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【発明の名称】 人工培土およびこれを用いた植物栽培方法
【発明者】 【氏名】安達 守

【氏名】安達 謙祐

【氏名】山内 正仁

【氏名】木原 正人

【要約】 【課題】産業廃棄物である焼酎粕の固形画分の処理問題を解決し、重量が重い土壌に代わる軽量な代替物である人工培土を提供する。

【解決手段】植物を原料として製造される焼酎の製造工程中に排出される焼酎粕を主原料とし、石油等の化石原料を主成分とする合成繊維、化学繊維以外の天然繊維材料(主として紙、布、綿等のセルロースを主成分とする植物性繊維材料)を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる植物育成用の人工培土とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された素材からなる植物育成用の人工培土。
【請求項2】
前記素材が紙状体からなることを特徴とする請求項1に記載の人工培土。
【請求項3】
天然繊維材料として古紙、古新聞、古布、古ダンボールの少なくともいずれかが用いられることを特徴とする請求項1に記載の人工培土。
【請求項4】
前記素材にカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、窒素、硫黄、塩素、リンの少なくともいずれかの無機栄養分が添加されることを特徴とする請求項1に記載の人工培土。
【請求項5】
種類の異なる焼酎粕を混合した混合焼酎粕を主原料にすることを特徴とする請求項1に記載の人工培土。
【請求項6】
焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる植物育成用の人工培土であって、
前記紙状体は主原料となる焼酎粕の種類がそれぞれ異なる複数の異種紙状体が形成され、前記異種紙状体どうしを積層するようにしたことを特徴とする人工培土。
【請求項7】
焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる植物育成用の人工培土であって、
前記紙状体は主原料となる焼酎粕の種類がそれぞれ異なる複数の異種紙状体が形成され、前記異種紙状体を裁断して混合するようにしたことを特徴とする人工培土。
【請求項8】
焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる人工培土に、植物を植えるとともに、水分を付与する植物栽培方法。
【請求項9】
前記人工培土は、水槽に浮遊する浮床の上で、吸水手段を介して水分と接するように載置されることを特徴とする請求項8に記載の植物栽培方法。
【請求項10】
前記吸水手段としてハイドロゲルフィルムを用いることを特徴とする請求項9に記載の植物栽培方法。
【請求項11】
焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる人工培土を裁断して容器内に詰め込むとともに、容器に詰め込んだ人工培土に植物を植え、水分を付与する植物栽培方法。
【請求項12】
地面に分離シートを敷設し、その上に焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる人工培土を敷設し、人工培土に植物を植えて、水分を付与する植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、観賞用植物、家庭菜園の植物、ビルの屋上緑化用の植物、苗生産業者の苗、生産農家の野菜(葉菜、果菜)のような植物を育成するための人工培土、および、この人工培土を利用した植物の栽培方法に関し、さらに詳細には、焼酎の製造過程で排出される焼酎粕を利用して製造される人工培土、および、これを利用した植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼酎の製造過程で排出される焼酎粕(焼酎蒸留粕)は、PH値が低く含水率が高い高濃度有機質の産業廃棄物である。従来、焼酎粕は大半が海洋投棄されていたが、近年、海洋汚染防止の観点から海洋投棄は全面禁止される方向で進んでおり、すべての焼酎粕を陸上で処理することが必要になってきている。焼酎粕の陸上での処理方法には、農地還元(肥料化)、飼料化処理、焼却処理等の処理があるが、多くは焼酎粕を遠心分離機で固形画分、液画分に分離した後、固形画分については乾燥後に飼料・肥料として利用するようにし、液画分についてはメタン発酵処理によるアルコール回収を行うようにしている。
【0003】
しかしながら、固形画分を安価な飼料、肥料として活用するだけでは、処理設備や設備稼働にかかるコストを差し引くと、事業として採算がとれないのが実情であった。
そのため、産業廃棄物である焼酎粕を、環境を害することなく処理することができるとともに、事業として採算がとれ、さらに焼酎粕を有効資源として活用することで循環型社会システムの構築に貢献するための技術開発が検討されている。
【0004】
そのような新しい焼酎粕の処理方法および再利用方法のひとつとして、焼酎粕に吸水性の植物繊維(古紙)を混入し、プレスすることにより、引っ張り強さ、破裂強さを付加するようにし、包装箱用のシート、包装の緩衝材用の形板、苗木ポット用の容器、卵容器等として利用することができる紙状製品が開示されている(特許文献1参照)。この文献によれば、これらの紙状製品が土中に投棄されると、土中の土壌菌により分解され、また、焼酎蒸留カスに含まれる窒素分によって土壌を肥沃化することが開示されている。
【特許文献1】特許第2926080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、焼酎粕を植物栽培用に再利用する方法としては、第一に、従来からなされているような肥料として用いる方法と、第二に、紙状製品の形態のひとつである苗木ポット用容器として利用する方法があった。
このうち、第一の方法である焼酎粕を肥料として利用する場合は、天然土壌に植物を植えておき、天然土壌に対し焼酎粕(あるいは焼酎粕を発酵した焼酎粕加工物、または、焼酎粕に他の物質を配合した焼酎粕加工物)を、肥料として与えるようにしている。したがって、この場合は、焼酎粕(あるいは焼酎粕加工物)とともに、土壌が必要であることから、土壌の使用に起因して生じるいくつかの課題があった。例えば、観賞用の植物栽培を行う際には、清潔感や美観が求められるため、泥まみれになって汚れやすい土壌を扱うことが敬遠されることがあった。また、土壌には虫が発生することがあるため、土壌の使用が敬遠されることもあった。また、生産農家では、土耕栽培に大量の土壌を使用するが、土壌は重量が大きいことから運搬作業等で重労働が必要となった。また、土壌を用いて栽培する場合、肥料を調製して与えなければならず、肥料のPH管理や濃度管理に手間を要した。
【0006】
水耕栽培の場合、土壌は使用しないか、使用したとしても土耕栽培より少量で済むことになるが、その代わり、水分に養分を含ませた養液を養液槽に貯めておく必要がある。ところが養液は、養液濃度の管理、PH値管理、温度管理が必要となり、手間がかかる。また、使用後の養液の廃液処理が新たな問題となる。そのため、できるならば、水分だけを供給し、養分は別の形で与えることが望ましい。
【0007】
一方、第二の方法である苗木ポット容器としての利用は、上述したように、ポット容器が土壌菌により分解されるので、環境にやさしく、また、土壌を肥沃化するという利点があるが、この場合でも植物栽培には天然土壌を使用することから、土壌に起因して生じる清潔感、重量、肥料調製等の問題が生じる点で同様である。
【0008】
そこで、本発明は、新しい方法で焼酎粕を再利用することにより、産業廃棄物である焼酎粕の固形画分の処理問題を解決することを目的とする。
また、本発明は、重量が重い土壌に代わる軽量な代替物である人工培土を提供することを目的とする。
また、本発明は鑑賞用の栽培等で、天然土壌を用いず、清潔感のある植物の栽培ができるようにすることを目的とする。
また、本発明は焼酎粕を水耕栽培での肥料として利用できるようにすることを目的とする。
また、本発明は水耕栽培において養液を与える代わりに、水分のみを与えるようにし、あるいは他に栄養供給源を持つことで、植物に対する養液の影響を低減することにより、養液管理や廃液処理の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明は、焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された素材からなる植物育成用の人工培土である。
ここで、焼酎粕は植物を原料として製造される焼酎の製造工程中に排出される焼酎粕であれば、特に種類は限定されない。植物を原料とする焼酎は、具体的には、芋焼酎(サツマイモ)、麦焼酎、米焼酎、黒糖焼酎(サトウキビ)、そば焼酎、栗焼酎、シソ焼酎、ゴマ焼酎、とうもろこし焼酎、じゃがいも焼酎、ピーナッツ焼酎などが含まれる。これらのうち黒糖焼酎の焼酎粕は、ミネラル分が多く含まれており、特に好ましい。
また、天然繊維材料とは、石油等の化石原料を主成分とする合成繊維、化学繊維以外の繊維であり、主として紙、布、綿等のセルロースを主成分とする植物性繊維材料をいうが、ウール、絹等の動物性繊維であってもよい。天然繊維は例えば1cm角程度に裁断して混合するのが好ましい。
また、素材の形は加圧成型可能な形状であれば、特に限定されない。
【0010】
本発明によれば、焼酎粕に天然繊維材料を混合し、加圧成型することにより、天然繊維で焼酎粕が保持された素材が形成される。そして、この素材の上に、直接、植物を植えて、水分を与えると、土壌を用いなくても、また、栄養分を与えなくても、素材に含まれる栄養分で植物が成長することを見出した。したがって、この素材を、天然土壌からなる植物栽培用の培土に代わる人工培土として用いるようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、植物育成に必要な栄養分を豊富に含んだ焼酎粕を主原料とする素材が形成され、この素材に植物を植えることで、天然土壌に代わる人工培土として利用することができる。この人工培土は、天然土壌に比べて、虫が発生したり、悪臭が発生したりすることもなく、清潔感がある。また、手で触れても土壌のように土まみれになることもない。しかも軽量であることから、運搬作業も容易である。したがって、観賞用の植物栽培から生産農家での植物栽培まで、天然土壌に代わる画期的な培土として使用することができる。
【0012】
(他の課題を解決するための手段および効果)
上記発明において、素材は紙状体からなるようにしてもよい。
ここで、紙状体とは、焼酎粕の固形画分が天然繊維で保持された厚紙状のものであり、その外形形状は方形、円形、楕円形等で特に限定されないが、並べて配置するためには方形にするのが好ましい。素材の形状を紙状体にすることにより、持ち運びが便利であり、しかも、裁断することにより、簡単に所望の大きさに加工することができる。
上記発明において、人工培土は、天然繊維材料として古紙、古新聞、古布、古ダンボールのいずれかが用いられるようにしてもよい。
本発明によれば、産業廃棄物である焼酎粕を再利用するとともに、天然繊維材料についても、廃棄物である古紙、古新聞、古布、古ダンボールを再利用するので、資源の有効活用に資することとなる。
【0013】
上記発明において、素材にカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、窒素、硫黄、塩素、リンの少なくともいずれかの無機栄養分が添加されるようにしてもよい。
本発明によれば、育成する植物の種類によって必要な栄養成分が異なり、また、使用する焼酎粕の種類によって含有する栄養成分が異なるので、育成する植物と使用する焼酎粕との組み合わせによっては栄養成分の一部が不足することもありうるので、予め、不足栄養成分を添加することにより、栄養成分のバランスがとれた人工培土を提供することができる。なお、添加はそれぞれのイオン(カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、窒素の場合は硝酸イオンやアンモニウムイオン、硫黄の場合は硫酸イオン、塩素イオン、リンの場合はリン酸イオン)を含む液体を添加すればよい。
【0014】
上記発明において、種類の異なる焼酎粕を混合した混合焼酎粕を主原料にするようにしてもよい。
本発明によれば、焼酎粕は原料となる植物の種類によって含有する栄養成分が異なるので、複数の種類の異なる焼酎粕を混合した混合焼酎粕を主原料にすることにより、栄養バランスがとれた人工培土にすることができる。
【0015】
また、別の観点による本発明の人工培土は、焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる植物育成用の人工培土であって、前記紙状体は主原料となる焼酎粕の種類がそれぞれ異なる複数の異種紙状体が形成され、前記異種紙状体どうしを積層するようにしている。
本発明によれば、原料とする焼酎粕の種類がそれぞれ異なる複数の異種紙状体が積層されるので、異種紙状体の組み合わせを選択することで、栄養成分を調整することができ、この上に植物を植えて栽培することができる。
【0016】
さらに別の観点による本発明の人工培土は、焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる植物育成用の人工培土であって、前記紙状体は主原料となる焼酎粕の種類がそれぞれ異なる複数の異種紙状体が形成され、前記異種紙状体を裁断して混合するようにしている。
本発明によれば、原料とする焼酎粕の種類がそれぞれ異なる複数の異種紙状体が裁断され混合されるので、異種紙状体の組み合わせを選択することで、栄養成分を調整することができ、これを容器(プランター、鉢など)に入れて用いることで、植物を栽培することができる。
【0017】
さらに、別の観点からなされた本発明の植物栽培方法は、焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる人工培土に、植物を植えるとともに、水分を付与するようにしている。
ここで「人工培土に植物を植える」とは、植物17の根が紙状体(人工培土)に接するようにすることをいい、紙状体の上に植物を載せるようにしてもよいし、植物の根の上や周囲に紙状体を敷くようにしてもよい(以下の発明においても同様である)。
本発明によれば、紙状体からなる人工培土に植物を植え、水分を与えることにより、紙状体に含まれる焼酎粕の栄養分が植物に吸収され、植物が生育する。
これにより、天然土壌を用いる必要がなくなり、紙状体に含まれる栄養分で植物を育成することができ、軽量で、清潔な植物栽培が実現できる。
【0018】
上記植物栽培方法において、人工培土は、水槽に浮遊する浮床の上で、吸水手段を介して水分と接するように載置されるようにしてもよい。
ここで、吸水手段には吸水性フィルムまたは吸水性の布を用いることができる。
これにより、水分は水槽から供給され、浮床上の人工培土から栄養分が供給されるようになるので、水槽に必ずしも養液を入れる必要がなくなり、養液管理(PH値や養液濃度の管理)の手間が緩和される。
【0019】
上記吸水性フィルムとして、ハイドロゲルフィルムを用いるのが好ましい。
ここで、「ハイドロゲル」とは、架橋構造ないし網目構造を有する、水溶性あるいは浸水性高分子化合物と、当該高分子により支持された分散液体たる水(または水を主成分とする液体)とを少なくとも含むゲルをいう。具体的には、「ハイドロメンブラン」(メビオール株式会社製)と呼ばれるハイドロゲルで形成された吸水性フィルムが好ましいが、これに限らず、同様の性質を奏するハイドロゲルのフィルムであればよい。
これによれば、従来の水耕栽培では、植物の根が水槽に貯めた養液に直接浸るようにして養分を吸収するため、病原菌汚染が問題となっていたが、養液がハイドロゲルフィルムによって植物の根から完全に分離されるため、養液の細菌汚染が防止される。
【0020】
さらに、別の観点からなされた本発明の植物栽培方法は、焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる人工培土を裁断して容器内に詰め込むとともに、容器に詰め込んだ人工培土に植物を植え、水分を付与するようにしている。
これによれば、紙状体を裁断することで、容器(プランター、鉢など)に詰め込むことができるので、紙状体を天然土壌の代わりにして、容器内で植物を栽培(鉢植え栽培など)することができる。
【0021】
さらに、別の観点からなされた本発明の植物栽培方法は、地面に分離シートを敷設し、その上に焼酎粕を主原料とし、天然繊維材料を前記焼酎粕に混合して加圧成型することにより形成された紙状体からなる人工培土を敷設し、人工培土に植物を植えて水分を付与するようにしている。
これによれば、植物の土耕栽培を行う場合に、分離シートで周囲の土壌から一部を隔離し、シートの上で人工培土による植物栽培を行うことにより、栄養分を人工培土から与えることができるので、一般的な土耕栽培のような肥料コントロールを行う必要がなくなり、作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(人工培土の製造)
本発明の人工培土となる紙状体(素材)の製造工程について説明する。この紙状体は、試料調製工程、試料加圧成型工程、真空排気工程、乾燥工程により製造される。
・ 試料調製工程
古紙を約1cm角程度に裁断しておき、これを主原料となる焼酎粕(例えばサツマイモの焼酎粕)に混合する。混合比は、焼酎粕の3%程度とする。このとき、使用目的(栽培する植物の種類)により、必要に応じて三大栄養素である窒素、燐酸、カリウムや、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、硫黄、塩素などその他のミネラルを無機栄養分として添加する。
また、複数の異なる植物の焼酎粕を混合して用いてもよい。例えば、カリウムを多く含むサツマイモの焼酎粕と、窒素を多く含む麦の焼酎粕とを混合し、これを主原料としてもよい。
(2) 試料成型工程
紙状体を形成するための上下金型間に、調整済みの試料を入れて固定し、加圧成型する。作成したい大きさに応じて金型の大きさを選択するようにすればよいが、例えばA4用紙程度の大きさにすれば、持ち運びが便利である。なお、ここでは紙状体の人工培土を製造することにしているが、平面的形状の素材である紙状体に代えて、その他の形状の素材、例えば立体的形状の人工培土にしてもよい。
以上の工程で、一応、紙状体は形成できるが、さらに軽量化を図り、また、含有する廃液を短時間で除去するため、以下の工程が続けて実行される。
(3) 試料加圧工程
金型で加圧した状態で、金型に形成してある吸引口から内部を真空ポンプにより吸引排気し、廃液を除去する。
(4) 乾燥
金型から試料を取り出し、乾燥容器に入れて乾燥する。あるいは自然乾燥させてもよい。
【0023】
以上の工程により、所望の大きさの紙状体が形成され、人工培土として用いられる。図1は上記手順で製造された紙状体の外観図およびその基本的な使用態様を説明する図である。
図1(a)は紙状体を1枚で使用するときの状態である。鑑賞用の水耕栽培の場合等に、この状態で使用される。
図1(b)は複数枚を重ねた使用状態である。重ねて使用することにより、植物に与える栄養分の量を簡単に増やすことができる。
なお、図1(c)のように、異なる種類の植物から形成された紙状体を積層すれば、それぞれの紙状体から異なる種類の栄養分が得られるので、栄養バランスを改善することができる。
図1(d)は複数の紙状体を並べて使用するときの状態である。野菜や果菜をハウス内で大量生産する場合(後述する人工培土によるハウス高設水耕栽培)には、この状態で使用される。
一方、図1(e)は紙状体をシュレッダや粉砕機で裁断して容器に詰めた状態である。鉢植えや土耕栽培を行う場合に、この状態で使用される。
なお、図1(f)のように、異なる種類の植物から形成された紙状体を混合して容器に詰めれば、それぞれの紙状体から異なる種類の栄養分が得られるので、栄養バランスを改善することができる。
【0024】
(人工培土を用いた植物栽培方法の実施形態)
次に、本発明の人工培土を用いた植物栽培の具体例について説明する。植物は水耕栽培、鉢植え栽培、ハウス栽培など種々の栽培形態で育成されるが、人工培土は栽培形態に応じて、それぞれ適した態様で使用される。
【0025】
(1) 人工培土によるハウス高設栽培(吸水性フィルムを用いたハイブリッド栽培)
図2は、人工培土によるハウス高設栽培の実施例を示す図である。ハウス10内の高設台19に載置された容器11に水12を貯め、その水面に発泡スチロールやスポンジ等で形成された浮床13を浮かせる。浮床13の上を布14で覆うとともに、布14の端部が水に浸るようにして、水分が吸い上げられるようにする。そして、浮床13の上でハイドロゲルフィルム15(吸水性フィルム)が布14と接触するようにするとともに、容器11の壁面で支持されるようにして、ハイドロゲルフィルム15(吸水性フィルム)を被せる。このハイドロゲルフィルム15には、例えば、「ハイドロメンブラン」(メビオール株式会社製)を用いる。
さらに、植物17の根がハイドロゲルフィルム15と接するように、植物17をハイドロゲルフィルム15上に直接載せるようにし、その根の上や周囲に紙状体16を敷く。あるいはハイドロゲルフィルム15の上に紙状体16を敷いて、その上に、植物17を植えてもよい。要するに、植物17の根と紙状体16とが接するようにしておく。なお、植物17の根の上や周囲に紙状体16を敷く場合と、ハイドロゲルフィルム15の上に紙状体を敷きその上に植物を載せる場合とのいずれの場合であっても、説明の便宜上、「植える」という表現を用いることにしている。
【0026】
以上のようにすることで植物17の根は、ハイドロゲルフィルム15を介して水分12を吸うようになり、また、紙状体16に含まれる栄養分を根から吸収することができるようになる。なお、乾燥を防ぐために、点滴による水分供給を併用することがさらに望ましく、植物17の成長が促進される。
従来の栽培方法では、ハイドロゲルフィルム15の上に天然土壌を敷くのが一般的であったが(いわゆる土耕と水耕とのハイブリッド栽培)、この方法によれば土壌を全く敷かなくても植物は安定して成長することができる。
【0027】
なお、図3に示すように、容器11内に貯める液体を、水12の代わりに栄養分を含んだ養液18にすることもできる。この場合でも、紙状体16からも十分に栄養分が与えられるので、養液18のPH管理や養液濃度管理は緩和でき、従来の水耕栽培に比べると手間が軽減される。
【0028】
また、上述した水耕栽培は、ハウス栽培のみならず、完全閉鎖型植物工場のような設備においても、まったく同じ形態で利用することができる。
【0029】
(2)鑑賞用栽培
図4、図5は、家庭での観賞用栽培の実施例を示す図である。図2や図3で説明したものと同じものについては同符号を付すことにより、説明を省略する。本実施例による観賞用栽培の場合は、栽培しようとする植物の種類や規模が異なり、また、ハウス10ではなく家庭内で栽培する点で異なるが、それ以外の点では図2、図3のものと同じようにすればよい。
【0030】
図6は、観賞用栽培の他の実施例を示す図である。図4と同じものについては同符号を付すことにより、説明の一部を省略する。本実施例では、図7に示すような複数の貫通孔21aが形成された浮床21を用いることで、貫通孔21aを介してハイドロゲルフィルム15(吸水性フィルム)が水分に浸るようになり、ハイドロゲルフィルム15の上に載せられた植物の根が水分を吸い上げることができるようにしてある。この浮床13には、発泡スチロールやスポンジの他、PET、ビニロン等からなる不織布を用いてもよい。
【0031】
この場合、浮床13の材料や大きさの調整により浮力を制御することで、浮床上面を水面に近づけるようにすれば、布14を省いても確実にハイドロゲルフィルム15を介して水分を吸い上げることができる。
さらに、鑑賞用の水耕栽培であれば、容器11内の植物の個数は少ないので、細菌汚染の問題よりも美観が優先されることから、ハイドロゲルフィルム15についても省いて、直接、紙状体16を浮床21の上に載せてもよい。
【0032】
図8は、さらに他の変形実施例を示す図である。図4と同じものについては同符号を付すことにより、説明の一部を省略する。本実施例では、浮床に代えて、フック付バスケット20を利用する。すなわち、フック付バスケット20を、容器11の壁面に吊り下げるようにして支持する。フック付バスケット20の中には、ハイドロゲルフィルム15を広げて敷くようにする。さらに植物17を、ハイドロゲルフィルム15の上に載せ、紙状体16を植物17の周囲に載せる。あるいはハイドロゲルフィルム15の上に敷き、その上に植物17を載せる。
これによれば、フック付バスケット20内で、植物17はハイドロゲルフィルム15により水から仕切られるので水没することはない。また、植物17の重量が大きくなっても浮床を用いていないので、浮力調整をする必要がなくなる。大きな果実が得られる植物(メロン、トマト等)でも沈むことなく育てることができる。
なお、本実施例は、鑑賞用栽培のみならず、上記のハウス高設栽培でも利用できる。
【0033】
(3) ポット栽培・鉢植え栽培
図9は、ポット栽培の実施例を示す図である。ポット31内に、1cm角程度に細かく裁断した紙状体32を詰め込み、植物17を植える。すなわち、天然土壌による培土に代えて、人工培土である紙状体32によるポット栽培を行う。
これによれば、水を点滴することにより、植物17の根が水分を吸収し、また、紙状体32からの栄養分を吸収するようになる。
【0034】
この実施例では、ポット31として、いわゆる生分解性プラスチックを用いたり、紙状体32と同じ材料からなる紙状体を用いたりしてもよい。やがてポット31自身も含めて分解され、自然に帰るので、環境にやさしい栽培が実現できる。本実施例は、苗生産用に利用するのに適している。
【0035】
図10は、鉢植え栽培の実施例を示す図である。皿33内に鉢34を置き、裁断した紙状体32を詰め込み、植物17を植える。その後、水を点滴することにより、植物17の根が水分を吸収し、紙状体32からの栄養分を吸収するようになる。本実施例は、屋内での観賞用として利用する場合に適している。
また、鉢に代えて、プランター等を用いた家庭菜園にしたり、ビル屋上に人工培土を敷いたビル緑化用植物園にしたりしてもよい。人工培土の利用により、軽量化が図れるので、施工工事が簡単になり、また、施工コストも削減できる。さらに軽量な人工培土なので、培土の入れ替え作業が容易になる。土まみれになることもない。なお、ビル屋上での栽培では風対策が必要となることがあるが、人工培土の上をネットで覆う等の対策を行えばよい。
【0036】
(4) 吸水性フィルムを用いないハウス高設栽培
図11は、ハウス高設栽培の他の実施例を示す図である。ハウス41内に高設台42を設置し、高設台42上の容器43内に紙状体32を詰め込み、植物17を植える。そして、適宜、点滴により水分を与える(必要に応じて養液を与えてもよい)。天然土壌に代えて、軽量の人工培土32を用いているので、入れ替え作業等で重い土壌を運搬する必要がなくなり、労働が軽減される。
【0037】
(5) ハウス土耕栽培
図12は、ハウス土耕栽培の実施例を示す図である。ハウス51内の地面52に分離シート53を敷き、その上に紙状体32を敷いて、植物17を植える。栄養分を人工培土から与えることができるので、一般的な土耕栽培のような肥料コントロールを行う必要がなくなり、作業を容易にすることができる。
【0038】
以上、種々の栽培形態を説明したが、それぞれの態様において、図1(c)や図1(f)で説明したように、複数の異種紙状体を積層させ、あるいは、複数の異種紙状体を裁断して混合させて、植物を植えるようにしてもよい。
【0039】
(実施例1)
本発明の人工培土(紙状体)を用いた植物栽培を実験的に確認した。図13〜図16は、図4で説明した栽培態様で、実際に植物栽培(植物名:ワイルドストロベリー(学名:Fragaria Vesca))を行ったときの成長の様子を示した写真である。
ワイルドストロベリーの苗を人工培土に植えて、栄養分は人工培土だけから与えるようにして、養分を含まない水分のみを点滴で与えるようにして成長させた。人工培土として、1株あたり10g〜15g程度の重さの紙状体を浮床上に敷設した。
【0040】
図13は人工培土での栽培開始時の全体外観図である。図14は植えてから14日目の生育状態である。また、図15は植えてから39日目の生育状態であり、図16はそのときの全体像である。
このように、日を追うごとに、明らかに葉の大きさは増大し、葉の数も増加している。さらに花も咲いている。水分を与えるだけで本発明の紙状体を栄養源として植物を成長させることが実験的に確認できた。本発明の人工培土が、養分を含有する人工培土として有効であり、天然土壌を使用することなく育成できることが確認できた。
【0041】
(実施例2)
また、図17は、図10で説明した栽培態様(鉢植え栽培:ただし水受け皿は外してある)で、実際に植物栽培(植物名:ワイルドストロベリー(学名:Fragaria Vesca))を行ったときの成長の様子を示した写真である。裁断した人工培土を鉢に詰めて、ワイルドストロベリーの苗を植え、栄養分は人工培土だけから与えるようにして、養分を含まない水分のみを点滴で与えるようにして成長させた。
この場合も、上記実施例1と同様に、本発明の紙状体を栄養源として植物を成長させることが実験的に確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、天然土壌に代わる人工培土として、植物栽培に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態である人工培土の外観図およびその基本的な使用態様を説明する図。
【図2】人工培土によるハウス高設栽培の実施例を示す図。
【図3】人工培土によるハウス高設栽培の他の実施例を示す図。
【図4】家庭での観賞用栽培の実施例を示す図。
【図5】家庭での観賞用栽培の他の実施例を示す図。
【図6】家庭での観賞用栽培の他の実施例を示す図。
【図7】図6で使用する浮床の斜視図。
【図8】家庭での観賞用栽培の他の実施例を示す図。
【図9】ポット栽培の実施例を示す図。
【図10】鉢植え栽培の実施例を示す図。
【図11】ハウス高設栽培の他の実施例を示す図。
【図12】ハウス土耕栽培の実施例を示す図。
【図13】人工培土を用いた栽培による植物の成長の様子を示す写真。
【図14】人工培土を用いた栽培による植物の成長の様子を示す写真。
【図15】人工培土を用いた栽培による植物の成長の様子を示す写真。
【図16】人工培土を用いた栽培による植物の成長の様子を示す写真。
【図17】人工培土を用いた栽培による植物の成長の様子を示す写真。
【符号の説明】
【0044】
10 ハウス
11 容器
12 水
13 浮床
14 布
15 吸水性フィルム
16 人工培土(紙状体)
17 植物
18 養液
19 高設台
20 フック付バスケット
21 浮床(貫通孔付)
31 ポット(容器)
32 人工培土(紙状体)
34 鉢(容器)
41 ハウス
42 高設台
43 容器
51 ハウス
52 地面
53 分離シート
【出願人】 【識別番号】306043507
【氏名又は名称】アニックスプランツワークス株式会社
【出願日】 平成19年2月16日(2007.2.16)
【代理人】 【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄

【識別番号】100127362
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 寛人


【公開番号】 特開2008−199899(P2008−199899A)
【公開日】 平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願番号】 特願2007−35836(P2007−35836)