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【発明の名称】 植物栽培システムおよび植物栽培方法
【発明者】 【氏名】藤井 学

【氏名】岡本 昭弘

【氏名】吉岡 浩

【氏名】森 有一

【要約】 【課題】水または養液で満たされた栽培ベッドを用いて、養液土耕栽培を省力化、自動化する栽培システムの提供。

【解決手段】栽培ベッドを水または養液4で満たした細長い水槽3とし、植物栽培用支持体8とシート状隔離材7およびマルチング部材9を配置した舟形トレー1を水槽3の養液4等の上に浮かべ、マルチング部材9の上方に配置された潅水手段2により水または養液4を間歇的に供給し、固定された栽培ベッドの中で植物栽培ユニットである舟形トレー1を移動しつつ植物栽培を連続的に行う栽培システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水または養液を収容するための水槽と、植物栽培用支持体を収容する;前記水槽とは独立して移動可能かつ前記水または養液に浮かぶことが可能な舟形トレーと、前記水槽中の水または養液に浮かべた舟形トレーの上方より水または養液を、噴霧または点滴供給する手段とを少なくとも含む植物栽培システム。
【請求項2】
前記舟形トレーの上方より水または養液を点滴供給する手段が、前記舟形トレーの移動方向と平行に配置された点滴チューブであることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記舟形トレーが前記水槽中の水または養液上で植物栽培用支持体を保持し、かつ植物の根が水槽中の水または養液中へ貫通することを防止できるよう、該舟形トレーの少なくとも底面にシート状隔離材を設置したことを特徴とする請求項1または2に記載の植物栽培システム。
【請求項4】
前記植物栽培用支持体上に蒸発抑制部材を配置したことを特徴とする請求項1〜3に記載の植物栽培システム。
【請求項5】
前記蒸発抑制部材に、前記点滴チューブと平行にスリットが施されていることを特徴とする請求項4に記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記シート状隔離材が無孔性親水性フィルムであることを特徴とする請求項1〜5に記載の植物栽培システム。
【請求項7】
前記無孔性親水性フィルムが、該フィルムを介して水と塩水とを対向して接触させた際に、測定開始後4日目(96時間)の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下のフィルムである請求項6に記載の植物栽培システム。
【請求項8】
前記無孔性親水性フィルムが、該フィルムを介して水とグルコース溶液とを対向して接触させた際に、測定開始後3日目(72時間)の水/グルコース溶液の濃度(Brix%)の差が4以下のフィルムである請求項6または7のいずれかに記載の植物栽培システム。
【請求項9】
前記無孔性親水性フィルムが、該フィルム上に植物体を配置して栽培を開始した35日後に、前記植物体の根に対して10g以上の剥離強度を示すフィルムである請求項6〜8のいずれかに記載の植物栽培システム。
【請求項10】
前記無孔性親水性フィルムが、耐水圧として10cm以上の水不透性を有する請求項6〜9のいずれかに記載の植物栽培システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の植物栽培システムを用いて、水槽中の水または養液上に浮かぶ舟形トレーの上方より水または養液を点滴供給することを特徴とする植物栽培方法。
【請求項12】
請求項11に記載の植物栽培方法において、舟形トレーを水または養液の組成が異なる別の水槽に移動させる工程を含むことを特徴とする植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培システムおよび植物栽培方法に関する。より詳しくは、本発明は、ユニット化された舟形の栽培トレーを用い、かつ潅水手段(養液点滴チューブ)を栽培ベッドの上部空中に配置し、水または養液(以降養液等と言う)を点滴供給する養液土耕栽培を可能とする植物栽培システムおよび植物栽培方法である。
【0002】
本発明によれば、養液土耕栽培により植物体を栽培する際、移動可能な舟形の栽培トレーに少量の植物栽培用支持体を用い、播種育苗場所において育苗後、栽培ベッドへ移動することを可能とする。また、栽培ベッドにおいて舟形トレーを栽培ステージごとに移動させることができ、植物栽培の自動化が可能となる。
【0003】
養液点滴量は植物支持体近傍に水分センサーを配置し、植物支持体中の水分量に応じて上方からの水または養液(以後養液等言う)を点滴間隔および点滴量を制御することも可能である。
【0004】
これまでの養液土耕栽培では、栽培ベッドが固定されており、育苗後の苗はセルトレーなり、育苗ポットから1本ずつ栽培ベッドに人の手で植付ける必要がある。養液点滴栽培の自動化を行い、栽培の各ステージを連続化し工業的に実施するためには、人の手によらない新たなシステムが求められている。
【0005】
本発明は、土耕栽培および養液土耕栽培における上記の問題を解消することができる。更に、本発明の栽培システムでは、培土のような植物支持体、水、および肥料の使用量が極めて少ないため、肥料流亡による汚染の防止および栽培コストを大幅に引き下げることができる。
【0006】
また本発明の栽培システムにより、栽培すべき植物を水分抑制状態として、該植物を高品質化することが容易になる。更に、本発明の栽培システムによって、近年、問題視されている硝酸態窒素の含有量を減ずることも可能になる。
【背景技術】
【0007】
従来、種々の植物が、太陽、土、雨水などの自然の恵みを利用して、露地(ろじ)あるいは施設内で栽培されて来た。露地栽培あるいは施設内栽培においても、土壌は表層から下は連続的に地中深く繋がっている。このため連作障害の主因である、線虫などの有害な微生物、細菌類が土壌中に繁殖した場合は、土壌の消毒や大量の汚染されていない土壌を他所から運んで交換する、いわゆる客土が必要となる。しかし、土壌消毒の代表的方法である燻蒸法に使用する臭化メチルの全面使用禁止で土壌消毒が困難となってきた。また、大量の客土の使用はコスト的にも物理的にも殆ど不可能である。
【0008】
更に、過去に大量に使用されてきた有機リン系農薬によって土壌は汚染されていて、これによる農産物汚染の問題が深刻化している。有機リン系農薬は分解、無毒化しにくいため、この問題を解決するには、やはり大量の客土が必要になる。
【0009】
一方、従来の施肥の方法では、大量の元肥を大地に施し、栽培期間中には追肥として1〜2週間分の肥料をまとめて施している。こうした従来の施肥管理は、「植物が小さいときは肥料吸収量が少なく、生育するに従って多くなる」という実体とかけはなれていて、施肥に無駄が多く、結果として土壌の塩類蓄積の原因となっている。特に、施設内の土壌では、水分は下方から上方に移行し、潅水により重力で水が一時的に肥料成分を下方に運ぶものの、潅水を中止すると土壌水分は再び土壌の表面に向かって移動し、塩類も一緒に運ばれる。土壌表面では水のみが蒸発により失われるので、この繰り返しにより塩類が土壌表層で集積する。余剰な塩類が多ければ集積の程度は高まり、植物生育の阻害原因となる。降雨量の極端に少ない砂漠土壌の状態と酷似している。この状態を改善するためには大量の水を使用し、表層の集積塩類を洗い流す方法あるいは、大量の客土を使用する方法しかなく、いずれも莫大なコストがかかる。
【0010】
上記した無駄な施肥は、地下水汚染の原因にもなっている。通常の施肥量では、特に窒素肥料は土壌微生物により分解され、有機態→NH4+→NO2-→NO3-の順に酸化される。しかし、施肥量が多すぎる場合あるいは土壌硝化細菌の活性が弱い状況では、酸化が進まないため、NH4+やNO2-が土壌に過剰に蓄積し、負に帯電している土壌コロイド表面にNH4+は吸着されるものの、NO3-は土壌に吸着されず、流亡し、地下水を汚染することになる。
【0011】
また、潅水に関しても、数日毎に大量の潅水をするため、潅水直後には土壌が過湿気味となり、次に潅水する直前には乾燥気味となるなど、植物に対しての水分ストレスを制御することが難しく、高糖度などの高品質化を達成することが困難である。
【0012】
これに対し、養液土耕と言われる栽培方法があり、土壌栽培の利点を活かしながら、植物の生育に合わせて、植物が必要とする肥料成分を、必要なときに必要量だけ施肥する方法である。土壌に点滴チューブを設置し、土壌中の肥料および水分量測定をリアルタイムで実施しながら、給液設備から植物に合った窒素、燐酸、カリの他、カルシウムなどの微量要素成分を含む養液を過不足なく植物に供給する潅水施肥技術である。養液土耕栽培の構成要件は、以下の通りである。
【0013】
1)基肥は施さない(ただし、土壌の物理化学性や微生物を維持・改善するための有機物質材や土壌改良材は施す)2)毎日、潅水および施肥を行う3)養水分測定に基づく適切な潅水施肥を行う4)植物の養分吸収比率に合った成分組成で、不必要な副成分を含まない肥料を用いる5)正確に液肥成分を混合し、かつ容易に混合倍率を変更できる液肥混入機を用いる6)潅水施肥量を把握するための流量計を備えている7)圃場全面に均一潅水が可能な潅水チューブ(点滴チューブなど)を用いる
【0014】
以上に述べたように、養液栽培の場合には土耕栽培に比べて、施肥量と潅水量が減るために、土壌表層への塩類の集積による生育障害は改善される。又、過剰施肥による地下水汚染が軽減されるという利点がある。しかしながら、植物の根が直接大地に接触していることによって発生する連作障害あるいは残留農薬による農産物汚染などの解決策とはならない。
【非特許文献1】「養液土耕栽培の理論と実際」2〜18頁 編者:青木宏史、梅津憲治、小野信一 発行所:誠文堂新光社、2001年6月発行
【0015】
一方、今日の大量の施肥、潅水による農産物生産の問題として、特にサラダ菜、ホウレン草などの葉采類中に高濃度で蓄積される硝酸態窒素の健康障害が上げられる。サラダやホウレン草等の葉菜にはその可食部に葉柄部が含まれているため、高い濃度で硝酸塩が含まれていることがある。硝酸塩は唾液と反応して亜硝酸塩となり、更に消化の過程で発ガン性を持つニトロソアミンという物質を生成するとされている。このため、野菜に含まれる硝酸含量が品質の重要な基準の1つになりつつあり、その低含量化が求められている。
【0016】
また、従来の養液土耕栽培では、栽培ベッドが大地に固定されており、苗の植付けから日々の管理、および収穫まで人の手により行われる。これらの作業を極力自動化し、人の手に頼らない栽培システムが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消した植物栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。より詳しくは、本発明の目的は、植物栽培の自動化を可能とするシステムを提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、極少量の培土を栽培毎に変えることが可能となり、土壌中の病原菌や線虫といった連作障害の害を与えない植物栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、残留農薬などで汚染されている土壌を使用することのない植物栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、大地の土壌への肥料および水の排出をすることがなく、塩類の集積または肥料の系外への流亡が全く無い植物栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、養液等に接触するように配置したシート状隔離材上の少量の培土に少量の肥料と水分を効率的に供給することによる、経済的であると同時に高品質の植物を得る栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、栽培された植物体の硝酸態窒素を低減する栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、鋭意研究の結果、水または養液を収容するための水槽と、前記水または養液に浮かぶことができる舟形トレーと、舟形トレーの上方より水または養液を点滴供給する手段とを少なくとも含む植物栽培システムであって、該舟形トレーが前記水槽中の水または養液上で植物栽培用支持体を保持し、かつ植物の根が水槽中の水または養液中へ貫通することを防止できるよう、該舟形トレーの少なくとも底面にシート状隔離材を設置したことを特徴とする植物栽培システムが上記課題の解決に有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
本発明によれば、舟形トレーの上方より水または養液を点滴供給する手段として、養液点滴チューブを利用する植物栽培システムが提供される。
【0025】
本発明によれば、更に、水分の蒸発抑制部材(マルチング部材)の上方から水および/又は肥料を適宜供給する植物栽培システムが提供される。
【0026】
本発明によれば、更に、水分の蒸発抑制部材に、養液点滴チューブと平行なスリットが施された植物栽培システムが提供される。
【0027】
さらに本発明者らは、特定の無孔性親水性フィルム( 例えば高分子製フィルム) が、植物の根と実質的に一体化するという全く新たな現象を見出した。このような知見に基づいて更に研究を進めた結果、該フィルムと実質的に一体化した植物の根が、フィルムを介して、フィルムに接触した水溶液中の肥料成分および水を植物の成長に必要な程度、吸収する現象をも見出した。さらに、根がフイルムと一体化し、フイルムを介して水および肥料成分を吸収しようとするために、膨大な数の毛根が生起されことによって、根の近傍にある水、肥料成分、空気などを効率良く吸収できることも見出した。
【0028】
本発明によれば、前記舟形トレーの少なくとも底面に設置されるシート状隔離材として、上記特定の無孔性親水性フィルムを使用した植物栽培システムが提供される。
【0029】
本発明の植物栽培システムによれば、植物栽培を行う場所をユニット化した舟形トレーを養液等の水面に配置し、時間と共に舟形トレーが水槽を移動し、マルチング部材の上方より養液等を間歇的に潅水しつつ栽培を行う自動化が可能な植物栽培システムおよび植物栽培方法が提供される。
【0030】
また、栽培ベッドの水槽をいくつか分割し、栽培ステージが進むに従って栽培ベッドの水槽の養液組成を変化させる植物栽培方法が提供される。
【0031】
また、点滴チューブからの潅水も、栽培ステージが進むに従って潅水する液の組成ならびに量を変化させる植物栽培方法が提供される。
【0032】
同様に自然光ならびに人工的な光の種類や量も栽培ステージ毎に変化させる植物栽培方法が提供される。
【発明の効果】
【0033】
上記構成を有する本発明の植物栽培システムおよび植物栽培方法においては、可動型の舟形トレーが栽培ユニットとして用いられるので、該ユニットへの植物体種子の播種あるいは苗定植を管理された育苗室等で行い、植物体を定植した該栽培ユニットを水槽の養液等の上に配置することにより、該栽培ユニットに定植された植物体は水槽上を移動しつつ上方から養液点滴等の潅水を受けながら栽培され、植物栽培の自動化が可能となる。
【0034】
本発明の植物栽培システムによれば、舟形トレーが水槽の養液等と広い面積で接触しているため、水槽の温度を制御することにより、舟形トレーに収容された植物体の根圏域温度を容易に制御することができる。
【0035】
本発明の植物栽培システムによれば、舟形トレーの底面に配置されたシート状隔離材により、植物の根が水槽中の養液等に浸漬されることがないので、植物の根が酸素不足に陥ることがない。
【0036】
本発明の植物栽培システムによれば、舟形トレーが栽培ユニットとして栽培段階ごとに移動するので、各栽培段階での作業場所を固定することができ、省力化が可能となる。
【0037】
更に、本発明によれば、舟形トレー上には極少量の培土を使うだけで、交換が容易であり連作障害、土壌の農薬汚染、土壌への塩の蓄積などの影響を受けない。
【0038】
更に、本発明によれば、舟形トレー下の養液等に供給される水および養分、舟形トレー上に供給される水および養分の量は、いずれも極めて少量ないしゼロであり、地下水汚染、大地土壌の表層への塩の蓄積といった環境面、更には、貴重な水資源の有効利用、肥料使用量の低減などといった栽培コスト面で極めて有利である。
【0039】
更に、本発明によれば、舟形トレー下の養液等の濃度を栽培ステージ毎に変化させること、および舟形トレー上から少量の水または養液を、量および時間を厳密に制御した状態で供給し、さらに栽培後期に水のみを供給することにより、容易に栽培植物中の硝酸態窒素量を大幅に低減できる。
【0040】
更に、本発明の植物栽培システムにおいて、特定の無孔性親水性フィルムをシート状の隔離材として使用することにより、栽培すべき植物に対する水分ストレスの制御が極めて容易となり、該植物を高品質化することができる。
【0041】
また、本発明の植物栽培システムにおいて、特定の無孔性親水性フィルムをシート状の隔離材として使用した場合、植物の根は舟形トレー下の養液等と直接には接触していないため、該養液が病原微生物、病原菌で汚染されていても、微生物、細菌は該フィルムを透過できないため、根に触れることがなく、植物汚染を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(植物栽培システム)本発明の植物栽培システムは、水槽の水または養液に浮かべた舟形トレーに植物支持体を配置し、舟形トレーの上方に潅水手段(点滴チューブなど)を配置し、舟形トレーを水槽内で移動しながら植物を栽培することを特徴とする植物栽培システムである。
【0043】
図1は、本発明の植物栽培方法の基本的な一態様を示す模式図である。図1を参照して、この態様の植物栽培システムは、舟形トレー1に蒸発抑制部材9が設置された態様である。蒸発抑制部材9には少なくとも2種類のスリット、すなわち、植物栽培用のスリット11および潅水用のスリット10を配置する。舟形トレー1を水槽3の養液等4に浮かべ、潅水用スリット10の上方に点滴チューブ2が配置される。舟形トレー1は点滴チューブ2と平行に移動できる。
【0044】
(舟形トレー)図2は、本発明の植物栽培システムの舟形トレー1の構成を示す模式図である。図2を参照して、この構成においては、舟形トレー1の底面に小穴6が配置され、その上にシート状隔離部材7と植物栽培用支持体8を配置し、その上に蒸発抑制部材(マルチング部材)9が配置されている。マルチング部材には、潅水用のスリット10と植物栽培用スリット11を配置することにより、舟形トレー1を栽培ベッドの中で移動させても、植物栽培用支持体8の上部から効果的に養液等を供給できるというメリットを得ることができる。
【0045】
舟形トレー1の材質、厚さ等も、特に制限されず、基本的には舟形トレー1を養液等4に浮かべることのできる材料(例えば、養液等4より比重が小さい材料)から適宜選択することが可能である。養液等4より比重が大きい材料であっても、舟形トレー1の構造を舟形トレー1全体が養液等4の比重より小さくすること(例えば水が浸入しない箱状)により使用可能である。
【0046】
また、舟形トレー1は養液等4に浮かべることのできる枠だけの構造であっても良い。すなわち、舟形トレーの底面大部分がシート状隔離部材7から構成される態様であっても良い。
【0047】
必要に応じて、舟形トレー1を養液等4に浮かべることのできる材料からなるフロート部材上に乗せることもできる。
【0048】
また、養液等4とシート状隔離部材7の接触を容易にする手段を採用しても良い。このような手段としては、例えば、フロート部材にはスリット状または円、楕円、多角形、星形その他の形状の穴を1個以上開けることができる。
【0049】
または、シート状隔離部材7上にかかる荷重を考慮して、養液等4に浮いている状態でフロート部材表面のレベルが養液等4の表面レベルに近くなるようにフロート部材の浮力を調節すること等も可能である。
【0050】
また、フロート部材の上には不織布からなる揚水シートを被せ、フロート部材の端から水槽の養液中に揚水シートを落とし込み、水槽の養液を、揚水シートを介してシート状隔離部材に供給させることもできる。
【0051】
例えば、舟形トレー1およびフロート部材の材質としては、軽量化、易成形性および低コストの点からはポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の汎用プラスチックの発泡体あるいはこれらプラスチックの板状の製品が好適に使用可能である。
【0052】
(他の舟形トレー)図3は、本発明の植物栽培システムの、他の舟形トレー1を示す模式図である。図3を参照して、この構成においては、舟形トレー1の底面に小穴を開けず、シート状隔離部材を配置しない構成である。図3の構成においては、上記した以外の構成は図2と同様である。この場合、水槽の養液等と舟形トレー上の植物体は完全に隔離されることになり、植物体への水分や養分の供給は専ら上部からの灌水によって行われる。
【0053】
(植物栽培用支持体)
本発明で用いられる植物栽培用支持体としては、一般に用いられる植物栽培用支持体を特に制限なく、用いることができる。例えば、土耕栽培に用いられる土壌、および水耕栽培に用いられる培地が挙げられる。
【0054】
例えば、無機系では天然の砂、れき、パミスサンドなど、加工品(高温焼成等)では、ロックウール、バーミキュライト、パーライト、セラミック、籾殻くん炭など。有機系では天然のピートモス、ココヤシ繊維、樹皮培地、籾殻、ニータン、ソータンなど、合成品の粒状フェノール樹脂などがある。合成繊維の布あるいは不織布も使用可能である。これらを単独で、あるいは組み合わせて用いても良い。必要最小限の肥料および微量要素を、これらの土壌ないし培地に加えてもよい。
【0055】
(シート状隔離部材)
本発明で用いられるシート状隔離部材は、水槽中の養液等と植物栽培用支持体を隔離できる性質のものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、舟形トレーを構成する材料と同様のポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の汎用プラスチックの発泡体あるいはこれらプラスチックの板状の製品を用いることができる。
【0056】
舟形トレーの下にある水槽の養液等を舟形トレー上の植物体が利用可能とする観点からは、シート状隔離部材が水を透過ないし吸収する材料であることが好ましい。水を透過し、植物の根が貫通することを防止できるシート状隔離部材としては、ポリエステル繊維などで密に織られた防草シートなどと呼ばれる植物の根に対して貫通抵抗性を示す布状のシートを用いることができる。
【0057】
(無孔性親水性フィルム)
本発明で用いられるシート状隔離部材として、無孔性親水性フィルムを好ましく用いることができる。本発明において特に好ましく用いられる無孔性親水性フィルムは、「植物体の根と実質的に一体化し得る」であることが特徴である。本発明において「植物体の根と実質的に一体化」できるか否かは、例えば、後述する「一体化試験」によって判断できる。
【0058】
本発明者らの知見によれば、「植物体の根と実質的に一体化し得る」フィルムとしては、以下のような水分透過性/イオン透過性のバランスを有する無孔性親水性フィルムが好ましいことが見出されている。
【0059】
本発明者らの知見によれば、このような水分/イオン透過性のバランスを有するフィルムにおいては、栽培すべき植物の生長(特に、根の生長)に好適な水分/養分透過性のバランスが容易に実現できるため、根と実質的に一体化が可能となると推定される。
【0060】
本発明において、植物は無孔性親水性フィルムを通して肥料をイオンとして吸収するが、このように使用するフィルムの塩類(イオン)透過性が、植物に与えられる肥料成分の量に影響すると推定される。該フィルムを介して水と塩水を対向して接触させた際に、下記に示す測定開始4日後の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下のイオン透過性を有する無孔性親水性フィルムを好適に用いることができる。このようなフィルムを用いた際には、根に対する好適な水あるいは肥料溶液を供給し、該フィルムと根との一体化を促進することが容易となる。
【0061】
この無孔性親水性フィルムは、耐水圧として10cm以上の水不透性を有することが好ましい。このようなフィルムを用いた際には、根とフイルムの一体化を促進することができる。又、根に対する好適な酸素供給および該フィルムを介しての病原菌汚染を防止することが容易となる。
【0062】
(耐水圧)耐水圧はJIS L1092(B法)に準じた方法によって測定することができる。本発明のフィルム1の耐水圧としては10cm以上、好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。
【0063】
(水分/イオン透過性)
本発明においては、上記無孔性親水性フィルムは、該フィルムを介して水と塩水(0.5質量%)とを対向して接触させた際に、測定開始4日後の水/塩水の栽培温度において測定した電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、更には3.5dS/m以下であることが好ましい。特に、2.0dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、以下のようにして測定することが好ましい。
【0064】
<実験器具等>なお、本明細書の以降の部分(実施例も含む)において用いた実験器具、装置および材料は、(特に指定がない限り)後述する「実施例」の前の部分に示した通りである。
【0065】
<電気伝導度の測定方法>肥料は、通常イオンの形で吸収されるため、液中に溶けている塩類(あるいはイオン)量を把握することが望ましい。このイオン濃度を測定する手段として電気伝導度(EC、イーシー)を用いる。ECは比導電率ともいい、断面積1cm2の電極2枚を1cmの距離に離したときの電気伝導度の値を使用する。単位はシーメンス(S)が使われ、S/cmとなるが肥料養液のECは小さいので、1/1000のmS/cmを使う(国際単位系ではdS/m(dはデシ)と表示する)。実際の測定においては、上記した電気伝導度の測定部位(センサー部)にスポイトを用いて試料(例えば溶液)を少量乗せ、導電率を測定する。
【0066】
<フィルムの塩/水の透過試験>市販の食塩(例えば、後述する「伯方の塩」)10gを水2000mlに溶解して、0.5%塩水を作製する(EC:約9dS/m)。「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(サイズ:200〜260×200〜260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記の塩水150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24hrs毎に水側、塩水側のECを測定する。
【0067】
本発明においては、フィルムを介する植物の根の養分(有機物)吸収を容易とする点からは、上記フィルムは、所定のグルコース透過性を示すことが好ましい。このグルコース透過性は、下記の水/グルコース溶液の透過試験により好適に評価できる。本発明においては、上記フィルムは、該フィルムを介して水とグルコース溶液とを対向して接触させた際に、測定開始後3日目(72時間)の水/グルコース溶液の栽培温度において測定した濃度(Brix%)の差が4以下であることが好ましい。この濃度(Brix%)の差は、更には、3以下、より好ましくは2以下(特に1.5以下)であることが好ましい。
【0068】
<フィルムの水/グルコース溶液透過試験>市販のグルコース(ブドウ糖)を用いて5%グルコース溶液を作製する。上記塩水試験と同様の「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(サイズ:200〜260×200〜260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記のグルコース溶液150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24hrs毎に水側、グルコース溶液側の糖度(Brix%)を糖度計で測定する。
【0069】
(根とフィルムの一体化)後述する実施例1の条件(バーミキュライト使用)で、試験を行う。すなわち、サニーレタス(本葉1枚強)を2本用いて、35日間、植物の生育試験を行う。得られた植物−フィルムの系において、植物苗の根元で茎葉を切断する。根の密着したフィルムの茎がほぼ中心になるように、該フィルムを巾5cm(長さ:約20cm)に切断して試験片とする。
【0070】
ばね式手秤に市販のクリップを付け、上記で得た試験片の一方をクリップで固定して、ばね式手秤の示す重量(試験片の自重に対応=Aグラム)を記録する。次いで試験片の中心にある茎を手で持ち、下方に緩やかに引き下げて、根とフィルムが離れる(または切断される)際の重量(荷重=Bグラム)をばね式手秤の目盛りから読み取る。この値から初期の重量を差し引き、得られた(B−A)グラムを巾5cmの引き剥がし荷重とする。
【0071】
本発明においては、このようにして測定された剥離強度において、前記植物体の根に対して10g以上の剥離強度を示すフィルムが好適に使用可能である。この剥離強度は、更には30g以上、特に100g以上であることが好ましい。
【0072】
(フィルム材料)
上述した「根と実質的に一体化し得る」性質を満足する限り、本発明において、使用可能な無孔性親水性フィルム材料は、特に制限されず、公知の材料から適宜選択して使用することが可能である。このような材料は、通常フィルムないし膜の形態で用いることができる。
より具体的には、このようなフィルム材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、セロファン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、ポリエステル等の親水性材料が使用可能である。
【0073】
上記フィルムの厚さも特に制限されないが、通常は、300μm以下程度、更には200〜5μm程度、特に100〜20μm程度であることが好ましい。
【0074】
本発明者らの知見によれば、植物の根がフィルムと一体化するまでの養分は、フィルム上の植物栽培用支持体に加えておくことが望ましい。
【0075】
(養液)本発明において使用可能な養液(ないし肥料溶液)は特に制限されない。例えば、従来の土耕栽培ないし養液土耕栽培において使用されてきた養液は、本発明においていずれも使用可能である。
【0076】
一般には、水または養液として植物の生育にとって必要不可欠な無機成分としては、主要な成分として:窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、微量成分として:鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)が挙げられる。
【0077】
さらにこの他に、副成分として、珪素(Si)、塩素(Cl)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)等がある。必要に応じて、本発明の効果を実質的に阻害しない限り、その他の生理活性物質も加えることができる。更に、グルコース(ブドウ糖)などの糖質、アミノ酸等を添加することも可能である。
【0078】
(潅水手段)本発明の概念を示す図1において潅水手段2は培土等の植物栽培用支持体8に、水あるいは養液を間歇的に少量ずつ供給するために用いることができ、植物栽培用支持体のもつ緩衝機能を活かしながら栽培するためのものである。例えば、噴霧灌水や、水が貴重なイスラエルで開発された点滴チューブ(例えば、「ドリップチューブ」とも称される)であるが、植物栽培用支持体の上部からの潅水で作物の生育に必要な水および肥料をできるだけ少量供給する手段として用いることができる。
【0079】
(マルチング部材)本発明においては、いわゆる「マルチング」を、好適に使用することができる。ここに、「マルチング」とは、植物の生長を助けるため、防寒・乾燥防止などを根元や幹などに施すために使用されるフィルム状あるいは板状などの材料を言う。このようなマルチングを用いた場合には、水分の有効利用性が高まるというメリットを得ることができる。
【0080】
すなわち、本発明によるシステムでは、養液等4からシート状隔離部材7中に移動した水や養分が、シート状隔離部材7と一体化した植物の根によって直接吸収される以外に、シート状隔離部材7の表面から水蒸気として蒸発する傾向がある。このように蒸発する水蒸気を大気中に出来る限り逃がさないようにするために、土壌表面をマルチング部材9で覆うことができる。マルチング部材9で覆うことにより、シート状隔離部材7の上のマルチング部材9の表面あるいは植物栽培用支持体8表面に水蒸気を凝結させ、水として利用することができる。
【0081】
(栽培システム)本発明においては、上記した構成を有する限り、これと組み合わせて使用すべき栽培システムは特に制限されない。本発明の栽培システムの特徴である、舟形トレーによる栽培の自動化、連作障害、農薬汚染、地下水汚染、塩類の土壌表層への集積などの軽減、および栽培植物の高品質化、低硝酸態窒素化などを達成するための好適な栽培システムの態様を以下に述べる。
【0082】
(好適なシステム)図1の模式図を参照して、この態様においては、栽培ベッド3に養液等4を配置し、空中に潅水手段(点滴チューブ)2を配置するが、その位置は舟形トレー1の潅水用スリット10の位置に養液等が落下する位置とする。
【0083】
点滴チューブ2と舟形トレー1の潅水用スリット10の間に、ひも状あるいは布状の材料を配置して、点滴チューブ2から舟形トレー1の潅水用スリット10へ確実に養液等を誘導する手段を講じても良い。
【0084】
舟形トレー1の植物栽培用スリット11に種を播種し、例えば多段式の発芽、育苗室で育苗する。生育した苗の載った舟形トレー1を栽培ベッド3の養液等4に移動し、舟形トレー1を順次並べていく。
【0085】
例えば、30日で収穫する植物の場合、栽培ベッド3の長さを舟形トレー1の長さ方向の長さの30倍にすると、毎日1つの舟形トレー1を置いて前の舟形トレー1を押すと、30日後には栽培ベッドの端に到達する。すなわち、毎日1つの舟形トレー1を収穫することができる。
【0086】
シート状隔離部材7の上には間歇的に水または養液を供給するための潅水手段2(点滴チューブ)から、制御された量の水あるいは養液を植物栽培用支持体8(土壌など)に供給でき、植物がシート状隔離部材7を介して摂取する水または肥料成分が不足した場合にそれを補うことができるというメッリトを得る。
【0087】
(本発明の利点)上記構成を有する本発明の栽培システムを用いることにより、養液土耕栽培により植物体を栽培する際、移動可能な舟形トレー1に少量の植物支持体8を用い、播種育苗場所から育苗後、栽培ベッド3へ移動することが可能となる。また、栽培ベッドにおいて舟形トレー1を栽培ステージごとに移動させることができ、植物栽培の自動化が可能となる。
【0088】
また、シート状隔離部材上には極少量の植物支持体8を使うだけで、交換が容易であり連作障害、土壌の農薬汚染、土壌への塩の蓄積などの影響を受けない。
【0089】
また、シート状隔離材下の養液等4に供給される水および養分、シート状隔離部材7上に供給される水および養分の量は、栽培ベッド3という閉じられた領域にあるため、地下水汚染、大地土壌の表層への塩の蓄積といった環境面で、更には、いずれも使用量は極めて少量ないしゼロであり、貴重な水資源の有効利用、肥料使用量の低減などといった栽培コスト面で極めて有利である。
【0090】
また、本発明の植物栽培システムおよび植物栽培方法により、栽培すべき植物に対する水分ストレスの制御が極めて容易となり、該植物を高品質化することができる。
【0091】
更に、本発明によれば、シート状隔離材7下の養液等4の濃度とマルチング部材9の上方から少量の養液を、量および時間を厳密に制御した状態で供給し、栽培後期に水のみを供給することにより、容易に栽培植物中の硝酸態窒素量を大幅に低減できる。
【0092】
本発明において上記したシート状隔離部材下の養液4の濃度を変えるには、異なる濃度の養液4を収容した複数の水槽を用意し、別個の水槽の間で舟形トレーを移動させるだけで良い。
【0093】
(各部の構成)以下、本発明の栽培方法における各部の構成について詳細に説明する。このような構成(ないしは機能)に関しては、必要に応じて、本発明者による文献(WO 2004/064499号)の「発明の詳細な説明」、「実施例」等を参照することができる。
【0094】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0095】
以下で用いた実験方法は、上述したものの他は、以下の通りである。
【0096】
<pHの測定>pHの測定は後述のpHメーターによって行った。標準液(pH7.0)で校正したpHメーターのセンサー部分を測定すべき溶液につけ、本体を軽く揺らし、値が安定するのを待ち、LCD(液晶)表示部に表示される値を読み取った。
【0097】
<Brix%の測定>Brix%測定は後述の糖度計(屈折計)を用いて行った。測定溶液をスポイトでサンプリングし、糖度計のプリズム部分に滴下し測定後、LCDの値を読み取った。
【0098】
<実験器具等>1.使用器具および装置 1)ざるボウルセット:ざるの半径6.4cm(底面の面積約130cm2)2)発泡スチロール製トロ箱:サイズ55×32×15cm等3)上皿電子天秤:Max.1Kg、(株)タニタ4)ばね式天秤:Max.500g、(株)鴨下精衡所5)ポストスケール:ポストマン100、丸善(株)6)電気伝導度計:TwinCond B−173、(株)堀場製作所7)pHメーター:pHパル TRANSInstruments、グンゼ産業(株)、 コンパクトpHメーター(TwinpH)B-212 (株)堀場製作所8)糖度計(屈折計):PR201 、(株)アタゴ
【0099】
2.使用材料(土壌)1)スーパーミックスA:水分約70%、微量肥料入り、(株)サカタのタネ2)ロックファイバー:栽培用粒状綿66R(細粒)、日東紡(株)3)バーミキュライト:タイプGS、ニッタイ株式会社(フィルム)4)ポリビニルアルコール(PVA):アイセロ化学(株)、厚さ40μm5)二軸延伸PVA:ボブロン、日本合成化学工業(株)6)親水性ポリエステル:デュポン社(株)、厚さ12μm7)浸透セロファン:(燻製作製用フィルム)((株)東急ハンズ)8)セロファン:二村化学工業(株)、厚さ35μm9)微孔性ポリプロピレンフィルム:PH−35、(株)トクヤマ10)不織布:シャレリア(超極細繊維不織布)、旭化成(株)
【0100】
(苗用種)11)サニーレタス:レッドファイヤー、タキイ種苗(株)(肥料)12)原液ハイポネックス:(株)ハイポネックスジャパン13)大塚ハウス1号、2号、5号: 大塚化学(株)(その他)14)伯方の塩:伯方塩業(株)15) ブドウ糖:ブドウ糖100、(株)イーエスNA
【0101】
実施例1(根とフィルムの一体化現象)肥料濃度の根のフィルムとの一体化現象に与える効果を調べた。養液として、ハイポネックス100倍希釈液、1000倍希釈液、および水(水道水)を用いて、その効果を比較した。
【0102】
約20cm×20cmの無孔性親水性フィルム(PVA)上に土壌として、バーミキュライト、またはロックファイバーを約300ml配置した。この土壌内に、植物の苗として、サニーレタスの幼苗(本葉1枚強)を2本植え付けた。土壌として2種類、養液として3種類の合計6種類の系を作製した。養液量は各300mlであった。フィルム(PVA)上には約2cmの厚さの土壌を載せた。実験はハウス内で行い、自然光を使用した。栽培期間中の気温は0〜25℃、湿度は50〜90%RHであった。
【0103】
水分蒸発量および養液のEC値を、栽培開始13日後、および35日後にそれぞれ測定した。35日後には、前述したように、根とフィルムの一体化現象の目安である「引き剥がし試験」を行った。
【0104】
上記実験条件を纏めると、以下の通りである。1.実験1)フィルム:PVA40μm(アイセロ化学)200×200mm2)苗:サニーレタス幼苗(本葉1枚強)3)土壌:バーミキュライト(細粒)、ロックファイバー66R4)溶液:水、ハイポネックス原液、100倍希釈水溶液、1000倍希釈水溶液5)器具:ざるとボウルのセット6)置き場所:ハウス(温度湿度制御無し)
【0105】
7)実験方法:ざる上のフィルム(200×200mm)上にバーミキュライト150g(水分73%、乾燥重量40g)あるいはロックファイバー200g(水分79%、乾燥重量40g)を載せ、苗を2本植え付ける。該ざるを、240〜300gの養液または水が張られたボール中に設置し、該フイルムを該養液あるいは水と接触させ、幼苗を栽培する。8)栽培期間:10月29日〜12月4日
【0106】
上記実験により得られた結果を、表1に示す。EC:液肥追加前/追加後
【0107】
【表1】


【0108】
(実験結果に対する記述)上記した表1からわかるように、フイルム下に水を使用した場合に比較して、養液を使用した方が、植物の生育のみならず、根とフイルムの接着強度が著しく向上する。これは、植物がフィルムを介して、水のみならず肥料成分をも吸収していることを示している。更に、フイルムを介して水および肥料成分を効率良く吸収するためには、根がフイルム表面に強く密着することが必須であり、その結果として根とフイルムが一体化することになるものと考えられる。
【0109】
実施例2(塩水透過試験)前述の<フィルムの塩/水透過試験>方法に従って、各種フィルムの塩透過試験を行った。フィルムはPVA、ボブロン(二軸延伸PVA)、親水性ポリエステル、セロファン、PH−35、超極細繊維不織布(シャレリア)の6種類である。上記実験により得られた結果を表2に示す。
【0110】
【表2】


【0111】
(実験結果に対する記述)6種類のフィルムのうち、塩の透過性が大きなものは、超極細繊維不織布(シャレリア)、PVA、親水性ポリエステルおよびセロファンであった。塩の透過性が小さいものがボブロンであった。塩の透過性が全く認められなかったものが微孔性ポリプロピレンフイルム(PH−35)であった。本発明に好適に用いられるフイルムの塩透過性の観点から、微孔性ポリプロピレンフイルム(PH−35)は不適であることがわかった。
【0112】
実施例3(ブドウ糖透過試験)前述の<グルコース(ブドウ糖)透過試験>方法に従って、各種フィルムのブドウ糖透過試験を行った。フィルムはPVA、ボブロン(二軸延伸PVA)、セロファン、浸透セロファン、PH−35の5種類である。上記実験により得られた結果を表3に示す。
【0113】
【表3】


【0114】
(実験結果に対する記述)5種類のフィルムのうち、PVA、セロファンおよび浸透セロファンはブドウ糖の透過性は良好であったが、ボブロンではブドウ糖透過性はほとんど認められなかった。又、PH−35では透過性は全く見られなかった。この結果から、ブドウ糖透過性という観点からは、本発明に好適に使用されるフイルムはPVAとセロファンであることがわかった。
【0115】
実施例4(耐水圧試験)前述したように、JISL1092(B法)に準じた試験により、200cmH2Oの耐水圧試験を行った。(実験結果)フィルム種 耐水圧(cmH2O)PVAフィルム(40μm) 200以上二軸延伸PVA(ボブロン) 200以上セロファン 200以上親水性ポリエステル 200以上超極細繊維不織布 0
【0116】
(実験結果に対する記述)良好な耐水性を有するフイルムの、本発明における重要な役割は、該フイルム下の水がフイルムを通過してフイルム上に浸透した結果、植物が該フイルム中の水または養液を吸収する必要がなく、根とフイルムの一体化が損なわれることを防止すると同時に、フイルム下の微生物、細菌類、ウイルス類による植物の汚染を防止することである。本実験結果から、フイルムの耐水圧という観点から、本発明に好適に使用できるフイルムとして、超極細繊維不織布のように孔を有する不織布、織布は不適であることがわかった。
【0117】
前述した実施例1、2、3に示すように、塩とブドウ糖の好適な透過性と同時に好適な耐水性を有するフイルムはPVA,セロファン、親水性ポリエステルなどの素材からなる無孔性親水性フイルムに限定され、該無孔性親水性フイルムによって、はじめて根とフイルムの一体化が生じることがわかった。
【0118】
実施例5室温20℃の人工光ハウス(照度4000Lux)に、図1の水槽3として、内寸深さ15cm、内寸幅46cmの発泡スチロール製の水槽を2台(水槽A:長さ13mおよび水槽B:長さ4.5m)用意して内側に防水ビニールシートを張り、水槽AにはEC2.5dS/mの養液(大塚ハウス1号、2号、5号の標準混合液から調製、大塚化学(株))を深さ7cmまで、水槽BにはEC0.1dS/m以下の水道水を深さ7cmまで満たした。
【0119】
各水槽の上部には、中央から両側へ夫々7.5cmの位置に2本の点滴灌水チューブ(ネタフィム社製、ユニラム17、内径:14.6mm、外径:17.0mm、吐出量:1.6L/時ドリッパー15cm間隔)を、図1のように水槽の長さ方向に平行に設置した。
【0120】
水槽Aの点滴灌水チューブからは、EC1.5dS/mの養液(大塚ハウス1号、2号、5号の標準混合液から調整、大塚化学(株))を、水槽Bの点滴灌水チューブからは、EC0.1dS/m以下の水道水をそれぞれ1日に1回30秒間点滴供給した(約8ml/苗/日)。
【0121】
図2の舟形トレー1として、外寸幅45cm、外寸長さ60cm、外寸高さ8cmの発泡スチロール製枠(厚さ2cm)の底面に幅45cm、長さ60cm、厚さ1mmのアクリル板を接着したトレーを用意した。底面のアクリル板には直径2cmの丸穴を10cm間隔で開けた(12個)。
【0122】
図2のシート状隔離材7として、幅60cm、長さ75cmのPVAフィルム(厚さ40μm、アイセロ化学製)を上記舟形トレー上に設置し、その上に植物栽培支持体8として不織布(幅41cm、長さ56cmを設置した。
【0123】
幅41cm、長さ56cm、厚さ2cmの発泡スチロール製板に、図2に示す幅2cm、長さ50cmの潅水用スリット10を2本および幅2cm、長さ50cmの植物栽培用スリット11を3本(両端と中央)、図2に示すように等間隔で開け、本発明の蒸発抑制部材9とした。この発泡スチロール製蒸発抑制部材を上記舟形トレー上の植物栽培支持体の上に設置した。
【0124】
育苗室で発芽させた小松菜の幼苗(発芽後2週間)を、上記舟形トレー上の植物栽培用スリットに15cm間隔で定植した(9本)。
【0125】
上記幼苗を定植した舟形トレーを、水槽Aの端から挿入し、2本の点滴灌水チューブの真下に潅水用スリット10が配置されるように設置した。幼苗を定植した舟形トレーを水槽Aの端から毎日1トレーずつ送り出した。
【0126】
最初のトレーを水槽Aに設置してから21日目に、該トレーが水槽Aの挿入側と反対側の端に到達した。水槽A上を21日間かけて挿入側端から反対側端まで移動し、小松菜が成長したトレーを水槽Aから引上げて、水槽Bの端から端から挿入し、2本の点滴灌水チューブの真下に潅水用スリット10が配置されるように設置した。同様の操作を毎日1トレーずつ繰り返した。
【0127】
最初のトレーを水槽Bに設置してから7日目に、該トレーが水槽Bの挿入側と反対側の端に到達した。水槽B上を7日間かけて挿入側端から反対側端まで移動したトレーを水槽Bから引上げて、栽培された小松菜を収穫した。
【0128】
水槽Bから収穫された小松菜の硝酸態窒素を定量したところ、1500ppmであった。一方、水槽Aから引上げた時点の小松菜の硝酸態窒素を定量したところ、7200ppmであった。本発明の植物栽培システム及び栽培方法により、植物栽培の連続化、省力化が可能であるとともに、植物体の人体に有害な硝酸態窒素を低減できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0129】
これ
までの農業における養液点滴栽培の自動化を行い、栽培の各ステージを連続化し工業的に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】は、本発明の植物栽培システムの基本的な態様の例を示す摸式図である。
【図2】は、本発明の植物栽培システムの舟形トレーの態様例を示す摸式図である。
【図3】は、本発明の植物栽培システムの舟形トレーの他の態様例を示す摸式図である。
【符号の説明】
【0131】
1 舟形トレー2 潅水手段(点滴チューブ)3 栽培ベッド4 養液または水5 植物体6 小穴7 シート状隔離材8 植物栽培用支持体9 蒸発抑制部材10 潅水用スリット11 植物栽培用スリット
【出願人】 【識別番号】596009814
【氏名又は名称】メビオール株式会社
【出願日】 平成18年12月25日(2006.12.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−154505(P2008−154505A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2006−347018(P2006−347018)