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【発明の名称】 葡萄栽培方法
【発明者】 【氏名】小野 俊朗

【氏名】尾頃 敦郎

【氏名】倉藤 祐輝

【要約】 【課題】品質に優れた葡萄を短期間で多く収穫することのできる葡萄栽培方法を提供する。

【解決手段】複数本の葡萄樹を10〜90cmの間隔で定植して植列を形成し、肥料成分を含有する水を葡萄樹の根に供給するためのチューブを前記植列に沿って敷設し、葡萄樹の地際周辺の地面に雨が当るのを防止するための雨よけを設けた後、生育期に応じた量の水を前記チューブから供給して葡萄樹を生長させる。定植2年目以降の溢泌期から同年の落葉開始期までの間に前記チューブから供給する水の総量は、1樹当たり500L以下に抑え、定植2年目以降の溢泌期から同年の落葉開始期までの間に前記チューブから供給する水に含有される窒素の総量は、1樹当たり20グラム以下に抑えると好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の葡萄樹を10〜90cmの間隔で定植して植列を形成し、肥料成分を含有する水を葡萄樹の根に供給するためのチューブを前記植列に沿って敷設し、葡萄樹の地際周辺の地面に雨が当るのを防止するための雨よけを設けた後、生育期に応じた量の水を前記チューブから供給して葡萄樹を生長させることを特徴とする葡萄栽培方法。
【請求項2】
定植2年目以降の溢泌期から同年の落葉開始期までの間に前記チューブから供給する水の総量を1樹当たり500L以下に抑える請求項1記載の葡萄栽培方法。
【請求項3】
定植2年目以降の溢泌期から同年の落葉開始期までの間に前記チューブから供給する水に含有される窒素の総量を1樹当たり20グラム以下に抑える請求項1又は2記載の葡萄栽培方法。
【請求項4】
複数本の葡萄樹を畑に設けた畦の稜線に沿って定植する請求項1〜3いずれか記載の葡萄栽培方法。
【請求項5】
葡萄樹の根の下方に遮根手段を設けずに、葡萄樹の根が下方の土壌に伸びることができるようにする請求項1〜4いずれか記載の葡萄栽培方法。
【請求項6】
所定高さで葡萄樹の主枝を非鉛直方向に誘引し、非鉛直方向に誘引された主枝の長さが10〜90cmとなるように剪定を行い、連年、それぞれの主枝から側方に結果枝を出させる請求項1〜5いずれか記載の葡萄栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、短期間で多くの葡萄の収穫を可能とする葡萄栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
葡萄は、地植えした葡萄樹を長年に亘って大きく生長させていく地植え栽培によって栽培するのが一般的であった。地植え栽培では、葡萄樹の根を自由に伸長させ、樹冠を大きく広げさせるために、1樹当たりの収穫量を多くすることができる。しかし、葡萄樹が生長して大木化すると、葉や新梢の生長に多くの栄養が消費されるようになって果実の生産にまで栄養が回りにくくなるために、地植え栽培では、畑の単位面積当たりの収穫量を多くすることは困難であった。
【0003】
また、地植え栽培では、葡萄樹の定植から収穫までに、通常、5〜6年を要していた。このため、葡萄栽培に新規参入した者が早期に収益を上げることは非常に困難であった。さらに、地植え栽培では、葡萄樹の大きく広がった根が、降雨によって土壌中で無機化した窒素を大量に吸収するおそれがあるなど、葡萄樹に与える水や窒素の量の管理が困難であり、品質の高い葡萄を生産することは必ずしも容易ではなかった。このため、地植え栽培で高品質な葡萄を生産するのには、灌水や施肥などに熟練した技術を要していた。
【0004】
このような実状に鑑みてか、近年、葡萄樹の根域を制限して葡萄を栽培する技術(根域制限栽培)が研究されるようになり、それに関連する技術が提案されるようになってきている(例えば、特許文献1)。葡萄を根域制限栽培すると、葡萄樹の根の広がりを拘束することができるので、葡萄樹を小木化して果実の生産に栄養を回させることが可能になり、葡萄を短期間で収穫することができるようになる。また、灌水や施肥の管理が容易になり、葡萄の品質を向上することもできるようになる。さらに、葡萄樹を小木化する分、密に定植することができるので、畑の単位面積当たりの収穫量を多くすることもできるようになる。
【0005】
ところが、従来の葡萄の根域制限栽培は、葡萄樹を密に定植するといっても、畑10a当たりせいぜい500本程度であるために、葡萄の収穫量は、定植2年目で畑10a当たり2t程度が限界であった。また、根域制限栽培でも、高品質の葡萄を収穫することは必ずしも容易ではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2005−204662号公報(特許請求の範囲、発明の効果、[0021]、[0036]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、品質に優れた葡萄を短期間で多く収穫することのできる葡萄栽培方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、複数本の葡萄樹を10〜90cmの間隔で定植して植列を形成し、肥料成分を含有する水を葡萄樹の根に供給するためのチューブを前記植列に沿って敷設し、葡萄樹の地際周辺の地面に雨が当るのを防止するための雨よけを設けた後、生育期に応じた量の水を前記チューブから供給して葡萄樹を生長させることを特徴とする葡萄栽培方法を提供することによって解決される。
【0009】
このように、葡萄樹を密に植えて小木化することにより、従来の栽培方法では定植から収穫までに5〜6年を要していた葡萄を定植2年目(葡萄樹を定植した年を1年目とする)に収穫することが可能になる。また、畑の単位面積当たりの収穫量を多くすることも可能になる。さらに、葡萄樹に与える水分と養分の量を容易に管理することもできるようになる。
【0010】
ここで、「定植2年目に葡萄を収穫することが可能」とは、出荷するのに耐えうる品質の葡萄(該当品種におけるその年の一般的な出荷価格を大きく下回らない程度の出荷価格で出荷することのできる果房重、果粒重、着色度及び糖度などを有する葡萄)が、早ければ(病気や異常気象などが発生しなければ)、定植2年目の収穫期に収穫できることを意味する。
【0011】
また、複数本の葡萄樹を10〜90cmの間隔で定植して植列を形成する作業と、肥料成分を含有する水を葡萄樹の根に供給するためのチューブを前記植列に沿って敷設する作業と、葡萄樹の地際周辺の地面に雨が当るのを防止するための雨よけを設ける作業とを行う順番は、この記載順に係わらず、適宜、変更することができる。
【0012】
本発明の葡萄栽培方法において、前記チューブから供給する水の量は、とくに限定されないが、葡萄樹に水を多く与えすぎると、病気が発生しやすくなったり、糖度や果色が不足して葡萄の品質が低下するおそれがある。このため、定植2年目以降の溢泌期から同年の落葉開始期までの間に前記チューブから供給する水の総量(以下、総量Qとする)は、1樹当たり500L以下に抑えると好ましい。水の総量Qは、1樹当たり400L以下に抑えると好ましく、1樹当たり300L以下に抑えるとより好ましい。一方、葡萄樹に与える水の量が不足すると、葡萄樹が枯れるおそれがあるため、水の総量Qは、通常、1樹当たり15L以上である。
【0013】
前記チューブから供給する水に含有される窒素の濃度は、とくに限定されないが、葡萄樹に窒素を多く与えすぎると、葡萄樹の小木化が困難になるおそれがある。このため、定植2年目以降の溢泌期から同年の落葉開始期までの間に前記チューブから供給する水に含有される窒素の総量(以下、総量Qとする)は、1樹当たり15グラム以下に抑えると好ましい。窒素の総量Qは、1樹当たり10グラム以下に抑えると好ましく、1樹当たり8グラム以下に抑えるとより好ましい。一方、葡萄樹に与える窒素が不足すると、葡萄樹が衰弱するおそれがあるため、窒素の総量Qは、通常、1樹当たり0.2グラム以上とする。
【0014】
複数本の葡萄樹を畑に設けた畦の稜線に沿って定植することも好ましい。これにより、葡萄樹の水平方向での根域を制限するだけでなく、葡萄樹の栽培管理を容易に行うことが可能になる。
【0015】
葡萄樹の根の下方に遮根手段を設けずに、葡萄樹の根が下方の土壌に伸びることができるようにすることも好ましい。ここで、遮根手段とは、いわゆる遮根シートのように、根の生長を制限するために設けられるものをいう。このように、葡萄樹の鉛直方向での根域を制限しないことにより、停電などのトラブルで前記チューブから肥料成分を含有する水が葡萄樹の根に一時的に供給されなくなっても、葡萄樹は土壌中の水分や養分を自ら吸収することが可能になり、葡萄樹が枯れるのを防止することができるようになる。また、葡萄樹を倒れにくくすることも可能になる。
【0016】
所定高さで葡萄樹の主枝を非鉛直方向に誘引し、非鉛直方向に誘引された主枝の長さが10〜90cmとなるように剪定を行い、それぞれの主枝から側方に、連年、結果枝を出させることも好ましい。これにより、畑を有効に使うことが可能になり、畑の単位面積当たりの収穫量をより増大させることができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、品質に優れた葡萄を短期間で多く収穫することのできる葡萄栽培方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の葡萄栽培方法の好適な実施態様を図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明の葡萄栽培方法の好適な実施態様を示した説明図である。本発明の葡萄栽培方法における詳細な部分は、説明の便宜上、具体的な実施例の中で説明する。
【実施例】
【0019】
本発明の葡萄栽培方法の効果を実証するために、実際に葡萄樹を畑に植えて、葡萄の簡易被覆栽培を行った。本発明の葡萄栽培方法は、栽培する葡萄の品種を限定されるものではないが、本例の葡萄栽培方法においては、ピオーネとオーロラブラックの2種類を植えた。定植2〜4年目の収穫期に、畑10a当りの新梢数、果房数及び収穫量と、成熟果実の果房重、果粒重、果色及び糖度とについて調査を行った。本例の葡萄栽培方法の具体的な手順は、以下の通りである。
【0020】
1.定植
まず、複数本の葡萄樹10を10〜90cmの間隔で定植して植列を形成し、該植列に沿ってチューブ20を敷設する。このチューブ20は、窒素などの肥料成分を含有する水(養液)を葡萄樹10の根に供給するためのものとなっている。本例の葡萄栽培方法において、チューブ20の上流端は、原水の流れを切り替えるための電磁弁30と、電磁弁30の開閉を制御するための弁制御手段40と、窒素を含有する液肥を原水に混入するための液肥混入手段50とが設けられている。葡萄樹10に供給する水や窒素の量は、弁制御手段40や液肥混入手段50によって自動的に制御することができるようになっている。葡萄樹10はチューブ20とともに雨よけ60で覆っており、葡萄樹10の地際周辺の地面に雨が当らないようにしている。
【0021】
葡萄樹10の定植は、平らな地面に行ってもよいが、畦70を形成して行うと好ましい。このように、葡萄樹10の根域を制限することによって、灌水や施用の管理を容易に行うことができるようになり、葡萄樹10を小木化しやすくするだけでなく、果実の品質をより高めることも可能になる。本例の葡萄栽培方法においては、4月下旬に、ピートモスなどを施用して土壌改良した培土で複数列の畦70をつくり、それぞれの畦70の稜線に沿って葡萄樹10(葡萄苗)を所定間隔で定植し、葡萄樹10の植列を形成した。
【0022】
また、本例の葡萄栽培方法においては、畑に畦70を形成する際に、畦70の下に遮根シートなどの遮根手段を設けずに、土壌の上に畦70を直接形成している。このため、停電などのトラブルで一時的にチューブ20から水が供給されなくなった場合であっても、葡萄樹10の根が土壌中の水分や養分を吸収することができるようになり、葡萄樹10が枯れるのを防止することができるようになっている。また、葡萄樹10を倒れにくくすることも可能となっている。
【0023】
畦70を形成する培土の量は、とくに限定されないが、少なくしすぎると、葡萄樹10の樹勢が弱まりすぎて着果負担が多くなり、果色が不十分になるなど、葡萄の品質が低下するおそれがある一方で、多くしすぎると、葡萄樹10の樹勢が強まりすぎて花穂着生数が減少し、花振るいなどが発生しやすくなるおそれがある。このため、畦70を形成する培土の量は、1樹当たり20〜100Lとすると好ましい。本例の葡萄栽培方法においては、定植間隔Iを40cmとして定植した場合の畦70を形成する培土の量を1樹当たり75Lとし、畦70の高さを15cmとした。
【0024】
葡萄樹10の定植間隔Iは、10〜90cmであればとくに限定されない。しかし、定植間隔Iを狭くしすぎると、葡萄樹10の生長に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、定植間隔Iは、15cm以上に設定すると好ましく、20cm以上に設定するとより好ましい。一方、定植間隔Iを広くしすぎると、定植2年目における畑の単位面積当たりの収穫量を多く確保するのが困難になるおそれがある。このため、定植間隔Iは、70cm以下に設定すると好ましく、60cm以下に設定するとより好ましく、50cm以下に設定するとさらに好ましい。
【0025】
本例の葡萄栽培方法において、定植間隔Iは、当初、20cm、30cm、40cmの3種類で試したが、定植間隔Iが60cmの場合と80cmの場合についても調査を行うために、定植3年目の5月に、定植間隔Iが20cmの植列の葡萄樹10を3本ずつ間引いて定植間隔Iを80cmに変更し、定植間隔Iが30cmの植列の葡萄樹10を1本ずつ間引いて定植間隔Iを60cmに変更した。定植間隔Iが40cmの植列は、そのまま残し、定植間隔Iを40cmのままとした。
【0026】
葡萄樹10の植列は、1列だけでなく、畑の形状などに応じて、複数列設けると好ましい。これにより、畑の単位面積当たりの収穫量をさらに多くすることが可能になる。例えば、250本の葡萄樹10を40cm間隔で定植した植列を、2mの間隔で平行に5列設けると、10a(縦100m、横10mの矩形の畑)で1250本もの葡萄樹10を栽培することができる。
【0027】
植列を複数列設ける場合において、隣り合う植列の間隔I(隣り合う畦の間隔に相当)は、とくに限定されないが、狭くしすぎると、葡萄樹10の生長に悪影響を及ぼすおそれがあるし、剪定作業や収穫作業が困難になるおそれもある。このため、隣り合う植列の間隔Iは、通常、150cm以上に設定される。隣り合う植列の間隔Iは、180cm以上であると好ましく、200cm以上であるとより好ましい。
【0028】
一方、隣り合う植列の間隔Iを広くしすぎると、畑の単位面積当たりの収穫量を多くするのが困難になるおそれがある。このため、隣り合う植列の間隔Iは、通常、400cm以下に設定される。隣り合う植列の間隔Iは、350cm以下であると好ましく、300cm以下であるとより好ましい。
【0029】
雨よけ60は、少なくとも葡萄樹10の地際周辺の地面に雨が当るのを防止することができる形態のものであればとくに限定されない。雨よけ60としては、葡萄樹10の地際周辺の地面を覆う不透水性シートや、葡萄樹10の上方を覆う屋根を備えたハウスなどが例示される。本例の葡萄栽培方法においては、コストを考慮して、葡萄樹10の地際周辺の地面を覆う不透水性シートを雨よけ60として使用している。
【0030】
ところで、本例の葡萄栽培方法では、畑10a当たりの葡萄樹10の本数が625〜2500本と非常に多くなるために、葡萄樹10(葡萄苗)を購入すると費用がかかる。そこで、本例の葡萄栽培方法においては、2月上旬に葡萄樹10の成木から剪定した穂木を調整後、市販の培土が充填された樹脂製のポットに挿し木し、高さが10cm程度になるまで育成したものを畑に定植した。病気の原因となるウイルスは、穂木の段階で伝染するために、ウイルスに感染していないことが確認されている葡萄樹から穂木を採取した。
【0031】
2.灌水と施肥(定植1年目)
肥料成分を含有する水は、毎日与えてもよいし、数日毎に分配して与えてもよい。本例の葡萄栽培方法においては、下記表1に示すように、葡萄樹の生育期に応じて施用水量と施用窒素量を適宜変更している。ただし、下記表1は、畑10aに1250本の葡萄樹を、定植間隔Iを40cmとして定植した場合のものである。畑10a当たりの葡萄樹の本数が変わった場合には、1樹当たりの量を参考に適宜調整する。本例の葡萄栽培方法において、定植1年目における総施用水量は、165.5[t/10a]、定植1年目における総施用窒素量は、7.0[kg/10a]である。雨天日は、葡萄樹が水分を蒸散させにくくなるために、肥料成分を含有する水の供給を停止した。
【0032】
【表1】


【0033】
3.葡萄樹の誘引と剪定(定植1年目)
定植1年目は、葡萄樹の樹形を完成させることに力を注ぎ、果実生産を行わない。葡萄樹の仕立て法は、とくに限定されないが、本例の葡萄栽培方法においては、片側1本の一文字整枝とした。主枝は、地面から所定高さで非鉛直方向に誘引し、本例の葡萄栽培方法においては、葡萄樹の植列と平行な方向に誘引した。主枝の誘引は、葡萄棚や垣根などの誘引手段を用いて行った。
【0034】
このとき、主枝を短く剪定しすぎると、主枝から発生する結果枝の本数が少なくなって1樹当たりの収穫量が減少し、畑の単位面積当たりの収穫量を多く確保するのが困難になるおそれがある。このため、主枝の長さは、15cm以上とするとより好ましく、20cm以上とするとさらに好ましい。
【0035】
一方、主枝を長くしすぎると、葡萄樹の小木化が困難となり、定植2年目での収穫が難しくなるおそれがある。また、誘引された主枝の根元付近から生える結果枝の本数が少なくなり、収穫量が減少するおそれがある。このため、非鉛直方向に誘引された主枝の長さは、70cm以下にするとより好ましく、60cm以下に設定するとさらに好ましい。本例の葡萄栽培方法においては、地際から先端までの葡萄樹に沿った長さが3m程度となるまで葡萄樹を生長させ、水平方向に誘引された主枝の長さが定植間隔Iに略等しくなるように剪定を行っている。
【0036】
ところで、葡萄樹の主枝を非鉛直方向に誘引する高さは、とくに限定されないが、低くしすぎると、葡萄樹の低い位置に果房が成るようになり、しゃがんだり屈んだりしなければ果房を収穫できなくなるなど、収穫時の肉体的負担が大きくなるおそれがある。このため、葡萄樹の主枝を非鉛直方向に誘引する高さは、通常、葡萄樹の地際から0.8m以上とされる。葡萄樹の主枝を非鉛直方向に誘引する高さは、葡萄樹の地際から1m以上であると好ましく、葡萄樹の地際から1.5m以上であるとより好ましい。
【0037】
一方、葡萄樹の主枝を非鉛直方向に誘引する高さが高すぎると、葡萄樹の小木化が困難となり、定植2年目の収穫が難しくなるばかりか、葡萄樹の高い位置に果房が成り、収穫の際に手が届きにくくなるおそれもある。このため、葡萄樹の主枝を非鉛直方向に誘引する高さは、通常、葡萄樹の地際から2.5m以下とされる。葡萄樹の主枝を非鉛直方向に誘引する高さは、葡萄樹の地際から2.2m以下であると好ましく、葡萄樹の地際から2m以下であるとより好ましい。本例の葡萄栽培方法においては、葡萄樹の地際から約1.5mの高さで誘引している。
【0038】
4.灌水と施肥(定植2年目以降)
本例の葡萄栽培方法においては、下記表2に示すように、葡萄樹の生育期に応じて施用日数と施用回数を適宜変更した。施用1回当りの水の量は1樹当たり400ccとしている。雨天日は、葡萄樹が水分を蒸散させにくくなるために、肥料成分を含有する水の供給を停止した。
【0039】
ただし、本例の葡萄栽培方法において、定植2年目には、下記表2に示す灌水同時施肥管理法よりもかなり多めに水を施用した。そうしたところ、後述するように、定植2年目に収穫した葡萄の果色が不十分となったために、定植3年目以降は、灌水と施肥を見直して、下記表2に示す灌水同時施肥管理法に従って灌水と施肥を行った。その結果、果色が改善し、出荷するのに十分耐えうる品質の葡萄を収穫することができた。
【0040】
溢泌期の具体的な時期は、気候や葡萄の品種や作型などによっても異なるが、岡山県南部でピオーネを簡易被覆栽培する場合には、通常、3月中旬頃となる。また、「落葉期」の具体的な時期も、気候や葡萄の品種や作型などによっても異なるが、岡山県南部でピオーネを簡易被覆栽培する場合には、通常、10月中旬頃となる。その他、発芽期は4月下旬頃、満開期は6月上旬頃、果粒軟化期は7月中旬頃、収穫始期は8月下旬頃、収穫終期は9月中旬頃となる。
【0041】
ただし、下記表2は、畑10aに1250本の葡萄樹を、定植間隔Iを40cmとして定植した場合のものである。畑10a当たりの葡萄樹の本数が変わった場合には、1樹当たりの量を参考に適宜調整する。
【0042】
【表2】


【0043】
定植2年目以降においては、上記表2に示すように、チューブから供給する水の量を、溢泌期には、1樹当たり100cc/日以下に抑え、溢泌期から同年の果粒軟化期にかけて、1樹当たり1000cc/日以上(果粒軟化開始期の量)まで増やしていき、その後、同年の落葉期にかけて、1樹当たり500cc/日以下まで減らして行くと好ましい。これにより、糖度や着色度が高く、より品質に優れた葡萄を収穫することが可能になる。
【0044】
また、定植2年目以降においては、上記表2に示すように、前記チューブから供給する水に含有される窒素の量を、溢泌期には、1樹当たり5mg/日以下に抑え、溢泌期から同年の満開期までにかけて、1樹当たり20mg/日以上まで増やしていき、その後、同年の落葉期にかけて、1樹当たり20mg/日以下まで減らして行くと好ましい。このように、葡萄樹に施用する窒素の量を最適化することによって、肥料の量を削減しながらも、糖度や着色度が高く、より品質に優れた葡萄を収穫することが可能になる。
【0045】
本例の葡萄栽培方法においては、定植3年目以降の溢泌期から同年の落葉開始期までの間に前記チューブから供給する水の総量を1樹当たり約122L(施用予定日が雨天だったために水を施用しなかった日が合計22日)とした。これは、従来の葡萄栽培方法(該当期間における水の総量が1樹当たり千数百L)と比較して非常に少ない量となっている。
【0046】
また、本例の葡萄栽培方法においては、定植3年目以降の溢泌期から同年の落葉開始期までの間に前記チューブから供給する水に含有される窒素の総量を1樹当たり約3.5グラム(施用予定日が雨天だったために窒素を施用しなかった日が合計22日)とした。これは、従来の葡萄栽培方法と比較して非常に少ない量であり、葡萄樹に与える肥料代を大幅に削減することもできるようになっている。
【0047】
5.葡萄樹の誘引と剪定(定植2年目以降)
定植2年目以降は、主枝から発生した結果枝のうち充実したものを選び、主枝の両側で10〜20cm間隔となるように残し、果実生産を行う。結果枝の長さは、葡萄樹の植列の間隔Iの半分程度とする。結果枝は、主枝に垂直で水平な方向に誘引し、主枝の先端側から見た場合に結果枝が略T字状となるように整えた。結果枝の剪定は基部1芽〜2芽を残して長さをそろえた。
【0048】
6.収穫(定植2年目以降)
本例の葡萄栽培方法における、定植2〜4年目の、畑10a当りの新梢数、果房数及び収穫量を、ピオーネについては下記表3〜5に、オーロラブラックについては下記表6〜8に示す。また、本例の葡萄栽培方法における、定植2〜4年目の、成熟果実の果房重、果粒重、果色及び糖度を、ピオーネについては下記表9〜11に、オーロラブラックについては下記表12〜14に示す。
【0049】
【表3】


【0050】
【表4】


【0051】
【表5】


【0052】
【表6】


【0053】
【表7】


【0054】
【表8】


【0055】
【表9】


【0056】
【表10】


【0057】
【表11】


【0058】
【表12】


【0059】
【表13】


【0060】
【表14】


【0061】
上記表3〜14において、定植2年目における定植間隔Iが60cmのときと80cmのとき、及び定植3年目における定植間隔Iが20cmのときと30cmのときのデータが無いのは、当初(定植1年目)、定植間隔Iが20cmの場合と、30cmの場合と、40cmの場合との3種類で試したが、定植間隔Iが60cmの場合と80cmの場合についても調査を行うために、定植3年目の5月に、定植間隔Iが20cmの植列の葡萄樹を3本ずつ間引いて定植間隔Iを80cmに変更し、定植間隔Iが30cmの植列の葡萄樹を1本ずつ間引いて定植間隔Iを60cmに変更したためである。このとき、定植間隔Iが40cmの植列は、そのまま残し、定植間隔Iを40cmのままとした。
【0062】
上記表3〜8を見ると、ピオーネとオーロラブラックのいずれにおいても、定植2年目から、畑10aで2000kgを超える葡萄が収穫できており、本発明の葡萄栽培方法が、葡萄を短期間で多く収穫できるものであることが分かる。また、定植間隔Iが20〜80cmの範囲では、概して、定植間隔Iを狭くすればするほど、葡萄の収穫量を多く確保しやすいことも分かる。
【0063】
一方、上記表9〜14を見ると、定植2年目の果色を除いては、ピオーネとオーロラブラックのいずれにおいても、出荷するのに耐えうる品質となっていることが分かる。また、定植2年目には不十分であった果色は、定植3年目以降において、上記表2に記載の灌水同時施肥管理法に従って灌水と施肥を行ったところ改善したために、定植2年目においても、上記表2に記載の灌水同時施肥管理法に従って灌水と施肥を行えば、定植2年目から十分な果色が得られることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の葡萄栽培方法の好適な実施態様を示した説明図である。
【符号の説明】
【0065】
10 葡萄樹
20 チューブ
30 電磁弁
40 弁制御手段
50 液肥混入手段
60 雨よけ
70 畦
【出願人】 【識別番号】591060980
【氏名又は名称】岡山県
【出願日】 平成19年1月18日(2007.1.18)
【代理人】 【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎

【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫

【識別番号】100113181
【弁理士】
【氏名又は名称】中務 茂樹

【識別番号】100126697
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 瑞枝


【公開番号】 特開2008−173053(P2008−173053A)
【公開日】 平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願番号】 特願2007−9629(P2007−9629)