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【発明の名称】 遺伝子組換え植物工場
【発明者】 【氏名】安野 理恵

【氏名】伊藤 亮

【氏名】田中 輝義

【氏名】松村 健

【氏名】相馬 一郎

【氏名】藤田 尚也

【氏名】高砂 裕之

【要約】 【課題】医薬品原材料等の機能性成分を生産する遺伝子組換え植物を封じ込めつつ栽培・収穫できる植物工場を提供する。

【解決手段】植物工場1内に、遺伝子組換え植物Pを栽培する養液栽培装置4と排気フィルター付き空調装置5とが設けられ且つ陰圧に保たれた閉鎖型栽培エリア2と、その栽培エリア2にエアロック付き搬入口22を介して隣接すると共に栽培エリア2より弱い陰圧に保たれ且つ収穫後の遺伝子組換え植物Pを発芽・生長・繁殖又は交雑しないように不活化する植物不活化装置21が設けられた不活化エリア20と、その不活化エリア20にエアロック付き搬送口38を介して隣接すると共に陽圧に保たれ且つ不活化後の遺伝子組換え植物Pを食品又は薬品に調製する装置42、43が設けられた製造エリア30とを設け、閉鎖型栽培エリア2と製造エリア30とにエアロック付き作業員出入口10、14、39、35をそれぞれ設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子組換え植物を栽培する養液栽培装置と排気フィルタ付き空調装置とが設けられ且つ陰圧に保たれた閉鎖型栽培エリア、前記栽培エリアにエアロック付き搬入口を介して隣接すると共に栽培エリアより弱い陰圧に保たれ且つ収穫後の遺伝子組換え植物を発芽・生長・繁殖又は交雑しないように不活化する植物不活化装置が設けられた不活化エリア、前記不活化エリアにエアロック付き搬送口を介して隣接すると共に陽圧に保たれ且つ不活化後の遺伝子組換え植物を食品又は薬品に調製する装置が設けられた製造エリア、前記栽培エリアからの排水を滅菌処理する排水滅菌器、及び前記栽培エリアと製造エリアとにそれぞれ設けたエアロック付き作業員出入口を備えてなる遺伝子組換え植物工場。
【請求項2】
請求項1の植物工場において、前記植物不活化装置に凍結乾燥装置、摩砕装置、加熱装置及び/又は薬剤処理装置を含めてなる遺伝子組換え植物工場。
【請求項3】
請求項1又は2の植物工場において、前記閉鎖型栽培エリアに、相互に離れたエアロック付き作業員入口及び出口と、そのエアロック付き作業員入口に通じる前室と、前記不活化エリアにエアロック付き搬入口を介して隣接すると共にエアロック付き作業員出口に通じる後室と、その前室及び後室に気密扉付き入口及び出口を介して通じる複数の栽培室とを設け、前記養液栽培装置を各栽培室にそれぞれ設けてなる遺伝子組換え植物工場。
【請求項4】
請求項3の植物工場において、前記閉鎖型栽培エリアに、前記前室及び後室に気密扉付き入口及び出口を介して通じる廊下と、その廊下に気密扉付き出入口を介して通じる複数の栽培室とを設け、前記養液栽培装置を各栽培室にそれぞれ設けてなる遺伝子組換え植物工場。
【請求項5】
請求項3又は4の植物工場において、前記栽培室の各々に、それぞれ独立の排気フィルタ付き空調装置と、その空調装置の排水をその栽培室の養液栽培装置へ導く導水路とを設けてなる遺伝子組換え植物工場。
【請求項6】
請求項5の植物工場において、前記空調装置に、前記各栽培室の二酸化炭素濃度を個別に調節する二酸化炭素濃度制御装置を含めてなる遺伝子組換え植物工場。
【請求項7】
請求項3から6の何れかの植物工場において、前記栽培室の各々に、透明な全面天井板と、その天井板上に画成した気密な照明ボックスと、その照明ボックスの排熱装置とを設けてなる遺伝子組換え植物工場。
【請求項8】
請求項1から7の何れかの植物工場において、前記製造エリアに、前記不活化エリアにエアロック付き搬送口を介して隣接する食品又は薬品の製造室と、その製造室に通じると共に製造室より高い陽圧に保たれた前室と、その前室に通じると共に前室より高い陽圧に保たれた製剤室とを設け、前記エアロック付き作業員出入口を前室に設けてなる遺伝子組換え植物工場。
【請求項9】
請求項8の植物工場において、前記製造エリアに、エアロック付き搬出口を介して前室に通じる準備室を設けてなる遺伝子組換え植物工場。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子組換え植物工場に関し、とくに蛋白質やワクチン等の機能性成分を生産する遺伝子組換え植物を栽培すると共に収穫後の遺伝子組換え植物を不活化して医薬品・工業用試薬・食品等の有用物質(以下、これらを纏めて「食品又は薬品」ということがある)を調製する遺伝子組換え植物工場に関する。
【背景技術】
【0002】
1980年代に開発された植物の遺伝子組換え技術は、種の壁を越えて様々な有用な遺伝子・形質を選択的に植物へ付与することを可能とし、植物の品種改良の可能性を大きく広げてきた。例えば、農業における手間やコストの削減を目的として、除草剤耐性や病害虫耐性の遺伝子・形質を付与した大豆、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、ジャガイモ等の遺伝子組換え農作物が開発され実用化されている。また、ストレス耐性(例えば耐乾燥性や耐塩性)の遺伝子・形質を付与した不良環境に強い農作物、高栄養価(例えばオレイン酸やβカロチンの高生産性)の遺伝子・形質を導入した健康に役立つ農作物等も開発されている(非特許文献1参照)。
【0003】
最近では、遺伝子組換え技術を単に農作物の品種改良に用いるのではなく、医薬・検査薬の成分(医薬品原材料)を生産する手段として遺伝子組換え植物を利用する研究開発も進められている。例えば非特許文献2は、抗癌剤等として用いるヒトインターフェロンα(IFN−α)の遺伝子を導入・発現させたタバコ、ジャガイモ、イチゴ等の遺伝子組換え植物を用いて、抗ウィルス活性のあるIFN−αが生産できることを報告している。例えば、そのような遺伝子組換え植物(又はその特定の器官・組織)から遺伝子産物であるIFN−αを抽出・精製することにより、従来量産が難しかった医薬品原材料を大量にしかも安価に製造することが期待できる。
【0004】
また特許文献1は、免疫原性・機能性等を有する目的ペプチドをコードする遺伝子とノーウォークウイルス(Norwalk virus)外被蛋白質遺伝子とを融合させた遺伝子を導入・発現させた遺伝子組換え植物体を、経口投与によってその目的ペプチドを生体の目標部位に運搬する経口キャリア手段(いわゆる経口ワクチン)として利用する技術を開示している。例えば、住血胞子虫(原虫)であるロイコチトゾーン・カウレリー(Leucocytozoon caulleryi)の感染に起因する鶏のロイコチトゾーン症を予防するため、目的ペプチドとしてロイコチトゾーン・カウレリー第2代シゾント由来の免疫原性ペプチドLRE1の遺伝子(LRE1遺伝子)を導入・発現させた遺伝子組換えジャガイモの葉を鶏用飼料と混合して鶏に経口投与した結果、鶏の血中の抗ロイコチトゾーン・カウレリー抗体価の上昇が確認されている。
【0005】
非特許文献2及び特許文献1のように遺伝子組換え植物を用いて医薬品原材料等の機能性成分を生産する方法は、動物由来の培養細胞や他の合成系を利用した従来のバイオプロセスに比して低コストで量産することができ、哺乳類の病原体等の混入リスクを低く抑えることができ、低温でなくとも室温において種子として長期保存が可能である等の利点を有している。また、経口ワクチンとすることで筋肉内注射のようなストレスのない投与が可能となり、注射器・針等の医療用廃棄物が低減できる等の利点も期待できる。更に遺伝子組換え植物の経口ワクチンは、抽出・精製といった工程を経ることなく収穫後そのまま(又は例えば粉末状に調製するだけで)投与できる利点を有しており、その点でも非常に経済的なワクチンといえる。なお、遺伝子組換え植物を用いて生産する機能性成分には、導入した遺伝子の産物である蛋白質やワクチンだけでなく、例えば導入した酵素蛋白質遺伝子の酵素反応による生成物(蛋白質とは限らない)等も含まれる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−341937号公報
【非特許文献1】社団法人農林水産先端技術産業振興センター「遺伝子組換え農作物・食品の開発状況」2006年10月、インターネット<http://www.biotech-house.jp/qanda/>
【非特許文献2】松村健「閉鎖型システムを用いた遺伝子組換え植物による有用物質生産」第16回SHITAシンポジウム、SHITA REPORT No.23、2006年1月18日、p.59-65
【非特許文献3】平成16年文部科学省・環境省令第1号「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」平成16年1月29日公布
【非特許文献4】伊東正他「蔬菜園芸学」有限会社川島書店、1994年5月20日第4刷発行、pp.226-230
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、遺伝子組換え植物を用いて機能性成分を量産するためには、その植物を効率的に栽培する施設が必要である。従来の遺伝子組換え農作物は、閉鎖系実験室において開発したのち、屋外の開放系において環境に対する影響を与えないように大量に栽培することが前提とされている。これに対し医薬品原材料のような機能性成分の生産を目的する遺伝子組換え植物は、農作物のように膨大な収穫量を必要としない場合も多く、適当な室内栽培技術があれば比較的狭い閉鎖系温室等の植物工場で栽培することも可能である。例えば、上述したIFN−α遺伝子を導入した組換え植物は、1アール程度の栽培面積があれば十分な生産量を得ることができる。また、閉鎖系での栽培には、開放系での栽培に比して品質・収量の均一性が確保できる利点もある。
【0008】
ただし、遺伝子組換え植物を閉鎖型植物工場で栽培する場合は、花粉等が環境中へ漏出しないように植物を封じ込める対策が必要である。従来、実験施設レベルにおいて遺伝子組換え植物を封じ込める方法は知られているが(非特許文献3参照)、収穫後の植物を運び出さねばならない植物工場において植物を経済的・効果的に封じ込める実用的な方法は提案されていない。花粉の漏出を避けるために雄性不稔の遺伝子組換え植物も開発されているが、植物は花粉以外の器官・組織から再生する場合もあるため、雄性不稔形質の導入のみによって遺伝子組換え植物の環境中への漏出を確実に防止することは難しい。遺伝子組換え植物を用いた有用物質生産の実用化を図るためには、遺伝組換え植物を確実に封じ込めつつ栽培・収穫し、その植物により生産された機能性成分を食品又は薬品として出荷できるような閉鎖型植物工場を開発することが有効である。
【0009】
そこで本発明の目的は、医薬品原材料等の機能性成分を生産する遺伝子組換え植物を封じ込めつつ栽培・収穫できる植物工場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1の実施例を参照するに、本発明による遺伝子組換え植物工場は、遺伝子組換え植物Pを栽培する養液栽培装置4と排気フィルタ71(図7参照)付き空調装置5とが設けられ且つ陰圧に保たれた閉鎖型栽培エリア2、その栽培エリア2にエアロック付き搬入口22を介して隣接すると共に栽培エリア2より弱い陰圧に保たれ且つ収穫後の遺伝子組換え植物Pを発芽・生長・繁殖又は交雑しないように不活化する植物不活化装置21が設けられた不活化エリア20、その不活化エリア20にエアロック付き搬送口38を介して隣接すると共に陽圧に保たれ且つ不活化後の遺伝子組換え植物Pを食品又は薬品に調製する装置42、43が設けられた製造エリア30、栽培エリア2からの排水を滅菌処理する排水滅菌器60(図6参照)、及び栽培エリア2と製造エリア30とにそれぞれ設けたエアロック付き作業員出入口10、14、39、35を備えてなるものである。植物不活化装置21には凍結乾燥装置、摩砕装置、加熱装置及び/又は薬剤処理装置を含めることができる。
【0011】
好ましくは図示例のように、閉鎖型栽培エリア2に、相互に離れたエアロック付き作業員入口10及び出口14と、エアロック付き作業員入口10に通じる前室6と、不活化エリア20にエアロック付き搬入口22を介して隣接すると共にエアロック付き作業員出口14に通じる後室7と、その前室6及び後室7に気密扉付き入口17a及び出口17bを介して通じる複数の栽培室3A、3Bとを設け、養液栽培装置4A、4Bを各栽培室3A、3Bにそれぞれ設ける。また図示例のように、閉鎖型栽培エリア2に、前室6及び後室7に気密扉付き入口17a及び出口17bを介して通じる廊下8と、その廊下8に気密扉付き出入口17を介して通じる複数の栽培室3C、3Dとを設け、養液栽培装置4C、4Dを各栽培室3C、3Dにそれぞれ設けることもできる。
【0012】
更に好ましくは、図5及び図6に示すように、栽培室3A、3B、3C、3Dの各々に、それぞれ独立の排気フィルタ付き空調装置5A、5B、5C、5Dと、その空調装置5A、5B、5C、5Dの排水をその栽培室3A、3B、3C、3Dの養液栽培装置4A、4B、4C、4Dへ導く導水路65A、65B、65C、65D(図6参照)とを設ける。また、図7に示すように、各空調装置5A、5B、5C、5Dに、各栽培室3A、3B、3C、3Dの二酸化炭素濃度を個別に調節する二酸化炭素濃度制御装置74を含めることが望ましい。更に、図4及び図7に示すように、栽培室3A、3B、3C、3Dの各々に、透明な全面天井板27と、その天井板27上に画成した気密な照明ボックス25と、その照明ボックス25の排熱装置28とを設けることができる。
【0013】
望ましくは図示例のように、製造エリア30内に、不活化エリア20にエアロック付き搬送口38を介して隣接する食品又は薬品の製造室31と、その製造室31に通じると共に製造室31より高い陽圧に保たれた前室33と、その前室33に通じると共に前室33より高い陽圧に保たれた製剤室32とを設け、エアロック付き作業員出入口39、35を前室33に設ける。また、製造エリア30には、エアロック付き搬出口40を介して前室33に通じる準備室37を設けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による遺伝子組換え植物工場は、陰圧に保たれた閉鎖型栽培エリア2と、その栽培エリア2に隣接すると共に栽培エリア2より弱い陰圧に保たれた不活化エリア20と、その不活化エリア20に隣接すると共に陽圧に保たれた製造エリア30とを有し、閉鎖型栽培エリア2で栽培・収穫した遺伝子組換え植物Pを不活化エリア20に搬入して発芽・生長・繁殖又は交雑しないように不活化したのち、その不活化後の遺伝子組換え植物Pを不活化エリア20から製造エリア30に搬送して食品又は薬品を調製するので、次の顕著な効果を奏する。
【0015】
(イ)閉鎖型栽培エリア2で収穫した遺伝子組換え植物Pを不活化したうえで製造エリア30へ搬送するので、栽培エリア2から運び出された植物Pが製造エリア30内又は自然環境下で発芽・生長・繁殖又は交雑するおそれがない。
(ロ)また、製造エリア30から閉鎖型栽培エリア2へ向かう空気の流れをつくる室圧制御を施しているので、空気の流れにより植物Pの花粉等が栽培エリア2から漏出するおそれも少ない。
(ハ)更に、閉鎖型栽培エリア2と製造エリア30とに個別の作業員出入口10、14、39、35を設けて作業員の相互の出入りを禁止しているので、植物Pの花粉等が作業員に付着して栽培エリア2から漏出することも有効に防止できる。
(ニ)閉鎖型栽培エリア2にそれぞれ独立の養液栽培装置4A、4B、4C、4D及び空調装置5A、5B、5C、5Dを有する複数の栽培室3A、3B、3C、3Dを設けることにより、栽培エリア2内で複数品種の遺伝子組換え植物Pを汚染(クロス・コンタミネーション)させることなく同時に栽培することが可能である。
(ホ)また、製造エリア30内に高い陽圧に保たれた高清浄度の製剤室32を設けることにより、菌等の汚染を防止しつつ遺伝子組換え植物Pから医薬品や試薬を製剤することも可能である。
(ヘ)都市部等の小さな床面積でも建設できるコンパクトな工場とすることができ、遺伝子組換え植物を用いた食品又は薬品の生産の実用化に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、例えばイチゴ等の遺伝子組換え植物Pを用いて医薬品原材料等の機能性成分が含まれる食品又は薬品を製造する本発明の植物工場1の実施例を示す。図示例の植物工場1は、植物Pを養液栽培する閉鎖型栽培エリア2と、栽培エリア2で収穫した植物Pから食品又は薬品を調製する製造エリア30と、その栽培エリア2と製造エリア30との間で収穫した植物Pを不活化する不活化エリア20とを有する。栽培エリア2と不活化エリア20とをエアロック付き搬入口(例えばパスボックス等)22を介して連通させ、不活化エリア20と製造エリア30とをエアロック付き搬送口(例えばパスボックス等)38を介して連通させることにより、栽培エリア2から不活化エリア20を経て製造エリア30に至る植物Pの動線を確保する(図中の黒矢印参照)。また、栽培エリア2に相互に離れたエアロック付き作業員入口10及び出口14(例えばパスルーム等)を設けると共に、それと独立したエアロック付き作業員入口39及び出口35(例えばパスルーム等)を製造エリア30に設け、栽培エリア2及び不活化エリア20と製造エリア30との間の作業員の出入を禁止している。なお、図示例では栽培エリア2と不活化エリア20との間にエアロック付き作業員出入口(例えばパスルーム等)23を設けて両室2、20間の作業員の出入りを許容しているが、不活化エリア20に栽培エリア2の作業員入口10、出口14と独立したエアロック付き作業員出入口(図示せず)を設けて栽培エリア2と不活化エリア20との間の作業員の出入りを禁止してもよい。
【0017】
図示例の閉鎖型栽培エリア2は内部に4つの栽培室3A、3B、3C、3Dを有し、各栽培室3A、3B、3C、3Dにそれぞれ独立した養液栽培装置4A、4B、4C、4Dと空調装置5A、5B、5C、5Dとを設けている。栽培装置4及び空調装置5を介して遺伝子組換え植物Pの花粉等が漏出しないように、各養液栽培装置4A、4B、4C、4Dに排水滅菌器60を接続し(図6参照)、各空調装置5A、5B、5C、5Dに排気フィルタ71を含めている(図7参照)。養液栽培(hydroponics、nutriculture)とは土壌を用いずに養分を無機塩類の水溶液(培養液)として与えることを特徴とする栽培法であり(非特許文献4参照)、養液栽培装置4の一例は流動法(NFT、DFT)や静置法(浮根法、毛管法、筒栽培法)の水耕栽培装置又は噴霧耕装置である。また、養液栽培装置4として礫耕、砂耕、ロックウール耕等の固形培地耕方式を採用することもできる。この場合、植物Pの根域を透水遮根性素材で囲むことにより、装置4の培養液への植物Pの漏出を抑制し、滅菌対象の排水量の削減や排水滅菌器60の負荷の軽減が期待できる。
【0018】
図示例のように栽培エリア2内に複数の栽培室3A、3B、3C、3Dを設けることで、栽培エリア2内で複数品種の遺伝子組換え植物Pを相互に汚染させることなく同時に栽培することが可能となる。様々な種類の植物Pに応じて適切な光環境を創出するため、図示例では各栽培室3A、3B、3C、3Dを適当な発光スペクトル及び強度の照明装置26を用いて光条件を人工的に制御する完全制御型としているが(図4参照)、太陽光で効率的に栽培できる植物Pの場合は太陽光利用型としてもよい。また、太陽光・人工光併用型とすることもできる。望ましくは、栽培する植物Pの種類に応じて、空調装置5A、5B、5C、5Dにより、各栽培室3A、3B、3C、3Dの温度、湿度、風量、二酸化炭素(CO2)濃度等を個別に調節する(図3参照)。ただし、栽培エリア2内に設ける栽培室3の数は図示例に限定されず、単一品種の植物Pのみを栽培する場合は、栽培エリア2の全体を1つの栽培室3としてもよい。
【0019】
閉鎖型栽培エリア2に複数の栽培室3A、3Bを設ける場合は、図示例のように栽培エリア2内に、エアロック付き作業員入口10に通じる前室6と、エアロック付き作業員出口(例えばパスルーム等)14に通じる後室7とを設け、複数の栽培室3A、3Bにそれぞれ前室6及び後室7に通じる気密扉付き入口17a及び出口17bを設けることが望ましい。栽培室3A、3Bの作業員は、同図に白抜き矢印で示すように、更衣室9で作業服を着用したのち、作業員入口10から前室6及び気密扉付き入口17aを経て何れかの栽培室3A、3Bに入室する。また栽培室3A、3Bでの作業が終了したのち、その栽培室3A、3Bの気密扉付き出口17b及び後室7を経て作業員出口14から脱衣室13へ退室し、作業服を着替える。各栽培室3A、3Bに対する作業員の入室動線と退室動線とを明確に分けることにより、各栽培室3A、3Bで異なる遺伝子組換え植物Pを栽培する場合でも、作業員の動線の交差による植物Pの汚染及び漏出を確実に防止できる。また図示例のように、栽培室3A、3Bで用いる資材その他の物品についても、前室6及び後室7にそれぞれ物品のエアロック付き入口12及び出口16を設け、作業員の場合と同様に各栽培室3A、3Bに対する物品の搬入動線と搬出動線とを明確に分けることにより、物品の動線の交差による植物Pの汚染及び漏出を避けることができる(同図の斜線付き矢印参照)。なお、図示例では省略しているが、後室7には栽培エリア2から収穫した植物Pを一時保存する装置(例えば超低温フリーザ)を備えている。また、収穫した植物Pの不要部分或いは栽培エリア2で発生した枯れ葉等の植物残渣を廃棄処理する装置(例えばオートクレープ)を設けることが望ましく、廃棄処理済みの植物残渣はエアロック付き物品出口16及び搬出室15を介して工場1から運び出される。
【0020】
或いは図示例の栽培室3C、3Dのように、閉鎖型栽培エリア2内に気密扉付き入口17a及び出口17bを介して前室6及び後室7に通じる廊下8を設け、その廊下8に通じる気密扉付き出入口17を各栽培室3C、3Dに設けることも可能である。同図に白抜き矢印で示すように、栽培室3C、3Dの作業員は、前室6から気密扉付き入口17a及び廊下8を経て何れかの栽培室3C、3Dへ入室し、作業終了後に廊下8及び気密扉付き出口17bを経て後室7に退室する。このように入口10から出口14へ一方通行の廊下8を介して各栽培室3C、3Dに作業員が出入することにより、作業員の動線の交差による植物Pの汚染及び漏出を避けながら、栽培エリア2内の狭いスペースを有効に利用して多数の栽培室3を配置することができる。ただし、この場合は栽培室3Cからの退室動線と栽培室3Dへの入室動線とが交差しうるので、各栽培室3C、3Dで異なる遺伝子組換え植物Pを栽培する場合は、そのような動線の交差が生じないように注意する必要がある。
【0021】
図示例の不活化エリア20は、閉鎖型栽培エリア2の後室7にエアロック付き搬入口22とエアロック付き作業員出入口23とを介して隣接し、内部に植物不活化装置21が設けられている。不活化エリア20の作業員は、同図に白抜き矢印で示すように、栽培エリア2の後室7から作業員出入口23を経て不活化エリア20に入り、植物不活化作業の完了後、作業員出入口23を経て栽培エリア2の後室7へ戻って作業員出口14から退出する。不活化装置21は、遺伝子組換え植物P内で生産された医薬品原材料等の機能性成分(遺伝子産物やその酵素反応による生成物等)の活性を損なうことなく、その植物Pを自然環境下で発芽・生長・繁殖又は交雑しないように処理するものである。不活化装置21の一例は凍結乾燥装置である。本発明者は、遺伝子組換えイチゴを凍結乾燥することにより、その遺伝子産物の活性を有したまま、その種子(痩果)の発芽能力を喪失させ得ることを実験的に確認できた(実験例1及び2参照)。ただし、不活化装置21は凍結乾燥装置に限定されるものではなく、摩砕装置、加熱装置及び/又は薬剤処理装置等を用いて植物Pの自然環境下での発芽・生長・繁殖又は交雑を不可能にすることができる。この場合、摩砕の大きさ、加熱の温度、薬剤処理で使用する薬剤等は、栽培する植物Pに応じて実験的に定めることができる。
【0022】
[実験例1]
IFN−α遺伝子を導入した遺伝子組換えイチゴ(hIFN遺伝子導入系統:IFN62)の栽培株より採集した果実を直ちに−80℃の冷凍庫に入れて一定量が確保できるまで保存し、冷凍庫に保存した果実を凍結乾燥装置RLEII-205(共和真空技術株式会社製)を用いて凍結乾燥したのち、密閉容器に入れデシケータ内で保存した乾燥果実から充実した種子をピンセットで取り出して発芽実験を行った。本実験では、1%次亜塩素酸ナトリウム液で15分間表面を滅菌したのち蒸留水で3回洗浄した乾燥種子を、湿らせた濾紙を敷いたφ9cmシャーレ20枚に25粒ずつ播種し(合計500粒)、濾紙に適時湿り気を与えつつ24℃、16時間日長に設定した培養室内で管理し、試験開始12週後に種子の発芽状況を確認した。また、ラクトフェリン遺伝子を導入した2系統の遺伝子組換えイチゴ(LF125、LF145)、及び非遺伝子組換えイチゴ(エッチエス−138:Cont.)についても同様の実験を行った。この実験結果を表1に示す。表1から分かるように、何れの系統も観察した12週間での発芽は確認できなかった。
【表1】


【0023】
比較のため、遺伝子組換えイチゴ(LF145)及び非遺伝子組換えイチゴ(エッチエス−138:Cont.)の採取直後の果実から取り出した種子を濾紙上に播種し、前記と同じ条件の培養室内で管理し、試験開始12週後における種子の発芽状況を確認した。この実験結果を表2に示す。表2の実験結果から、Cont.とLF145の2系統のみの結果ではあるが、果実採集後直ちに播種すれば発芽する能力は持っていることが分かる。すなわち表1と表2との比較から、遺伝子組換えイチゴの種子は凍結乾燥により発芽能力が失われたと判断できる。
【表2】


【0024】
[実験例2]
また、実験例1において遺伝子組換えイチゴの遺伝子産物が凍結乾燥による不活化処理後も活性を有していることを確認するため、ストレス下において免疫誘導されたマウスに、ラクトフェリン遺伝子を導入・発現させて凍結乾燥させた遺伝子組換えイチゴ(LFイチゴ)又は凍結乾燥させた非組換えイチゴ(Cイチゴ)をそれぞれ経口投与した後、サイトカイン類の一種であるインターロイキン6(IL6)の血中濃度を測定する実験を行った。実験では、LFイチゴ及びCイチゴの各々について、その凍結乾燥させたイチゴ粉末(1g/日)をストレス状態のマウス5頭に1週間経口投与したのち採血を行い、血中のIL6の濃度をエライザ法で測定した。実験結果を図8のグラフに示す。同図には、対照実験として、ストレスのないマウスに通常の餌を給餌した場合の血中のIL6の濃度を併せて示す。同図のグラフから分かるように、Cイチゴ投与に比してLFイチゴを投与したマウスの血中においてIL6の減少が確認された。また、その他のサイトカイン類(IL2、IL4、IL12、IL1β、IFNγ、TNFα)についても同様の実験を行った結果、LFイチゴを投与したマウスの血中で同様にサイトカイン類の濃度の減少が確認された。これらの実験結果から、凍結乾燥処理により遺伝子組換え植物Pの発芽能力は失われたが、凍結乾燥後においても遺伝子組換え植物Pの遺伝子産物の活性(ラクトフェリン活性)は維持されていることが確認できた。
【0025】
また図示例の製造エリア30には、不活化エリア20にエアロック付き搬送口38を介して隣接する食品又は薬品の製造室31と、その製造室31に気密扉付き出入口31aを介して通じる前室33と、その前室33に気密扉付き出入口32aを介して通じる製剤室32と、その前室33にエアロック付き搬出口40を介して通じる準備室37とが設けられている。前室33にはエアロック付き作業員入口39及び出口35が設けられており、製造室31又は製剤室32の作業員は、同図に白抜き矢印で示すように、更衣前室36から更衣室34に入って作業服(無塵服等)を着用し、作業員入口(例えばエアシャワー室)39から前室33を経て製造室31又は製剤室32に入室する。また製造室31又は製剤室32での作業が終了した作業員は、前室33から作業員出口35を経て更衣前室36へ退室する。図示例の作業員出口35は作業服の脱衣室を兼ねている。このように作業員の更衣室34及び入口39と脱衣室及び出口35とを分けることで作業服のコンタミ(菌等の付着)を効果的に防止できる。例えば更衣室34に手洗い場33a等を設け(図5参照)、作業員は手洗い場33aで消毒したのちエアシャワー室39で汚れを落として前室33に入室する。なお、製造エリア30内にスペースが確保できる場合は、図示例の製造室31の気密扉付き出入口31a及び製剤室32の気密扉付き出入口32aをそれぞれエアロック付き出入口(パスルーム等)としてもよい。
【0026】
図示例の製造室31には製造装置42が設けられ、製剤室32には製剤装置43が設けられており、遺伝子組換え植物Pを食品又は薬品に調製する。製造装置42は、上述した経口ワクチンのように抽出・精製といった工程を経ることなく植物Pをそのまま食品とすることができる場合に、その植物Pを経口可能な粉末状又は適当な剤状に粉砕又は加工するもの(例えばミキサー)である。また、植物Pから遺伝子産物等の機能性成分を抽出・精製する必要がある場合は、製造装置42を、その成分の抽出・精製処理を行うもの(例えばクロマトシステム・超遠心分離機)としてもよい。製剤装置43は、製造装置42によって抽出・精製又は加工された機能性成分に対して、例えば安定剤等の添加物を混合してカプセル又はアンプル等の容器に封入し、医薬品・工業用試薬・食品等の有用物質として製品化するものである。ヒトや動物の医薬品を調製する場合は、医薬品の汚染を防止するため、後述するように室圧管理及び清浄度管理された製剤室32に無菌操作に対応可能なクリーンブースを備え、このブースにおいて植物Pから抽出・精製又は加工済みの機能性成分を医薬品中間体として原薬や試薬に調製する必要がある。
【0027】
図2は、植物工場1の閉鎖型栽培エリア2、不活化エリア20及び製造エリア30の室圧管理状態の一例を示す。なお、図示例では栽培エリア2の各栽培室3A、3B、3C、3Dと不活化エリア20と製造エリア30とをそれぞれ別系統の空調装置により室圧を管理しているが、不活化エリア20と製造エリア30とは同一系統の空調装置で管理してもよい。図示例では、栽培エリア2の各栽培室3A、3B、3C、3Dは同じレベルの陰圧とし、更に各栽培室3A、3B、3C、3Dの気密扉付き出入口17(又は入口17a及び出口17b)から内側へ空気が流れるように給排気を管理している。不活化エリア20は栽培エリア2より弱い陰圧とし、不活化エリア20から搬入口22及び作業員出入口23を介して栽培エリア2内に空気が流れるように給排気を管理している。また、製造エリア30は、製造室31及び更衣室34をゲージ圧15Paの陽圧とし、前室33をゲージ圧30Paの陽圧とし、製剤室32をゲージ圧45Paの陽圧とし、製剤室32から前室33を経て製造室31及び更衣室34へ空気が流れるように給排気を管理している。なお、製造エリア30の準備室37をゲージ圧10Paの陽圧とすると共に更衣前室36をゲージ圧5Paの陽圧とし、前室33から準備室37へ空気が流れるように、また更衣室34及び脱衣室35から更衣前室36へ空気が流れるように給排気を管理している。
【0028】
図3は、植物工場1の製造エリア30における清浄度管理状況及び閉鎖型栽培エリア2における二酸化炭素(CO2)濃度管理状況の一例を示す。図示例の製造エリア30は、製剤室32をクラス1,000(1ft3(立法フィート)空気中に含まれる所定粒径の微粒子数が103以下の清浄度区分)、製造室31と前室33と更衣室34とをクラス10,000(1ft3の空気中に含まれる所定粒径の微粒子数が104以下の清浄度区分)、準備室37及び更衣前室36をクラス100,000(1ft3の空気中に含まれる所定粒径の微粒子数が105以下の清浄度区分)とし、最も高いクラス1,000の高清浄度域の製剤室32をクラス10,000の中清浄度域で囲み、更にその中清浄度域をクラス100,000の低清浄度域で囲むレイアウトとしている。このように清浄度の高い領域を清浄度が1つ低い他の清浄度領域で囲むレイアウトとし、2段階の清浄度領域を超えて人や物の移動を禁止することにより、製剤室32及び製造室31で製造される薬品及び食品の安全性(微生物汚染等の防止)を確保する。なお、図示例では省略しているが、ヒトや動物の医薬品を調製する場合、製剤室32には、無菌操作に対応できるように例えば、WHO・GMPによる清浄度クラス分類でクラスAに相当するクリーンブースを設けている。また、製剤室32に隣接する準備室37には、器具等の両面高圧蒸気滅菌器を備え、滅菌済み器具等を専用のエアロック付き搬入口を介して製剤室32に搬入することが望ましい。製剤室32で使用した器具等は前室33及びエアロック付き搬出口40を介して準備室37へ戻される。
【0029】
また図3の閉鎖型栽培エリア2は、空調装置5A、5B、5C、5Dにより、栽培室3A、3C、3DがCO2濃度1,000ppm、湿度70%、昼温度25〜30℃(夜温度20〜25℃)となり、栽培室3BがCO2濃度800ppm、湿度70%、昼温度25〜30℃(夜温度20〜25℃)となるように調節されている。各栽培室3の空調装置5の一例を図7に示す。図示例の空調装置5は、外気を取り入れる吸気フィルタ70と、取り入れた外気の温度・湿度・CO2濃度・風量を調節する温度制御装置72・湿度制御装置73・CO2濃度制御装置74・風量制御装置75と、HEPAフィルタ(HF、99.97%)及びプレフィルタ(PF)を含む排気フィルタ71とを有する。温度制御装置72及び湿度制御装置73は、それぞれ対応する栽培室3内に設けた温度センサ72a及び湿度センサ73aを有し、それらセンサの計測値に基づき栽培室3の給気口76への給気温度及び湿度が設定値に一致するように空調装置5を制御する。またCO2濃度制御装置74は、栽培室3内に設けたCO2センサ74aとCO2発生装置78とを有し、給気中のCO2濃度が設定値から外れた場合にCO2発生装置78の二酸化炭素調節バルブ78aのON−OFFを制御する。風量制御装置75は風量調節器75aを有し、植物Pの種類に応じて適正な生育上の風速及び温度差(風量により変化する)が形成されるように、調節器75aの入力に応じて、空調装置5を制御する。各栽培室3A、3B、3C、3Dの温度、湿度、風量及びCO2濃度の設定値を適当に調節することにより、栽培エリア2の各栽培室3A、3B、3C、3Dに、多種多様にわたる遺伝子組換え植物Pの栽培可能な環境を作り出すことができる。
【0030】
次に、植物工場1における遺伝子組換え植物Pの流れ(黒矢印の動線)を示す図1を参照して、本発明による食品又は薬品の製造方法を説明する。先ず、植物工場1に持ち込んだ植物Pを資材としてエアロック付き物品入口12から光、温度、湿度、風量及びCO2濃度条件を調節した栽培エリア2の各栽培室3A、3B、3C、3Dに搬入して栽培する。各栽培室3A、3B、3C、3Dで栽培・収穫された植物Pは、後室7及びエアロック付き搬入口22を介して不活化エリア20の不活化装置21に搬送し、植物Pに応じて必要な不活化処理(例えば凍結乾燥処理)を施す。不活化植物Pをエアロック付き搬送口38から製造エリア30の製造室31に搬送し、そのまま食品とすることができる場合はミキサー等の製造装置42により不活化植物Pを粉末状又は適当な剤状に粉砕又は加工して食品とする。また、遺伝子産物等の機能性成分を抽出・精製する必要がある場合は、クロマトシステム・超遠心分離機等の製造装置42により不活化植物Pから機能性成分を抽出・精製して薬品を調製する。製造室31で抽出・精製された機能性成分は、製造室31から前室33を経て製剤室32へ搬送され、製剤装置43により例えば安定剤等の添加物を混合し、原薬や試薬としてカプセル又はアンプル等の容器に封入される。同様にして製造室31で粉砕又は加工した食品も製造室31から前室33を経て製剤室32へ搬送し、その食品を製剤装置43により包装するか、或いはカプセル又はアンプル等の容器に封入してもよい。
【0031】
製造室31又は製剤室32で調製された食品又は薬品は、前室33及びエアロック付き搬出口40を介して準備室37へ移動し、工場1の外へ搬出するための準備を行う。例えば、準備室37において食品又は薬品を梱包したのちエアロック付き出入口41から出荷室(図示せず)等へ搬入する。なお、梱包用資材はエアロック付き出入口41を介して予め準備室37へ持ち込んでおくことができる(同図の斜線付き矢印参照)。また品質試験等を必要とする場合は、準備室37から試験用食品又は薬品を試験室(図示せず)へ搬入することができる。例えば試験結果の合格が確認されたのち、出荷室から梱包した食品又は薬品を植物工場1から出荷する。
【0032】
図1〜図3から分かるように、本発明の植物工場1は閉鎖型栽培エリア2で栽培した遺伝子組換え植物Pを不活化したうえで製造エリア30に搬送し、また製造エリア30から栽培エリア2へ向かう空気の流れが形成されるように室圧制御を施し、更に栽培エリア2と製造エリア30とに間で作業員の出入りを禁止しているので、植物Pを栽培エリア2に実質上封じ込めたまま植物Pを利用して食品又は薬品に調製することが可能である。また、栽培エリア2内にそれぞれ光、温度、湿度、風量及びCO2濃度の条件を独立に調節可能な複数の栽培室3A、3B、3C、3Dを設けることができるので、医薬品原材料等の機能性成分を生産する多種多様な植物Pを利用して食品や薬品の生産の実用化に貢献することが期待できる。
【0033】
こうして本発明の目的である「医薬品原材料等の機能性成分を生産する遺伝子組換え植物を封じ込めつつ栽培・収穫できる植物工場」の提供を達成できる。
【実施例1】
【0034】
図4は、図1の植物工場1の線IV−IVにおける断面図を示す。図示例の閉鎖型栽培エリア2の各栽培室3A、3B、3C、3Dは光条件を人工的に制御する完全制御型とし、それぞれ透明な全面天井板27と、その天井板27上に画成した気密な照明ボックス25と、その照明ボックス25の排熱装置28(図7参照)とが設けられている。照明ボックス25には、例えばイネ等の高照度を必要とする遺伝子組換え植物Pの栽培を予定して植物生育に適した発光スペクトル及び強度のセラミックメタルハライド等の照明装置26を設置することができる。また、透明天井板27で仕切られた照明ボックス25を形成することにより、照明ボックス25の発熱処理を各栽培室3A、3B、3C、3Dの空調処理とは別に単独で行うことが可能となる。図7に示す照明ボックス25の排熱装置28は、排気フィルタ80と吸気フィルタ81と温度制御装置82とを有し、吸気口84及び排気口85を介して外気を導入することにより照明ボックス25内を冷却するものである。外気温度により必要な風量も変化するため、温度センサ82aで照明ボックス25内の温度を計測し、その計測値に基づき温度制御装置82が排気ファン83を制御して外気導入量を調節している。なお、光環境制御に影響を及ぼさないように各栽培室3A、3B、3C、3Dの壁には窓を設けないか、又は必要時にのみ内部が観察できる蓋付き窓を設置することが望ましい。
【実施例2】
【0035】
また図5は、図1の植物工場1における給排水システムの流れ図を示す。図示例の給排水システムは、閉鎖型栽培エリア2の各栽培室3A、3B、3C、3D毎に独立の給水タンク54A、54B、54C、54Dを有し、例えば工場敷地内の井戸50からの井水を各給水タンク54A、54B、54C、54Dを介して各栽培室3A、3B、3C、3Dの養液栽培装置4A、4B、4C、4Dへ導き、各養液栽培装置4A、4B、4C、4Dからの排水を纏めて排水ピット57に集めて排水滅菌器60において遺伝子組換え植物Pの不活化に必要な滅菌処理(例えば滅菌温度(121℃)に滅菌時間(例えば21分)保持する加熱滅菌処理)を施した後、例えば排水枡等へ放流する。排水滅菌器60による滅菌処理により、養液栽培装置4A、4B、4C、4Dから排水による植物Pの花粉や植物体片等を不活化する。排水滅菌器60は、養液栽培装置4の近傍に設置して排水滅菌器60付き養液栽培装置4としてもよいし、養液栽培装置4と離れた位置に設置してもよい。養液栽培装置4の培養液は、植物Pの種類に応じて適当な栄養物質や溶存酸素を含み、更に消毒等の病害対策を施すことが望ましい。例えば、給水タンク54A、54B、54C、54Dにおいて植物Pの種類に応じた培養液管理を行い、各養液栽培装置4A、4B、4C、4Dへ給液する。また、各養液栽培装置4には、その方式に応じて培養液を循環して再利用する循環路を設けてもよい。
【0036】
なお図示例では、井水が遺伝子組換え植物Pの栽培に適さない場合を想定し、井戸50と各給水タンク54A、54B、54C、54Dとの間に軟水器52及び純水装置53を設けている。また図示例では、各栽培室3A、3B、3C、3Dの空調装置5A、5B、5C、5D、及び不活化エリア20及び製造エリア30にも井水を供給し、その排水も排水ピット57に集めて滅菌処理しているが、不活化エリア20及び製造エリア30からの排水はそのまま排水枡等へ放流することも可能である。
【0037】
図6は、各栽培室3A、3B、3C、3Dに、空調装置5A、5B、5C、5Dからの排水(ドレイン)をその栽培室3A、3B、3C、3Dの養液栽培装置4A、4B、4C、4Dに導く導水路65A、65B、65C、65Dを設け、空調装置5A、5B、5C、5Dの排水を養液栽培装置4A、4B、4C、4Dで再利用する給排水システムのブロック図を示す。植物工場1の封じ込め効果を高めると共に経済性を得るためには、できるだけ滅菌対象の排水量を減らすことが望ましい。上述したように、各栽培室3A、3B、3C、3Dは例えば湿度70%程度に管理されており、各空調装置5A、5B、5C、5Dの排水(ドレイン)や各栽培室3A、3B、3C、3D内で発生する結露水にも遺伝子組換え植物Pの花粉等が混入しているため、これらの排水も放流前に滅菌する必要がある。図示例のように空調装置5A、5B、5C、5Dの排水を各栽培室3A、3B、3C、3Dの給水タンク54A、54B、54C、54Dへ戻して循環させることにより、植物Pの花粉等を漏出させることなく排水量を減らすことができる。また、図示は省略するが、栽培室3A、3B、3C、3Dの結露水も同様に循環させることが好ましい。図5(B)は、純水装置53からの井水と空調装置5からの排水とを混合して養液栽培装置4へ送る給水タンク54の構造の一例を示し、給水タンク54からの溢流水のみが排水ピット57に排水されて滅菌処理されることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の遺伝子組換え植物工場の一実施例の説明図である。
【図2】図1の実施例における室圧管理状態を示す説明図である。
【図3】図1の実施例における清浄度及び二酸化炭素濃度の分布を示す説明図である。
【図4】図1の実施例の線IV−IVにおける断面図である。
【図5】図1の実施例における養液栽培装置その他の給排水の流れ図である。
【図6】図1の実施例における空調装置の排水の流れを示すブロック図である。
【図7】図1の実施例における空調装置の説明図である。
【図8】凍結乾燥により不活化処理した遺伝子組換え植物の遺伝子産物が活性を有していることを示す実験結果の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1…遺伝子組換え植物工場 1a…柱
1b…梁 1c…床板
1d…基礎 1e…床下配管スペース
2…閉鎖型栽培エリア 3…栽培室
4…養液栽培装置 5…空調装置
6…前室 7…後室
8…廊下 9…更衣室
10…エアロック付き作業員入口 11…開梱室
12…エアロック付き物品入口 13…脱衣室
14…エアロック付き作業員出口 15…搬出室
16…エアロック付き物品出口 17…気密扉付き出入口
17a…気密扉付き入口 17b…気密扉付き出口
18…エアロック付き搬送口(パスボックス等)
20…不活化エリア 21…植物不活化装置
22…エアロック付き搬入口(パスボックス等)
23…エアロック付き作業員出入口(パスルーム等)
25…照明ボックス 26…照明装置
27…透明天井板 28…排熱装置
30…製造エリア 31…製造室
31a…気密扉付き出入口 32…製剤室
32a…気密扉付き出入口 33…前室
33a…手洗い場 34…更衣室
35…エアロック付き作業員出口(兼脱衣室)
36…更衣前室
37…準備室 37a…洗浄装置
38…エアロック付き搬送口(パスボックス等)
39…エアロック付き作業員入口(エアシャワー室等)
40…エアロック付き搬出口(パスボックス等)
41…エアロック付き出入口(パスルーム等)
42…製造装置 43…製剤装置
44…設備架台 45…監視制御室
46…気密扉付き出入口 47…工場入口
48…工場出口 49…外周廊下
50…井戸 51…殺菌装置
52…軟水器 53…純水装置
54…給水タンク 55…給水ポンプ
56…殺菌装置 57…排水ピット
58…排水ポンプ 59…排水タンク
60…排水滅菌器 61…給水管
62…給水ポンプ 63、64…排水管
65…導水路 66…排水管
70…吸気フィルタ 71…排気フィルタ
72…温度制御装置 72a…温度センサ
73…湿度制御装置 73a…湿度センサ
74…二酸化炭素濃度制御装置 74a…二酸化炭素濃度センサ
75…風量制御装置 75a…風量調節器
76…給気口 77…排気口
78…二酸化炭素発生装置 78a…二酸化炭素調節バルブ
80…排気フィルタ 81…吸気フィルタ
82…温度制御装置 82a…温度センサ
83…排気ファン 84…吸気口
85…排気口
P…遺伝子組換え植物
【出願人】 【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成18年12月28日(2006.12.28)
【代理人】 【識別番号】100110711
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 篤

【識別番号】100078798
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 禮次郎


【公開番号】 特開2008−161114(P2008−161114A)
【公開日】 平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願番号】 特願2006−354177(P2006−354177)