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【発明の名称】 花卉用人工培地
【発明者】 【氏名】河北 永之

【要約】 【課題】形態保持性、吸水性、透水性及び保水性に優れた人工培地を提供する。

【解決手段】この人工培地は、綿製不織布表面に、炭化物粉粒、発根促進剤及びバインダーが混練されてなる混練物を塗布したものである。また、綿製不織布に代えて、綿粉を吹き付けてなる綿粉層を使用し、この綿粉層表面に、炭化物粉粒、発根促進剤及びバインダーが混練されてなる混練物を塗布したものである。炭化物粉粒としては、石炭灰、又は廃水汚泥を焼却してなる焼却灰が用いられる。石炭灰の中でも、比較的粒径の大きいクリンカアッシュを用いるのが好ましい。焼却灰の中でも、製紙工場から排出される廃水汚泥を焼却してなるペレット状の焼却灰を用いるのが好ましい。発根促進剤及びバインダーとしては、従来公知のものを使用しうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿製不織布表面に、炭化物粉粒、発根促進剤及びバインダーが混練されてなる混練物を塗布してなることを特徴とする花卉用人工培地。
【請求項2】
綿粉を吹き付けてなる綿粉層表面に、炭化物粉粒、発根促進剤及びバインダーが混練されてなる混練物を塗布してなることを特徴とする花卉用人工培地。
【請求項3】
炭化物粉粒が、石炭灰、又は廃水汚泥を焼却してなる焼却灰である請求項1又は2記載の花卉用人工培地。
【請求項4】
炭化物粉粒が、ペレット状の炭化物粒である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の花卉用人工培地。
【請求項5】
バインダーが、澱粉、海藻糊及びケールの絞り糟よりなる群から選ばれたものである請求項1又は2記載の花卉用人工培地。
【請求項6】
混練物中に、更に殺菌剤が含有されている請求項1又は2記載の花卉用人工培地。
【請求項7】
殺菌剤が化石珊瑚の粉末である請求項6記載の花卉用人工培地。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、芝草,草花,観賞用植物,緑化用植物等の花卉を栽培するための人工培地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル等の建物の屋上や壁面で花卉を栽培することが行われている。これは、都市部におけるヒートアイランド現象を軽減するためである。
【0003】
花卉を栽培するための培地としては、一般的に、土壌が用いられている。しかしながら、建物の屋上で土壌を敷設すると、建物に高荷重が負荷されるため、建物が崩壊する恐れが高くなり、好ましくない。また、建物の壁面に、土壌を敷設することは困難であった。さらに、土壌の場合には、風雨によって流出してしまうということがあった。
【0004】
このため、土壌に代えて、各種の人工培地を使用することが提案されている。本発明者も、焼却灰、火山灰、石炭灰等の炭化物粉粒と、石膏粉と、竹酢液と、発根促進剤と、中性固化剤と、保水剤と、水とを混練した混練物を固化してなる人工培地を提案している(特許文献1)。この人工培地は、土壌に比べて低重量にしうると共に、風雨に曝されても流出しにくく、好ましいものである。
【0005】
【特許文献1】特開2004−261029
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された人工培地は、建物の壁面に敷設しにくいという欠点があった。そこで、本発明者は、建物の壁面にも良好に敷設しうる人工培地を検討していたところ、人工培地の骨格素材として、綿製不織布を使用することに想い至った。すなわち、綿製不織布であれば、建物のどのような面であっても、その面に沿いやすく、壁面に敷設しやすいと考えたのである。
【0007】
このような発想に基づいて、具体的に人工培地を作成して実験を行っていたところ、綿製不織布を使用すると、特許文献1記載の発明において必要としていた、石膏粉や竹酢液等の成分が必要でないことが判明した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、綿製不織布表面に、炭化物粉粒、発根促進剤及びバインダーが混練されてなる混練物を塗布してなることを特徴とする花卉用人工培地に関するものである。また、綿製不織布に代えて、綿粉を吹き付けてなる綿粉層を使用した花卉用人工培地に関するものである。
【0009】
本発明で使用する綿製不織布とは、綿繊維が開繊集積されてなるシート状物であって、綿繊維相互間が何らかの手段で交絡されて形態安定性を保持しているものである。具体的には、天然の綿繊維をカード機等で開繊集積して、繊維ウェブを形成した後、この繊維ウェブにニードルパンチ処理又は水流交絡処理を施して、綿繊維相互間を交絡して得られるものである。綿製不織布の目付は任意であるが、一般的に、40〜300g/m2程度である。綿製不織布の目付が40g/m2未満であると、綿製不織布の厚みが薄くなって、栽培する花卉の根が張りにくくなる傾向が生じる。また、綿製不織布の目付が300g/m2を超えると、綿製不織布と共に使用する炭化物粉粒の使用量も多くする必要が生じるので、人工培地が高荷重になる傾向となる。
【0010】
また、綿製不織布に代えて、綿粉を吹き付けてなる綿粉層を用いてもよい。綿粉とは、綿繊維をカード機等で処理する際に発生する綿繊維の切断片のことである。綿粉は、繊維状となっておらず、また繊維状となっていても繊維長が短いので、これを用いて綿製不織布を得ることはできない。しかしながら、綿粉を大量に吹き付ければ、綿粉からなる層を得ることができる。この綿粉層を綿製不織布に代えて使用するのである。綿粉層は、綿粉のみを吹き付けても形成しにくいことが多いので、綿粉をバインダー液に懸濁した懸濁液を吹き付けるのが好ましい。バインダー液としては、汚泥、澱粉を水に溶解した澱粉液、海藻糊を水に溶解した海藻糊液、ケールの絞り糟を水に分散したケール液等を使用することができる。綿粉層は、基板上に吹き付けて形成してもよいし、建物の壁面等の培地を使用する箇所に直接吹き付けて形成してもよい。綿粉層の厚みは、1〜80mm程度でよい。厚みが1mm未満になると、栽培する花卉の根が張りにくくなる傾向が生じる。また、厚みが80mmを超えると、人工培地が高荷重になる傾向が生じる。
【0011】
綿製不織布を構成している綿繊維や、綿粉層を構成している綿粉は、窒素分を0.4%程度含有しているので、花卉の肥料ともなるものである。また、綿製不織布は、綿繊維相互間が絡み合って形成されているため、形態保持性に優れている。綿粉層も、綿粉相互間が絡み合い或いは接着して形成されているため、形態保持性に優れている。そして、綿繊維相互間や綿粉相互間に、多数の空隙が形成されているので、透水性及び保水性にも優れている。さらに、綿繊維又は綿粉は吸水性に優れているため、水をよく吸収する。したがって、花卉の培地として好ましいものである。
【0012】
綿製不織布表面又は粉粉層表面に、炭化物粉粒、発根促進剤及びバインダーが混練されてなる混練物を塗布することによって、人工培地が得られる。混練物中の炭化物粉粒としては、石炭灰、焼却灰又は火山灰が単独で又は混合して用いられる。石炭灰とは、石炭をボイラー等で燃焼した後に残る灰のことであって、フライアッシュ又はクリンカアッシュのことである。フライアッシュは比較的粒径の小さい炭化物粉粒であり、クリンカアッシュは比較的粒径の大きいペレット状の炭化物粉粒である。本発明においては、粒径の大きいペレット状のクリンカアッシュを使用した方が、透水性の良好な人工培地となるので好ましい。また、クリンカアッシュの方が、重金属の含有量が少ないため、人工培地としては適している。焼却灰とは、廃水汚泥を焼却した後に残る灰のことである。廃水汚泥としては、各種工場から排出される汚泥のことである。本発明では、製紙工場から排出される廃水汚泥を焼却した焼却灰を用いるのが好ましい。製紙工場の廃水汚泥は、パルプを主たる成分としており、培地として有害な成分が少ないためである。焼却灰の場合も、ペレット状の比較的粒径の大きい炭化物粉粒として使用するのが好ましい。また、本発明では、炭化物粉粒として天然の火山灰を用いることもできる。
【0013】
発根促進剤としては、従来公知のものを使用しうるが、特にエンテロバクター属の微生物(E.cloacae No.11−5)の培養濾液を含有するものを用いることが望ましい。発根促進剤を用いることにより、特に、生育初期の毛細根の発達が促進されるため、培地形成後の植物の生育状態が向上する。また、発根した大量の根が培地中の広範囲にわたって伸長することによって培地はより強く固められるため、雨天時などにおける培地の流出、崩壊を防止する効果も高まる。発根促進剤の具体例としては、例えば、株式会社河北晃樹園が販売している「エクスコ−R(商品名)」などが好適である。
【0014】
バインダーとしては、粘着性乃至は接着性のある物質であれば、どのようなものでも使用しうるが、特に、天然物を使用するのが好ましい。具体的には、澱粉、海藻糊又はケールの絞り糟等を使用するのが好ましい。バインダーは、水に溶解させた状態のバインダー液として使用するのが、一般的である。
【0015】
炭化物粉粒、発根促進剤及びバインダーは、混練されて混練物として扱われる。混練する際、バインダーは水に溶解させたバインダー液とするのが一般的である。バインダー液の濃度は任意であるが、一般的に、3〜10重量%程度である。そして、このバインダー液中に、炭化物粉粒及び発根促進剤を添加して混練し、混練物を得るのが、一般的である。混練物中の組成比は、炭化物粉粒:発根促進剤:バインダー=(80〜96):(1〜10):(2〜20)[重量比であり、合計が100になる。]程度であるのが好ましい。また、バインダー液を使用する場合、バインダー液と炭化物粉粒及び発根促進剤との組成比は、炭化物粉粒:発根促進剤:バインダー液=(40〜60):(1〜5):(40〜60)[重量比であり、合計が100になる。]程度であるのが好ましい。
【0016】
また、混練物中には、殺菌剤を添加しておくのが好ましい。殺菌剤によって、ウイルス等の有害な菌の繁殖を阻止して、根腐れ等が生じないようにするためである。殺菌剤の具体例としては、天然物である化石珊瑚の粉末を用いるのが好ましい。天然物であるため、予期せぬ環境破壊等が生じにくいからである。殺菌剤の添加量は、発根促進剤と同程度であるか、又はそれより少なくてもよい。なお、混練物中には、その他に、肥料等を添加配合しておいてもよい。
【0017】
本発明に係る人工培地は、綿製不織布表面に混練物を塗布し、混練物中の水分を乾燥させて固化することによって得られる。また、綿粉層表面に混練物を塗布し、混練物中の水分を乾燥させて固化することによって得られる。そして、この人工培地上に花卉の種子を播いたり、或いは花卉の苗や苗木を植えれば、人工培地中に根が張って花卉が生育するのである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る人工培地は、形態保持性、吸水性、透水性及び保水性に優れた綿製不織布又は綿粉層を用いているので、炭化物粉粒、発根促進剤及びバインダーを用いることによって、得ることができる。すなわち、特許文献1に記載されている石膏粉や竹酢液は、少なくとも不要である。よって、本発明に係る人工培地は、従来の人工培地よりも合理的に得られるという効果を奏する。
【実施例】
【0019】
実施例1
まず、目付100g/m2の綿製不織布を準備した。また、下記組成比の混練物を準備した。
クリンカアッシュ 48質量部
発根促進剤(エクスコ−R) 1質量部
バインダー液(澱粉の5%水溶液) 50質量部
化石珊瑚の粉末 1質量部
そして、この混練物を、綿製不織布表面1m2当たり100g塗布し、水分を乾燥して固化し、人工培地を得た。
【0020】
この人工培地を合板上に敷設した後、蘭の苗を植えたところ、その生育は図面に示したとおり、順調であった。したがって、これは、花卉の人工培地として好適に使用しうることが分かった。
【0021】
実施例2
クリンカアッシュに代えて、製紙工場から排出された廃水汚泥を焼却し、ペレット状に成形した焼却灰を使用した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】平成18年3月22日、実施例1に係る人工培地に、蘭の苗を植えたときの状態を示した図である
【図2】図1の状態から九日経過後の平成18年3月31日の蘭の状態を示した図である。
【図3】さらに、七日経過後の平成18年4月7日の蘭の状態を示した図である。
【図4】さらに、十日経過後の平成18年4月17日の蘭の状態を示した図である。
【図5】さらに、十日経過後の平成18年4月27日の蘭の状態を示した図である。
【図6】さらに、十六日経過後の平成18年5月13日の蘭の状態を示した図である。
【出願人】 【識別番号】503080637
【氏名又は名称】株式会社河北晃樹園
【識別番号】000157348
【氏名又は名称】丸三産業株式会社
【出願日】 平成18年10月16日(2006.10.16)
【代理人】 【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹


【公開番号】 特開2008−92915(P2008−92915A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−281532(P2006−281532)