(a)の矩形レール部分の拡大図)である。
【図5】図1に示す植物の栽培方法に用いる葉の萎れ度合(葉の投影面積比)に基づき適切な供給量と濃度の培養液を供給する場合の、供給量と濃度の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 栽培容器 2 デジタルカメラ(撮影装置)
3 制御装置(コンピュータ) 3a 画像入力装置
3b CPU 3c 記憶装置
3d 給液信号出力装置 5 培養液供給装置
5a ポンプ 6 ガーター
7 排液タンク 9 排液感知器
10 ハウス 11 ラチス
12 レール 14 近接センサ
15 反射板
【出願人】 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成19年2月16日(2007.2.16)
【代理人】 【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義

【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子


【公開番号】 特開2008−199902(P2008−199902A)
【公開日】 平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願番号】 特願2007−36123(P2007−36123)