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【発明の名称】 植生基板及びその使用方法
【発明者】 【氏名】長野 克也

【氏名】星 良和

【氏名】武田 実

【氏名】金 容珪

【要約】 【課題】コケ植物を緑化資材として壁面緑化を行う場合、水分が壁面の下部領域に偏ってしまい、結果として、長期的に壁面全面におけるコケの均等な養生を行うことが困難であるという問題が認められる。

【解決手段】コケ植物が固定されている平板状の網状体において、当該網状体の片側の広平面全面にわたり乾燥ミズゴケが積層固定されていることを特徴とする植生基板を提供し、これに対して、下部の水溜からの乾燥ミズゴケを介した浸透水として水分を断続的に供給することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コケ植物が固定されている平板状の網状体において、当該網状体の片側の広平面全面にわたり乾燥ミズゴケが積層固定されていることを特徴とする、植生基板。
【請求項2】
前記植生基板において、乾燥ミズゴケが、コケ植物が絡まって固定されている平板状の網状体及び他の平板状部材の間に挟み込まれてなることを特徴とする、請求項1記載の植生基板。
【請求項3】
前記植生基板において、他の平板状部材が平板状の網状体であることを特徴とする、請求項2記載の植生基板。
【請求項4】
前記植生基板において、平板状の網状体に対してさらに不透水板が積層固定されていることを特徴とする、請求項3記載の植生基板。
【請求項5】
前記植生基板において、当該基板の一端部にコケ植物が固定されていない区画が設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の植生基板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の植生基板において、当該基板に積層固定されている乾燥ミズゴケを水と接触させることにより、当該水を当該乾燥ミズゴケ全体に浸潤させながら、網状体に固定されたコケ植物の養生を行うことを特徴とする、植生基板の使用方法。
【請求項7】
前記使用方法において、乾燥ミズゴケと水との接触が、勾配面の上方に向けて開口部を有する突出構造内に設けられた水溜場において貯留された水と、当該場に一端が差し込まれた植生基板の当該端に位置する乾燥ミズゴケとを接触させることにより行われることを特徴とする、請求項6記載の植生基板の使用方法。
【請求項8】
前記使用方法において、水溜場に貯留された水と接触する植生基板の一端が、請求項5記載のコケ植物が固定されていない区画であることを特徴とする、請求項7記載の植生基板の使用方法。
【請求項9】
勾配面の上部と下部において設けられた2カ所の水溜場を一組として、下部の水溜場に、請求項5記載の植生基板のコケ植物が固定されていない一端が差し込まれて、当該場中の水と一端の乾燥ミズゴケが接触可能な状態となっており、かつ、当該植生基板の前記一端以外が、上部の水溜場を形成する突出構造の前面の一部又は全部と重なり合うように配置された状態にて、当該植生基板に固定されたコケ植物の養生を行うことを特徴とする、請求項8記載の植生基板の使用方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、植生基板、具体的にはコケ植物の養生を行うことを主要な目的とする植生基板、及び、その壁面等における使用方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、過剰な二酸化炭素のいわゆる温室効果ガスの排出等により、地球レベルでの温暖化が問題となっている。
【0003】
この解決策として、クリーンエネルギーの導入や、エネルギー消費効率の向上や、エネルギー消費量自体の節約等が挙げられるが、都市部の緑化も非常に有効な措置であると考えられている。
【0004】
都市部の緑化の方式としては、屋上緑化と壁面緑化が代表的な方式として挙げられている。また、緑化の主体となる植物種も様々検討されているが、それらの中でもコケ植物は、管理が容易であり、単位面積当たりのコストも割安であることから、極めて有望な植物として着目されている。
【特許文献1】再表2004−60049号公報
【特許文献2】特開2007−29076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コケ植物を緑化資材として壁面緑化を行う場合、水分が壁面の下部領域に偏ってしまい、結果として、長期的に壁面全面におけるコケの均等な養生を行うことが困難であるという問題が認められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題の解決に向けて検討を行った結果、網状体にコケ植物を固定して通気を良好に保った基板において、乾燥ミズゴケ層を設け、当該乾燥ミズゴケ層を介して水分の継続的かつ均等な供給を図ることにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、コケ植物が固定されている平板状の網状体において、当該網状体の片側の広平面全面にわたり乾燥ミズゴケが積層固定されていることを特徴とする、植生基板(以下、本基板ともいう)を提供する発明であり、本基板に積層固定されている乾燥ミズゴケを水と接触させることにより、当該水を当該乾燥ミズゴケ全体に浸潤させながら、網状体に固定されたコケ植物の養生を行うことを特徴とする、植生基板の使用方法(以下、本使用方法ともいう)を提供する発明である。
【0008】
本基板の基礎となる平板状の網状体は、網状体を構成する網の目の大きさ(目合い)は、3mm〜2cm程度、通常は5mm〜1cm程度である。さらに、当該網状体の表面の開口率は、好適には60〜98%程度であり、さらに好適には、80〜95%程度である。また、網状体の厚さは、5mm〜4cm程度、通常は、1cm〜2cm程度である。また、その素材は、プラスチック、ゴム、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、プラスチックや、ステンレス等の耐錆性に優れた金属が、網状体を構成する好適な素材として例示される。一般的には、「アンカーマット」として知られている、軟弱地盤安定等の用途に用いられる網状体を本発明に転用することが可能である。
【0009】
本基板において固定されるコケ植物は特に限定されず、自然界に自生しているコケ植物をそのまま用いることも可能であり、栽培法で得たコケ植物を用いることも可能である。また、いわゆる培養法〔例えば、「植物バイオテクノロジーII」,東京化学同人:現代化学・増刊20の第39頁「蘚苔類の培養」(小野著)等参照のこと〕を用いた「培養ゴケ」を用いることも可能であるが、通常は、栽培法で得たコケ植物を用いることが好ましい。
【0010】
この栽培されたコケ植物は、通常の栽培法で得たコケ植物を用いることができるが、特に、本発明においては、以下の方法で得られる、コケ植物断片群を用いることが好ましい。
【0011】
すなわち、生長したコケ植物の群落の頂部近傍を切断し、切断したコケ植物断片を収穫物として用い、切断されたコケ植物の群落の養生を継続して行い、かつ、この養生と収穫のサイクルを繰りかえし行う、コケ植物の栽培方法において得られる、上記コケ植物の断片群を、本発明において用いることができる。
【0012】
ここで、生長したコケ植物の群落は、天然のコケ植物の群落であっても、通常のパレット栽培で得られるコケ植物の群落であっても、コケ植物を固定した人工基盤を養生して得られるコケ植物の群落であってもよい。コケ植物の群落は、平置きの状態で養生したものであっても、壁面や法面等において養生したものであってもよい。頂部付近の切断を行う時期は、上記の生長したコケ植物におけるコケ植物が、概ね2〜3cm程度に達した時点が好適である。コケ植物の群落の頂部近傍の切断は、コケ植物の群落の上部(緑が多い部分)を、種々の切断器具、たとえば、ハサミ、バリカン、サンダー等を用いて行うことができる。また、ほうきや刷毛等で、コケ植物の群落の上部をなでつけることによっても、コケ植物の頂部近傍は容易に切断され、所望するコケ植物の断片を得ることができる。
【0013】
上述した切断工程の後、切断して得たコケ植物の断片は、「収穫物」として、本栽培基において載置されるコケ植物として用いることができる。また、切断された後のコケ植物の群落は、養生を継続して行いコケ植物を再び生長させることができる。この再生長させたコケ植物の群落に対して、再び切断工程を行うことで、コケ植物の断片群を再度得ることができる。この養生と収穫のサイクルを繰りかえし行うことにより、効率的にコケ植物を「収穫物」として得ることができる。
【0014】
本発明において用い得るコケ植物の種類は特に限定されない。
【0015】
例えば、Atrichum undulatum(Hedw.)P.Beauv(Namigata-Tachigoke)等のAtrichum P.Beauv.(Tachigoke-zoku); Pogonatum inflexum(Lindb.)Lac.(Ko-sugigoke)等のPogonatum P.Beauv(Niwa-sugigoke-zoku); Polytrichastrum formosum(Hedw.)G.L.Smith等のPolytrichastrum G.L.Smith(Miyama-sugigoke-zoku); Polytrichum commune Hedw.(Uma-sugigoke)等のPolytrichum Hedw.(Sugigoke-zoku); Ceratodon purpureus (Hedw.) Bird.(Yanoueno-akagoke)等のCeratodon Bird.(Yanouenoaka-goke-zoku); Dicranum japonicum Mitt.(Shippogoke)、Dicranum nipponense Besch(O-shippogoke)、Dicranum scoparium Hedw.(Kamojigoke)、Dicranum polysetum Sw.(Nami-shippogke)等のDicranum Hedw. (Shippogoke-zoku); Leucobryum scabrum Lac.(O-shiragagoke)、Leucobryum juniperoideum(Brid.) C.Mull.(Hosoba-okinagoke) 等のLeucobryum Hampe(Shiragagoke-zoku); Bryum argenteum Hedw.(Gingoke)等のBryum Hedw.(Hariganegoke-zoku); Rhodobryum giganteum(schwaegr.)Par.(O-kasagoke)等のRhodobryum(Schimp.)Hampe(Kasagoke-zoku); Plagiomnium acutum(Lindb.)T.Kop.(Kotsubogoke) 等のPlagiomnium T.Kop.(Tsuru-chochingoke-zoku); Trachycystis microphylla(Dozy et Molk.)Lindb.(Kobano-chochingoke)等のTrachycystis Lindb.(Kobano-chochingoke-zoku);
Pyrrhobryum dozyanum(Lac.) Manuel(Hinokigoke)等のPyrrhobryum Mitt.(Hinokigoke-zoku); Bartramia pomiformis Hedw.(O-tamagoke) 等のBartramia Hedw.(tamagoke-zoku); Climacium dendroides(Hedw.)Web.et Mohr(Furoso)、Climacium
japonicium Lindb.(Koyano-mannengusa)等のClimacium Web.et Mohr(Koyano-mannengusa-zoku); Racomitrium ericoides(Web.et Brid) Brid(Hai-sunagoke)、Racomitrium japonicium Dozy et Molk.(Ezo-sunagoke)、Racomitrium canescens(Hedw.) Brid.ssp.latifolium(Sunagoke)、Racomitrium barbuloides Card.(Kobanosunagoke)等のRacomitrium Brid.(Shimofurigoke-zoku);Hypnum plumaeforme Wils.(Haigoke)等のHypnum Hedw.,nom.cons.(Haigoke-zoku); Thuidium Kanedae Sak.(Toyama-shinobugoke)等のThuidium Bruch et Schimp.in B.S.G.(Shinobugoke-zoku) 、Sphagnum L.等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
これらのコケ植物は、単独種類のコケ植物を用いることは勿論のこと、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。特に、強い日照を好むコケ植物(例えば、スナゴケ、ツノゴケ等)と、日陰を好むコケ植物(例えば、ハイゴケ、シッポゴケ、ヒノキゴケ、カサゴケ等)を組み合わせて用いることにより、本栽培体が用いられる日照環境に依存せずに、コケ植物の生育を維持することが可能となる。
【0017】
「乾燥ミズゴケ」とは、湿潤状態にあるか否かを問わず、主に、殺菌死滅処理を加えたミズゴケ(市販品も可)を意味するものであるが、生長ミズゴケ(生命活動が維持されているミズゴケ)を単純に乾燥したものも含むものとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、壁面等の勾配面においてコケ植物を均等に、かつ、効率的に養生可能な手段が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について、図面を用いつつ説明する。
[本基板について]
図1は、本基板の製造工程の一実施例を図示した図面である。
【0020】
本基板は、平板状の網状体を基にして製造することができる。図1(1)は、平板状の網状体11の予定部分にコケ植物12を固定する様子を示した姿図である。平板状の網状体11は、ほぼ一定の厚さhを有しており、かつ、その広平面(両面)111は、幅広部分111aと幅狭部分111bを有している。後述するように、幅広部分111aは、コケ植物12が固定される部分であり、幅狭部分111bは、コケ植物12の非固定部分である。このような形状であることは、後述する乾燥ミズゴケ面による水揚げにおける効率を考慮すると好適であるが、これに限定されず、例えば、このような異なる幅部分を設けないことも可能であり、また、上記幅狭部分に相当する部分を複数の短冊状部分とすることや、さらに幅狭とすること(後述)等、網状体11全体の形状を、ここに示した例とは異なる形状とすることが可能である。コケ植物12は、網状体11の幅広部分111aの内部に押し込むことにより当該網状体内における固定を行うことができる。この押し込み方法は特に限定されず、例えば、手やへら等で押し込むことも可能であるが、水圧や風圧を用いることが好適である。具体的には、網状体のコケ植物の固定部分(本例では、幅広部分111a)の上にコケ植物12を載せて、その上からジェット水流の水圧やコンプレッサーからの風圧(13)をかけることにより、これらの圧力により、コケ植物12を効率良く網状体11の内部に押し込んで固定することができる。コケ植物12を載せる密度は、特に限定されないが、1〜2コケ植物体/10cm2程度が目安となる。上記のジェット水流は、家庭用の上水道ホースに市販のジェットノズルを装着して得られる程度の水流であっても、十分に本発明において用いることができる。
【0021】
図1(2)は、図1(1)の工程で、コケ植物12をその内部に固定した網状体11’の一方の広平面全面にわたり、乾燥ミズゴケを積層固定する例の初工程を示している。すなわち、水に浸漬した乾燥ミズゴケを、水がたれ落ちない程度に水切りを行い(手絞りの程度)、これを均等に網状体11’ の広平面のいずれか一方のみの全面に載置して、乾燥ミズゴケ層14を作出する工程である。この載置は、乾燥ミズゴケ同士が全体として切れ目無く接触している状態が保たれていることが、乾燥ミズゴケ面全面に水を均等に浸潤させる上で必要であるが、この条件が満たされている限り、乾燥ミズゴケ層の厚さが小さい方が経済的である。
【0022】
この乾燥ミズゴケ層14の作出は、例えば、上記の網状体11’の上に載置した乾燥ミズゴケを、当該網状体の内部に手や、へら等の器具を用いて、押し込んで行うことが可能である。また、当該乾燥ミズゴケの上から緩水流を流しかけることにより、具体的には、家庭用の上水道程度の水圧源から得られる水流を、好適にはシャワーノズルを介して得られる水流を流しかけることにより、効率的に乾燥ミズゴケを網状体11’の内部に押し込み、所望の乾燥ミズゴケ層14を作出することができる。
【0023】
図1(3)は、上記の乾燥ミズゴケの積層固定例の中工程を示している。また、図1(4)は、この中工程が完了した状態の基板pre10のA−A’を切断面として見た縦断面図であるかかる中工程は、前記初工程において、網状体上に載置した乾燥ミズゴケの上から、さらに板状体を積層する工程である。当該板状体は遮水機能を、本基板において発揮することが好適であり、当該板状体の素材は、不透水性であることが好適である。また、経時的に腐食しにくい素材であることがいっそう好適である。具体的には、プラスチック、ゴム、合板、耐腐食性の金属等を挙げることができる。また、本例は、板状体15を、板素材151の一方の面に網状体11と同一の網状体152を接着させてなるものとしており、当該網状体152の側を、乾燥ミズゴケ層14に接触させているが、このように、板状体15の乾燥ミズゴケ層14に接する面に凹凸構造を設けることは好適な態様として挙げられる。本工程では、板状体15を、網状体11’の上に設けられた乾燥ミズゴケ層14に向けて(矢印pressの方向)に圧力をかけて押し込み、双方の網状体(11’と152)の網の目と、乾燥ミズゴケ層14を構成する乾燥ミズゴケとを噛み合わせを行う。この押し込み工程により、網状体11’の内部に固定されたコケ植物12の大半と乾燥ミズゴケ層14が接触し、後述する本基板の使用を行うことにより、乾燥ミズゴケ層14を介して水分が継続的に供給され、コケ植物12を継続的に生育させることができる。また、コケ植物12と乾燥ミズゴケ層14とが接触していない部分も、当該乾燥ミズゴケ層と極めて接近した状態であって、近傍の空中湿度が高くなり、コケ植物12が継続的に生育するのに適した環境となっている。
【0024】
図1(5)は、上記の乾燥ミズゴケの積層固定例の後工程を示している。この工程は、前記中工程により作出された基板pre10を構成する各要素を、さらに強固に結合させて、本例の本基板10(図2)を完成させる工程である。本例では、基板pre10の縁部に沿って、さらに、当該基板面上に、「Cリンガー」として知られている、ガン型の緊結装置16を用いたリング状の部材161による緊結手段を、基板pre10を構成する各要素、具体的には、コケ植物12が固定化された網状体11’、乾燥ミズゴケ層14、及び、板状体15、に対して施し、これらの各要素同士を強固に結合させている。本例で用いたCリンガーは一例であり、他の緊結方法、例えば、縫製、ホッチキス(ステーブラー)止め、ねじ止め等を行うことができる。
【0025】
図2は、図1の工程により製造される本基板の姿図を示している。図2(1)は、図1にて示した態様の本基板10の姿図である。本基板10は、コケ植物の固定部101と、コケ植物の非固定部102にて構成されており、コケ植物の固定部101は、網状体11内で固定されているコケ植物12が基板上面(10α)に向かって露出して、かつ、同基板下面側に積層固定された乾燥ミズゴケ層14と接触している。コケ植物の非固定部102は、コケ植物12が当該部分には固定されていないという点を除けば、構造的にはコケ植物の固定部101と共通している。コケ植物の非固定部102は、本基板10の使用時は、水溜め等における水との接触部分となり、当該水がコケ植物の固定部101に向けて、乾燥ミズゴケ層14全体に浸潤して、コケ植物12に継続的に、直接的な接触又は間接的な空中湿度の上昇により供給される。また、コケ植物12は、基板上面において露出しているので、太陽光による光合成を十分に行うことが可能となる。
【0026】
図2(2)は、コケ植物の非固定部102’が短冊状である態様100を図示しており、同(3)は、同非固定部102’’が突起状となっている態様100’を図示している。両者とも、これらの非固定部を水と接触させて、当該水を乾燥ミズゴケ層に均等に浸潤させることができるという点において共通しており、この条件を満たす限り、コケ植物の非固定部の形状のみならず、本基板全体の形状もまた限定されない。
[本基板の使用方法について]
上述したように、本基板は、上記の乾燥ミズゴケ層を水と接触させることにより、当該水を当該乾燥ミズゴケ全体に浸潤させながら、網状体に固定されたコケ植物の養生を行うことにより使用することができる。このような使用は、特に、壁面や法面等の傾斜面における緑化を想定したものである。上記の乾燥ミズゴケ層と水との接触は、勾配面の上方に向けて開口部を有する突出構造内に設けられた水溜場において貯留された水と、当該場に一端が差し込まれた本基板の当該端に位置する乾燥ミズゴケとを接触させることにより行われることが好適である。上記の本基板におけるコケ植物の非固定部分は、ここにいう水と接触させるべき本基板の一端に相当する。
【0027】
図3は、このような水溜場の態様について例示したものである。図3(1)は、水溜場の完成姿図である。水溜場20は、壁面22において突出した、複数の水溜単位201からなる。壁面において一番上に位置する水溜単位201Aのさらに上方に灌水パイプ21が設けられており、必要に応じて水を水溜単位201Aに供給することができるように設定されている。水溜単位201Aに一定水位まで水が貯まると、余分な水は、排水孔(図示せず)から排出されて、又は、水溜単位201Aの上縁を超えて、その下に設けた水溜単位201Bの中に貯留するようになっている。これは、例えば、水溜単位201Aと201Bの内部の形状が、上方の開口部が広く、下方の底部が幅狭いテーパーとすることによって、水溜単位201Aの内部から外部にあふれ出た水、又は、排出された水、が落下する地点に水溜単位201Bの開口部が位置するように設計することにより実現することができる。水溜場20は、さらに、水溜単位201Bから201Cへと、上記と同様に水が移動して貯留するように設計されている。このように、上側の水溜単位201Aから下側の水溜単位(201F)へと順次水が貯留するようになっている。水溜場20に貯留させる水は特に限定されず、例えば、水道水であっても、降雨水であってもよい。
【0028】
図3(2)は、個々の水溜単位の壁面への取り付け例を示している。水溜単位201は、壁面22に固設されている。定設の方法は特に限定されず、ビス止め、アンカー止め(2012)等、特に限定されない。水溜単位201の突出面を構成する前面板2011には、本基板を係止するためのホール2013が設けられている。これらのホール2013を介して、本基板を前面板2011上にビス等にて係止することが可能となる。水溜場20は、複数の水溜単位を傾斜面上において、少なくとも上下に並べて設けることにより構成される。図3(1)のように、必要に応じて左右に並べて設けることも可能である。
【0029】
図4は、水溜場20における本基板の使用態様を例示した図面である。図4(1)は、本基板を装着した水溜場20の姿図であり、図4(2)は、その縦断面図(B−B’)である。各々の水溜単位201A〜201Eには、水23が必要量満たされている。上述したように、水23は、上側から下側の水溜単位に向けて過剰量が順次移動するように設計されているので、一番上の水溜単位201Aのみに向けて水23を供給することにより、水溜場20全体に必要量の水を供給することができる。例えば、本基板10A〜Eのうち、10Dはその一端が水溜単位201Dの中に挿入され、その中に存在する水23Dと接触している。接触箇所は、上述したように、コケ植物の非固定部102Dであることが好適である。そして、コケ植物の固定部101Dは、コケ植物が露出した側101D1をおもて面として、水溜単位201Dの上側から水溜単位201Cの突出面を構成する前面板201C1に向けて露出している。このコケ植物の固定部101Dを前面板201C1の前面を覆うように定着固定を行う。この定着固定手段は特に限定されず、前述したビス止めホールを介したビス止めや、接着剤による定着等を行うことができる。これを、水溜単位201Cと201B間、201Bと201A間にて同様に行う。なお、これらの例は、本基板のコケ植物固定部と前面板とのビス24による定着固定を行っている。このようにして、水溜場20の全面が、本基板のコケ植物固定部にて覆われた状態として成立する。このような状態とすることで、個々の水溜単位内の本基板の乾燥ミズゴケ層と接触する水が、当該乾燥ミズゴケの揚水力により、乾燥ミズゴケ層全体に均等に浸潤する。このことにより、本基板にて固定されたコケ植物に継続的に水溜場の水が供給され、コケ植物の養生を壁面においても安定して行うことができる。
【0030】
なお、図4(2)と同様の視点からの図4(3)の縦断面図にて示すように、水溜単位を構成する前面板の表面を、プラスチック、スポンジ、コンクリート、モルタル、ガラス等により凸面201C2等を形成し、本基板のコケ植物固定部の露出部分の立体感を強調することもできる。
【0031】
このように、本発明では、勾配面の上部と下部において設けられた2カ所の水溜場を一組として、下部の水溜場に、本基板のコケ植物の非固定部等の一端が差し込まれて、当該場中の水と一端の乾燥ミズゴケが接触可能な状態となっており、かつ、本基板の前記一端以外が、上部の水溜場を形成する突出構造の前面の一部又は全部と重なり合うように配置された状態にて、本基板に固定されたコケ植物の養生を行うことが可能となる。
【0032】
図5は、本基板の使用の別態様を例示した図面(突出部を横側から見た縦断面図)である。図5では、前面板301A1〜C1を、下部の水溜単位301Bの内部まで延長された形状として、当該前面板の上面に本基板10’A〜Cを、コケ植物の露出側を上にした状態で定着固定させる態様を示している。このような態様をとることによって、水溜単位の開口部近傍のスペースが空いた状態となり、この部分に例えば、網状体301B2を水溜単位内の水面と平行に設け、その上に乾燥ミズゴケを、例えば、その一部が水溜単位301B〜Cの内部にまで垂れ下がった部分を設けた状態で載置し(301B3〜C3)、さらに、当該乾燥ミズゴケ301B3〜C3に、上述したコケ植物や他の植物301B4〜C4を植え付けることによって、この乾燥ミズゴケ部分301に、水溜単位301A〜C内部に貯留した水301A5〜C5のうち、301B5〜C5が継続的に供給され、本基板の露出部分の他、この開口部近傍における緑化を行うことも可能である。
【0033】
図6は、本基板のさらなる別態様を例示した図面である。図6(1)は、軟質プラスチック(塩化ビニル等)製の水溜単位を示した図面である。当該水溜単位401は、開口部4011を有する、水溜が可能なポケット構造4012を有する柔軟な基板である。この基板を一単位として、例えば、図6(2)(傾斜面41を横側から見た断面図)に示すような複雑な曲面の壁に、複数単位(401A〜F)を、互いのつなぎ目から水漏れをしないように連結して封着固定することにより、当該壁全体を水溜場40とすることができる。上述した例と同様に、この水溜場を構成する最も上部の水溜単位401Aの水溜ポケット4012Aに水を供給することにより、当該水は順次、下部に定着固定された水溜ポケット4012B〜Fに貯留可能となる。これらの水溜ポケット内に、本基板10’’A〜Fのコケ植物非固定部を挿入し、コケ植物固定部を、コケ植物露出面を表側として各々上側の水溜ポケット面に接着することにより、複雑な曲面が、継続的に生育可能なコケ植物により覆われた緑化面を設けることが可能となる。
【0034】
このような本発明の態様は、壁面等においても継続的にコケ植物に水分を供給することが可能で、当該壁面環境にあっても歩留まりのよい緑化を行うことが可能となる。また、本基板の着脱が比較的容易であるため、緑化壁面のメンテナンスも容易となる特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の植生基板の製造工程の一例を示した図面である。
【図2】図1の工程により製造される植生基板の姿図である。
【図3】本発明の植生基板を用いる水溜場の一態様を示した図面である。
【図4】水溜場における本発明の植生基板の一使用態様を例示した図面である。
【図5】水溜場における本発明の植生基板の他の使用態様を例示した図面である。
【図6】他の態様の水溜場における本発明の植生基板の使用態様を例示した図面である。
【出願人】 【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
【識別番号】507045650
【氏名又は名称】一松環境復元株式会社
【出願日】 平成19年2月9日(2007.2.9)
【代理人】 【識別番号】100103160
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 光春


【公開番号】 特開2008−193934(P2008−193934A)
【公開日】 平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願番号】 特願2007−31294(P2007−31294)